2009年11月30日

松坂大輔が読んでいるトレーニングの本 復刻版登場

2009年11月30日再掲:

松坂大輔が読んでいるトレーニングの本として紹介した本が講談社から復活した。

筋を鍛える   ヒトはトレーニングによってどう変わるのか?筋を鍛える ヒトはトレーニングによってどう変わるのか?
著者:石井 直方
販売元:講談社
発売日:2009-09-30
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かなり専門的な内容だが、筋トレの最新理論を詳しく紹介し、具体的なトレーニング方法も紹介しているので参考になる。

もともとは山海堂という出版社から出ていた本だが、出版社が倒産し、アマゾンの中古本市場では実に1万円以上していたことは、以下に説明したとおりだ。

今回復刻版が出たので、オリジナルの本の中古価格は700円くらいになってしまっている。

今だから明かせるが、実は今年の1月にオリジナルの本のあらすじを書いた直前に大学のクラブのOB会があり、石井教授から復刻版が出ると聞いていた。

しかし当時は中古本がプレミアムで売れていたので、この情報を公開すると中古本ディーラーの人に影響が出ると思って、元々のあらすじには復刻版のことはふれなかった。

なにはともあれ、トレーニングの伝説の名著が、簡単に読めるようになったのは喜ばしいことだ。

普通の人にはちょっと専門的すぎるかもしれないが、第5章は「キミはマイケル・ジョーダンになれるか?」という様な肩のこらない読み物になっている。

今度は簡単に手に入るので、ぜひ書店で手にとって見てほしい。


2009年1月27日初掲:

先日のNHKテレビの「スポーツ大陸」の松坂大輔特集を見ていたら、松坂がこのブログでも紹介しているスロトレで有名な東大の石井教授の本を読んでトレーニング法を研究している場面があった。

それがこの本だ。

石井教授自身は、日本で2度ほど松坂の練習を見たと言っておられたが、松坂の体はあきらかにアメリカに行く前と違う。

現在のほうが筋肉がついて、いかにも大リーグのピッチャー(筆者は大リーグのピッチャーというと、ロジャー・クレメンスのイメージが浮かぶ)らしくなってきたという感じだ。

この本が松坂のビルドアップに役立っているのだと思う。

筋と筋力の科学〈2〉筋を鍛える―トレーニングするとからだはどうなるのか? (からだ読本シリーズ)筋と筋力の科学〈2〉筋を鍛える―トレーニングするとからだはどうなるのか? (からだ読本シリーズ)
著者:石井 直方
販売元:山海堂
発売日:2001-07
おすすめ度:4.5
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先週石井教授にお会いしたので聞いてみたら、実はこの本の出版社の山海堂が倒産したので、もうこの本を買うことはできないのだとのこと。

同じシリーズの「重力と闘う筋」にはプレミアムはついていないので、まさに松坂効果だと思う。

筋と筋力の科学〈1〉重力と闘う筋―筋はどのようにして力を出すのか? (からだ読本シリーズ)筋と筋力の科学〈1〉重力と闘う筋―筋はどのようにして力を出すのか? (からだ読本シリーズ)
著者:石井 直方
販売元:山海堂
発売日:2001-07
おすすめ度:4.5
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この本は絶版で、アマゾンのマーケットプレースでは1,800円の本に15,000円の値段がついている。

町田市の図書館では蔵書がなかったが、図書館同士の貸し借りネットワークがあるので、西東京市図書館から借りて貰った。

このように稀少本でも図書館にリクエストすれば読めるのだ。


この本はサニーサイドアップ社発刊「月間フィジーク」というトレーニング雑誌(現在は休刊)に、1999年から石井教授が連載したシリーズ記事をまとめたもので、次の目次のようにかなり専門的な内容だ。

第1章 レジスタンストレーニングの効果
  1.トレーニング効果とは
  2.トレーニング効果の動作特異性
  3.トレーニング効果の現れ方
第2章 トレーニング効果発現のメカニズム
  1.トレーニングによる筋肥大のメカニズム
  2.メカニカルストレスと筋肥大
  3.代謝・内分泌系と筋肥大
  4.筋内の酸素環境と筋肥大
第3章 トレーニング法の違いと効果の違い
  1.刺激の要因と特徴を理解する
  2.さまざまなトレーニング法
第4章 スキルという迷宮
  1.筋を制御する仕組み
  2.スキルという迷宮
  3.予測(読み)と反射とイメージトレーニング
第5章 キミはマイケル・ジョーダンになれるか?
  1.ダンクシュートの力学
  2.トレーニングでできるようになること、ならないこと
  3.運動能力と遺伝

トレーニングの基礎理論に加え、様々な実験結果が満載で参考になる。

いくつか参考になった点を紹介する。


腕や脚の周径位が10%増えると、筋肉の量は20%増える。

だから1998年の大リーグのホームラン王だったマーク・マグワイア選手(その後ドーピングの疑いがかけられているが黙秘することで記録は剥奪されていない)の上腕囲は51センチだったので、日本のプロ野球選手の平均上腕囲が36センチとすると、上腕囲が40%アップ、筋力は2倍と推定される。

オリックスのカブレラなどの上腕囲の太さはマグワイア並だと思うが、日本の野球選手の倍の筋力というのは、うなずける気がする。松坂もアメリカに行って相当筋力アップしているはずだ。

トレーニングを開始して1ヶ月くらいで筋力は伸びるが、筋量をふやすには最低3ヶ月、中高齢者は4ヶ月以上トレーニングを継続する必要がある。

特に中高齢者は筋肥大が若者に比べて遅い。筆者も加圧トレーニングを週1回程度続けているが、やはりこれでは現状維持がやっとだ。最低回数を週2回以上にして4ヶ月以上続ける必要がありそうだ。

この本の原稿は1999年頃に書かれたものなので、石井教授自身が加圧式トレーニングを半信半疑で試してみて、驚くべき効果が得られたことが書かれている。

加圧トレーニングは筋内の酸素環境を強く刺激して効果を得るトレーニングだが、これと同様の効果を得られる可能性があるトレーニングとして、コンティニュアス・テンション・メソッド(「常時緊張法」とでも訳すべきか)という名称で、スロトレの原型が紹介されている。

唯一無二の絶対的トレーニングはないので、継続的に能力を向上させたい場合は3〜4ヶ月毎にトレーニングの方法や処方を見直し、段階的に変える必要があるというのも重要な指摘だ。


最新のスポーツ理論の本だけに、現在スポーツ界で深刻な問題になっているステロイド、成長ホルモン、遺伝子ドーピングなどについても解説している。

特に高齢者の筋萎縮治療や、筋ジストロフィー治療に開発された遺伝子ドーピング療法の悪用は「スポーツ自体を滅ぼす最終兵器」になるおそれがあるとして、強く注意を呼びかけている。

石井教授は、筋肉を増強する悪魔の技術をいくつか挙げている。ネガティブミオスタチンインスリン様成長因子(IGF−I)そしてミトコンドリア脱共役タンパク質(UCP−2,UCP−3)などがあるという。

北京オリンピックでベラルーシのハンマー投げのチホン選手など2選手がドーピングで失格して室伏選手が3位に繰り上がったが、ベラルーシの選手もこういった遺伝子関係の巧妙なドーピングをやっていたのかもしれない。

トップ選手ほど壁を乗り越えるために大変苦労するのだろうが、カベを乗り越えるために薬物を使っては倫理上の問題は勿論、自分の健康もむしばむことになる。

一時は隆盛を極めた野球のマーク・マグワイアもドーピングのせいで、野球の殿堂入りはまず無理と言われている。バリー・ボンズも薬物を使用していたのに、使っていなかったとウソをついたと偽証罪で訴えられている。

筆者はピッツバーグに2度駐在しているが、バリー・ボンズは元々ピッツバーグパイレーツの選手だった。最初の駐在(1986年ー1991年)のときのボンズはスリムだったのに、二度目の駐在(1997年ー2000年)のとき(サンフランシスコ・ジャイアンツ)はえらく筋肉隆々になっていたのに驚いた記憶がある。

ドーピングした選手の末路はみじめである。せいぜいホセ・カンセコの様に暴露本をだすくらいしか金を稼ぐ方法がなくなる。

Juiced: Wild Times, Rampant 'roids, Smash Hits, And How Baseball Got BigJuiced: Wild Times, Rampant 'roids, Smash Hits, And How Baseball Got Big
著者:Jose Canseco
販売元:Regan Books
発売日:2006-03
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かなり専門的な内容で、こんな本を読んで、あきらかに一回り体を大きくしている松坂大輔投手を見直した。稀少本なので、買うと15、000円もしてしまうので、是非もよりの図書館でリクエストして探して読んで欲しい本だ。


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2009年11月29日

日本のタブー ゴーマニズム宣言 小林よりのりの最新作

ゴーマニズム宣言NEO 2 日本のタブーゴーマニズム宣言NEO 2 日本のタブー
著者:小林 よしのり
販売元:小学館
発売日:2009-10
おすすめ度:4.5
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アイヌは日本の「先住民族」なのか、沖縄は「全体主義の島」なのか、小林よしのりが日本のタブーと呼ぶテーマについて、「言論封殺魔」とよぶ佐藤優との仮想論戦もまじえながら自説を展開する。

筆者は200ページ程度の新書なら1日の往復の通勤時間(2時間)で読み終えるが、この本は250ページほどのマンガでありながら、読むのに3日かかった。

しかも小林よしのりの本は、多くのページの上に手書きのメモのような記事を載せており、この手書きメモはすべて読んだ訳ではないので、その意味では3日掛かっても全部は読み終えなかった。

普通のマンガ本なら、250ページくらいあっても1日で読み終えるはずだ。スゴイ情報量である。

今までこのブログでは、小林よしのりの「天皇論」、「沖縄論」(の続き)、「靖国論」、「いわゆるA級戦犯」についてあらすじを紹介してきたが、著者の小林よしのりの勉強量とマンガを使ったわかりやすい説明には感心している。

ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論
著者:小林 よしのり
販売元:小学館
発売日:2009-06-04
おすすめ度:4.5
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佐藤優は「言論封殺魔」?

今回の本では外務省のラスプーチン佐藤優から、小林よしのりの著書を多く出版している小学館のSAPIO編集部に「言論封殺」の圧力がかけられたということで、佐藤優を相手に紙上で論戦を張っている。

佐藤優の方は「言論封殺魔」というコスプレで茶化しているので、どこまで本気なのかわからない。少なくとも小林よしのりは真剣なのだろうが、紙上論戦に巻き込まれる一般読者は迷惑だ。

小林よしのりは、地道な取材に基づいて、「靖国論」、「台湾論」、「天皇論」など参考になる本をいくつも出しているわけだし、紙上論争のようなものに自分自身と読者の時間を費やすような本はやめて欲しいと思う。

そもそも累計で数百万部も売っていて、地位も人気も確立している小林よしのりが、何故佐藤優をこのように極端に怖れ、紙上で執拗に論戦を挑んでいるのかさっぱり理解できないところがある。


日本のタブー

この本で日本のタブーとして小林よしのりが議論しているのは次の点だ。

★アイヌは日本の先住民族か?

「日本は内向きな単一民族」と発言した中山元国交相が辞任させられた2008年9月の舌禍事件があった。

この本ではアイヌは”民族”ではないこと、和人と混血が進み、純粋なアイヌは1970年代で途絶え、もはやいないこと、昔から和人とアイヌが北海道で混住していたので、アイヌが”先住民族”とはいえないことを様々な論拠を上げて検証している。

2008年6月には国会で、アイヌ先住民族決議が全会一致で成立しているが、この決議にはそもそも民族、先住民族の定義もない。

小林よしのりは「北海道アイヌ協会」に取材や対談を申し込むが、すべて断られたという。

仕方がないので、次の本を読み、著者にも話を聞いてこの本を書いている。

「アイヌ」-その再認識―歴史人類学的考察
著者:河野 本道
販売元:北海道出版企画センター
発売日:1999-11
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アイヌ文化が成立したのは13〜14世紀の鎌倉時代だが、当然それ以前からアイヌも和人の子孫も北海道に住んでおり、すべて「蝦夷」と呼ばれていたのだ。

江戸時代にはアイヌは差別され、和人商人に搾取された。しかし明治政府は、もともと文字を持たなかったアイヌに文字を教え、貧困にあえぐアイヌを支援するために1899年には北海道旧土人保護法を成立させ、アイヌに非課税で土地を与えたり、様々な資金を援助したりして保護した。

1997年にアイヌ文化法が成立すると同時に、北海道旧土人保護法は廃止された。

現在では純粋なアイヌはいないが、政治的圧力団体のアイヌはおり、政府に圧力をかけている。


★沖縄は全体主義の島?

沖縄では保守と左翼が談合して、2大新聞が先頭に立って犠牲者の島・反日キャンペーンをやっている。それが小林よしのりが、沖縄のことを全体主義の島と呼ぶゆえんだ。

端的な例が集団自決に軍の関与があったかどうかという点だ。

元陸軍の渡嘉敷村守備隊長赤松氏は、戦後「自決命令を出した」という濡れ衣を黙って着た。島民が「遺族援助金」を受けるためだという。

渡嘉敷の住民の一人は「赤松さんは人間の鑑です。渡嘉敷の住民のために泥をかぶり、一切弁明することなく、この世を去ったのです。家族のためにも、本当のことを世間に知らせてください」と述べたという。

NHKでは2008年6月に特集番組を制作し、渡嘉敷島の集団自決の時に、親兄弟を殺害した金城重栄、重明兄弟の証言を、軍の関与があった証拠として紹介している。しかし、小林よしのりは、これはNHKのねつ造だと語る。

この本だけでは判断が付かないところである。またマスコミによく取材されるとはいえ、一般人の金城兄弟の実名を挙げて、マンガで親兄弟を殺した場面を描いている点もやりすぎではないかという気がする。


★北方領土交渉での鈴木宗男・佐藤勝コンビのおもねり・譲歩外交

このブログでも紹介した佐藤優の「国家の罠」は、2005年新潮ドキュメント賞にノミネートされていて、審査員の受けもよく受賞が有力視されていたところ、審査員の櫻井よしこさんが前代未聞のゼロ点をつけたので落選した。

櫻井よしこ氏は、「北方領土交渉で日本外交は少しずつ、しかし確実に領土奪還の道筋をつけてきていた」のに、宗男や佐藤優が支えた橋本龍太郎の対露外交から「惨めな、信じ難い後退」をしてしまったというのだ。

4島一括返還原則を主張するものは、相手がたとえ橋本龍太郎総理大臣でも宗男が恫喝したという。

そして「領土返還」を「国境線画定」と言い換えたと櫻井氏は指摘する。

このブログでも紹介した宗男・佐藤優コンビの「北方領土特命交渉」に、ロシアエリツィン大統領が来日した川奈会談の時に秘密事項があったことが書かれている。

まさにロシア側へのこういった売国奴的なおもねり・譲歩外交が、ロシア側を強気にさせて、領土問題解決が一気に遠のいたのだと小林よしのりは櫻井さんの意見に同意して宗男・佐藤優・東郷和彦トリオを非難している。


