2009年01月31日

政権交代 榊原英資さんの政権交代必至論

2009年1月28日再掲:

「無税入門」でけなされていたので野口悠紀雄さんの2003年の「超・納税法」を読んでみた。

「超」納税法 (新潮文庫)「超」納税法 (新潮文庫)
著者:野口 悠紀雄
販売元:新潮社
発売日:2004-08
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


節税手法としては「サラリーマン法人をつくれ」というもので、こんなことを一般の会社では受け入れるはずがないので、この提言の実現性は正直疑問だが、田中角栄の面白い逸話が載っていたので、紹介しておく。

野口さんは榊原さんの大蔵省の同僚で、入省したてで田中角栄の謦咳に接した一人である。

田中角栄は、野口さんたち1964年の大蔵省の新入職員20名を整列させると一人一人握手をはじめ、メモも見ず、秘書課長にも教わらないで、一人一人の名前を呼んだという。

顔を見て「おっ!野口君、頑張れよ」という調子だったという。

大臣が全員の顔と名前を知っていることに度肝を抜かれた新入職員を前に、田中角栄はこう言ったという。

「諸君の上司には、馬鹿な課長がいるかもしれん。諸君の提案を、課長は理解せぬかもしれんぞ。そうしたときは、遠慮せず大臣室に駆け込め。オレが聞いてやる。」

結局だれも駆け込んだ人間はいなかったが、「駆け込んでいい」という言葉は、野口さん達の心を捉えたという。

後から思うとこれは「お前達は特別だぞ」、「お前達だけを特別扱いしてやるぞ」という呪文だったのだと野口さんは語る。

「悪魔の方法」としかいえない、絶妙の人心収攬術だったのだと。

この魔術のために、大蔵省の幹部以下みんなが田中角栄の虜になってしまった。

そして田中角栄の人心収攬術のテクニックが、1974年の田中内閣の税制改革にも使われた。

給与所得控除が大幅に引き上げられたのだ。それまで150万円まで20%だった控除が、一挙に40%に引き上げられ、課税最低額が115万円から170万円に引き上げられた。

サラリーマンはこれで「ついにわれわれが特別扱いしてもらえた」と感じ、それが政治的にも自民党に有利に働いたが、実はこの給与所得控除の最大の受益者はサラリーマンではなかった。

自営業者や同族法人の経営者は、会社から給与を貰う形にしている人がほとんどなので、自営業者がこの給与所得控除を使うと、会社で経費を落とし、なおかつ自分や家族の給与所得控除が使えるという二重の控除ができる結果となったのだ。

さすが田中角栄だ。自民党が自営業者に支持される基盤をきっちりつくっていることがよくわかるエピソードである。

政権交代がいよいよ現実化しそうな政治情勢となってきた。榊原さんの話と呼応するので、野口さんの田中角栄のエピソードを追記して榊原さんの本のあらすじを再掲する。


2008年10月9日初掲:

政権交代政権交代
著者:榊原 英資
販売元:文藝春秋
発売日:2008-04-23
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


元大蔵省財務官で、「ミスター円」と呼ばれた榊原英資さんの政権交代必至論。

本の帯に「幻想ではない。歴史的な必然である」と書かれ、小沢一郎民主党党首との対談も収録されている。

なんでこの時期に現在早稲田大学教授の榊原さんがこのような刺激的なタイトルの本を出すのか、いまひとつしっくりこなかった。

しかし、この本を読んで、榊原さんが大蔵省在任時代の30代半ばで新自由クラブの設立綱要の素案を書いたり、選挙に出馬も考えていたことを知り、榊原さんが以前から政治活動に大変興味を持っていることがわかった。

だからこの時期にこのようなタイトルの本を出しているのだと思う。

内容を読むと、榊原さんが考える政策要項という様な部分はむしろ少なく、戦後日本の政治を担ってきた自民党が、吉田内閣の平和国家−軽武装路線からスタートし、1970年代の高度成長時代まではビジョンを持って国づくりをしてきたこと、特に30本もの議員立法を含む120本の法律を成立させ、官僚を意のままに使った田中角栄の力が大きかったことがよくわかる。

しかし次第に自民党はビジョンを失い、小泉内閣などのポピュリズム政治と化して、政権交代をしないと日本が世界の中で取り残される状態になってきたことを説明している。

アマゾンのなか見検索には対応していないので、目次を紹介しておく。

第一章 自民党長期政権の構造
第二章 自民党の危機と巧みな延命路線
第三章 小泉「改革」による破壊
第四章 生き残りを賭けるときにきた日本
第五章 新しいくにのかたち
第六章 「政権交代」核心対談 小沢一郎民主党代表に聞く

このブログでも紹介した「日本は没落する」では、現在の日本の様々な問題点を指摘しており、ラディカルに日本を変えなければならないことを力説している。

日本パッシングから日本ナッシングになりつつあっても、日本の復活は決して難しいものではない。しかし、そのためには日本をラディカルに変えるプログラムを着実に実行することが必要である。

この10年の経験からすると、自民党中心の政権ではラディカルな変革はまず無理なので、民主党にも問題はあるが、政権交代をして民主党中心の政府に賭けてみるしかないのではないかと榊原さんは語る。


格差なき経済成長は世界でも異例

最初に榊原さんは、1970年代までの高度経済成長を可能にした吉田茂の平和国家路線、池田勇人の所得倍増論と金融資本を核とした産業政策、高度成長から生じた格差を是正した田中角栄の公共事業を中心とした地方振興政策について説明している。

高度成長を達成しながら、平等な社会を実現するというのは、如何に難しいか中国の現状を見ればわかるという。その両方を達成したのは、自民党の政治家と官僚がグランドデザインを書いて、国の舵を切ったからだと。

榊原さんが大蔵省に入った時の大蔵大臣は田中角栄だったが、田中は幹部の名前は勿論、息子や娘の名前まで覚えていて、進学や誕生日などの機会に、「今日は○○ちゃんの○○だろう」と言いながら、ぽんと100万円くらいの現金を渡したのだという。

業者からお金を貰うと収賄だが、大臣からお金を貰っても違法ではないので、幹部はみな断るのに困っていたという。


日本を作りかえた田中角栄

田中は頭の回転が速く、記憶力も抜群で、発想も非凡であり、大変な行動力の持ち主だったという。一人で30本も議員立法を成立させたのは、後にも先にも田中角栄だけだと。

農産物の価格維持と地方での公共事業により、国全体の経済発展と都市・農村の格差解消という矛盾する二つの政治課題を両立させることができたのだと。

筆者が大学に入った時は、日本列島改造ブームで、大学祭での筆者の大学のクラスの出し物は、「日本列島改造論」研究だった。

日本列島改造論 (1972年)
著者:田中 角栄
販売元:日刊工業新聞社
発売日:1972
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


田中角栄が議員立法で成立させた法律が今でも生きている。

3月に一時的に期限が切れ、4月に復活したガソリン税を道路建設に使う「道路整備費の財源等の特例に関する法律」、高速道路料金の「プール制」、そもそもの「道路法」、新幹線建設を決めた「全国新幹線鉄道整備法」などだ。

その他「住宅金融公庫法」、「国土庁設置法」など120近くの法律、住宅公団関係の法律、筑波学園都市建設など、すべて田中角栄の仕事だという。


田中角栄後の自民党政治

ところが1970年代に石油ショックやニクソンショックなどで、高度成長が終わると自民党の政策は財政赤字を生み出す様になり、1976年にはロッキード事件で田中角栄が逮捕され、それまでの自民党の路線は変更を余儀なくされた。

このときに1976年に旗揚げしたのが河野洋平を中心とする新自由クラブだ。榊原さんが綱領の素案を書いたという。

榊原さんは1977年に当時大蔵省の同僚だった野口悠紀雄さんと一緒に「大蔵省・日銀王朝の分析」という論文を「中央公論」に発表し、そのまま大蔵省をやめるつもりが、当時の幹部に慰留され、埼玉大学の助教授に出向し、ハーバードの客員準教授となった後で、大蔵省に戻った。

このときの論文を発展させたものが、野口悠紀雄さんの「1940年体制」だという。

1940年体制―さらば戦時経済1940年体制―さらば戦時経済
著者:野口 悠紀雄
販売元:東洋経済新報社
発売日:2002-12
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


その後1982年に保守右派の中曽根内閣が成立し、5年間の長期政権となり、国鉄、電電公社、専売公社の民営化などの成果を残すが、政治改革は部分改革に終わったという。1985年のプラザ合意も中曽根内閣時代のことで、これによる円高で日本の製造業は大きく変貌することを余儀なくされた。

その後1993年には小沢一郎が新生党を結成し、日本新党の細川護煕を首相とする連立内閣が誕生し、自民党は10ヶ月の間下野した後、恥も外聞もなく主義の違う社会党との連立で村山首相を立てて政権に返り咲いた。

しかし細川内閣時代に小沢一郎が成立させた小選挙区制が金権選挙体質を変え、派閥政治を終わらせるきっかけとなった。


小泉ポピュリスト政治

2001年から小泉純一郎が首相となり、ポピュリズム政治と化し、「改革なくして成長なし」などのキャッチフレーズで人気を博すが、国民の大多数に恩恵のない郵政民営化などが実現したに過ぎず、日本国のビジョンを変えることはなかった。

榊原さんは、90年代後半から2000年代前半の日本の金融システムを救ったのは、竹中平蔵ではなく、宮澤喜一だという。今のアメリカの不良債権買い取りによる緊急財政支援法案は75兆円規模だが、宮澤さんは早期健全化法案で25兆円、さらに金融再生勘定等で60兆円という合計85兆円の公的資金を用意して、反対を押し切って銀行を支えて金融システムの崩壊を防いだ。

竹中平蔵は理由不明ながら、UFJ銀行を締め上げ、無理矢理三菱東京銀行と合併させてしまった。

2000年代に戦後最長の景気拡大が可能となったのは、90年代のバランスシート不況から各企業が脱却したからで、小泉改革の成果ではないと榊原さんは分析する。

道路公団民営化も、税源を地方に移譲するという三位一体改革も、国民生活には何も影響がない郵政民営化も虚構であると。

そのそも改革すべきは、小泉=竹中が手を付けた分野ではなく、教育・医療・年金だったが、こうした重要分野には手を付けず、結果として年金問題などで国民の不満を爆発させ、これが2007年の参議院選挙での自民党の歴史的敗北の原因となったのだと。


国家戦略なき日本

民間企業をバックアップするのが政府の仕事であり、資源開発分野など巨額のリスクマネーが必要な分野こそ、政府が積極支援するべきなのに、日本には長期的な資源戦略が欠けていると榊原さんは指摘する。

サウジアラビアのカフジ油田の採掘権も、サウジが要求した鉱山鉄道の建設を日本政府が受けなかったから採掘権が更新できなかったのだという。

語学力や日本文化を広めることなどについての教育の問題も指摘されている。

中国は全世界に「孔子学院」という中国文化センターのようなものをつくって、中国語教育と中国文化教育を中国から講師を派遣しておこなっており、全世界60ヶ国に210ヶ所あるのだと。早稲田大学にも「孔子学院」があるという。

だから全世界の中国語学習者は3,000万人おり、日本語学習者は300万人にすぎないのだと。


新しい国の形

以前あらすじを紹介した前著「日本は没落する」でも述べられていたが、榊原さんの考える新しい国の形は次のようなものだ。

1.人口30万人単位くらいで自治体組織を300くらいつくる。いわば「廃県置藩」なりと。

2.中央官庁のうち、教育・社会福祉・国土交通は地方に移し、中央政府には外交。防衛・警察・財政金融・環境・エネルギー分野のみ残す。民間と役人の相互移動を図り、天下り規制をなくす。

3.イギリス型の強い内閣をつくる。イギリスは閣内大臣、閣外大臣、副大臣、政務次官など大臣職にある人が約100人いるという。その他に大臣の政務秘書官に議員を指名できるので、全体で200人くらいが与党から官庁に入っているという。

4.基礎年金は全額税金化 保険ではなく、税金を分配する

5.医療システムに市場メカニズムを導入する医療改革

6.教育の自由化


最後の小沢一郎との対談では、基本コンセプトは「国民各人の自立と、自立した個人の集合体としての自立した国家の確立」、「フリー、フェア、オープン」であると「日本改造計画」に書かれていた基本的考えが説明されている。

日本改造計画日本改造計画
著者:小沢 一郎
販売元:講談社
発売日:1993-06
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


「フリー、フェア、オープン」の自己責任の例として、たしかグランドキャニオンの展望台に手すりがなかったことが書かれていたことを思い出す。

「基礎年金の全額税金化」を除いた上記の点が、小沢一郎の口からも説明されており、いずれ民主党のマニフェストに書かれるのだろう。


筆者は必ずしも榊原さんの政策論のすべてに賛成なわけではないが、日本をどうするのかビジョンを議論すべき時だという意見には賛成だ。

米国の大統領選挙をとっても分かるとおり、そもそも選挙とは未来の日本をどうするかというビジョンと戦略で闘うべきだと思う。

日本改革の提言の部分と昔の自民党と官僚が作ってきた時代の日本のことがよくわかって参考になった。

強い日本を再構築することを考える上で、おすすめの本である。


参考になれば次クリック投票お願いします。




  
Posted by yaori at 02:25Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月29日

信用偏差値 信用力がその人の一生を決める時代

「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)
著者:岩田 昭男
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
クチコミを見る


前回「信用力格差社会」を紹介したが、岩田昭男氏のもう一冊の近著を読んでみた。

「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-11
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


「信用力格差時代」は信用力が、住宅ローンなどの各種の借り入れ、クレジッドカードなど与信を左右する社会的指標になり、就職にもクレジットヒストリーが必要とされる米国のような「クレジットヒストリー万能社会」に近づきつつある日本の現状に警鐘をならす作品だった。

この「信用偏差値」では、信用力がより重視される社会で、クレジットカード業界が個人向け金融ビジネスの主役に躍り出ようとしている動きをレポートしている。

日本のクレジットカード業界は、1.改正貸金業法の影響、2.メガバンク主導による再編、3.電子マネー陣営による攻勢という逆風にさらされている。

しかし改正貸金業法の影響は、消費者金融業界・クレジットカード業界にダメージを与えたグレーゾーン金利の撤廃というネガティブなものだけではない。

改正貸金業法に基づき2009年6月には、クレジットカード業界、信販業界、消費者信用業界共通の指定信用情報機関制度が始まる。これまでは業態ごとに5つの信用情報機関にわかれていたが、今後は業態を超えた情報交換が始まる。

ちなみに改正貸金業法の概要は金融庁のホームページに公開されているので、一読をおすすめする。

今まで信用情報については、消費者金融業界が銀行やクレジットカード会社、信販会社に比べて優位に立っていた。無担保で信用力の低い人たちに貸して、ちゃんと取り立てられるという経験に基づいたすぐれた信用力管理を行っていたのだ。

それが業界を横串にする信用情報交換が始まると、消費者金融業界の優位性は薄れる。「信用力」を社会生活に不可欠なものとして確立することで、昨今台頭してきた電子マネーに対抗してクレジットカード業界が反撃に移るのである。


この本の目次

この本の目次は次の通りである。「信用偏差値」は、アマゾンのなか見検索に対応しているので、是非なか見検索で、目次を見て欲しい。

第1章 個人に「信用偏差値」を持ち込め!
第2章 電子マネー隆盛の時代
第3章 クレジットカードVS電子マネー 知られざる闘争
第4章 クレジットカード陣営の総反撃が始まった
第5章 信用社会 日米の違い
第6章 信用格差社会を生き抜くカードの使い方

各章が15前後のサブタイトルで構成されており、読みやすく頭にスッと入る構成である。


著者の岩田昭男氏はクレジットカード・電子マネーの第一人者

著者の岩田昭男氏はクレジット、消費者金融業界に精通し、業界の教科書ともいうべき「クレジット・ローン業界ハンドブック」、「電子マネー業界ハンドブック」を書かれているだけに、参考になる情報が多い。EDY、Suica/Pasmo/Icoca、QUICpay、nanaco、Waon、iDなど電子マネー業界の現状も簡単にまとめられている。

図解 クレジット・ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 クレジット・ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


筆者は知らなかったが、日本で銀行がクレジットカードを発行できない理由は、1960年代にクレジットカードが日本に上陸した時に、銀行にクレジットカードを発行させようとする大蔵省に、信販業界を管轄する通産省が民業の圧迫になるとして反対したためだ。

銀行は子会社を通してしかクレジットカードを発行できなくなった。それで生まれたのがUC,DC,ミリオン、JCB,現三井住友カードなどといった銀行系クレジットカード会社だ。


現金流通量は確実に減少

2007年の資金供給残高は2年連続マイナスで、前年比約8%減少し、88兆円になった。これからも日銀券(現金)の発行量が減少し、電子マネーやクレジットカード利用が増えるという傾向が強まると岩田氏は予想する。

岩田氏によると、経済学者のハイエクは「紙幣や貨幣を造幣するのはもはや国家の専業事業ではなく、貨幣鋳造を民営化すべし」と主張したことがあったそうだ。声高に主張されているわけではないが、事実として電子マネーやポイントの企業通貨が伸張してきており、現金の流通量を減少させている。


金融庁のポイント・電子マネー規制

このようなポイント・電子マネーの隆盛をにらんで、金融庁はサーバー型の電子マネー(ウェブマネーやビットキャッシュ)、ポイント、代金収納サービス、コンビニ払いなどに規制をかけようと多くの学者を集めて「決済に関するワーキンググループ」を組織して昨年から活動していた

結局今年1月9日の最終答申で、サーバー型の電子マネーに対して他の電子マネーと同様の規制をかけるほかは、規制強化を断念した。

逆に宅配便やコンビニ決済などは、あまりに広まっているので、もはや決済機能は金融機関だけに認められるという大原則が通用しないという結論をだしている。


クレジットスコア導入にあたっての3論点

日本でも「信用偏差値」=クレジットスコアが導入されることが予想されるので、岩田氏はクレジットスコア導入にあたっての論点を3つにまとめている。

1.クレジットレポートはともかく、クレジットスコアまで導入すべきかどうか。

2.クレジットレポートやスコアを金融機関がマーケティングの道具としてどこまで使えるか。(たとえば新規顧客勧誘に使えるのか?)

