2008年05月29日

日本最初の珈琲店 喫茶店のルーツ

日本最初の珈琲店―『可否茶館』の歴史 (珈琲文化研究選書)

珈琲店






以前ご紹介した北軽井沢のエルテをテーマにしたペンションヴィラR&Tのホームページに紹介されていたので読んでみた。


ヴィラR&T2






エルテの作品は次のように幻想的なものだ。

ヴィラR&T4






ヴィラR&T6






ヴィラR&Tのオーナー塚田さんはラグビー部の仲間だ。筆者も塚田さんも会社に入ってラグビーを始めたのだが、塚田さんは陸上競技の短距離走が専門で、快足ウィングとして活躍した。

以前彼に会った時に「日本鄭氏子孫会代表」という名刺を貰ったことがある。実は日本最初の珈琲店のオーナーの鄭永慶は鄭ファミリーの一人だ。

コーヒーは元々エチオピアが原産で、アラビア人が好んで飲んだことから1400年頃にはイエメンでコーヒーの栽培が始まり、アラビアから世界に広まった。

1554年にコンスタンチノーブルで「カフェ・カーネス」というカフェができ、ヨーロッパでもベネチアで1645年、イギリスでは1650年にオックスフォードに「ヤコブの店」、ロンドンに「ロッセの店」ができた。1668年に新大陸にコーヒーが伝えられ、1694年にニューヨークに「キングスアーム」というカフェが開店した。

オランダは1614年ころに北イエメンのモカにオランダ東印度会社を設置し、コーヒーの貿易を始めようとしていた。

日本にコーヒーがもたらされたのは1700年頃で、長崎の出島にオランダ人が持ち込んだものと思われる。

開国後外国人と接する日本人の間にコーヒーは飲まれるようになり、明治5年頃には日本人の経営による西洋料理屋も開かれ、コーヒー販売も始まった。

コーヒーに関する物語については、岡山県でル・モンドというカフェレストランチェーンを展開している株式会社山田興産という会社の「倉敷珈琲物語」という大変詳しいサイトを見つけたので、参照して欲しい。

実は筆者の義兄がこのル・モンドの近くのJR山陽線西阿知駅のそばに住んでいる。今度訪問したときに、ル・モンドも行ってみようと思う。

倉敷珈琲物語のサイトでは、次の本を紹介しているが、サイトだけでほぼ十分な情報が得られると思う。

コーヒー博物誌


日本最初の珈琲店の「可否茶館」は明治21年(1888年)4月13日に鄭永慶によってオープンされた。

この本には当時の読売新聞に掲載された広告文などが載っており、興味深い。

鄭永慶は、1859年生まれ。鄭家は代々長崎に於ける中国語通訳の家柄で、祖先は「国性爺合戦」(こくせんやかっせん)で有名な鄭成功である。

鄭永慶の父、鄭永寧は英語と中国語ができたので、外務省に登用され、支那代理大使を勤めた。

鄭永慶は明治7年に渡米し、エール大学に留学した。このときの学友に金子堅太郎駒井重格田尻稲次郎目賀田種太郎などそうそうたる顔ぶれがいる。鄭永慶は腎臓病のため、学業半ばで帰国し、駒井が校長となっていた岡山師範学校に教頭として赴任した。

その後岡山師範学校を辞し、田尻稲次郎の推薦で、大蔵省に奉職するが、学位がないので重用されず、明治20年に辞職し、明治21年に上野で2階建ての「可否茶館」をオープンする。

金子堅太郎、井上馨などが、不平等条約を改訂しようとして鹿鳴館をオープンしたのは明治16年(1883年)のことだ。

鄭永慶は表面だけの欧米主義で、国民の役に立たない鹿鳴館外交に反発し、知識の広場となる喫茶店を開店して、若者の社交場にしようと「可否茶館」をオープンしたものだ。

「可否茶館」はコーヒーの他、ドイツやボルドーワイン、タバコはキューバ、マニラ、そしてパン・バターやデザート3品を置いていた。

料金はコーヒー一杯1銭5厘、ミルク入りは2銭だった。当時はそばが1杯1銭前後だったという。

コーヒーを出す他、トランプ、碁、将棋などのゲームができ、更衣室もあり、クリケットができた様だ。

東大の学生などもひいきにしていた様だが、経営は火の車だった。そのうち鄭永慶は「可否茶館」を抵当に入れて借金をして相場に走るが失敗し、土地を手放さなければならなくなり、「可否茶館」は明治25年に閉店となる。

鄭永慶は、父の財産を失ってしまって申し訳ない思いで、アメリカに渡りシアトルに住んだが、渡航後2年弱の明治28年に病気でシアトルで客死する。享年37歳だった。

この日本最初の「可否茶館」を記念して、2008年4月13日に日本最初の「可否茶館」の記念碑がつくられた。

鄭ファミリーの子孫、北海道で「可否茶館」チェーンを運営するユニマット・キャラバン、跡地にオフィスを構える三洋電機、UCC、キーコーヒーなどコーヒー業界の関係者が集まって、オープニングパーティを開いている。

余談になるが筆者もコーヒーを毎日のように飲んでいる。しかしエチオピアが原産だったこと、日本最初のカフェを筆者の友人の先祖がオープンしたことなど、全然知らなかった。

筆者は豆から直接コーヒーを入れるナショナルのキャリオカというコーヒーメーカーでコーヒーを飲んでいる。

【当店ポイント2倍 5/26 9:59迄】ナショナル 沸騰浄水コーヒーメーカー5カップ(670ml)【税込】 NC-A55-K [NCA55K]【2P08522】【当店ポイント2倍 5/26 9:59迄】ナショナル 沸騰浄水コーヒーメーカー5カップ(670ml)【税込】 NC-A55-K [NCA55K]【2P08522】


豆の種類にはこだわらない。もっぱらブラジルとコロンビアが多い。こだわるのは焙煎方法だ。炭を使っての深煎りで、イタリアンローストかフレンチローストの豆を使っている。

ミルクも砂糖も入れず、ブラックで飲んでいる。

当初はサイフォンとアルコールランプでコーヒーを入れていたが、洗うのが面倒くさくって、最近はほとんどドリップだ。キャリオカで入れたコーヒーはドリップとしては最高だと思う。


短い間だったが庶民の社交場としてオープンした「可否茶館」の高い志と、時代に先んじすぎて事業としては失敗だった結末を描いている。豆知識としても参考になる本だ。


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2008年05月28日

インターウォーズサイトでスティーブン・ジョッブスの歴史的スピーチが紹介されている

2008年5月28日追記:

以前あらすじを紹介したインターウォーズの吉井さんのコラムに、アップルCEOのスティーブン・ジョッブスが、2005年のスタンフォード大学の卒業式で行った"Stay hungry, stay foolish"と呼びかける伝説のスピーチが字幕付きで紹介されている。

インターウォーズ吉井さんコラム






実に感動的なスピーチだ。筆者も何回も聞いてしまった。



筆者注:もともとの「字幕」というサイトが閉鎖されたので、YouTubeの映像を載せています。


2008年5月21日初掲:

「新規事業」はどうすれば育つのか


リクルート出身で企業内起業の支援を専門とするインターウォーズ社長の吉井信隆さんの起業の心得。

知人が吉井さんの会社に入ったので、この本を読んでみた。

筆者も昨年まで従業員40名程度の創業数年目の会社に出向し、システムそして営業を担当していた。

4年半の出向だったが、大変良い経験になった。知人もその会社の同僚だったが、先日会ったときに、もっと前にこの本を読んでいればまた違ったのにと言っていた。

インターウォーズの企業内起業支援は30社の支援実績がある。いわゆるハンズオン型で経営チームの人材を紹介し、知恵も出し、お金も出すという。

吉井さんが居たリクルートではRING(リクルート・イノベーション・グループ)と称する社内公募による新規事業インキュベーションにより、2,000億円を超える売上高を創り出したという。

フロムA、ゼクシィ、ホットペッパー、タウンワーク、R25らはすべてこのRINGから生まれた新規事業である。

江副さんの「リクルートのDNA」という本のあらすじはこのブログで紹介しているが、「自ら機会をつくり出し、機会によって自らを変えよ」というスローガンで、社内にPC(プロフィットセンター)と呼ぶマネージメントチームをつくり、企業内起業で起業家を育てるしくみをつくった。


企業内起業家の条件

企業内起業家にはマネジメント力より気力・体力が必要だと吉井さんは語る。経営者と起業家は求められる資質が違う。経営はマネジメントであり、合理的判断によって効率よく人を動かし、組織を運営し、利益を上げるかが求められる。

一方、起業家に必要なのは、情熱、挑戦するスピリッツ、パッションを伴った行動力である。自分の理想や夢を信じる力と言っても良い。だから吉井さんは、起業家になりたいという人と会うとき、その人がどんな優れたマネジメント力をもっているかより、強い信念や理想の下に気力と体力がみなぎっているかに注目するのだと。

吉井さんは候補となる人に次の質問をするという。

1.今の仕事を達成することに負けないほど、物事に改良を加えたいという望みを常に抱いているか?
2.風呂に入っているときに、新しい仕事のアイデアについてについてあれこれ思いをめぐらせ、わくわくしているか?
3.新しいアイデアを実現される方法を考える際に、どんな行動を起こすか具体的に思い浮かべることができるか?
4.ときどき、権限を逸脱したことをしようとしてトラブルを起こしているか?
5.仕事が失敗しそうという厳しい状況を、うまく乗り切ったことがあるか?
6.あなたは、支持者と批判者の両方が人一倍多いほうか?
7.頼りにできる仕事上の人脈ネットワークを持っているか?
8.他人があなたのアイデアの一部を実行しようとしてもたついているのを見ると、すぐにイライラしてくるほうか?
9.何でも自分でやらなければ気が済まないという気持ちを抑えて、チームのメンバーと一緒に、あなたのアイデアに取り組むよう努力することができるか?
10.もし成功した場合に相応の報酬が受けられるなら、あなたのアイデアを試してみるチャンスと引き替えに、多少の減俸も辞さない覚悟があるか?

6つ以上当てはまった場合、その人物はすでに企業内起業家としてのキャリアに向けて、意識の中で行動し始めていると言えるという。

企業内起業で役員の支援の役割は大きい。

担当役員は人物を見抜ける目利きか?担当役員はプロデューサーであり、インキュベーターであるという。リクルートからオールアバウトをジョイントベンチャーとして社内起業した江幡哲也さんは、リクルートの役員が後ろ盾になっていたという。

その他、経営トップ、メンター、インキュベーターの役割も述べられている。吉井さんの同僚には、インキュベーションマザーとも呼べる北條夏旭さんが居るという。彼女の言葉が勇気を与えた例としてペットウィズの柿本社長が挙げられている。

インターウォーズには企業内起業家向けの専用ブースがあるという。いわば「出島」として本社とは距離を置いて活動するのだ。

資本構成は母体企業に、時にはノーと言える様に、アライアンス先や金融会社から1/3以上は出資して貰う形が理想だという。

なるほどと思う。

インターウォーズのインキュベーション応募フォーマットが紹介されている。これには、次のようなチェックポイントが記載されている。

1.事業プラン
(どのような事業なのかを簡潔にまとめて、できるだけ30文字以内で表現してください)
2.事業基本フレーム
3.商品・サービス
4.ターゲット
5.マーケット
6.マーケット(これだけ2回出てくる)
7.初期投資と中期目標
8.競合・優位性
9.実現に向けて
10.課題
11.リスク
12.その他


起業が適当かどうか、スクリーニング基準シート、事業開発のフェイスシート、事業化の歳のチェックポイントなど、実戦的なシートが紹介されている。

事業コンセプトを固めるにあたって、スタート時から撤退基準を決めておくことも重要だ。

たとえばリクルートでは「3年以内に単年度黒字にならないと撤退する」という考えがあったが、通信回線リセールのINS事業とスーパーコンピューターの時間貸し事業はズルズル言ってしまい、もっと早い段階で撤退していたら、リクルートの今日の姿は違っていたかもしれないという。

社内関係者たちからの熱を冷ますような圧力の例として、売上に対するプレッシャーが挙げられている。例えばサントリーの「伊右衛門」は大ヒット商品になっているが、商品開発には何度も失敗して5年掛かっているという。

サントリーの鳥井さんの有名なせりふ「やってみなはれ」という企業風土もあったと思うが、「減点主義」のはびこる大企業が多い中で、長期スタンスで経営陣がよく待ったことに吉井さんは感心している。

3年継続すれば成長ラインに乗るケースが多いと。

「この事業はなんとしてもやり抜く」という気概を持って、ゆるがないコアコンピタンスを持ち、「燃える人間集団」をつくることだと吉井さんは語る。

吉井さん自身もリクルートで首都圏営業部長から企業内起業で、新規事を立ち上げ、以来12年間で30社あまりのインキュベーションに携わったという。

1社でも多くインキュベーション支援することによって創造し、雇用を生み出すことで日本を元気にしたいという思いから吉井さんはインターウォーズ事業に乗り出したという。

本だけではなかなか伝えられない部分が多いが、ベンチャーにも最も重要なメンタルなコーチングも含め、様々な企業内起業支援のノウハウが吉井さんの会社には詰まっていると感じる。

吉井さんの片腕であるインキュベーションマザーの北條夏旭という人もどんな人なのか興味がある。

企業内起業を考えている人は、吉井さんのインターウォーズに相談されることを是非おすすめする。


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2008年05月26日

バイオラバーの山本化学がハイテク水着素材を発表!

