2006年12月27日

滅びゆく国家 タイトルほどは憂鬱ではない立花隆の同時代時評 

滅びゆく国家 日本はどこへ向かうのか


評論家・ジャーナリストの立花隆氏が連載している日経BPホームページの人気コラム立花隆の「メディア ソシオ-ポリティクス」の記事をタイトル別に並び替えたもの。

全部で7つの章にまとめている。

第1章 ライブドアショック
第2章 天皇論
第3章 靖国論・憲法論
第4章 小泉改革の真実
第5章 ポスト小泉の未来
第6章 イラク問題
第7章 メディア論

筆者は東京の地下鉄でばったり立花隆氏と出会ったことがある。言葉もかけなかったが、地下鉄線で座っていたが、もじゃもじゃ頭ですぐわかった。

ライブドアがニッポン放送の買収に乗り出した直後の2005年3月から、ライブドア事件が起こった2006年2月までほぼ1年間のコラムが500ページ弱の本となっている。

このコラムは今でも連載されているので、このブログのお気に入りにも登録しておいたので、時々見てみようと思う。

立花隆氏はこのインターネット上のコラムについて、このような時評を展開する場として最適のメディアは、いまやインターネットをおいてないと語っている。

締め切りもなく、インターネットなら紙幅の制限もなく、印刷するリードタイムもなく、読者への配送の手間も時間もいらない。さらに読者の反応も即時だ。このコラムのPVは1年間で1千万PVを超えたという。

このコラムは日本の行く先を案じながら書いたものが多いので、『滅びゆく国家』となったという。

日本は百年に一度の危険な曲がり角を迎えており、小泉政権下で今まで大切とされてきた大原則が破られるようになってきた。

たとえば平等原則は悪平等として非難の対象となり、格差社会が出現している。海外派兵禁止もイラク派兵で破られた。小泉改革の延長線上に日本国のハッピーな未来があるとはとても思えないと。

立花隆氏は好きな著者の一人なので、今までいくつかの作品を読んできたが、まだこのブログでは紹介していなかった。最近の立花作品は『天皇と東大』など、超大作が多くて、あまり読もうという気にならなかったせいかもしれない。


天皇と東大 大日本帝国の生と死 上



天皇と東大 大日本帝国の生と死 下


この本も500ページ弱の大作だが、もともとインターネットのコラムだったこともあり、気軽に読める。

いくつか印象に残った点をご紹介しよう。


女帝誕生は是か否か

戦前では皇室典範は天皇家の家内法だから、憲法よりも上位とされる法だった。明治憲法自体も『皇男子孫』と明記しており、はっきり男子に限っていた。

しかし今は皇室典範は単なる法律なので、簡単に改正できる。

立花氏は天皇の地位は、憲法第1条に基づくものだと語る。つまり「天皇の地位は国民の総意にもとづく」。

女性天皇容認論は常に8割を超えているのだから、国民の総意は明らかであると。

さらに21世紀の天皇は体外受精でとまで語っている。一般的にも体外受精が広まっているわけなので、もし皇太子夫妻が第2子、第3子を望まれているのであれば、不妊治療の体外受精で次の皇孫をもうけるべきではないかと。


多産系の側室によって守られてきた万世一系

現存する日本最初の基本法典である養老律令では、天皇は妃を2人、夫人を3人、嬪を4人、計9名の配偶者を持てることになっていた。


平安時代はこれが3夫人、9嬪、27世婦、81女御まで許されるようになっていた。

歴代の天皇は万世一系を絶やさないために、多くの子供をもうけた。

明治天皇もその父の孝明天皇も庶出子だったし、大正天皇も側室の子(庶出子)だった。

大正天皇から一夫一婦制となり、大正天皇、昭和天皇、今上天皇までは男子が産まれたが、天皇家は男子が産まれても、その子供の代までいくと女子ばかりという女系家族の典型で、男系男子にこだわっていては皇統断絶の可能性が高い。

