2010年06月30日

裸でも生きる2 今度はネパール織物のバッグ

裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)裸でも生きる2 Keep Walking私は歩き続ける (講談社BIZ)
著者:山口 絵理子
販売元:講談社
発売日:2009-10-01
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

バングラデシュのバッグ製造販売会社マザーハウス代表取締役の山口絵理子さんの自伝続編。

「裸でも生きる」はこのブログでも紹介した。山口さんの行動力には驚かされたものだ。

裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)裸でも生きる――25歳女性起業家の号泣戦記 (講談社BIZ)
著者:山口 絵理子
販売元:講談社
発売日:2007-09-22
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


この本ではバングラデシュのバッグ製造販売がテレビの「情熱大陸」で取り上げられたこと、バングラデシュの工場運営や、マザーハウスの従業員たちのその後が取り上げられている。



マザーハウスは東京入谷で一号店を開業した後、戸越、代官山、福岡、大阪そして新宿小田急百貨店の2階にも直営店をオープンした。

マザーハウスの仲間では、山口さんの慶應大学竹中平蔵ゼミの先輩でゴールドマンサックスを辞めて入社した副社長の山崎さんや、帰国子女でマザーハウスでインターンをした後三菱商事に入社したが、半年で辞めてマザーハウスに戻ってきたスタッフなどが紹介されている。

情熱大陸で紹介されたこともあり、HISのバングラデシュ人役員が注目し、マザーハウスのバッグ工場(マトリゴール:バングラデシュ語でマザーハウス)でのバッグ製造教室をバングラデシュツアーが始まったという。

しかしバングラデシュのバッグ生産も様々なトラブルに見舞われる。

バングラデシュの工場は順調にいったと思ったら、オーナーから急遽立ち退きを迫られる。やむなく劣悪なマンション工場の間借りを経て、現在の自社工場に移転する。

次に向かったネパールではもっぱら帽子に使われているダッカ織りというネパール特産の織物をつくる女性ばかりの工場を見つけ、ここの織物を使ったバッグ生産をもくろむ。

ネパールでもわずか2社しかないバッグ工場でバッグ生産を始めたが、工員の引き抜きを懸念する工場オーナーの妨害行為にあって、ネパールでのバッグ生産をあきらめる。

しかしネパール織りをなんとか生かすべく、インドのバッグ工場でバッグを生産するというやり方で日本に輸入を始め、小田急百貨店のバングラデシュ製バッグ店の隣にマイティガルというネパール織物のバッグショップを開く。マイティガルとはネパール語でマザーハウスのことだ。

ネパールはヒマラヤなど登山で有名だが、貧乏なバックパッカーが多く、観光業はあまり栄えておらず、5星ホテルなどはがらがらだという。

生活面でも、一日6時間くらいしか電気が供給されず、18時間は停電。

マオイストと呼ばれる毛沢東主義者派議長が2008年に首相となったが、小さな政党が22も集まって政府を構成しているので、政治も不安定、ストライキが多発し、毎日道路閉鎖もあるという。

以前「マイクロソフトでは出会えなかった天職」で、ネパールの学校に本を送るRoom to Read運動が紹介されていたが、ネパールの国情や町中の暮らしについては書いていなかった。

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になったマイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった
著者:ジョン ウッド
販売元:武田ランダムハウスジャパン
発売日:2007-09-21
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


バングラデシュの暮らしについても、2年間暮らした山口さんの「裸でも生きる」で初めて知ったが、ネパールの暮らしについても山口さんの本で初めて知った。

政治家や評論家が「生活者の視点」とよく言っているが、ネパールでもバングラデシュでも生活者の視点で観察していることが、山口さんのすごいところだ。

前作同様やたら泣く場面が多いところが気になるが、前作はほとんどなかった写真も多く掲載されており、興味深く読める。

バングラデシュの次はネパールというチャレンジ精神旺盛な事業展開についても好感が持てる。前作「裸でも生きる」と同様おすすめしたい本である。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。





  
Posted by yaori at 12:46Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月28日

ダーリンの頭ン中2 言語学の本といってもよい学習マンガ

ダーリンの頭ン中 2ダーリンの頭ン中 2
著者:小栗左多里&トニー・ラズロ
販売元:メディアファクトリー
発売日:2010-03-05
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

