2005年11月22日

アマゾンの秘密 組織としてのアマゾンの強さの要因がかいま見える

アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか


アマゾン日本のサービス立ち上げ時にコンサルタントとして働いていた松本晃一さんのレポート。先にご紹介したアマゾン配送センター潜入レポートのアマゾン・ドット・コムの光と影とこの本くらいしかアマゾンに関する日本書はないので、こちらも読んでみた。

アマゾンは元従業員も守秘義務契約で縛っているので、核心に触れる情報は公開はできないのだろう。

松本さんは2000年3月から2002年6月までアマゾンに勤務していたが、この本の出版されたのは2005年1月で、最新の情報をカバーしている訳ではない。

それでも立ち上げ当初のCEOの長谷川純一氏に見込まれて契約社員(但し契約はコンサル契約)として採用されただけあって、アマゾンの裏側やアマゾンの経営哲学の様なものが、かいま見えて参考になる。

松本さんは2000年3月に採用されたが、1999年に日本でのアマゾンのサービス立ち上げは決定されており、秘密裏にプロジェクトチームが結成されていた。

2000年内にサービスを立ち上げ、アウトソースせず自力でサイトを立ち上げるというのがアマゾンCEOのジェフ・ベゾスから与えられた使命だった。

アマゾンの特徴であるいくつかのCRM機能が日本でどのように立ち上げられたのかのドキュメンタリーとしても面白い。

いくつか印象に残った点を挙げてみよう。


アマゾンのCRMデータには性別・年齢がない

アマゾンと言えば、膨大な顧客・購買データを利用したデータベースマーケティングやCRMが有名で、『atamanisuttoさん、おすすめがあります』とか『この本を買った人は他にこんな本も買っています』とかのリコメンドがその例である。

しかし通常は顧客の年齢や性別、職業や地位などを調べてプロファイル化することによって、20代女性とかいったターゲット層を決めるのに対して、アマゾンでは顧客の個人的なプロファイルに関わる特性を購買活動に結びつけていない。

アマゾンにとって重要なことは、その顧客が誰であるかということではなく、その顧客が何を買ったか、またどの商品に興味を持ったかという点である。

ネットという非常にプライベートな世界では、たとえば少女コミックでも購入者は必ずしも女性のみとは限らないので、購買実績を重視するのだ。

そういえばアマゾンでは配達の時に必要なので住所とか電話番号、メールアドレス、時としてクレジットカード情報の入力は必要だが、それ以外の年齢や性別などの情報は一切不要である。

顧客一人一人を点として捉え、相似の購入行動という線を見いだし、向かう方向性をリコメンドしていくことによって顧客が真に望んでいるものの発見へのヒントを見いだすという考え方なのだ。


アマゾンレビューとカスタマーレビュー

アマゾンのコンテンツには2種類ある。カタログコンテンツと呼ばれる出版社、著者から提供される書評等と、エディトリアルコンテンツと呼ばれるアマゾンのエディターや専門のライターまたは読者から提供される書籍紹介文である。

エディトリアルコンテンツにはアマゾン自身で制作するアマゾンレビューと読者の投稿によるカスタマーレビューの2種類がある。

アマゾンジャパン立ち上げ時には、アマゾンレビューのライターを確保するために、日本の出版社からライターの紹介して貰ったが、日本の出版社はアマゾンを『黒船』として警戒するのではなく、総じて協力的であったと松本さんは語っている。

日本の出版業界改革の為にも、アマゾンを応援したいという出版業界の人が多かったことは驚きであったと。

松本さんはカスタマーレビューこそアマゾンの成功の要因だと語っている。アマゾンのおすすめ度はカスタマーレビューのおすすめ度に基づいており、出版社などから提供される情報・意見よりも顧客の意見を尊重するというアマゾンの基本姿勢が良くあらわれている。

アマゾンではABテストという大規模なテストを行い、カスタマーレビューのあるサイトの方がカスタマーレビューのないサイトよりもコンバージョンレート(実購買率)が高いことを検証している。

