2006年07月31日

巨象も踊る IBMを立て直したガースナー氏の自伝

atamanisutto店主敬白:

仕事で別ブログを立ち上げたので、そちらと二本立てとなり更新に間が空き申し訳ありません。

別ブログは『ポイントマニア副社長のブログ』というタイトルで、趣味と実益を兼ねているポイント・マイルの魅力や、ポイント交換のGポイントのメリットなどをカミングアウトして紹介していますので、ご興味あれば立ち寄ってください。

更新に間が空きましたが、IBMの前会長ルイ・ガースナー氏の『巨象も踊る』のあらすじを紹介します。


巨象も踊る


1993年から2002年までCEOとして巨大な赤字を出して不振に陥っていたIBMを立て直したルイ・ガースナー氏の自伝。

ガースナー氏はIBMのCEOに就任した時に、「いま現在のIBMに最も必要ないもの。それがビジョンだ」と発言して話題となったことでも有名だ。

ガースナー氏のeメールや『eビジネスの将来』と題した講演、IBM再生の財務実績などの付録も含めて460ページにものぼる大作なので、読むのに時間が掛かった。

ガースナー氏はニューヨークのロングアイランド出身、ダートマス大学工学部を卒業してすぐにハーバードビジネススクールに入り、1965年にマッキンゼーに新卒で入社し、すぐに頭角を現し9年で上級パートナーに昇進し、金融グループの責任者として上級指導委員会の委員となった。

しかし経営コンサルティングを一生の仕事にするつもりがないことがはっきりしたので、マッキンゼーに12年居た後、1977年にアメリカン・エクスプレスに旅行関連サービスグループの責任者として入社した。

アメリカン・エクスプレスで様々なポストと経験した後、1989年に投資会社のKKRがLBO(レベレッジド・バイアウト=買収する会社の資産を担保に資金を調達するやりかた)で買収したRJRナビスコのCEOに就任した。


アメリカの為に引き受ける

RJRナビスコで4年経営に携わった後、1993年4月にIBMのCEOに就任する。IBMの株価の推移をリンクでご紹介するが、ガースナー氏が就任した時は13ドルで、退任した2002年の1月は120ドルまで上がった。現在は70−80ドルで推移している。

当時のIBMは世界のメインフレーム市場で圧倒的なシェアーを誇っていたシステム360が前年比60%値下がりするなど、利益を長年もたらしたメインフレーム商品が寿命を迎えていた、

1980年代から急速に拡大しつつあったPC市場では、IBMは先駆者ながら心臓部のソフトをマイクロソフト、CPUをインテルに任せてしまったので結局先駆者利益を得られず、会社として巨額の赤字を計上していた。

ちなみに筆者が米国に初めて駐在した1986年には、オフィスのPCと言えばIBMのPCがメインで、ワードプロセッサー専用機のWang Laboratoriesがまだ広く使われていた時代だった。

日本ではNECの98シリーズが日本語対応の独自システムで圧倒的なシェアを持っていたところに、IBMがDOS-Vでなぐり込みをかけた頃だ。

先も見えず、会社分割は不可避と思われ、危機的状況だった。

こんな状況でCEOを引き受けたのは、CEO選定委員長の「IBMはアメリカの至宝だ。アメリカのために引き受けて欲しい」という殺し文句のためだったと。


ビジョンつくりの代わりになすべき事

ガースナー氏の就任会見で最も有名な言葉は、「いま現在のIBMに最も必要ないもの。それがビジョンだ」というものだ。

ビジョンの代わりに戦略をつくり、実行する。

収益性を回復し、顧客の維持・獲得に勝利する。

クライアント・サーバー分野にさらに力を入れる。

会社分割はせず、業界で唯一の総合的なサービス・プロバイダーとして、総合的ソリューションを提供する。

顧客本位の姿勢を強めるといったことが、ガースナー氏の就任会見で発表された。


ガースナー氏の経営方針

ガースナー氏がCEO就任直前にIBMの経営会議に出席したときに次の経営方針(抜粋)を発表している。就任直前のCEOは簡単に挨拶する程度ですませるものだが、ガースナー氏は45分も熱弁を振るった。

