2006年02月27日

ドンキホーテ 闘魂経営 ドン・キホーテ安田隆夫会長の自伝的経営論 

2006年2月27日追記:


ドン・キホーテによるオリジン東秀買収が思わぬ形で決着した。

ドン・キホーテの安田隆夫会長とイオンの岡田元也社長がトップ会談を行い、ドン・キホーテが買い集めた約46%のオリジン東秀株を、いわゆるホワイトナイトとしてTOBを掛けていたイオンに売ることを決定した。

多くの人が驚いた決着ではなかったかと思う。

筆者も驚いたが、このブログでドン・キホーテの安田隆夫会長が目指している標語を紹介していたので、なるほどと思う部分もあった。

それは下記で紹介している『粗にして野だが卑ではない』という言葉だ。

オリジン東秀の全店舗に、ドン・キホーテによる乗っ取り反対というビラが貼られる状態となったので、このままではオリジン東秀の従業員を敵に回してしまうことになり、安田会長が目指している『主権在現』が、とても実現できないと判断したのだろう。

そのまま強引に金任せで買収していては、乗っ取り屋=『卑』となってしまうおそれがあった。

山頂寸前で名誉ある撤退を選んだ安田会長の『美学』を理解するには、この『粗にして野だが卑ではない』という言葉が最も適当ではないか。

そんなことを感じさせられる展開だった。



2006年2月16日追記:


『ドン・キホーテ あらすじ』で検索して、このブログを訪問される人が急増している。オリジン東秀の買収がクライマックスに近づいているので、ドンキホーテの安田さんの考え方を知るために、この記事を再掲する。

参考になれば幸甚です。



ドン・キホーテ 闘魂経営


圧縮陳列、深夜営業で人気のディスカウントストアチェーンドン・キホーテの創業者安田隆夫氏の自伝的経営論。

安田さんは昨年ドン・キホーテの社長を後進に譲ったので、かなり年輩かと思っていたが、まだ56歳だ。

ドン・キホーテというと業界の異端児といった型破りのイメージが強く、タイトルも『闘魂経営』とか、『ケンカ商法』とか付いてはいるが、やはり消費者相手の商売の基本は変わらないのだと実感でき、面白く読める好著である。


オリジン東秀へのTOB

安田さんは昨年ドン・キホーテの社長を退きCEOとしてドン・キホーテグループの業容拡大に励んでおり、最近ピンクの看板のオリジン弁当のオリジン東秀にTOB(敵対的買収)をかけたことで一躍有名になった。(毎日インタラクティブの記事参照

筆者はオリジン東秀の唐揚げチキンが好きで、時々買っている。ドン・キホーテの様に権限委譲が実現し、それぞれの店が定番メニューのほかに、自前の弁当メニューを出したら、さらに繁盛するのではないかと思っているが、はたしてどう展開するのか?

オリジン東秀のTOBはジャスコがホワイトナイトとして登場し、ドン・キホーテの買収提案金額を上回る友好的買収条件を提示したので、今後の安田さんの対応が注目される。


セブンイレブンの鈴木敏文さんとの共通点

この本を読んでいて驚くほどセブンイレブンの鈴木敏文さんとの共通点があることを感じた。安田さんは「小売業にとって最良の教師はお客様であり、現場は最高の教室だと確信している」と言う。

このブログでも鈴木敏文さんの『本当のようなウソを見抜く』とか、『商売の原点』、『商売の創造』を紹介しているので、ご興味のある方は見て頂きたい。

表現の違いこそあれ、消費者相手の商売の原点は同じなのだ。


カーネギーとの共通点

鈴木さんは「お客の立場に立って考える」と言い、安田さんは「自分を主語にするのではなく、相手を主語にして考えてみる。そうすると目からウロコが落ちて、今まで見えなかったものが、鮮明に浮かび上がってくる」と言っている。

安田さんは相手の立場に立って考えるということの説明のために、「主語は『自分』でなく『相手』に置け」という一つの章まで書いている。

これはカーネギーの『人を動かす』基本だ。

このブログでカーネギーに影響された有名ビジネスマンの藤田晋さん角川秀樹さん新将命さんなどを紹介したが、相手の立場に立つというのはまさにカーネギーの教えそのものである。


十字架を背負うが挑戦はやめない

2004年末に放火でドン・キホーテの従業員3名がなくなった事件が起き、茫然自失していた時に、ご遺族に「社長さん、うなだれてないで頑張ってください。悪いのは放火犯です。ドン・キホーテがこれでダメになってしまったら、それこそ兄は犬死にじゃないですか」と言われた。