3.金融事業者以外の一般企業がクレジットレポートなどの信用情報をおおっぴらに活用することを認めるかどうか。(たとえば不動産業界や人材派遣業界が使えるのか?)

アメリカのサブプライム問題の根本原因は信用力格差にある。もともと住宅ローン審査に通らないサブプライム層に、住宅価格が上昇することを見越して、ローンを貸し出した金融業界が、不動産バブルの崩壊で自滅したのだ。

だから岩田氏は、アメリカをモデルとせず、日本でクレジットスコアを導入する場合は上記3点の議論をつくすべきだと主張する。

筆者はクレジットレポートの現物を見たことがなかったが、この本では日本版クレジットレポートの実物の写真も掲載されているので興味深い。


クレジットスコア時代を生き抜く最強の2枚のカード

信用偏差値が導入された場合は、サブプライム層になるとクレジットカードもつくれず、ローンも借りられなくなる恐れがある。だから、なんとしてもプライム層にのこるべく、自らのクレジットカードの使い方を見直して信用力を高める使い方をマスターする必要がある。

ライフスタイル別にどのクレジットカードを持ったらよいのか、岩田氏が選んだ「最強の2枚のクレジットカード」の組み合わせが推薦されているので興味深い。

岩田氏によると史上最強の組み合わせはアメリカンエクスプレスのセンチュリオンカード(年会費約36万円のいわゆるブラックカード)とレクサスカードだという。

どちらも欲しくても持てるわけではない。

レクサスカードはビザのプラチナカードサービスが利用でき、車両購入時のキャッシュバック6%、オプションや整備代はポイントが倍になるという。

筆者はハリアーハイブリッドに乗っているが、これが次モデルからはレクサスRXとなることが今週発表された。

アメリカでは元々ハリアーはレクサスRXとして当初から販売されていたので、日本もレクサスの商品群に加えるようだ。

ハリアーからレクサスになると、ほぼ自動的に150万円ほど値段が上がる。

レクサスカードが持てるようになるかもしれないが、車両価格が約150万円上がってもその分中古車価格が上がる保証はなく、レクサスディーラーは自宅から離れた場所にあることでもあり、複雑な気持ちである。


簡単に読めて、現在のクレジットカード、電子マネー業界の動き、それから自分の信用力を守るためにはどうしたらよいのかスッと頭に入る。

クレジットカードの第一人者である岩田氏が、史上最強の組み合わせ以外にも、その人にあった2枚のカードの組み合わせを各種紹介しているので、是非本を手にとってみることをおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。




  
Posted by yaori at 12:20Comments(0)TrackBack(1)

2009年01月26日

時短読書のすすめ 別ブログ始めました

「あたまにスッと入るあらすじ」は5年目となり、投稿数も400を超えた。

これまで読んだ本の中で、是非読んで欲しい本を選んで、そのあらすじを「時短読書のすすめ」という別ブログで紹介することとした。

「時短読書」とは読んで字のごとしで、極力短時間で効率的に本を読もうというものだ。既にその本を読んだ人は、記憶のリフレッシュに使って欲しい。

「時短読書」は特に数百ページの分厚い本で有効だと思う。

第1回目は上下で800ページを超える「フラット化する世界」のあらすじを掲載した。

時短読書






第2回目は2006年のベストセラー「ウェブ進化論」のあらすじを紹介した。読んだ人が多いと思うが、どんな内容だったか思い出すのに役立てて欲しい。

あらすじだけを読んでもその本を読んだ気になるくらい、丁寧にわかりやすく書いたつもりだ。

おすすめする本は、必ずや得るものがあるはずだ。

このブログでは検索窓をトップの一番目立つ位置に配置している。読んだ本で内容をはっきり覚えていない場合は、その本のタイトルや著者で検索して、あらすじが載っていないかどうかチェックして欲しい。

どんな時代になっても、また技術がいかに進歩しても、読書にまさる自己啓発法はない。

是非「時短読書」であなた自身を最大限パワーアップしてほしい。


参考になれば次クリック投票お願いします。




  
Posted by yaori at 12:34Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月24日

スロトレ  石井東大教授のおすすめ ブルガリアン・スクワット

2009年1月24日再掲:

このブログを「スロトレ」で検索して訪問される人が多いので、先日大学のクラブのOB会で石井教授からお聞きしたおすすめトレーニング法を紹介しておこう。

それはブルガリアン・スクワットだ。



片足をベンチ等に置いて、もう一方の足でスクワットするのだ。片足スクワットできるだけの筋力がある人は、それでも良いが、普通の人は片足スクワットはできないので、いわば補助をつかって片足スクワットをやるものだ。

足をベンチに置いても良いし、たとえば手で洗面台をつかんで片足スクワットやっても良いと思う。

スロトレの極意で、上げきらず・下ろしきらずに、ゆっくりやるとさらに効果的だと思う。

やはり足は筋肉量が多いし、足の筋肉を鍛えれば基礎代謝も上がってダイエットにも良い効果があると思う。

ブルガリアン・スクワットは相当キツイので、短時間でも結構なトレーニングになると思う。これを続ければ、階段の上り下りもぐっと楽になること請け合いだ。

上級者は両腕にダンベルを持ってやっても良い。

気軽にできるので、是非試して欲しい。


2008年7月19日再掲:

「スロトレ」の石井東大教授が本日の「世界一受けたい授業」に再度出演する。「太らない体のつくりかた」という題の講義のようだ。

石井教授は「一生太らない体のつくり方」という本も最近出版している。

一生太らない体のつくり方―成長ホルモンが脂肪を燃やす!


最近のトレーニング理論が紹介されるようなので、今夜のテレビが楽しみだ。


2008年6月26日再掲:

「スロトレ」で検索して当ブログを訪問される人が、毎日数十名おられる。グーグルで検索すると、第2位に当ブログが表示されるからだと思う。

そのせいか、訪問者も毎日コンスタントに300名前後となっている。

おそるべき「スロトレ」効果だ。

筆者は石井教授の大学のクラブの友人で、石井教授とは35年のつきあいだ(筆者の結婚式の受付は石井教授にお願いしたので、来賓がみんな圧倒されていた)。

そして36年間のトレーニング経験があるので、この「スロトレ」の内容は良く理解できた。

「スロトレ」は共著で、企画は外部の会社だったことから、石井教授にはあまり印税は入らないそうだが、それでも約30万部というすごいベストセラーだ。

発想の転換で、なにげない日常の軽い運動が、結構きついトレーニングになるのは驚きだ。

多くの人に、手に取って、そして実践してみて欲しい本なので、あらすじを再掲する。


2008年5月7日再掲:

「スロトレ」の東大石井直方教授が、昨日(5月6日)のTBS「はなまるマーケット」に出演したので、「スロトレ」のあらすじを再度掲載する。

ちょうど昨日朝の9時前に、勝間和代さんの「お金は銀行に預けるな」のあらすじをアップしたところ、当ブログへのアクセスが急増し、1時間で150人くらいになった。

訪問者は通常1日150−200人くらいなので、「さすがベストセラーは違うな」と思ったら、なんのことはない、ほとんどが「スロトレ」でGoogle検索して当ブログを訪問された方だった。

結局昨日は約700名の訪問者があり、今日も引き続き訪問者が多い。

さすが主婦に絶大な人気のある「はなまるマーケット」だ。番組のホームページで昨日の番組内容が公開されているので紹介しておく。

スロトレダイエットを3ヶ月試験的に行った体験者5人全員が、3−8キロの減量に成功。すごい効果だ。番組を見逃した人は是非ホームページを見て頂きたい。


2008年1月22日再掲:

このブログで紹介した、東大の石井直方教授が、1月26日(土)の日本テレビの人気番組の「世界一受けたい授業」に出演する。

ダイエットにまつわるいろいろな話を、第一人者の石井教授から直接聞けるチャンスなので、是非番組を見て頂きたい。

スロトレ
スロトレ



20万部を売ったダイエット本のベストセラー。

ゴルフショップなどでよく見かける加圧式トレーニングや、各種のダイエット法で、マスコミにも頻繁に登場する石井直方東大教授の本だ。

石井教授の専門は身体運動科学、筋生理学で、オックスフォード大学に留学している。筋生理学研究者としても、ボディビルダーとしても日本を代表する第一人者だ。

実は石井教授は大学のクラブの1年後輩だ。もっとも素質が違うので、入部してきて2ヶ月で記録を抜かれてしまったが…。

ただ石井教授と競い合ったので、筆者の記録も向上し、4年の時には全日本学生パワーリフティング大会で一緒に表彰台に上がれたのは幸いだった(1位は石井教授)。

先日その石井教授と一緒に食事をしたときに、この本が20万部のベストセラーだと聞いたので読んでみた。

スロトレは2年前の2005年5月に出版されたにもかかわらず、今でもアマゾンの売上ランキングでも全体で765位、美容・ダイエット部門で6位となっている。(アマゾンの順位は1時間ごとに変動する)

ちなみに最近のベストセラーの「食い逃げされてもバイトは雇うな」は449位だ。

女性向けを意識したダイエットトレーニング本なので、本の装丁やイラスト、説明など、すべて女性向けに書かれているが、提唱しているトレーニング法はスポーツマンにも役立つものだ。

筆者は35年間ウェイトトレーニングを続けてきた”トレーニングのプロ”と自分では思っているが、その筆者にもこの本は新発見だった。

石井教授の提唱する加圧式トレーニングを筆者も取り入れているが、このスロトレを加圧式トレーニングに導入するとトレーニングの効果が数段アップすることを実感した。


スロトレのメリット

スロトレのコンセプトは、「無酸素運動」で筋肉を増やし、成長ホルモンの分泌を促進することで基礎代謝を上げ、脂肪を燃焼しやすい体質にして美しくやせるというものだ。

無酸素運動はウェイトトレーニングやダッシュ(短距離走)などで、有酸素運動はウォーキング、エアロビクス、水泳、ジョッギングなどだ。

筋力がアップするので、体が軽く感じられ機敏になり、体力がつく。

成長ホルモンの影響で全身の新陳代謝がアップし、肌がきれいになったり、シワが減るなどの若返り効果もある。

女性特有の効果もある。

運動を定期的に行うことにより毛細血管が発達するので、冷え性に効果がある。また胃腸の蠕動(ぜんどう)運動を促進するので、便秘にも効果があるのだ。

さらに腹筋・背筋の体幹の筋肉を鍛えることによって、姿勢が良くなり腰痛の対策にもなる。


簡単にどこでもできる

スロトレは一回5〜10分程度でOKで、週2〜3回あるいはそれ以下の頻度でも効果がある。

いつでもできるエクササイズとして大腰筋ウォーキングという、普通より手足を大きく振って歩くこともすすめている。代謝がアップして脂肪がよく燃える体になる。

またヒップアップウォーキングということで、歩くときにつま先で地面を蹴る時に力を入れ、きびきびとした歩き方で、おしりの大臀筋やふとももの裏のハムストリングを鍛えることも紹介している。

結構ハードなので、10歩か20歩で試してみると良いと。実際にやってみたが、たしかにつま先で地面を蹴る感じで歩くと、きびきび早く歩けるが、結構疲れる。

いずれも簡単にできるトレーニングばかりだ。

要は意識すれば、どこでも運動できるということだ。


スロトレ法

スロトレはその名が示す通り、スローにトレーニングを行うもので、最大の特徴は「ノンロックアクション」にある。

筋肉を伸ばしきった、あるいは収縮しきった状態を筋肉のロックという。たとえばスクワットでは、足を伸ばしきった時と、曲げきった時だ。

スロトレはそのロック=伸ばしきった、あるいは曲げきった状態になる前に、次の動きを始める。

スクワットでは、足が伸びきる前にしゃがみ始め、足が曲がりきる前に立ち始める。筋肉を休ませることなく、連続して筋肉に刺激を与えるというものだ。


筆者も実際やってみた

実際に筆者も加圧トレーニング中にスロトレをやってみたが、運動のキツさが全然違う。連続して筋肉に力を入れているので、すぐに効果がありバテてしまう。

通常加圧式トレーニングでは、軽い負荷で各種目・部位を10回X3セットで行っているが、スロトレを導入して、一息つくことなく、連続して動いていると1セットめから腕も足もパンパンにパンプアップしてくる。

スロトレは運動中にずっと力を入れたままなので、筋肉がパンプアップし、筋肉中の血流の流れが制限され、高地トレーニングの様に筋肉は酸素不足の状態となる。

筋肉はつらい運動をしたと、いわばだまされ、乳酸をたくさん出して、成長ホルモンの分泌を促すことになる。

石井教授も加圧式トレーニングから思いついたと書いているが、まさに加圧式トレーニングと同じ”疑似高地トレーニング”理論であり、加圧式トレーニングにスロトレを組み合わせると短時間で大きな効果が達成できる。


スロトレのトレーニング種目

自宅でも簡単にできるものばかりだ:

1.リズミカルニーアップ(その場足踏みで大きく手足を上げる)
2.ニートゥチェスト(イスに体を伸ばし、膝を曲げ足を胸に近づける)
3.レッグレイズ(上向けに横になって、足を上げる)
4.スクワット
5.プッシュアップ(腕立て伏せ。女性は膝をついても良い)
6.アームレッグクロスレイズ(4つんばいになって、手と反対側の足を同時に上げる)
等々だ。その他部位ごとのトレーニング種目もある。


スロトレで最大の効果を上げる有酸素運動と食品

スロトレの無酸素運動は、有酸素運動を行う前に行うと成長ホルモンの分泌が最大化されるので最も効果的だ。

例えばスロトレを10分家でやった後で、プールに行って泳ぐとか、ウォーキング、ジョッギングすることで、成長ホルモンの分泌を最大にすることができる。

食品も重要だ。

ダイエットに良い、脂肪を燃やしやすいものは、食物繊維、コーヒー、カプサイシン(唐辛子)、イワシ、さんまなどの青魚だという。

これらを組み合わせれば、さらに効果が上がるだろう。


筆者もスロトレを加圧式トレーニングに導入してみたが、すぐに筋肉がパンパンになって短時間で最大の効果があがると感じた。

誰でもどこでも簡単に短時間でできるダイエット運動。若返り、姿勢が良くなるという副次的効果もある。

20万部も売れているベストセラーダイエット法で、理論も明快。実際試してみても効果が実感できる。

簡単にできるので、一度試してみることを是非おすすめする。



参考になれば次クリック投票お願いします。



  
Posted by yaori at 00:01Comments(2)TrackBack(1)

2009年01月20日

祝 大統領就任! 「合衆国再生」 オバマ版メイキング・オブ・プレジデント

2009年1月20日再掲:


本日深夜(日本時間1月21日01:30〜02:00頃)オバマ新大統領が就任演説を行う。

NHK総合とBS-1でも01:10から放送されるので、オバマ氏の2つの著作のあらすじを再掲して筆者からの就任祝いとしたい。



2008年11月5日再掲

南北戦争?を思わせるような大統領選挙の開票途中結果だが、オバマ氏の勝利が確実となった。途中結果はロイターのサイトが逐次報告している。

Presidential election preliminary results






出典:ロイター大統領選挙特集

ちなみに、次が2000年のブッシュ対ゴアの最終勝ち負けだ。かなり傾向は似ている。

2000 electipn




予想通りバラク・オバマ氏が米国大統領選挙を制した。当選を祝して、オバマ氏の「合衆国再生」のあらすじを再掲する。オバマ氏の政策の基本的な考え方がわかるので、参考にしてほしい。

対話重視、メインストリート(ウォールストリートに対する一般市民の意味)重視、国際協調重視、国民皆保険重視のオバマ氏の手腕に期待するところ大である。

オバマ氏のもう一つの本で、自身の生い立ちからシカゴでのコミュニティ・オーガナイザーとしての生活まで、そして実父に対する複雑な思いを書いた自伝的小説「マイ・ドリーム」のあらすじも、興味あれば参考にしてほしい。



2008年10月22日初掲

合衆国再生―大いなる希望を抱いて合衆国再生―大いなる希望を抱いて
著者:バラク・オバマ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-12-14
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