1.手続きによってではなく、原則によって管理する

2.われわれがやるべきことのすべてを決めるのは市場である

3.問題を解決し同僚を助けるために働く人材を求めている。社内政治を弄(ろう)する幹部は解雇する

4.わたしは戦略の作成に全力を尽くす。それを実行するのは経営幹部の仕事だ

5.速く動く。間違えるとしても、動きが遅すぎたためのものより、速すぎたためのものの方がいい

6.組織階層はわたしにとって意味を持たない。会議には地位や肩書きにかかわらず、問題解決に役立つ人を集める。

このうち最も重要なのは、原則によるリーダーシップ、顧客(市場)の立場に立った判断、戦略の実行、それに待遇・報酬改革だ。


原則によるリーダーシップ

ガースナー氏の経営のやり方は原則によるリーダーシップだ。それまでのIBMがプロセスにとらわれていたので、プロセスを破壊して組織全体に新風を吹き込んだ。

ガースナー氏の原則とは市場、品質、顧客満足度、株主価値、生産性、戦略的なビジョン、緊急性の感覚などである。

これらをIBMの経営幹部に目覚めさせるために、世界中から420名を集めた上級経営幹部会で、顧客満足度と市場シェアーの2つの図を見せた。どちらもIBMは急速に順位を下げていた。

IBMは競争相手にぶっ飛ばされているのだと。

さらに競争相手CEOのIBMをあざける言葉をこの会議で紹介した。

たとえばオラクルのラリー・エリソンは「IBM?死んだ訳ではないが、相手にする必要がない会社になった」と語った。

IBMでは社内の他部門に対する怒りは日常茶飯事だが、競争相手に対する怒りはなかった。それをガースナー氏はかき立て、社員の怒りのベクトルを競争相手に向けさせた。


顧客・市場重視

ガースナー氏は就任後すぐにベア・ハッグ作戦を発表した。経営幹部50人が3ヶ月以内に最低5社の大口顧客を訪問する計画だ。

ちなみにベア・ハッグとは強く抱きしめることで、プロレスの技にもなっている。

IBMの天動説的顧客無視主義はガースナー氏自身も経験していた。アメックス時代、たった1台のアムダール機を購入した為に、IBMが契約の打ち切りを宣言してきたこともあった。

地域ごとに独立していた組織も全世界産業別の組織に再編成した。銀行、政府、保険、流通、製造業などの11の産業別分野と中小企業の12の分類したのだ。

顧客は二の次というIBM文化を変えるためだ。


勝利、実行、チームが新しいIBMリーダーのスローガン

ガースナー氏は社員の前で訴えた、IBMでは計画実行の失敗を繰り返していると。

実行と進捗報告を要求していない。期限を設定していない。タスクフォースをつくる。またタスクフォースをつくる。しかし実行はしない。

就任記者会見で一躍ガースナー氏を有名にした言葉、「いま現在のIBMに最も必要ないもの。それがビジョンだ」という言葉の裏には、ビジョンを創っている余裕はない、戦略をつくり、それの実行あるのみだという強いメッセージが込められている。

戦略を着実に実行する。情熱を持って組織を率いて勝利を得る。そんなリーダーをIBMは求め、重用するようになった。

IBMに着任する前の経営会議で幹部が50人ほど集まっていたが、ガースナー氏だけブルーのシャツで、他は全員白いシャツだった。短期間に全員がカラーシャツを着るようになった。

IBMの会議ではオーバーヘッド・プロジェクターを多用していたが、ガースナー氏は歩み寄ってプロジェクターの電源を切って、「事業について話をしよう」と呼びかけたことも全社にまたたく間に知れ渡った。

社内で独立帝国の様な存在だったヨーロッパなども、幹部を入れ替え、IBM文化を変えていったのだ。


待遇・報酬体系の改訂

ガースナー氏が就任した当時のIBMではストックオプションやボーナスはごく一部で、大半が固定報酬で、全部門共通の等級に基づき同じ給料が支払われ、しかもほとんど差が付けられていなかった。