2008年5月26日追記:

昨年水道橋博士の「博士の異常な健康」のあらすじを紹介した時に、バイオラバーという副作用のない抗ガン剤をつくっている山本化学を紹介した。

その山本化学が、今度はスピード社のレーザーレーサーに対抗するハイテク水着で一躍脚光を浴びた。

表面をたこ焼き板の様にでこぼこにして、くぼみに水の分子を吸着し、水の抵抗を限りなく減殺するという素材だ。

水道橋博士が紹介していたバイオラバーは半信半疑というところだったが、このハイテク水着でブレークすれば、バイオラバーも注目されるかもしれない。

加圧式トレーニングといい、ホットな話題なので水道橋博士の本のあらすじを再掲する。


2007年11月20日初掲:

博士の異常な健康
博士の異常な健康


タレント水道橋博士漫才コンビ浅草キッド)が実際に取り入れている健康法を紹介したレポート。

水道橋博士は時々テレビなどで見るが、たけし軍団だったとは知らなかった。

そのまんま東(東国原知事)は元国体ハンドボール選手で、今でも月300キロを走るランナー、井手らっきょうは100メートル11秒台、ラッシャー板前は柔道の黒帯、たけし自身もスポーツ万能ということで、たけし軍団はスポーツマン揃いだが、水道橋博士は体も小さいし、コンプレックスがあったという。

だから加圧式トレーニングにハマり、筋力トレーニングを続けているのだという。

水道橋博士の芸名は、鉄腕アトムのお茶の水博士のパロディだ。


ためしているのは次の6種類だ。

1.育毛技術

プロピアというヘアコンタクト(カツラ)メーカーが出している「シェルタ」という育毛マシーンと、プロテインシャンプー。

シェルタとは、美容院のパーマの様なヘッドセットを装着する育毛マシーンだ。SF映画に出てくる洗脳マシーンの様だ。

Propia







ヘッドセットの中で減圧・加圧が繰り返され、毛穴が開いてきた時に超微粒子化された育毛剤が噴霧されて毛穴にしみこみ、まるでヘアトニックのような感覚があるという。

プロテインシャンプーも試したら数ヶ月で抜け毛が減り、効果があったという。

水道橋博士は以前から薄毛で悩んでおり、ロゲイン(ミノキシジル)や飲む育毛剤プロペシア(フィナステリド)を常用してきたが、このプロテインシャンプーが最も効果があっただろうと語る。

但し、人によっては毛髪の再生サイクルが失われているケースもあり、その場合には精巧に作られたヘアコンタクト(カツラというよりも植毛)が役に立つ。

ヘアコンタクトは、テイジンの開発した人工毛髪を、日東電工が開発した装着フィルムと、開発費10億円掛けた吸着剤で頭皮に接着するので、シャンプーやブラッシングもできるというスグレものだ。

最後に水道橋博士は唐沢俊一氏の「育毛通」という本を推薦している。頭髪に悩みのある人は、本も読んではどうかと。この本に詳しく紹介されているが、水道橋博士は1に禁煙、2に栄養バランス、3に頭皮を清潔にすることが重要だとアドバイスする。

育毛通 (ハヤカワ文庫 JA (598))
育毛通 (ハヤカワ文庫 JA (598))



2.近視矯正手術

最近ではかなり広まってきた近視矯正手術を、水道橋博士は1988年、つまり約20年前に受けたという。

ソビエト伝来のRK手術で、角膜の中央を除いた部分にダイヤモンドメスで放射状に切れ目を入れ、凸レンズの焦点を修正するというもの。

大体視力が10倍になるということで、博士も0.07だった視力が、0.7に回復したという。時間は15分で完了。念のため片目ずつ手術したが、目の前にメスがせまり、目に切れめを入れる恐怖はすごかったという。

現在は人の手で切るRK法は衰退し、コンピューターコントロールされたエキシマレーザーで角膜を削るPRK法とLASIK法が主流で、手術の失敗率も格段に減少した。

日本では保険治療でもなく数十万円かかるが、外国ではもっと安く手術が行える様で、筆者の知人でも海外で手術した人がいる。

日本ではまだ年間5万件(2005年)という話だが、アメリカでは2000年以降100万件を突破しているという。

有名人では、タイガー・ウッズ選手、倖田夾未などがいる。テレビ東京のワールドビジネスサテライトにコメンテーターとして出演しているBCG(ボストン・コンサルティンググループ)の御立尚資さんも、ある日突然メガネなしで出演し、実は視力回復手術を受けたのだと語っていた。

筆者自身は乱視が強いので、手術に向かないのではないかと思っているが、そのうち気が変わって手術を受けるかもしれない。それほどに一般化してきた感がある視力回復手術である。


3.胎盤エキスは不老薬?

芸能人に胎盤エキスが流行しているという。

自ら公言している杉本彩の他、噂に上っている人たちだけで、木村拓哉、神田うの、川島なお美、森光子、叶姉妹などが使用していると噂されている。

作家の村上龍幻冬舎の見城徹社長、さだまさし、K−1の角田信朗、元レーサーの鈴木亜久里も利用者だという。

水道橋博士自身も、胎盤エキス治療に取り組んでいるこうじんクリニックの越智先生とかなり前から知り合いだったので、胎盤エキス治療を受けているのだという。

人の胎盤由来物を医薬品として認めているのは、世界でも日本、ロシア、韓国だけだそうだが(他の国は羊など動物の胎盤)、日本では1959年から肝硬変の医薬品として正式に認可を受けている。

胎盤と聞くと、なにやら気持ち悪い感じがあるが、胎児を育てるためにアミノ酸、ビタミン、ミネラル、酵素、核酸などの栄養分が含まれており、さらに多種類の細胞増殖因子が含まれているという。

中国では秦の始皇帝が不老不死の薬として使っていたと言われ、楊貴妃も使っていたと言われているそうだ。

筆者はあまり好まないので、リンクは付けないが、興味のある方はウィキペディアで「胎盤」で検索して見て頂きたい。詳しい記事が図解とともに載っている。

胎盤エキス治療の効果は、若さの保持と、関節痛や筋肉痛の解消にも効果的という。

こうじんクリニックでは胎盤エキスをツボ注射する治療法を行っているが、これは猛烈に痛いのだという。他の方法としては点滴があるが、毎日点滴を打つよりも、一週間一度のツボ注射の方が効果的だという。

芸能人はなぜ老けない?その答えの一つが胎盤エキス療法かもしれないという。


4.ファスティング(断食)

ファスティング(断食)は小川直也が、柔道からプロレスラーに転向した時に使った強烈な肉体改造術として有名になった。

3日間、水とファスティングジュースという野菜の青汁のようなもの以外は、食事は一切取ってはいけないそうだ。

水道橋博士は、夜腹が減って眠れないので困ったという。

体重は3日間で、5キロ(元が59キロなので、1割)減ったという。

ファスティングが体によいのは、疲れ切った胃や腸を休ませ、消化液を出さなくてすむ期間をとることによって、オーバーホールできるからだという。

石原慎太郎都知事もファスティングを評価しており、「老いてこそ人生」のなかで、次のように語っているという。

「私がいいたいのは、断食という通常では誰も本気で考えない、つまり食を断つという行為が肉体を根源的に立ちなおらせるという機能のメカニズムの中に限られた識者は知っていようと、万人に共通する肉体の素晴らしい秘密が窺えるということです」(原文のママ)

老いてこそ人生
老いてこそ人生


3日間断食を続けるのは大変だが、それだけ続けると胃も小さくなって、断食後も効果はあるだろう。

1日程度であれば普通の人でもやれるかもしれない。ダイエットと言うよりは、自分自身をコントロールできたという精神的な効用がある様だ。

石原さんも力説するなら、試してみる価値はあるかもしれない。


5.バイオラバー 

水道橋博士は強度の肩こりに悩まされていたが、ある時知人から紹介されたバイオラバーを使ってみたら、肩こりが消えてしまったという。

バイオラバーとは、高純度石灰石をベースにした発泡体ラバーに、貴金属鉱物粒子などを織り込み、波長4〜25マイクロメートルの赤外線放射機能を持たせたものだそうだ。

たった15センチくらいの三角巾で3万円もする。ベルトが11万円、ベストだと36万円だ。

メーカーは山本化学工業という会社で、ウェットスーツのラバーでは世界シェア60%のニッチ分野のトップ企業だ。消しゴム付きの鉛筆はこの山本化学の発明だそうだ。

その会社の2代目山本社長が、個人的に惚れ込んだのがバイオラバーだ。

バイオラバーは人間に最も良い波長を放射する装置なのだという。人体は一定の波長を持つ電磁波を常に帯びているが、バイオラバーは人体発の電磁波と共振するので、あたかも電子レンジのように体の中の分子の振動が大きくなり、自然治癒力を呼び起こすのだという。

バイオラバーは副作用のない抗ガン剤だという。

水道橋博士はバイオラバー応援サイトを立ち上げて、情報集約を図っている。

学会でも取り上げられる様になってきているという。

筆者はまだ半信半疑だが、もっと安くなれば試してみようかなという気になった。


6.博士の愛した加圧式トレーニング

この本のメインテーマであり、表紙の写真にもなっているのが加圧式トレーニングだ。

加圧式トレーニングの発明者、佐藤義昭氏の「加圧トレーニングの奇跡」も先日読んだが、あまり面白みのないまじめな本なので、そのあらすじを紹介するよりも、水道橋博士の加圧トレーニングの話の方が、具体例が多くわかりやすいので、この本を読んでみた。

加圧トレーニングの奇跡―免疫力を高める
加圧トレーニングの奇跡―免疫力を高める


理論的には血流を制限することで筋肉を酸欠状態にして、高地トレーニングをしている様に筋肉をだまし、低負荷・短時間で成長ホルモンを大量に分泌させ、最大限の効果を挙げるというものだ。

加圧トレーニングでK−1の現役に復帰した角田信朗氏も「この衝撃は人生の中でもエポックメーキングな出会い」と語っており、体重は過去最高の100キロ、上腕囲もトレーニングを始めて5日間で6センチ増え、20代の時よりも今のほうが筋肉量がアップしたという。

実は筆者も加圧式トレーニングの推奨者、東大の石井教授から勧められて4年ほど前から実施している。

筆者はトレーニングウェアに血流を制限するベルトが腕と太ももについているフェニックス社のカーツを使って、週1〜2回自宅でダンベルでトレーニングしている。

上腕囲のサイズは測定していないが、たしかに昔のサイズに近い様な気がする。

元々は正座による脚のしびれから発想した加圧トレーニングだが、腕と脚にベルトを巻くことを試行錯誤で行い、だんだんにシステム化して現在は筋肉アップ君というベルトと、前述のフェニックス社のトレーニングウェアを販売している。

この本の表紙でも水道橋博士が加圧ベルトを装着している写真が載っているが、水道橋博士は「わずか15分、週1回のトレーニングでムキムキ&若返りが実現」とセールストーク調に紹介している。

加圧トレーニングは、リハビリや重症患者にも効果が認められており、寝たきりにさせない、痴呆にさせないトレーニングとして、今後の日本社会にとって不可欠なものだという。

佐藤会長は加圧トレーニングの特許を各国で取得し、1995年に東大の石井教授との共同研究を開始した。当初懐疑的だった元ミスター日本の石井教授も、非常識なトレーニングの効果を認識し、積極的に広めた。

プロスポーツ選手は自分のトレーニング法を公開しない人が多いが、加圧トレーニングを公表しているスポーツ選手もいる。

ゴルフの杉原輝男は、週1回大阪の自宅から府中まで通い、30代の体力が戻ったと言っているそうだ。K−1の角田師範の他、武蔵、レスリングの永田克彦、ロッテのジョニー黒木、金田正一さん、有名サッカー選手、力士、トップリーグのラグビーチーム、甲子園に出場した高校の多くが取り入れている。

マリオンジョーンズが薬物使用を告白して、記録抹消、メダル剥奪され、バリーボンズも同様の結末を迎える可能性が強い。

ステロイドとか薬物の力を借りて筋肉をつくることは、副作用もあり、絶対にやってはならないことだ。筆者は昔パワーリフティング/ボディビルをやっていたこともあり、当時のボディビルの世界チャンピオンで廃人になったという噂の人も知っている。

しかし加圧トレーニングは、全く薬物などを使わない、短時間でできる画期的トレーニング法である。

リハビリのみならず、NASAも宇宙飛行士の筋力維持に注目しているそうで、いずれは誰もが普通にやっているトレーニング法として定着するのではないかと思う。


この本は水道橋博士が実践している6種類の健康法を、気楽に楽しく読める。一読をおすすめする。


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2008年05月23日

10年先を読む長期投資 澤上さんの長期投資のすすめ

10年先を読む長期投資 暴落時こそ株を買え (朝日新書 108)


さわかみ投信の澤上篤人社長の長期投資のすすめ。

日本のファンドマネージャーの中でも澤上さんは長期投資の第一人者だ。

澤上さんは37年前から長期投資の実践を始め、現在はさわかみファンドという長期投資専門のファンドをつくって、サラリーマンなど一般人を中心に12万人が投資し、資産規模も2,000億円に達している。

長期投資は、経済指標、相場動向、企業の業績見通しなどはすべて無視する。そのかわり「将来どんな社会を築いていきたいのか」をひたすら考えて、将来像を実現できるような企業を選び出し、株主として支援する。

社会をよくすることができ、自分の収入も増えて豊かになるのが長期投資の目標だ。花や野菜が育つのを待つのと同じ非常にシンプルでマイペースである。

澤上さんは預貯金信仰は今も根付いており、たしかに預貯金利率が7%前後の時は、預貯金が確実な運用先だったが、今、預貯金では財産を食いつぶしてしまうと指摘する。

「バビロンの大富豪」のあらすじで紹介した通り、「自分のお金にも働いて貰う」ことが必要なのだ。

長期の株式投資は定期預金金利よりも高利回りで、複利で運用することで、お金にも働いて貰うのだ。

日本の貯蓄率は世界でも群を抜いて高いと言われてきたのは、昔のこととなってしまった。日本の貯蓄率は高度成長時代の1975年には23%に達し、おおむね10%で推移していたが、2000年代に入って下落し始め、2004年度にはなんと2.7%にまで下落している。これは1949年以来の低い水準だ。

