日本最初の珈琲店―『可否茶館』の歴史 (珈琲文化研究選書)
以前ご紹介した北軽井沢のエルテをテーマにしたペンション、ヴィラR&Tのホームページに紹介されていたので読んでみた。
エルテの作品は次のように幻想的なものだ。
ヴィラR&Tのオーナー塚田さんはラグビー部の仲間だ。筆者も塚田さんも会社に入ってラグビーを始めたのだが、塚田さんは陸上競技の短距離走が専門で、快足ウィングとして活躍した。
以前彼に会った時に「日本鄭氏子孫会代表」という名刺を貰ったことがある。実は日本最初の珈琲店のオーナーの鄭永慶は鄭ファミリーの一人だ。
コーヒーは元々エチオピアが原産で、アラビア人が好んで飲んだことから1400年頃にはイエメンでコーヒーの栽培が始まり、アラビアから世界に広まった。
1554年にコンスタンチノーブルで「カフェ・カーネス」というカフェができ、ヨーロッパでもベネチアで1645年、イギリスでは1650年にオックスフォードに「ヤコブの店」、ロンドンに「ロッセの店」ができた。1668年に新大陸にコーヒーが伝えられ、1694年にニューヨークに「キングスアーム」というカフェが開店した。
オランダは1614年ころに北イエメンのモカにオランダ東印度会社を設置し、コーヒーの貿易を始めようとしていた。
日本にコーヒーがもたらされたのは1700年頃で、長崎の出島にオランダ人が持ち込んだものと思われる。
開国後外国人と接する日本人の間にコーヒーは飲まれるようになり、明治5年頃には日本人の経営による西洋料理屋も開かれ、コーヒー販売も始まった。
コーヒーに関する物語については、岡山県でル・モンドというカフェレストランチェーンを展開している株式会社山田興産という会社の「倉敷珈琲物語」という大変詳しいサイトを見つけたので、参照して欲しい。
実は筆者の義兄がこのル・モンドの近くのJR山陽線西阿知駅のそばに住んでいる。今度訪問したときに、ル・モンドも行ってみようと思う。
倉敷珈琲物語のサイトでは、次の本を紹介しているが、サイトだけでほぼ十分な情報が得られると思う。
コーヒー博物誌
日本最初の珈琲店の「可否茶館」は明治21年(1888年)4月13日に鄭永慶によってオープンされた。
この本には当時の読売新聞に掲載された広告文などが載っており、興味深い。
鄭永慶は、1859年生まれ。鄭家は代々長崎に於ける中国語通訳の家柄で、祖先は「国性爺合戦」(こくせんやかっせん)で有名な鄭成功である。
鄭永慶の父、鄭永寧は英語と中国語ができたので、外務省に登用され、支那代理大使を勤めた。
鄭永慶は明治7年に渡米し、エール大学に留学した。このときの学友に金子堅太郎、駒井重格、田尻稲次郎、目賀田種太郎などそうそうたる顔ぶれがいる。鄭永慶は腎臓病のため、学業半ばで帰国し、駒井が校長となっていた岡山師範学校に教頭として赴任した。
その後岡山師範学校を辞し、田尻稲次郎の推薦で、大蔵省に奉職するが、学位がないので重用されず、明治20年に辞職し、明治21年に上野で2階建ての「可否茶館」をオープンする。
金子堅太郎、井上馨などが、不平等条約を改訂しようとして鹿鳴館をオープンしたのは明治16年(1883年)のことだ。
鄭永慶は表面だけの欧米主義で、国民の役に立たない鹿鳴館外交に反発し、知識の広場となる喫茶店を開店して、若者の社交場にしようと「可否茶館」をオープンしたものだ。
「可否茶館」はコーヒーの他、ドイツやボルドーワイン、タバコはキューバ、マニラ、そしてパン・バターやデザート3品を置いていた。
料金はコーヒー一杯1銭5厘、ミルク入りは2銭だった。当時はそばが1杯1銭前後だったという。
コーヒーを出す他、トランプ、碁、将棋などのゲームができ、更衣室もあり、クリケットができた様だ。
東大の学生などもひいきにしていた様だが、経営は火の車だった。そのうち鄭永慶は「可否茶館」を抵当に入れて借金をして相場に走るが失敗し、土地を手放さなければならなくなり、「可否茶館」は明治25年に閉店となる。
鄭永慶は、父の財産を失ってしまって申し訳ない思いで、アメリカに渡りシアトルに住んだが、渡航後2年弱の明治28年に病気でシアトルで客死する。享年37歳だった。
この日本最初の「可否茶館」を記念して、2008年4月13日に日本最初の「可否茶館」の記念碑がつくられた。
鄭ファミリーの子孫、北海道で「可否茶館」チェーンを運営するユニマット・キャラバン、跡地にオフィスを構える三洋電機、UCC、キーコーヒーなどコーヒー業界の関係者が集まって、オープニングパーティを開いている。
余談になるが筆者もコーヒーを毎日のように飲んでいる。しかしエチオピアが原産だったこと、日本最初のカフェを筆者の友人の先祖がオープンしたことなど、全然知らなかった。
筆者は豆から直接コーヒーを入れるナショナルのキャリオカというコーヒーメーカーでコーヒーを飲んでいる。
【当店ポイント2倍 5/26 9:59迄】ナショナル 沸騰浄水コーヒーメーカー5カップ(670ml)【税込】 NC-A55-K [NCA55K]【2P08522】
豆の種類にはこだわらない。もっぱらブラジルとコロンビアが多い。こだわるのは焙煎方法だ。炭を使っての深煎りで、イタリアンローストかフレンチローストの豆を使っている。
ミルクも砂糖も入れず、ブラックで飲んでいる。
当初はサイフォンとアルコールランプでコーヒーを入れていたが、洗うのが面倒くさくって、最近はほとんどドリップだ。キャリオカで入れたコーヒーはドリップとしては最高だと思う。
短い間だったが庶民の社交場としてオープンした「可否茶館」の高い志と、時代に先んじすぎて事業としては失敗だった結末を描いている。豆知識としても参考になる本だ。
参考になれば次クリック投票お願いします。