ABテストとはある一定期間、異なるサイト構成のAバージョン、Bバージョンを展開して、どちらのバージョンが効果があったのかを測定する、いわば本番テストの様なものである。

また書籍に関してはカスタマーレビューの効果は高いが、音楽CDなどでは大きな影響は出ていないということも検証の結果、わかっている。

こんなデータがあったので、アマゾンジャパン立ち上げの時には毎週抽選で5,000名のカスタマーレビュー投稿者にアマゾンギフト券が当たるというキャンペーンを行い、順調にスタートさせたのだ。

アフィリエイトマーケティングの元祖アマゾンのアソシエイトプログラムと並び、カスタマーレビューも『買い手のマーケティング』という、昔ながらの口コミをITを使って実現する手法なのだ。


アマゾンのサイトは巨大なソフトウェア


アマゾンのURLには/OBIDOS/という文字が入っているが、これはアマゾン独自のシステムであり、マクロ言語である。これは顧客の購買行動から導かれた個人向けの情報を動的にページ生成し配信する仕組みだ。

いわばサイト全体が巨大なソフトウェアという性格を持っている。

アマゾンでは社内のヘルプデスクをリメディシステムと名付け、障害を発見した人は『リメディチケット』と呼ばれる障害報告をオンラインでシステムに登録する仕組みとなっている。

もしトラブルがあるとシアトルのビルダーと連絡を取って障害対応する。

松本さんが在職中に一度『インパクトレベル1のリメディチケット』が切られる事態が発生したそうだが、リメディチケットには5段階あり、最緊急の事態がインパクトレベル1である。


小さな書店

アマゾンは1995年創業で、しばしば経営危機がささやかれながらここまで成長してきた。

インターネットの先駆者だけあってアマゾンの開発したアソシエイトプログラム(アフィリエイトプログラム)とか、リコメンドなど、現在の消費者向けウェブサービスの最先端を走っている。

アマゾンの日本代表と言っても名前も顔もわからず、個人の顔が見えない会社であるが、ジェフ・ペゾスの『小さな書店』コンセプトをネット上で実現させるために、組織としての蓄積はすごいものがある。

そんなことを考えさせる本であった。

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2005年11月15日

アマゾン・ドット・コムの光と影 数少ないアマゾンに関する本

潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場


このブログでは楽天、ライブドア、ソフトバンク、サイバーエージェント、インデックスなど日本のIT業界を代表する経営者や会社を取り上げてきたので、次はアマゾンだろうと思っていろいろ本を調べてみた。

この本は2005年2月の文芸春秋に掲載されたレポートを本にまとめたもの。

著者の横田増生(ますお)さんは、元物流業界紙編集長だが、アマゾンの配送センターの現場で5ヶ月間時給900円のアルバイトとして働くという体当たり的取材を通しての異色のレポートである。


アマゾンの秘密主義

アマゾンの秘密主義や、元従業員に対する守秘義務は有名で、そのせいかアマゾンに関する本はほとんどない。

日本人が書いた本としては、この本と次回ご紹介する"アマゾンの秘密"程度しかなく、どちらも情報量としては残念ながら不足で、断片的な情報しか集まらないのが現実だ。

外国の翻訳書でも2000年前後のものばかりで、最近の本は日本のこの2冊程度しかないのだ。


アマゾンジャパンの売上高

まずは誰もが知りたいのはアマゾンジャパンの売上高だろう。

アマゾンジャパンの書籍とCD等の音楽、エレクトロニクス等をあわせた売上高は一切発表されていないが、横田さんが配送センターで働いた時の噂では2003年で500億円を超えたと推定している。

もちろんアルバイト仲間が聞きかじった情報ということなので、たしかな情報ではないが、横田さんは書籍200億円(和書170億円、洋書30億円)、CDやDVDなどが250億円、家電その他が50億円と推定している。