このブログでも紹介した「ダーリンの頭ン中」の続編。

ダーリンの頭ン中 英語と語学ダーリンの頭ン中 英語と語学
著者:小栗 左多里
販売元:メディアファクトリー
発売日:2005-03-04
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


トニーは最近はNHKのバラエティ番組「みんなでニホンGO!」にも出演していた。




今回は言語学の本と言ってもよいレベルの高さだ。

最初のイエスのジェスチャーが国によって違うという話は、話のネタとして面白い。

ブルガリアではイエスは首を横に振り、ノーは首を縦に振るという。

筆者は15年ほど前までは毎年アルバニアに行っていたが、アルバニアのイエスも、首を横に傾ける形だった。ブルガリアの横に振るというのも、アルバニアの首を横に傾けるというしぐさに近いのではないかと思う。

ダーウィンはイエス、ノーのジェスチャーを研究するために世界各国の宣教師に調査を依頼し、赤ん坊のおっぱいに対する反応から来ているという説を出したという。

アルファベットで要らない文字があるとか、キーボードの並びのQWERTYに対して、DVORAKというキーボード配列があるとか、言語オタクのトニーらしい話題が並ぶ。

エポニム」とは人の名前が言葉になったものだ。九官鳥は中国から九官という人が連れてきたから九官鳥という名前になったのだという。

合字」は〆(しめ)など「し」と「め」が組み合わさった物だ。"&"は"e"と"t"がk組み合わさった合字だという。

スプーナリズム」とは文字を入れ替える遊びのこと。「夏は暑いね」という代わりに「あつはなついね」というようなものだ。

"hypercorrection"(過剰修正)とは、「ベートーベン」を「ヴェートーヴェン」と直すように、間違いを直すつもりで、新たな間違いを犯してしまうことだ。

暦についてのうんちくも面白い。元々ローマ暦では10ヶ月しかなかったが冬の二ヶ月を付け足して12ヶ月にしたのだという。そしてシーザーの名前のユリウスをとって、Julyとし、アウグスティヌスの名前をとってAugustになったのだという。

またSeptemberは元々7,Novemberは元々9だったのが順番がくるって9と11になったので、トニーは間違いやすいという。

4時間起きて、20−30分寝るというUberman's Sleep Scheduleも紹介されている。Wikipediaによると、こういった仮眠法は軍隊で研究されているようだ。

エスペラント語の勉強をトニーが始めた話も面白い。エスペラント語は人造語だけに、発音とつづりが一致して、文法が単純で合理的でわかりやすいという。名詞は"o"で終わり、形容詞は"a"で終わるという。

マンガといっても、文字ばかりで今までのシリーズとは格段にうんちくが増えている。言語オタクのトニーの頭の中だけある。

マンガと思って読むとちょっとキツイかもしれないが、言語オタクのトニーの本と思うと納得できる本である。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。




  
Posted by yaori at 23:59Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月25日

日本は世界5位の農業大国 ベストセラーとなった農業の現状分析

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)
著者:浅川 芳裕
販売元:講談社
発売日:2010-02-19
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

月刊「農業経営者」副編集長の浅川芳裕さんの日本の農業の現状分析。

農業経営者 2010年5月号(171号)農業経営者 2010年5月号(171号)
販売元:農業技術通信社
発売日:2010-04-01
クチコミを見る

別の本に紹介されていたので図書館で借りて読んでみたが、気がついたらアマゾンでなんと売上100位前後に入っているベストセラーだった。筆者が今年になって読んでから買った数少ない本の一つだ。アマゾンの新書売り上げNo. 1で、ホリエモンが絶賛していると本の帯に書いてあった。

この本を読んで日本の農業政策について、政府もマスコミも信用できず、何を信用したらよいのかわからなくなった。

比較検証のために、「食品自給のなぜ」という農水省の食料安全保障課長が書いた本と、法政大学講師の書いた「食料自給率100%を目ざさない国に未来はない」も読んでみたので、それからの情報も織り込んであらすじを紹介する。

食料自給率のなぜ (扶桑社新書)食料自給率のなぜ (扶桑社新書)
著者:末松 広行
販売元:扶桑社
発売日:2008-11-27
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