11月の選挙で米国大統領として当選がほぼ確実なバラク・オバマ氏の自伝と政策論。

原題は"The Audacity of Hope"であり、2006年11月に出版されている。"Audacity"とは「大胆さ」という意味で、日本語訳では「大いなる希望を抱いて」となっている様に、大統領選挙を意識した本である。

政界への最初の挑戦のイリノイ州議会上院議員(1997年)、2000年の下院議員選挙での惨敗、2004年の上院議員選挙での圧勝、オバマ氏を一躍有名にした2004年民主党党大会でのキーノートスピーチ、そして大統領選挙挑戦までの一連の活動をオバマ氏自身が語っている。

400ページ強の本だが、政治活動の現実や主要政策についての自分の考えをオバマ氏が淡々と語っているので思わず引き込まれる。


メイキングオブプレジデント

オバマ氏はハーバード・ロー・レビューという法律家向け専門誌で、はじめての黒人編集長となって注目されたそうだが、文才もあり読みやすい内容でアメリカで200万部以上売れているという理由がわかる。

大統領になって打ち出す政策は、この本に書かれているアウトラインとは若干異なるかもしれないが、オバマ氏自身が書いたオバマ氏の基本的な考え方がわかる重要な本だ。

自身の生い立ちからシカゴでのコミュニティ・オーガナイザーとしての生活まで、そして実父に対する複雑な思いを書いた自伝的小説「マイ・ドリーム」のあらすじを以前紹介したが、この本はシカゴでのコミュニティー・オーガナイザー活動以降のオバマ氏の経験が取り上げられている。

マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝
著者:バラク・オバマ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-12-14
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


筆者が「メイキング・オブ・プレジデント」と呼ぶとおり、政治活動の裏側や徒手空拳で政治活動を始めたオバマ氏が活動資金に苦労する台所事情などが率直に描かれていて読み物としても面白い。

親や祖父の地盤を引き継いで世襲政治屋となっている日本の多くの政治家に、オバマ氏の爪の垢を煎じて飲ませたいくらいだ。


ヒラリー・クリントンの力

恵まれない家庭環境から這い上がって大統領になった先人は、たとえばビル・クリントンがいるが、結婚相手のヒラリー・ローダムが名家の出身のバリバリの弁護士で、ビルが大統領になれたのはヒラリーの貢献が大きい。

以前紹介した手嶋龍一さんの「葡萄酒か、さもなくば銃弾を」に紹介されていたが、ビル・クリントンがアーカンソーに戻ったときに、ガソリンスタンドを経営している友人のことを取り上げて、「あの人でなく、大統領になった自分と結婚してよかっただろう」とヒラリーに言ったところ、ヒラリーは「私があの人と結婚していれば、あの人が大統領になったはずよ」と切り返したという。

ヒラリーが旧姓ローダムのままでバリバリの弁護士として活躍し、ビルがアーカンソー知事をやっていた時代に、クリントン夫妻としてつくった実業界の友人も多かった。

ビルは文無しからのスタートだが、クリントン夫妻としてはそれなりに政治資金と支援者に恵まれていた。金脈のひとつはホワイトウォーター疑惑を招いている。


オバマは本当に徒手空拳

オバマ夫妻も弁護士同士の結婚という意味ではクリントン夫妻と同じだが、オバマ氏はハーバードロースクール卒業後、シカゴの市民権専門の小さな弁護士事務所勤務、奥さんのミシェルは結婚後すぐに弁護士をやめ、シカゴ市の企画部や市民活団体に勤め、二人ともお金には縁がなかった。

地方議会のイリノイ州議会上院議員選挙では10万ドル以上必要なかったので問題なかったが、合衆国上院議員選挙では選挙顧問にテレビコマーシャルなどを入れて最低1,500万ドルが必要と言われ、知り合いに頼んで金策したが25万ドルしか集まらなかったという。

対抗馬がゴールドマン・サックスに自分の会社を5億ドルで売った実業家で、湯水のように選挙資金を投入してテレビコマーシャルを打ったが、オバマ氏は沈黙したままだった。

それでも選挙直前にインターネットでの小口献金が急増したことと、対抗馬が元妻との離婚スキャンダルで自滅したこともあり、2004年の上院議員選挙では圧勝できたのだ。


オバマを支える小口ネット献金

オバマ氏の特徴は、企業献金に頼らないインターネットを通じた小口献金中心の資金集めだ。企業の政治活動委員会(PAC)から敬遠されていたので、それしかなかったという。

2008年10月16日の日経IT PROエクスポでの大前研一氏の講演で、大前氏はオバマの勝因はインターネットであり、オバマはネットで(大前氏は"Notebook"と言っていたが、"Facebook"の間違いではないかと思う)80万人の支持を得て、ヒラリーは30万人、マケインはそもそもネットのことを知らなかったと言っていた。

大前氏の数字とは異なるが、現在のFacebookの政治家コーナーではオバマ支持者220万人、マケイン支持者60万人、ヒラリー17万人となっており、ネットではオバマ支持者がマケイン支持者を圧倒している。

Facebook






ネットでの草の根運動がオバマ氏の最大の支持基盤となっており、これは今までの大統領候補にはなかったことだ。まさにインターネットが生んだ21世紀の大統領といえるだろう。

オバマ氏は今年47歳。JFKが大統領になった43歳よりは年上だが、JFKのような何不自由ない名家に生まれた訳ではない、資産ゼロの庶民からの大統領という意味では異例の若さだと思う。

この本の目次は次の通りだ:

プロローグ
第1章 二大政党制の弊害
第2章 共存するための価値観
第3章 憲法の真の力
第4章 政治の真実
第5章 再生のための政策
第6章 宗教問題
第7章 人種間のカベ
第8章 アメリカの対外政策
第9章 家庭と生活
エピローグ


短い政治経験

この本を読むとオバマ氏の政治経験が短いことがわかる。

オバマ氏がイリノイ州議会上院議員になったのが11年前の1997年。連邦上院議員には2004年になったばかりで、1期目の上院議員である。

しかし議員在任年月だけでオバマ氏の政治活動を判断してはいけない。

日本の小泉チルドレンの様に、当選しても何をやっているのか消息がわからない議員と違って、オバマ氏は州議員時代でも死刑事件の取調べと自白にビデオ録画を課す法案などを成立させている。

上院でもテッド・ケネディ、ジョン・マケインの党派を超えた包括的移民制度改革法案で不法労働者の採用を難しくする修正条項を共同で起草している。

これはアメリカ人労働者より低い賃金で出稼ぎ労働者を雇うことを禁止するものだ。

また後述の「ハイブリッド車・医療費交換法案」も起草している。

田中角栄は自分で30本もの議員立法をつくったというが、田中角栄と同じことをアメリカの議員はしているのだ。


「共感」を強調

民主党らしく大企業には厳しい。従業員の給与が増えていない中で、CEOの報酬だけが高騰していることは市場の要請ではなく、強欲を恥じない文化のせいであると批判する。

「共感」という感覚がもっとあれば、CEOが従業員の医療保険を削りながら、自分に何千万ドルのボーナスを出すなんてありえないと語る。ウォルマートのリー・スコットCEOたちのことを指しているのだ。

どんなに意見が食い違っていても、オバマ氏はジョージ・W.ブッシュの目を通して世界を見ようと努力する義務があると語る。「共感」とはそういうことなのだとオバマ氏は呼びかける。


ロバート・バード上院議員のアドバイス


憲政の権化のような91歳のウェストバージニア州選出のロバート・バード上院議員の話も面白い。

オバマ氏が上院議員になって挨拶に行くと、バード議員は「規則と先例を学びなさい」と言ったという。「憲法と聖書、私に必要な文書はそれだけだ」。

そして最後にバード氏が若い頃KKKに加盟していたことを「若気の至り」として自ら告白したという。

バード氏は炭坑の多い全米でも最貧州の一つのウェストバージニア出身だ。労働組合を支援し、鉄鋼の輸入規制など保護主義的な法律をつくったことで知られているこわもての名物上院議員だ。


政治家の変質

政治家はなぜ変質してしまうのかという点については、会員議員の選挙区は与党の手で勝手に選挙区割りを決められ、与党支持者が過半数いる地域を割り当てるようにしているのだという。

もはや有権者が代表を選んでいるのではなく、代表者が投票者を選んでいるのだと。

地元にべったりで思い切った挑戦をしない。それゆえ下院議員の再選率は96%となっている。

だから有権者は国会は嫌いだが、自分たちの議員は好きだという世論調査結果になるのだと。


フラット化する世界

オバマ氏はこのブログでも紹介した「コラムニストで作家のトーマス・フリードマンが言うように、世界はまちがいなく日に日にフラット化していく」が、グローバル化への対処方法はあると語る。

フラット化する世界 [増補改訂版] (上)フラット化する世界 [増補改訂版] (上)
著者:トーマス フリードマン
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2008-01-19
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


「アメリカが競争力を高めるために必要とされるむずかしい対策に国が取り組まず、市場に政府が果たすべき適切な役割について新しい合意が築かれていない現状が問題なのだ」と語り、アレクサンダー・ハミルトン以来のアメリカ版資本主義の発展と政府との関係の歴史を簡単にまとめている。

アメリカの競争力を高めるために、教育と科学技術とエネルギー的独立の3分野への投資が必要だと語る。これがオバマ氏の政策の基本となる。「フラット化する世界」のフリードマン氏の主張と同じで、まさに現在のアメリカに必要なものである。

ルービン元財務長官からは「保護貿易主義的な努力はすべて逆効果だ。それだけでなく、彼らの子どもの暮らしをいっそう悪化させることになる」と言われたそうだが、オバマ氏は組合には好意的だ。


バフェットの税率はセクレタリーよりも低い!?

オマハで質素な暮らしをしている世界一の大富豪ウォレン・バフェットと面談した時に、なぜバフェットの実効税率が平均的アメリカ人よりも低いのか?といわれた話を紹介している。

バフェットの様に配当とキャピタルゲインが主な収入の場合には、15%しか課税されないのだ。一方社会保障も入れたセクレタリーの給与はその倍近い税率で課税される。

バフェットがとりわけ心配していたのはブッシュ大統領が推し進めようとしている相続税廃止だという。

彼は相続税を廃止すれば、富裕層の貴族政治化を促すと考えており、「2000年のオリンピックに優勝した選手の子どもたちだけで2020年のオリンピック代表を決めるようなものだ」と言っていたという。

相続税は人口の0.5%にしか影響しないが、国庫に1兆ドルの収入をもたらすという。


様々な問題について持論展開

宗教問題(人工中絶、同性婚)、人種間のカベ、外交政策、教育、エネルギー政策の転換、自由貿易、世界経済、社会保障、低所得層を救うアイデア、医療保険制度、財源、格差社会の是正、ワーキングプア問題等について自説を展開している。

オバマ氏を一躍有名にした2004年の民主党大会の「黒人のアメリカも、白人のアメリカも、ラテン系のアメリカも、アジア系のアメリカもない。ただアメリカ合衆国があるだけなのだ」という発言をもとに、黒人、特に黒人の若者への偏見、人種間の格差(白人の平均資産が8万8千ドルに対し、黒人の平均資産6千ドル、ラテン系8千ドル)などについて語っている。



外交問題

イラク問題については、当初より戦争後の占領体制を考えない戦争には反対してきたが、オバマ氏みずからがバグダッドに行き、現地の情勢を知った今は、性急には撤退できないと考えていると。

有権者の一人から「あんたはイラク戦争に反対したにもかかわらず、まだ部隊の完全撤退を求めて声をあげていない」と言われ、「あまりに急激な撤退はあの国に全面的な内戦をもらたらし、中東全域に紛争を拡大させる可能性がある」と説明したという。

いずれにせよアメリカの外交政策には理念がないと断じて、次のような質問を投げかけている。

なぜイラクには侵攻し、北朝鮮やビルマにはしないのか?

なぜボスニアには干渉し、ダルフールにはしないのか?

イランにおける目的は何なのか?政権の交代なのか、核保有能力を解体することか、核拡散防止なのか、3つすべてなのか?

自国民を恐怖におとしいれている独裁的な政権が存在するところなら、どこでも力を行使するのか?

その場合、経済は自由化しはじめているが、政治は自由化されていない中国のような国々はどう扱うのか?


防衛力とエネルギー問題

軍事力については、第三次世界大戦を視野に確立されている防衛費と戦力構造には、戦略的な意味がほとんどないことをそろそろ認識すべきだと語っている。

ブッシュ政権を初めとする共和党政権を強力にバックアップしていた軍事産業には聞きたくない話だろう。

さらにブッシュ政権のエネルギー政策は、大手石油会社への補助金と掘削の拡大に注がれてきたが、セルロースからのエタノールなどの代替燃料開発を進め、エネルギー効率を上げる等、ケネディ時代のニューフロンティア政策のような政策を打ち出すべきだと主張する。

オバマ氏はロシアにエネルギーを依存しているウクライナを訪問し、輸入石油に依存している国の脆弱性を感じ、アメリカは別の選択肢を持つべきだと主張する。

オバマ氏自身が起草した「ハイブリッド車・医療費交換法案」は、退職者への医療費に対して政府が補助金を払う代わりに、ビッグスリーはハイブリッド車などの燃費効率の良い車の開発に投資するというものだ。

北朝鮮やイランのような「ならずもの国家」の脅威を管理し、中国のような潜在的ライバルの挑戦を受けられるだけの優勢な戦力を維持する必要は認めているが、単独行動でなく、国連の強化による他国との協調的な行動を取ることを主張している。

この路線は日本の民主党の国連重視外交と同じ方向性の様に見える。超大国アメリカの指導者としては、今までなかった斬新な考え方だ。


家庭生活

アメリカの初婚の5割は離婚に至っているという。

この30年間でアメリカ人男性の平均収入の伸びはインフレ調整後で1%を切っており、住居、医療、教育費をまかなえなくなっているのだと。

共稼ぎで増えた収入は、ほとんど全部が子どもの教育費、授業料や良質な公立学校がある地域に住むための住居費と、母親が通勤に使うもう一台の車や託児所の費用に使われているという。女性の社会進出は、家計を支えるための必要にせまられてのものだ。

最後に奥さんミシェルと、二人の娘、マリア、サーシャを紹介し、時々はワシントンのモール(中心地区)のジョッギングで、建国の父たちに思いをはせていると語り、「私の心はこの国への愛に満ちている」と結んでいる。


47歳で上院議員1期目のオバマ氏だが、大統領になっても、アメリカ国民のためにしっかりとした政治を行っていくことだろう。

そんな好印象を受ける良い本だった。

11月の大統領選挙の前後に是非一読をおすすめする。



参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 18:29Comments(0)TrackBack(0)

祝!大統領就任 マイ・ドリーム バラク・オバマのケニア出身の父親への複雑な気持ち

2009年1月20日再掲:


本日深夜(日本時間1月21日01:30〜02:00頃)オバマ新大統領が就任演説を行う。

NHK総合とBS-1でも01:10から放送されるので、オバマ氏の2つの著作のあらすじを再掲して筆者からの就任祝いとしたい。



2008年10月7日初掲:

マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝
著者:バラク・オバマ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-12-14
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


米国民主党の大統領候補で、現時点では大統領に一番近いバラク・オバマ氏の本。

「自伝」だと思って読んでみたが、結論から言うと「自伝的小説」だった。

「自伝的小説」というとわかりにくいかもしれないが、白人の母とすぐに離婚して本国に戻ってしまったケニア人留学生の父への怒りを含んだ複雑な気持ちが主題となったノンフィクションだ。

英語の原題も"Dreams from My Father: A Story of Race and Inheritance"というもので、こちらの方が内容をあらわしている。

Dreams from My Father: A Story of Race and InheritanceDreams from My Father: A Story of Race and Inheritance
著者:Barack Obama
販売元:Random House (a)
発売日:2005-05-10
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


それ以外にシカゴの貧民街でのコミュニティ・オーガナイザーとしての生活、父の国ケニアでの父の生活や親戚との出来事などを書いている。

両親が二歳のときに離婚したので、子どもの時は父親の記憶はなく、父と生活したのはケニアに戻った父がハワイに遊びに来た10歳の時の約一ヶ月だけだった。

小説のあらすじは詳しく書かないのが筆者のポリシーなので、簡単に紹介しておくが、オバマ氏の父への複雑な気持ちは、日本で言うと志賀直哉の作品、特に「和解」を思い出させる内容だ。

和解 (角川文庫)和解 (角川文庫)
著者:志賀 直哉
販売元:角川書店
発売日:1997-06
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


アマゾンのなか見検索には対応していないので、目次を紹介しておく。

第1部  起源(オリジン)

第1章  ナイロビからの電話
第2章  インドネシア
第3章  ハワイでの再会
第4章  人種のはざまで
第5章  オキシデンタル・カレッジ
第6章  コロンビア大学

第2部  シカゴ

第7章  オーガナイザー
第8章  コミュニティー開発プロジェクト
第9章  雇用訓練センター
第10章 いくつもの方法論
第11章 オウマ(オバマ氏の異母姉)
第12章 アスベスト問題
第13章 ユースカウンセリング・ネットワーク
第14章 希望を持つ勇気

