ノンフィクション作家柳田邦男の最新作。
この人の『零戦燃ゆ』を昔読んだが、最近の『犠牲』や『犠牲への手紙』は自らの息子の自死を題材にするもので、とても読む気にならなかった。
この本は誰が書いてもベストセラーになるだけの影響力あるタイトルではあるが、きっかけとなったスキミング被害者となった知人への取材や、被害者10名ほどの取材、銀行、銀行協会等の様々な取材も加え問題の本質がよくわかる。
『通帳もカードもあるんだよ。なぜなの?』
2004年2月に定年退職した知人が退職金を預けていた銀行で2004年3月に3,200万円(!)を盗まれたというショッキングな出来事から始まる。
これを読むとゴルフ場でも、サウナでもどこでも貴重品を預けたくなくなる。
(4月27日追記:4月26日にこの被害者鈴木氏と2銀行が和解し、銀行は全額の補償に応じた。この本のおかげでこれが社会問題化したから銀行が態度を軟化させたのだろう)
キャッシュカードと暗証番号の管理は自己責任と主張して、一切補償に応じない銀行の対応に憤りを感じる。
警察も、金を取られたのは銀行であるとの変な理屈で、『あなたはお金を盗られていない』と被害届も銀行に出させろという指導をしている由。
また女性などが警察に行くと、配偶者や親族など身内をまず疑えという態度でまともに相手をしてもらえなかったという事実に驚く。
1988年に諸外国にあわせて消費者保護の法律案が検討されたが、銀行の反対でつぶされたあとは、日本の消費者は全く保護されていない状態だった。
アメリカでは50ドル・ルールというのがあり、消費者は重大な過失や故意がない限り最大50ドルの自己負担で、損失は全額補償される。
またクレジッドカードでは保険があり、保険に入っている限り補償を受けられる。
ところが、銀行のキャッシュカードはどんな場合でも口座番号と暗証番号さえ合致すれば、銀行は免責であるという理由で、たとえ深夜に何十回も100〜200万円ずつ引き出すという不審な出金があってもすべて顧客の責任として一切補償には応じない。
キャッシュカードがあぶない