その他の論点

その他、おぼっちゃまくんがパチンコ台のキャラクターになったり、グッズができた話とか、天皇論の読者の反応などを紹介している。

また漫画家は広い仕事場を借りてスタッフを雇わなければならず、それでも6人が一日12時間働いて、できる作品は一日2ページだけで、原稿料だけでは到底割に合わない職業なのだと実情を語る。あまりにも生活が不安定だから、小林よしのりは子供をつくることをあきらめたのだと。



これは筆者の意見だが、日本のタブーに挑戦するという意気込みは良いが、櫻井よしこ氏の意見を論拠に佐藤優に論戦を仕掛けても、どうするつもりなのか、出口が見えない。

それぞれの論点について、特定の人の意見に影響されて、その人への反対意見とか中立的な意見が、紹介されていないので、一方的な意見を聞いたというだけのものに終わっているのは残念である。

参考にはなったが、小林よしのりの限界も見えたような気がする本である。


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2009年11月28日

ダヴィンチコードのダン・ブラウンの新作 ロスト・シンボル

The Lost SymbolThe Lost Symbol
著者:Dan Brown
販売元:Doubleday
発売日:2009-09-15
おすすめ度:3.0
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「ダヴィンチコード」で一躍有名になったダン・ブラウン作のハーバード大学教授ロバート・ランドンシリーズの第3弾。

原書が9月に発売されたばかりで、まだ日本語訳はないので、audible.comでダウンロードして通勤途中に聞いた。全部聞くと17時間あまりの作品だ。

audible dan brown





現在audible.comでもダウンロード販売の一位となっている。発売一日で100万部が売れ、一週間で200万部が売れたというベストセラーだ。アメリカのテレビの著者ダン・ブラウンとのインタビューがYouTubeに載っている。



活字を読まずに、フリーメーソンの専門用語やワシントンの史跡名が出てくるこの本を原書のオーディオブックだけで理解するのは結構キツイ。

このオーディオブックを聞いて新しく覚えた単語は次のようなものだ。

Rosicrucian : バラ十字会員
Alchemy : 錬金術
Noetic science : 精神科学(筆者の訳)魂の重さを量ったり精神を科学的に研究する学問
incandescent: 白熱光を発する
Androdyne : 両性の
Testicle : 睾丸
(この本を読んでいくとなぜ最後の2つのような名詞が出てくるのかわかると思う)

たまたま仕事でPseudonym(スュードニム=仮名、ペンネーム)は覚えたばかりだったが、”ニュートンのPseudonym”という感じで出てくる。

単語を知らないで一番困ったのがRotundaだ。

筆者は米国ピッツバーグに2回、合計9年間駐在していたので、ワシントンDCには車でよく家族と出かけた。片道4−5時間の距離だ。

ワシントンの中心街の国会議事堂、リンカーンメモリアル、スミソニアン博物館、オベリスクなどのいわゆる”モール”もよく行ったが、Rotundaという言葉は知らなかった。(ワシントンを1週間掛けて(!)観光した人のCapitol紹介のブログを見つけたので紹介しておく。筆者はせいぜい滞在は毎回2−3日だった)

ワシントンの国会議事堂の丸屋根がU.S. Capitol Rotundaだ。

538px-US_Capitol_dome_Jan_2006








写真出典:Wikipedia(以下別記ない限り出典はWikipedia)

キャピトル・ドームの内部のジョージ・ワシントンの像と内側のデコレーション。

800px-USCapitolRotunda






このドーム天井にはワシントン賛美と呼ばれる巨大なフレスコ画がある(Apotheosis of George Washington)

800px-Apotheosis_of_George_Washington






実は国会議事堂は外からしか見たことがない。ドームの中がこんな新大陸アメリカらしくない装飾となっていたとは全く知らなかった。こんなことを知らなかった筆者は自らモグリと認めざるを得ない。


この小説ではハーバード大学のロバート・ランドン教授が、フリーメーソンの最高位、第33位ランクの恩人(の秘書)からの電話でワシントンに呼び寄せられるところから始まる。

筆者のポリシーとして小説のあらすじは詳しく紹介しないが、息をもつかせない展開はさすがだ。

登場人物はランドン教授の他に、大金持ちでフリーメーソンの最高ランクのスミソニアン協会理事長のピーターと科学者のキャサリンのソロモン兄妹、CIAの日系人女性ディレクター井上-佐藤、謎の巨漢タトゥー・マッチョマンMal'akh(マラック)、フリーメーソンの仲間のワシントンのモールの黒人建築家や司教といった顔ぶれだ。

ランドンがピーターから託されたピラミッドの置物が、ワシントンの地下に隠された秘密のカギを握っており、それを巡っての争奪戦が繰り広げられる。フリーメーソンの最高位者33グレードの指輪の刻印、"All is revealed at 33 degree"や、何気なく告げた"sincerely"という言葉の語源の俗説(sin=without. cere=wax)も重要なヒントだ。

温度で摂氏、華氏以外にニュートン度というのがあるとは知らなかった。

"8 Franklin Square"という謎解きも面白い。

どんでん返しの後、すべてが片づいた後の最後のランドン教授とソロモン兄弟の会話が冗長で、サスペンス小説を読んだ後の興奮が冷める感じではあるが、全体として大変面白いサスペンスエンターテイメントだ。

日本語サイトもある。日本語版は2010年3月に発売予定ということだ。

2012年に映画化が決定しているようだが、映画が待ち遠しい作品だ。


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2009年11月25日

「勝ち続ける力」と「決断力」 羽生善治の強さの理由

羽生善治さんと文壇名人で翻訳家の柳瀬尚紀さんの対談の「勝ち続ける力」を読んだので、以前紹介した羽生さんの「決断力」のあらすじとともに掲載する。

勝ち続ける力勝ち続ける力
著者:羽生 善治
販売元:新潮社
発売日:2009-05
おすすめ度:4.0
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この本は将棋のことが中心だが、最近の将棋ソフトの著しい進歩について書かれていたのが参考になった。

それは2007年に登場したボナンザという将棋ソフトだ。
BONANZA 3.0 Commercial EditionBONANZA 3.0 Commercial Edition
販売元:マグノリア
発売日:2008-03-14
おすすめ度:4.0
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ボナンザを開発したプログラマーで東北大学助教授の保木邦仁さんとともに、ボナンザと対戦した渡辺明竜王が本を書いている。

ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)ボナンザVS勝負脳―最強将棋ソフトは人間を超えるか (角川oneテーマ21)
著者:保木 邦仁
販売元:角川書店
発売日:2007-08
おすすめ度:4.0
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すでにチェスでは1997年にIBMのディープブルーが当時のチェスチャンピオンのガスパロフを2勝1敗3分けで破っており、チェスの世界では練習相手がコンピューターというのは普通になっている。

将棋の世界では奪った相手の駒が使えるという不確定要素があるので、チェスよりはコンピューターソフトの発達が遅れていたが、2007年にボナンザが若手ナンバーワンの渡辺明竜王と公開対局を行い、結果的には渡辺竜王の勝利に終わったものの、渡辺竜王が苦戦しているという状況にまで陥った。

この渡辺明竜王は、羽生善治さんより14歳年下の若手のホープで、2008年の竜王戦7番勝負で、3連敗の後4連勝して羽生さんを倒してタイトルを防衛し、初代永世竜王になった人だ。当時の年齢は羽生さん38歳、渡辺さん24歳だ。

この将棋ソフトボナンザは、プロ棋士の公式戦の将棋譜面3万局と、将棋倶楽部24の将棋譜面3万局を入力している。「全幅検索」という手法でしらみつぶしに手を探して選択する手法をベースとしたソフトで、古いものでは1607年からの棋譜が入力されているという。

ちなみに柳瀬さんは文壇名人の称号を得た腕前だが、ボナンザにまったく勝てないという。

「決断力」のあらすじを公開してから3年たったが、将棋もコンピューターソフトがたいていの人間より強い時代となった様だ。

人間にしかできないことは何か、考えさせられる事例である。



2006年10月22日初掲:

決断力 (角川oneテーマ21)決断力 (角川oneテーマ21)
著者:羽生 善治
販売元:角川書店
発売日:2005-07
おすすめ度:4.5
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先日読んだ内田和成さんの『仮説思考』でも紹介されていた羽生善治(はぶよしはる)さんの『決断力』。

将棋の話が中心ではあるが、スポーツなど他の話題も大変豊富で、楽しく読める。ビジネスの世界にも十分通用する内容だ。羽生さんの交流範囲の広さと博識にも驚く。

羽生氏は、「将棋を通して、人間の本質に迫ることができればいいなと思っている」と語っているが、このような将棋に対する取り組み態度が、この本を面白いものにしている理由だと思う。

実際、サイバーエージェントの藤田晋社長もこの本を読んで感銘を受け、今年度読んだ本のNo. 1と言って、羽生さんと対談しており、10月18日からしぶしょくで紹介されている。


羽生善治







この本を読み始めたら、すぐにピッツバーグで旧知のカーネギーメロン大学の金出武雄教授のKiss(Keep it simple, stupid、単純に考える)の話が出てきたので驚いた。

金出教授は『素人のように考え、玄人として実行する』という本も出しているが、ロボティックスの世界的権威だ。

素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術 (PHP文庫)素人のように考え、玄人として実行する―問題解決のメタ技術 (PHP文庫)
著者:金出 武雄
販売元:PHP研究所
発売日:2004-11
おすすめ度:4.5
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その金出さんにならって、羽生氏も「キスで行く」ことを薦める。ごちゃごちゃ考えず、物事を簡単に単純に考えることは、複雑な局面に立ち向かい、解決するコツである。記憶に残る提言である。

ちなみに将棋の指し手は金出さんによると、10の30乗ぐらいあり、地球上の空気に含まれる分子の数より多いという。そんな無限・未開の世界にどれだけ深く踏み行っていけるのかが、将棋の醍醐味なのだと羽生氏は語る。


筆者は将棋は子供の頃、友達と遊びでやったくらいなので、『定石』(じょうせき。ルーティン化した戦略に基づく打ち手)が碁の用語で、将棋では『定跡』(同じくじょうせき)と書くことを初めて知った。

時々高校生の長男とチェスは遊びで打つが、駒が再利用できる将棋とチェスでは打ち手のバリエーションが違う。

チェスでは1997年にスーパーコンピューターのビッグブルーが世界チャンピオンのガリー・ガスパロフに2勝1敗3引き分けで勝利しているが、将棋ではまだまだで、市販の強い将棋ソフトの実力はアマチュア3段くらいだと言われているそうだ。

しかしコンピューターが強いのは終盤で一気に詰ませ合う時はプロをもしのぎ、詰め将棋などは最も向いているが、中盤の限りなく打ち手があるときは初心者程度であると羽生氏は語っている。

将棋をベースとしていながら、読み応えのある内容の濃い本である。

いくつか参考になる点を紹介しよう。


勝負には周りからの信用が大切だ。期待の風が後押ししてくれる

プロ野球などで、チャンスに強いとファンから期待される選手が、期待に応えて活躍し、ヒーローインタビューで「ファンの皆さんのお陰です」と答える場面をよく見かけるが、これは決して社交辞令ではない。周りの信用の後押しが、ぎりぎりの勝負になって出てくるのではないかと。

将棋に限らず、勝負の世界では、多くの人たちに、どれだけ信用されているか、風を送ってもらうかは、戦っていくうえでの大きなファクターであり、パワーを引き出してくれる源であると羽生氏は語る。

大山康晴名人も「仲間に信用されることが大切だ」と語っているそうだが、ビジネスや広く人間関係においても、気持ちの差は大きいのではないだろうか。

Aがやるとスムーズに行くのに、Bがやるとうまくいかないことがある。AとBの仲間の格付けや、信用の後押しの違いが大きいはずだ。そのためにも、日頃から実力を磨き、周りからの信用を勝ち取ることが大切だと羽生氏は語る。

『期待の風を送ってもらう』とは羽生さんらしいユニークな言い方だが、期待されているという自信が、より大きなパワーを引き出すことはたしかで、そのためにも日々の研鑽が重要だという羽生さんの論理は、シンプルだが、非常に説得力がある。


直感の七割は正しい

冒頭に紹介した内田和成さんの「仮説思考」で紹介されていた部分だ。

将棋には一つの局面で80通りくらいの指し手の可能性がある。その80から大部分を捨てて、これがよさそうだという候補手を2−3に絞るのである。

その絞った手に対し、どれが一番正しいか綿密にロジックで検証する。三つの手に対して、またそれぞれに三つの展開候補があり、それがまた枝葉に分かれるのですぐに300手、400手になってしまう。

どこまで検証すれば良いのかの基準はないので、ある程度のところで思考をうち切り決断するのである。

三つに絞った手が、うまくいかなければまた最初に戻って他の手を考える、そうなると数時間かかる長考になり、迷っている状態になる。打ち手に情が移ってしまい、捨てきれなくなるのだと。

そんな時は相手の立場になって眺めてみたりするが、長考の時はどうやってもうまくいかないというケースが非常に多く、結局「どうにでもなれ」という心境で決断すること結構あると。

羽生さんは将棋を指すうえで一番の決め手になるのは『決断力』だと語る。経験を積み重ねていくと、さまざまな角度から判断ができるようになる。しかし、判断のための情報が増えるほど、正しい決断ができるとは限らない。

将棋ではたくさん手が読めることも大切だが、最初にフォーカスを絞り、「これがよさそうだ」と絞り込めることが、最も大事だ。それが直感力であり、勘である。

直感力は経験し、培ってきたことが脳の無意識の領域に詰まっており、それが浮かび上がってくるもので、人間の持っている優れた資質の一つだ。

「直感の七割は正しい」と。


大局観と感性

羽生さんは大山康晴名人と対局したことがあるが、ハッキリいって大山さんは盤面を見ていない、読んでいないのだが、自然に手がいいところに行く。まさに名人芸であったと。

経験を積み重ねて、全体を判断する目、大局観がしっかりしているからであり、その基礎になるのが、勘、直感力である。

その直感力の元になるのが、感性である。

数学界のノーベル賞といわれるフィールズ賞を受賞した小平邦彦氏は、数学は高度に感覚的な学問であるといい、それを『数覚』と名付けているそうだが、幾何の図形問題で、補助線を引くような閃き(ひらめき)が得られるかどうかが、強さの決め手になると羽生氏は語る。

将棋に限らず、ぎりぎりの勝負で力を発揮できる決め手は、大局観と感性のバランスであると。

感性は、読書をしたり、音楽を聴いたり、将棋界以外の人と会ったりという様々な刺激によって総合的に研ぎ澄まされるものだと。

この本が面白い理由である。


集中力

羽生さんによると集中力は、ダイビングで海に深く潜っていく感覚と似ている。水圧に体を慣らしながら、徐々に深く潜っていくのだ。

これ以上集中すると、「もう元に戻れなくなってしまうのでは」とゾッとする様な恐怖感に襲われることもある。

集中したときは、この一手しかないという場面では、駒が光って見えたりするのだと。まさに名人の域である。

ただ、毎日将棋のことばかり考えていると、だんだん頭がおかしくなってくるのがわかる。だからボーッとした空白の時間をつくり、本を読むなり、心や頭をリセットするのだと。