2004年はアマゾンワールドワイドの売上高が70億ドル(8,100億円)で、国際部門の売上が31億ドル(3,600億円)と発表している。アマゾンジャパンが「日本は5カ国ある国際部門でトップではないが、近い将来トップになるだろう」とコメントしていることから、少なくとも国際部門売上高を5等分した720億円以上の売上高はあるはずである。

日本の書籍小売りではトップの紀伊国屋丸善が売上高1,000億円規模である。

アマゾンジャパンの訪問者は2004年は前年の153%と順調に拡大しているので、たぶん2005年にはトップ2社と肩を並べる1,000億円程度の売上規模となると予想される(書籍のみでなくCD・DVDや家電なども含む)。


ネットによる書籍販売ではアマゾンジャパンが他を圧倒


NetRatings2004Ranking

インターネット視聴率調査会社のネットレイテイングスがホームページにて公開している情報だと、アマゾンは2004年の日本の訪問者トップ10の中にランク入りしており、12百万人の訪問者があるのに対して、2位の7andY.jp(旧ESブックス)は別サイトのyahoo! booksを合わせても3百万人強である。


7andY


その他のBK1,楽天ブックスなどは2位の7andYの半分以下の訪問者にとどまっており、ネット書店ではアマゾンジャパンの一人勝ち状態である。


1、500円以上送料無料

日本のネット書店で送料無料サービスを定着させたのは、アマゾンジャパンである。再販制度のために本の値引きができない日本で、送料を無料にすることで実質的な値下げをしているのである。

アマゾンの物流は日通が一手に請け負っている。この本でインタビューに応じた元日通役員によると、日通が受け取るのはアマゾンが1,500円以下の注文の配送料として決めている1件300円程度の様である。

1,500円以上の注文ではアマゾンが自腹を切って、送料を負担している。一件1,500円であれば赤字になるかもしれないが、アマゾンの注文の平均単価が3,000円以上だから送料をコスト負担しても採算が取れるのである。


インターネット注文のバックヤードは人海戦術

アマゾンはIT業界を代表する企業だが、注文はインターネットのみですべて自動的に注文確認や支払い確認等ができる。しかし本の配送はこの本でも取り上げられているように、数百人のアルバイトを使った人海戦術である。

アマゾンの配送センターは千葉県のJR京葉線市川塩浜駅からバスで行く工場や倉庫が立ち並ぶ地域にある。約100万点の書籍をストックしており、アルバイトが人海戦術で注文された本を棚やパレットからカートにピッキングして、オーダー毎にまとめて、梱包に回すのである。

本はサイズがまちまちで自動化が難しいので、このように最先端のネット企業でありながら、裏方(バックヤード)は人手によるハンドピッキングなのだ。

英語でチェリーピッカーというと、山積みになっているサクランボからいいものを選り分けるという意味から、いいとこ取りを意味するのだが、アマゾンの事業はチェリーピッカーならぬ、ブックピッカーで成り立っているのである。

ひところYahoo!(?)の宣伝で、インターネットである言葉を検索すると、向こう側で数十人の社員が待機していて、それっということであちこちに散って調べて回答を返すというコマーシャルがあったが、それを思い出させる。

アマゾンのスクリーンの向こう側は数百人のアルバイトが働く巨大な倉庫なのだ。

ここに集められたアルバイトは時給900円程度で、実働8時間。交通費は支給されないので、基本的に近くに住む人ばかりが働く。


アルバイトによるハンドピッキング

巨大なアマゾン配送センターの1階ではまず本の受け入れ検査(レシービング)が行われる。40台のコンピューター端末を使ってバーコードを読み取り、図書館などで見かける本専用のライブラリーカートに載せて、2階のピッキングゾーンに送る。