十字架は背負うが、挑戦は辞めないと決意したのだと。


安田隆夫さんとドン・キホーテの軌跡

安田さんは1949年岐阜県大垣市に高校教師の家庭に生まれた。やんちゃな問題児でガキ大将だった。田舎から脱出するため慶応大学法学部に進学したが、金持ちの師弟揃いの同級生に強烈な劣等感と挫折感を抱く。

サラリーマンになったら、永久にこいつらには勝てないだろう。」と思い、みずから起業して経営者になるしかないと決意する。

大学にはほとんど行かず、ボクシングジムに通い詰めたが、子供の時のケガが原因で片目の視力が低下しており、プロテストが受けられず2度目の挫折を味わう。

卒業し小さな不動産会社に就職したが、2年目で倒産。それ以降長く無頼の時期を過ごす。

新聞勧誘員のアルバイトなどをしながら、麻雀プロとして麻雀漬けの日々を過ごし、100戦すれば95勝以上はかたいというほど腕を上げたが、これではいけないと一念発起して、29歳の時に『泥棒市場』という小さな雑貨店を東京杉並に開店。

商売もやったことがなく、知識ゼロ、経験ゼロ、人脈ゼロでスタートし、質流れ品、サンプル品とか廃番品とかを激安価格で売り、苦肉の策として深夜営業までする『流通業の禁じ手のデパート』の様なものだったが、これで現在のドン・キホーテの原型ができた。

次にバッタ品の問屋を始めるが、最初の経験を生かすべく小売業に再参入し、府中にドン・キホーテ1号店を開店する。


ドン・キホーテの初期の苦闘

泥棒市場の経験を元に、流通業界という巨大な風車を相手に、たとえ孤軍奮闘でも突進するということで、ドン・キホーテという名前を付けたが、立ち上がり当初の数年は赤字で大苦戦する。

泥棒市場で成功した圧縮陳列を使って、『買い物の面白さ』が味わえる買い場創りを従業員に伝授しようとするが、どうしても伝わらない。

今思えば、長嶋監督が高校球児相手に「ボールをキッとにらみつけて、ググッと引き寄せてから、こうしてビュンと振り抜くんだ。どうしてできないの?」と指導していた様なものだったと

あきらめて、もうどうにでもなれという気持ちで、教えるのではなく、丸投げして自分ですべてやらせることにしたことが、ドン・キホーテ経営の要の権限委譲のはじまりだ。しかし、これも苦肉の策だった。

最初の4年間は失敗と苦労の連続だったが、ドン・キホーテを今日の成功へと導いた要素がすべて凝縮されていると。


いくつか印象に残った点を紹介しておこう。

成功を掴むのは「勝ち」に敏感で貪欲な人

ビジネスは野球やサッカーのように1点差でも勝てばいいという戦いではない。どこまでも点の総量を競い合うエンドレスゲームだ。

自力で掴んだ幸運なら、その上昇気流に乗って強気にアクセルを踏み続け、いけるところまで一気に駆け上がらなければならない。

幸運時は幸運を120%使い切るつもりで、攻めに攻めて大量得点すべきで、もうこれくらいでいいやと守備固めに回ってはいけない。

本当に守らなければならない時の兵糧をせっせと稼いでおくべきなのである。

セブンイレブンの鈴木さんも欠品、機会損失を厳しく戒め(いましめ)ており、IT業界のCAキャピタルの西條さんのブログでも機会損失について語られていたが、安田さんも機会損失を強く戒める。

勝ちに敏感かつ貪欲な人がビジネスでは大きな成功を収めるのだ


まず『はらわた』力を磨け

ドン・キホーテの成功の理由は「ひたすらお客様のニーズと時代変化という現実に、必死になって食らいついてきただけ」だと。

必要なのは『はらわた』である。

『はらわた』とはもがき苦しむ力であり、紆余曲折しながらも最後に這い上がろうとする一念であると。

勝つまで辞めない。これが『究極の必勝法』である。

ガッツあるいは信念と呼ぶべきか?

『はらわた』とは泥臭い言い方であるが、ベンチャー企業はただでさえ数%しか成功しないのだから、絶対できると信じ、勝つまで辞めないという強い信念が不可欠だ。


なぜ「第2のドン・キホーテ」が出ないのか?