給料が伸び悩んだことと、社会保障費負担がふえたことが貯蓄率下落の要因だ。

貯蓄するどころか生活費まで削って暮らす人たち、貯蓄を食いつぶしていく人たちが急速に増えているのだ。

株式会社の原型は、大航海時代に船に出資して数年後安全に戻ってくれば利益を配分するというものだ。これは現代の長期投資と同じ考えであると。

澤上さんの基本となる考え方は次の通りだ。

1.株価はいつも景気や業績に先行する
その理由はいつの時代でも投資家の心理が行き過ぎてしまうからだと。

2.景気のおおきなうねりを先取りする

3.みんなで豊かになることを意識する

4.暴落したらご機嫌で買う

澤上さんは村上ファンドショックで株が下落したときも、サブプライムショックで下落したときも大量に株を買ったという。

バブル崩壊の時も、澤上さんの様な長期投資家がたくさんいれば、買って買って買いまくることで相場の自律回復も呼び込め、土地や株価の下落にブレーキを掛けられたのではないかと語る。

事実アメリカでは2001年9月11日の後、取引再開の9月17日から一週間で14%下落したが、出来高は市場最高水準だった。売りが殺到して市場がパニックになっている状態で、長期投資家たちは大量の買いを入れてニューヨーク市場を支えたのだと語る。

長期投資の実践は次の通りだ。

1.5年先、10年先の社会が必要としているものを考え、それを供給しようとしていて応援したい企業を徹底的に考えて選び出しておく。

2.そういった企業の株を相場暴落等の時に思いっきり買う

3.あとはのんびり5年、10年待つ

4.景気が上昇段階に入って、株価が上がってきたら保有株の一部を売る
  →1.に戻る

長期投資をしたい企業を選ぶには、自分が将来どいう社会をつくっていきたいのか、子どもや孫をどんな社会に住まわせたいのかを考えて将来像を描き、それを実現してくれそうな企業を長期投資で応援するのだと。

たとえば高齢化社会の日本で、介護人口の不足が予想される場合には、介護ロボットをつくっている企業を長期投資で応援するとかだ。

よく経営者を見て判断するというアナリストがいるが、澤上さんは、そういうアナリストは傲慢なだけで、経営者にすれば失礼な話だと。経営者はアナリスト対策でなく、経営に徹して貰えば良いと。

長期投資の売り時は、景気のうねりに乗って上昇期に入り、そろそろ良いところに来たなと思った時だという。さっさと利益確定の売りを出すという。

街に人出が出て、活気づいたり、若い人でもお金を派手につかっていると感じたときに、そろそろ利食いしようと感じるという。

ただし持ち株のすべては売らず、2/3とか4/5ぐらいを利食うのだと。そしてその利益を使って、景気下降場面でまた同じ株を買うのだと。

長期投資には「損ぎり」はないが、「縁きり」はあると。見込み違いの場合には縁を切るのだ。

澤上さんは、2000年にブリジストンがファイアストンのリコール問題で最大顧客のフォードと対決したときも、3日考えて結局応援することを決め、株を買い増ししたという。


投資信託

投資信託は信託財産なので、安全性は預金よりも高い。あとは運用能力の問題だ。

3,000本もある投資信託から銀行などにすすめられるままに買っては、銀行が儲かるだけだ。

日本の個人資産に占める投資信託の割合は、2004年の2.1%から2007年9月には5%にまで上がってきた。しかしまだ米国の14.3%などに比べて低い。

アメリカやヨーロッパでも1980年代には投資信託は1%程度だったのが、インフレ下の不況が長期化して、預金だけに頼ってはまずいと思った人たちが投資信託に資金を振り向け、10%を超えたのだ。ちょうど今の日本の状況と似ている。

投資信託には販売手数料と信託報酬の2種類がある。

5年以上にわたって流入が流出を上回っているのは10本ちょっと。毎月のペースになると1本か2本だという。

投資信託は販売努力を重ねるものではなく、売れてしまう物だと澤上さんはいう。アメリカでは2005年では54%がノーロード型(販売手数料ゼロ)だと。

澤上さんの勧める投資信託の選び方は次の通りだ。

1.10万円ほどの資金を用意する

2.販売手数料の高い投信は外す

3.運用期間を設定していたり、継続投資ができなかったりする投信もはずす

4.運用している純資産額が安定的に増えている投信を中心に、これはと思う物を1万円ずつ10本ほど購入する。

5.体験してみたファンドの中に、長期投資を基本的な運用方針に据え、真に投資家の財産作りに貢献するというところが見つかれば継続投資していく。

この方法ならすぐにでもできるし、リスクもないと思う。

これがさわかみファンドの運用方針である。

アメリカにはインベストメントカンパニーオブアメリカという過去74年間の運用実績が12.8%というすごいファンドがある。これは販売手数料を5.75%取るが、普通はICAファンドを10年、20年保有するはずなので、販売手数料の5.75%なんて気にしないはずという理屈だ。

高い販売手数料を課すことで、短期投資家を足切りし、長期投資家だけを対象にして純度の高い資金を運用して大成功し、現在の運用資産は11兆円だという。

直接販売の投信会社がねらい目で、さわかみファンドもそうだという。

ありがとうファンドというありがとう投信株式会社が2004年に設定した長期投資型のファンドがある。

札幌、甲府、長崎、富山、水戸の有力税務会計事務所を母体として、地元の人々の財産作りをお手伝いするために設立されたのだと。

地元の会計士達と澤上さんがファンドオブファンズの形で世界に投資している。

クレディセゾンが運営しているノーロードのバンガード社のインデックスファンドと、ファンドオブファンズの2本も注目だという。

澤上さんは日本各地で講演しているが、一般人の投資家が増え、おらが町の投信をつくり、資金が地元企業に使われ、地域経済の活性化につながるというような理想型で、長期投資が民間版の景気対策につながることを望んでいると語る。

筋肉質の企業かどうか見極めるには付加価値分析を使えという。付加価値とは経費と経常利益をすべて足したもで、5年から10年の期間で見る。

これからのインフレの規模は70年代の数倍になると澤上さんは予測する。というのは70年代は世界の人口は40億人だったが、先進国の人口は7億人で、30億人近い人は社会主義の計画経済にいた。しかし今や世界の人口は70億人で、先進国は14億人、中国沿岸部やインド南西部などの発展著しい地域の人口を加えると20億人。残りの50億人弱も計画経済ではなく、先進国の生活を目指している。

だからあらゆるものが不足するのは目に見えている。世界規模のインフレが起こる。一方給料は上がらず、実質的な収入は下がることになる。

長期投資には今が最高のタイミングだと語る。最高に熱い夏になるだろうと。


最後に澤上さんは「長期投資は国語ですね」という言葉を紹介している。

「どう生きるのか」、「どのような社会を築いていくのか」といった人間としての意志や思い、価値観を反映させたものである。

「世の中思い通りにはいかない」という達観も長期投資を楽にさせてくれる。

投資運用の初心者向けに書いた本で、明日にでも実行可能だ。自社のさわかみ投信のことを全然すすめないのも好感が持てる。

まずは1万円で投信を何種類か買ってみようという気になる。

お金を銀行に預けず投資するなら、おすすめの一冊である。


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2008年05月15日

ブルーオーシャン戦略 未開拓市場をつくって繁栄する企業

ブルー・オーシャン戦略 競争のない世界を創造する (Harvard business school press)


+++今回のあらすじは長いです+++

フランスとシンガポールにキャンパスがある国際ビジネススクールINSEAD(インシアド)を代表するキム教授とモボルニュ教授がハーバードビジネスレビューに発表した論文。

2005年に日本でも翻訳され、話題となった。

バーバードビジネスレビューはダイヤモンド社から日本版も出版されている。以前は会社でも購読していたので、筆者も時々読んでいたが、正直あまり歯が立たなかった論文ばかりだったという記憶がある。

ブルー・オーシャンとは、血の海を意味するレッド・オーシャンに対する言葉だ。レッド・オーシャンが既存市場での競争相手との血みどろの競争を意味するのに対して、ブルー・オーシャンは競争相手のいない独占的な未開拓市場をつくって繁栄するビジネスモデルだ。

ブルーオーシャン戦略の6原則とは次の通りだ。

策定の原則
1.市場の境界を引き直す
2.細かい数字は忘れ、森を見る
3.新たな需要を掘り起こす
4.正しい順序で戦略を考える
実行の原則
5.組織面のハードルを乗り越える
6.実行を見すえて戦略を立てる

この本は具体例で説明している部分が多く、頭にスッと入る。


シルク・ドゥ・ソレイユ

ブルー・オーシャン戦略の典型例として、シルク・ドゥ・ソレイユが最初に紹介されている。

シルク・ドゥ・ソレイユは、火喰い芸人だったギー・ラリベーテがカナダで設立したサーカスをベースにしたエンターテインメントだ。世界各地で常設の劇場やホテルでの常設の出し物がある。

筆者が最初にシルク・ドゥ・ソレイユの出し物を見たのは、米国のフロリダのディズニーワールドで、10年以上前だ。

卓越したアクロバット、よく考えたコミカル、大がかりな舞台、観客を巻き込んだエンターテインメントに感心した。

それからラスベガスのホテルでの出し物(ベラッジオの"O"を見たかったが、チケットが取れなかったのでミラージュの「ミスティア」を見た)、東京に戻って「サルティンバンコ」、「アレグリア」を見た。

最初見た出し物では中国雑技団は参加していなかったが、最近の出し物は中国雑技団のメンバー抜きでは考えられないほど、高度なアクロバットが披露されている。

中国雑技団は話題になったサントリーの「アミノ式」のCMにも出演している。



猛獣使い、アクロバット、ピエロといった従来型のサーカスの最大手リングリング・ブラザース&バーナム&ベイリー・サーカスが100年掛かって達成した売上高を、わずか20年で追い越してしまったという。

シルク・ドゥ・ソレイユは競争相手のいない新しい市場を創造して、高い入場券でも喜んで支払う大人や法人という新しい顧客を惹きつけた。

このように既存の産業を拡張することによって生み出される新しい需要、あるいはこれまでの産業の枠を超えた新しい需要をキム教授はブルー・オーシャンと呼ぶ。


永遠のエクセレントカンパニーは存在するか?

キム教授は過去のエクセレントカンパニーから、永遠のエクセレントカンパニーが存在するかどうか調べたところ、名著「エクセレント・カンパニー」で取り上げられた会社のうち2/3が、5年後には業界リーダーから脱落していたことがわかった。


エクセレント・カンパニー (Eijipress business classics)


ちなみに「エクセレント・カンパニー」の原題は"In search of Excellence"であり、永遠のとは書いていないが、永続的なニュアンスがある。

もう一つの名著「ビジョナリー・カンパニー」は「エクセレント・カンパニー」の二の舞を避けるために、設立後40年以下の会社に対象を絞ったが、それでも「ビジョナリー・カンパニー」が絶賛した企業、たとえばHPは産業全体が好調だったために繁栄できたのだと批判されている。

ビジョナリー・カンパニー ― 時代を超える生存の原則


このような経緯をふまえ、キム教授は1880年から2000年まで、30を超える業界で150以上の戦略的打ち手を研究した。

ブルーオーシャンを創造した企業とレッド・オーシャンから抜け出せずにいる企業を分析した結果、ブルー・オーシャンを生み出す戦略は業界や時代を超えて不変であることがわかったと。

ブルーオーシャンを切り開いた企業は、レッド・オーシャンに居る企業とは異なり、競合企業とのベンチマーキングを行わず、その代わりに「バリュー・イノベーション」という戦略をとっているとキム教授は指摘する。

「バリュー・イノベーション」とは、差別化とコスト低減が2者択一ではなく、両方を実現する新しい需要の掘り起こし戦略だ。顧客や自社にとっての価値を高め、競争のない未知の市場空間を開拓することによって競争を無意味にする。


シルク・ドゥ・ソレイユの戦略分析

具体例で考えないとわかりにくいので、シルク・ドゥ・ソレイユについてのブルーオーシャン戦略分析のための戦略キャンバスとアクション・マトリクスを紹介しておく。いずれもこの本で紹介されている図に従って筆者が作成したものだ。

シルクドゥソレイユの戦略キャンバス






出典:本書60ページ

戦略キャンバスは横軸に競争要因を抜き出し、縦軸で高低を評価した点をプロットして折れ線グラフとしたものだ。シルク・ドゥ・ソレイユ独自の競争要因は、他の競合にはないので、競合者の評点はない。

独自の競争要因をどれだけつくれるかが、ブルーオーシャン戦略の鍵である。

シルクドゥソレイユのアクションマトリクス






出典:本書65ページ

アクションマトリクスは、従来型のビジネスモデルに「減らす」、「取り除く」、「増やす」、「付け加える」の4象限でアクションを整理したものだ。

シルク・ドゥ・ソレイユが取り除いたものは、コストがかかるものばかりで、逆に付け加えたものが、差別化の競争要因となっていることがわかる。


イエローテイルの戦略分析

具体例として取り上げられているものの分析例を、もう一つ紹介しておく。オーストラリア産ワインのイエローテイルだ。

アメリカは世界第3番目のワイン消費国で200億ドル規模の国内市場があり、この2/3をカリフォルニアワインが占めており、フランス・イタリアなどの旧大陸やオーストラリア、チリなどの新大陸の輸入ワインと激しく競争している。

しかし一人当たりのワイン消費量は世界第31位で伸びていない。全米で1,600あるというワイナリーの業界再編が加速し、上位8社が生産量の75%を占め、残り25%を1,600のワイナリーが争っている。まさにレッド・オーシャンだ。