棚積みする時に本のバーコードを読み取り、次に棚についているバーコードを読み取り、置いた場所をホストコンピューターに記録する。

注文があったら、コンピューターが最短距離でピッキングできる様に作業指示書を打ち出すので、バラバラに本が棚に入れられていても問題ないのだ。

顧客からの注文はシアトルにあるホストコンピューター経由物流センターに入っきて、1枚140冊ほどのピッキング作業指示書がプリントされる。それをもとにアルバイトがカートにハンドピックする。

積み終わったカートは1階に下ろされ、出荷検査、梱包を経て発送される。

アルバイトには3冊/分のノルマが課せられるが、はじめは1〜1.5冊/分、手慣れても2〜2.5冊/分がせいぜいであると。

アマゾンに注文すると在庫があれば大体2日程度で届くが、これはすべて人手でピッキング、発送されているのだ。


アマゾンの優れた需要予測

アマゾンを利用している人はご存じと思うが、アマゾンのサイトはクッキー情報でパソコンを認識し(ユーザーの個人情報はわからない)、アマゾンのホームページを開くと、パーソナルメッセージが立ち上がり、おすすめ商品が表示される。

これがいわゆるリコメンドで、その人の購買特性を分析して、アマゾンがおすすめ商品情報をその人専用のホームページに表示するのである。

このおすすめ商品は的はずれであるという人も多いが、筆者が感心するのはアマゾンで或る商品に興味があり、それをクリックしたり、購入した時に、「あわせて買いたい」とか「この本を買った人はこんな本も買っています」と表示されるリコメンドである。

こちらはその商品、本と同じ傾向、ジャンルのものが多く、たしかにあわせて買いたくなるものが多い。

1,500円以上なら送料が無料となったり、家電製品では5,000円以上買うとギフト券がもらえるなどの特典があるので、このリコメンドは大変有益だと思う。

これはアマゾン独自の購買特性分析によるものであり、アマゾンの最大の強みだ。

ハリーポッターシリーズの様に、全世界で数百万部売れる本は、リアルの本屋では時として仕入れすぎてしまうことがよくあるようだが、アマゾンは顧客データ分析による需要予測の精度が高く、予約すれば発売当日に届くことをウリにしていながらも、過剰な在庫を抱えてしまうことはほとんどない様だ。


出版界の黒船アマゾン

アマゾンが日本に進出した2000年には、日本の書籍取次大手のトーハンと日販はアマゾンが再販制度を切り崩すことを懸念して取引をしなかったので、アマゾンは仕方なく第3位の大阪屋と取引を開始した。

しかし取次業界の1,2位と3位との差は大きく、日販とトーハンが売上高6,000〜7,000億円で2社合計で業界の7割を押さえているのに対して、アマゾンが使った大阪屋はせいぜい1,000億円で、その他大勢の部類である。

アマゾンが仕入れ力を強化し、品揃えを充実させるためには、どうしても日販かトーハンとの取引が必要だったので、アマゾンは2003年に日販と提携して、24時間以内に発送できる本を大幅に増やすことができた。

取次にとっても、当初本を安売りするのではないかと思われたアマゾンが、再販制度をむしろ利用して、定価販売で日本に参入してシェアーを拡大したことはむしろ歓迎だったようだ。


インタビュー記事も参考になる

この本では、日通元役員とか、日経新聞がやっているネット書店のBK1社長、アマゾンと直接取引をしたほぼ日刊イトイ新聞の糸井重里事務所、アマゾン仕様の英語学習ソフトを開発した『えいご漬け』のソフトハウス、出版業界の業界紙記者、ネット業界に強い証券アナリストなどとのインタビューも載せられている。

筆者自身のアルバイト体験談とこれらの核心情報満載のインタビューが、ややアンバランスな形でこの本を構成しているが、直接取材ができないアマゾン相手ではこのような構成がせいぜいなのかもしれない。


目指すは『小さな書店』

アマゾンの創始者のジェフ・ベゾスが目指したのは顔見知りの店員のいる『小さな書店』だそうだ。

筆者も経験がある。中学生・高校生の時に通っていた鵠沼海岸の大木書店(だったかな)のおやじさんは、買った本を覚えていて、「この本も良いよ」とリコメンドしてくれたものだ。