深夜営業、スポット仕入れ、圧縮陳列などドン・キホーテの売り方はなにからなにまで常識はずれだが、極め付きは大胆な権限委譲のマネージメントそのものであると。

ドン・キホーテでは入社数ヶ月から1年の新入社員にも仕入れから値付け、陳列に至るすべての権限を与えており、店長ですら口を挟めない。

任せる金額も半端ではない。月2千万円程度をすべて買い切りで仕入れるのだ。

人は権限を与えられると、それに比例して責任感も思考力も判断力も自己管理能力も増大する。どうすれば売れるのか必死で考えるのだ。

様々な失敗と試行錯誤を繰り返すことによって、頭脳が活性化され、知恵が生まれ、さらに感性が磨かれて、お客様の心の動きを察知する洞察力が生まれるのだと。

ドン・キホーテは社員ではなく、商人を育てるのだ。

ドン・キホーテは本給一本の半年俸制で、自己申告した目標達成度の自己評価と、直属上司による評価によって本給が決まる。業績と待遇が完全リンクする賃金体系を取っているのだ。

従業員1,700人、パート・アルバイトを入れれば5,000人の大企業でありながら、個人商店の集合体が会社となっている。その個人が自ら成長し、他人と競い合いながら成長することで、企業としてのドン・キホーテの発展につながっていくのだ。


粗にして野だが卑ではない

昭和38年に78歳でヤング・ソルジャーと自称して国鉄総裁となった財界の重鎮石田礼助氏を描いた城山三郎氏の小説で有名な言葉だが、この本でこの言葉が出てくるとは思わなかった。


粗にして野だが卑ではない―石田礼助の生涯
粗にして野だが卑ではない

安田さんはドン・キホーテが株式公開する前に会社のルールとして『御法度五箇条』を決めた。それは1,公私混同の禁止、2.役得の禁止、3.不作為の禁止、4.情実の禁止、5.中傷の禁止から成っている。

店頭はあやしげで猥雑だが、経営はクリーンで行こうとして、この五箇条を決めたのだ。めざすは『粗にして野だが卑ではない』であると。

この他にも参考になる話が満載である。いくつかタイトルだけ紹介すると:

小売業=大衆演劇論

理論や理屈でなく感性を磨け

ドンキ流EQ(Emotional Quotient=心の知能指数)経営とは?

流通心理学を確立せよ!

仕事より趣味が楽しくなったら即リタイアすべし

勝つまでやめない!


異色の経営者が本音で語っているが、決して奇をてらった本ではない。面白く、参考になる本である。一読をおすすめする。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー


  
Posted by yaori at 13:02Comments(1)TrackBack(0)

2006年02月26日

震度0(ゼロ) 一風変わった警察内部小説

震度0


今日まで簿記(恥ずかしながら3級)の試験であまり本を読めなかったので、読書のペースが落ちている。

言い訳になってしまうが、前回11月の試験は甘くみて直前の詰め込み勉強だけで臨んだので、準備不足で落ちてしまったため、今回はそれなりに準備をしたつもりだったが、結局直前3週間程度で集中的に勉強した形となった。

それにしても簿記の試験は、意地が悪いというか、かなりトリッキーな出題が多く、落とすための試験の様に思える。

ともかく今日で終了したので3月中旬まで結果を待つだけだ。

簿記勉強のかたわら、読んだのがこれ。400ページあまりの作品だが、一気に読んでしまった。

横山秀夫氏の小説は前作の『半落ち』を読んだのが初めてだったが、前作も良かったが、この震度0も面白い。


半落ち


筆者はあまり小説は読まないのだが、半落ちといい、今回の震度0といい、ベストセラーとなった作品はたしかに面白い。

筆者には警察で働いている先輩、後輩が多くいるので、プライベートで彼らから話を聞く機会が結構ある。

この小説の様に警察内での不祥事、あるいは事件を隠すという隠蔽体質は、昔はともかく、現在はほとんどなくなっているのではないかと思う。

むしろ最近は内部通報者がチクって、事件あるいは隠蔽が暴露されるというケースが結構あるので、隠蔽のリスクはむしろ負わない方が良いというのが現実なのかもしれない。

横山秀夫さんは元々上毛新聞の記者だったから、記者時代の経験を元にして警察の内情を書いているのだろう。リアルで思わず引きつけられる。

筆者のポリシーとして小説については詳しいあらすじは記さないが、さすがベストセラーと思わせる出来映えだった。おすすめです。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー




  
Posted by yaori at 14:10Comments(0)TrackBack(0)

2006年02月20日

ハリアーハイブリッド 日本ならポルシェカイエンやBMW X5よりお買い得?