食料自給率100%を目ざさない国に未来はない (集英社新書)食料自給率100%を目ざさない国に未来はない (集英社新書)
著者:島崎 治道
販売元:集英社
発売日:2009-09-17
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


国産農産物愛用キャンペーン

日本政府、農水省、そしてマスコミは「農家弱者論。国産農業危機論」で凝り固まり、石川遼などをつかったテレビCMで国産食品愛用を訴えている。



この広告は農水省が金を出し、電通の中に「食料自給率向上に向けた国民運動推進本部」を置いて有名タレントを使って広告を作っている。食品自給率向上のための農水省の予算は2008年度は166億円で、前年度の65億円から2.5倍になった。

しかし、この本を読んで、日本の食品自給率が41%で、世界の主要国で最低だと言うのが、そもそも恣意的な数字ではないかという疑問が起こった。

次が日本のカロリーベースの食品自給率の推移だ。

image21




そして次が世界主要国の食品自給率の比較だ。

image65466





出典:いずれも日本国内食品自給率ホームページ

農水省のホームページには「食料自給率の部屋」というセクションがあり、食品自給率アップが農水省の政策の目玉になっていることがわかる。

食品自給率アップについては、自民党や民主党も同じトーンでマニフェストで訴えているし、メディアもこの食品自給率を鵜呑みにしている。

ところがどっこい、この食品自給率の「カロリーベース」というのが、くせものなのだ。


日本独自のカロリーベースの自給率

カロリーベースの自給率とは次の数式だ。

(一人一日あたり国産供給カロリー)÷(一人一日あたり供給カロリー) 

しかしこの内訳は:

{(国産+輸出)供給カロリー}÷人口/{(国産+輸入ー輸出)供給カロリー}÷人口

なのだ。つまり分母は日本全体の供給量なので、当然大量に発生する食べ残し、消費期限切れの廃棄食品も含まれている。

ためしに数字を見ると、2008年は

1012キロカロリー ÷ 2473キロカロリー = 40%

筆者は消費カロリーも計れる体重計を持っているが、筆者の消費カロリーは大体1,850前後、つまり上記の分母は筆者の消費カロリーの1.5倍の数字なのだ。

実際の国民一人当たりの消費エネルギーを1,850キロカロリーとすると(分母)、分子をいじらなくても自給率は一挙に56%にあがる。つまりカロリーベースの自給率を上げるには食べ残しや賞味期限切れを減らすことが有効なのだ、

さらに分子の国内供給カロリーには、農家の自家消費や親戚・近所への提供は含まれていない。日本の農家のほとんどは兼業農家で、もっぱら自家消費用に野菜やコメなどをつくっているが、これはカウントされていないのだ。


カロリーベースだと自給率が低くなる要因

農家が米を生産調整でやめて、野菜や果実に切り替えると、売上は増えて供給金額は増える。ろころが、野菜はカロリーゼロに近く、果実の生産量は少ないので、国産供給エネルギーとしては大幅に減少する。

国のコメ減反政策に従って、農業経営者にとって合理的な産品の切り替えをやると、生産金額ベースの自給率は上がるが、カロリーベースの自給率は下がるのだ。

こういった分母を大きくして、分子を小さく抑える工夫があるのが、カロリーベースという日本と韓国でしか採用されていない自給率だ。他の国では、穀物輸入比率という指標はあるが、カロリーベースの自給率という比較はない。農水省の役人がせっせとFAOなどの統計を元に各国の自給率を計算しているのだという。

また肉、鶏卵、酪農品はエサを輸入に頼っていると、たとえ国産の産品でも国産から除外される。畜産品の自給率は金額ベースだと70%だが、農水省によるカロリーベースだと17%で、これが全体にも響いてくる。

たとえば石川遼がテレビCMで宣伝していた”卵かけご飯”。卵は当然100%国産と思ったら大間違い。カロリーベースの自給率では卵は10%と低くなる。鳥のえさはほとんどが輸入だからだ。

この卵の自給率については農水省の課長の「食品自給率のなぞ」にも書いてある。じゃあなぜ卵かけご飯を国産食品としてCMで宣伝するのかよくわからないところだ。

たとえ輸入のエサを使っていても、肉や酪農品は国産であることは間違いない。たしかに飼料の輸入が完全にストップしたら、生産に支障をきたすかもしれないが、それは日本でけではない。