『小さな書店』コンセプトをITを使って実現しようとしているアマゾンの努力と完成度の高いサービス、そして自らを守るための秘密主義に改めて感心した。


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2005年11月08日

社長の仕事 48の鉄則 船井総研社長小山政彦さんの実践的アドバイス

社長の仕事48の鉄則―船井総研社長が提言!会社を強くする「ヒト・モノ・カネ」の実践ノウハウ


船井総研社長の小山政彦さんの経営鉄則集。2002年2月発刊の本だが小山さんの先見性に驚く。


先見性と予想の正確さに驚く

たとえば鉄則9の「5つの『一体化』から時流を読みとれ」だ。

『分離と融合』の一体化では競合は3社が最適なので、3社に淘汰されると説く。この本発刊時の2002年の時点では4大金融グループが誕生したばかりだったのに、5年以内に3大金融グループへの再編が来ると予想している。東京三菱ーUFJ統合で、3年も掛からずに小山さんの予言が実現した。

中国製のフレームと韓国製のレンズを使った眼鏡業界の安売り業界化も予想している。

また『エコノミーとエコロジー』の一体化ではトヨタのプリウスを取り上げる。初代プリウスは一台売ると50〜100万円の損と当初言われていたのだが、エコノミーとエコロジーを両立する解決策がプリウスだと。

現在のハイブリッドカーの人気を2002年の時点で予測しているのだ。


ハリアーハイブリッド

話は横道にそれるが、筆者も今年ハリアー・ハイブリッドに買い換えたが、満足感が非常に高い車である。

先日東京モーターショーに行ってきたが、多くの自動車メーカーがコンセプトカー、あるいは近日発売予定の新車として展示しているのが、ハイブリッドカーあるいは燃料電池車、水素エネルギー車だった。

その中でもトヨタは現在販売中のハイブリッドカーをずらっと並べ、コンパニオンによるエスティマハイブリッドの新モデルの説明や、レクサスの来年発売予定のハイブリッドモデルも多く展示し、エコロジー=トヨタを強く印象づけていた。

レクサスは日本よりアメリカで多く売れているが、アメリカのエコロジー意識が高まっていることをにらんで、レクサスの最高級車やスポーツカーもハイブリッドモデルを販売するのだ。もはやベンツもBMWもこの分野ではレクサスの敵ではない。


船井総研の得意分野

船井総研というと、船井幸雄さんや小山さんが有名だが、本業はなんのコンサルティングなのかこの本を読むまで、筆者も知らなかった。

船井総研は小売業を得意とするコンサルティング会社なのだ。

小山さんによると、船井流コンサルティングとは全国各地の小売店に足を運び、経営指導して、たとえば15〜20万円のコンサルティング料をもらうというやりかたであり、船井幸雄会長に教えて貰った地方回りのコンサルタントが創業の原点であると。

小山さんは商店や会社のレベルを次の3段階にわけている:

生業レベル : 『戦略、戦術、戦闘』がひとりに集中 ワンマンカンパニー

家業レベル : 『戦略、戦術』と『戦闘』にわかれる 社長と部長、あるいは店長

企業レベル : 『戦略』『戦術』『戦闘』がわかれる 社長が戦略、部長が戦術、社員が戦闘

社長はどこかの段階でさらなる権限委譲をするという戦略を持ち、社長自身が自己改革をしなければレベルアップは難しいと。人をうまく使う。それが社長の仕事だ。

船井総研のトップコンサルタント五十棲さんが社長は現場に出るなと言っていることもこの小山さんの話と同じである。


この本では社長の仕事の48の鉄則をあげている。いくつか印象に残る話を紹介しておこう。


船井幸雄研究

小山さんは『船井幸雄研究』で社長になったと。会社にとって正しいことは、その会社における常識であり、『社長の常識』である。従って社長の考えを正しく理解して社員に伝えてきたらからこそ、船井幸雄さんを継いで社長になったのだと。(鉄則1)