第3部  ケニア

第15章 ルーツを巡る旅
第16章 父が抱えた苦悩
第17章 サファリ
第18章 父の故郷
第19章 オバマ家の物語

実はビル・クリントンのマイライフの様な自伝を予想していた。

マイライフ クリントンの回想 MY LIFE by Bill Clinton 上マイライフ クリントンの回想 MY LIFE by Bill Clinton 上
著者:ビル・クリントン
販売元:朝日新聞社
発売日:2004-09-10
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


このブログでも紹介したがマイライフはビル・クリントンが大統領退任後2年間掛けて書き上げた自伝で、日本語だと上下1、600ページ余り。

実の父がビルが生まれる前に交通事故でなくなったこと、自らの生い立ちや学生時代のこと、JFKに会ったこと、留学後弁護士となり、アーカンソー知事に最年少で当選、再任失敗、返り咲き、そして大統領に当選してからの様々な出来事を語っている。

もちろんオバマ氏はまだ大統領になっていないが、それにしても1995年に書いた自伝をそのまま書き加えることなく出版するというのは、彼なりに考えがあってのこととはいえ、いかにも大統領選挙に間に合わせたという感が強い。

オバマ氏はもう一つ「合衆国再生」という本を出している。

合衆国再生―大いなる希望を抱いて合衆国再生―大いなる希望を抱いて
著者:バラク・オバマ
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2007-12-14
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


近々読んでみるが、こちらはオバマ氏の政策提言を説明した本で、オバマ氏を一躍有名にした2004年の民主党大会での演説内容を敷衍したものの様だ。



「マイ・ドリーム」の最後はケニアの祖父と父の二つの墓の間で涙を流すオバマ氏の心の描写で終わっている。

人生の輪が完成したのだと。

「黒人としての生活、白人としての生活、少年時代に感じていた捨てられたという感覚、シカゴで目撃してきた挫折や希望など、アメリカでの私の人生はすべて、海のこちらにある小さな土地と繋がっていて、その繋がりは、私の名前や皮膚の色なんかより、もっとずっと深いものだったのだ。そして私が心に感じた痛みは、父の痛みであり、私の疑問は、きょうだいの疑問だった、彼らの苦悩は、私が生まれながらにして受け継いだものだったのだ。」

アフリカ系アメリカ人のノンフィクション小説としてベストセラーになり、テレビドラマにもなったアレックス・ヘイリーの「ルーツ」があった。筆者もテレビドラマを見て、クンタ・キンテが白人に捕まる場面や、奴隷船の場面など感動したことを思い出す。




「ルーツ」のオバマ版として読むことをおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。


  
Posted by yaori at 18:28Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月16日

武士道とともに生きる 山下泰裕さんとトヨタの奥田碩さんの共著

2009年1月16日追記:

今日の午後10時からNHK総合で「スポーツ大陸 何があっても勝つ〜史上最強の柔道家 山下泰裕〜」が再放送される。

山下泰裕さんの現役時代の活躍がよくわかるので、是非見て頂きたい。



2009年1月11日追記:

本日(1月11日)午前7時にNHK BS−hiで「スポーツ大陸 何があっても勝つ〜史上最強の柔道家 山下泰裕〜」を見た。

スポーツ大陸 山下泰裕






山下さんの現役時代の数々のエピソードが取り上げられており、山下さんの恩師の佐藤宣践(のぶゆき)先生も登場する。

柔道を始めた頃から、1984年のロスアンジェルスオリンピックで2回戦での右足の肉離れにもかかわらず金メダルを取ったこと、オリンピックの翌年の全日本柔道選手権で宿敵斉藤仁選手と対決し、優勢勝ちを収めて203連勝無敗のまま引退したことなどが紹介されている。

筆者も見た記憶がある懐かしい場面ばかりだが、ロスオリンピック決勝の時の山下さんは、利き足の右足を引きずって、とても試合などできる状態ではなかったことがよくわかる。

筆者も高校生のときにサッカーをやっていて肉離れを経験したことがあるが、筆者の場合は「バキッ」という音とともに激痛が襲ってきた。とても運動などできたものではない。

今映像を見直しても痛々しいかぎりだが、それでも金メダルを取るとは、本当に国民栄誉賞に値すると思う。

山下泰裕氏といっても引退したのが20年以上前の1985年ゆえ、若い人にはどんな活躍をした選手なのかわからないと思うので、是非この番組を見てなぜ「史上最強の柔道家」といわれるか知って欲しい。

NHK総合で1月16日(金)午後10時から再放送されるので、是非見て欲しい。


2009年1月10日初掲:

武士道とともに生きる武士道とともに生きる
著者:奥田 碩
販売元:角川書店
発売日:2005-04-25
おすすめ度:3.0
クチコミを見る

トヨタの奥田碩(ひろし)元会長と、東海大学体育学部教授で前国際柔道連盟教育コーチング理事の山下泰裕氏の寄稿と対談を集めた本。奥田さんは柔道6段だ。

山下さんの講演を聞いて感動したことがあるので読んでみた。

ちょうど山下さんを特集したNHKの「スポーツ大陸」が1月11日(日)午前7時のBS−Hi,1月16日(金)の夜10時からのNHK総合で再放送されるので、こちらも是非見て頂きたい。

山下さんの肩書きを前理事と書いたのは、2007年の国際柔道連盟の理事選挙に敗れたからだ。このことは話題になったので、山下さん自身の山下泰裕公式ホームページ敗戦の弁を紹介しておく。

柔道が"JUDO"時代となり、山下さんの知名度をもってしても、本家本元の日本が国際柔道連盟の主導権を取れない現状がよくわかる。柔道国際化の宿命といってしまえばそれまでかもしれないが、ハンドボールの「中東の笛」をはじめ、国際スポーツ界の金権化が危惧される。

山下さんは柔道教育ソリダリティというNPO法人のホームページと、山下泰裕公式ホームページで、山下さんの活動や各種雑誌などへの寄稿や各地で行った講演などを情報発信している。

どちらかというとこの本は奥田さん色が濃く、山下さんの話は抑えている感じなので、このあらすじでは山下泰裕公式ホームページで公開されている講演録などの情報も含めたあらすじを紹介する。

山下さんの講演録は「自己実現と教育法 ―柔道に教えられ、学んだこと―(全10回)」という題で、筆者が聞いた講演とほぼ同じで他の話題も含まれていて大変面白いので、是非是非読んで欲しい。


同級生からの表彰状

山下さんは子どもの頃から体が大きく、暴れん坊だった。小学校4年生から柔道を始めたが、それまでは山下さんがいるから学校に行けないという登校拒否児童が出るありさまだったという。

山下さんがロサンジェルスオリンピックで足のけがにもかかわらず金メダルを取った時に、故郷の同級生が次のような表彰状をくれたという。

「表彰状 山下泰裕殿 
あなたは小学生時代、その比類稀なる体を持て余し、教室で暴れたり、仲間をいじめたりして、われわれ同級生に多大な迷惑をかけました。しかし、今回のオリンピックにおいては、われわれ同級生の期待を裏切るまいと不慮の怪我にもかかわらず、見事金メダルに輝かれました。このことは、あなたの小学生時代の数々の悪行を清算して、あり余るだけではなく、われわれ同級生の心から誇りうるものであります。よって、ここに表彰し、偉大なるやっちゃんに対し最大の敬意を払うとともに、永遠の友情を約束するものである。」

山下さんは過去の栄光の品々は国民栄誉賞も金メダルも一切飾っていないそうだが、この表彰状だけは飾っているという。過去は関係ない。大事なのは、今とこれからだという。


指導者としての山下さん

山下さんが師と慕うのは、中学時代の恩師白石礼介先生、高校・大学の恩師佐藤宣践(のぶゆき)先生、東海大学の創始者松前重義先生、そして柔道の創始者嘉納治五郎先生だ。

講演でも話されていたが、山下さんは指導者といっても、自分が教えたことよりも、むしろ学生やみんなから教えられたことのほうが多いと謙虚に語る。

山下さんも名選手名監督ならずの例で、初めは自分の立場でしかものを見ることができず、他人の考えていることがわからなかったという。

しかし指導者としての経験を通して、不世出の名選手だった山下さんが「何を言ったか」ではなく、山下さんの指導により相手が「どう変わったか」が重要なのだと考えるようになった。「お前、これはあの時教えたじゃないか」などと言っても、それは指導者の自己満足でしかないのだ。

山下さんの教え子の中では、手間が掛からなかった教え子よりも、手間の掛かった教え子のほうが、指導者としての山下さんを成長させてくれたという。

山下さんが現役を引退して東海大学柔道部の監督だった時に、仲間を楽なほうへ、悪いほうへ引っ張る4年生の問題児がいたという。彼は兵庫県の高校代表だったが、全国のトップクラスが集まる東海大学柔道部では試合に出られず、後輩に追い抜かれ、くさっていたようで、山下さんはやる気がないなら辞めて欲しいと思っていたという。

そんな時に白血病のお子さんを持つ両親から、山下さんに献血のためにA型の学生を集めて貰えないかとの依頼があった。そこで山下さんが声をかけ、20名ほどの献血者が集まったが、その中にその問題児がいたのだという。

手術が成功し、そのお子さんが退院していくときにお母さんが挨拶に来られて、涙を流してお礼を述べられたが、その時にその問題児が片道1時間も掛かる病院まで何度も見舞いに行って、試験などで行けない時は手紙を書いて励ましていたことを山下さんは知って驚いたという。

自分もA型なのに監督だから学生に声をかけるだけで献血にも参加せず、その学生をやる気のない奴だということで、ただ叱っていた。兵庫県でチャンピオンだった学生が後輩に追い抜かれる挫折感、心の葛藤も理解しなかった。また選手を強くしたいという気持ちよりも、自分が日本一の監督だと思われたかった自らに気が付いたという。

指導者としての経験を通して山下さんはできる、できないで区別せず、「この子はできるまでに時間がかかるんだ」と考えるようになったという。

人を評価するときは、できるだけ全体的に見なくてはいけないということを、その学生から教わった。欠点を指摘するのはたやすいが、良い点を見抜くのはじっと見ていないといけない。頑張ったところをほめてやる。枠にはめず、いいところをできるだけ伸ばしてあげるようにしたいと考えているのだと。

英語のEducationも語源は「educe=引き出す」だ。その人のいいところを育ててやる。それが教育だと思っていると山下さんは語る。

山下さんは、筆者がもう一度話を聞きたい人の筆頭だ。


シドニー・オリンピックのデュイエと篠原

2000年のシドニーオリンピックでの100キロ超級決勝でのデュイエの内股を、篠原信一選手が内股すかしで返したが、審判は高度な技を理解せずデュイエの金メダルが決まった。

この試合の後、日本とフランスの間がギクシャクしたが、デュイエは「困難から逃げないで立ち向かう勇気を教えてくれたのも柔道だった」と、つたない日本語で「よろしくお願いします」と手紙を書いてきて山下さんに訪日の件を知らせてきたという。

「弱いから負けた」と一切言い訳をせず、審判にも決して不満を言わなかった篠原信一選手の人間の大きさも立派だし、デュイエも立派だ。どちらも金メダルにふさわしいと山下さんは語る。


「道(ひとのみち)」としての柔道

山下泰裕氏は「柔道を通じて「武士道」のような日本人の精神を世界に広めたい」と語っており、奥田さんと山下さんが、「姿三四郎」などに描かれている柔道の武士道精神などについて語っている。

筆者は柔道は高校の体育で数ヶ月やった程度だが、柔道といい剣道といい、相手と1対1で対決する武道は、勝つための自らの鍛錬という面でも、対戦相手との友情が生まれるという面でも、きわめて教育的なスポーツだと思う。

だから「道」という名前がついており、まさにこれが創始者の嘉納治五郎が柔術から柔道を生み出した違いである。

北京オリンピックの石井慧(さとし)選手が象徴的だが、勝つことに意味があるのだという風潮がある。

スポーツとしてのJUDOなのか、鍛錬としての柔道なのか、意見が分かれるところかもしれないが、JUDO路線の対極にあるのが、この本で述べられている武士道精神を目指す柔道である。

石井慧選手を特集したNHKスペシャルを見て、石井選手が口だけではなく人一倍努力をして、ヒマさえあればウェイトトレーニングをやって筋肉をつけ、筋力、技のきれ、スピードを磨いてオリンピックに臨んだことを知った。

「腹筋の出ている重量級の柔道選手など(他には)いない」という石井選手の言葉もその通りだと思う。

普通の人ではマネのできない努力の結果勝ち取れた金メダルだと思うので、石井選手を悪く言うつもりはないが、たとえ試合に勝ってもその行動や言動を見ていると柔道家として周りの人や他の選手から尊敬される存在にはなっていない。

柔道は心技体のはずであり、石井選手の場合「心」はまだまだ鍛錬が必要だと思う。

山下さんは勝つための柔道には公共心などがなくなってきているので、創始者の志に戻る「柔道ルネッサンス」を提唱している。「最強の選手」をつくるのではなく、「最高の選手」をつくるのだと。


「ソフト・パワー」としての柔道

奥田さんと山下さんは日ロ賢人会議で一緒になってから親しくなったという。山下さんは奥田さん達の支援を受けて、柔道教育ソリダリティというNPO法人をやっている。

山下さんの友達に「日ロ賢人会議」に出たというと、「お前、熊本県人だろ?」とか、「えっ、ロシアにも県があるのか?」といった反応が返ってくると。山下さんの子どもの頃を知っているので「賢人」とは思えないのだと。

山下さんはプーチン首相と親しい。YouTubeでも山下さんと井上康生がプーチン首相と一緒に、ロシアの子ども達に柔道を教えているビデオが公開されている。



プーチン首相は別荘に嘉納治五郎の銅像を建て、今でも週2回柔道の練習をしているという。

柔道の用語は日本語ですべて通しているが、プーチン首相も「最初はさっぱり分からなかった。でも、そのうち、だんだんそれがわかるようになった。柔道で使われている日本語に興味を持ち始めたことがきっかけとなって、日本の文化に興味、関心を持っている」と言っていたという。

ロシア人は日本びいきだで、日本が好きだと答えている人は74%も居ると以前紹介した大前研一氏の「ロシア・ショック」に書いてあった。プーチン首相はロシア語で「柔道、わが人生」という本を共著で出版しており、2000年の2回目の訪日の時に講道館を訪問し、次のように語っている。

「講道館に来ると、まるで我が家に帰ってきたような安らぎを覚えるのは、きっと私だけではないでしょう。世界中の柔道家にとって、講道館は第二の故郷だからです。日本の柔道が世界の柔道へと発展していくのはたいへん素晴らしいことですが、われわれにはもっと注目すべきことがあります。それは、日本人の心や考え方、そして文化が柔道を通じて世界に広まっていくことです」

 日本の柔道家が同じことをいえば、ある意味でそれは当然でしょう。しかし、ロシアの、それも大統領がこれほど深く柔道の役割を理解していることに、私は強く胸を打たれたのです。しかも、プーチン大統領は、講道館館長から送られた六段の紅白帯をその場で締めることを丁重に辞したうえ、こう言葉を続けました。「私は柔道家ですから、六段の帯がもつ重みをよく知っています。ロシアに帰って研鑽を積み、一日も早くこの帯が締められるよう励みたいと思います」

 この発言はいわゆるリップサービスだと、穿った見方をする人がいるかもしれません。多忙な大統領に練習のための時間などあるはずはないと。しかし、プーチン大統領が週に2回、今でも道場に足を運んでいることを私は知っています。この言葉は、心から発せられたものでした。

出典:山下泰裕公式ホームページ記事

オバマ新政権で駐日米国大使になるジョセフ・ナイさんや、国務次官補になるカート・キャンベルさんなど、米国の親日派のビッグショットがそろい踏みした日経新聞とCSIS(米戦略国際問題研究所)主催のセミナーを12月に聞いた。

ジョセフ・ナイさんは、「ソフト・パワー」を提唱し、国の力として軍事力、経済力などの「ハード・パワー」とともに、これからはその国の文化、ファッション、食べ物、流行などの「ソフト・パワー」が重要になると説く。

ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力ソフト・パワー 21世紀国際政治を制する見えざる力
著者:ジョセフ・S・ナイ
販売元:日本経済新聞社
発売日:2004-09-14
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


この本で奥田さん、山下さんが繰り返し述べられている武士道精神、柔道の精神性もまさに日本を代表するソフト・パワーであり、プーチン首相の日本びいき、世界190ヶ国に柔道連盟があるという圧倒的なネットワーク力などを、日本ももっと活用すべきだと筆者も思う。


奥田さんの愛読書「姿三四郎」

奥田さんの愛読書は「姿三四郎」だという。今から120年ほど前の明治時代の物語で、柔道の精神性と日本人としての生き方の理想像、柔道の美学がそこにあるという。これは新渡戸稲造の書いた「武士道」にも通じる生き方であると。

武士道 (岩波文庫)武士道 (岩波文庫)
著者:新渡戸 稲造
販売元:岩波書店
発売日:1938-10
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