福利厚生もアメリカ企業でNo. 1だった。無料医療や社員専用カントリークラブなど古き良きアメリカだったのだ。

しかしIBMが窮地に陥り、数万人がレイオフされていた状況では制度改革が必要だった。

ガースナー氏は、業績に基づく報酬体系に変更し、社員の多くにストックオプションを導入し、2002年には7万人がストックオプションを持つ様になっていた。

IBMでは30万人の社員のほとんどが知的労働者であり、それをつなぎ止め、全社的目標達成に向かわせるためにストックオプションを拡大したのだ。

また所属部門の業績にリンクしていたボーナスを、上級社員ほど全社業績にリンクする様に変えた。

全社の業績が悪くとも自分の部門さえ良ければよいという文化を変えたのだ。

全社が一丸となったチームの基盤ができた。


ガースナー氏の功績

1.メインフレーム事業への再注力

ガースナー氏の兄もIBMで働いていたが、病気でコンサルタントとなっていた。兄がメインフレーム事業の位置づけを再認識するように助言した最初の人間だった。

メインフレームではIBMのヨーロッパやアメリカの研究所が提唱したアーキテクチャーのバイポーラからCMOSへの大胆な移行を決断し、コストを下げ、価格を大幅に下げて競合の日立他を引き離し、後継のシステム390でメインフレーム事業をよみがえらせた。

2.サービス事業の拡大

クライアント・サーバーモデルでは顧客自身が様々なサプライヤーの機器やソフトを統合しなければならない。そのため様々なサプライヤーの技術を統合するソリューションが重要だと考えた。

ハードウェアも自社のものにこだわらず、サービス主導のビジネスに変えたのだ。

3.『eビジネス』というブランドでネットワーク型コンピューティング推進 

単体のパソコン中心の時代の次にくるもの。それはネットワーク型コンピューティングであるとの考えのもとに、オープンな標準規格化を推進した。

ネットワーク社会となるにつれ、パソコンの機能は大型システムやネットワーク機器に代替される。

テレビ、ゲーム機、携帯端末、携帯電話、自動車や家電などがパソコンに取って代わるという今で言うユビキタスコンピューティングにガースナー氏は賭けたのだ。

『eビジネス』という言葉をつくり、これがIBMにとって『月旅行計画』、会社を活気づける大目標と宣言した。

『eビジネス』のマーケティングと宣伝に50億ドルを投じたが、ブランド力の向上という意味で、自分のキャリアで最高の仕事だとガースナー氏は振り返って語っている。


4.世界最大のソフトウェア事業を再構築

ガースナー氏就任当時IBMは世界最大のソフトウェア企業だった。しかしIBM自身がソフトウェア企業であるという認識がなかったし、ソフトウェア事業部もなかった。

そこでIBMのソフトウェア資産を一人の経営幹部のもとに集め、自社仕様をすべてオープン仕様にした。

数百のアプリケーションソフトから撤退し、IBMが強いミドルウェアに注力し、グループウェアのノーツを持つロータスやTivoliを買収。シーベルとの提携など、強みを活かし、2001年現在でマイクロソフトに次いで世界第2位のソフトウェア売上となった。


5.自社の研究資産を競争相手にでさえ売る

IBMの研究所のノーベル賞の受賞者数は、ほとんどの国を上回っており、世界の情報技術の大半を生み出してきた。しかし自社が開発した技術は外には売っていなかったため、結局科学的な発見を効果的に市場化できないでいた。

競争相手に自社の虎の子の技術を売るという問題はあったが、自社の製造部門は既存技術での製品が売れている以上、新規技術の商品化に消極的だったので、社内で商品化できないものは社外に売るという方針に転換した。

そこで技術のライセンス供与とDRAMを初めとする部品のOEM販売を開始した。結局DRAM事業からは撤退したが、ガースナー氏はDRAM事業はIBMが部品市場に参入する入場料のようなものだったと語る。

カスタム半導体でトップとなり、ゲーム機向けのパワーPCでコンピューター以外の成長分野にも進出できた。


ガースナー氏の座右の銘 世の中にいる4種類の人

最後にガースナー氏は長年オフィスに掲げていた標語を紹介している:

世の中には4種類の人がいる。
動きを起こす人
動きに巻き込まれる人
動きを見守る人
動きが起こったことすら知らない人

IBMの標語は"Think!"だと思っていたが、ガースナー氏の標語は異なる。

楽天の三木谷さんの"Best effort basis"の人と"Get things done"の人という2種類の分類とは若干切り口が異なるが、同様の区分である。