社長は『資金繰り』『人材育成』に全力を尽くせ

タイトルの通りだが、コミュニケーション能力、『対話力』があることがトップであることの重要な条件の一つである。ニッサンのゴーンさんが良い例だ。(鉄則4) 


一体化

これからの経営では『一体化』がキーワードであると。

たとえばウォルマートは超ローコスト経営で有名であるが、店の入り口にはグリーターがいて、あいさつをし、返品カウンターには3人がおり、レジスターは平日にもかかわらず多くが開いている。欠品を出さないというコンセプトで在庫も多く抱えている。

お客に見えるところではハイコストなのだが、お客に見えないバックヤードでは徹底的なローコスト経営をしているので、お客に接する部分でハイコストにやれるのである。ローコストとハイコストの一体化である。

競争と共生の一体化の例としてはトヨタとニッサンの共同配送をあげている。

両社は激しい競争をしているが、同じ地区に別々に配送するよりも1台の輸送車でまとめて運んでトヨタとニッサンの両方の販売店に輸送することを始めているのだと。

この話、筆者は寡聞にして知らなかったのだが、もし本格的協業が実現しているのだとすると凄いことだ。(鉄則8) 


現象の裏にあるニーズをつかめ

吉野屋の牛丼は400円から280円に3割値下げして、売上が5割増えた。にわかには信じられない計算だが、この理由は新しいニーズをつかんだことだ。

従来昼食価格帯は800円ゾーン、500円ゾーンの2つだったが、これに加えて300円ゾーンが登場した。

住宅ローンと教育費で小遣いが減り、年収800万円程度のサラリーマンが昼食300円族として牛丼屋に走ったのだ。

マクドナルドは既にハンバーガーを半額にしてこの人たちを取り込み、吉野屋も300円でお釣りが来ることが魅力だった。

このように表面的な現象に目を奪われず、ニーズのベースとなっていることを把握することが最も重要なのであると。(鉄則39) 


ビジョンを絵に描いた餅で終わらせない

5年後会社をどうしたいというビジョンを持っているか?それを実現するための具体的な方策を持っているか?

小山さんのビジョンは6年で売上を倍にすることで、これの実現には逸材社員の流出を止めることが重要だ。

社員というのはある程度やめるものであり、やめていいものなのだ。船井総研の場合、従来40人が入って、40人がやめていく会社であったが、これを60人が入って、20人がやめていく会社にするのだと。

具体的には評価制度、給与、賞与の査定を変えた。

外部に対しては『創客』『創品』、つまり顧客の創造と、新規商品創造である。

船井総研ではリフォーム、リサイクル、エコロジーで新規分野を開拓、これと新規顧客獲得で売上高倍増をめざすのだと。(鉄則44)


タイトルだけでも理解できる

鉄則22 後継者は雰囲気で決まる

鉄則23 モチベーションのアップこそが業績向上のカギである

鉄則25 社員が話したくなる環境をつくれ ー 社長さん、社員と食事に行っていますか?

鉄則26 すべての不満を聞くことが正解ではない ー 民主的な企業は崩壊する

鉄則27 怒りそうになったら、『一杯の水』と心得よ

小山さんのお父さんは怒りっぽい人だったが、怒るのをやめるために怒りそうになった瞬間、「水を一杯くれ」と言って、それを飲んでから話すようにしていたと。

鉄則28 ほめるは、やる気アップの特効薬だ

鉄則29 女性社員はアナログ対応で使いこなせ ー 女性は3日に1回ほめよ

鉄則31 やめていく社員の影響力を軽視するな

鉄則45 最終的に目指すところを確認せよ

鉄則46 社長は全社員と夢を共有せよ

小山さんが考える社員の夢とは「自分の生活が安定して、所得が伸びること」だと。

小山さんの近著の『へえ、儲かる会社はこんなことをやっているんだ!』もスッと読めてインパクトがあり、参考になる本だったが、この本も2002年の本とは思えない新鮮なものである。一読の価値がある。