昔の棋士と対局できるなら升田幸三とやりたい

羽生氏は升田幸三と対局したいと語る。升田対大山は一時の将棋界のトップ対決で、167局戦って、升田の70勝96敗1持ち将棋であった。

升田将棋は立ち会いの瞬間で技を決めてしまうというやりかたで、現代の将棋のさきがけだったのだ。

しかしここ20ー30年の技術改革で、情報化時代の現代の棋士の方が圧倒的に強いと断言できると羽生氏は語る。

以前の戦法や指し手は、すでに常識になっているからだ。時代が進むと、全体的な技術も向上する。科学技術の進歩の様なものだと。


才能とは同じ情熱、気力、モチベーションを持続すること

羽生さんは、以前は才能は一瞬のきらめきだと思っていたが、今は10年とか30年とかでも同じ情熱を傾けられることが才能だと思っていると。

継続できる情熱を持てる人の方が、長い目で見ると伸びるのだ。

将棋界で現役のプロは150人くらいだが、力が衰えるとすぐに置いていかれてしまう怖い世界で、一週間全く駒をさわらずに将棋から離れていると、力はガクンと落ちてしまうだろうと。元の棋力を取り戻すには一週間の何倍もの努力が必要である。

報われないかもしれないところで、同じモチベーションを持って継続してやれるのは、非常に大変なことであり、それが才能であると。

羽生さんはエジソンの「天才とは1パーセントの閃きと99パーセントの努力である」という言葉を、どの世界にも通用する真理をついた言葉として引用している。

天才と呼ばれる領域に達しているからこそ言える羽生さんの言葉であり、重みがある。

プロ棋士は一年間に10いくつかの公式戦があり、その戦いの結果によって地位や収入を得ている。対局料として一定のお金がもらえるが、生活するためにはある程度の対局をこなさなければならない。

賞金が掛かることもあるが、賞金は一回限りのものであり、賞金が多額だからといって、将棋のさし方を変えることはないと。

羽生さんの2004年度の通算勝敗は60勝18敗で、勝率は7割7分だったが、次の年は何の保証もない。また一から積み上げるだけなのだ。

「どの世界においても、大切なのは実力を持続することである。そのためにモチベーションを持ち続けられる。地位や肩書は、その結果としてあとについてくるものだ。

(順序を)逆に考えてしまうと、どこかで行き詰まったり、いつか迷路にはまり込んでしまうのではないだろうか」と語っている。

説得力がある謙虚な言葉だ。


玲瓏(れいろう)

羽生さんが色紙を頼まれると書く言葉である。玲瓏は八面玲瓏から取った言葉で、周囲を見渡せる状況を意味しており、こころの状態を指す言葉でもある。明鏡止水とも似ている。

また克己復礼(こっきふくれい)もよく書く言葉だと。自制して礼儀を守るという意味だ。

勝負では感情のコントロールができることが、実力につながるのだと。


非常に参考になり、面白く読める本なので、まだまだ紹介したいが、あらすじが長くなりすぎてしまうので、目次からピックアップして紹介する。

内容がある程度推測できると思う。

第1章 勝機は誰にでもある
1.勝負の土壇場では、精神力が勝敗を分ける
2.勝負どころではごちゃごちゃ考えるな。単純に、簡単に考えろ!
3.知識は、「知恵」に変えてこそ自分の力になる
4.経験は、時としてネガティブな選択のもとになる
5.勝負では、自分から危険なところに踏み込む勇気が必要である
6.勝負では、「これでよし」と消極的な姿勢になることが一番怖い
7.勝負には周りからの信用が大切だ。期待の風が後押ししてくれる

第2章 直感の7割は正しい
1.プロの棋士でも、十手先の局面を想定することはできない
2.データや前例に頼ると、自分の力で必死に閃(ひらめ)こうとしなくなる
4.決断は、怖くても前に進もうという勇気が試されてる
6.常識を疑うことから、新しい考え方やアイデアが生まれる
7.事前の研究が万全な人は、私にとって手強い人だ

第3章 勝負に生かす「集中力」
1.深い集中力は、海に深く潜るステップと同じように得られる
2.集中力を発揮するには、頭の中に空白の時間をつくることも必要である
3.人間は、どんなに訓練を詰んでもミスは避けられない
4.私が対戦する相手はいつも絶好調で、やる気を引き出してくれる
5.プロの将棋は、一手の差が逆転できる想定の範囲内である
6,感情のコントロールができることが、実力につながる
7.わき上がる闘争心があるかぎりは、私は現役を続けたい

第四章 「選ぶ」情報、「捨てる」情報
1.パソコンで勉強したからといって、将棋は強くなれない
4.創意工夫の中からこそ、現状打破の道は見えてくる
5.将棋は駒を通しての対話である。お互いの一手一手に嘘はない
8.コンピューターの強さは、人間の強さとは異質なものだ

第五章 才能とは、継続できる情熱である
1.才能とは、同じ情熱、気力、モチベーションを持続することである
4.「これでいい」という勉強法も、時代の進歩によって通用しなくなる
5.プロらしさとは、力を瞬間的ではなく、持続できることだ
6.将棋の歴史には、日本が世界に誇れる知恵の遺産がある

おすすめできる本である。



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2009年11月23日

東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法 

501回めの投稿にあたっての所信表明

今回が501回めの投稿だ。5年で500回というのは、多いようにも見えるが、少ないとも言える。

1回の投稿で、メインの本の長いあらすじと、サブの本の短い紹介、それと関連する本数冊を掲載しているので、いままで紹介した本は1,000冊以上、つまり年間200冊以上になる。

週5〜7冊読んだりオーディオブックを聞いたりしているので、読む本は年300冊程度になる。

中にはあらすじを紹介するまでもない”スカ”の本もあるが、年に200冊のあらすじでは「あらすじ検索サイト」と銘打つには少ないと思う。世の中に出回っている本はどれだけあるのかわからないが、200冊では本当に誤差の範囲だ。

このブログは”書評ブログ”ではない。書評なら「読んでいない本について堂々と語る法」に書かれていたように、極端な話、全く本を読まずに目次や帯だけ読んでも書ける。

しかしあらすじはそうはいかない。すべて読んで内容を自分なりにまとめないとあらすじは書けないのだ。

だからどうしても生産性は落ちるが、それでも500回達成で満足せず、1,000回、2,000回を目指して、もっとペースを上げるべく努力する所存である。

東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法東大家庭教師が教える頭が良くなる勉強法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2008-08
おすすめ度:4.5
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東大理III出身で、アルバイトで家庭教師や塾講師をやった後、アルバイトが本業となり、結局受験生を教えることを職業にしてしまった吉永賢一さんの本。

会社の勉強家の友人に勧められて読んでみた。

吉永さんも小学生の頃(!)カーネギーの本に影響されたそうだ。久しぶりに出てきたカーネギー信者だ。

吉永さんは偏差値93だったという。「東大家庭教師…」シリーズは、「記憶術」と「読書術」が出ているので、今度読んでみる。」

東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法東大家庭教師が教える 頭が良くなる記憶法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-02-20
おすすめ度:4.0
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東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法東大家庭教師が教える 頭がよくなる読書法
著者:吉永 賢一
販売元:中経出版
発売日:2009-07-31
おすすめ度:4.0
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東大理IIIというと、文系・理系を含めて東大の最難関学科で、東大で唯一専門課程が決まっている学部だ(他の学部はまず2年間教養学部に入ってから専門学部に進学振り分けする)。

筆者も理IIIの友人がいるが、エキセントリックというか、ちょっと変わった人が多かった。しかし、この本の著者の吉永さんはまとものようだ。


成績を上げる3つの要素

吉永さんは今まで1,000人以上の生徒に勉強を指導してきた経験をふまえて、成績を上げるには次の3つの要素が必要だと語る。

1.覚える(暗記)
2.わかる(理解)
3.慣れる(練習)

3つの要素のどれが欠けてもダメで、このサイクルを繰り返すことで勉強が高速化する。

ちょっとずつ毎日覚えて、音読なども取り入れて何度でも繰り返すのだ。

吉永さんは本は300回を目安に読む。気に入った本は1,000回読むという。パラパラっとめくって、気になった部分だけ注意深く読むのだという。


実戦的なアドバイスが満載

受験のプロなだけに、実戦的なアドバイスが多い。筆者なりに整理した吉永さんのアドバイスは次の通りだ。


<試験のためのアドバイス>

★わからない問題は無視する

★速くやることを意識する

★模試は結果は無視、復習はしっかり

★カンタンな問題から解いていく

★1問あたりの制限時間を決める

★最後の5〜10分は見直しに使う(新しい問題を解くより点を伸ばせる)

★計算はなるべく暗算する

★論文は3つのネタからふくらます


勉強のためのアドバイス

★どんどん間違える

★こま切れの締め切りで集中力を高める

★「何もしていない時間」を勉強時間にする

★参考書はまず折って汚す

★問題集には「カンタン」と書く

★ノートは後から見てもわかるように書く(これは筆者は反省しなければならない。後からメモに何を書いたのか読めないことが多すぎる)

★ノートに書くのは完結した文章


心構えについてのアドバイス

★人に教える。相手の質問に答える(実はこのブログも本のあらすじを人に伝えて、知識を自分の血や肉にするために書いているものである)

★「つまり?」、「もっというと?」という質問を連発して自分の理解度を確認する。(まさにロジカル・シンキングと同様の手法だ)

ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)ロジカル・シンキング―論理的な思考と構成のスキル (Best solution)
著者:照屋 華子
販売元:東洋経済新報社
発売日:2001-04
おすすめ度:4.0
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★やる気が起きない時には、自分の呼吸を観察する(呼吸を感じることで「生きる力」を実感できるのだと。面白いテクニックである)。

★自分に起こったことは、自分に原因があると考えよ(他人や環境のせいにした時点で成長はストップする。自分を変えるという発想を持つのだ)。

★すべてをポジティブシンキングで。

★「現状を受け入れる」ことが成績アップの最初のステップ。

★カンタンを口癖にする。

★感謝する。ほめる。

★定期的に成果をチェックし、記録する

★1秒ルールでさっさと決断し、集中力を高める

★練習での間違いはよろこび、本番での間違いは悔しがる


頭が良くなるのかどうかわからないが、吉永さんの書いていることはオーソドックスな勉強法ばかりで、すべて「腑に落ちる」。

唯一エキセントリックなのは、本を300回、気に入った本は1,000回読むという点だが、これは今度紹介する宇津木妙子さんの講演を聞いた時になるほどと思ったことと一致する。

宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか (文春新書)宇津木魂 女子ソフトはなぜ金メダルが獲れたのか (文春新書)
著者:宇津木 妙子
販売元:文藝春秋
発売日:2008-10-16
おすすめ度:5.0
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練習は毎日繰り返しやるものであり、練習の目的も毎日繰り返して教え込むのだと。

宇津木さんは「私は頭が悪いから毎日覚えないと忘れる」のだと謙遜して言っていたが、切り返す刀で、会場の出席者に質問した。

「今年御社の社長の年頭の目標は何でしたか?これから当てるから言ってください」

会場が凍り付いた。まさに宇津木さんにガーンと気合いを入れられた。

社長の年頭の挨拶は年初は覚えていたし、今も漠然とは覚えているが、スラスラ言えるほど頭に入っている訳ではない。それでは覚えていないのと同じことなのだ。

吉永さんの言いたいこともたぶん同じだろう。反復練習、重要なことは毎日でも繰り返し、何百回でもやる。

筆者が尊敬するコンサルタント新将命さんの言う「コツコツカツコツ(コツコツ=勝つコツ)」だ。

それが成績が上がる秘訣だ。


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2009年11月21日

投稿500回記念! 奇跡のリンゴ こんな面白い本ひさしぶりに読んだ

このブログの投稿も、いよいよ500回となった。

2005年1月にこのブログを書き始めて5年で500回なので、大体週に2回のペースであらすじを紹介してきた。

500回記念は、「奇跡のリンゴ」だ。

こんな面白い本ひさしぶりに読んだ。500回記念にふさわしい本である。

奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録奇跡のリンゴ―「絶対不可能」を覆した農家・木村秋則の記録
著者:石川 拓治
販売元:幻冬舎
発売日:2008-07
おすすめ度:4.5
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NHKの「プロフェッショナル仕事の流儀」でも取り上げられた青森県の無農薬リンゴ農家の木村秋則さんの苦労を描いたノンフィクション作品。



NHKの番組のキャスターの茂木健一郎さんのブログ、クオリア日記にも木村さんのことが紹介されている。木村さんの歯の抜けた笑顔が印象的な表紙の本だ。

茂木さんの発案で、この本が出来た経緯もあり、茂木さんのブログではこの本のアウトラインがそっくりそのまま取り上げられている。木村さんがNHKの番組で語ったことをそのまま本にしている感じだ。

「マイクロソフトでは出会えなかった天職」も大変面白かったが、この本も非常に面白い。ほとんどノンフィクション小説といえる内容だ。


木村さんは1949年生まれ。巨漢相撲取りの岩木山で有名な岩木山で農家の次男として生まれ、リンゴ農家の婿養子となる。

奥さんが農薬過敏症で農薬に苦しめられたのと、ある時読んだ福岡正信さんの「自然農法」に惚れ込んで無農薬のリンゴ生産を決意する。

自然農法 わら一本の革命自然農法 わら一本の革命
著者:福岡 正信
販売元:春秋社
発売日:2004-08-20
おすすめ度:4.5
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それから8年間は苦労の連続だ。木村さんのリンゴ園は農薬をやめたので、リンゴの木は生気を失い、結局何年も生産ゼロが続いた。

お金がなく、家族にもみじめな生活をさせていた木村さんが、弱音を吐いて「もう諦めた方がいいかな」と言うと、おとなしい長女は色をなして怒ったという。

「そんなの嫌だ。なんのために、私たちはこんなに貧乏しているの?」

木村さん自身の「リンゴが教えてくれたこと」によると、木村さんの長女は次のように言ったという。

「お父さんのやってきたことはすごいこと。答のない世界でゼロから始めてここまで来た。」うれしかったと。

リンゴは木村さんの「公案」だ。「公案」については、「ビルゲイツの面接試験」のあらすじでも紹介したが、禅問答のことだ。

8年間努力して、結局失敗し、死に場所を求めてロープを持って岩木山の山奥に入ると、山腹に見事なリンゴ林が見えた。実は旧陸軍の軍馬の飼育場にあった椎の木林の見間違えだったのだが、人手が全く掛かっていないのに、雑草に囲まれた椎の木は健康そのものだったという。

木村さんは自分の畑とは全く違う刺激臭のするフカフカで暖かい土に気づく。土中に窒素があり余っていて、養分満点の土なのだ。

今までリンゴの木にばかり気を遣っていたが、土やリンゴの木の根っこには全く気を付けていなかった。それが盲点だったのだ。

自分の畑でもそれを再現しようと努力する。やわらかい土に植わっている木の根っこは、地中深く伸び、石ころだらけの畑で育つフランスボルドーのぶどうの様な話だ。まさにワインのテロワールだ。

terroir










出典:2009年11月12日の朝日新聞のボルドーワイン広告

それから数年木村さんの試行錯誤は続くが、努力が実って木村さんの800本のリンゴの木は蘇り、他にはない糖度のきわめて高い美味しいリンゴができるようになった。

とうとう木村さんはリンゴの木の声が聞こえるようになったのだ。木村さんは主人公は人間ではなくて、リンゴの木で、人間は単にリンゴの木の手伝いをしているに過ぎないと語る。それがわかるまで実に長い時間が掛かってしまったと。

東京白金台のフレンチレストランのシェ・イグチでは木村さんのリンゴのスープが看板メニューだという。木村さんのリンゴは2年経っても腐らないのだと。

木村さんが酔うと決まってする宇宙人に会って、宇宙船に乗った話とかも紹介されている。

まるで筆者の好きな未知との遭遇の一場面のようだ。



たぶん木村さんも現実と映画と渾然となっているのではないか?


