2005年04月17日

キャッシュカードがあぶない 自己防衛のための必読書

ノンフィクション作家柳田邦男の最新作。

この人の『零戦燃ゆ』を昔読んだが、最近の『犠牲』や『犠牲への手紙』は自らの息子の自死を題材にするもので、とても読む気にならなかった。

この本は誰が書いてもベストセラーになるだけの影響力あるタイトルではあるが、きっかけとなったスキミング被害者となった知人への取材や、被害者10名ほどの取材、銀行、銀行協会等の様々な取材も加え問題の本質がよくわかる。

通帳もカードもあるんだよ。なぜなの?』

2004年2月に定年退職した知人が退職金を預けていた銀行で2004年3月に3,200万円(!)を盗まれたというショッキングな出来事から始まる。

これを読むとゴルフ場でも、サウナでもどこでも貴重品を預けたくなくなる。
(4月27日追記:4月26日にこの被害者鈴木氏と2銀行が和解し、銀行は全額の補償に応じた。この本のおかげでこれが社会問題化したから銀行が態度を軟化させたのだろう)

キャッシュカードと暗証番号の管理は自己責任と主張して、一切補償に応じない銀行の対応に憤りを感じる。

警察も、金を取られたのは銀行であるとの変な理屈で、『あなたはお金を盗られていない』と被害届も銀行に出させろという指導をしている由。

また女性などが警察に行くと、配偶者や親族など身内をまず疑えという態度でまともに相手をしてもらえなかったという事実に驚く。

1988年に諸外国にあわせて消費者保護の法律案が検討されたが、銀行の反対でつぶされたあとは、日本の消費者は全く保護されていない状態だった。

アメリカでは50ドル・ルールというのがあり、消費者は重大な過失や故意がない限り最大50ドルの自己負担で、損失は全額補償される。

またクレジッドカードでは保険があり、保険に入っている限り補償を受けられる。

ところが、銀行のキャッシュカードはどんな場合でも口座番号と暗証番号さえ合致すれば、銀行は免責であるという理由で、たとえ深夜に何十回も100〜200万円ずつ引き出すという不審な出金があってもすべて顧客の責任として一切補償には応じない。


キャッシュカードがあぶない
キャッシュカードが実際に盗難にあった場合と、キャッシュカードが一旦持ち出され、磁気部分をスキミングされた後財布に戻されるケースがある。

特に問題なのは後者のケース。

本人は銀行取引や通帳記入などをしない限り気がつかないので、預金全額を引き出された上に、借り入れも限度額までやられ、まさに踏んだり蹴ったりとなる。

本人にとってこんな大事件が起こっても、警察はまともに取り上げず、身内をまず疑えという反応。

銀行に至っては利用約款を楯に、補償には一切応じないという態度で、自分に同じことが起こった場合のことを思うと、背筋が寒くなる。

米国で銀行口座を開いたとき、キャッシュカード入れた郵便と銀行が指定する暗証番号の二つ目の郵便の両方何者かに盗られて、2、000ドル以上不正に引き出されたことがあった。

当然の事ながら、全額銀行が補填してくれ、すぐに刑事がきて、自分へのインタビューと会社とビルのメールルームを調べていた。

米国では一日の引き出し限度が当時、口座を持っている銀行では400ドル、提携銀行では200ドルだったが、ATMの防犯モニタービデオを調査するなど、犯人は見つからなかったものの、調査にはすぐに対応していたという記憶がある。

日本では銀行に預けたら安全という、当たり前の安心すらないので、自分で自分を守るしかない。

金融口座が一覧で管理できるアカウントアグリゲーションが徐々に広がってきているが、自己防衛のためにも、頻繁に、できれば深夜でも土日でも一日一回は口座残高をチェックした方が良いと思う。

そのうち銀行も補償に乗り出すか、保険を導入すると思うが、それまでに自分が犯罪に巻き込まれないとも限らないからだ。
Posted by yaori at 23:47│Comments(0)TrackBack(2) 趣味・生活に役立つ情報 | 柳田邦男

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