イエローテイルの戦略キャンバス






出典:本書55ページ

多くのアメリカ人がワインを敬遠していたのは、味わいが複雑すぎて堪能できなかったからだという発見に基づき、イエローテイルは、ビールやカクテル飲料の様に気軽に飲め、フルーティな甘さで後味が残らないワインをつくった。

低価格デイリーワインの倍以上の$6.99という価格設定ながら、イエローテイルは2001年7月の発売からわずか2年でアメリカで最も輸入されたワインとなり、瓶入りの赤ワインではカリフォルニア産に代わって全米で販売量トップとなった。

イエローテイルは他のワインブランドを押しのけた訳ではなく、ビール、カクテル飲料を飲んでいた初心者を取り込んでワインの需要を増加させたのだ。

タンニン、オーク樽、こく、深みなどといった要素を取り除き、ボジョレヌーボーの様に熟成せずに出荷するという方針をとったことで、カセラワイナリーズは運転資本を減らし、資金を短期間で回収できるようになった。

品種も今は赤が3種類、白が1種類だが、当初は白赤一種類ずつ、シャルドネとシラーズのみだった。

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イエローテイルのアクション・マトリクスは次の通りだ。イエローテイルは、ワイン界の常識を打ち破って見事にブルーオーシャン戦略を実現したのだ。

イエローテイルのアクション・マトリクス






出典:本書59ページ


余談になるが、筆者もイエローテイルの白、シャルドネを飲んでみた。熟成されていないので、こくも後味もない。いわば味も香りもない焼酎版のワインを飲んでいるようなものだ。クリヤーな味といえないこともないが、正直、筆者はイエローテイルをワインとは呼びたくない気持ちだ。

これならよっぽどチリのフロンテラや南アフリカのKWVの方が安くて、うまいと思うが、こんな味のないワインを好む層も米国にはいるのかもしれない。

飲みやすさだけなら、ポルトガルのマテウスのスパークリングワインの方が良いと思うが、イエローテイルバブルスという名前でスパークリングワインもある様だ。

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ブルーオーシャン戦略の成功事例としていくつもの例が挙げられているので、参考になる例を紹介しておく。


*サウスウェスト航空

ハブアンドスポークシステム(いくつかのハブ空港を軸とした放射線状の路線展開)、空港ラウンジ、機内食、座席の選択肢などを取り除き、心のこもったサービス、便数の多さ、安い運賃に徹して人気を博している。


*ネッツジェッツ社

ウォーレン・バフェットのバークシャー・ハザウェイに買収されたチャーター機の共有サービス。16社で1機を保有し、最初に37万5千ドル払えば、後は飛行機のランニングコストだけで6百万ドルもする専用機を共有できる。

メンバー全員がファーストクラスを使って移動するより割安で、しかも目的地近くの空港に直行でき、移動時間を短縮できるので、ビジネスユーザーに大人気となった。


*NTTドコモのiモード

通信料値下げのレッド・オーシャンから、ケータイによるインターネットアクセスをキラーアプリケーションとしてiモードが1999年に登場した。

スタートして半年で百万人のユーザーが2年後には2千万人、4年後には4千万人になり、一時はドコモの株価総額が親会社のNTTを抜いていたことが記されている。

勿論ドコモはこの本で紹介されているiモードの成功の後、またもやレッド・オーシャンに入ってしまっていることは周知の通りだ。

松永さんの「iモード事件」を読んで知ったのだが、ドコモのiモードは、マッキンゼーがドコモの首脳に提案して、松永さん、夏野さんなど外人部隊が雇い入れられて立ち上げられたサービスだ。

iモード事件 (角川文庫)


勝間和代さんの本には、勝間さんがマッキンゼーに居たときに、ドコモのiモードのコンサルメンバーとして携わっていたことが記されていた。

松永さんがブレインストーミングのために、社内の会議室で開いた「クラブ真理」に出入りする芸能界関係者の「げっく」(月9)発言に、マッキンゼーのメンバーの顔が引きつっていたという一節が思い出される。

iモードの推進者夏野さんがドコモを去ることが決まった今、ドコモがどうやって再度ブルーオーシャン戦略を見つけられるのか注目させる。


*女性専用のフィットネスクラブカーブス

カーブスは1995年にフランチャイズ展開を開始して以来、6,000店もの出店で、会員数が二百万人を突破した。

こじんまりとしたスペースに10台のマシンを円形に配置し、女性会員はおしゃべりしながらトレーニングに励み、30分でサーキットトレーニングを終える。キャッチフレーズは「一日コーヒー一杯のコストで適度なエクササイズと健康が手に入る」だ。


*ブルームバーグ

ブルームバーグが誕生したのは1980年代前半だが、それ以前はロイターとテレレートが金融情報界に君臨していた。ロイターとテレレートはITマネージャー層に適したサービスをしていたのに対して、ブルームバーグはトレーダー向けのサービスに徹して市場を席巻した。

トレーダー向けに二つのスクリーンがついたボタン一つで分析ができる端末を提供し、トレーダーの生活に役立つ情報サービスやオンライン・ショッピング・サービスも付加した。トレーダー達はITマネージャーにブルームバーグシステムへの変更を迫ったという。


*バスメーカー NABI

ハンガリーのIkarus Busの米国法人がスピンアウトしたバス車体メーカー。公共交通部門向けのバス業界では、車両価格の引き下げ競争が常態化していた。NABIは車両価格よりも保守費用の方が高いことに注目し、メインテナンスコストと燃費が良い美しいデザインのグラスファイバー製のバスを導入した。

NABIの新型バスは自治体にも乗客にも好評で、1993年のアメリカ市場参入以来、たちどころに20%のトップシェアを獲得した。


*QBハウス

日本の格安理髪チェーンQBハウスの事例が取り上げられている。1996年に一号店を開店以来、2003年には200店を超え、シンガポールやマレーシアにも店舗を展開しているという。

QBハウスの戦略キャンバスは次の通りだ。ちなみにエアーウォッシャーというのは、バキュームで刈った毛を吸い込むシステムだ。

QBハウスの戦略キャンバス





出典:本書103ページ


新たな需要を掘り起こす

ブルーオーシャン戦略を創造するためには細かい数字は忘れ、森を見ること、新たな需要を掘り起こすことが重要だ。

キム教授は、まだ取り込めていない需要を次の三つのグループに分けて説明している。

第一グループ 市場の縁にいるが、すぐに逃げ出すかもしれない層
第二グループ あえてこの市場の製品やサービスを利用しないと決めた層
第三グループ 市場から距離のある未開拓の層

これらの需要をうまくすくい取って、ブルーオーシャン戦略を創造するのだ。

例として次が挙げられている。


*キャロウェイゴルフ

スポーツ愛好家などにゴルフが敬遠される理由をキャロウェイが調べたところ、「ゴルフボールを打つのは難しそうだ」という認識があった。

そこでヘッドの大きなビッグバーサというクラブを開発して、ボールに当てやすくして新しい需要を掘り起こした。

筆者も初代ビッグバーサを持っている。一時人気No 1のドライバーだった。


プレタマンジェ(Pret A Manger)

ヨーロッパの都市部に働くプロフェッショナル達はレストランで昼食を取るのが普通だったが、ヘルシー志向、時間、コストの面からより良い選択肢を求めていた。

そこでプレタマンジェはレストランに劣らない良質のサンドイッチを、ファーストフード店並にすばやく作りたての状態で提供し、こぎれいな店舗と手頃な価格で提供した。英語だがプレタマンジェのメニューを紹介しておく。寿司もメニューにある。

プレタマンジェは2003年時点でイギリスで130店舗展開し、売上高は年間一億ポンドを上回り、その成長性に注目してマクドナルドが33%の株式を取得した。

これには後日談がある。日本マクドナルドがプレタマンジェチェーンを2002年にオープンしたが、2004年に撤退している。そういえば筆者も三角の紙箱に入ったサンドウィッチを売っている中野坂上(?)だったか日比谷シティだったかの店に入った記憶がある。

プレタマンジェのマーケティング手法の解説をしているブログを見つけたので紹介しておく。


*JC Decaux(ジーセードゥコー)

自治体向けにバス停やゴミ箱、ベンチなどのストリートファーニチャーを広告媒体として無償で維持管理サービスを行うビジネスを開始した。ストリートファーニチャー広告は1996年から2000年まで60%も増えた。

自治体との契約は8年から25年なので、JC Decauxは高利益率のビジネスを長期間独占できることになり、2003年の時点で世界33ヶ国に30万以上の広告板を持っている。(現在は40ヶ国、35万カ所)

JC Decauxは日本では三菱商事と提携しておりMCDecauxという会社をつくり、たしか横浜市の市営バスのバス停広告をやっていたと思う。MCDecauxのサイトではJCDecauxのシェアなどの数字も公開されている


*JSF(Joint Strike Fighter)英米の次世代戦闘機

JSFはロッキードのF−35と決定し、人間の乗る最後の戦闘機と言われている。

F-35






出典:Wikipedia

米国の主力戦闘機は従来、空軍、海軍、海兵隊それぞれが独自の機種を選定していた。

JSFは3軍の異なる需要を大胆に統合し、同じ機体で空軍用、STOVL(垂直離着陸)機能も持たせた海兵隊用、翼が大きい海軍用の三機種を製造し、性能や機能を向上させる一方、コストを当初の約二億ドルから3,300万ドルに劇的に下げることに成功した。

このJSF選定も、ブルーオーシャン戦略の新規市場の獲得というコンテクストで説明されている。たしかに三軍共通の戦闘機というのは米軍始まって以来の出来事で、これにより量産効果もあがるので、コストを下げ、バリューを挙げるというブルーオーシャン戦略の典型的な事例である。


ティッピング・ポイント・リーダーシップ

ブルーオーシャン戦略を実行する上で、組織面でのハードルを乗り越えるために、キム教授はティッピング・ポイント・リーダーシップを用いることが必要だと説く。

ティッピング・ポイント・リーダーシップとは、どんな組織でも一定数を超える人々が信念を抱き、熱意を傾ければ、そのアイデアは大きな流れとなって広がっていくという考え方である。

筆者の記憶が正しければ、砂を板に載せて板をだんだんに傾けていくと、砂が一斉に流れ出す傾斜角度がティッピング・ポイントだ。

ティッピング・ポイント・リーダーシップの例として、1994年にニューヨーク市警察(NYPD)本部長に任命されたビル・ブラットンのリーダーシップを紹介している。

1990年代前半までのニューヨークは犯罪発生率が高く、殺人件数は市場最悪を更新し、市民は不安な毎日を送っていた。にもかかわらず、予算面では厳しい制約を受けていた。

ところがブラットンが着任して2年間で予算の増額なしに重大犯罪発生率は軒並み35−50%減少し、1996年にブラットンが退任してからも犯罪は減少し続けた。

ブラットンが行った改革は次のようなものだ。

治安が悪く市民が利用できないニューヨークの地下鉄に市警の目は行き届いていなかった。ブラットンは、就任直後から自ら地下鉄で通勤し、幹部にも地下鉄通勤させることで、市警の地下鉄治安対策への考え方を180度変えさせた。

市警と市民との対話集会を通じて、重大犯罪の検挙率が上がっていることに市民はほとんどありがたみを感じていないことがわかり、むしろアルコール中毒者、街娼、物乞い、落書きなどの身近な軽犯罪に絶えず不快な思いをさせられていることがわかった。

そこでブラットンは「割れ窓理論」というブルーオーシャン戦略に重点を置くこととした。

ティッピング・ポイント・リーダーシップの考え方として、Hot Spot(重点領域), Cold Spot(非重点領域), Horse Trade(資源交換)というものがある。

地下鉄の犯罪を減少させるために、それまでは各路線や出口に警官を配備していたので膨大な費用がかかっていたが、大きな犯罪が集中している特定の路線と駅には十分な警官が配備されていなかった。これを同じ数の警官を重点地域のみに配備することにより、コストを抑えて犯罪件数のめざましい減少を勝ち取った。

麻薬関連が全犯罪に占める割合は50%程度なのに、麻薬班は警官全体のわずか5%で、しかも平日に勤務していた。麻薬班を増員して重点配備したら麻薬犯罪はみるみる減少した。

犯罪逮捕も以前は逮捕した警官自らが犯罪者を裁判所に連れて行って、戻ってくるまで16時間も掛かっていたが、犯罪者移送用の巡回バスを運行させ、警官は自分の担当の地下鉄駅で犯罪者を引き渡す様にした。警官は1時間で職務に戻れるので稼働率も大幅に上昇した。

ティッピング・ポイント・リーダーシップでは組織に影響力を持つ中心人物(Kingpin、ボウリングの1番ピン)に徹底して働きかける。ブラットンの場合は76人の分署長を中心人物とし、彼らをてこにしてNYPDの36,000人の警官を掌握した。

次に金魚鉢のマネジメント(fishbowl management)だ。中心人物の行動が見通せるようにすることだ。ブラットンの場合は全分署長、市警幹部と市のお偉方に二週間に一度集まって貰い、「犯罪対策評価会議」を開いた。分署長は働きが悪いとみんなの前で糾弾されるので、成果を上げようとする組織体質ができた。

次に細分化(atomization)だ。「アメリカ一危険な巨大都市を最も安全な都市に変貌させる」という目標は達成不可能と思われたが、ブラットンはこの目標を警官一人一人の担当地区での安全を確保することにして細分化して達成した。

自分の受け持ち地区の安全を守れば、それでよいとしたのだ。

政治的なハードルを乗り越えるには、「守護神」に頼り、「大敵」を黙らせ、「アドバイザー」を起用するのだ。ブラットンは警官の中の警官ともいえる人物にアドバイザーとなってもらい反対勢力となりそうな人物を事前にパージした。