Y染色体論(男系でないとY染色体が受け継がれない)という説も、Y染色体でさえ完全な遺伝子情報が受け継がれるのではない。代替わりするたびに少しずつ変異が積み重ねられるので、神武天皇と全く同一の染色体を伝えている訳ではない。

さらに天皇家は神武天皇から今上天皇まで125代となっているが、その間に臣籍降下(皇族から一般人になる)は頻繁で、立花隆でも系図によると推古天皇の兄、敏達天皇からでたことになり、神武天皇のY染色体が流れているということになる。

筆者も別の本で読んだことがあるが、利己的遺伝子で有名なリチャード・ドーキンスによれば、400年もさかのぼれば、赤の他人とも血がつながると言われている。

立花隆もY染色体説はあまり根拠のない説であると。

動物学者竹内久美子さんの本では、Y染色体論が展開されていた。

筆者は愛子様が天皇になっても良いと思っているが、その辺はまさに国民の総意を問うべきかもしない。


遺伝子が解く!万世一系のひみつ



平成18年は明治139年

明治がそのまま続いていたら、今年は明治139年となる。また大日本帝国憲法は明治22年に成立したので、今年は大日本帝国118年ということになる。

実際には大日本帝国は56年間で終わったので、終わってからのほうが62年と長い。

大日本帝国はわずか56年しか持たなかったのだが、大日本帝国が滅亡したことで、日本が失ったものはどれだけ大きいか地図帳を見ればわかる。

台湾、韓国、北朝鮮、樺太、広域にわたる南洋諸島、そして満州が日本の植民地同様の国だったのだ。

もし日本があの愚かな戦争をせずにすませていたら、日本は今日全く違った国となっていたであろうと。

時の政治権力を握っていた愚かな政治指導者の選択によって、また同時にそんな政治権力者に権力を握らせていた国民の愚かな選択によって、歴史はあのような展開をたどってしまったのである。

日本は第1次世界大戦後に成立した国際連盟では文句なしの常任理事国であった。(もっともアメリカは国際連盟には参加していないが)

しかし明治が始まって60年後(1927年=昭和2年)ころから、日本の転落が始まり、1928年の張作霖爆死事件から、満州事変、満州国建国、国際連盟脱退、日独防共協定、廬溝橋事件という一連のハンドルの切り間違いが続いてやがて滅亡とつながるのだ。

現在もちょうど戦後60年、外交も手詰まり、財政再建も増税しか決めてがないという状況で、破綻に向かう可能性が大きく、類似性があると言う。


靖国訪問

天皇は自分の行為が日本国のシンボルの行為と解釈されるから、A級戦犯が合祀されている靖国神社には行かないという選択をした。

なぜ小泉首相がそれにならうことができないのかと立花隆は語る。

小泉首相は8月15日に政府専用機で、北京、ソウルを駆け回り、戦没者慰霊碑の前に花束をささげ、そのあと靖国神社に出向いてはどうかと提案している。

1970年に当時の西ドイツのブラント首相は、ポーランドを訪問し、ワルシャワのゲットーの記念碑の前で「こうすべきであったのに、こうしなかったすべての人に代わってひざまずく」とひざまずいて謝罪した。

ドイツでは歴代の首相がポーランド、イスラエル、バルト3国などを毎年のように訪問して、犠牲者の碑の前で頭を下げ続けてきた。


憲法改正

安倍首相が憲法改正を公約としてあげているので、一躍憲法改正論が出てきたが、立花隆は、憲法9条を死守して崇高な理念を貫けと主張する。

憲法9条が日本に繁栄をもたらす。『普通の国』議論には気をつけろと。

日本の法律は戦前は大陸法的だったが、戦後は英米法が取り入れられたので、独特の両体系混在となっている。

また憲法は最上位の法なので、具体的な内容は「法の定めるところに従って」という様に下位法と一体となってはじめて運用できる仕組みとなっている。これがドイツ憲法など大陸法との違いであると。