害虫の顔を虫眼鏡で見た話も面白い。

リンゴの葉を食う害虫は、草食動物なので、つぶらなヒトミのすごくかわいい顔しているのだと。逆に害虫を食う益虫は、肉食動物なのでどう猛な顔をしていると。

ようやく熟れたリンゴが出来た時、木村さんはリンゴ箱を大阪駅気付で、自分宛に送った。「何で大阪かって?食は大阪にありって言うでしょう」

そのリンゴを大阪城公園でのイベントで売ろうとしたが、ほとんど売れなかった。しかしたまたま一袋買った人から手紙が届く。「あんな美味しいリンゴは食べたことがありません。また送ってください」

それからはうまくいったり失敗したりを繰り返したが、徐々にリンゴも安定し、毎年美味しいリンゴが採れるようになった。

最後にこの本のレポーターは木村さんをノアの箱船で有名なノアにたとえている。「私の船に乗りなさい」

木村さんはリンゴ生産の傍ら、全国で無農薬栽培を広める活動もしている。木村さんの農業支援活動は、木村さん自身が書いた「リンゴが教えてくれたこと」に詳しい。

リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)リンゴが教えてくれたこと (日経プレミアシリーズ 46)
著者:木村 秋則
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-05-09
おすすめ度:5.0
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木村さんは米の自然栽培も手がけ、全国で指導もしている。「米の自然栽培は難しくない」と。

木村さんの指導する宮城県の「加美よつば農協」のつくった自然米はすべて東京に本社を持つ清水精華堂霰本舗が買い付けたという。

自然栽培とJAS法に基づく有機栽培とは全然違うことも参考になった。有機栽培でつくった野菜や米は一番先に腐る。次がスーパーで買った野菜・米、そして一番原型をとどめたのは自然栽培ものだった。

自然のものは枯れていく、人のつくったものは腐るという。腐ることのない野菜を食べていれば、どれほど健康になるだろうかと。

食という字は、人に良いと書く。人に良くないものは食と呼ばないでくれと木村さんは語る。


あまりに面白い本なので、木村さんのホラやレポーターの脚色が相当入っているのではないかという気がして、木村さん自身の本も読んでみたのだが、書いてあることは基本的に同じだった。


こんな面白い本を読むのはひさしぶりだ。木村さん自身の「リンゴが教えてくれたこと」も参考になるが、食に警鐘を鳴らす結構カタイ内容なので、読書=エンターテイメントとしては幻冬舎の本が面白い。さすがヒットメーカーの幻冬舎だ。

読み始めたら引き込まれて一気に読んでしまう。是非一読をおすすめする。


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2009年11月18日

続ける力 司法試験の伊藤塾 伊藤塾長の本

続ける力―仕事・勉強で成功する王道 (幻冬舎新書)続ける力―仕事・勉強で成功する王道 (幻冬舎新書)
著者:伊藤 真
販売元:幻冬舎
発売日:2008-03
おすすめ度:4.0
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司法試験など資格試験の伊藤塾の伊藤塾長の勉強法の本。

以前紹介した「超凡思考」の共著者が伊藤さんだったので、読んでみた。

超凡思考超凡思考
著者:岩瀬 大輔
販売元:幻冬舎
発売日:2009-02-10
おすすめ度:3.0
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アマゾンのなか見検索に対応していないので、章立てを紹介しておく。この本の内容が或る程度推測できると思う。

第1章 「続ける」ことはなぜ難しい

第2章 「やる気:を続ける技術

第3章 一流になる人の学び続ける技術

第4章 勉強・仕事をやりとげる計画術

第5章 とっておきの記憶術

第6章 ピンチを切り抜け、事業を続ける

第7章 「やりたいこと」をやり続ける人生

第8章 「続ける」ことから「力」が生まれる


勝利するコツ

筆者も学生時代は3年、4年の時に挑戦したことがあるが、司法試験という何年も挑戦し続けないと合格できない特殊且つ難しい試験の予備校を経営しているだけあって、まずはあきらめないことを強く訴える。

もう少しで合格できるレベルのところに来ているのだから、あきらめずに続けよう、「もうダメだと思うときこそ、ゴールが近い」、「スランプになるのは、がんばっている証拠」なのだと。

何年も受験勉強を続ける必要があるので、まさに「やる気」を続けるコツを伝授している。それは変わったことではない。


コツコツカツコツ

基本は、筆者が尊敬するビジネスコンサルタント新将命さんの言葉をお借りすると「コツコツカツコツ」つまり「コツコツ=勝つコツ」だ。

伊藤さんは、ゴールからの発想、ゆっくり急げ、一流になる人ほど「基本」を大事にする、やること・やったことを「見える化」する、勉強も仕事もコツは「皿回し」などとこの本で説明しているが、基本は少しづつ毎日積み上げることだ。


毎日の積み上げはブログも同じ

筆者は読んで参考になった本の内容を備忘録として書き留めておくために、このブログを5年前に書き始めた。

今回が499本めで、次が500回めのエントリーとなるが、ブログを書く前と今とでは本の理解度が全然違う。

筆者は図書館を3ヶ所利用し、毎週5〜7冊の本を読み、大体1〜2冊のオーディオブックを聞いている。そして気に入った本だけを買っている。

ブログを書く前も週に3〜5冊程度の本を読んでいたので、本を読むスピードはあまり変わりがないが、本の理解度は全然違う。

伊藤さんの本でも、「覚えたことを人に話してみる」をとっておきの記憶術の一つとして紹介している。筆者も伊藤さんと同じ記憶術をこのブログで実践している。ブログにあらすじを書いてある本は、人にスラスラ説明出来るのだ。

これに対してブログを書く前に読んだ本の内容の記憶はふたしかなままだ。

たとえば最近の良い例が中谷巌さんの「プロになるならこれをやれ!」だ。

中谷巌の「プロになるならこれをやれ!」 (日経ビジネス人文庫)中谷巌の「プロになるならこれをやれ!」 (日経ビジネス人文庫)
著者:中谷 巌
販売元:日本経済新聞社
発売日:2006-09
おすすめ度:4.5
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現在はこの本は文庫になっているが、2003年10月に日経新聞社から出版された時に、図書館でリクエストしてすぐに読んだ。

読みやすく大変参考になったので、メモも取り、目次はコピーして保存していた。この本を中谷さんの「資本主義はなぜ自壊したのか」を読んだ時に、再度読み返してみた。

ところが、ブログにあらすじを書いていないので、ところどころ覚えてはいるが、とても本の内容を人に説明できるほど理解・記憶していないのだ。

ブログに書いて覚えることの効果をあたらめて認識した次第である。

5年間で500回のブログエントリーということは、ほぼ1週間で2回のエントリーということになる。「知識の宝庫」である本の知識を、自分の血になり肉にするためにも、これからも「コツコツ」あらすじを書いて公開していくつもりだ。


伊藤塾の大ピンチ

伊藤さんは創立10周年のタイミングで、伊藤塾を試験予備校から法科大学院にすべく賛同する大学も巻き込んで準備をしていたが、結局文部科学省の認可が得られなかった。

司法試験も公務員試験も受験者は毎年減っており、ダブルパンチだったが、逆に打開策として「原点回帰」を思いしらされたという。

伊藤さんは21世紀が終わる時に、21世紀に活躍した有能な人材を輩出した伊藤塾というところがあったと、みんなに言われるような伊藤塾にすることが目標であると。

たぶん伊藤さんの目標に現在一番近いのが、与野党の政治家、地方自治体の首長を排出している松下政経塾だろうと思う。


この本に書いてあることは、筆者自身は既に実践していることが多く、あまり参考にならなかったが、基礎の大切さ、あきらめずに続けることの大切さを思い出させてくれた。

手軽に読めるので、是非一度本屋で手にとってパラパラめくってみて欲しい。


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2009年11月16日

オバマ外交で沈没する日本

オバマ外交で沈没する日本オバマ外交で沈没する日本
著者:日高 義樹
販売元:徳間書店
発売日:2009-06
おすすめ度:4.0
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元NHKワシントン支局長で、現ハドソン研究所主席研究員のジャーナリスト日高義樹さんのオバマ政権批判本。

多くの米国民の支持を得て誕生したオバマ政権の支持率も次第に下落し、現在は支持が52%、不支持が43%となっている。

obama job approval2





出典:http://www.realclearpolitics.com/

オバマ大統領がちょうど11月13日から23時間という短い時間ではあるが、日本を訪問した。

人なつこい笑顔と子どもの時に訪れたという鎌倉の大仏と抹茶アイスクリームの話で、たぶん日本国民には良い印象を残したと思うが、就任1年目の成果といえば、プラハでの核兵器廃絶を目指す宣言でノーベル平和賞を受賞した他は、これといってないのが現実だ。

米国の内政・外交ともにオバマ大統領のいわばメッキがはげてきた感があるが、それにしてもこの本の帯のように「北朝鮮にミサイルを撃たれ放題!中国にもへつらう!無能なオバマのアメリカが日本を滅ぼす!」と過激な言葉でオバマ政権を批判している本は珍しい。

ハドソン研究所は松下幸之助の本でも書かれていたハーマン・カーンという未来学者が開設したシンクタンクで、保守派(=共和党)の牙城である。オバマ政権にはいわば敵対するシンクタンクなのだと思うが、それにしても日高さんのオバマ攻撃の舌鋒は鋭いものがある。

この本の前書きで日高さんはこう言い切っている。

「オバマ大統領は、アメリカでも日本でも圧倒的な人気があるが(この本が書かれたのは2009年前半)、彼のなかにアメリカの理想をみることはできない。オバマ大統領はアメリカ政治の駆け引きに通じ、演説と宣伝に長じている政治家にすぎない。」

「オバマ大統領の景気回復策は失敗する。(中略)問題はオバマ大統領の外交である。オバマ大統領とその政権による国際政策や軍事政策はこれまでの世界を一変させる。その結果、日本が苦しい立場に追い込まれることは必至である。」

このブログでオバマ大統領の著書を紹介し、候補者の段階から応援してきた筆者としては、日高さんの評価は厳しすぎるような気がする。いずれにせよ日高さんの様な見方もあることがわかり、参考になった。


この本の目次

この本はアマゾンのなか見検索に対応していないので、目次を紹介しておく。どういう内容か想像できると思う。


第1章 オバマは北朝鮮と正式国交を樹立する
 1 北朝鮮のミサイル発射は失敗した
 2 オバマ大統領は6カ国協議には戻らない
 3 クリストファー・ヒルはなぜブッシュを裏切った
 4 北朝鮮戦車部隊はいまや脅威ではない
 5 オバマは北朝鮮を承認するか

第2章 オバマは日本防衛に関心がない
 1 中国のミサイルが在日米空軍基地を狙う
 2 在日米軍基地を遠くへ移動させる
 3 アメリカ空軍は日本を離れていく
 4 マラッカ海峡のパトロールをやめるのか
 5 アメリカ国民は強いアメリカを望んでいない

妥3章 オバマの中国戦略は失敗する
 1 中国の経済発展は地政学上限界だ
 2 オバマ大統領は中国経済を頼りにしている
 3 オバマ大統領は中国にへつらっている
 4 オバマは台湾を守らない
 5 アメリカ軍が東シナ海と日本海から追い出される

第4章 オバマは中東から追い出される
 1 アフガニスタンはオバマのベトナムになる
 2 パキスタンの核兵器が危ない
 3 オバマはアメリカ軍をイラクから引き揚げることができるのか
 4 イランは中東のすべてを支配しようとしている
 5 中東はさらに混乱する

第5章 オバマには世界戦略がない
 1 オバマ大統領は軍人に嫌われている
 2 オバマ政権には世界戦略の専門家がいない
 3 世界は核兵器であふれることになる
 4 オバマは国連を腐敗させる
 5 オバマ大統領は保護貿易をおしすすめようとしている

第6章 日本はどうする
 1 ドイツとロシアが同盟体制をとる
 2 2010年代は地政学的対立の時代になる
 3 日本の国会は国権の最高機関ではない
 4 日米関係はどう動いてきたか
 5 優れた指導者を選ぶことは核兵器をつくるよりも難しい


あまり詳しい中身を紹介する気にならないので、この程度にしておくが、いくつか気になる日高コメントを記しておく。

★ブッシュ政権の6カ国協議代表だったクリストファー・ヒル氏は、まんまとイラク大使に栄転した。ヒル氏はブッシュ大統領を裏切った。

★オバマ大統領の政治的なモットーは「考えられないことを考える」だという。太平洋戦争で日本を初めて空襲したドゥリトル少佐を高く評価しているのだと。爆撃機を空母に乗せ、空襲するという奇襲攻撃は、山本五十六を報復のためミッドウェー決戦に向かわせたのだと。



★アメリカが恐れているのは、アメリカの通信衛星が中国によって攻撃を受け、通信機能が破壊されることだ。

★ビジネスだけに集中させてきた日本をアメリカが軍事的に守るのは当然であるというのは、共和党の考え方だ。オバマ大統領は日米安保条約によって日本の安全を維持することがアメリカの国益に直接つながるとは考えていないようである。

★世界経済不況のなかで、アメリカ国債を2兆ドルも持っている中国しか頼りにならないため、オバマ政権は中国には言われ放題だ。温家宝首相は「アメリカ人は貯金をしなければならない。ドルの信用を高めなければならない」と言っている。これに対しアメリカは中国の人権弾圧批判をやめ、迎合姿勢を示している。

★オバマ政権の商務長官は、アメリカで最も中国寄りのゲーリー・ロック前ワシントン州知事で、ヒラリー・クリントン国務長官も中国から莫大な献金を受け取っていると言われている。

★オバマ大統領はグアンタナモ基地に収容されているテロリストをアルカイダのメンバーが大統領をやっているイエメンに戻そうとしている。

★オバマ大統領はアメリカの労働組合を保護するために、NAFTAなど自由貿易に反対している。

★オバマ政権の通商代表に貿易を知らない黒人ロン・カーク元ダラス市長を任命したが、この任命はオバマ大統領が国際貿易など全く考えていないことを示している。

★世界全体を客観的に見渡せば、100%に限りなく近い確率で東京オリンピックは実現しない。(この本は6月末の出版だ)