ブラットンの場合、「守護神」は市長であり、「大敵」は犯罪者の逮捕急増でうまく機能しなくなるおそれがあった裁判所だった。

こまごました犯罪を多数裁判所に持ち込んでも、裁判所は対処できるはずで、むしろ身の回りの犯罪を押さえておいた方が、長い目で見れば取扱件数は減るだろうという論戦を展開し、市長の信任とマスコミの支持を得て裁判所を動かした。

ブルーオーシャン戦略を実行するにあたって重要なのは関与Engagement, 説明Explanation, 明快な期待内容Clarity of Expectationの3つのEだ。従業員を巻き込み、納得するまで説明して、明確な期待水準を示すのだ。

警視総監の矢代さんは、筆者の寮の先輩だ。是非NYPDのブラットンのように、「守護神」と「アドバイザー」を得て、首都の治安を改善して欲しいと思う。


ブルーオーシャンを探すと言う発想は斬新なものがある。単なる抽象論でなく、戦略キャンバスとアクション・マトリクスを使った戦略の整理法は実例に簡単に適用でき、役立つと思う。

具体例が多く、読みやすい経済書なので、是非一度手にとって見て頂きたい本である。


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2008年05月13日

企業通貨マーケティング 中上級者向けのポイント・電子マネーの本

企業通貨マーケティング企業通貨マーケティング


日本のポイント・電子マネー研究の第一人者、野村総研のポイント経済レポート。

2006年に出版された「2010年の企業通貨」以来、テレビや新聞、雑誌でポイントというと野村総研の安岡さんや冨田さんが頻繁に登場する。

2010年の企業通貨―グーグルゾン時代のポイントエコノミー (未来創発2010)


筆者は経済産業省の企業ポイント研究会のメンバーだったので、野村総研の企業通貨プロジェクトチームとは知り合いだ。

日本の年間ポイント発行額は野村総研の推計が、しばしば引用されており、今回の見直しでは2006年度のポイント発行額は少なくとも6,600億円と見込まれている。

前回の推計では2005年度のポイント発行額は5,500億円だったが、前回の推計と計算のベースが異なるので、単純比較はできない。

たとえば家電量販店上位10社の平均ポイント還元率はたしか前回は1%で計算されていたと思うが、今回はより実体にあわせた6.5%で計算している。

大手家電量販店でもポイント還元せず、現金割引をセールスポイントにしている企業もあり、またクレジットカード払いだと2%程度ポイント還元率が下がるので、平均6.5%というのは妥当なところだと思う。

ちなみに現金の代わりにポイントで買い物した場合、ポイントがつく量販店と、つかない量販店があるので、その意味でも平均6.5%というのは妥当な数字ではないかと思う。

他の業界についてもポイント還元率を見直しているが、筆者の印象としては、全体としてまだ低めではないかという気がする。

この本は2006年の「2010年の企業通貨」の改訂版とも言える内容で、この2年間で急速に拡大した電子マネー及び電子マネーのポイントをさらに詳しく取り上げている。

スイカにしろ、ナナコ、Waonにしろ、すべて電子マネーとポイントがパッケージになっているので、電子マネーとポイントの差が、よりはっきりしてきた様に思える。

さらに昨年の企業ポイント研究会で議論された消費者間取引への拡大(ポイントで友達に支払うなど)、地域連携の拡大(地域通貨、地域ポイントの拡大)、グローバルトレンドから見た進化(英国のNectarや韓国のOKキャッシュバッグ(今までCash Backかと思っていたら、Cash Bagだった))も取り上げられている。

そして未来解説としてポイント格付け機関の登場と、ポイントを巡る法制度のこれからについての予測が載せられている。

もちろん基本的なポイントや電子マネーの「企業通貨」マーケティングのすすめに多くのページが割かれており、これからポイントや電子マネーを導入検討している人には役立つ本だ。

ポイントプログラム導入時に陥りやすい罠と、ポイントプログラム2.0として企業通貨マーケティングの進化が説明されている。

筆者は経産省の企業ポイント研究会では、ポイント交換のメリットとして優良顧客の相互送客効果を説明したが、この本でも同様の説明がなされている。

最後の第9章は「日本が誇る現金より強い企業通貨」というタイトルで、「企業通貨は日本が誇る文化」、「企業通貨は現金より強し」という様に説明されている。

筆者が日頃「ポイントはお金より気になる」と言ってポイントマニアのブログにも書いていることと同じで、我が意を得たりという気持ちだ。

日本のポイント、電子マネー研究を代表する慶応大学の國領先生、東大の須藤先生、明治学院大学の森田先生、日本大学の階戸先生、早稲田大学の守口先生、中央大学の杉浦先生の論文やコラムが紹介されており、さすが野村総研、という感じだ。

初心者向けではないが、中上級者には旬の話題が満載で、大変参考になると思う。ポイントに携わる人には必読の一冊である。


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2008年05月11日

日本は没落する 元財務官 榊原英資氏の日本版「フラット化する世界」

日本は没落する


+++今回のあらすじは長いです+++

「ミスター円」と呼ばれた元大蔵省財務官で、現早稲田大学大学院教授、インド経済研究所所長の榊原英資氏の戦略なき日本への警鐘。

榊原さんはインドのIT企業ウィプロの社外取締役なので「フラット化する世界」で取り上げられたインドの躍進の現状をファーストハンドベースでレポートしており参考になる。

実は筆者はピッツバーグ駐在の時に、榊原さんをお招きする機会があったが、直前に日本に帰国してしまい、お会いできず残念だった。

榊原さんはミシガン大学で博士号を取得する前に、ピッツバーグ大学で学んでいたので、恩師にお願いしてピッツバーグ日米協会の年次バンケットでスピーチしてもらう事になっていたのだ。

榊原さんは大変多忙だと思うが、「恩師の頼みとあれば喜んで」ということで、ピッツバーグでのスピーチを二つ返事で快諾してくれたのだった。

榊原さんは、現在は数百年に一度の大転換期で、20世紀の終わりから「ポスト産業資本主義」の時代となり、今や世界中で余っているお金が有利な運用先を求めて追いかける時代であると語る。

この時代に重要なものは、技術、知識、情報の3つであり、それらすべてを下支えするのが教育であると。まさに「フラット化する世界」でトム・フリードマンがアメリカに対して訴えていたことと同じだ。

明治時代の日本は富国強兵という国家戦略を掲げ、工業化と教育に注力した。しかし現在の日本はこれからの時代をどう生き抜くかの国家としての戦略性もなければ教育の水準も落ち、国民一人一人の意欲も大きく低下していると指摘する。

このブログでもしばしば引用しているゴールドマン・サックスの2050年までの予測チャートは、インド人女性社員のルーパ・プルショサーマンが書いたBRICSレポートに紹介されているもので、榊原さんも彼女の予測が実現するだろうと語る。

GS見通し






日本の累積債務は800兆円以上にもなり、毎年20兆円ずつ増えている。危機的な状況なのに、政治家も国民も事実を直視しようとしない。

早急に新しい時代に即した戦略を打ち出し、新しいパラダイムを確立しなければならない。そして、そのキーワードは「新しい学問のすすめ」となると榊原さんは語る。「学問のすすめ」は、梅田望夫さんの「ウェブ時代をゆく」の提言を思い起こさせる。


この本は次の様な構成となっている。

序章  ポスト産業資本主義の時代
第1章 ニホン株式会社が没落する日
第2章 激変する世界市場、取り残された日本
第3章 大衆迎合主義がこの国を滅ぼす
第4章 「公」(パブリック)の崩壊
第5章 「教育改革」亡国論
第6章 金融・年金問題の深層
第7章 日本の進むべき道 真の抜本改革を!



それぞれの章について印象に残った点を紹介する。

第1章 ニホン株式会社が没落する日

榊原さんは大蔵省という金融の世界に身を置いた人間ながら、「金融立国」という考え方は間違いであり、やはり国として力をいれるべきは技術開発であると語る。明治維新後の日本の発展を支えたのも工業化であり、アメリカが復活したのもIT技術で世界をリードしたことが理由だ。

金融ではアメリカの強さが際だっている。投資の世界では情報が重要で、たとえばゴールドマン・サックスはボードメンバーに各国の経済界の名士を加えている。日本なら元ソニーの出井さんや、京セラの稲盛さんがゴールドマンのアドバイザリーメンバーだという。

技術、知識、情報にお金がついてくるという認識を持たない限り、日本がアメリカに伍していくのは難しいと語る。

明治以降欧米の技術を導入して日本を発展させてきた原動力は技術者だが、技術者の地位が下がってきていると榊原さんは指摘する。

大阪大学の調査では某国立大学の文系と理系の卒業者の生涯賃金は、理系が5,000万円少ないという結果が出ていると言う。工学部志望者は90年代から減り始め、92年の60万人から2005年には半分の30万人、さらに2007年では27万人となっている。

工学部志望者推移






出典:豊田政男大阪大学工学部長の論文

このままだと製造業に於ける高度な技術教育を受けた人材で韓国、中国、インドに遅れをとることは避けられない。OECDの最近の調査によると、研究開発費でも米国の3,300億ドルに対し、日本は1,300億ドルで、中国の1,360億ドルに初めて抜かれている。

これからは一人の天才が10万人を養う時代だとサムスンの李健煕会長は言っているそうだ。(ちょうど4月22日に李会長は不正資金疑惑で退任を発表したところだ)

サムスン電子の役員の平均年俸はなんと5億円だが、優秀な技術者には社長をも上回る年俸を出せと言っているそうで、日本企業から東芝のフラッシュメモリー技術者など、優秀な技術者を多く引き抜いていることでも有名だ。

技術系に限ったことではなく、金融分野でも外資系金融機関の一流アナリストであれば、1億円の年収がある例が少なくない。日本の銀行では頭取でもせいぜい4−5千万円止まりだ。

中国では産官学一体が顕著だ。

たとえば中国のIT企業のトップ10に入るソフト会社の北大方正集団は北京大学が100%出資する大学所有企業で、胡錦涛や朱鎔基を輩出した清華大学でも持株会社をつくっている。

IBMのPC部門を買収したレノボは、持株会社を通じて中国科学院の傘下にある。国の戦略として技術開発を柱としているのだ。


第2章 激変する世界市場、取り残された日本

例として世界市場に進出できない日本の携帯電話メーカーを取り上げている。

日本国内市場がそこそこ大きいので、海外で大きなシェアを取るという差し迫った必要がないことが、日本のケータイ電話メーカーが海外でシェアをとれない要因の一つだ。おサイフケータイあり、インターネット接続ありの日本の高機能ケータイは世界の大多数の国では無用の長物なのである。


榊原さんとインドのつながり

タイトルで日本版「フラット化する世界」と紹介したが、榊原さんは1999年に大蔵省を退任してすぐにインドに講演旅行に行き、インドのIT企業の雄ウィプロの創設者アジム・プリムジ氏と知り合って、2002年からウィプロのボードメンバーとなっている。

ボードメンバーになったことにより、インドの実業界の名士の知遇も得たという。プリムジ氏はウィプロ株の8割を持っており、インドでも10指に入る資産家だが、公私ともに質素な生活をしており、日本に来ても社員が空港に迎えに来ると怒り、自ら電車や地下鉄で移動するという。

榊原さんが所長となっている早稲田大学のインド経済研究所は、インド最大のICICIのガングリー会長から、日本の経済界にインドを紹介する仕事をしてみないかと勧められて設立したものだ。

ICICIより一人とインド準備銀行から一人出向で来ており、日本企業から2名、それと榊原さんとスタッフの7−8名で運営している。

主な業務は日本の金融機関にインドの金融マーケット分析を提供することと、インドに進出を考えている企業へのコンサルティングだという。

インドへの投資拡大の受け皿は、インド投資委員会で、これはタタ財閥のラタン・タタ、ICICIのガングリー会長、HDFC(住宅開発銀行)のパレックCEOの3人委員会だ。

もともとインドと日本は、戦時中に日本がインドの独立を支持したこともあり、政治的には大変な友好国で、日本はインドに対して最大の援助国でもある。

1998年のインドの核実験以降、日本からの投資は低迷していたが、小泉首相の2005年の訪印以来流れが変わり、2006年の投資額は2004年に比べて5倍になっている。それでもイギリス、米国などより下の9位で、全直接投資額の3%にすぎない。

投資のネックはインドのインフラが整備されていないことだが、現政府はインフラ整備を政策の中心に置き、道路、港湾、空港、電力、通信などの整備を積極的にすすめている。

全国7カ所で発電所を建設する「ウルトラ・メガ・パワープロジェクト」や、高速貨物鉄道や新幹線建設、空港整備もすすめられている。首都デリーの地下鉄は日本の円借款で過半が賄われ、日本の商社・ゼネコンなどが参加している。

まさに日本の高度成長時代を彷彿とさせるインドの経済発展だ。

榊原さんによると、インドは民主主義国だったから経済発展が中国に比べて10年ほど遅れたが、インドは最も人口が増加する国の一つで、2050年頃にはGDPで中国を抜くと予想されている。

経済成長率では中国の10%以上に対し、インドは8−9%だが、2020年までには経済成長率でも中国を抜くと榊原さんは予測する。

インドで有名なのはIT産業で、TCS(タタ・コンサルタンシー・サービス)、インフォシスウィプロが3大IT企業だ。インドのIT企業は2000年問題のプログラム修正のアウトソーシングを受けて世界的に事業が拡大し、現在では様々な形でアウトソーシングを受けている。

また医薬品開発、民間宇宙開発でも強い競争力を誇っている。

中国とインドは関係を強化しており、胡錦涛主席は2010年までに両国の貿易額を400億ドルにすると宣言している。今後インドと中国で巨大アジアマーケットを構成することになろう。