ハリアーハイブリッド


筆者は合計9年間米国に駐在していたのだが、米国にいた時からハリアーは買いたい車だった。

だから日本に帰ってきてしばらくして、初代ハリアーを中古で買い、ハリアーハイブリッドが出るまで待って、昨年ハリアーハイブリッドを予約して購入した

米国ではハリアーはトヨタの高級車のレクサス系列で販売されており、人気が高いこともあり、日本よりも断然高く販売されている。

参考までに米国のハリアーハイブリッド(米国ではレクサスRXハイブリッド)の参考価格を紹介するが、4WDモデルではUS$46,755(118円=US$1で邦貨換算すると550万円)となっている。

カーステレオ、エアコン等のオプションがほとんど付いていないアメ車の価格設定と違って、日本車の場合ほとんどのオプションがメーカーオプションであらかじめ組み込まれている。

だから上記に買い足すのはナビとかプレミアムオーディオとかだが、ナビを加えて、通常のいわゆる諸費用(税金は別)を加えると大体$51,000(600万円程度)となる。

これに州によって異なるセールスタックスが5-10%前後掛かるので、日本円では630ー660万円程度になる。

日本でもアメリカでもハイブリッド車はすべて予約して何ヶ月か待たなければならず、値引きもほとんどないので、ハリアーハイブリッドの場合、アメリカでは日本の5割以上高く販売されていることになる。

比較のためにアメリカのポルシェCAYENNEBMWのX5 3.0iを紹介しておくが、価格はUS$42,000程度で、いずれもハリアーハイブリッドよりだいぶ安いことがわかると思う。

日本の方が安く買えるといっても、高い車なので、そう簡単に買うわけにはいかないが、ハリアーハイブリッドを買おうかどうしようか迷っている人は、上記のような国際価格比較もお役に立つと思う。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 13:00Comments(0)TrackBack(0)

2006年02月14日

這い上がれない未来 9割が下流化する?

這い上がれない未来 Never-Climbing Society


三浦展(あつし)氏の『下流社会』がベストセラーになっているが、中流の下流転落、格差拡大を描いたいくつかの本の中のひとつだ。

著者の藤井厳喜(げんき)さんは、8年間のアメリカ留学を経て、ハーバード大学国際問題研究所研究員などの職を経験した後、帰国して現在は近未来予測のケンブリッジ・フォーキャスト・グループ・オブ・ジャパン代表取締役。

光文社のペーパーバックスシリーズでも「『国家破産』以後の世界」とか「新円切替」とかの著書がある。

裏表紙に次の質問がある:

次の会話をしている母と娘のいる家庭は、どの階級に属するだろうか?

娘: ママ、私のヴィトンのバッグ見なかった?
母: シャネルのなら、タンスの中にあったわよ
娘: シャネルはこの前使ったわ。だから、今日はヴィトンのバッグにしたいの

この家庭は下流Lowerである。上流なら、けっしてこんな会話はしないからだと。

なぜだかわからないので、つい中身を読んでしまう。

上流の娘は自分のバッグをわざわざブランド名をつけて言わない。数あるバッグのなかの一つにすぎないからで、色や形で区別するだろう。上流はブランド以外のバッグを持っていないので、ブランドにはこだわらないからだと。

三浦展氏の『下流社会』でも下流度診断テストがあるが、藤井さんの独自テストが冒頭にある。いくつか抜き出してみると次の通りだ。すべて○×で答えてくれと:

1.2005年9月の総選挙で小泉自民党に投票した人

3.英語は苦手だ

4.郵便貯金をしている

5.できれば『週末起業』をしてみたいと思っている

6.サッカーや野球にひいきのチームがある

7.仕事以外でパソコンやケータイを頻繁に使っている

8.『成功するための…』というたぐいのハウツー本をよく読む

9.『オンリーワン』とか『個性的』という言葉が好きだ

11.結婚はふたりに愛があることが第一の条件である

12.こだわりのブランドがある

15.日本車より外車のほうが好きだ

17.一生独身でいる生き方もあっていいと思う

18.教育にお金をかけるのはムダだと考えている

19.ホリエモンや村上世彰氏の様なビジネスのやり方には賛成できない

20.成果主義は日本人には合わない


以上筆者の主観で15のかなり○と答えそうな質問だけ抜き出したが、全部で20の質問に対し、○が5以下なら、あなたは中流にとどまれる可能性があると。

6ー10ならかなり危なく、11以上なら下流転落間違いなしだと。

まずは冒頭のこのテストをやってみてからこの本を読むのが良いかもしれない。


国家破産、格差社会の拡大、日本やアメリカの『階級社会』、アメリカの『学歴階級社会』、世界規模での『下流転落』など、様々なテーマについて藤井さんの広範な知識に基づいて参考になる議論がなされている。