「姿三四郎」は現実のモデルに即した小説で、柔道の開祖嘉納治五郎は矢野正五郎として描かれ、当時の四天王は「姿三四郎」の著者の富田常雄の父、富田常次郎、横山作次郎、山下義詔、そして姿三四郎のモデルの西郷四郎だった。

姿三四郎;普及版; [DVD]姿三四郎;普及版; [DVD]
出演:大河内傳次郎;藤田進;河野秋武;清川荘司
販売元:東宝
発売日:2007-12-07
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


富田常雄は講道館の敷地にあった富田常次郎の家に生まれ、自身も柔道の有段者だったので、柔道に囲まれた環境に育った。

嘉納治五郎は柔道の国際化に尽力した。嘉納治五郎は東大卒で、英語で日記を書いているといわれるほど、英語が達者だった。早くから海外への柔道の普及に尽力し、アジア初のIOC委員にもなって、幻に終わった1940年の東京オリンピックの招致にも貢献した。

現在国際柔道連盟加盟国は約190あり、これはオリンピックに参加している競技の中で、3番目に多い加盟国だという。


日本柔道界金メダルゼロの日

奥田さんは山本七平の「日本はなぜ敗れるのか」を社員に読むように薦めているという。

日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21) (角川oneテーマ21)日本はなぜ敗れるのか―敗因21ヵ条 (角川oneテーマ21) (角川oneテーマ21)
著者:山本 七平
販売元:角川グループパブリッシング
発売日:2004-03-10
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


トヨタもおごりの心が出てきてしまうことを強くいさめているとのこと。柔道も「勝ちさえすればよいのだ」という風潮になりつつあることを危惧している。

アテネでの金8個、銀2個という成績はできすぎでピークだった。日本の柔道界に金メダルゼロの日がやがてやってくるのではと危惧されているという。

柔道がここまで国際化した背景には、やはり精神性があると思う。この本ですすめらてている「姿三四郎」も一度読んでみようと思う。

姿三四郎 上巻 (1) (新潮文庫 と 6-1)
著者:富田 常雄
販売元:新潮社
発売日:2000
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


簡単に読め、柔道のソフト・パワー力、精神性、教育的価値がよくわかる。山下さんのホームページとともに是非おすすめする。



参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 01:36Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月15日

雨上がる 山本周五郎をオーディオブックで聞く

最近やや体重が増えぎみなので、寒くとも駅まで30分ほど歩くようにしている。

食事にも気を遣い、1週間で500G程度減ってきている。もう2−3キロは減らしたいものだ。

歩いている間はオーディオブックを聞く。二宮金次郎は歩きながら本を読んだが、本の代わりにオーディオブックで現代の二宮金次郎?をねらっている。

最近聞いたオーディオブックがこれだ。

雨あがる (新潮CD)
著者:山本 周五郎
販売元:新潮社
発売日:1997-11
クチコミを見る


図書館で借りたオーでぉブックだが、本だと角川春樹事務所で最近出版されている。

雨あがる (時代小説文庫)雨あがる (時代小説文庫)
著者:山本 周五郎
販売元:角川春樹事務所
発売日:2008-08
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


「雨あがる」の映画は黒澤明監督が死の直前まで脚本を書き、それを黒澤監督の右腕だった助監督の小泉堯史(たかし)監督が完成させた作品だ。

雨あがる






筆者はポリシーとして小説のあらすじは詳しく紹介しない主義だが、「雨あがる」では、剣の達人だが、好人物過ぎて世渡り下手のさむらいを寺尾聰が演じており、宮崎美子がしっかり女房役を演じている。

2001年の日本アカデミー賞で作品賞/主演男優賞/助演女優賞/脚本賞/音楽賞/撮影賞/照明賞/美術賞の8部門で最優秀賞を総なめした作品だ。

YouTubeにも予告編がアップされている。



オーディオブックなら歩いている間や、満員電車でも聞けるので、通勤時間を有効活用できる。

小説のオーディオブックも是非おすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。





  
Posted by yaori at 01:23Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月10日

無税入門 気になるタイトルなので読んでみた

2009年1月11日追記:

「無税入門」があまりに単純な、サラリーマンも副業をつくり自営業者として開業届けを出して費用を計上しろというものだったので、他の本も読んでみた。

この分野でのベストセラーは次の本だ。

フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。フリーランスを代表して 申告と節税について教わってきました。
著者:きたみ りゅうじ
販売元:日本実業出版社
発売日:2005-12-08
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

きたみりゅうじさんという元SEでイラストレーターの人が、税理士にいろいろ質問するという企画のものだ。きたみりゅうじさんは「キタ印工房」というサイトも運営している。

内容は税法の変更にあわせて適宜アップデートされているという。サラリーマンにはあまり参考にならないかもしれないが、グレーな部分も含めて、単刀直入な質問もあり、面白い。

次に元国税調査官の大村大次郎さんという人が、やたら刺激的なタイトルの本を出している。税務署を勤め上げた人は、退職後税理士として働けるが、国税局(?)に10年間勤務しただけで、このような裏技を紹介する本をやたら出しているのはやりすぎという感じがする。

その税金は払うな!その税金は払うな!
著者:大村 大次郎
販売元:双葉社
発売日:2006-11
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


大村さんはブログもあるが、ほとんど更新されていないようだ。

ホントかどうかわからないが、年収5、000万円までの開業医は約70%の経費が認められるとか、開業医が優遇されているのは日本医師会という強力な圧力団体があるからだとか、言い放題である。

かなりあぶない本である。税金が安くなるなどといった本はタイトルだけでも売れることもあり、玉石混交なのではないかという気がする。

もし実際に個人事業を開業するなら、図書館に行けばいくらでも同じようなマニュアル本がだされているが、参考までに最新刊が図書館にあったので、読んでみた。

一番よくわかる個人事業の始め方一番よくわかる個人事業の始め方
著者:鈴木 克俊
販売元:西東社
発売日:2008-11
クチコミを見る


退職後個人事業を始める人を主な対象にした本で、税務署等への届出や税法・簿記の基礎知識、日本政策金融公庫などからの資金の調達法などが詳しく説明されている。

興味のある人は確定申告や税法関係の本はたくさん図書館にあるので、図書館でチェックされることをおすすめする。


2008年12月29日初掲:

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しよう
著者:只野 範男
販売元:飛鳥新社
発売日:2007-10
おすすめ度:3.0



紹介記事だったか(朝日新聞?)、売上ランキングだったかで見て、気になるタイトルなので読んでみた。

こんな本を出すと当然税務署に目を付けられるのでペンネームではないかと思うが、著者は只野範男(略してタダノリ?)さんとなっている。

37年間も税金(所得税・住民税)を払わないで、教育など国や地方自治体の様々なサービスを受けている人がいるというのは腹が立つ話だが、働いている人の25%は所得税・住民税ゼロだという。

年収325万円以下の子ども2人のサラリーマン世帯、年収235万円以下の65歳以上の夫婦世帯、114万円以下の独身者は所得税がかからないという。勤労者の25%がこのカテゴリーに当てはまる。

日本の課税最低額が低すぎることは、今までもしばしば指摘されている。325万円といえば、今のドル=90円なら36,000ドルになる。

アメリカではZIP CODE(郵便番号)ごとの地域情報データベースを提供するサービスがあり、その地域での平均給与などもわかる。

たとえば筆者が最初の駐在のときに住んでいたピッツバーグのマウント・レバノンという準高級住宅地と、オフィスのあったダウンタウン(中心街)の平均収入分布は次の通りだ。

15234income15219income

出典:http://www.city-data.com/zips/15234.html

マウント・レバノンの平均年収は46,000ドルなので、36,000ドルだとやや低い部類となるが、4割程度の住民が36,000ドル以下だろう。36,000ドルというと悪くない年収で、アメリカの課税最低年収は低いので当然税金を払っている。

ピッツバーグのダウンタウンの年収となると、平均は16,300ドルで7割程度が36,000ドル以下だ。住民も黒人と若い年代が圧倒的で、日本の課税最低標準では大半が無税となってしまう。

余談になるが、この地域情報データベースサービスでは、出身国別や人種別のデータが非常に充実している。やはり自分が住むとなると、その地域の雰囲気に関心が高いのは当然で、たとえばマウント・レバノンとダウンタウンを比較すると、同じピッツバーグでも人種構成に大きな差があることがわかる。

15234race15219race

出典:http://www.city-data.com/zips/15234.html

この辺りの事情は、以前紹介した筆者の先輩の小林由美さんの「超・格差社会 アメリカの真実」に詳しい。

「無税」入門―私の「無税人生」を完全公開しようはアマゾンのなか見!検索に対応しているので、目次を見ると大体の内容がわかると思う。

またアマゾンのクチコミで、読んだ人の多くがこの本につきコメントしているので、それも参考になると思う。

著者は年収約500万円の神戸市在住の59歳のサラリーマンで、副業としてイラストレーターをやっている。

いわゆる売れないイラストレーターではあるが、一人前のイラストレーターに変わりはない。

そしてイラストレーター業を自営業として、税務署に「開業届け」を出し、年間30万円程度ある収入から自営業に掛かった様々な経費や家事関係費*を引くと赤字となるので、自営業の赤字と約500万円の給与所得と一緒に確定申告すると、給与やイラストレーター報酬から源泉徴収された税金が還付されるのだという。

*家事関係費:自宅を営業用に使っている場合の家庭用と事業用の経費が一体となって支出された経費のこと。自宅の家賃や光熱費、電話代、車の燃料代、固定資産税、火災保険料などの3−4割を事業用の経費として申告するのだと著者は言う。

イラストレーターの報酬が少ないからといって雑所得(20万円まで申告不要)としては損益通算ができない。

給与所得と損益通算ができるのは、1.不動産所得、2.事業所得、3.譲渡所得、4.山林所得の4種類に限られているからだ。だから、あくまで事業所得として申告するのがミソだという。

著者がこの本を書いた理由は、本が売れて印税が入ってくればうれしいからで、他の無税の人に「無税入門」の発表で、先を越されたくないというのが本音だという。

要は副業をつくって、それを個人事業として開業届けを出し、確定申告して給与所得に対する所得税と住民税を減らせというのが、著者の主張である。

アマゾンのクチコミにも同じ意見が多いが、こんなループホールを税務署が野放しにするはずがないと思う。

いずれ実体を伴わない似非自営業者は税務否認されることになるだろう。

年収30万円のイラストレーター業で、90万円の経費があり、60万円の赤字というのは、どう見ても税金を減らすための方便にしか見えないので、いずれ税務署が網を掛けてくるのではないかと思う。

実体がないのに無理に個人事業にこじつけると税務署に目を付けられ、それが勤務先にも知れるリスクを考えると、59歳の定年間近なサラリーマンはともかく、普通のサラリーマンにはとても負えないリスクだと思う。

本の主張が、煎じ詰めればサラリーマンは自営業兼任となれというだけのことなので、税制の基礎を簡単におさらいする部分を付け足したり、橘玲、野口悠紀雄、森永卓郎の節税術をけなす部分もあったりで紙幅を使っているが、あまり内容はない。

本の帯には”税金払うの、もう、やめませんか?”とか、”全国5000万サラリーマンに贈る「無税のススメ!」”とか、”税金ゼロこそ、手間をコストのかからない、強力な生活防衛術の1つだ”とかいった挑発的なセールスキャッチが書いてあるが、決して真に受けないほうが良いと思う。

この本の挑発的なタイトルに惑わされず、あくまで実体として自営業と言えるほど副業での収入があれば税務署に開業届けを出して正々堂々と申告したら良いというのが筆者の結論だ。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。






  
Posted by yaori at 23:19Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月09日

楽天の研究 これぞホントの楽天研究(山田善久さんの消息)

2009年1月9日追記:

12月に山田さんの経営するネインを訪問したときに名刺にメッセージを書いて残していったら、山田さんより次のメールを頂いた。


元楽天の山田善久と申します。

ブログで私のことを取り上げて頂いたり、また先日はお店にもお越し頂いたそうで、ありがとうございます。

ブログにも書いておられる通り、昨年の12月14日にフジテレビの「新報道2001」という番組で私がドーナツショップを始めたことが13〜14分ほど取り上げられ、それ以降、お店のお客様もかなり増えています。また、AERAにも同様の記事が掲載されました。

このように周囲からは不思議なことを始めたと見られていますが、自分としてはさほど違和感もなく、結構楽しく仕事をしています。

またお近くにお越しの際にはお店にお立ち寄り頂ければ幸いです。

今後ともよろしくお願い致します。簡単ながら、お礼まで。

山田



ネインは年中無休なので大変だと思うが、大人気のドーナッツショップになっているので、山田さんには体に気をつけて是非頑張って欲しい。

ケーキ一個が400円前後もする時代なので、スペシャルティドーナッツの200−300円のほうがいろいろなバラエティもあって楽しめると思う。筆者も今度は事前に電話で予約して、持ち帰りで家族用にネインのドーナッツを買おうと思う。

首都圏に住んでおられる方は、地下鉄の赤坂駅の4番出口からすぐのネインのドーナッツをためされることを是非おすすめする。



2008年12月25日追記:

12月14日(日)にこのブログへのアクセスが急増した。朝8時に一挙に1時間400人以上がアクセスし、「山田善久」で検索して訪問する人がその日は1、000人以上にも達した。

実はGoogleで「山田善久」で検索すると、このブログがトップに表示されるのだ。

たぶん日曜日朝8時のテレビで紹介されたのだろうと思っていたが、このブログでも紹介している山田さんのドーナッツショップ ネインに一度行って見なければならないと感じていた。

本日赤坂の取引先に行く機会があったので、朝ネインに行って、ドーナッツを食べてみた。山田さんはおられなかったが、毎日朝一と昼には店にいるとのこと。

12月14日(日)08:00のフジテレビの新報道2001で元楽天の山田さんがドーナッツショップを開いたことが報道されたため、お客さんも問い合わせも急増しているとのことだった。

これがお店の外見だ。中にイートインのテーブルといすもある。

neynmaccha and montblanc

左が抹茶あん、右がモンブラン。抹茶あんはドーナッツの中にあずきあんが入っている。

mont blancberry

左がモンブラン。筆者はこれが一番気に入った。上には栗ペーストとくるみなどが載っており、大変おいしい。右がベリーノエルだ。各種ベリーとカシスも加えているという。

ネインのホームページに載っていたマンゴーのドーナッツを食べたかったが、これは期間限定で現在はフィッグに変わっているとのこと。

ドーナッツもおいしいが、コーヒーが大変気に入った。朝食を抜いていったので、ドーナッツを3個食べてコーヒーも2杯飲んでしまった。ドーナッツ3個とコーヒーで1,000円ちょっとだった。毎日食べるわけにはいかないが、たまには良いと思う。

朝から注文が殺到しており、販売量は一人12個までと制限しているそうだ。

地下鉄赤坂駅の4番出口からすぐ。是非ネインのドーナッツをためすことをおすすめする。


2008年9月16日追記:

たにたけしさんから次のコメントを頂いた。

2008/09/15 22:36 投稿者:たにたけし
こんにちは、初めて拝見させていただきました。
山田さんの新しい事業はこちらです。
9月からスタートされたので検索件数が増えたのではないかと思います。

http://www.neyn.com/

美味しいですよ。


前楽天の山田善久さんが赤坂でスペシャルティドーナッツショップNeyn(ネイン)を経営されていたとは知らなかった。

楽天の中村晃一さんのブログにも紹介されている。

ドーナッツショップとは三木谷さんの楽天創業時のエピソードを思い出させる。

三木谷さんと創業メンバーの本城さんはECモールの他、スペシャルティベーカリー(アメリカで有名なAu Bon Pain?)、地ビールチェーンなどのビジネスを検討したという。

東京ではKrispy Kremeドーナッツが買うのに約1時間待ちと異常な人気だが、英国ではスーパーのTESCOでも売っている普通のドーナッツだ。アメリカがオリジンだが、アメリカでも特に人気だったわけではない。

その意味では山田さん達の目の付け所は良いと思う。

ドーナッツはダンキンとミスタードーナッツの2つのチェーンがダントツで、その他は追従できていないので、Krispy Kremeなどが人気が出ているが、ネインの様なさらに高級なスペシェルティドーナッツの可能性もあるかもしれない。

ネインのサイトはユニークな作りのサイトだ。ドーナッツショップとしては、一個250−300円と高いが、ドーナッツも大変凝っている。

Neyn





たしかにおいしそうだ。

山田さんの消息がわかってよかった。ドーナッツもおいしそうなので、是非近々ネインも行ってみようと思う。

たにたけしさん有り難うございました。


2008年9月15日追記:

「山田善久」で検索して当ブログを訪問する人が急増して、毎日百人以上にのぼっている。Googleで「山田善久」で検索すると、当ブログがトップ表示されるからだ。

楽天の三木谷さんのいわば右腕であった山田善久前楽天トラベル社長が、今どこにおられるのか知らないが、急に1日百人以上の訪問者があるということは、何か次の活動を始めているのかもしれない。

筆者も一度まだ楽天が中目黒にいたころに山田さんにお会いしたことがある。たしか三木谷さんの興銀の1年先輩で、ハーバードのMBA仲間だったはずだ。当時は楽天のNo.2というポジションだった。