460ページの本を読み終えて、ガースナー氏の実行こそ最も重要で、リーダーシップ次第では『巨象も踊る』のだというのがよくわかった。

まずは長年続いた経営会議を廃止し、取締役会も人材一新という破壊から始まり、内外からの人材を起用したリーダーシップチームつくりも参考になった。

ガースナー氏が名前を挙げて特筆しているリーダーシップチームは、CFO、人事担当、広報担当と全世界一つの広告代理店、サービス部門の責任者、ソフトウェア部門の責任者である。

どこの会社でもCFOと人事と広報がCEOの改革チームには必要だと思う。

あらすじを書くのにえらく時間が掛かったが、何度も読み返したせいでガースナー氏の強いリーダーシップにより、IBMという会社がいかに復活したかよくわかった。

やや取っつきにくい本だが、まずはこのあらすじを読んで、大作に挑戦いただきたい。


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2006年07月12日

ホスピタリティの教科書 赤のリッツ・カールトンの林田さんの近著

ホスピタリティの教科書


このブログでも紹介している赤のリッツ・カールトン(「リッツ・カールトンで学んだ仕事で一番大事なこと」)の著者の林田正光さんの近著だ。


リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと


林田さんはお客様が賢くなったことをまず指摘する。賢くなったお客様にどのように接していけば満足していただけるのか、そして感動させられるのか。それがこの本のテーマである。

「気くばり」とはビジネス上のマナーのこと。「心くばり」は漢字で書くと「心配」で文字通り相手のことを心配するのだ。「通常のサービス」に「気くばり」がプラスされると、お客は「満足」する。さらに「心くばり」がプラスされると、お客は「感動」するのだと。

3回来られたお客をファン、5回以上をリピーター(常連客)と呼ぶなら、5回以上来店されてお店のよい噂をふりまいて営業してくれるお客はロイヤルカスタマーである。

ロイヤルカスタマーになってもらうには、満足よりも感動が必要である。

まずは3回までの来店に全精力を注ぎ込み、それをクリアできたら5回以上を狙い、最終的にロイヤルカスタマーになってもらうことを目指すのだ。

ユダヤ人の教えに「あなたの周りの数十人の友人だけを大切にしなさい」というものがある。親しい友人が20人いるとすると、その友人一人一人に20人の友人があり、400人の潜在顧客がいることになるのだと。

数十人のロイヤルカスタマーを大切にするだけで、意外と経営は成り立つものであると林田さんは語る。

会員カードなどをつくって割引したりするとリピーターはつくれるが、問題はロイヤルカスタマーをいかにつくるかである。

普通のサービスでは、ファンやリピーターしかつくれない。感動のサービスを提供することで、はじめてロイヤルカスタマーにアップする可能性が出てくるのだと。

賢くなったお客様は消費行動に感動を求めているのだ。

なるほどと考えさせられる。

口コミをひろめてくれるロイヤルカスタマーをいかに増やすか。これがサービス業共通の成功の秘訣だと思う。


この本の最も重要な部分はこの点だが、その他にいくつか印象に残った点を紹介しよう。


従業員のモチベーションを高める方法

従業員のモチベーションを高めるには、正当な評価を与えることが一番である。リッツ・カールトンではファイブスター制度があり、その評価基準は「経営理念を実際にどのように活用したか」である。

数字はあくまで目安である。

どこの会社でも、まずは評価の基準となる企業の経営理念を、しっかり時間を掛けてつくることを林田さんはすすめている。


個人プレイでは感動は与えられない

個人プレーではお客様に感動は与えられない。ラグビーの「みんなは一人のために、一人はみんなのために」という言葉があるが、サービス業にこそチームワークが必要なのである。

これまでうまくいっていたのに、最近は会社の業績が落ち込んでいるという会社もよくあると思う。

従業員にハッパをかけ続けているが、伸びる気配はない。こういう時には一度「セクショナリズムが強まって、チームワークが軽んじられているのではないか」と疑ってみることを林田さんはすすめる。