特にアメリカの『学歴階級社会』の章は30ページほどだが、留学が8年という藤井さんの経験に基づいたものである。米国駐在経験が9年の筆者でも大変参考になった。

タイトルは重いが、サッと読める本でした。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー





  
Posted by yaori at 12:36Comments(0)TrackBack(0)

2006年02月12日

博士の愛した数式 珠玉の作品とはこういうもののことを言うのだろう

博士の愛した数式


筆者はほとんど小説は読まず、ビジネス書が中心だが、筆者の家内は小説ばかり読んでいる。

読んでいる本も週に3−4冊のペースで、筆者とほぼ同じペースだ。

その家内が読んでいた小説を読んでみた。

さすがに100万部を売り、映画にもなった作品だけある。

交通事故の後遺症で80分しか記憶が持たない元大学教授の数学者、そこに派遣された家政婦、その10歳の息子他が繰り広げる人生ドラマ。

博士との会話は常に数字や数式が出てきて、美しい数字、数式も出てくる。

筆者は大学受験までは猛烈に数学を勉強したが、大学に入学してからは、教養学部でも数学を取らなかったので、数学とは全く縁がなかった。

ひさびさに数学が出てくる本を読んだが、数学の奥深い、いわば哲学的な楽しみが感じられて、すがすがしい読後感だった。

数式が見事に小道具になっている。

21世紀になってやっと証明されたフェルマーの最終定理とか、オイラーの公式とかが妙に魅力的だ。

オイラーの公式とは"eiπ + 1 = 0"(eのi, π剰足す1はゼロ)というもので、物語の重要な部分を占めているが、『人類の至宝』とも呼ばれているものだそうだ。

野球やベースボールカードの話とかもストーリーに味わいを与えている。

一気に読めて、心があらわれるストーリーだ。たぶんこういう作品を珠玉の作品と呼ぶのだと思う。

間違いなくおすすめです。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー


  
Posted by yaori at 02:55Comments(1)TrackBack(0)

2006年02月11日

高学歴ノーリターン 高学歴者でも格差拡大のギャンブル資本主義の時代

高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay


厚生労働省キャリア官僚から兵庫県立大学助教授に転出した中野雅至(まさし)さんの日本の学歴価値の再考察。

中野さんは同志社大学出身で一旦、大和郡山市役所に就職するが、国家公務員上級職試験に合格し、旧労働省に入省。労働省、厚生省の様々なポジションをキャリア官僚として経験し、ミシガン大学へのMBA留学も経験する。

投稿論文で研究者としての実績を積み重ね、公募で兵庫県立大学に転職する。

一見留学経験もあるバリバリのキャリア官僚に見えるが、東大中心の官僚世界で同志社大学卒の中野氏は同志社卒の後輩もなく、いわばアウトサイダーだと感じていた様だ。

東大社会ともいえる中央官庁勤務と米国でのMBA留学経験をふまえて、東大を頂点とする日本のピラミッド型学歴社会が、運と人脈だよりの高学歴ノーリターンの社会になりつつあることを描いている。


『お役所の掟』の再来?

旧厚生省と言えば『お役所の掟』などの役所の実態暴露シリーズがベストセラーとなり、結局厚生省を懲戒免職となった故・宮本政於(まさお)さんを思い出す。


お役所の掟―ぶっとび霞が関事情


『お役所の掟』ほどではないが、キャリア官僚の長時間勤務の実態が描かれていて、読み物としても面白い。

こんなタイトルである:

主導したくてしているわけじゃない!事務局地獄

コピー機が火を噴く ペーパーコピー地獄

パワーポイントの普及とともに広がった 矢印地獄

知性は全く必要なし (ワープロ)代打ち稼業地獄

意外に平気でやってしまう ゴマすり地獄

振り返ればむなしさだけが残る 多能工化地獄

鬱病・自殺地獄

労務管理という概念は一切なし マネジメント無視地獄(部下をつぶして出世する)


高学歴者の3層化

中野さんは日本の高学歴者は次の三層化していると。

1.リスクを取る勇気やリーダーシップのある「カリスマ性のある高学歴者」…5%

2.親が金持ちの「ボンボン高学歴者」…20%

3.下・中間層出身で目立った取り柄のない「さえない高学歴者」…75%

社会全体で格差が拡大していることは、いろいろな人が指摘するところだが、高学歴のサラリーマンも収入は増えず税負担は増えるばかりで、大半がもはや勝ち組とはいえなくなっていると。