★「平和は与えられるものではない。勝ち取るものだ。軍事力を持つのは平和を維持するためだ。平和はタダではない。」この世界の常識を日本人はいまだに理解していない。

★日本人が世界の現実を見据えれば、国家と国民が無事に生存を続けるためには、憲法と日米安保条約を変える必要があることを理解することは難しくないはずだ。しかし、そう考える指導者がいない。


最後の日米安保条約見直し、日本再(核?)軍備論で、日高さんの本音が見えた感じではある。


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2009年11月15日

太らない教室 東大石井教授のメタボ年代向けダイエット本

太らない教室―正しいダイエットを知るための“やさしい科学”太らない教室―正しいダイエットを知るための“やさしい科学”
著者:石井 直方
販売元:情報センター出版局
発売日:2009-10
おすすめ度:5.0
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「スロトレ」が大人気となり、テレビなどで頻繁に登場している東大石井直方教授のメタボ年代向けダイエット読本。

このブログでも石井教授の「スロトレ」「一生太らない体のつくり方」、「一生太らない体のつくり方 スロトレ実践編」、加圧式トレーニング理論トレーニング理論などの本を紹介しているが、今までの本はどちらかというと女性向けのダイエット本や松阪大輔などプロアスリート向けのトレーニングの本が多かった。

この本はメタボ年代、特に中年男性に向けたダイエット本だ。

最初のページに「太らない教室・事前チェックテスト20問」がある。

太らない教室












出典:本書1ページ

筆者は石井教授の1年上なのでトレーニング歴37年の自称「トレーニングのプロ」ではあるが、この常識問題は結構出来なかった。答えはアッと驚くほど単純なものだ。

答えを公開してしまうと石井教授にしかられそうなので、書店で本を手にとって2ページめを見て欲しい。

筆者は最近は全身の筋力(特に腰痛予防のため背筋と腹筋のバランス)と心肺機能強化のために毎週1.5キロ クロールで泳いでいるが、この本を読んでまたウェイトトレーニングをやろうという気が起こった。


食事抜きダイエットは逆効果

この本で石井教授は、朝食抜きダイエットやご飯やパンを食べない主食抜きダイエットなどを、科学的根拠のないダイエットとして警鐘を鳴らす。

絶食したり、朝ご飯を抜いたりすれば、体重は落ちる。しかし絶食を続けると基礎代謝が落ちて省エネモードとなり、エネルギー消費量が多い筋肉が真っ先に落ちる。

絶食などで筋肉を落として基礎代謝が減ってしまうと、今度はやせにくい体質になり、かえって逆効果だ。やはりダイエットの基本は筋肉をつけて、基礎代謝を上げ、太りにくい体質に転換することだ。

日本人女性を対象とした調査で、22歳から27歳までの5年間で体の組成がどう変化したかを調べたら、体重は2キロ減っていたが、筋肉が実に5キロ減り、脂肪は逆に3キロ増えていたという。

これが食事抜きやサラダのみダイエットなど、思い違いダイエットの結果だ。


断食ダイエットの疑問(筆者の意見)

最近石原結実さんの断食とか朝食抜き療法の本をいくつか読んだ。

「石原式」血液をサラサラにする健康法―ガン、動脈硬化、糖尿病よ、さようなら (光文社知恵の森文庫)「石原式」血液をサラサラにする健康法―ガン、動脈硬化、糖尿病よ、さようなら (光文社知恵の森文庫)
著者:石原 結實
販売元:光文社
発売日:2009-09-08
おすすめ度:5.0
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石原さんの体温を上げて免疫力を上げるという考えには納得するが、断食はダイエット法にはなりえない。

石原式かんたん断食ダイエット―体の毒素を出して、きれいにやせる!石原式かんたん断食ダイエット―体の毒素を出して、きれいにやせる!
著者:石原 結實
販売元:日本文芸社
発売日:2003-11
おすすめ度:4.0
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断食(といってもリンゴとにんじんジュースはOK)がぴったりハマる人もいるのかもしれないが、筆者は自らの経験から食事を連続してスキップしても筋肉が落ちるだけで、決して脂肪は減らないと思う。

特に年配の人が断食などやると、単に足の筋肉が落ちて、最悪の場合は歩行に支障を来すだけだ。断食は精神修業に良いのかも知れないが、それはダイエットとは関係ない。

以前も書いたが、筆者は学生時代スクワットで220キロ上げていたので、既製服は太ももが入らないため全く着られなかった。背広をつくっても、太ももがスレてひどいときは1〜2ヶ月でズボンの足の付け根に穴が開いてしまった。

それが会社に入って10年ぐらいしたら、LLサイズの既製服が着られるようになり、太もものスレはなくなった。

会社ではラグビーをやっていたので、体重は学生時代とそれほど変わらない85キロ前後だったが、最も筋肉量の多い脚・腰の筋肉がおちたからこそ、既製服のズボンが着られるようになったのだ。

ウェストは細くなったらすぐに気がつくが、脚の太さの変化には、ほとんど気がつかない。だから知らず知らずのうちに脚の筋肉が落ちて、基礎代謝が落ちて太りやすい体に変わってしまうのだ。


低糖質ダイエットの危険

低糖質ダイエットは脳にエネルギーが行かなくなる。そうするとやる気を失い、糖分を供給するために筋肉が分解されてしまうというさんざんな結果となる。

筆者の仕事上の友人で、「プロティンダイエット」をやっていたアメリカ人が居た。その人は炭水化物は一切取らないで、ステーキとか脂っこいものばかり食べていたら、半年で20キロ近く体重は減ったが、日常生活に支障を来すほどにエネルギー不足に陥ったと言っていた。


正しいダイエットの基本

ダイエットは今の摂取カロリーからどれだけ減らすかがポイントであり、全部で何カロリー摂取するかは問題ではない。

自分の体重が安定しているということは、カロリーのイン・アウトがバランスしている状態なので、そこから1日にたとえばご飯1杯分の150カロリーを減らすということを積み上げていくのが適切なダイエットだ。

世の中には○○ダイエット法なるものが氾濫しているが、石井教授はこの本で、ダイエットの基本を明確に打ち出している。

1.体重ではなく脂肪を落とす
2.摂取エネルギーよりも消費エネルギーを増やす
3.基礎代謝を高める


この基本を忘れなければ、誰でも体質改善ができるだろう。


基礎代謝を上げて太りにくい体に

この本ではスロトレ、加圧式トレーニングなど、筋肉トレーニングで基礎代謝を上げ、太りにくい体に体質転換することの効用を力説している。

筋肉トレーニングは週2回でいいという。スロトレあるいは加圧式なら腕と足とで15分程度で3セットできるので、誰でもトレーニングが始められると思う。


ドローインとバキューム

最後に石井教授はとっておきの腹を引っ込める簡単なトレーニングを紹介している。

それはたんにギューッと腹を引っ込めるだけのことだ。最低30秒、ベルトの穴が一つ減っている状態をキープする。これがボディビルダーもやっているドローインと呼ばれるトレーニング法だ。

さらに効果を上げるためには、息を吐いた状態で腹をへこますことだ。これはバキュームと呼ばれる。

これだけでも腹筋それと背筋のトレーニングになるという。一度30秒試して欲しい。結構キツイ。

いわゆるダイエット薬のなかでは、カプシエイトは辛くもなく、代謝を上げる効果があるという。


体重の増減で一喜一憂する気持ちはわかるが、太らない体質にするにはやはり基礎代謝を上げるトレーニングが最適である。

自分の反省も含めて、この本を読んでスロトレなど自宅で簡単にできるトレーニングで、体重ではなく、脂肪を落として欲しい。


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2009年11月13日

P&G式世界がほしがる人材の育て方 日本人初のVP和田浩子さんの本

P&G式 世界が欲しがる人材の育て方―日本人初のヴァイスプレジデ<br>
ントはこうして生まれたP&G式 世界が欲しがる人材の育て方―日本人初のヴァイスプレジデ
ントはこうして生まれた

著者:和田浩子
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2008-08-22
おすすめ度:3.5
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1977年(昭和52年)に当時のP&Gサンホームに総合職として入社し、1998年に日本人としてはじめて米国P&G本社のコーポレートヴェンチャー アジア担当ヴァイスプレジデントとなり、2000年にリタイアするまで、P&Gで数々のヒット商品のマーケティングを担当した和田浩子さんの本。

前回紹介した「超凡思考」の中でも和田さんのことが紹介されていた。

和田さんはP&G退社後、ダイソンの日本支社社長、トイザらスの社長を歴任した。現在はOffice WaDaを設立し、マーケティングコンサルタントとして活躍しており、ホームページブログも開設している。

筆者は2000年に米国オハイオ州シンシナティにあるP&Gの本社を調達ソリューションの関係で訪問したことがある。

調達のプロのマーケティングマネージャーがリーダーとなり、インターネットのツールを使いこなしているのが印象的だった。ツールを提供している会社の担当者よりも詳しく、自分で社内のツール導入研修も行っていると言っていた。

その後その人は独立して自前のツールをつくってP&Gの調達を支援していたが、現在はどうなっているのかよくわからない。

P&Gの最大の顧客はウォルマートだが、ウォルマートとは戦略的提携関係にあり、CPFR(Collaborative Planning Forecasting, and Replenishment)と呼ぶ売上情報の共有による自動在庫供給システムを稼働させている。ウォルマートは在庫を最小限に抑え、P&Gは自分で米国全土の売れ行きが直接わかり、双方にメリットがある。

ちなみにウォルマートの創業者サム・ウォルトンの「ロープライスエブリデイ(現在は「私のウォルマート商法」という題で別の出版社から発売されている)」を以前読んだが、ウォルマートの戦略的提携関係第1号はP&Gだが、対立している小売りと製造業という関係から、1987年まではP&Gの役員は一度もウォルマートを訪問したことがなかったという。

1987年にP&Gの副社長が共通の友人を介してサム・ウォルトンと一緒にカヌーでの川下りに行き、そこから共通の顧客を持つ2社での話し合いが始まった。すぐに両社の首脳が10名ウォルマートの本社のあるベントンビルに集まり2日間一緒に分析を行い、P&G/ウォルマートの共同チームをつくって情報の共有を始めたのだという。

私のウォルマート商法―すべて小さく考えよ (講談社プラスアルファ文庫)私のウォルマート商法―すべて小さく考えよ (講談社プラスアルファ文庫)
著者:サム ウォルトン
販売元:講談社
発売日:2002-11
おすすめ度:4.5
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P&Gは日本では花王、ライオンの後塵を拝しているが、世界では英国ユニリーバと並ぶ日用品のトップだ。

社外エクゼクティブに頼らず社内から首脳陣を育成するという不文律、社員を長期的に育てる人材育成、世界トップクラスの研究開発と一体となった強力なマーケティング、ITをフルに活用した販売や調達の合理化など、世界でもトップクラスの優良企業だ。


和田さんの経歴

和田さんは大分県に生まれて育った。裕福ではなかったが、教員の両親が教育熱心だったので小学校3年生から英語教育を受けていたという。大阪外国語大学で英語を勉強し、在学中に1年間英国に私費留学している。

たまたまバイリンガルセクレタリー募集という当時のP&Gサンホームの広告を見て、応募するが、セクレタリー歴何年という経験者ばかりで、セクレタリーにはなれなかった。しかし、ちょうどマーケティング部で女性のマーケッターが必要ということで、当時では珍しい総合職として入社する。


「和田さん、お茶当番よ」

ブランド・スペシャリストという肩書きで入社するが、一緒のフロアで働く秘書からは「和田さん、お茶当番よ」と言われた。

当時は珍しい女性総合職だったので、上司も和田さんがどうするか見ていたという。

和田さんは、「まあ、いいか」どうせ週1回程度のことだし、仕事で認められれば、そのうち変わるだろうということで、お茶当番を引き受けた。半年くらいで「和田さんはもういいよ」と言われたという。

和田さんはその後ブランドマネージャーになったときに、会社の給料をお茶くみなどに使うべきでないということで、マイカップの代わりにペーパーカップを導入し、次にベンディングマシンをいれさせたという。

たしかにそういう時代だった。筆者が会社に入った頃は、女性社員数名が毎朝、全員にお茶を配っていた。えらく昔のことに思える。課長や部長は午前中はもっぱら新聞を読んでゆったり過ごしていた。まさに隔世の感がある。


「ウィスパー」の成功

和田さんがブランドマネージャー、マーケティングマネージャー、ゼネラルマネージャーとして昇進した理由の一つが、生理用ナプキン「ウィスパー」の成功だ。

P&Gは米国では「オールウェイズ」というブランドを持っていたが、日本では商標の面から使用できないため、「ウィスパー」というブランドで立ち上げた。

「超凡思考」で岩瀬大輔さんが感心していたが、ドライメッシュシートによる「洗いたての肌着のような感覚」が消費者へのメッセージとして考え出された。それまでの「漏れない」という機能重視の生理用品から全く違ったキャッチフレーズだ。

これはP&Gの研究開発とマーケティングの総力を結集した商品で、「ドライメッシュシート」、羽根付きタイプ、超薄型、簡単にあけられる包装と次々に消費者に驚きと納得を与える新商品を送り出した。

どれも今や生理用品では当たり前になっているものだが、P&Gが始めて広めたものだ。

P&Gは後発だったので、他社が追随できないマーケティング手法をとった。顧客予備軍の小学校6年生女子60万人の性教育の時に無償で配布するというものだ。全部で数千万個の無料サンプルは前代未聞だったという。

P&Gでは「正しくて難しいことをやれ」というモットーがあるという。新入社員たちとブランドマネージャーの和田さんは、小学生や先生にインタビューしたり、マンガでパンフレットをつくったりして、他社が簡単にはマネできない初潮教育で商品を配るというしくみを作り上げた。

「ウィスパー」は発売後3年でトップブランドに成長したという。

ちなみに和田さんがP&Gをリタイアするときに、元部下と広告代理店が歴代の担当者の写真とコメント入りで1984年から2000年までの年表をプレゼントしてくれたという。

「ウィスパー」はP&Gの人材育成工場となり、さらにはアジア地区のP&Gからスタッフの研修を受け入れて「ウィスパーカレッジ」となった。

ハーバードビジネスクールでも、P&Gのパンパースとウィスパーは日本での成功事例として、「ウィニング・イン・ジャパン」というケーススタディにもなったという。


パンパースのV字回復

パンパースは高分子吸収体、ウェストモレギャザー、男の子用、女の子用、ディズニーキャラクターなどで、一時はトップブランドだった。

筆者の長男は1989年にアメリカで生まれたので、おむつはパンパースを使っていた。この辺の機能やミッキーマウス(女の子用はミニー)のキャラクターなどはすべて記憶がある。

一度長男を幼児用プールに連れて行って、おむつを付けたままでプールに入らせたことがある。おむつが水を吸ってかなり重くなっていたが、水は滴らなかった。高分子吸収体の吸収力に驚いた記憶がある。