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2005年11月03日

起業バカ 起業カモと言うべきか? 自らの起業失敗談もあり参考になる

起業バカ


アメリカのペーパーブックスを思わせるような装丁の光文社のペーパーブックスシリーズのベストセラー。著者はフリーライターの渡辺仁さんである。

中高年世代では退職金を元手に起業したり、フランチャイズチェーンのオーナーになったりすることを考えている人も多いと思う。

筆者もその予備軍の様なものであるが、そういった人が一読すべき本である。

『起業バカ』というタイトルなので、失敗しても繰り返し起業する不屈の起業家かと思ったが、生半可な気持ちで起業する世間知らずの『起業バカnaive entrepreneurs(ナイーブ・アントレプルナー)』、いわば『デモしか起業家』をカモsuckerにしている誘いの手口を紹介する。

光文社ペーパーバックスの特色なのであろうか、ちょっとした言葉に英語訳がついている。目障りに思う人も多いかもしれないが、英語はこなれており、英訳の質も高く、渡辺さんはかなりの英語力を持っていることがわかる。

たとえば「脱サラやリストラで起業start-upした人は、年間18万人。1年以内の起業を目指して準備中が約60〜70万人。起業希望者は130万人いるという。これを後押しbackingするように小泉首相も3年間で起業を36万件のペースに引き上げるなどと宣言した。」といったぐあいである。


落とし穴booby trap

問題の根源はリストラされた中高年起業家は世間知らずのシロウトlaymanが多く、団塊世代baby-boomer680万人の退職金を狙って様々な落とし穴booby trapが仕掛けられているのだと。

時限立法で認められている資本金1円起業でも、実は登録免許税などは減免されていないので、登録税だけで15万円掛かるとか、政府の支援策も中途半端なのだ。

ちなみに渡辺さんの推定では起業で成功become successfulできたのは、1500人に1人であると。


渡辺さん自身の起業

渡辺さんは1951年生まれというから、団塊の世代の少し下だ。

渡辺さんはライターとしてニュービジネスやベンチャービジネスの成功例、失敗例など2,500社ほど取材した経験があり、サラリーマン編集長時代にビジネス誌を立ち上げ、成功していた。

50歳を過ぎて、自分自身でベンチャー支援と、ニュービジネス支援の "Incubation" という100ページほどの雑誌を2002年4月から隔月刊で2004年2月の7号まで発行したが、資金不足で7号で廃刊となった。

フリーランスのライター、カメラマンら12〜3人を抱え、広告代理店を3社、コストは600〜700万円かけて2万部刷り、実売1万2千部、広告600万円で採算がとれる予定だった。

以前月に2万部売った実績があるので、たかをくくっていたところ、広告も売れず、自分は編集と営業の両方をやらざるを得なかったので、結局あぶはち取らずとなった。

なんとか会社を建て直そうとしていたときに、不動産を紹介して欲しいとのおいしそうなアプローチがあり、わらを持つかむ思いで話にのったが見事にだまされてしまい、結局資金ショートで倒産した。


起業バカの3大失敗原因

この本では22の実例が取り上げられている。起業バカが失敗する原因を整理すると次の3つであると:

1.『会社病』あるいは『会社バカ』 

世間の動きにうとく、常識からずれている。

実例7 テレビ電話によるパソコン教育システム

会社では成功した発明者だったが、独立して中高年ビジネスマン向けに自宅でのパソコン学習システムの事業を始めた。しかし中高年サラリーマンは自己投資しないことに気づかず、あえなく倒産。

実例5 オーダーメード・スーツのネット販売

オーダーメード・スーツが2,3万円台でできると新聞、ファッション誌で取り上げられたニュービジネスだったが、ひとりでやっていたため、デザイナーや縫製工場が確保できておらず、注文をこなせずあえなく失敗した。