ギャンブル資本主義社会の到来

ロバート・ライシュは『勝利の代償』でこれからは変人(アーティスト、発明者、デザイナー、エンジニアなど)と精神分析家(営業担当者、需要開拓者、流行観察者など)の、他の人々がなにを欲しているのか、何を見たいのか、市場の機会を生み出せる人が勝者となる時代であると語っている。


勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来


中野さんは、『一流大学を卒業したヤツより、カネを稼ぐヤツが偉い』という考えが優位になってきており、ピラミッド型学歴社会からギャンブル資本主義社会へ変化すると語る。

運と人脈がすべてを決すると。

例えば著者の中野さんはこうやって本を書いているが、中には「この程度であれば俺でも書ける」と思っている読者も必ずいるだろうと。自分もそうであったと。

しかし、しょせんそんなことはぼやきに過ぎず、重要なことは「出版の機会をうまく捕まえたかどうか」であると。

人脈やコネを利用して、市場やマスコミに売り込んで、実力を認めさせることができるかどうかが重要なのだ。つまりすべて市場化能力のなせるワザなのだと。

自分の実力や能力を売りこむ際に最も重要なものは人脈で、ギャンブル資本主義社会で頼れるものは人脈であると。


大学の価値は誰と出会ったかである

中野さんは大学教育の本当の価値は、なにを学んだかではなく、誰と出会ったかであると説く。

たとえば米国の大学院に留学する場合、選考書類は1.TOEFLのスコア、2.大学時代の成績、3.エッセー(自己アピール)、4.そして推薦状だ。

ビッグショットの推薦状があれば、おおかたの大学は通る。米国の有名大学は私立大学が中心で、コネクションが重要なのだ。

コネが重要な要素となれば、最も得するのはどこか。小泉首相の出身校ボンボン大学の慶応大学であり、最も多くの社長を輩出する日本大学だと。

戦前の金持ち社会と同じ「慶応ボンと東大番頭時代」が既に訪れているのだと。


新・学歴社会

この様に高学歴が必ずしもハイリターンを保証しない時代になってきてはいるが、こつこつと努力することの重要性、夢を持たせることの重要性を保つためには、学歴はわかりやすい羅針盤であると。

米国でもトップのMBAプログラムの卒業生の初任給はスタンフォードで1300万円と高く、あきらかに高学歴ハイリターンの報酬となっている。

理想的な学歴社会とは学歴アップデート社会であり、東大>京大>一橋>それ以外といった順位付けはやめ、米国の様にトップ20は常に変動するというような形が良いと提言している。

最後に2004年度の高額納税者番付が付いているので、これもスポニチの記事を紹介しておこう。


筆者は某大学某学部出身だが、出身運動部のOB会などに行くと、最近の卒業生で定職に就いていない人の割合が増えてきた様な気がする。

筆者の学生時代でも留年を繰り返して大学にいつまでも残っていた人はいたが、それでも司法試験浪人とか一応ちゃんと目的はあった人が多かったと思う。

近々あらすじを紹介する大前研一氏の『私はこうして発想する』で、大前氏は現在の日本の教育では21世紀に必要とされる人間が生まれてこないと語っている。

筆者も国際的ビジネスマンに要求・評価される教育水準が、マスプロ教育中心の大学では不足で、専門性の高い大学院卒まで上がってきたのが実体ではないかと思っているが、現象面で中野さんが『高学歴ノーリターン』と呼ぶ事態も起こっているような気がする。

面白く読め、そんなことを考えさせられる本でした。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー



  
Posted by yaori at 00:14Comments(0)TrackBack(0)

2006年02月09日

人を動かす カーネギーの不朽の名作

2006年2月9日追記:

過去1年ブログを運営して、このブログで取り上げる有名人の多くがカーネギーの影響を受けていることを実感している。

サイバーエージェントの渋谷ではたらく社長藤田晋さん、大作『男たちの大和/YAMATO』を出した復活したカリスマ角川秀樹さん、ビジネスコンサルタントの新将命さんなどがカーネギーから影響を受けたことを語っている。

自分自身もまたカーネギーの『人を動かす』のオーディオブックを聞き直しているので(これで何回目かわからない。たぶん100回以上は聞いている)、自分の反省も含めて再掲する。

是非お読み下さい。



カーネギーと聞いて何を思い出しますか?鉄鋼王カーネギー(アンドリュー)?カーネギーホールのカーネギー(やはり同じアンドリュー)?私もそう思いました。

今は亡き友人篠塚一太君から『カーネギーの本を読んだらいいよ』と言われて、そのままにしていましたが、その篠塚君がバングラディシュの飛行機事故で亡くなり、彼の言葉を思い出してこの本を手に取りました。