しかし日本ではパンパースはパンツ型おむつの導入に遅れ、日本製品に推されてマーケットシェアは1桁台に落ち込んでいた。

そこで和田さんはアメリカから定性分析のコンサルタントを招聘し、数ヶ月間赤ちゃんと母親のインタビューなどを繰り返し、いままでの「モレない」という切り口から、まったく異なる赤ちゃんのスキンケアという切り口で、「パンパースさらさらケア」という商品を売り出す。

これで一挙にV字回復し、マーケットシェアを2桁台に戻したという。

この広告では、P&Gグループの戦略的パートナーである国際的広告代理店を切って、別の広告代理店にしたので、その広告代理店のトップがP&G本社にねじ込むという一幕があった。

なかなか本社のOKがでなかったが、乗り切って上記のような全く新しいコンセプトで売り出して成功した。


シャンプー

和田さんがブランドマネージャーとして担当したシャンプーは、リンス・イン・シャンプーの「リジョイ」、「ヘッド・アンド・ショルダー」(日本導入断念)、「パンテーン」そして、「ヴィダルサスーン」だ。

最後の「サロンの洗い上がり」が楽しめるという「ヴィダルサスーン」が起死回生のヒットとなった。


分析力

これは主にOJTを通じて学んだという。商品の売れ行きを手計算で分析していたら、アメリカ人の上司からは「これは仕事ではありません。仕事の始まりです」と言われたという。

それと繰り返し言われたのが、「目的は何ですか?」という質問だ。たとえばプレゼントキャンペーンのポスターなら、製品の認知度を上げたいのか、魅力的なプレゼントに注目して欲しいのか、締め切り間近という情報を伝えたいのかというような切り口だ。

まさにドラッカーのMBO(Management by Objective)の考え方だ。目標を設定して、目標を達成したかどうかで結果が決まり、評価も決まる。


実行力

実行力とは"Make IT Happen"の力で、自分で実行する力というよりも「みんなに納得して実行してもらう力」のことだ。プラニングとは別の力が必要となる。

そのためには「人を巻き込むためにヴィジョンを共有する」ことが重要だ。


人材育成

P&Gでは「自分の仕事を取られるような部下を育てろ」ということで、マネージャー全員がトレーナーでありコーチである。「魚の釣り方を教える」のだと。そして教えることで自分も成長するのだ。

人材評価も「ワーク・アンド・ディベロプメント」と呼ばれ、自分の成果と、部下をいかに育成したかで評価が決まる。

能力が上がるというのは、スティーブン・コヴィーが言うところの"Circle of Influence"が広がることで、全員の能力が上がると影響力が増すという好循環となる。


ワン・ページメモ

P&Gのスキルの一つにワンページメモがある。報告書や企画書は極力A4一枚にまとめ、さらにその冒頭1/3にエッセンスを簡潔に書くのだ。

マネジメントに効率よく情報を提供して決断に追い込むという視点でメモを書くのだと。

新入社員の頃は何度も書き直し、元の文章が残っていないこともよくあったという。今はメモを書くスキルの研修もあるのだと。

このブログで紹介したロジカル・ライティングの様な研修なのだろう。

ロジカル・ライティング (BEST SOLUTION―LOGICAL COMMUNICATION SKILL TRAINING)ロジカル・ライティング (BEST SOLUTION―LOGICAL COMMUNICATION SKILL TRAINING)
著者:照屋 華子
販売元:東洋経済新報社
発売日:2006-03-24
おすすめ度:4.0
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ちなみにこの本は非常に役に立つので、大学生の息子にも読ませた。是非おすすめする。


P&GのWCF(What Counts Factors)

P&GにはWCFといって、"What Counts Factors"というのがある。新入社員からCEOまで誰でも身につけることが求められているスキルだ。

・リーダーシップ

・実行力(イニシアティブを取る)

・優先順位をつけて仕事をする

・クリエイティブ力

・他人との効果的な協働

・戦略的思考と問題解決力

・コミュニケーション力

これに専門分野の熟練が加わる。


阪神・淡路島地震で試されたP&Gの組織力

1995年1月17日の阪神・淡路島地震で、P&G本社の入っていた神戸のビルは使用不能となった。そして国内で2ヶ所しかない工場の一つの明石工場も生産不能となった。

P&G本社スタッフがCNNを見て、アメリカから大阪のホテルを予約してくれ、家に帰れない人はホテルに泊まり、地震後4−5日でP&Gのトップマネジメントが大阪ヒルトンホテルで機能をはじめ、10日後、大阪のスカイビルの仮事務所で社員の半分の600人が勤務を再開した。

和田さんのメンターで、現在P&G本社の社長や会長は当時はP&Gファーイーストの社長などで、週末はバイクに乗っておむつや洗剤などP&G製品を持ってボランティアで被災地を支援していたという。

明石工場も世界のP&Gの技術者が終結し、30本ある生産ラインを1ヶ月で全部普及させた。


最後に和田さんはP&Gのゼネラルマネージャー研修で教わった3Eリーダーシップについて説明している。3EとはEnvision, Energize, Enableの3つだ。

「リーダーシップはポジションではなく、リーダーとしてみんなから受け入れられるビヘイビアだ」ということだ。

和田さんはP&Gの3Eを悪い3Eと対比して説明しているので、これは続きに掲載した。興味があれば見て欲しい。これらを一つ一つ練習していくことで会得できるのだと。筆者も反省すべきところが多い。自らのチェックリストとしても使えると思う。


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2009年11月09日

ロスチャイルド家と最高のワイン 

ロスチャイルド家と最高のワイン―名門金融一族の権力、富、歴史ロスチャイルド家と最高のワイン―名門金融一族の権力、富、歴史
著者:ヨアヒム クルツ
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2007-12
おすすめ度:4.5
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フランスの5大シャトーのうち、2つを持つロスチャイルド家の歴史とワイナリー経営をつづった本。

これがロスチャイルド家の紋章だ。

Rotschilds_arms







出典:別記ない限りWikipedia

前半はロスチャイルド家の歴史、後半はロンドンとパリのロスチャイルド分家が持つシャトー・ラフィット・ロートシルトと、シャトー・ムートン・ロートシルトの歴史を描いている。(ロートシルトはロスチャイルドのドイツ語読み)英語版Wikipediaが情報量が豊富なので、ところどころ英語リンクをいれた。

筆者はワイン好きなので、ほとんど毎日ワインをグラス半分くらい夕食の時に飲んでいるが、今まで漠然としか知らなかったロスチャイルド家の2大シャトー経営がわかって大変参考になった。

またロスチャイルド家をとりまく伝説の真偽のほどがわかった。

まずはロートシルトという名前だ。日本ではロートシルトを「赤い楯」と訳しているものが多いが、これは名詞の性を間違ったもので、男性名詞ならば「楯」だが、これは中性名詞なので「赤い表札」とでも訳すべきだと訳者は語る。

学生時代に第2外国語でドイツ語を習ったが、たしかに名詞には男性・女性・中性の三種類あったことを思い出した。

ロスチャイルド家の開祖は、18世紀半ばフランクフルトのユダヤ人街ゲットーに住んでいて、12歳で孤児となったマイヤー・アムシェルだ。マイヤー・アムシェルは商人となって頭角を現し、王侯貴族の御用商人として成功し、5人の息子を使ってビジネスをヨーロッパ規模に拡大する。

ロスチャイルド家の家系図(英文)

Rothschild_family_tree















長男のアムシェル・マイヤーはフランクフルト本家、次男のサロモン・マイヤーはウィーンの分家、そして最も羽振りの良かった3男のネイサンはロンドン分家、4男のカールはナポリ、5男のジェームズはパリ分家の開祖だ。この5分家でロスチャイルド金融財閥をつくっていた。

「ロスチャイルド家の5人兄弟は、ワーテルローの戦いの結果をいち早く入手し、巨額の富を築いた」という伝説があるが、これは真偽のほどは疑わしいという。

戦いの結果はたしかにロスチャイルド家にいち早く届けられたが、ネイサンはその数日前に戦争の継続を見込んでイギリス政府に金を貸しており、予測が裏目に出たという。

ともあれ19世紀にはロスチャイルド家は「王たちに君臨するユダヤ人」と人々に呼ばれ、人々からねたまれる存在となっていた。

ロスチャイルド家の財力を各国の王家は頼りにし、ロスチャイルド家は産業資本家として製鉄所、汽船会社などを支援し、鉄道建設を推し進めたので「鉄道男爵」と人々は呼んだ。

ロスチャイルド家の分家は男子のみの相続と、分家間のいとこ同士での結婚を繰り返し、キリスト教徒との結婚は厳しく禁じられていたという。芸術のコレクションと育成に熱心で、各分家では当時の最高級の芸術品のコレクションを保有していた。

アメリカや新大陸、アジア、アフリカにも進出し、アメリカの鉄道建設の起債の引き受けでロスチャイルド家は事業を拡大し、1875年にはイギリス首相ディズレーリと組んでスエズ運河を買収した。

20世紀に入ると2度の世界大戦、特にナチスの迫害で財産は奪われ、芸術品はナチスが没収し、ノイシュヴァンシュタイン城に保管していた。

シャトー・ムートンのオーナーのフィリップはナチスの逮捕から逃れて、徒歩でスペイン国境を越えて脱出したが、妻のリリーはフランス貴族の出身でユダヤ人でないので安心していたところ、ナチスに捉えられて収容所で殺害された。

ロスチャイルド家は現在も活躍しており、2003年にはロンドンのロスチャイルド銀行と、パリのロスチャイルド銀行が合併し、LCFロスチャイルドが成立している。

1994年にはフランクフルトのユダヤ人墓地に80人もの一族があつまり、初代アムシェル・マイヤーの生誕250周年を祝ったという。


最初にワインに投資したのはロンドンロスチャイルド家

最初にフランスワインに投資したのは、ロンドンロスチャイルド家のネイサンの3男のナサニエルで、1853年にシャトー・ムートンを買収した。ちなみにボルドーでのワイン生産はローマ時代に始まったと言われる。

今も生きているボルドーワインの格付けが決まったのは1855年なので、その直前にムートンを買収したナサニエルは、ムートンを一級に格付けさせようと画策する。格付けは紆余曲折を経た後で、当時の仲買人の価格をよりどころにして決定され、ムートンは一級の取引価格であったにもかかわらず、二級となる。

ナサニエルは、「われ一級たり得ず、されど二級たることを潔しとせず。われムートンなり」とぶどう園に掲げたという。

ナサニエルはパリ分家のジェームズの娘婿で、甥にあたる関係だが、ロンドン分家のナサニエルに先を越されて、パリ分家の総領ジェームズは憤激したという。そして13世紀からワインを製造する一級のシャトー・ラフィットを1868年入札で獲得する。この時の入札の競争相手はナサニエルで、ロートシルト両分家はワイナリーを巡ってまさに骨肉の争いを繰り広げたのだ。

パリ分家がラフィットを手に入れてからも、両者の近くにあるカリュアド買収で火花をちらすこととなる。次がこの本に冒頭に掲載されているボルドー地区そしてムートンとラフィットがある場所の拡大図だ。隣接していることがよくわかる。

ボルドー





出典:本書冒頭の地図

19世紀後半にはフランスワインの伝統種をアメリカ在来のフィロキセラ虫が根絶やしにしてしまう大事件が起こり、フランスのぶどうはフィロキセラに強いアメリカの台木に接ぎ木することで生き延びる。


ムートンの中興の祖フィリップ

シャトー・ムートンを押しも押されもしない第一位ワインに押し上げたのはフィリップの努力だ。フィリップは20歳でムートンに着任し、不正追放、シャトー元詰め化、ラベルに一流画家の絵を利用、普及ワインのムートン・カデ販売、そして一級格付け獲得に専念する。

ムートン・カデ ルージュ AOCボルドー 750ml(赤ワイン)
ムートン・カデ ルージュ AOCボルドー 750ml(赤ワイン)


ムートンのラベル一覧

Mouton labels




出典:http://www.theartistlabels.com/

一流画家にラベルを書いて貰う条件は、そのラベルのヴィンテージ五箱と、好きな年のヴィンテージ五箱だという。たぶん多くの画家が20世紀最高のヴィンテージと言われる1945年のヴィンテージを選んだのだろう。

ナチス占領時代に難を逃れてカサブランカ経由脱出するが、奥さんのリリーはフランス貴族の出身にもかかわらずナチスに捕まり収容所で殺害されてしまう。戦争中のフランスワインのことは、「ワインと戦争のあらすじ」に詳しいので参照して欲しい。

他の四大シャトーとは五人クラブを結成し、協調関係を保ってきたが、1950年代に突如ムートンは仲間はずれにされる。一級でないからという理由だが、どうやらラフィットを持つパリロスチャイルド家の差し金のようだった。

フィリップは怒り心頭で、各方面に働きかけ、ムートンの格付け変更に力を注ぐが、格付け変更を勝ち取るためにはそれから20年の歳月を要し、1969年のポンピドー大統領就任で動きが出る。ポンピドーは以前ロスチャイルド家の会社の社長を務めていた。そして1973年当時農業相だったジャック・シラクよりついにムートンを一級に昇格させるという省令を受ける。

これでムートンのモットーは変わった。1973年のラベルに刻まれた新しいモットーは「われ一級なり、かつて二級なりき、されどムートンは変わらず」だ。

このブログでも紹介した1976年の「パリスの審判」のフランス人ワイン専門家9人によるブラインドテイスティングで、ムートンを含むフランスワインが、カリフォルニアワインに負けると、フィリップは審査員に電話して「私のワインになんて事をしたんだ。一級昇格に40年もかかったんだぞ」とどなったという。


ラフィットは管理人任せ

ロンドンロスチャイルド家出身のフィリップは、シャトームートンに住み、シャトーの経営を現地で手がけたが、ラフィットを持つパリロスチャイルド家はシャトーの経営は管理人に任せ、自ら経営に乗り出すことはなかった。

「ラフィット・ロートシルトは人頼み、ムートン・ロートシルトは俺頼み」と言われたという。

ラフィットは初めから一級、ムートンは実質一級と見なされていながらも二級というハンディがあったことが経営姿勢の差にも現れたのだろう。

ラフィットは1970年代になるとぶどう園に投資を強化する一方、貯蔵設備や醸造設備を近代化し、醸造マスターを代えた。1987年に建設したスペインの建築家リカルド・ボフィールの設計による回廊式貯蔵庫は、ワインセラー建築の傑作の一つとされている。


ムートンの系列ワイナリーと海外展開

ムートンとラフィットという同じロートシルトという名前がつく一級ワイナリーが二つあるので、系列がわかりにくいが、ムートンの系列のワイナリーは隣のダルマイヤック、シャトー・クレール・ミロン、エル・ダルジャン(白ワイン)とドメーヌ・バロン・ナーク、そしてフランスで最も売れている圧倒的な生産量のムートン・カデだ。

 【ボルドーフェア第1弾!】[1996] シャトー・ダルマイヤック / ポイヤック フランス ボルドー / 750ml / 赤
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経営者はフィリップの娘のフィリピーヌで、会社名はバロン・フィリップ・ド・ロートシルト社、2004年には世界で約3億本のワインを売り、1億7千万ユーロの収益を上げた。