どのようにすればチームワークが自然と生まれてくるのか、全員で検討してみるのが良いだろうと。


感性を磨く自己投資と想像力

感性を磨くためには有名な画家の美術展に行ったり、能や歌舞伎、狂言を見ることを林田さんはすすめる。ミュージカル、禅寺、生け花、ハリウッド映画等々、いつも新しいことにふれ、勉強していると自信が出てくるからだ。

自信が出てくると、どんなときでも落ち着けるようになる。

感性は知識や教養ではない。知識や教養をもう一段昇華させた知恵を磨くのだ。


笑顔とアイコンタクトで心温まる雰囲気を

「人は見かけが9割」ではないが、林田さんもアメリカの心理学者マレービアンの顔の表情が55%、音声が38%、話の内容が7%で人の第一印象が決まるという研究結果を紹介している。

林田さんは毎日鏡の前で5分間笑顔の練習をしていると。

接客、ホスピタリティのプロでもここまでやるのか!

さすがサービスのプロである。

最後に林田さんは、「ホスピタリティの原点は心です。お互い、笑顔で、誇りを持ち、そして常に心を込めてお客様とおつきあいをしていきましょう」と呼びかけている。

サッと読めて、印象に残るストーリーが一杯である。赤のリッツ・カールトンと並んでおすすめの本である。


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2006年07月10日

日本人が知らなかったネットで稼ぐ新手法 ドロップシッピング 海外向けネットビジネスのすすめ

日本人が知らなかったネットで稼ぐ新手法 ドロップシッピング


ドロップシッピングという言葉がネット業界ではやりつつある。

今までのアフィリエイトでは商品の紹介をして、売れれば手数料を貰うというビジネスモデルで、商品の価格はマーチャントが決めていた。

ドロップシッピングは、マーチャントに自分向けの商品を提供してもらい、それを自分のサイトやオークションで自分の好きな価格で売り、売買が成立したらマーチャントに直接送付してもらうビジネスモデルだ。

在庫も一切持つ必要がなく、マーチャントが支払い機能を提供してくれ、商品の発送も直接マーチャントが行う。

こう聞くと画期的なビジネスモデルで、アフィリエイトよりも儲かりそうに聞こえるが、現状ではこうしたドロップシッピング機能を提供してくれるサイトはまだ少ないので、さほど広がっていない。

著者の富田貴典さんは14歳の時にオーストラリアに留学、12年をオーストラリアで過ごし、2005年5月に帰国した。

英語力を活かし、オーストラリア在住時代に日本語の漢字をデザインしてタトゥーなど向けに販売するネットビジネスを始め、次に漢字を印字したTシャツやマグなどの販売をドロップシッピングで始めた。

それらのサイトがDSFY.com海外ネットだ。

富田さんは海外に向けて日本のものを売ることをすすめる。日本人をターゲットとするよりも、外国人をターゲットにしたほうが需要が大きいからだと。また売る商品もニッチなもので、需要があっても競争の少ないものが狙い目だ。

ニッチな商品を見つけた方法はキーワードアドバイスツールとアクセスのキーワード解析であると。

この本は「ドロップシッピング」というタイトルがついているが、ネットビジネスを始める上で、知っておくと便利なアクセスアップの手法(検索エンジンへの登録など)、アンケートの導入、無料資料のダウンロードサービスでメールアドレスを収集することなどが実例をもとに説明されていてわかりやすい。

また海外のネット決済手段である2chechoutClickbankなどのクレジットカード決済、Paypalによるeメール決済についても詳しく説明してあり、参考になる。

日本の様にまぐまぐやメルマなどのメルマガ配信スタンドはないが、海外でもオートリスポンダーなどのサービスを使ってメルマガで営業する手法も詳しく紹介されている。ProAutoResponderというサイトはしゃべるメルマガを送れるという機能がある。

ドロップシッピングではcafepressというサイトを利用して、自分のアカウントを作成してオリジナルのTシャツをつくる方法を画面キャプチャー付きで詳しく解説してあり、わかりやすい。

また情報起業家向けなどにcafepressを使って自費出版する方法も紹介しており、役に立ちそうだ。

PDFにした原稿と表紙のJPEG画像があれば本がつくれ、ワイヤーで留めるマニュアル風のものや、薄いものは雑誌の様な体裁、本格的なペーパーバックスの体裁と3種類あり、それぞれ6ドルから8ドルでつくれるので非常に便利だ。