こちらのカーネギーはデール・カーネギーで鉄鋼王とは全く別人で親戚でもありません。しかしながら鉄鋼王に負けず劣らず世界的に有名な人です。

10年ほど前にトルコと仕事をすることがあり、トルコ人のバイヤーと話したときに、彼もこの本をトルコ語で読んだと言っていたのにはびっくりしました。

世界中で1500万部も売れているそうで、まさに不朽の名著です。

私もはじめは日本語で読みましたが、原本でもわかりやすい英語で、また録音テープもおすすめです。

最近後輩にこの本を贈ることがあり、自分でもまた英語のテープを聴き直していますが、本当に記憶に残るいい話をちりばめており、つい感動で涙がにじみます。

つごう100回くらい聞いて、今はアナログーデジタル転換ソフトを買ってきてテープをiPodにダビングして繰り返し繰り返し聞いていますが、いつ聞いても新しい発見と感動があります。

人を動かす 新装版
How to Win Friends and Influence People



参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー


  
Posted by yaori at 12:13Comments(1)TrackBack(0)

2006年02月08日

その時自衛隊は戦えるか 自衛隊の実力を知ろう!

そのとき自衛隊は戦えるか


自衛隊につき数々の記事を書いている井上和彦さんの自衛隊の分析。

ちょうど防衛施設庁を舞台とした官製談合に捜査のメスが入っている。

官僚OBに就職口を斡旋しようとして、官製談合を組織的にやっていた防衛施設庁は糾弾されるべきだが、それゆえに自衛隊全体を非難することにはならないだろう。

ゴーマニズムの小林よしのり氏の推薦文が帯に載っているが、「自衛隊が生まれて50年、わしらはもっと真実を知らなきゃいかん」と。

この本はあたらしい歴史教科書で独自路線を歩む扶桑社が出版しており、著者の井上さんは小学館のSAPIOや産経新聞社の『正論』などで記事を書いている。

右寄りの本ではあるが、逆に自衛隊の真実の姿を広く知らしめる動きが、扶桑社、SAPIO、正論、産経新聞などに限られてしまうのは、問題だと思う。

たしかに日本国民は自衛隊をもっと知るべきだと思う。そんなことを考えさせられる本である。


北朝鮮こそ自衛隊生みの親

実は北朝鮮こそ自衛隊の生みの親だ。1950年朝鮮戦争が始まり、北朝鮮が韓国に向けて侵攻を開始したときに、日本政府に対してGHQはいわゆるマッカーサー書簡を送り、警察予備隊の創設を指令した。

海上自衛隊は旧海軍の伝統を継承している。ラッパも海上自衛隊は海軍と同じだ。

これに対し陸上自衛隊は当初旧軍の伝統を排したので、ラッパも陸軍のものを踏襲してない。

空軍はもともと存在していなかったことから、旧陸軍と旧海軍の名パイロット達が集結したのだ。


自衛隊の戦力

自衛隊の国防費は世界第3位で、アメリカ、ロシアに次ぐ規模。第4位は中国だ。但しGNP比では主要国が2−3%であるのに対し、日本の自衛隊は1.0%だ。

防衛白書の内容がウェブで公開されているので、ご興味のある方は見て頂きたい。

総兵員数は24万人で、中国の10分の1、世界第22位だが、装備は最新鋭のものばかりだ。

戦車は最新式の90式戦車を中心に、1,020両。AH1S攻撃ヘリは89機。輸送・偵察ヘリは422機。


特筆されるべき対潜水艦戦闘能力

海上自衛隊は護衛艦54隻、潜水艦は16隻。掃海艇31隻、高速ミサイル艇7隻。

対潜戦闘能力は突出としており、有効射程100キロを超えるハプーン空対艦ミサイルを4発、対潜魚雷8発を搭載できるP3Cオライオン哨戒機を99機、SH60J哨戒ヘリを97機も保有している。

これらの哨戒部隊はソナー等の4種類の各種探知機を完備しており、ロシアや中国の潜水艦のスクリュー音をすべて記録している。

中国の潜水艦は浅い大陸棚で活動せざるをえないが、すぐに自衛隊の哨戒機に探知されてしまうだろう。

米軍でもP3C保有機数は全世界で200機ということなので、いかに自衛隊の対潜水艦戦闘能力が突出しているかよくわかる。


航空自衛隊は戦闘機361機だが、世界最強のF15や日米合作のF2、F4J改などで構成されている。輸送機59機、迎撃ミサイルは6個高射群ある。

これら日本の軍用機の写真を集めたKenny's Mechanical Birdsというサイトがあるので、ご興味があれば見ていただきたい。


自衛隊には7つの世界一があると。それらは次の通りだ:

1.実戦経験が育てた掃海技術

2.海上自衛隊のお家芸対潜作戦

3,原子力潜水艦に劣らない通常型潜水艦戦力

4.先端技術の結晶F2戦闘機(炭素繊維の一体成形とアクティブ・フューズド・アレイレーダーなど)

5.米軍を驚愕させた100発100中のハイテク・ミサイル(SSMー1地対艦ミサイルなど)

国産ミサイルをまとめているMISSILEの解説というサイトがあるので、ご興味あればご覧頂きたい。

6.F15戦闘機を世界最強たらしめる一流パイロットと整備員

7.自衛隊員こそ真の世界一(全将兵が高校以上の教育を受けている志願制の自衛隊は世界でも珍しい。しかも入隊競争率は3倍、幹部候補生学校の競争率は43倍)

対潜戦闘能力に優れた自衛隊と空母をはじめ空軍力を中心とした米軍のコンビネーションは補完関係にあり、極東アジア地域の安全保障の要となっているのだ。


これからの自衛隊

これからの自衛隊では2007年度から導入される予定のイージス艦、情報収集衛星、パトリオットミサイルを使ったBMD(弾道ミサイル防衛)が今後の目玉だ。


北朝鮮の工作船対策

新型ミサイル艇はやぶさ級は76mm砲一門と、射程距離100キロ以上の対艦ミサイル4発、12.7mm機銃2丁の装備を持ち、スクリューでなくウォータージェットで最高時速44ノットを出すことができる。


自衛隊もし戦わば

仮想敵国として次が想定され、それぞれのシナリオが紹介されている:


1.中国人民解放軍 

空の戦いで日米連合軍は圧勝、海でも自衛隊の対潜水艦作戦で封じ込め。空と海で圧倒され、中国陸軍は手も足も出ず。

中国は莫大な国防費を注ぎ込んで兵器の近代化に努めているのに、そんな中国にODAを継続する必要があるのかと議論している。

しかし侮れないのは中国の宣伝力であると。中国の対日外交カードが靖国問題であることはたしかだ。


安全保障装置としての靖国神社?

平成14年の産経新聞で評論家の櫻田淳氏が「靖国神社は兵士の志気を支える仕組みの中核に位置づけられるべき装置である」と語っている。

この本には紹介されていないが、櫻田発言には神道の國民新聞から次のように批判を浴びている

「靖国神社の本質は、国事に殉じた畏き英霊に対しての祭祀を行ふことであり、これが『安全保障政策を最も根本のところで支える『装置』』 と看做されるのは、あくまでも結果論としてにしかすぎず、本末転倒の観点と云ふ他はない。」

この論争はともかく、靖国問題を中国が執拗に取り上げるのは当然のことながら、深い戦略があるわけであり、善し悪しはともかく、中国に宣伝機会を常に与えることが適当なのか、次の首相は考え直す必要があるだろう。


2.北朝鮮 

ほとんどが旧式兵器の北朝鮮だが、唯一脅威なのは超旧式のAN2型アントノフ布貼り複葉プロペラ機を多数保有していることだ。

これは12名の人員を空輸することができ、300メートルという短距離で離着陸できる。超低空を飛行するためレーダーに捕捉されにくく、陸続きの国には大変な脅威であるが、日本海を隔ていれば日本にとっては脅威ではない。

村上龍の半島へにもこのアントノフが北朝鮮軍来襲手段として描かれているが、実際にはなんの遮蔽物もない海上ならレーダーに捕捉されてしまい、小説のようなことにはならないのだ。


この本のタイトルは『そのとき自衛隊は戦えるか』だが、これを読むと自衛隊は極東地域の安全を保障する有効な戦力になっていることがよくわかる。

日本は武器を輸出することができないので、全世界に輸出して生産コストを下げることができる米国の兵器に比べ国産兵器は数倍コストがかかるといわれている。

だからといって本当に3倍とかが妥当かという点は防衛施設庁の官製談合の件もあり、今後厳しく追及される必要があるだろう。

国産兵器はコストが高いので、配備数は少ないが、このように米軍との補完を考え、メリハリのきいた最重要戦略に従った配備をしていれば、非常に有効な戦力となることがよくわかる。

いままであまり自衛隊のことを研究したことがなかったが、簡単に読めて自衛隊の実力がわかる良い本であった。


参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー


  
Posted by yaori at 00:07Comments(0)TrackBack(0)