ムートンの海外展開はカリフォルニアワインのモンダヴィとのオーパス・ワン。1981年の最初の人箱はオークションで2万4千ドルで売れたという。モンダヴィは創業者ロバート・モンダヴィの死後、ティムとマイケルの兄弟の不和により2004年に世界最大のワインメーカー、コンステレーション・ブランズに13億6千万ドルという巨額で売却されている。

【楽天最安値に挑戦!】オーパス・ワン[2004](赤ワイン)
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チリではコンチャ・イ・トロ社との合弁で1998年から生産しているアルマビーバが南米最高のワインの一つと評価されている。


ラフィットの系列のワイナリーと海外展開

ラフィットの会社はドメーヌ・バロン・ド・ロートシルト・ラフィット社(DBR社)で、系列はムートンと争って手に入れたカリュアドと1962年に手に入れた隣のデュアール・ミロン、そして1973年にエリー男爵の甥のエドモンが買収したシャトー・クレルクとその隣のシャトー・マルメゾンだ。

 シャトー・デュアール・ミロン [2004]
 シャトー・デュアール・ミロン [2004]


1990年にはポムロール地区のシャトー・レバンジルを買収し、隆盛著しい南フランスでもドメーヌ・ドーシェールと提携している。1995年からは「コレクション」と呼ばれる割安なボルドー産ブレンドワインを販売している。

エドモンはボルドー大学のエミール・ペイノーの指導で、シャトー・クレルクのブドウを植え替え、正確な温度調整のできる醸造設備に入れ替えたので、メドックでも一級シャトーのないリストラック地区のグラン・クリュではないブルジョワ級のワインながら、シャトー・クレルクはグラン・クリュなみの評価を受けることとなる。

エドモンはメドックの”アンファン・テリブル”(恐るべき子ども)と呼ばれ、エドモンが1997年に亡くなると、その息子のペンジャマンもシャトー・クレルクに力を入れ、2005年のヨーロッパ審査委員会の評価ではラフィットより上、ムートンより4位下の43位にランクされている。

ロスチャイルド家の新しい世代も父祖を同様に、ワイン作りに精力的に取り組んでいることがよくわかる事例だ。フィリピーヌは「家柄に頼らない一族が、成功する一族なのです」と語っている。

ラフィットの海外展開はチリのロス・バスコスの買収、カリフォルニアとワシントン州に10のぶどう園を持つシャロン・ワイン・グループとの経営参加、アルゼンチンのボデガス・カロと提携した「カロ」と「アマンカヤ」、ポルトガル、イタリアのワイン生産者との提携などだ。


フランスワイン業界の苦境

フランスの一人当たりのワイン消費は、かつての年間135リットルから68リットルに半減し、フランスのワイン業界はユーロ高による輸出不振もあって苦境にある。そんな中でフランスの保険会社AXAミレジムやルイ・ヴィトン、モエ・エ・シャンドンといった企業がワインに目を付けラトゥール始め数々の由緒あるシャトーを買収している。

1855年にグラン・クリュとして格付けされたワイナリーで、経営が変わらなかったのはわずか2社で、三級のシャトー・ランゴア・バルトンとムートンのみだ。ラフィットもロスチャイルド家が買収したのが1868年なので、同じように長年経営が変わらなかったと言えるだろう。

これからもロスチャイルド家はワインビジネスをファミリービジネスとして続けていくことだろう。

今まで断片的にしか知らなかったロスチャイルド家とワインのことがよくわかった。ロマネ・コンティは高すぎて無理する気にもならないが、ムートンやラフィットなら、ちょっと無理をすれば手が届く超高級ワインである。

シャトー・ムートン・ロートシルト[2003](赤ワイン)
シャトー・ムートン・ロートシルト[2003](赤ワイン)

シャトー・ラフィット・ロートシルト[2002](赤ワイン)
シャトー・ラフィット・ロートシルト[2002](赤ワイン)


ムートンやラフィットは今まで1−2度しか飲んだことがないが、次に飲める時のために予備知識として読んでおきたい本である。


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2009年11月06日

自分の値打ちを高める法 ビジネスマン必修講座

自分の値打ちを高める法 (WAC BUNKO)自分の値打ちを高める法 (WAC BUNKO)
著者:廣瀬禎彦
販売元:ワック
発売日:2009-09-19
おすすめ度:5.0
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アスキー、セガを経てアットネットホーム社長、コロンビア社長となり、現在はコロンビア名誉相談役の廣瀬禎彦さんの本。今年10月に121ワークスLLCというコンサル会社を設立予定とあるので、近々自らのコンサル会社を立ち上げる予定のようだ。

廣瀬さんは「IBMで学んだことアスキーで得たことセガで考えたこと」という本を2001年に出版しており、今回の本が2冊目だ。この本も現在読んでいるので、いずれあらすじを紹介する。

IBMで学んだことアスキーで得たことセガで考えたことIBMで学んだことアスキーで得たことセガで考えたこと
著者:廣瀬 禎彦
販売元:ワック
発売日:2001-10
おすすめ度:5.0
クチコミを見る

かつては先輩から後輩に伝承されてきたビジネス・ノウハウや、プロとしての考え方が、今の若いビジネスマンには伝承されていないと感じ、この本では廣瀬さんの経験を元にビジネスに役に立つエッセンスをまとめている。

先輩達からビジネスの基本を教えてもらっているつもりで読んで欲しいと語る。

アマゾンで登録されている表紙は何の変哲もないものだが、実際に本屋で並んでいる本は、次の写真のような廣瀬さんの写真入りの帯がついている。

hirose













実は先日、偶然地下鉄神谷町の駅で廣瀬さんをお見かけしたが、DJの小林克也さんに似ていると思った。

小林克也






出所;グーグルで「小林克也」で検索して表示された写真

廣瀬さんは慶應の工学部のマスターを卒業し、1969年にIBMにエンジニアとして入社。途中から営業に移り、IBM本社では広報も担当した。その後ソフト業界、ネット業界を経て、エンターテイメント業界に移ったキャリアの持ち主だ。

冒頭に書いたように、若いビジネスマンへのビジネスノウハウの伝承が目的で書かれた本なので、すぐに役に立つアドバイスが満載だ。


この本の目次

残念ながらアマゾンのなか見検索には対応していないので、ちょっと長くなるが目次を紹介しておく。

プロローグ 私はこうしてビジネス・ノウハウを取得した

第1章 自分の仕事の「価値」をつくる
 1. いま、自分の仕事の「価値」がどれだけあるか
 2. 「目に見えない価値」も大きな武器
 3.  「小さな価値」の積み重ねがブランド力に
 4. 「あなただけ」という価値

第2章 あなたがプロジェクトを任されたら
 5. 「仕様・機能・便益」を、うまくお客に伝える
 6.  商品開発の「思い」を必ず伝える
 7.  大幅なコストダウンを可能にする方法
 8.  ゴールを考えて、商品や計画をつくる
 9.  プロジェクトの進行管理はこうやる

第3章 「何を優先、徹底させるか」が最初の勝負
 10. デイリーコールは、すべての基本
 11. お客様の「不満」こそが「ニーズ」
 12.  最後の決め手は「情」になる
 13. まず、小さな成功体験をつくっていく
 14. 提案書には必ず理念やコンセプトをいれる
 15. 高いノルマを自分で決める

第4章 お客様の利益を考える交渉力
 16. 交渉では相手にまずメリットを
 17. 可能性とリスクの確認
 18. 組むならば、業界ナンバーワンと組む
 19. お客様の価値観に立つ

第5章 「売れない時代」のマーケティング
 20. マーケティングと営業はビジネスの両輪
 21. IBMで学んだ「イメージ」戦略
 22. 時代に応じた「コーポレート・キーワード」が重要
 23. 「コミュニティ・ワード」を重視せよ
 24. 「ユーチューブ」の活用を
 25. 仲間のリコメンドが重視される時代
 26. インターネット時代でも、やはり営業は「情報力」だ

第6章 リーダーとして組織を動かすために
 27. アメリカの「小学校3年生」と日本の「ガキ大将」に学ぶ
 28. 「段取り」が一番重要な仕事
 29. リーダーが肝に銘じておくべき8つのタブー
 30. いつも部下に声をかける
 31. 部下を楽しませるアフターファイブ
 32. 会議は「目的」をはっきりさせる

第7章 ベンチャー志向のあなたへ
 33. 「お金持ちになりたい」という気持ちを生かせ
 34. 「マーケットイン」と「プロダクトアウト」
 35. ともかく決断と行動を速く
 36. 「アマゾン」は既存のビジネスの組み合わせ
 37. いわゆる「スキマ」で勝負せよ
 38. 「MBA」は全く必要ない

第8章 使えるキャリアを目指せ
 39. 会社に依存はするな
 40. 自分の好きな仕事をすると、自然にスキルアップする
 41. スキルが身についていないうちは、積極的に残業する
 42. 変化の速い時代には、「経験」より「知識」が武器になる
 43. 得意分野で勝負すれば、転職は成功する

第9章 あなたも会社も、勝ち組になるために
 44. 会社の「利益」は、お客様のためでもある
 45. 「会社」と「自己」の価値を高める


あとがきによると、元々ジグソーパズルのようだった廣瀬さんのメモを編集してこの本にしたそうだが、章のタイトルも、それぞれの章の説明もわかりやすく整理されていて、このWACという出版社の編集者はなかなかなものだと思う。

良くできた目次なので、目次だけ読んでも廣瀬さんが懇切丁寧に若いビジネスマンに向かってノウハウを伝授していることがわかると思う。

詳しく紹介すると長くなりすぎるので、印象に残った部分を紹介する。


「教育に飽和点はない」

あとがきに出てくるが、IBMにいたときに教わった言葉だという。何歳になってもプロを目指すチャンスはあるし、プロになっても腕を磨き続ければプロとしての価値を高め寿命を延ばすことができる。

廣瀬さんは「プロ」というイメージは「職人」と言った方が廣瀬さんの好みにあっていると語る。

自分なりの原則、ルールが、まるで職人の道具箱のように蓄積されており、どんな職場に行っても道具を十分使いこなせるというのがビジネスのプロだ。

変化の速い時代は、「経験」より「知識」が武器となる。「知識」を得るためには本を読むことが一番効率的だ。経営書でも文学書でも良い。本をよく読んでおくと、経営に関する知識や、人間に関係する知識が豊富になって、キャリア形成に生きてくるはずだと。

筆者も全く同感だ。

しかしただ本を読むだけではダメだ。本の知識を自分のものとして消化しなければならない。メモでも良いが、筆者はこのブログを備忘録として書いている。是非備忘録としてのブログ活用をおすすめする。


マーケティングはインバウンド、セールスはアウトバウンド

筆者は米国にも合計9年間駐在し、長年ビジネスマンとしてキャリアを積んできたが、この整理ほどなるほどと思った言い方はない。廣瀬さんの言葉通り、何歳になっても学ぶべきことはあるものだ。

マーケティングのイロハも知らないのか!?と言われそうだが、マーケティングはマクロ「戦略」、セールスはミクロ「戦術」と漠然と理解してきたが、たしかにインバウンドとアウトバウンドと整理するとぴったりくる。

初めての米国駐在の時に、米国の一流メーカーでマーケティング・マネージャーを長年務めた人をセールス・マネージャーとして採用したが、オフィスに居てパソコンの前に座ったきりで、客を積極的に訪問しようとしない彼のパフォーマンスには今ひとつ満足できなかった。

採用するときに、米国人の人事責任者に相談したら、マーケティングができればセールスもできると言っていた。そういう人もいるのかもしれないが、長年マーケティングばかりやっている人にセールスをやれといっても、限界があったのだと思う。

廣瀬さんはマーケティングは空爆、セールスは地上戦にたとえている。


IBMで学んだイメージ戦略

ビジネスを進める上では、「実」(機能や品質)も重要だが、それだけではビジネスはうまくいかず、「虚」(イメージ)の部分もビジネスを成功させるためには不可欠である。

たしかにIBMは超一流会社で、社会貢献、フィランソピーに熱心な会社というイメージを筆者は持っているが、数ヶ月前にはIBMは東京の地下鉄のエスカレーター広告ジャックをやっていた。

たしかあれもイメージ広告だったと思う。イメージ戦略も重要ということが社内で徹底されているのだろう。

このブログでも「人類はみな兄弟」ということを実証したNational Geographicと組んだIBMのジェノグラフィック・プロジェクトを紹介したが、これも施策の一つだろう。 

この本では廣瀬さんがIBMを辞める前に担当したパソコンのアプティバの話が紹介されている。廣瀬さんは3年間のアメリカ本社勤務の後、帰国してパソコンを担当する。

当時の日本IBMでは「パソコンはスペックが低く、おもちゃみたいでチャチだから売れない」と一旦結論づけられていたが、廣瀬さんはIBMのアプティバが米国で飛ぶように売れていることを知り、帰国の時に自分で1台買って持ち帰る。

日本IBMの副社長に現物を見せて話すと、一旦はNOという結論がでていたにもかかわらずGOサインが出た。

当時のパソコン市場はNEC全盛で、IBMは後発だった。新しいイメージが必要なので、インターネット・パソコンというコンセプトで、当時15歳だったSMAPの香取慎吾をイメージキャラクターにつかって大成功する。

次のYouTubeのCM集の最初に出てくるのがIBMのアプティバのCMだ。




「実」の部分も必要だが、IBM製だから技術が優れているといっても、それだけでは消費者は買ってくれない。「虚」=イメージの部分も組み合わせることによって、はじめて買って貰えることを実感したと。


その他、「ユーチューブ」を使って無料で情報発信(廣瀬さんはユーチューブが出来たばかりの頃に、自分でチャンネルを持って情報発信していたので、ユーチューブのCEOがどんな人なのか見に来たという)、部下を飲みに誘う時にはエンターテインメント提供に徹しろ(会計も当然上司負担)、成功するには「金持ちになりたい」という気持ちを生かせ、など実戦的なアドバイスばかりだ。

ちなみに廣瀬さんが転職を意識したのは、IBM本社での大規模なリストラを目にしたからだという。このブログで紹介したルー・ガースナーの「巨象も踊る」で書かれている大リストラ時代にちょうど米国本社勤務をしてたようだ。

得意分野で勝負すれば転職は成功すると廣瀬さんは語る。


一つのトピックを具体例も入れて数ページにまとめているので、簡単に読めて大変参考になる。是非前記の目次も参考にして、本を手にとって欲しい。


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2009年11月05日

超凡思考 伊藤塾の伊藤塾長とハーバードMBA岩瀬さんの本

超凡思考超凡思考
著者:岩瀬 大輔
販売元:幻冬舎
発売日:2009-02-10
おすすめ度:3.0
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「ハーバードMBA留学記」で有名になった現ライフネット生命保険副社長の岩瀬大輔さんと、岩瀬さんが東大法学部在学中に通った伊藤塾の伊藤真塾長の本。

岩瀬さんは開成高校出身、東大法学部在学中に司法試験に合格したが、法曹職になることをやめ、新卒は3人しか採らないBCG(ボストン・コンサルティング・グループ)に就職、リップルウッドへの転職後、自費でハーバードビジネススクールを卒業し、優秀な成績で日本人として4人目となるべーカー・スカラーとなる。(元BCG日本代表、現ドリームインキュベーターの堀紘一さんが日本人初めてのべーカースカラーだそうだ)