インドは伝統的に全方位外交なので、中国とも日本とも友好を保っている。

インドではまだ規制もあり、日本の個人投資家はインド企業の株を買えないが、投資信託なら可能なので、いくつもの投資信託が設定されている。インド株は一時的に暴落しても、長期的には回復すると榊原さんは予測する。


第3章 大衆迎合主義がこの国を滅ぼす

榊原さんは小泉政権・安倍前首相の偏狭なナショナリズム、イデオロギー外交のために日本は10年先の国家戦略さえ描けなくなっていると語る。

中国は長期アフリカ戦略を展開してエネルギー資源確保をねらい、インドは原子力を戦略の中心に置いているのに対し、日本は石油公団を解体し、中東の日の丸油田の採掘権も失っている。

農業国であるアルゼンチンでさえトウモロコシ、小麦、牛肉の輸出を制限している様な世界的な食料不足が起こっているのに、日本の食料自給率は低下する一方である。

場当たり的政治家に国家のあるべき姿は語れない。日本のマスコミは小泉政権の郵政民営化選挙のごとく黒か白かに単純化するポピュリスト人気をあおり、長期的な戦略性が低下し、政治のリーダーシップが失われている。

ポピュリストとナショナリズムは相性が良く、良い例が第1次世界大戦後のドイツでのナチスの躍進であると榊原さんは警鐘を鳴らす。

ポピュリスト政治のおかしな点として、原発の安全性を科学的に議論できない雰囲気、拉致問題しか語れないムチしか使えない外交は、外交ではないという例を挙げている。


第4章 「公」(パブリック)の崩壊

日本は明治以来「官」が強い国であり、榊原さんが大蔵省に居たときにも、日本の国家戦略を常に優先して行動していたという。

金融ビッグバンも、規制緩和により大蔵省の権限を手放すことになるが、制度疲労してきた行政制度の中にあって、自ら変身していこうという試みだった。

宮澤喜一首相は日本の金融システムが危機に瀕している時に、税金を注入して金融機関を救った。最初は税金の注入にマスコミはじめみんな反対だったのを、信念をもって推進し、首相を退任した後も小渕内閣の大蔵大臣として復帰し、やり遂げた。

アジア危機で通貨安定のための基金として4兆円を拠出した「新宮澤構想」も打ち出した。

この様に国家戦略に基づいた大局を捉えた政治が必要なのである。


天下り規制批判

メディアが支持している天下り規制も、退職後2年間は関係企業への就職を禁じると、民間企業から人材を得ることを難しくさせ、民間プロフェッショナルの力を借りられなくなると指摘する。

郵政公社の生田元総裁でも民間企業の顧問になることが難しかったという。

欧米の金融当局では民間金融機関との人事交流は当然であり、「リボルビングドア=回転ドア」とさえ言われている必要不可欠なことなのに、天下り規制は愚策であると。

今や日本の問題は官の弱体化にあり、小泉政権の負の遺産は「官は悪、民は善」という原理主義的な民営化路線だと榊原さんは切り捨てる。

アメリカが「小さな政府」というのは、大いなる誤解であると。アメリカは軍事・宇宙・医学など国の競争力にかかわる問題についてはストロングガバメントだと指摘する。

中央官庁は再編で予算は減らされ、人員を減らされて、官僚の忙しさは大変なものになっており、「とても日本の将来のビジョンを考えているゆとりなどない」のが現状だ。日本の国際競争力を高めるなら、政府を極端に弱体化してはならないと語る。

教育再生審議会など日本では審議会政治が全盛だが、いくら政策を討議しても、それを実行していく仕組みが欠けていると榊原さんは指摘する。


第5章 「教育改革」亡国論

榊原さんは「ゆとり教育」は世界の潮流に逆行していたと語る。暗記は教育の基本であり、より多くの知識こそ、考える力の源泉であると。

世界的に優秀とされている民族は、幼い頃に暗記を強要している。たとえばユダヤ人はユダヤ教の聖典を暗誦させられる。インドでも上位カーストの人は教典である「ヴェーダ」を暗記させられる。

これらの暗記は脳の発達にも有効である。

競争の否定が社会階層の固定化をもたらした。学校群制度の前の日比谷高校の話を榊原さんは語る。

当時は東大に年間150ー200人進学するが、生徒会活動も活発で、運動でもラグビー部が全国2位になったことがある。クラス編成はなんと生徒が担任を選ぶ形で、浪人生には1年間の補習もあったという。

筆者は神奈川県立湘南高校出身だが、榊原さんの日比谷高校と同じような状態だ。今や親子2代続けて湘南高校出身という家族は少なくなり、同窓会の会長選びも大変だという。

筆者自身も、長男は私立中高一貫校に行ったので、湘南高校とは縁が切れてしまった。

学校群制度で名門公立校から私立校へ優秀な生徒はシフトし、裕福な家庭の子女が集まる私立校が優秀な大学に合格者を出すことになり、小学校4年から私立校めざして受験勉強を強いられるなど社会階層の固定化が始まった。

小学生が「偉くなってもしかたがない。のんびりやりたい」などと言うのは異常なことではないかと。


清華大学

中国のトップの常務委員9人中8人がエンジニアだ。清華大学は中国のハーバードと言われ、全国950万人が受験する「高考」(大学入試センター試験の中国版)のトップクラスのみが入学できる。

清華大学は義和団事件で中国が米国に支払った賠償金を米国が返還し、それを元にしてつくられた大学だ。だからアメリカとのつながりが強く、設立当時は「留美予備学校」と呼ばれ、アメリカ留学の予備校だった。現在でも1学年の内3割はアメリカに留学するという。

アメリカのハーバード、エール、プリンストンなどの一流大学の学長が清華大学を訪れ、優秀な学生を滞在費等一切大学持ちで、ヘッドハンティングしているという。

榊原さんは2006年にNHKの取材で清華大学を訪問した。東大本郷の10倍のキャンパスには53の学部と5つの大学院、41の研究所があり、クリーンルームを備えた半導体生産工場や、原子力発電所まであるという。

清華大学は中国の大学向け研究開発予算の半分を占めているといわれ、通信衛星を使って大学の講義を中国各地に放送しているという。

「アメリカに留学して、帰国して学者になるか転職したい」という学生が多く、中国から毎年11万人が海外留学しているが、トップレベルの大学の学生は日本に来ても「日本の大学で学んでいても時間の無駄」と言ってさっさと帰国してしまう人がしばしばいるという。


インドも技術教育に大変熱心で、頂点は7校あるIIT(インド工科大学)だ。インド工科大学シリコンバレー校友会にはビル・ゲイツが出席するという。

日本企業ではトヨタが2007年にインドにトヨタ工業技術学校を開設した。倍率は800倍だったという。

英語で自己主張できないのが日本人の弱点とならないように語学教育も重要である。


第6章 金融・年金問題の深層

日本の年金制度は創設された1950−60年当時の経済の高度成長と持続的なインフレ、人口増加が前提の制度だ。次の人口動態調査のグラフが日本の現状を物語っている。

人口動態調査







今のような人口減少フェーズに入ると、年金の破綻は確実だ。

日本でも政府系ファンド設立検討が議員レベルで始まっているが、シンガポールのGIC,中国の中国投資有限公司などの政府系ファンドが存在感を拡大している。

中東オイルマネーはドルからユーロに移っているが、日本政府や中国は1兆ドル近い外貨準備のほとんどをドルで持っているために、ドルが下落すると痛手を被るという事情がある。


第7章 日本の進むべき道 真の抜本改革を!

榊原さんの提案をタイトルだけピックアップすると次の通りだ。

*女性と老人の復権がキーワード

*いまこそ定年退職の撤廃が必要だ

*専業主婦は時代遅れ

*人事制度を大幅に見直しプロを厚遇する

*技術立国が国策、全寮制エリート教育で実現

*人事と予算の権限を教授会から学長へ委譲せよ
学校基本法は「大学には、重要な事項の審議を行うため、教授会を置かなければならない」と定めているが、これは労働組合が会社の予算や人事を決めるようなものであると。

*「教育基本法」を変えても意味がない
行政のテクニックで「何も変えずにお茶を濁したい時は、基本法だけ変える」というものがあると。学校教育法、私立学校法、教育職員免許法などの個別法を変えなければならないと。

*教育職員免許法を撤廃し、社会人を教員に

*(学校)設置法見直しこそ改革断行の切り札

*天下り規制撤廃、行為規制で官民交流を活発に

*証券会社のトップが財務大臣になっていい

*(年金)保険料から目的税へ ー いまこそ大転換すべし
社会保険庁を廃止し、国税庁が一括して徴収

*高度医療は民間保険で ー 混合診療の解禁

*アジア通貨基金を設立せよ

*移民受け入れが21世紀日本の正念場

*知識人よ、世界へ「日本の特殊性」を発信せよ
「茶の本」を英語で出版した岡倉天心、「武士道」の新渡戸稲造などの先人にならえと。

*一神教的「覇権争い」から多神教的「共存共栄」の世界へ

*大改革のために不可欠な「没落」という危機感
改革のためには何よりも強い危機感が必要で、すべての日本人が「10年後には日本は没落しているかもしれない」という危機感、「まさに我々は存亡の危機にあるのだ」という共通意識を持つことが求められていると結んでいる。


まとめると日本は移民を受け入れ、開かれた国にする。年金保険料は廃止し目的税として、教育に力を入れ技術立国を図れということになる。

現在の日本の現状は「戦略なき国家」と言わざるを得ない。誰もが問題意識を持っていると思うが、榊原さんの提言は、問題解決の方向性を示唆しており参考になる。

日本版「フラット化する世界」として、おすすめの本である。


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Posted by yaori at 22:42Comments(2)TrackBack(0)

2008年05月09日

ドラゴン桜 大学受験以外でも参考になる試験の心得

ドラゴン桜 (13) (モーニングKC (1515))


以前紹介したドラゴン桜シリーズを、時々図書館で借りて読んでいる。

全部で21巻ある。最初は作者の三田紀房氏の独創が元になっている様だが、後半になると様々な受験のプロのアドバイスを紹介する形となり、受験のプロと著書が写真入りで紹介されている。

全巻を読んだわけではないが、東大受験のみならず、試験全般に共通し、参考になる話もある。

この「ドラゴン桜13」で紹介されている「問題文を読めば答えがわかる」というのと、「出題者になったつもりで考える」、「自分で考えるな」というものだ。


問題文を読めば答えがわかる

「問題文を読めば答えがわかる」というのは、マンガでは国語の授業で芥山龍三郎(芥川龍之介のパロディ)がセンター国語対策の授業で、国語の問題文のみを生徒に示して説明するストーリーだ。

芥山龍三郎








出典:ゲームTV「ドラゴン桜DS」ゲームレビュー

長文の本文を読むまでもなく、選択肢を読み比べれば簡単に正解がわかるという。

問題は小説の中の「苦しげな微笑」という言葉の解釈を求めており、全文は紹介しないが、エッセンスは次の通りだ。

1.「ためらいの気持ち」
2.「複雑な心情」
3.「苦しんでいる様子」
4.「呆然となった様子」
5.「苦い思い」

このうちで、2.の「複雑な心情」が「あいまいでごまかしている」様に思え、他の4つがはっきり言っている印象を受けるが、実は正解は2.である。

センター試験の出題者は誰もが納得する解答を用意しなければならない。出題者が「こういう意味だ」と言い切ってしまうことは大変危険なのだと。

ましてや小説からの出題であれば、読む人によって感じ方が違うので、一つに決めると反論されるおそれがある。だから当たり障りのない無難でどうとでもとれる表現にしておくのだ。

試験で時間が足りなくなった時などに使えるテクニックだと思う。


出題者になったつもりで考える

センター国語の出題者になったつもりで考えるというのも、試験一般に通用する考え方だ。

出題者はまず正解をつくる。次にセンター試験の場合は5択問題なので、不正解を4つつくる。それは次の5つの類型なのだ。

1.反対 正解と全く反対のことを言う
2.すりかえ 本文中の言葉を使うが論旨が違う
3.言い過ぎ 本文の内容を誇張している 
4.不足 足りなくて論として不十分
5.勝手なことを言う 本文に書いてないが世間的に正しいことを言う

このうち、「勝手なことを言う」は世間的に正しいから、受験生はひっかかりやすい。「言い過ぎ」もひっかかりやすいが、「常に」、「絶対」、「必ず」、「のみ」、「だけ」、「すべて」などの言葉が使われているから、すぐに見分けがつくという。


自分で考えるな

「自分で考えるな」とは、「他の人は、みんなはどう考えるのか」を考えろということで、いわば「自分の身体から魂が抜け出て受験会場を浮遊する感覚を持て」と。いわゆる「メタ認識」だ。

「みんなはこの問いをとう考え、どう答えるのだろう」と考えるのだと。

この理念を理解し、客観性を身につければ国語だけでなく、すべての教科の問題が簡単に感じるという。

取るに足らない様に思える情報が、時としていかに重要かわかる実験が面白い。

元々は西林克彦氏の「わかったつもり 読解力がつかない本当の原因」という本に載っていることのようだ。

わかったつもり 読解力がつかない本当の原因 (光文社新書)


次の文は何のことを説明しているかわかるだろうか?