富田さんはISBN(International Standard Book Number)の登録の仕方も解説してくれているので、かゆいところに手が届く感じだ。

筆者も大学のクラブの部史の自費出版を考えていたので、非常に参考になった。

その他ブログをつくってGoogle Adsenseで広告を載せ、広告料を稼ぐ方法や、eBayで不要品を海外で販売する方法や、実際にeBayでおもちゃなどを販売して月50万円の売上を上げている人とかの実例も紹介している。

英文ライティングのコツも紹介してあり、非常に親切である。

最後に富田さんは行動力とNever give upの精神が大事であると。ともかく実践してみて自分を信じてあきらめないこと、そしてやり続けることだと語る。

世の中に『アフィリエイトで月100万円儲けた』とかいったタイトルの本は多くあるが、海外向け中心にアフィリエイトからドロップシッピング、自費出版までの広い範囲をここまで詳しく解説した本はあまりない。

実戦的で役に立つ本だった。オークションに参加している人には特におすすめです。


最後にドロップシッピングのリスクについて(筆者の意見)

筆者は長年商社に勤めて貿易に携わってきたので、トレードにまつわるリスクには敏感だ。

ドロップシッピングの問題点は、買い手からのクレイムがあった場合、アフィリエイトであれば自分は関わりなしで済ませられるが、ドロップシッピングの場合には自分が売り手なので、買い手と仕入先のマーチャントとの間に立って、クレイム解決をしなければならない点だ。

問題がこじれると解決に時間が掛かり、場合によっては損をこうむる危険性もある。

それとクレジットカードで支払いを受けることは、絶対安全な債権回収方法とは言えない点である。

日本ではあまり表だって言われていないが、欧米ではクレジットカードの不正使用は巨額にのぼり、たとえば英国では2004年の不正使用額は5億ポンド(1000億円)にものぼる。

ユーザーはクレジットカードの保険で、ほぼ間違いなく補填されるが、マーチャントは時によりクレジットカード会社から支払いを受けられない場合があるのだ。

余り知られていないが、米国の通販会社などはクレジットカードの不正利用で巨額の損失をこうむっているのである。

英語版のWikipediaのクレジットカードのところを読むとクレジットカード詐欺について次のように書いてある。

Fraud costs. Where a card is stolen, or an unauthorized duplicate made, a most card issuers will refund some or all of the charges that the customer would have otherwise received, for things they didn't buy. These refunds will in some cases be at the expense of the merchant, especially in mail order cases where the merchant cannot claim sight of the card, but in other cases, these costs must be borne by the card issuer. The cost of fraud is high; in the UK in 2004 it was over £500 million [1].

アンダーラインの部分が問題のところだ。通販会社などではカード詐欺で不正利用された分をマーチャントが負担しているケースもあるのだ。

ネット通販も通販である以上、このようにクレジットカード詐欺でお金が回収できないというリスクがある。

ドロップシッピングで少しぐらい儲けても、もし代金がクレジットカード会社からちゃんと支払われなければ、儲けなど吹き飛んでしまうおそれがある。

以上の2点を頭に入れて、海外向けネットビジネスは進めた方が良いと思う。


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2006年07月04日

国家の品格 ベストセラーの学者本 昨年は養老孟司 今年は藤原正彦

国家の品格


今年のベストセラーの一つ。数学者の藤原正彦さんが『国家の品格』と題して行った講演に加筆したものだ。

昨年は解剖学の養老孟司さんの本がベストセラーになったが、どうやら今年の学者本は藤原さんが一押しの様だ。

藤原さんはベストセラー小説の『博士が愛した数式』を書いた小川洋子さんとの共著で、『世にも美しい数学入門』という本を出していることでも知られている。


世にも美しい数学入門


数学者が国家の品格を論議するという、どちらかというと領空侵犯の様な本ではあるが、純粋な主張が共感を呼んでいる様だ。

藤原さんは30代にアメリカの大学で教えた経験があり、以前はアメリカ流の論理を押し通すやり方だったが、論理だけでは物事は片づかないと考えるようになった。

40代でイギリスのケンブリッジで滞在した時に、同じ英語圏と言ってもイギリスでは論理より伝統や誠実さ、ユーモアが重んじられていることを知り、帰国後は論理より情緒とか形が重要と思えてきたと。

情緒は教育によって培われ、形は主に武士道精神からくる行動基準で、これが元々日本の国柄ともいうべき、日本人が持っていた美風であった.