留学当時書いていたブログを本として出版した「ハーバードMBA留学記」は大変参考になったので大学生の息子に渡した。

ハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にてハーバードMBA留学記 資本主義の士官学校にて
著者:岩瀬 大輔
販売元:日経BP社
発売日:2006-11-16
おすすめ度:4.0
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国籍のみならず、エンジニアや金融業界、メーカーなど、いろいろなバックグラウンドの学生が寄り集まって小グループをつくって勉強しているという話は、あの本で初めて聞いたが、なるほどと思った。

企業派遣のハーバードMBAは結構いるが、べーカースカラー(金時計組)という全体の5%の優等生になったという話も聞いたことがないし、新浪さんなど日本人が集まっての小グループはともかく、インターナショナルチームでの学習という話も聞いたことがない。

あるいは企業派遣留学生も当たり前に小グループで学習していたのかもしれないが、同じ授業を聞いてもバックグラウンドが異なる人が集まれば理解がより深まるだろう。

MBAのケーススタディは答えを出すことが目的ではない。答えよりも、一つのケースを様々な角度から分析して、いろいろな見方を知り、考え抜くことが重要であり、その意味では岩瀬さんが参加していた小グループでの勉強は、密度の濃い勉強をするために最適の方法だと思う。

岩瀬さんの本は最近文庫版が出たようだ。

金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)金融資本主義を超えて―僕のハーバードMBA留学記 (文春文庫)
著者:岩瀬 大輔
販売元:文藝春秋
発売日:2009-05-08
おすすめ度:3.5
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岩瀬さんは帰国後、インターネットで募集する生命保険会社のライフネット生命保険副社長となる。これからの保険の主流はインターネット募集となるという信念があるという。

その岩瀬さんが東大在学中に司法試験の予備校として通っていた伊藤塾の伊藤真塾長と一緒に書いた本だ。

開成高校、東大法学部、在学中の司法試験合格、BCGに新卒入社、ハーバードビジネススクールでトップ5%の優等生;と岩瀬さんの経歴を書いていくと、いかにも超秀才の様に思えるが、岩瀬さんがこの本で書いていることは実に基本的なことだ。

ひとことで言うと、ストレッチしてワンランク上の目標を設定して、それを目指してあきらめずにコツコツとにかくやり続けるということだ。

岩瀬さんも伊藤さんも読書の重要性を語っている

時間はすべての人に平等に与えられている。勉強でも何でも、やり続けることが出来る人が成功するのだ。

この本の帯にも書いてあるが、当たり前を愚直にやりぬくと、平凡は非凡に変わる。それがこの本の提言だ。

司法試験などの資格試験専門の伊藤塾の伊藤真塾長については、今まで本も読んだことないし、筆者とは年代がだぶらないので、名前しか知らなかったが、この本でカリスマ講師としての片鱗が伺えて参考になった。


伊藤さんの講師としてのテクニックを披露

伊藤さんが紹介している講師としてのテクニックは次の通りだ。

・何を伝えたいのか。強い意識があってこそ、技術が生きる。

伊藤さんは何百回という講演をこなしているが、相手が聞きたいと思うことしか伝わらないと実感していると語る。

コミニュケーションの本質は、「相手が聞きたいこと、知りたいこと、欲しているものしか伝わらない」という点にある。

・ロゴスとパトス、理性と情念、頭と心のバランスを取ることが重要。

話をするとは、役を演じることと似ている。相手の求めているものを与えるために、学者、易者、医者、役者、芸者、父母という具体的に6つの役割が話し手には求められている。

理性と情念のミックスで求められた役をこなすのだ。

・具体例と「3」の使い方。相手に合わせて記憶に残す。

講演などで話をするときの目的は、「理解」、「納得」、「満足・共感」そして究極は「感動」してもらうことだ。

「理解」してもらうための方法は、

1.受け手の思考のスピードに合わせて話すスピードを変える

2.聞き手が理解しやすいように「予測可能性」を演出する。
「今日いちばんお話したいのは○○です」、「みなさんに伝えたいことは3つあります」という様な具合だ。

話し終えたら、ポイントをおさらいして、次のテーマに移る工夫もしている。

3.具体例を多用する。

「こんなことって、ありますよね」という具体例で、聴衆の想像力をいかに刺激できるかが勝負だ。

「3」は安定した数字の一つなのだと。

・欲張らない。10のうち2伝われば十分。

欲張らずに、情報の優先順位をつけておくこと、そして大切なのは繰り返すことだ。

演説のうまかったヒットラーは「労働者の皆さん、仕事を与えます」と1時間の演説の中で何十回も繰り返したという。


・信頼を得る5要素。積極性・社交性・専門性・個人的魅力、そして客観性。

これらが「納得」してもらう5要素だ。少数派への配慮も怠ってはならないと。


・四隅と真ん中へのアイコンタクト。「1対1」で共感と親近感を。

「笑顔」とアイコンタクト、途中で上着を脱ぐのも効果的だ。「私も数年前まではわかりませんでした」とか「たしかにこれは難しいですね」と一緒に悩んでみせる。

「みなさん」という言葉の代わりに「あなた」という言葉を使ってみる。

オーケストラのように、会場のいちばん後ろの「あの人に伝わるように」という意識を持つことが重要だ。

・スピード、リズム、ジェスチャーと意外性で、集中力を維持。

緊張と弛緩を繰り返すために、話すスピードとリズムを変える。「間」をつくる。「何ページを見てください」と具体的な作業を促す。「みなさん、これはどう思いますか?」と質問する。

「これは試験に出ますよ」と言うと一瞬にして緊張感が高まるという。


筆者は仕事で10月に3回講演をしたばかりだが、この本を先に読んでいれば、もっと工夫できたのにと残念に思う。

伊藤さんは「続ける力」という本を出しているので、今度読んでみる。

続ける力―仕事・勉強で成功する王道 (幻冬舎新書)続ける力―仕事・勉強で成功する王道 (幻冬舎新書)
著者:伊藤 真
販売元:幻冬舎
発売日:2008-03
おすすめ度:4.0
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伊藤さんのパートでは、大学卒業以来ひさしぶりに「リーガルマインド」という言葉を聞いた。

実は筆者が就職活動をしていた時に、今の会社の役員面接で、「大学で何を学びましたか」という質問があり、筆者は「リーガルマインド」であると答えた。

そのとき副社長(その人は経済学部の卒業生)から突っ込みがあり、リーガルマインドとはどういうものか自分なりの理解を説明した。

結構冷や汗ものだったが、伊藤さんはこの本の中でリーガルマインドを「複眼的にものを見る手法」であり、「物事を多角的に見るのがリーガルマインド」だと説明している。

岩瀬さんは、「一つの物事を見るとき、ある一つの見方を絶対視しないで、多角的に検討するということ。見方や考え方には違う価値観がいろいろ内在していて、それを比較し考慮したうえで、そうした思考のプロセスを過不足なく、相手に伝えること」と説明している。

筆者はたしか「物事を様々な面から見て、いろいろな見方を比較考量して結論を下すという考え方が、リーガルマインドです」だと答えたような記憶がある。

どうやらほぼ正解のようだ。


岩瀬さんのパート

岩瀬さんのパートのなかで世界中のブログを調べて何語で書かれているブログが多いか調査したところ、一番多いのは中国語でも英語でもなく、日本語だったという。

世界で発信されているブログの3−4割が日本語なのだと。岩瀬さんの率直な感想は、「日本人はそれだけ溜めているのか」ということだと。

たぶん元データはTechnoratiのレポートだと思う。

blog post by language





出典:http://www.sifry.com/alerts/archives/000433.html

もっと新しいデータがないか探してみたが、今のところ2006年第4四半期のものしかみつからないが、これでも依然として日本語がブログ言語では第1位だ。

Slide0013-tm





出典:同じSifryさんのブログ

自分の思いを外に伝えたい、発表したくてうずうずしている人は潜在的に大勢いたのだ。


間違いやすい英単語

ちなみにどうでも良い話だが、最後の岩瀬・伊藤対談で、岩瀬さんがハーバード時代は、みんな青臭いことを語っていた、「生きる上でのお前のプリンシパルは何かとか、理想の人生は?…」という部分があるが、これは「プリンシプル」の間違いだ。

「プリンシパル」と「プリンシプル」は間違えやすいので、「プリンシパル」は「パル」=友達だから校長だと、アメリカ人は覚えるようにしている。

「校長=パル=友達」という発想は日本人にはないが、アメリカの学校の先生は校長先生でも子どもと友達のように親しくしている。

ピッツバーグに駐在している時代に、長男の小学校に行ったら、子どもが気軽に校長室に遊びに来ていることには驚いた。

アメリカの小学校には職員室はなく、先生は自分の教室に机をもっており、そこが先生のオフィスだ。だから子どもと先生は常に一緒なのだ。

ファカルティルーム(Faculty room)というのがある学校もあるが、学校の事務員が働くオフィスであり、到底教師全員が入れる日本のような職員室ではない。

大学は多分小中学校や高校とは異なるだろうし、全米の学校のことを知っている訳ではないので、あるいは日本風の職員室のある学校もあるのかもしれないが、アメリカでは先生=師ではなく、先生=パル=友達という発想がなりたつ教室の設定なのだ。


200ページ余りの本だが、奇をてらったところのない基本に忠実な提言ばかりなので、通勤途上で1時間もかからず読み終えた。

簡単に読めて参考になることも多いので、本屋で手に取ってパラパラめくってみるこをおすすめする。


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2009年11月03日

This Is It マイケル・ジャクソンの最後のリハーサル

マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・エディション(初回生産限定盤)マイケル・ジャクソン THIS IS IT デラックス・エディション(初回生産限定盤)
アーティスト:マイケル・ジャクソン
販売元:SMJ
発売日:2009-10-28
おすすめ度:4.0
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マイケル・ジャクソンの最後のリハーサルのドキュメンタリー映画、"THIS IS IT"を見た。



死の数日前までロンドン公演のためにリハーサルをやっていた時の映像だが、マイケルは元気いっぱいで、とても10年間もブランクがあるとは思えないエネルギッシュなステージだ。

マイケルと一緒に踊りたいということで、数百人のダンサーが集まり、オーディションで10名程度に絞られた。さすがに厳選されたダンサーばかりなので、リハーサルとはいえバックダンスもぴっちり決まっており、服装がラフなだけでそれ以外は本番のステージそのものだ。

映画ではあるが、マイケルのコンサートは実は初めて見た。

もう20年くらい前になるが、米国のピッツバーグに駐在していた時にマイケルの公演があり、何ヶ月も前からチケットを予約していたのに、ちょうどその同じ日に東京から出張者があり、行けなかったのは残念だった。

この作品は映画といっても迫力満点で、まるでマイケルのステージを見ているような気になる。

マイケルはステージの全ての演奏者を完全にコントロールしており、一人一人にリズムやスピード、コードなど細かい指示を与えて、いわばシンガー・コンダクター(指揮者)だ。

この映画はリハーサルという、いわば舞台裏を撮したものだが、だからこそマイケルの完全主義者ぶりがよくわかる。

今年6月に亡くなったマイケルをこんな形で見るとは複雑な気持ちだ。

映画なのに最後に観客席から拍手が起き、観客が口々にもう一度見たいと言っていたのは印象的だった。

当初10月28日から全世界同時に2週間限定で公開するということだったので、映画館も満員だった。

映画館によっては2週間を越えても延長公演があるようだが、いずれにせよ限定公開でもあり、できるだけ大きなスクリーンのある映画館で早めに見ることを是非おすすめする。

マイケルの最後の姿が心に焼き付くこと請け合いだ。


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2009年11月02日

火垂るの墓 オーディオブックで聞いてみた

アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)アメリカひじき・火垂るの墓 (新潮文庫)
著者:野坂 昭如
販売元:新潮社
発売日:1972-01
おすすめ度:4.5
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火垂るの墓 (新潮CD)
著者:野坂 昭如
販売元:新潮社
発売日:2001-07-25
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高校生の時に読んだ野坂昭如の「火垂るの墓」をオーディオブックで聞いた。

橋爪功さんの朗読だ。

電車の中で聞いていると、年甲斐もなくウルウルしてみっともないのではないかと恐れていたが、小説自体は涙がにじむことはなかった。

しかしこのオーディオブックの巻末についている野坂昭如さんの6分半にわたる談話にはぐっときた。

野坂さんは自分ではこの本を読めないのだと。

自分のことを飾って書いている。卑しい気持ち、死んでしまった妹に対する哀悼の気持ち、虚構の部分がヤリのように突き刺さってくるのだと。

神戸空襲で焼け出された昭和20年6月5日から妹が亡くなった8月21日まで、ほとんどまともなものが食べられなくて、妹が死んだ姿・形を見たときに自分の人生観が決まったという。

今度紹介するグラミンバンク創設者のムハマド・ユヌスさんは、自伝に次のように書いている。

「死に方はいろいろあるが、餓死は最も受け入れがたい死に方だ。餓死はスローモーションのようにやってくる。生と死の境がだんだんせばまり、生きているのか死んでいるのか分からない状態になる。餓死は静かにやってくるので、誰もが気が付かないうちに人は死んでしまう。」(筆者訳)

こういった死に方が戦地、そして内地でも終戦前後に起きた。野坂さんの妹もスローモーションのように餓死して息絶えたのだろう。

野坂さんは、「自分自身を甘やかして書いている。自分はあんなにやさしくなかった、妹の食べるものを奪って自分自身が生き延びた負い目がある」と語っている。

残酷な兄だということを隠して、食べ物をかっぱらって生き延びて、そのことを隠して飾って小説を書いて、カネを稼いで今贅沢をしているのだという。

この作品を語ることは苦痛ではあるが、物書きはその苦痛に直面せざるをえない。人によっては気が狂ったり、自殺したりするが、それは物書きの宿命なのだと。

なんとも含蓄のある著者談話である。

自分の作品について語る著者談話がオーディオブックの巻末についてくることは時々あるが、この野坂昭如さんの談話ほど感動したものはない。

野坂さん自身が非常に冷静に語っているところが、すごいところだ。

アニメや実写版になってDVDも出ているが、野坂さん自身の談話が含まれているCDも、機会があれば是非聞いて欲しい。

火垂るの墓 完全保存版 [DVD]火垂るの墓 完全保存版 [DVD]
販売元:ウォルトディズニースタジオホームエンターテイメント
発売日:2008-08-06
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

火垂るの墓 [DVD]火垂るの墓 [DVD]
出演:吉武怜朗
販売元:バンダイビジュアル
発売日:2009-03-27
おすすめ度:3.5
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昔読んだ作品を読み直す(聞き直す)のも、感動を新たにできて良い。

高校の時に読んだので、文庫本で一緒に収録されている「アメリカひじき」が何のことなのか、懐かしく思い出される。

(アメリカひじきが何かは、続きに書いておいた)

時には昔読んだ本を読み返すことも良い。その際にはオーディオブックの活用も是非おすすめする。



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