「新聞の方が雑誌よりいい。街中より海岸の方が場所としていい。最初は歩くより走る方がいい。何度もトライしなくてはならないだろう。ちょっとしたコツがいるが、つかむのは易しい。小さな子どもでも楽しめる。一度成功すると面倒は少ない。鳥が近づきすぎることはめったにない。ただ、雨はすぐしみ込む。多すぎる人がこれをいっせいにやると面倒がおきうる。ひとつについてかなりのスペースがいる。面倒がなければ、のどかなものである。石はアンカーがわりに使える。ゆるんでものがとれたりすると、それで終わりである」

筆者は考えても分からなかった。答えを続きを読むに書いておいたので見て頂きたい。

人は自分の持っている知識で考えがちだが、他人が物事をどう考えているかを考える癖をつければ、貴重な情報が得られるという。

その例として、「東大生の親はみんな金持ち」という世間一般で言われている情報が正しいかどうか生徒に検証させている。

東大では学内広報で学生生活実態調査を公表している。親の年収分布のグラフは次の通りだ。

東大生親年収






平均年収は1,000万円を超えているかもしれないが、年収950万円以下が52.2%で、他の私立大学などと変わらないと思われる。

情報の一人歩き、人はみんな自分の信じたい情報を信じるのだと。


有益な情報が盛り込まれている。マンガとバカにできない試験ガイドである。


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Posted by yaori at 13:03Comments(0)TrackBack(0)

2008年05月06日

お金は銀行に預けるな 「実践」してはいけないベストセラー本

お金は銀行に預けるな 金融リテラシーの基本と実践 (光文社新書)


「10倍アップ」シリーズなどベストセラーを連発して一躍売れっ子になった公認会計士の勝間和代さんの資産運用入門。

自分のお金を銀行などに預金として預けておけば安全と思っていると、人生設計上のリスクになると勝間さんは語る。

お金に働いて貰うことを知らずに、本来なら得られるべき収入を放棄することを意味するからだ。お金に働いて貰うことについては、「バビロンの大富豪」のあらすじを参照して欲しい。

この本ではまず金融リテラシーの必要性について語り、次に金融商品の説明、実践、そして最後に金融を通じた社会的責任にまで言及する。

日本人が金融リテラシーが欠けているのは、学校教育で金融について学んでいないことと、社会人になっても忙しすぎて金融リテラシーを磨く時間がなかったことだと。

筆者もアメリカの高校で資産運用講座の教室を見学したことがあるが、アメリカではNCEEという経済教育協議会があり、小学校からの経済に関する教育について監督している。

高校では個人資産運用Personal Financeについての詳しい教科書が出されている。



アメリカの高校生が読んでいる経済の教科書


アメリカの年金は、1978年に自分の年金資産を自分で運用できる確定拠出型年金401−Kが導入され、自分の年金を自分のライフスタイルやリスク許容度に応じて運用するのが当たり前になっているので、アメリカ人は金融に対する意識が高い。

筆者も米国駐在時に、アメリカ人の同僚と話していて、各種の投資信託について良く知っていることに驚いた経験がある。

日本でも2012年には適格退職年金制度が廃止され、確定拠出型の年金が増えてくると予想されている。自分たちで年金の運用方法を決めなければならなくなるので、よりいっそう金融リテラシーをつける必要が出てくるのだ。


この本のとおり「実践」してはいけない

この本は勝間さんがターゲットにしている若者や主婦、OLなどを対象にしているやさしい資産運用の本だ。

アマゾンでも売り上げ順位300位前後にランキングされているベストセラーだが、出版された昨年後半に、この本の通り「実践」したら間違いなく大きなやけどを被っている。

投資した時期にもよるが、たぶん損失は20%前後だろう。

勝間さんも本を書くことは大変な責任を負うことになることを、この本で実感しているのではないかと思う。

「お金は銀行に預けるな」という主張自体は、大前研一氏も「大前流心理経済学」で述べている様に、正しい提言だと思う。

しかし踏み込んで「実践編」でインデックスファンドでの資産の運用までファイナンシャルプラナーの様に提案しているので、市場の変化により結果が大きくマイナスになってしまっているのだ。


分散投資シミュレーションツール

新生銀行のサイトに勝間さんがこの本ですすめる国内株式、外国株式、国内債券、外国債券の4つのインデックスファンドへの投資リターンの推移が簡単に割り出せる分散投資シミュレーションチャートがあるので紹介しておく。

分散投資シミュレーション1






このシミュレーションの使い方は次の通りだ:

1.まずは投資金額を決定する。デフォルトは元金300万円で、毎月いくらか決めて投資するなら、毎月の金額をインプットする。

2.次に投資先の選択だ。国内株式、外国株式、国内債券、外国債券と、それぞれ1/4ずつのバランス型投資信託がデフォルトだ。自分で比率を調整できるし、不要な投資先は消すことができる。

3.次に期間の設定だ。下の3.のメーターをスライドすることによって、期間が決定できる。デフォルトは1969年から2007年の38年間だ。

たとえばこの本が出版された2007年10月末から12月末までの2ヶ月のリターンは次のグラフの通り、すべての投資運用がマイナスになっている。国内株式が最悪でマイナス12%。4分割投資でもマイナス8%となっている。

分散投資シミュレーション2ヶ月






筆者がこの本を「実践してはならないベストセラー本」と呼ぶゆえんだ。


この本ほど考えさせられた本はない

この本ほど考えさせられた本は最近ない。

第一に、本に書いた内容が陳腐化することのリスクだ。

この本では勝間さんはノーロード(信託手数料ゼロ)の国内株式、外国株式、国内債券、外国債券のインデックスファンドへの分散投資を手始めにすすめている。

この本は2007年11月の出版で、勝間さんが書いたのはたぶん2007年の半ばだろう。

次がここ5年間の日経平均株価の推移だ。

5年間の日経平均推移






2007年半ば当時は日本株はバブル後の最高値を付けており、サブプライム問題がきっかけで世界同時株安が進むとは誰も予想していなかった。

株式相場が順調に伸びる時はインデックスファンドはリターンが上がるが、相場が今回のように急落すると国内株式のインデックスファンドの1年間の運用益は、惨憺たる結果になる。

外国株式のインデックスファンドも国内株式ほどではないが10%前後下落している。

日経VS外国株





債券の投資信託も下落というように、昨年後半にインデックスファンドを買っていれば、すべてが原価割れしているはずだ。

日経VS債券





つまり勝間さんの言っている通り実践した場合、短期間で20%前後財産を失うことになったはずだ。

いまだにこの本は売れているが、株式相場が下がった今ならこれ以上下落するリスクは少なくなってきている。

またドルコスト平均法といって毎月一定金額を投資して、相場変動リスクを逓減する方法をすすめているので、勝間さんとしてはちゃんと説明したつもりなのかもしれない。

しかし、昨年末にこの本を鵜呑みにしてインデックスファインドを買った人は大やけどを負っているはずだ。


第二に、個人が短期収益をねらって投資する場合のリスクの大きさだ

筆者は資産運用の基本的な考え方として、近い将来のことは予測できないが、10年先のことなら誰でも大体予測が可能だと考えている。

ゴールドマンサックスの2050年までの各国のGDP予測は、その実現時期はともかく、誰もが認めるところだろう。

GS見通し






日本の人口動態の推移は、この国が残念ながら活力を失う様を冷徹にあらわしている。

人口動態調査







その国の経済の相対的競争力が強ければ、おのずと為替も強くなる。

経済が発展し、高い成長率が維持できれば、為替と高成長でダブルで国のGDPは上がり、それにつられて株式市況もあがる。

日本経済は向こう15年以内に中国に抜かれ、25年以内にインドにも抜かれる。日本人なら信じたくないシナリオだが、この人口動態を見たら国としての活力が失われているのは明らかだろう。

長期的な予測なら、素人も玄人も変わりはない。

世界1の大富豪のバフェットも、アラビアのバフェット、アルワリード王子も、株が安い時に買って、ひたすら持ち続けるバリュー投資家だ。

筆者のすすめるファイナンシャルインテリジェンスはバッフェト流、アルワリード流の長期投資だ。

たとえば過去1年の日経平均とアジアオセアニア株の投資信託の値動きを比較してみよう。

日経VSアジアオセアニア株





下がってはいるが、決して一本調子で下がっているわけではない。

さらに日経平均と中南米株の投資信託の値動きを見てみよう。

日経VS中南米株






こちらは同じ期間で、値上がりしていることがわかる。

筆者も勝間さんの言うように、素人は投資信託を重視することは賛成だ。

しかし株式の売買単位が下がってきているので、数十万円で株を買うこともできるし、株なら運用手数料は不要で、今の株価水準なら多くの企業の配当利回りは預金金利より高い2%前後である。

株式投資ではプロは素人をカモにするというのは正しいと思うが、プロがいつも勝つわけではない。いつも勝つなら、プロは全員大富豪でなくてはならないが、そんなことはない。

勝間さんの言うように「退職金が入って、自分で株で資産運用しようとする人も多いが、プロにボコボコにKOされるのがオチ。株式は、プロが得して個人が損する世界で、個人が次のGoogleをめざして成長株を買うことはギャンブルと同じ」だとは思わない。

短期売買にこだわらず、前述のバッフェトやアルワリードのように、これから高成長を遂げることがほぼ確実な国や企業に投資をして、長期投資と考えて"Buy and Forget"すれば良いと思う。


第三に、このあらすじブログに載せるべき本のセレクションについて考えさせられた

このあらすじブログには毎日200名前後の方が訪問されている。

人気ブログバナー多くの皆さんに文末の「ブログランキング」をクリックして頂いているので、ランキングも日本でトップ30−50位に入ることが多い(5月2日現在では38位だ)。

多くの訪問者がこのブログに期待されていることは、たぶん(1)わかりやすく正確なあらすじ(クオリティ)、(2)読みたい本のあらすじが掲載されているかどうか(品揃え)、(3)良書の紹介(リコメンデーション)だと思う。

筆者は一人の作者の本を読み出すと、その人の書いた他の本や、その人がリコメンドする本を集中的に読む。

このブログでも紹介している「本を読む本」で紹介されていた「シントピカル読書」だ。

作者を多面的に理解し、書いている内容を頭にたたき込むのと、その内容の確かさを評価するためだ。

勝間さんに限らず、最近の仕事効率を上げるシリーズ物もそれぞれ数冊読んでいるが、どれも似たような内容なので、はたして時間を掛けて、いちいちあらすじを書いていて良いのかという疑問がわいてきた。

人生は短く、一生に読める本の数は限りがある。筆者はまだまだ勉強が足りない。もっと良い本を読まなければならない。

たとえば町田図書館で「著者=松下幸之助」で検索すると81冊もの本があるが、筆者は松下幸之助の本はまだ4冊しか読んでいない。

カーネギーの本は4冊、ドラッカーの本に至っては結局1冊も完読できていないのに、例に出して悪いが、ぽっと出の勝間さんの本を5冊も読んでいるのはどうなんだ?と思ってしまう。

当たり前のことだが、time-testedな良書は1年間に何冊も書ける訳がない。

人気に乗じて売れるだけ売れという姿勢で、異なった出版社から短期間に何冊も本を出している作者には、一般論として気を付けた方が良いだろう。


勝間さんへのエール

あらすじブログが今回は書評ブログになってしまい、この内容をブログに載せるかどうか正直迷った。

筆者はポリシーとして本の批判はしないことに決めている。本の批判をネットに載せて鬱憤を晴らすよりは、そんな本は無視してブログに載せない方がよほど精神的にも良いし、大人の対応だ。

それでもあえてこのような書評ブログになってしまったのは、上記の筆者自身の自己批判も含めて、大いに考えさせられる本だったからだ。

この本には読者への気配りも、仕事(著作)への愛情も感じられない。

勝間さんの愛読書リストには松下幸之助の本が一冊も載っていないが、最後に筆者の「座右の書」であり、発刊以来40年間ベストセラーを続けているTime-testedな名著の代表の松下幸之助の「道をひらく」の一節を紹介して、勝間さんへの応援のエールとしたい。

2008年5月5日現在、勝間さんのこの本はアマゾンのランキングでは280位で、なんと松下幸之助の「道をひらく」はそれよりも上の229位だ。

道をひらく


世間というもの ― 松下幸之助「道をひらく」より

世間というものは、きびしくもあるし、また暖かくもある。そのことを、昔の人は「目明き千人めくら千人」ということばであらわした。いい得て妙である。世間にはめくらの面もたくさんある。だから、いいかげんな仕事をやって、いいかげんにすごすことも、時には見のがされてすぎてしまうこともある。つまりひろい世間には、それだけ包容力があるというわけだが、しかしこれになれて世間をあまく見、馬鹿にしたならば、やがては目明きの面にゆき当たって、身のしまるようなきびしい思いをしなければならなくなる。

また、いい考えを持ち、真剣な努力を重ねても、なかなかにこれが世間に認められないときがある。そんなときには、ともすると世間が冷たく感じられ、自分は孤独だと考え、希望を失いがちとなる。だが悲観することはない。めくらが千人いれば、目明きもまた千人いるのである。そこに、世間の思わぬ暖かさがひそんでいる。

いずれにしても、世間はきびしくもあり、暖かくもある。だから、世間にたいしては、いつも謙虚さを忘れず、また希望を失わず、着実に力強く自分の道を歩むよう心がけたいものである。



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Posted by yaori at 08:52Comments(1)TrackBack(0)

2008年05月05日

効率が10倍アップする新・知的生産術 勝間和代さんの10倍シリーズ本

効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法
効率が10倍アップする新・知的生産術―自分をグーグル化する方法


昨年から”10倍アップ”シリーズでベストセラーを連発している公認会計士で経済評論家の勝間和代さんの知的生産効率アップ術。

次回あらすじを紹介する勝間さんのベストセラー「お金は銀行に預けるな」に書いてあったが、勝間さんのライフワークは、(1)現代の日本に生きる多くの人がワークライフバランスをもっと上手に整えられるよう、労働時間短縮に向けたしくみ作りを手伝うことと、(2)金融・経済・会計の知識を社会に還元するために、わかりやすく伝えていくことの2つだそうだ。