紳士的で物静かな人という印象を受けたが、あるいは第一印象が間違っているのかもしれない。

現在どこにおられるのかわからないが、まだ若いので、新しい事業を仕込んでいるところなのだろう。

その山田さんも含めて、六本木ヒルズにいた頃の楽天の様子がよくわかるので、「楽天の研究」を再掲する。


2005年8月20日初掲:

楽天の研究―なぜ彼らは勝ち続けるのか楽天の研究―なぜ彼らは勝ち続けるのか
著者:山口 敦雄
販売元:毎日新聞社
発売日:2004-12
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


今回のあらすじは長いです。要点は次の通りです:

1.楽天は三木谷さんのワンマン会社ではなく、それぞれ専門を持つメンバーの集合として見るべきである
2.楽天は単なるIT企業ではなく、日本でトップクラスのM&Aのプロ集団
3.楽天の営業はドブ板から始まった。今は問い合わせ中心だが、2分以内に電話が来るのが特徴
4.楽天のシステムは自前主義で、案件毎にプロデューサーが企画、システム開発から運営まで担当する
5.M&Aを成功確率を上げる手段として使い、利益1,000億円、会員6,000万人を目指す

“教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実“教祖”降臨―楽天・三木谷浩史の真実
著者:児玉 博
販売元:日経BP社
発売日:2005-07
おすすめ度:3.5
クチコミを見る


この前の教祖降臨が三木谷さんの経歴中心だったので、もっと楽天のビジネスの研究をするために2004年12月発刊のこの本を読んだ。

この本は毎日新聞の『週刊エコノミスト』の記者が書いているが、次の楽天観に基づき主要メンバーへきっちり取材し、それぞれのメンバーのストーリーを通じて楽天の強さがよくわかる構成となっている。

1.楽天を、三木谷氏のワンマン企業とみるのではなく、それぞれ専門分野を持つ複数の人たちの集団として見ること。

2.現在の楽天を、単なるIT企業というよりM&A(企業買収)のプロ集団と見ること。

いくら三木谷さんが傑出した経営者とはいえ、あれだけの会社を一人で経営できるはずはない。経営システムの強さが楽天の強みである。

この本で取り上げられている主要メンバーは次の通り。

楽天の創業メンバー6名。三木谷さんの他、三木谷夫人(下山晴子氏、創業時は経理・広報担当)、本城慎之介氏(システム開発担当)、増田和悦氏(システム開発担当)、杉原章郎氏(営業担当)、小林正忠氏(営業担当)。

三木谷夫人は興銀時代に三木谷氏と社内結婚、楽天創業前はリーマンブラザース証券に転職していた。

本城氏、杉原氏、小林氏は慶応湘南出身で、楽天には20代で参加。増田氏は技術畑で三木谷氏と同年齢。

M&Aプロ集団として後からのメンバー3名。興銀時代の1年先輩山田善久氏、興銀での同期高山健氏、社外取締役としてM&A弁護士の草野耕一氏。

さらにDLJディレクト証券から國重惇史氏。東大法学部卒ながらリクルートでISIZEを立ち上げ、システム開発プログラマーとして楽天に入社し頭角を現した吉田敬氏。

この本では取り上げられていないが、ポータル・メディアカンパニー担当取締役の森学氏。社外取締役はUSENの宇野社長、CCCの増田社長、エイベックスの依田氏という豪華な顔ぶれである。

楽天の朝会

この本のストーリーは楽天グループの月曜8時の朝会から始まる。2004年11月8日の朝会で三木谷社長は全部署で対前年比100%の成長目標と、各事業部の格付けを行うこと、野球参入を発表。

その後各事業部の責任者が入れ替わり立ち替わり事業報告を行う。これは最大90秒と決められており、時間が過ぎると「チン」とベルが鳴り、時間の無駄が全くない。
楽天らしい朝会だ。

成功のコンセプト

それにもまして楽天らしいのが、オフィスの至る所に貼られている成功のコンセプト5箇条だ。

世界1のインターネット・サービス企業

1.常に改善、常に前進
人間には2つのタイプしかいない。
「GET THINGS DONE」様々な手段をこらして何が何でも物事を達成する人間
「BEST EFFORT BASIS」現状に満足し、ここまでやったからと自分自身に言い訳する人間。
一人一人が物事を達成する強い意志を持つことが重要。

2.Professionalismの徹底
楽天はプロ意識を持ったビジネス集団である。勝つために人の100倍考え、自己管理の元に成長していこうとする姿勢が必要。

3.仮説→実行→検証→仕組化
仕事を進める上では具体的なアクション・プランを立てることが大切。

4.顧客満足の最大化
楽天はあくまで「サービス会社」である。傲慢にならず、常に誇りをもって「顧客満足度を高める」ことを念頭に置く。

5.スピード!!スピード!!スピード!!
重要なのは他社が1年かかることを1ヶ月でやり遂げるスピード。勝負はこの2〜3年で分かれる。

三木谷さんは2000年の毎日新聞のインタビューに答えて、「ビジネスで失敗したことがない」と答えたそうだが、よくわかる。変な話で、結果論のようだが、実は強運はビジネスマンの成功の最大の要因だと思う。

楽天のジャスダック上場はITバブル崩壊直前の2000年4月。サイバーエージェントは3月、ライブドアは同じ4月の上場だ。株価は急上昇して時価総額6000億円となったあと急落し年末までに10分の1となる。

上場して得た500億円という資金を使ってM&Aを展開し、Infoseek、ライコス、旅の窓口やDLJディレクト証券を買収してワンオブゼムから抜き出し、時価総額も1兆円を越えた。

楽天のシステム:本城慎之介氏の証言

創業メンバーの本城慎之介氏は、慶応湘南の大学院の時に三木谷氏と出会い、行動を一緒にする。

小説 日本興業銀行〈第1部〉 (講談社文庫)小説 日本興業銀行〈第1部〉 (講談社文庫)
著者:高杉 良
販売元:講談社
発売日:1990-10
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


高杉良の『小説 日本興業銀行』を読んで「興銀に入って、日本の産業を元気にしたい」と思っていたところ、三木谷氏に会って「もう興銀とか、銀行、商社が日本をつくる時代は終わった。むしろ個人や中小企業が既成事実をつくることで日本を変えていくのだ」と説得され、コンサルをしていた三木谷氏のクリムゾングループに入社する。

クリムゾンは深紅であり、ハーバードのスクールカラーである。

逆転の発想

しかし4名いた従業員は独立し、三木谷氏と本城氏の2名となってしまう。コンサル業は2名では続けられないので、事業を起こすことを決め、次の3つの事業プランを検討する:

1.地ビールレストランのフランチャイズ展開
2.天然酵母のパン屋の全国展開
3.インターネットモール

当時はIBMがモール事業から撤退したところで、日本では大日本印刷とか、凸版印刷とかがやっていたが、インターネットモールは儲からないと思われていた。

しかし、みんな失敗しているからこそ、参入する余地があり、失敗の原因を分析しさえすれば、勝てると逆転の発想で進出を決意した。

1997年2月にMDM(Magical Digital Market)設立、1997年5月より開業。

失敗の原因は、みんな片手間でやっていることと、簡単にネット上でショップを開設できるシステムがないことだった。楽天はモール事業専業で、システムは自分たちでつくった。

楽天マーチャントサーバー

そのシステムをつくったのが、本城氏だ。

システムを開発しなければならないとなったときに、慶応の大学院生にシステム開発をやらせたが、ダメだった。そこで三木谷氏から「この本を読んでお前がつくれ」と言われ、『初めてのSQL』という本を読んで、1週間だけシステムの家庭教師をつけてもらい、あとは自分だけでシステム開発を始めた。

むちゃくちゃな話だが、結局完成し、ものを売る人が、ホームページ作りから受注発注まで、一人ですべてできるシステムがはじめてできた。専門家でない本城氏がつくったから、普通のユーザーが使いやすいシステムができたのだ。

ここにエキスパートとして加わったのが、理系参考書出版社にいた増田和悦氏だ。

本城氏と増田氏がシステム担当だったが、三木谷氏もふくめ創業メンバーのほとんどはUNIXサーバーが使えて、HTMLを書けた。だからシステムに関して全員で知恵を出し合えた。これが強みだったと。

本城氏は楽天の副社長になったあと、三木谷氏にならって30歳になった時に楽天をやめ、いまは教育関係の事業を始めるかたわら(公募で横浜の港北ニュータウンにある山田中学校の校長になった)、楽天の社外取締役となっている。

なぜ教育かというと、日本をもっと元気にしたいからだと。

本城氏の目から見て楽天の今後の課題は、マネジメント層をもっと育てていくことだ。

万が一なんらかの事故で三木谷氏が執務できなくなったときも、楽天として変わりなく、経営をしていけるようにしなければならない。カリスマ的で、非常に優秀な社長なので、どうしても頼ってしまう面があるが、これからはそれをしてはならないと。

楽天の営業:小林正忠氏、杉原章郎氏

システムと並んで創業時のもう一つの関門の営業はドブ板営業でこなした。そのときに活躍したのが、三木谷氏と、本城氏の慶応の1年先輩の杉原氏と小林氏だ。破格の出店料の月5万円だが、6ヶ月前払いという条件で、キャッシュフローも確保するという優れた作戦だった。

小林正忠氏は慶応大学卒業後、大日本印刷に就職したが、同期の杉原章郎氏が起業したホームページ制作のアールシーエー(有)で三木谷氏を手伝っているうちに、杉原氏とともに営業として引っ張られる。

三木谷氏より「絶対に出資しろ」と言われて、資本金の2,000万円の一部を貯金をはたいて出資した6人のうちの2人だ。

最初は日経流通新聞の新製品の売れ筋欄を見てアポイント取りの電話をしていたが、その後、メインバンクの住友銀行の協力を得て、取引先を紹介してもらうようになって成果が上がるようになった。銀行の協力は絶大であったと。

そのうち問い合わせが増えたので、飛び込み営業はやめ、興味のある人に対応する営業に変え、資料請求のフォローアップをしている。

楽天では今でもツー・ミニッツ・コールをやっている。ウェブ経由で資料請求がくると、2分以内に電話をかけて営業するのだ。現在ではよく請求がくるから10秒以内では電話していると。

すぐに電話が掛かってくるから、お客は驚き、テンションが上がった状態で営業ができるのだと。ドブ板のマインドが生きている。

スピード!!スピード!!スピード!!

小林氏は三木谷氏を『ビッグトーカー』だという。夢や希望を絶妙な大きさで表現できる才能を持った人であると。三木谷氏の目標設定能力こそ、楽天の成功の秘訣であると。

たとえば楽天カードを始めたとき、カード会社の常識では万人単位の会員を集めるには何ヶ月もかかると言われたが、他社が1年でやることを楽天では数ヶ月でやる手法を考えろと社内キャンペーンをはり、わずか1〜2ヶ月で1万人以上を獲得した。

社内でよく使われている言葉に「いすの足をふく」、つまり徹底的にやるということと、「Make mistake early(早めに失敗せよ)」というのがある。机上で議論するくらいなら、まず行動して誰よりも早く失敗し、その結果から解決策を考えろという意味だそうだ。

杉原章郎氏は政治家志望だったが、ホームページ制作会社アールシーエーを起業、三木谷氏と知りあう。本城氏と増田氏がつくったRMS(楽天マーチャントサーバー)を見て驚き、楽天に入社を決意する。

もともと政治家志望だったので、ドブ板は性に合っていると。

現在杉原氏は楽天ブックス担当。楽天ブックスは日販と組んだ本の直販。自前で在庫を持たず、日販の在庫をフルに利用できるので、高価な専門書でもすぐ手にはいるのが特徴である。

日本の書籍販売サイトではAmazonがダントツの月間利用者数11百万人以上。二位グループのESブックスYahoo!Shopping、紀伊国屋、楽天ブックスいずれも2百万人前後で圧倒的な差がついていて、いまのところ差が縮まる見込みはない。

楽天のM&Aプロ集団:山田善久氏、草野耕一氏、高山健氏

次にM&Aプロ集団を見てみよう。楽天は2000年4月のジャスダック上場以来、M&Aを繰り返している。Infoseek, Lycos, 旅の窓口、DLJディレクト証券、あおぞらカード、国内信販、中国の旅行予約サイト シートリップなど、まさに怒濤のM&Aラッシュである。

これを可能にしているのが元々興銀のM&Aバンカーだった三木谷社長と、上場直前に楽天に参加した山田善久氏、高山健氏、社外取締役で弁護士の草野耕一氏である。

楽天のM&Aの考え方は「企業拡大の道具で、成功確率を上げるための手段」で、次の2つの基準で判断していると:
1.買うことにより楽天グループのサービスの質的向上につながるかどうか。
2.楽天市場の顧客データベースと統合して、相乗効果が見込めるかどうか。

買収した先は基本的に在庫を持たないマーケットプレース型が多い。トラベルや金融は情報のやりとりなので、ネットとの親和性はよく、米国のネット企業の成功例でも金融・トラベルは多い。

株式交換でもキャッシュでも経済原則から言えば同じだが、楽天の株は将来的に上がっていくので、株ではなくキャッシュの方が安いという考えであると。

M&A戦略の右腕山田善久常務は興銀/ハーバードの1年先輩で、興銀をやめゴールドマンサックスに転職、IPOやM&Aを担当した時に、楽天のビジネスの将来性をいかに投資家に伝えるかというプレゼンを三木谷社長に行い、楽天入りを勧められる。

投資銀行の立場からも楽天は将来必ず成功すると思い転職を決め、ディズニーからのInfoseek買収を手始めにライコス買収などを手がける。

上場準備していた旅の窓口を323億円で買収、さらに中国のシートリップネット、格安航空券のワールドトラベルにそれぞれ21%出資して着々と体制を整えている。現在山田氏は楽天トラベルの社長で、3〜4年後は楽天トラベルをJTBにとならぶ総合旅行会社にしたいと語る。

今三木谷氏がもっとも注目しているのは中国市場だそうで、山田善久氏によると「米国のナンバーワンを買うことは難しいが、中国のナンバーワンを120億円で買えるのは決して高い買い物ではない。」

もう一人の興銀出身者の高山健氏は、一橋大学、興銀の同期。テキサス大学でMBAを取得、三木谷氏と同じ企業投資情報部に配属される。三木谷氏より「株式公開を考えているが、財務を見てくれないか」と誘われ、一時期銀行と楽天の2足のわらじをはき、楽天を手伝う。

社外取締役の草野耕一氏は西村ときわ法律事務所パートナーである。M&A専門の弁護士であり、三菱自動車=クライスラー、ロシュ=中外製薬などの大型案件を手がける。

ハーバード・ロースクール留学から戻って、T・ブーン・ピケンズの小糸製作所買収をうち負かしたという輝かしい経歴の持ち主である。

楽天証券:國重惇史氏

國重惇史氏は楽天が買収したDLJディレクト証券の社長で、入札を経て楽天が買収後も楽天証券社長として残る。

株に興味のない人にいくら株を勧めてもダメという調査結果をもとに、株の好きな人に徹底的にアプローチした方が良いとして、個人投資家向けのリアルタイム株価自動更新機能のあるマーケットスピードのサービスを開始、信用取引も始めてアクティブトレーダーを取り込むことに成功した。

楽天証券の取締役会には三井住友銀行の西川頭取も社外取締役として参加している。

楽天証券はアニメファンド、REITなどのファンドマネージャー、IPOの主幹業務、M&A案件の紹介などリテールとホールセール両方ができるネット証券を目指し、将来楽天が経常利益1,000億円を達成する際には、金融事業だけで300億円を達成することを目標としている。

楽天プロデューサー集団のトップ:吉田敬氏

新設の楽天球団の初代社長を務めたのが、吉田敬常務だ。吉田氏はリクルートでイサイズの立ち上げに加わるが、リクルートのスピード感のなさに落ち込んでいた時期に、三木谷氏より2度目の誘いが来て、プログラマーとして楽天入社。

開発のエンジニアでありながら広告などのシステムをつくって、営業の仕方とか営業企画の建て方までシステム化して頭角を現し、営業本部長になった。

たとえばバナー広告の営業で大変なのは、売る段階よりも、売った後の入稿とか、請求とかである。当初は営業マンの負担であったものを、顧客にIDとパスワードを与え、セルフサービスで入稿、広告枠を買ったり、レポートを見たりできるようにした。

それまで500万円くらいの売上だったものが一挙に3,000万円となった。その結果セールスに関係ない人件費を削減し、コスト削減を行い、さらにアグレッシブな広告単価設定をしてそれまで10万円の広告枠を2万円にして裾野を広げた。

楽天にはシステム開発から、サービスの企画、運営までを担うプロデューサーという役職があり、吉田氏はプロデューサー集団のトップである。

楽天のウェブ作成、メルマガ配信システム、広告配信システム、楽天フリマ、楽天ブックス、楽天会員システム、楽天ゴーラ、楽天スーパーポイント、楽天アフィリエイトなど楽天トラベル、楽天証券以外のサービスはすべてプロデューサーにより作成・管理されている。