その意味で日本国憲法は成文の憲法と下位法令、さらに判例の集合体であり、改憲しなくても自衛隊法は合法であると。

オーストラリアは建前としては今でも100年以上前に制定された憲法で、エリザベス女王を国家元首にあおぐ立憲君主制の国なのだが、実際には女王が任命する提督などは形骸化している。

そのオーストラリアで1999年に憲法改正案が否決されたが、そのときの保守派の使ったスローガンが「壊れていない車は修理するな」だったと。

憲法改正については、いろいろな意見があり、今後も論議が活発となるだろうが、立花隆の議論も参考になると思う。

ちなみにあまり更新されていないが、安倍首相のホームページもある。


東京裁判を蒸し返す政治的愚行を繰り返すな!

小林よりのりの主張とは正反対だが、立花隆はサンフランシスコ講和条約第11条で、日本は東京裁判の結果を受け入れることを約束しており、それをくつがえすことはできないと主張する。

国立追悼施設以外に解決の道はないと。


その他、このブログでも取り上げているオーディオブックのすすめとか、話題は尽きない。

500ページの本であり、小泉首相退任前のやや古い話題も入っているが、簡単に読め、参考になる見方もあるので、おすすめする。


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2006年12月23日

グーグル ネット業界に強いジャーナリスト佐々木俊尚さんのレポート

グーグル―Google 既存のビジネスを破壊する 文春新書 (501)


ヒルズな人たちなどの著書で知られるIT業界に強いジャーナリスト佐々木俊尚さんの本。

グーグルのすごさについては、大ベストセラー梅田望夫さんのウェブ進化論に詳しいが、キーワード広告で飛躍的に売上を伸ばした例など、違った角度から述べている。

たとえばGoogle News

ベータ版だが、日本版は610ものサイトから最新ニュースを自動的に収集して十数分毎に再構成する。

日本語版ではどうしても記事が限られるが、英語版だと4,500ものニュースソースから自動編集され、大変な情報量だ。

情報リテラシーの観点から、同じニュースを各国のメディアがどう見ているのかが比較でき、多様な価値観が理解できる。英語版であれば、辺境の新聞社の記事でも世界中の読者に読まれるようになるのだ。

情報のハブがCNNとか、ニューヨークタイムズとかの大手マスコミからグーグルに移っていくのだ。

新聞社から記事提供を拒むとかの動きもあったが、日本でも当初は記事提供を拒否していた読売新聞も記事提供を始め、スタートして三ヶ月で3大全国紙からの情報提供がはじまった。

まだまだYahoo!ニュースに比べると知名度も読者数も今ひとつだが、英語版なら世界の情報を収集でき、日本語版なら地方のニュースもわかるという意味では、使い方次第によっては非常に便利な情報源となるだろう。

この本ではグーグルの『破壊者』的性格と、すべてを検索、選別、そして『支配』していく全能の神的なグーグルの性格を様々な角度から紹介している。

成功例としては次を紹介している。

羽田の近くの有料駐車場がキーワード広告のアドワーズのおかげで、時にはお客を断らなければならないくらい顧客を集めることができたこと。

福井の三和メッキ工業という中小メッキ工場が、必殺メッキ職人というサイトを立ち上げ、キーワード広告やSEO(サーチエンジンオプティマイゼーション)で、全国の研究所や個人などから注文が集まったこと。

他方支配する神的な例としては、個人が広告収入を得られるアドセンスでクリック詐欺として停止処分を受けた映画評論家の例を紹介している。

この映画評論家のサイトの例では、1年2ヶ月あまりで30万円ほどの広告収益があったそうだが、その道が絶たれてしまったという。

梅田望夫さんのウェブ進化論の様なインパクトはないが、簡単に読めてグーグルを中心とする最近のインターネットの動きと意味がわかる本である。



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頭がいい人、悪い人の話し方 『人の振り見て我が振り直せ』という本