『思いこみ』illusion、『自信過剰』overconfidence、『経験不足』lack of experienceの3パターンが、サラリーマン時代の体験をそのままビジネスに持ち込んで失敗する『起業バカ』の典型例であると。


2.『新聞病』あるいは『活字バカ』

新聞・雑誌を信じ込んでしまう。

実例1 仏壇・仏具洗浄ビジネスのフランチャイズ

新聞記事で見つけ、大阪の本部でトレーニングして関東で起業した。全国寺院名鑑をたよりに片っ端から寺院に売り込んだが、閉鎖社会のせいで仕事がとれなかった。


3.フランチャイズなどに多い『依存病』あるいは『神頼みバカ』

フランチャイズ本部におんぶにだっことなり、思考停止して他人に依存してしまう。

弁当店のフランチャイズオーナーとなった人の平均年齢は約50歳だという。

開業資金は宅配ピザで1500万円、弁当店2,000万円、コンビニで3,000万円程度かかり、これに加えて運転資金が必要だが、ちょうど退職金をつぎ込んで商売を始めるには手が届くサイズである。

しかし他人任せの脱サラパターンは失敗確率が高く、危険きわまりないと。

事例14 本部の縛りが強すぎたコンビニ

一部上場企業とはいいながら、いい加減な出店調査に基づく出店をし、立地に失敗。売上が伸びず、本部からは指導と称して商品を押しつけられる。

もちろんすべてのコンビニチェーンがそうではないが、コンビニは大企業が個人を食い物にするビジネスであると失敗した経験者は語っている。

本部への上納金は月100万円で、オーナーの月給は後から計算すると8万円だったと!

POSデータも届くのは10日後で、売れ筋予測もなにもなかったと。

この人は過度の疲労とストレスが原因で心療内科にかかり、店じまい。

実例6 英語のホーム・ティーチャー

商圏も限定せず、指導もない悪徳フランチャイズに引っかかった離婚主婦。結局本部は教材や文具の販売がねらいではなかったのかと。

フランチャイズの場合は、商取引なので、消費者保護がなく、英語教材の通販などで認められるクーリング期間もない。本部の言いなりに契約してしまっても文句は言えないのである。

こういった悪徳商法の広告は「1年で出資金が倍に!」とか言う甘い言葉で朝日、読売、日経などの大新聞にも載っているので、広告を鵜呑みにしてだまされるケースが多い。

広告にだまされ、悪徳フランチャイズやマルチ商法に引っかかったのだ。

実例15 調剤薬局、
実例16 パソコン学習塾
実例17 弁当店の委託経営

死屍累々である。


話題の人楽天副社長の國重さんもちょっと登場


実例19 ハイパーネット 社長失格 板倉雄一郎氏

社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由


筆者も数年前にこの本を読んだ。元ハイパーネット社長板倉雄一郎さんも載っている。そういえば今や時の人である楽天副社長の國重さんは、住友銀行丸の内支店長だったときにハイパーネットにいち早く融資したのだ。

國重さんの『いくら必要なんだ?』というような会話で、2億5000万円の融資が住友銀行からなされ、他行も追随した。1996年には銀行、リース会社から総額30億円を調達し、板倉さんはビルゲイツとも面談する、この頃がピークで、売上が伸び悩むと住友銀行はいち早く貸しはがしを始め、結局ハイパーネットは倒産する。


名経営者でも失敗する ましてやシロウトをや!

名経営者が、なぜ失敗するのか?


渡辺さんは、Forbes(?)で今年米国のビジネススクールNo. 1に選ばれたダートマス大学の経営学の権威フィンケルシュタイン教授の『名経営者が、なぜ失敗するのか?』という本を引用して、名経営者でも見込み違い、カン違いによる失敗がいかに多いかを説く。

この本も一読の価値がありそうだ。読んだらあらすじをまたご紹介する。


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