システムは基本的には全部自社開発。顧客に一番近いところに最終の開発者が居る方がコミュニケーションロスがなくなり素早く開発できる。作り出すより、作ったものをどう改善していくかに重点を置く。それが楽天のこだわりである。

吉田氏はヒューマンリソースを動かすのが得意である。

楽天では三木谷氏の発案で、毎月一回誕生会をやっている。コミュニケーションをどう取るかは非常に重要で、これが吉田氏の仕事である。単にお金だけ与えれば済むという問題では絶対にない。

目標はYahoo!を越えることである。

三木谷社長

最後に三木谷社長のインタービューである。時節柄野球の話題が多いが、「インターネットはすべてのビジネスにつながるので、展開しようと思えばいくらでもできる。」と語る。

「ポイントはむしろなにをやらないかを決めることだ。」アマゾンのような在庫リスクを抱えるビジネスはやらず、マーケットプレイスモデルだと。

世界でネットモールで成功しているのは楽天だけであり、ネットショッピング市場は4〜5年で今の10倍になるだろう。1回ものを買った人は習慣化し、年に5〜10回は買い物をする。

筆者の場合でも楽天市場では購入したことがなかったが、一旦買ってみるとたしかに習慣化した。

現在2,800万人いる楽天グループ会員を同じIDですべてのサービスを受けられる様にすることが目標で、サービス利用者にポイントを付与するしくみを拡大し、最終的には楽天グループ会員を日本の人口の半分の6,000万人まで伸ばしたいと語っている。

三木谷社長のリーダーシップもすごいが、勝つしくみつくりが絶妙。是非close watchして見習いたい強い会社である。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 23:53Comments(2)TrackBack(1)

2009年01月08日

信用力格差社会 「信用力」という新分野を切り開く岩田昭男氏の力作

2009年1月8日追記:

著者の岩田氏はオールアバウトのクレジットカード担当のほかに、カード道場というサイトと岩田昭男公式ブログというサイトでも情報発信されている。

allaboutcreditcardcard dojo






このあらすじを岩田氏の公式ブログに紹介頂いたので追記する。

Iwata blog






岩田氏のサイトはどれも参考になる情報が満載なので、是非チェックしてみていただきたい。


2009年1月7日初掲:

「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-11
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


筆者が尊敬する消費生活評論家岩田昭男氏の力作。「信用力」という新しい分野を切り開く好著である。

岩田氏はもう一冊「信用偏差値」という本も最近出されているので、こちらも近々あらすじを紹介する。

「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)
著者:岩田 昭男
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
クチコミを見る


日本ではあまりなじみのないクレジットスコア(経済偏差値)が、今後はクレジットカードを作ったり、ローンを借りたりするときに大きく影響するようになることを予測している。

米国では過去のクレジットカードなどの支払い履歴をまとめた「クレジットヒストリー」が、就職のときの重要な評価ツールとなっているという。日本でも外資系企業はクレジットヒストリーを要求するところがあるそうだが、これからは日本でも良いクレジットスコアやクレジットヒストリーを維持することが重要になってくる。

岩田氏は1990年代のはじめに米国に行った時に、書店に入ってクレジットカードのお得な活用法の本を買おうとしたら、「クレジットスコアをリペアする方法」などの本ばかりで驚いたと語る。

それから20年近くたって日本も当時の米国と同じような状況となり、信用力格差社会となりつつある。年収の多さだけで信用がつく時代は終わり、クレジットカードを基にした新しい信用時代が始まっているのだ。

改正貸金業法の第3次施行(2009年6月実施)により指定信用情報機関制度の創設が決まっており、日本でも米国並みの信用力管理「クレジットスコア」が導入されようとしている。日本社会では様々な格差が広がっているが、信用力も社会生活を営む上で不可欠になり、信用を持てない人が大きなハンディを背負うことになってくるのだ。


中流・下流の信用力危機

秋葉原で起こった17人連続殺傷事件の犯人は、犯行前にネットの掲示板にいろいろな書き込みをしていた。その中でクレジットカードがないのでレンタカーが借りられなかったという書き込みがあったことに岩田氏は注目する。

この犯人は派遣労働者だったが、派遣を打ち切られたので、当初4トントラックを借りて元勤務先の工場の入り口をブロックするつもりだった。ところがクレジットカードがないので4トン車は断られたため、現金で借りられた2トントラックで秋葉原の凶行に及んだのだという。

クレジットカードを持っていれば、あるいは秋葉原の事件も起きなかったかもしれない。

岩田氏は、今後中流・下流にはセゾンなどの年会費無料カード(年収300万円以上)、消費者金融のローンカード(年収200万円以上)、そしてそれ以下の最下層には電子マネーというすみわけができるだろうと予測する。

ちなみに岩田氏は電子マネー業界の定本である「電子マネー業界ハンドブック」も出版している電子マネー業界の第一人者でもある。

図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 電子マネー業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


電子マネーでも限度額が2万円あるいは5万円なので、一応クレジットカード並みに使えるし、米国の様にデビットカードが普及していない日本ではクレジットカードを持てない層には電子マネーが普及するだろう。

また一部では依然として違法金利を徴収するヤミ金融に走らざるを得ない最下流層も残るだろう。


信用力のある選ばれた人向けのアメックスブラックカード

クレジットカードがつくれなかったり、ローンが受けられなくなる中流・下流とは違って、信用力のある上級の人は楽勝となる。

信用力が最高ランクの選ばれた人には、最上級としてアメックスのセンチュリオンブラックカードがある。年会費は36万7千5百円(2009年4月に従来の16万8千円から2倍以上に引き上げられた)という高額だが、そのサービスは半端ではない。

アメックスのコンシェルジュサービスは「ノーといわないサービス」を標榜するほど充実しているといわれている。24時間365日のコンシェルジュサービスに加えてホテルはスイートルームにアップグレード、飛行機もワンランク上のファーストクラスあるいはビジネスクラスに無料アップグレードされるという。

限度額もないといわれており、ヨットや自家用機の購入にも使えるという噂である。

芸能人では細木数子、みのもんたなどが持っているという。年収3,000万円以上で、プラチナカードを数年使っているなどのクレジットヒストリーがしっかりした人にアメックスの方から持ちかけてくるのだという。

日本では2,000人程度しか持っていないといわれるが、最近コンシェルジュサービスへの電話がつながりにくくなったという話もあり、この数が増えている可能性もある。

岩田氏はオールアバウトでクレジットカードを担当されているが、2004年のアメックスセンチュリオンカードの記事は、いまだに検索上位に上っているという。筆者も何度も読んで参考にさせていただいた。

余談になるが、岩田氏には筆者の別ブログポイントマニアブログもオールアバウトで紹介頂いたことがある。

元ヤンキーズの伊良部が大阪のバーで暴れた事件があったが、あれも伊良部がアメックスのブラックーカードを出したら使えないといわれて逆上したというのが真相だという。

アメックスは加盟店手数料が高いのでアメリカでも飲食店はアメックスが使えない店が結構あるが、日本ではアメックスが使えない飲食店のほうが多い。伊良部はそれも知らなかったようだ。

信用力のある人はブラックカードやプラチナカードが用意されている。ゴールドカードは今やステイタスシンボルではなくなっており、年収500万以上が大体の基準だという。

ゴールドカードは普通年会費1万円だが、三菱UFJ銀行は年会費2,000円のゴールカードを出しているので、ゴールドカードの大衆化に拍車が掛かるだろう。

この本で岩田氏はブラックカードホルダーに直接インタビューしており、大変参考になる。

その人は外資系IT企業のシステムエンジニアで年収2,000万円以下だが、アメックスゴールドカード、プラチナカードとステップアップし、3年ほどプラチナカードを使っていたらアメックスよりインビテーションが来たのだという。

限度額はあるそうだが、飛行機やホテルの無料アップグレードに加え、各エアラインラウンジが使え、送迎はリムジンがつくという。実際に家族で舞浜のシェラトンに泊まったら、1泊3万円の部屋から一泊20万円のプレジデンシャルスイートにアップグレードしてもらったという。

また海外のコンシェルジェサービスは、有名なホテルやレストランの予約がすぐに取れて驚かされたという。


岩田氏は銀行(住宅)ローンの審査、クレジットカードの審査、消費者金融の審査の3つにわけて審査のポイントを詳しく説明していて大変参考になるので紹介しておく。

ちなみに岩田氏が出されている東洋経済の「クレジット&ローン業界ハンドブック」は、すでに3回改訂されており、この業界の教科書といえる本である。

図解 クレジット&ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)図解 クレジット&ローン業界ハンドブック (「図解業界ハンドブック」シリーズ)
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-03
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


銀行のローン審査

住宅ローンを借りる場合には、次のクレジットカード会社の審査と同様に10項目程度の属性が審査されるほか、借り入れ額が年収に比べて大きすぎないか、消費者金融に借金がないか、延滞はしていないか、クレジットカード保有数が多すぎないかなどがチェックされる。

住宅ローンが借りられる人は日本を代表するプライム層で、次のようなカテゴリーにあてはまる極めて信用力が高いひとたちであると岩田氏は語る。

1.限度額の25〜50%を毎月継続して利用している。
2.返済遅延が絶対にない。
3.常に上位カード取得の意欲を見せている。
4.キャッシング、ローンは絶対に利用しない。
5.住宅ローンを組んだ経験がある。
6.クレジットカードは持ちすぎない。
7.新しいカードを作ってから6ヶ月以上経過している。

年収が高かったり、勤務先が有名企業だから信用力があるというわけではないという。


クレジットカード会社の審査

OKWaveなどのQ&Aサイトでは毎日のようにクレジットカード審査についてのQ&Aが寄せられている。

この本ではクレジットカード会社の審査実体を熟知する岩田氏が詳しく解説しているので、大変参考になる。

クレジットカード会社の審査は、各社のノウハウのかたまりで、秘中の秘であるが、大体はこの業界のデファクトスタンダードのフェア・アイザック社のシステムを採用しながら、年齢、職種、勤務先規模、勤務年数、年収、住所形態、居住年数、電話、家族構成といった10項目程度の属性の評価ポイントと、次のような評点の合計で審査される。

1.過去の支払い履歴(35%)
2.現在の借り入れ残高(30%)
3.与信取引の長さ(15%)
4.新規枠・増枠の打診履歴(10%)
5.現在利用している与信取引形態(10%)

たとえば何社にもクレジットカードを集中して申し込むと審査に通らない可能性がある。本当に審査されるのは年齢でなく可処分所得であり、転職後1年間、転居後1年間などの人生の転機にはクレジットカードを作るのは我慢しろと岩田氏はアドバイスする。


消費者金融会社の審査

消費者金融会社の審査は申込者の顔色を見ながら審査する対面審査だと岩田氏は説明する。

岩田氏は前述のハンドブックの他にも消費者金融業界についていくつもの本を出されており、大変参考になる。

お金を貸す人 借りる人―カード&ローン儲けのカラクリお金を貸す人 借りる人―カード&ローン儲けのカラクリ
著者:岩田 昭男
販売元:実業之日本社
発売日:2004-02
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

消費者金融の顧客は1,400万人といわれるが、新規契約者では年収400万円以下が62%を占めている。貸し倒れ、延滞は日常茶飯事であるにもかかわらず、無担保で貸すのでリスクが高いという業界の特性から編み出されたのが対面審査である。

お客の顔や服装、言葉遣い、態度等から貸せるかどうか判断するのだ。

ちなみに年収500万円以上の人はむしろ敬遠されるという。銀行で借りられずに消費者金融に借りに来ていると思われるので、資金繰りになんらかの問題があるケースが多い。またたとえ融資しても一度で終わってしまいリピーターにはならないからだという。

岩田氏は、実際に無人自動契約機での審査に立ち会った貴重な経験談を披露しているので、大変興味深い。

無人契約機ブースに入るとロックするように言われ、まずは身分を証明する免許証などの提示を求められる。

無人機のカメラ映像は事務所のモニターに写される。事務所には個人信用機関とつながっているテレホンデータ端末やNTTのデータペース、住宅地図などが置かれている。

申込用紙に属性や他社からの借入額など20項目を記入すると事務員がいくつか質問をして、その場で受け答えがある。それから10分ほどかけて数人の事務員が信用情報機関へ問い合わせたり、免許証が偽造ではないか確認したり、データベースと照合したりして貸し出しの可否を判断する。

岩田氏の立ち会ったケースでは、4社から借り入れしているにもかかわらず、他社からの借り入れゼロと申告していた。当然これは信用情報機関に問い合わせればわかることで、50万円の希望額に対して10万円が貸し出された。

現在は消費者金融会社の申し合わせで、4社以上から借り入れしていると、新規の融資は断られる。また過払い金返還請求をしているとその消費者金融会社では借りられないという。


日本の5つの個人信用情報機関

日本には次の5つの個人信用情報機関がある。

1.全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行系
2.CIC クレジットカード、信販系
3.CCB クレジットカード、信販系
4.全国信用情報センター連合会(全情連、JIC) 消費者金融系
5.テラネット 消費者金融系

このうち最も古く40年の歴史のある全情連のデータベースは加盟各社のデータがリアルタイムで統合されており、入金があるたびに更新されるという点で最も優れている。消費者金融業界の貸し倒れが少ないのも、このデータベースが充実しているからだといわれている。

ちなみに全情連のデータベースが出来る前は、消費者金融各社が申し合わせて、保険証の角に針で穴を開け、その針穴の位置で会社を特定していたという。

業態ごとに信用情報の交流がないので、クレジットカードで多重債務に陥っても、消費者金融に行けば何度でも借り入れができるということができていた。そのため他業態と連携して信用情報の一部共有化を行うことが決定されている。

信用情報をより広く共有化することにより、多重債務を抑止しようとするものだ。

信用情報機関では、1.個人特定情報、2.契約内容に関する情報、3.支払いに関する情報が登録されている。いわゆるブラックリストというものはなく、3ヶ月支払いが滞った場合は「事故」として登録され、これがブラック情報になる。

信用情報には加盟企業からの問い合わせ・アクセス履歴や、過去5年間の取引履歴、過去6ヶ月間の申込履歴も登録される。

信用情報機関に申し込むと自分のクレジットレポートが入手できる。

4年ほど前にある雑誌の編集者がクレジットレポートを取り寄せたら、CICでは問題なかったが、全情連のレポートでは身に覚えのない借り入れ履歴があったという。

真相は、消費者金融会社の店長が、期末に休眠口座を使って借り出し実績があったように見せかけ、自分の店のノルマを達成していたという驚くべき事態だった。


改正貸金業法の骨子

一般にはあまりなじみのない改正貸金業法の説明も興味深い。

貸金業法の改正骨子は次の5点である。

1.金利規制(グレーゾーン金利撤廃)
2.過剰貸付の抑制(年収の1/3までの総量規制と、すべての業態をまとめる指定金融情報機関設立)
3.業務規制(貸金業登録の最低総資産額を500万円から5,000万円に引き上げ)
4.ヤミ金融対策(罰則強化)
5.多重債務者対策(借りられなくなる人のセーフティネット強化)

法律は2006年12月に成立し、2010年6月に完全施行される。すでに段階的に施行されており、グレーゾーン金利撤廃の影響で消費者金融会社とクレジットカード会社が3大金融グループの草刈り場となりつつある。

たとえば三井住友ファイナンシャルグループは、従来の三井住友カードとプロミスに加え、クレジットカードではOMC,セントラルファイナンス、ポケットカードを、消費者金融では三洋信販(ポケットカードの親会社)を新たにグループに加えている。MUFGはJALカードを買収するといった動きがある。


日本版グラミンバンク構想

従来消費者金融からお金を借りていた個人は、改正貸金業法により新たに借り入れられないという事態が生じている。

現在消費者金融の利用者は1,400万人だが、そのうち1,000万人が消費者金融を利用できなくなるという「ローン難民」が出現するという。ちなみに200万人が多重債務者といわれており、完済はほぼ無理な人たちだ。

こうした人たちに国や自治体は「多重債務問題改善プログラム」をつくって活動をはじめている。日本版グラミンバンクをつくろうというもので、そのモデルケースとなるのが、岩手信用生協だ。

グラミンバンクについてはこのブログでも創設者ムハマド・ユヌス氏の「貧困のない世界を創る」を紹介したが、バングラディシュの貧民専門の銀行である。

岩手信用生協は1969年設立で、組合員向けの低利融資を行い、スイッチローンと呼ばれる生協、自治体、弁護士会、金融機関の4社が一緒になって生活再建のための債務整理や訴訟費用のバックアップを行うなど、解決に至る適切なアドバイスと具体的な解決策を提供している。

グラミンバンクでは借り手を5人ごとのグループにわけ、お金を借りたい時は他の4人の許可を得なければならない。それぞれの借り手が自分のローンに責任を持つが、グループとして互いに励まし合うことで、精神的なサポートになるという。「グループの他のメンバーを失望させたくない」というのが、ローンをきちんと返済する一番の理由だ。