頭がいい人、悪い人の話し方


『頭がいい人』シリーズで何冊も本を出している樋口裕一さんの最初のベストセラー。

本屋で立ち読みしたことはあるが、ところどころあるイラストも、どぎつく、『あなたの周りのバカ上司』などという書き方で、欠点ばかりあげつらねているので、たとえベストセラーでも読む気にならなかった。

2年たって、図書館で借りて読んでみたが、実際に読むと、悪い第一印象を消すそれなりの使い道があることがわかった。

それはそれぞれのタイトルに、そのタイプの人の説明と、『周囲の人の対策』というセクションと、『自覚するためのワンポイント』というセクションがあるからだ。

つまりどちらかというと自分で自覚するということが重要で、『人の振り見て我が振り直せ』という本なのである。

この本で取り上げられている40のタイプは次の通りだ:

あなたの周りのバカ上司
1.道徳的説教ばかりする
2.他人の権威を笠に着る
3.自分を権威づけようとする
4.自分の価値観だかですべてを判断する
5.根拠を言わずに決めつける
6.ケチばかりつける
7.少ない情報で決めつける
8.具体例を言わず、抽象的な難しい言葉を使う
9.詭弁を用いて自説にこだわる
10.矛盾に気づかない
11.難解なことを言って煙に巻く
12.知ったかぶりをする

こんな話し方では、異性が離れていく
13.すんだことをいつまでも蒸し返す
14.何でも勘ぐる
15.感情に振り回される
16.優柔不断ではっきり言わない
17.自分のことしか話さない
18.相手が関心のないことを延々と話す
19.低レベルの解釈をする
20.何かにつけて目立とうとする

絶対に人望が得られない話し方
21.自慢ばかりする
22.強がりばかり言う
23.人の話を聞かない
24.おべっかばかりで自分の意見を言わない
25.感情の起伏が激しい
26.正論ばかりをふりかざす
27.ありふれたことしか言わない
28.ぐずぐずと話して何を言いたいのかわからない
29.どんな話題もいつもの話にもっていく
30.差別意識を口に出す

こんなバカならまだ許せる
31.人の考えをするうのみにする
32.感動癖がある
33.善人になりたがる
34.丁寧すぎる
35.現状を正確に捉えられない ー 心配性と能天気
36.視野が狭い
37.その場その場でしか反応しない
38.きれいごとの理想論ばかりを言う
39.スポーツ新聞などの知識を自分の意見の様に話す
40.バカでよいと居直る

筆者も思い当たる点も多々あり、反省するところしきりだ。


思ったよりずっとよい本だった。上の40のタイプで、自分で思い当たる点があれば、一読をおすすめする。


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2006年12月17日

ウェブ進化論 Googleはインターネットの第2の巨大隕石!?

2006年12月16日追記:


以前『ウェブ進化論』のあらすじの中で紹介した、企業向け消耗品、間接材のeコマースサイトモノタロウが12月に東証マザースに上場した。

瀬戸社長は以前鉄鋼原料で、同じ新製鉄法プロジェクトを米国と日本で担当していた仕事仲間なので、瀬戸社長の成功はおおいに刺激になる。

その瀬戸社長のおすすめの『ウェブ進化論』。

今年初めのベストセラーなので、多くの人に読まれたと思うが、モノタロウの上場を祝して再度あらすじをご紹介する。


ウェブ進化論 本当の大変化はこれから始まる


atamanisutto主人前書き: 著者の梅田望夫(うめだもちお)さんはブログを『究極の知的生産の道具』と呼んでいるが、筆者も同感である。

このブログは筆者の備忘録も兼ねて作成しているが、この本についてはあまりに参考になることが多すぎて、備忘録が長くなりすぎてしまった。

元の原稿は非公開として保存し、以下の公開版は半分程度にまとめた。あらすじを公開、非公開と2種類つくったのは、はじめてだ。それほど参考になるとともに、intriguing(興味をそそられる)ということである。