この本は他の”10倍アップ”シリーズ同様(1)の路線だ。

すべての本の帯に自分の写真を載せ、この手の本に比較的縁遠かった主婦やOLなどの女性読者もターゲットにしていることがうかがえる。

この本にも書いてある通り「本を出すと人生のステージが変わる」ので、勝間さん自身を世の中に売り込みことも目的とした”10倍アップ”シリーズである。

現代は「情報はお金より大事」であり、この本では情報処理での「トヨタ生産方式」を目指して生産性を上げる様々なやり方(グーグル化)を紹介していくと語っている。


情報収集

基礎となる情報収集では、ツールとしてブラウザのFirefox, RSS,有料の日経テレコン21,GMail(メールを常にGMailに転送)、Google Desktop, Google Calenderなど様々な機能を使った効率的な情報収集策を紹介している。


情報処理

こうして集めた膨大な情報の中から、本当に価値のある1%の情報を見極める方法として、勝間さんは次の6つの技術を紹介している。

(1)フレームワーク力をつける

フレームワーク力というのはマッキンゼーに入社したときに仕込まれたもので、必要な情報と不必要な情報の区別、情報の因数分解などの整理のために、或るフレームワーク(思考の引き出し)に割り当てるという思考方法だ。

マッキンゼーには200くらいの基本パターンをまとめたフレームワークのマニュアルがあり、勝間さんはマッキンゼーに入社して毎日そのマニュアルを見続けたという。数学でいうと「解法」というところか。

(2)ディープスマート力をつける
ディープスマート力とは、聞き慣れない言葉だが、経験を重ねると長年の勘で情報の価値がわかるようになる。その熟練した洞察力をディープスマート力と呼んでいる。辞書にも見あたらないので、決して一般的な言葉ではないが、この言葉を使った本を紹介している。

「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質 (Harvard business school press)
「経験知」を伝える技術 ディープスマートの本質 (Harvard business school press)



(3)失敗力をつける
失敗力とは、失敗から学ぶことだ。

(4)ベスト・プラクティスの共有で学びを分けてもらう

(5)自分の価値を見いだせないところはバッサリ切り捨てる

(6)本代をケチらず良書を読む
ここで勝間さんの本領が発揮される。勝間さんは月100冊、月間10〜15万円を読書に使っているという。

本は多くの企画から厳選された良質なコンテンツであり、筆者が採算度外視で自己実現のために書いている場合が多いので安価で、一覧性に優れており、携帯性もあるという様々なメリットがある。

たった2時間の労働(読書)だけで、筆者が何年も、何十年もかけて培った情報と交換させてくれるので、本ほど効率的で安価なものはないと勝間さんは語る。

勝間さんの場合、本当の良書に巡り会う確率は数冊から10冊に1冊くらいだという。だからすき間時間を中心にどんどん読んで、不要な本は売るなり捨てるなりするのだと。

筆者は「積ん読」の傾向があり、買った本は買うだけで満足してしまい、読まないことが多いので、本は読んでから気に入った本だけ買うことをポリシーにしている。

勝間さんはとりあえず買っておいて読み、頭の中にしまって、保管は10分の1にしておくと言っている。アプローチは違うが、同じ結果だと思う。

筆者のおすすめのモーティマー・アドラーの「本を読む本」や本田直之さんの「レバレッジ・リーディング」も推薦書として紹介されている。

この本の文末に推薦図書やオーディオブックのリストがあり、116冊の本と33のオーディオブックが推薦されている。参考にはなるが、必読書としてカーネギーや松下幸之助の本が入っていないことが気になる。

年収10倍アップにも紹介されていたが、オーディオブックのダウンロードサイトとして、次が紹介されている。

FeBe(日本語)

audible(英語)


勝間流インプット力を高める6つの技術

次にインプット力を高める技術が6つ紹介されている。

(1)ノートパソコンを自分の補助脳として使い倒す

(2)フォトリーディング、親指シフト、マインドマップなど 
勝間さんは米国での4日間のフォトリーディングのセミナーに参加したという。親指シフトなども、もはや名人の域に達していると。

(3)アナログ入力とデジタル入力をバランスよく使い分ける

(4)マスメディア情報を減らし、実体験、他社体験、良書を3大情報源とする

(5)目以外の感覚器、特に耳をもっと活用する

(6)睡眠は投資、よく運動して、よく寝る


勝間流アウトプット力を高める6つの技術は、次の6つだ。

(1)自分独自のアウトプットをつくって、インプット情報を確かめてみる
たとえばインターネットビジネスを評価するなら、自分でサイトを立ち上げてみるとかだ。

(2)自分の学びを言葉で表現してみる

(3)自分の学びを数字に置き換えるクセをつける

(4)自分の学びから情報を絞り込み、軸を発見する

(5)自分の学びをブログに表現してみる

(6)自分の学びを本として出版する


集中力=体力なので、体力をつけるトレーニングとか食生活など、5つの生活習慣の技術を紹介している。集中力=体力というのは筆者も全く同感である。試験などもまさに体力勝負である。

人脈作りは、Giveの5乗でGive & Give & Give & Give & Giveなりと。決してGive & Takeではないところがミソだ。

最後に今日の行動から明日が変わるとして、成果は「知識」 x 「実行割合」 x 「定着率」で決まるので、実行を促している。

様々な方法が紹介されて、ごった煮状態なので、多くを試すよりは、まず自分がやれる1−2のことから行動に移すのが良いだろう。

簡単に読めるので、まずは書店でパラパラっと立ち読みすることをおすすめする。


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Posted by yaori at 22:33Comments(0)TrackBack(0)

2008年05月02日

連戦連敗 渋谷地下駅「地宙号」設計者安藤忠雄氏の東大講義録

連戦連敗

先日東大の入学式に出席した時に特別教授として挨拶されていた建築家安藤忠雄氏の東大大学院での建築学講義録。

安藤忠雄氏講演





東大入学式での安藤さんのスピーチは大変ユニークで印象深かったので、簡単に紹介しておく。

まずはたまたま耳に入ったという新入生の親の「これからはゆっくりできるね」という発言を引き合いに出し、「ゆっくりしてもらっては困る。現在の日本は迷走状態なので、これからは病気になるほど死にものぐるいで勉強して貰わなければ困る」と檄を飛ばす。

安藤さんは1941年大阪生まれ。幼少の時から祖母と一緒に暮らしていた。経済状態から中学を出て働こうと思うが、祖母がせめて高校は出て欲しいということで工業高校の機械科を卒業した。高校2年で上京したときにフランク・ロイド・ライト設計の帝国ホテル旧館(現在は明治村に保存)に魅せられ、どうしても建築家になりたいと心に決める。

帝国ホテルライト館




この本に触発されてフランク・ロイド・ライトの作品集を読んでみた。ライトの作品は米国の富豪の邸宅が多く、案外公共の建物や海外の建築が少ないことに驚いた。

米国ではニューヨークのグッゲンハイム博物館や、筆者が駐在していたピッツバーグ近郊のFalling Waterが有名だ。

建築ガイドブック フランク・ロイド・ライト

Falling Waterは上の本の表紙の写真に使われており、ピッツバーグのダウンタウンから車で1時間程度のところにある。家の中を小川が流れ、滝があるという構造の富豪の別荘だ。

家具に至るまでフランク・ロイド・ライトがデザインしており、芸の細かさに驚かされた記憶がある。

安藤さんは高校を卒業して1年間今で言うニート生活を送るが、その間に阪大と京大の建築の教科書を取り寄せ、朝9時から深夜3時まで毎日読みふけり、独学で建築を学ぶ。

お金を稼ぐ方法としてボクサーならファイトマネーで4,000円(今で言うと10万円くらい)が貰えるということで、ボクサーになってお金を稼ぐが、ファイティング原田を見て、自分には才能がないということでボクサーを引退する。

22歳の時に1ヶ月掛けて日本全国をまわり、広島で原爆に対して強い怒りを覚え、日本全国の棚田や美しい民家などを見て、日本の美しい風景にふれる。

1965年、24歳の時に海外旅行が解禁されると、すぐに横浜から船でソ連に行き、シベリア鉄道に乗ってヨーロッパに出てヨーロッパからアフリカ、そしてアジアを経由して各地で名所旧跡・名建築を訪ね歩き、建築家としての教養と知識を磨く。

日本のバックパッカーのはしりだ。

この本でも、安藤さんは17−18世紀のイギリスで、貴族の子弟がフランスやイタリアなどのヨーロッパ大陸を1−2年、長ければ5−6年放浪して幅広い教養を身につけて返ってくるグランドツアーという習慣を紹介しているが、安藤さんはそれを地で行っている。

1969年に安藤忠雄建築事務所を設立し、日本国内を中心に個人住宅から美術館など様々な仕事をして、その実績をひっさげて海外でのコンペにも数多く参加するが、コンペの勝率は10戦9敗くらいで、それゆえこの本のタイトルが「連戦連敗」である。

ちなみにユニクロの柳井さんも同様のタイトルの「一勝九敗」という本を出しているので、あらすじを参照して欲しい。

連戦連敗でコンペには敗れても競争相手が考え抜いた斬新な発想やデザインを学ぶことができるので、失敗は次の仕事に必ず役に立てることができるのだと。

今まで失敗を経験していないエリート東大生は間違いを極端に恐れるが、失敗を恐れることなく、世界の知の頂点を目指す東大で、死にものぐるいで勉強して、世界・地球をより良くするために新しいことにチャレンジして欲しいという講演だった。

原稿も用意せず、簡単なメモを持っているだけで15分あまりのスピーチを行い、内容も東大の入学式という場面に適した大変感銘を受けるもので、さすが世界的建築家安藤忠雄だと思わせる内容だった。

その安藤さんの講演の中で紹介されていたのがこの本だ。

東大大学院での建築学の講義録なので、世界の様々な建築と、20世紀を代表するル・コルビュジエルイス・カーンなどの建築とともに、安藤さんが参加した数々の建築プロジェクトの入選作と安藤さんのプラン、他の競争相手のプランなどが安藤さんの解説付きで紹介されている。

安藤さんが尊敬するル・コルビュエの作品集は次を読んでみた。

ル・コルビュジエ 全作品ガイドブック


東京上野の国立西洋美術館がル・コルビュジエの作品だ。

国立西洋美術館







この本の中では、いくつか筆者も見覚えのある建物がコンペの対象として取り上げられている。たとえばシカゴ・トリビューン社屋、JR京都駅香港上海銀行などだ。

安藤さんは東京都庁から見た東京の無計画さに驚いたと記している。

放射線状にシンメトリーに道路が伸びるパリは、アンドレ・マルローが「群としての建築物の保存・再生」をうたったマルロー法をつくって歴史的街区を保存することを義務づけたので、町並みが保存されている。

戦禍による瓦礫からの復興でも、ワルシャワやフランクフルトでは破壊された旧市街をできるだけ歴史的な外観を再現するように建設しており、都市のアイデンティティを保つ努力をしている。例としてフランクフルトのレーマー広場の戦争で破壊された姿と現在の写真が紹介されている。

言われてみれば日本では古い物を壊すときに、町並みを保存しようという発想はない。ごく一部の建物、たとえばマッカーサーがGHQのオフィスとして使った第一生命本社ビルなどで下層階だけ昔の外観を保存するということは行われているが、町並み全体という考えはない。

第一生命本社ビル








ヨーロッパの長期的な都市建設/町並み保存の考えには、目を開かされる思いだ。

最新の建築設計としては1997年に完成したコメルツバンク本社ビルが紹介されている。

コメルツ銀行











一年中自然換気で快適な室内温度が保たれる設計だ。外の気象条件が悪い場合にはコンピューター制御で冷暖房設備も稼働する最新のインテリジェントビルだ。この設計はノーマン・フォスターが行っている。

フォスターは香港の香港上海銀行ビルも設計しており、8本のマストによる釣り構造で、地上階には柱がなく、10階までアトリウムという開放性の高い建築を実現している。地震のない香港ゆえに実現した建物だと思う。

この自然換気というエコアイデアが、今年6月14日にオープンする安藤さん設計の地下鉄副都心線渋谷地下駅の「地宙船」という自然換気システムにつながったのだ。

まさに連戦連敗のたまものである。

優れたデザインが一国の産業振興につながった例として、フィンランドのアルヴァ・アアルトの例を説明している。

アアルトはフィンランドの紙幣の顔にもなっているが、それは家具や建築のデザインコンセプトに集成材を取り入れ、フィンランドの木材産業勃興の機会をつくった。

フィンランドでは無垢材として市場に出せるような木材が少なかったが、アアルトのデザインで集成材を家具や建物の曲面に用いることで、雑木がかけがえのない国家資源となった。

安藤さんは瀬戸内海の直島にある直島コンテンポラリーアートミュージアムに関わっており、平成の鬼平、中坊公平さん他と一緒に設立した「瀬戸内オリーブ・ネットワーク」という植樹運動なども紹介されている。

廃棄物投棄の島香川県豊島(てしま)にオリーブ植樹で環境再生しようという試みだ。

本のタイトルが示す様に、コンペはほとんど敗退だが、安藤さんが海外コンペで勝利したプロジェクトとしてアメリカテキサスのフォートワース現代美術館のデザインが紹介されている。


建築の教科書という堅い分野ながら、安藤さんの見識が溢れるすばらしい講義である。東大理Iでは最も人気が高い学科の、高名な建築家による格調高い講義の内容がよくわかる。

専門的な計算とかは一切なく、もっぱらデザインについての講義なので、素人でも理解できる内容で、この本を読んで建築に興味がわいた。これからは建物の美観や使いやすさにも気を付けて見ていこうという気になる。

安藤さんの略歴も驚きに値するし、建築の機能美を再発見させてくれる講義で興味深い。

書店では置いていないかもしれないので、是非図書館で探して手にとって欲しい本である。


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Posted by yaori at 12:44Comments(0)TrackBack(0)