岩手信用生協もチーム構成は異なるが、いずれも債務者をチームで支援しようとするものだ。

しかし岩田氏は自分も借金で苦労した経験があるので、この日本版グラミンバンクは、机上の空論のように思えると語る。

消費者金融会社のような与信管理のノウハウがなくては、新銀行東京のような結末になるのではないかと危惧している。


米国のクレジットヒストリー社会

この本で岩田氏は米国のクレジットヒストリー万能社会について紹介している。

米国ではクレジットビューローと呼ばれるエキファックス、エクスペリアン、トランスユニオンという3社の信用情報機関があり、銀行、クレジットカード会社など様々な会社から支払い履歴などの情報が毎日寄せられる。

過去2年間毎月の返済状況をまとめたのがクレジットレポートで、クレジットレポートの内容を3桁の偏差値であらわしたものがクレジットスコアだ。30日以上の支払い遅延があるとクレジットレポートに記載される。

筆者も合計9年間の米国駐在時に、クレジットヒストリーでは不便な思いをさせられたことがある。

1986年からの最初のピッツバーグ駐在のときにクレジットカードをつくろうとしたら、日本のクレジットヒストリーは米国には反映されないので、ダイナーズにリジェクトされてしまったのだ。

仕事用はアメックスのコーポレートカードが支給され、口座を開いた銀行で限度額が3,000ドル程度のビザカードがつくれたので、あまり問題なかったが、プライベートの支払いも限度額を超える分はコーポレートカードで支払っていた。

アメリカでもアメックスが使えないレストランとかが結構あるので、ビザカードは必需品なのだ。

半年から1年くらい経ってクレジットヒストリーができた段階で、今度はいろいろなカード会社から"Pre-approved"つまり審査合格済みというクレジットカードの案内がやたら送られてきて、手のひらを返したような扱いに驚いたものだ。

そのうちダイナーズからも申込書が送られてきたが、あのときの恨みがあるのでダイナーズカードは一度もつくったことがない。

米国でクレジットヒストリーが重要視される理由は、支払いは銀行引き落としでなく債務者がチェック(小切手)を切って郵送しないと支払いが行われないからだ。

bank check






これが筆者の小切手帳である。小切手に手書きで相手の名前、金額を英語と数字で書いて、封筒に入れて送るのだ。スペルミスがあると格好が悪いので、金額を英語で書くのが結構大変だ。たとえば14は"Fourteen"だが40は"forty"だ。

資金繰りに余裕がないときは小切手の送付を支払期日から遅らせることがあり、あまりこの遅れが大きくなると延滞金利を取られるようになるので、ぎりぎりのところで郵送するのがコツである。

米国では銀行がクレジットカードを発行している例が大半なので、銀行に一定金額以上の預金があれば1,000ドル程度の低い限度額のクレジットカードなら発行される。それ以外の場合はデビットカードという銀行引き落としカードを使う。

デビットカードは銀行残高がないと支払えないので、クレジットカードを持てない人でも持てる。だから中・下層向けの支払い手段といえる。


クレジットスコアとは?

クレジットスコアは前述のフェア・アイザック社のFICOスコアというスコアリングがデファクトとなっている。

クレジットスコアは300点から850点までランク付けされており、米国民における比率は次の通りだ。

800点以上   13%
799〜750  27%
749〜700  18%
699〜650  15%
649〜600  12%
599〜550   8%
549〜500   5%
〜499      2%

米国ではクレジットスコアにより、社会の階層化がより促進されたと岩田氏は語る。

クレジットスコアは日本に於いてはいわゆるセンシティブ情報ということで、個人情報の中でも最も知られたくない個人情報に分類されている。

しかし通販業界が政治力を持っている米国ではその点はルーズで、ダイレクトメールの送り先を抽出するために信用情報機関からクレジットスコアが高い人のリストを購入するということも日常的に行われている。

だから良いクレジットヒストリーができると、やたらにクレジットカードの勧誘のダイレクトメールが来るのだ。

日本では統一的なクレジットスコアの導入は急ぐべきでないと岩田氏は考えているが、現実としては日本もそういった社会が近づいているように思われると語っている。


クレジットスコアをあげる方法

最後に岩田氏は、クレジットカードの審査に通るために、前述の転職後や転居後1年間はじっと待つなど、基本的な対策のほかにクレジットヒストリーを磨く方法を伝授している。

クレジットヒストリーには過去2年間の毎月の返済状況が”$”(期日どおり支払い)マークで示されているが、毎月”$”マークが並んでいたほうが審査担当者に心証が良い。

こまめにカードを使ってくれている積極的なカードホルダーと評価されるからだ。

JCBカードなどは、毎月きちんと払っていても”$”マークはつかないので、クレジットヒストリーを修復するにはOMCカード、ビューカード、セゾンカードなど支払い記録に”$”マークがつくカードが良いと薦める。

さすが消費生活評論家第一人者の岩田氏の実際的なアドバイスである。

生活習慣をあたらめることで、信用力をいくらでもつけられる時代になったので、クレジットヒストリーの仕組みを知って自分の点数が下がらないように努力すべきであると語る。

それには次の6つの原則を実行することである。

1.カードを持ちすぎない
2.返済には決して遅れない
3.限度額いっぱいで使うことはしない
4.毎月一定額は必ずカード払いをして実績を積む
5.複数のカードの申し込みを短期間にしない
6.一度申し込んだら半年間は期間をあける

これらのアドバイスに従い、年に1回くらいは個人信用情報機関からクレジットレポートを取り寄せて、自らのクレジットヒストリーを確認することを岩田氏はすすめている。


消費者の「信用力」という新しい分野の定本となる本である。

岩田氏ならではの現場密着型の情報が満載で、アドバイスもすぐに実行可能なものばかりである。

是非一読をおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 19:48Comments(0)TrackBack(2)

2009年01月05日

箱根駅伝の激走

年末年始に箱根に行ったので、箱根駅伝を見た。

初日は往路のゴール付近で待ち受けた。

駅伝ゴール






芦ノ湖湖畔のゴール付近では、大型スクリーンが用意されており、中継が見られるので、待ち受けるファンも多かった。

今回20人抜きの新記録を達成した日大のダニエル選手とか、北京オリンピックに出場した早稲田の竹沢選手などもいた。

当初はトップの早稲田の選手の周りにテレビクルーが集まっていたが、最後の5区で脅威の追い上げで東洋大学が首位になると、今度は東洋大学の選手ばかり撮って、早稲田の選手を撮るものはいなくなった。冷淡なものだ。

第5区で東洋大学の柏原選手に逆転を許した早稲田の三輪選手は、ゴールした後白目をむいてぶっ倒れていた。

3分程度で立てるまでに回復したが、救急車が必要なのではないかと思わせるほど力を出し切って完全燃焼だった。

二日目の復路では、小涌谷付近で応援した。

駅伝小涌谷





ちょうど早稲田の選手が東洋大学の選手を逆転したところで、どちらも必死の形相で走っていた。



下り坂をすごいスピードで駆け抜けていたので、あれではひざに負担が掛かり、ゴール付近でフラフラになる選手もいることがよくわかった。

いままでテレビでしか見たことがなかったが、やはり実際に身近で見ると全然違う。

毎年駅伝を見に来るファンの気持ちがわかった。

ちかくで駅伝があれば是非観戦・応援に行くことをおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。



  
Posted by yaori at 23:40Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月04日

ハイブリッド車 箱根の有料道路料金が半額!

年末年始は一家で箱根で過ごした。天気もよく、眺めも最高だった。左が富士山、右が芦ノ湖の全景だ。

富士山芦ノ湖




駒ケ岳ロープウェイで山頂まで上り、そこからの絶景を楽しめた。左が相模湾・東京方面、右が駿河湾方面だ。

相模湾・東京駿河湾




箱根は芦ノ湖スカイラインや箱根スカイラインなど、いくつもの有料道路があるが、ハイブリッド車ならほとんどの有料道路料金が半額になる。

hybrid discount toll






ハイブリッド車などの割引について、はっきり書いていない料金所もあるが、料金収納係に言うと、半額にしてもらえる。

思わぬところで、ハイブリッド車のメリットを感じることができた休日だった。

ハイブリッド車の様々なメリットについては、過去にレポートしているので、参照頂きたい。

補助金は廃止になっているが、自動車税は優遇されている。燃費のよさに加えて、様々なメリットがあるので、もし車を買い替えるならハイブリッド車をおすすめする。

ちなみに今回の箱根の山道の往復も含めた直近2,800キロの平均燃費は9.3Km/Lである。

fuel economy




やはり冬になると暖房で燃費が悪くなるので、昨年秋頃までは10キロ前後だったが現在は9キロ台に落ちている。それでも3.3リッターのガソリン車の燃費より4割程度は良いと思う。



参考になれば投票ボタンをクリックしてください。




  
Posted by yaori at 10:56Comments(0)TrackBack(0)

2009年01月01日

読んでいない本について堂々と語る方法 書評ってなんだろう?

年頭の辞:

このあらすじブログで2009年の1月1日に紹介する本として不適当なタイトルではあるが、「本を読む」ということ、「書評」ということはどういうものなのか考えさせられる本である。

この本が説くように「書評」は本を読まなくても書ける。しかし「あらすじ」は本を読まないと書けない。

もともと読んだ本の内容を整理して、自分には備忘録、読者には「時短読書」として供しているこのブログである。

「書評」はいくら読んでもその本を読んだ様な気にはならない。逆説的ではあるが、これからも「書評」でなく「あらすじ」ブログを続けていこうと思う。そんなことを考えさせられた本である。

読んでいない本について堂々と語る方法読んでいない本について堂々と語る方法
著者:ピエール・バイヤール
販売元:筑摩書房
発売日:2008-11-27
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


「無税入門」同様気になるタイトルなので読んでみた。

パリ第8大学教授で精神分析家のバイヤール氏の作品だ。フランス本国では2007年1月の発刊、日本では2008年11月25日に発売されたばかりだ。

バイヤール氏はこの本の前に「失敗作をいかに改良するか」という本を2000年に出しており、気になるタイトルの本を続けて世に出している。

本の帯に”欧米で話題沸騰”とか”創造的読書への誘い(いざない)”とか書いてある。

結論から言うと、一見けしからん内容の本にも思えるが、次の3点から案外真実を含んでいる本ではないかと感じた。

1.実際は本を読んでもいないのに読んだような顔をしてコメントしたり書評を書いたりする批評家に対する痛烈なブラックジョーク。

2.”一冊の本を読むのに適した時間は10分である”とオスカー・ワイルドが語った(?)ことを引き合いに出し、本を読んで語るのは自分自身のことだという詭弁の様にも思えるが半面真理を含んだ指摘。

3.本筋とは関係ない部分を引用することにより、その本の印象を全く変えることができることを、漱石の作品からの引用で示している。本の引用とはどういうものなのか考えさせられる。


この本の目次

目次は次の通りだ。

I 未読の諸段階 

1.全然読んだことがない本 
2.ざっと読んだ(流し読みをした)ことがある本
3.人から聞いたことがある本
4.読んだことはあるが忘れてしまった本

II どんな状況でコメントするか

1.大勢の人の前で
2.教師の面前で
3.作家を前にして
4.愛する人の前で

III 心がまえ

1.気後れしない
2.自分の考えを押しつける
3.本をでっち上げる
4.自分自身について語る

それぞれの項目に対して具体例は1件だけの場合が多く、全く説得力がないが、これも筆者が意図してこういう構成をとっているのだと思う。


「愛する人の前で」とはいかにもフランスらしい

どんな状況でコメントするかの場面の一つに「愛する人の前で」というのがあるのが、いかにもフランスらしい。

ちなみにこの「愛する人の前で」という項では、ビル・マーレー主演の映画"Ground Hog Day"(邦題「恋はデジャヴ」)を取り上げている。

恋はデジャ・ブ [DVD]恋はデジャ・ブ [DVD]
出演:アンディ・マクドウェル
販売元:ソニー・ピクチャーズエンタテインメント
発売日:2008-09-24
クチコミを見る




Ground Hog Dayとは、ペンシルベニアのパンクスタウニー(Punxsutawney)という町で毎年2月2日にGround Hogというプレーリードッグのような動物が、冬眠から覚めるかどうかで、冬がさらにどれだけ続くのか占うイベントである。

テレビ局の取材で来たビル・マーレーが、毎日2月2日を繰り返す不思議な現象に陥ってしまう物語だが、この中でビル・マーレーが愛する人の前で、読んでいないにもかかわらずその人の愛読書の19世紀のイタリア文学の話で誘惑する場面があるのだ。


「共有図書館」を用いる方法

ムージルの小説「特性のない男2」に登場する目録さえ見れば個別の本を読む必要はないと主張する図書館司書を例に出している。

流し読みは詳細に迷い込まず本質を理解するのに効果的であると主張するポール・ヴァレリーの例を挙げて、書物の位置関係=全体の見晴し=「共有図書館」を把握することが、読んでいない本について語ることの決め手となると語る。

特性のない男 2特性のない男 2
著者:R. ムージル
販売元:松籟社
発売日:1992-12
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


ヴァレリーはプルーストの本をかろうじて1冊読んだだけだが、そのことは作家を正確に理解したり長々と意見を述べることの妨げにならないと主張する。


スクリーンとしての本

「スクリーンとしての本」とは、わかりにくい言い方だが、本の重要性は本そのものよりも、読んだ人がどういう理解をするかであるとバイヤール氏は語る。本は他人の評価を反映するスクリーンなのであると。

だから流し読みでも、他の本の評価を参考にしても、極端な場合読まずに評価しても、評価は評価だ。

我々が相手にするのは、現実の本でなく、これらの他人の言説や意見なのである。現実の本は遠くに追いやられ、永遠に仮定的なものになるのだと。


本筋とは関係ない部分の引用

1冊の本は何百ページもある。普通は本題と関係のある部分をその本の主題として引用するが、本題とは関係ない部分も特定の意図で引用される場合がある。

例としてなんと漱石の「我輩は猫である」と「草枕」が引用されている。

漱石の「我輩は猫である」からは、美学者迷亭が、ある席で自分が読んでいない本を話題に出して名文だと評したら、同席者がやはり名文だと同調したという話が取り上げられている。

「草枕」からは、山奥の旅館にこもる画家の主人公が旅館の娘に、本を適当に開いて目に入ったところを読むのだと説明している場面が取り上げられている。

青空文庫から「草枕」のその部分を引用すると次の通りだ。

「御勉強ですか」と女が云う。部屋に帰った余は、三脚几(さんきゃくき)に縛(しば)りつけた、書物の一冊を抽(ぬ)いて読んでいた。
「御這入(おはい)りなさい。ちっとも構いません」
 女は遠慮する景色(けしき)もなく、つかつかと這入る。くすんだ半襟(はんえり)の中から、恰好(かっこう)のいい頸(くび)の色が、あざやかに、抽(ぬ)き出ている。女が余の前に坐った時、この頸とこの半襟の対照が第一番に眼についた。
「西洋の本ですか、むずかしい事が書いてあるでしょうね」
「なあに」
「じゃ何が書いてあるんです」
「そうですね。実はわたしにも、よく分らないんです」
「ホホホホ。それで御勉強なの」
「勉強じゃありません。ただ机の上へ、こう開(あ)けて、開いた所をいい加減に読んでるんです」
「それで面白いんですか」
「それが面白いんです」
「なぜ?」
「なぜって、小説なんか、そうして読む方が面白いです」
「よっぽど変っていらっしゃるのね」
「ええ、ちっと変ってます」
「初から読んじゃ、どうして悪るいでしょう」
「初から読まなけりゃならないとすると、しまいまで読まなけりゃならない訳になりましょう」
「妙な理窟(りくつ)だ事。しまいまで読んだっていいじゃありませんか」

このように本題とはあまり関係ない部分でも、引用されたらその本の主題を代表する様に受け止められるという例だ。


読んでいない本について語ることは自分自身について語ること

そして、読んでない本について1.勇気を持って気後れせず、2.自分の考えを押しつけ、3.本をでっち上げ、4.自分自身について語れば良いのだと結論付ける。

書評は誰かが公式解釈をするわけでもないので、本をきちんと読まずに、流し読みだとか、他人の書評を参考にするとかで、勝手に本の内容を創作してして語っても良いのだと。これがバイヤールの言う、自分自身について語ることだ。

この本の翻訳者は、「本が読まないでも語れる」なら、「本は読まないでも翻訳できる」のではないかと考えたとジョークを飛ばしているが、翻訳者もある程度は「自分自身について語る」のだという。

突き詰めて言えば、「読まない方が書ける」のだと。

筆者の大学のときの日本近代法史(?)の石井紫郎教授の試験を思い出す。

1−2回しか石井教授の授業に出席せず、試験だけ受けて、自分の勝手な見解を長々と書いて自分ではよくできたと思っていたが、何のことはない石井教授が半年間掛けて説明していたことに全く触れていなかったので、「可」をくらった。

石井教授も答案を採点していて頭にきていたと思う。筆者の大学時代の唯一の「可」である。全く汗顔の至りである。


冒頭で書いたとおり、書評の危うさをブラックジョークを交えて指摘した本である。フランスでベストセラーになるだけの理由はあると思う。一度手にとってみることをおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックしてください。





  
Posted by yaori at 00:55Comments(0)TrackBack(0)