是非次のあらすじを参考にして、実際に『ウェブ進化論』を手に取って頂きたい。

ベストセラーになるだけのことはある中身の濃い本である。新書の定価の740円以上の価値があること、筆者が請け合います。


昔の仕事仲間、日本最大の間接資材のネットショップMonotaROモノタロウ瀬戸社長に、最近読んだ本で一番良いとすすめられて読んだ。

今世界のインターネット業界でなにが起こっているのか、どんな構造変化が起こっているのかよくわかる。

著者の梅田さんのブログによると発売して4週間で15万部売れているそうだ。筆者の近くの書店でも売り切れだったので、アマゾンで買った。まさに爆発的な売れ行きである。

筆者は米国駐在時代の1999年にインターネットの威力と将来性に驚き、キャリアを変更したが、当時、ソニーの出井さんは『インターネットは(恐竜を死滅させたと言われる)巨大隕石だ』と表現していた。

日本に帰国してそれから5年余りたち、出張もせず東京で過ごしていると、アメリカや世界の情勢にどうしてもうとくなるが、インターネットで、いわば第2の隕石が落ちた様な変化が起きていることを思い知らされたのがこの本だ。


著者の梅田望夫さんは、シリコンバレー在住のコンサルティング会社ミューズ・アソシエイツ代表。梅田さんご自身のブログMy Life Between Silicon Valley and Japanもある。

梅田さんが常時寄稿しているCNETや、asahi.comITPROなどが梅田さんとのインタビューを載せているのでこれも参考になる。


現状分析がわかりやすく、かつ鋭い

まずは現状分析だ。現在のウェブ社会を次の3大潮流で説明している。

1.インターネット 
リアル世界に対するバーチャル世界・経済の出現。文章、映像、動画等、知的資産をなんでもネットに置き、不特定多数が見られ、何百万件でも検索して網羅できる。

国境等の物理的限界はなく、コミュニケーションも瞬時に行える。全世界の『不特定多数無限大』の人がはじめて経済ベースで捉えられるようになった。

2.チープ革命 
ムーアの法則は半導体の集積度が18ヶ月で倍増するというものから、IT製品のコストは年率30−40%下落すると広義に解釈されている。

3.オープンソース 
世界中の200万人の開発者がネット上でバーチャルな組織をつくり、イノベーションの連鎖で、最先端ソフトウェアをつくっていく世にも不思議な開発手法。


上記3大潮流が相乗効果を起こし、次の3大法則を生み出した:

1.神の視点からの世界理解 
Yahoo!や楽天などのネットサービスは1,000万人もの人にサービスを提供し、しかも一人一人の行動を確実に把握できる。膨大なミクロの情報を全体として俯瞰(ふかん)でき、今なにが起こっているのかがわかるのだ。まさにお釈迦様、神のみぞ知るということが実現している。

2.ネット上につくった人間の分身がカネを稼いでくれる新しい経済圏
ネット上に自分の分身(ブログやウェブサイト)をつくると、分身がチャリンチャリンと稼いでくれる世界が生まれた。自分は寝ていても儲かるしくみができる。奥さんもサイトを持っていれば、ダブルインカムならぬ、クアドラプルインカムも可能なのだ。

3.無限大 x ほぼゼロ = なにがしか(Something)
『不特定多数無限大』の人とつながりを持つためのコストはほぼゼロとなった。不特定多数無限大の人々から1円貰って1億円稼ぐことが可能となったのだ。


これら3大潮流と3大法則が引き起こす地殻変動で、想像もできなかった応用が現実のものとなった。その本質がGoogleである。


バーチャル世界政府のシステム開発部門Google

梅田氏のGoogleに勤める友人は『世界政府というものが仮にあるとして、そこで開発しなければならないはずのシステムは全部Googleでつくろう。それがGoogle開発陣のミッションなんだよね。』と真顔で語っていると。

梅田氏はGoogleはシリコンバレーの頂点を極めるとてつもない会社だと確信しているそうで、Googleのすごさを次の観点から説明している:

1.世界中の情報を整理し尽くす

Googleは自らのミッションを『世界中の情報を組織化し、それをあまねく誰からでもアクセスできるようにすること』と定義している。

全世界のウェブサイトの情報を集めるグーグル検索、全世界のニュースに優先順位づけするグーグル・ニュース、過去出版されたすべての本をデータベース化するとブチ上げ、著作権者ともめているグーグル・ブックサーチ。

個人のメール内容を判断して最適な広告を載せるGメール。グーグル・マップグーグル・アース等々。

こうして見てくると、筆者にはGoogleがCIAの別動隊の様に思えてくる。まさに映画ターミネーターのスカイネットの世界だ。

グーグルのサービスすべてを通して言えるのが、情報を人手を使わずコンピューターによって自動的に分析して組織化するという基本思想だ。人が扱わないのだから個人のメール内容などもプライバシーの問題はないという。


2.構想を実現するために情報発電所とも言うべき30万台から成る巨大コンピューターシステムを、ネットの『あちら』側に構築したこと
すべての言語におけるすべての言葉の組み合わせに対して、最も適した情報を対応させる。これがグーグル検索エンジンの仕事だ。全世界を英語圏のシステム一本で運営するための自動翻訳機能も、最適の情報を対応させるための必要機能だ。

そのためにグーグルの30万台ものコンピューターが日々稼働し続けている。


3.巨大コンピューターシステムを圧倒的な低コスト構造で自製したこと
オープンソースを最大限に利用して、30万台ものリナックスサーバーを自社でつくり、運営している。拡張性に優れるスケーラブル・ストラクチャーをつくり、処理能力を上げるためにはサーバー数を増やせば良い構造とし、一部が故障しても全体としては動くしくみを取り入れている。


4.検索連動型広告『アドワーズ』に加え、個人サイトに自動的に広告配信する『アドセンス』を実装し、個人にまで広告収入が入る『富の再配分』のメカニズムを実現したこと
筆者も一時『アドセンス』をこのブログに貼り付けていたが、個人サイトでもグーグルから自動配信される広告表示で、チャリンチャリンとお金が落ちる感覚を体験できた。

インターネット広告業界では、ネット専業代理店が力を持っており、小さなクライアントまで広告の裾野を広げているが、それにしてもアドセンスで配信される個人の『情報起業』の様な小企業などは到底カバーできない。


5.多くが博士号を持つベスト・アンド・ブライテスト社員5,000人が情報共有する特異な組織運
グーグルは株式公開したとはいえ、創業者のセルゲイ・ブリンとラリー・ページが一般株主とは違う種類の株式を持つ特異な所有形態である。これはマイクロソフトによる敵対的買収や経営介入を防ぐためだという。

グーグルには経営委員会などの経営組織はなく、5,000人の社員全員が情報を共有する。

博士号を持つ社員も多いが、それぞれ仕事の20%は自分のテーマで研究することを求められる。アイデアは社内で共有され、平均3人の小組織がアイデア実現のスピードを競い合う。キーワードは『自然淘汰』だ。


6.既に存在するネット企業のどことも似ていないこと
強いて言えばYahoo!はメディア、グーグルはテクノロジーであると。Yahoo!は人間が介在してサービスの質が上がるなら、人手を使うべきだという考えである。


それぞれの論点につき興味深い分析がなされており、もっと詳しく説明したいところだが、それだと『あらすじ』でなくなってしまうので、上記の切り口だけ紹介しておく。

いくつか印象に残った点を紹介しておこう。


『こちら側』と『あちら側』

パソコンは『こちら側』。機能を提供する企業のサーバーやネットワークは『あちら側』だ。どちらかというと日本のIT企業はこちら側に専念し、アメリカの企業はあちら側に注力している。

これを象徴する出来事が昨年起こった。売上高1兆円のIBMのパソコン部門がレノボに2、000億円以下で売却され、売上高3,000億円のグーグルの公開直後の時価総額は3兆円で、いまは10兆円だ。