しかし西欧化、アメリカ化によって、最近ではホリエモンや楽天の金にあかせたメディア買収の動きなど、日本は情緒と形を忘れ、市場経済に代表される論理と合理に身を売ってしまった。

日本は国柄を失い、『国家の品格』を失った。

グローバル化は世界を均質にするものであり、日本はこれに対抗し、孤高の日本でなくてはならないと語る。普通の国になってはいけないのだと。

世界に範をを垂れることが、日本の果たしうる人類への世界史的貢献なのだと藤原さんは語る。

奥さんに言わせると藤原さんの話の半分は誤り、残りの半分は誇張だとのことだが、欧米は産業革命までは文化もなく野蛮だったとか、犯罪、家庭崩壊、教育崩壊など先進国はすべて荒廃しており、西欧的な論理、近代的合理精神の破綻であるとか言いたい放題だ。

考えさせられるのは、最も重要なことは論理では説明できないという点だ。

数学では不完全性定理というものがあり、どんなに立派な公理系があっても正誤を判定できない命題が存在することが証明されている。

例として人間社会では「人殺しは悪いこと」なのか論理的に説明できないと。

「いけないことはいけない」としかいえないのだ。

藤原さんは自由、平等、民主主義にも疑いを向ける。

権力を批判する自由以外は、すべてルールや制限があり本当の自由はなく、ホッブス、ロック、カルヴァン、ジェファーソンなどの例を挙げて、自由とは欧米が作り上げたフィクションであると語る。

民主主義では国民は永遠に成熟しないので、真のエリートが必要なのであると。

エリートは偏差値エリートの官僚ではなく、イギリスのオックスフォード、ケンブリッジ出身者や、フランスのグランゼコールなどの国民のために命を捧げる様な真のエリートのことである。

平等も欧米のひねり出した耳当たりの良い美辞に過ぎない。

アメリカの女性を認めないゴルフクラブや有色人種の入れないクラブなど、自由と平等が両立しない場合も多い。

合理性、論理の破綻の解決策として藤原さんは日本が古来から持つ情緒あるいは伝統に由来する形を見直していこうと提言している。

論理とか合理も重要だが、それだけでは人間はやっていけない。それに付加するものが日本人の持つ美しい情緒や形であると。

もののあわれ、感性、桜のはかない美しさ、紅葉の繊細さ、懐かしさ、そして4つの愛。家族愛、郷土愛、祖国愛、人間愛である。

武士道精神の復活を提言し、卑怯を憎めと。

日本は国家の品格を喪失してきている。

日本の様に狭い国土と乏しい資源の国は初等中等教育が命綱である。国民の高い知的水準が日本の繁栄の原動力であったのだと。

(小沢一郎に反対して)日本は普通の国になるべきだとは思わない。日本は異常な国になるべきであると。

『文明の衝突』を書いたサミュエル・ハンチントンも世界の8大文明の一つとして日本文明をあげている。


文明の衝突と21世紀の日本


ここ4世紀ほど世界を支配した欧米の教義は破綻を見せ始めている。

世界は途方に暮れており、世界を本格的に救えるのは日本人しかいないと言って結んでいる。


海外生活や海外文化にとけ込めずに嫌米、嫌欧のナショナリストになる人はよくいる。藤原さんがそうだとは言わないが、海外生活が長く11年を越えている筆者は、一途な日本礼賛にはつい警戒心を覚えてしまう。

理想論としては理解できるし『ALWAYS 三丁目の夕日』が日本アカデミー賞を12部門(?)独占したことを見てもわかる通り、昔は良かったと思う日本人は多いと思う。


ALWAYS 三丁目の夕日 通常版


筆者も昔の日本は世界に誇れる国だったと思うが、それにしても理想を現実にする具体策が欠けている。耳には心地よいがが、学者の議論と言わざるを得ないのではないか。

まずは立ち読みでざっと読まれることをおすすめする。


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Posted by yaori at 00:01Comments(0)TrackBack(0)