グーグルの動きはすべてあちら側の動きだ。


『恐竜の首』と『ロングテール』

ロングテールについてはこのブログでアマゾンでは専門書と古典的名著が売れる例で紹介したが、リアル店舗では返品の憂き目にあう『負け犬』商品がアマゾンでは売上の1/3を占める。

パレートの80:20の法則で、従来は20%の売れ筋商品=『恐竜の首』に注力して80%の売上をあげれば良かったのが、インターネットにより陳列・在庫・販売コストを気にしなくて良くなった今、残り80%の『負け犬』もちりも積もれば山となることが可能となった。

グーグルの『アドセンス』は個人でもクレジッドカード払いで広告出稿でき、無数にある個人サイトに広告を掲載することができる。梅田さんの言葉で言うと『ロングテール』、筆者の言葉で言うとゴルフの『バンカー・ツー・バンカー』という様な分野が、巨大なビジネスとなっている。


Web 2.0

今までのインターネット企業や機能をWeb 1.0と呼び、開発者向けにプログラムしやすいデータ、機能(API=Application Program Interface)を公開するサービスをウェブサービスと呼ぶ。

グーグルの台頭にYahoo!が危機感を強め、自社の検索エンジンを導入することを決定したのが、2002年から2003年にかけてであり、ちょうどこのころインターネットの先駆者たちは、Web 2.0を研究しだした。

(筆者はこのWeb 2.0というのが、どうもよく理解できなかったが、筆者のたとえでいうと、いわば漁師が網元になる様な感じではないか。つまり漁師が今まで自分で魚を捕っていたものが、網元となり漁船に網を貸して分け前を受け取ることにより、一挙に魚獲量を拡大し始めたという感じではないか。)

アマゾンアソシエイトで一個一個の商品にリンクをつけて販売するのが、従来からのWeb 1.0。アマゾンの商品データベースへのアクセスを認め、アマゾンが卸売りのようになり、専門サイト、小売りがアマゾンの商品を販売するのを支援するのがWeb 2.0。

もちろんデータベースを公開すれば、アマゾンの全世界単一システムObidosに巨大な負荷が掛かるはずだが、それをこなすシステム増強をアマゾンは『あちら側』で行って、Web 2.0を可能としたのだろう。

ウェブサービスにおけるアマゾンの利益率は15%なので、今やアマゾン本サイトよりもウェブサービスの方が利益率が良くなっており、自己増殖的に増えていると。


ブログと総表現社会

米国ではブログ数が2,000万を越え、日本でも500万を越えた。ネット上の玉石混淆問題を解決する糸口が技術の進歩で見えつつあると。


マス・コラボレーション

オープンソース、マス・コラボレーションの例としてウィキペディアを挙げている。ウィキペディア・プロジェクトは2001年1月にスタートしたので、5年強の歴史だが、既にブリタニカの65,000項目に対して、英語では870,000項目にも及ぶ百科事典が既にできあがり、200にも及ぶ言語毎に百科事典がつくられ、日本語版でも16万項目以上に揃ってきた。

誰でも書き込み、修正できるが、それでいてかなりの水準に達している。

不特定多数無限大は衆愚か?

梅田さんは"Wisdom of Crowds"、日本語訳「『みんなの意見』は案外正しい」を紹介している。仮説ではあるが、ネット上で起こっているオープンソース、コラボレーション、バーチャル開発の質の高さを考えると、不特定多数無限大の人が参加する知的プロジェクトは成功している。キーワードは、ここでも情報の『自然淘汰』だ。


「みんなの意見」は案外正しい


羽生善治名人の高速道路論

梅田さんは羽生名人と親しいそうだが、羽生名人はITがもたらした将棋界への影響として、「将棋が強くなるための高速道路が一気に敷かれたということです。でも高速道路を走り抜けた先では大渋滞が起きています」と語ったそうだ。


編集してカットしても、まだあらすじが長すぎて、著者の梅田望夫さんにしかられそうだが、それほど中身の濃い本だった。最近ピカいちの本だろう。


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