昔と異なり農産物の貿易市場が巨大化している現在では、世界各国が自国の強い産品を生産し、自国が弱いものは輸入している。農産物の貿易が止まるという「戦時体制」を前提とした食糧自給率に何の意味があるのかと思う。


生産額ベースの食品自給率だと66%

こういった問題点があるので、生産額ベースの総合食品自給率を使えという声も有識者の間に強いという。もし生産額ベースの自給率を割り出すと、日本の食品自給率は66%になる。

要は数字のマジックなのだ。農水省が自分達の政策を通すために、都合の良い数字と計算式を作り上げている自作自演の食品自給率キャンペーンなのだ。

その証拠に、もともと自給率は1965年から生産額ベースで発表されていたが、1983年からカロリーベースでも発表され、1995年からはカロリーベースで最近まで統一されてきた。発表する数字のベースを意図的に変えていたのだという。

農水省の課長の本でも、食品自給率はカロリーベースと生産額ベースの両方が一つのグラフで示されているが、生産額ベースの自給率を使わない理由の説明はない。

日本の小学生の教科書でも自給率を高めてきたと紹介されている英国は、カロリーベースで農水省が計算すると着実に食品自給率を向上させてきているが、生産額ベースでは日本の自給率を下回るという。

気候の厳しい英国では日本の様に高価格の野菜とかは生産できない。

穀物の自給率は高いので、カロリーベースでは高くなるが、生産額ベースでは自給率は1991年の75%から2007年には60%と15%も下落して、日本を下回っていると浅川さんは指摘する。


日本は世界第5位の農業大国

この本のタイトルにあるとおり、FAOの統計から割り出すと一位の中国、それから順にアメリカ、インド、ブラジルと続き、日本の農業生産は約8兆円で、世界第5位となる。そして農家の所得は世界第6位だ。

「日本農業は弱い」なんて誰が言った?と著者の浅川さんは語る。

「農業はきつい仕事のわりに儲からない。だから、もっと農家を保護しないと日本人の食料は大変なことになる」という主張は、農水省がつくりだしたもので、その目的は農水省の省益、天下り先の確保であると浅川さんは指摘する。

ある農水省の幹部は、「自給率政策がなければ俺たちが食っていけなくなる」とまで語っているという。

浅川さんは政治家に会うと、必ず日本の農業生産規模が世界第何位か聞くことにしているという。大体50ー80位という答えが多く、正確に答えられる政治家はいなかったという。

多くの政治家が農水省の宣伝を鵜呑みにして、日本農業の強さを認識していないのだ。


日本の農家は兼業農家が圧倒的多数

民主党の戸別所得補償政策の対象の農家はコメで180万戸、そのうち100万戸は、1ヘクタール未満で、農業所得は数万円からマイナス10万円程度。これでは食べていけないとして、1ヘクタール当たり95万円が補償される。

しかしこれら100万戸の平均所得は500万円で、彼らのほとんどは役所や農協など一般企業につとめるサラリーマンの週末農業で、「疑似農家」なのだと。

「スケールの大きな家庭菜園がついた一戸建て住宅に住む、日本でもっとも贅沢な階層」と言っても良いと浅川さんは語る。

もっぱら生産コストの高いコメや野菜をつくり、自家消費や近所・親戚に配っている。

日本の農業従事者の数は1960年の1,200万人から現在は200万人以下に減っているが、一人当たりの生産量は5トン以下から25トンに増えている。

農業従事者推移













出典:本書117ページ

兼業農家は農薬の知識もないので、やたら農薬をばらまき環境に悪影響がある。規模が小さいのに機械も導入するので、日本のコンバインの保有数は97万台で、米国の41万台、中国の40万台に倍以上の差をつけた圧倒的世界一位だという。


民主党の戸別所得補償制度は間違い

民主党内閣が打ち出している「戸別所得補償制度」は、2011年度から1兆4千億円を使って、日本の農業を赤字まみれのダメ農家で埋め尽くそうとしていると浅川さんは切り捨てる。

民主党の計算では、1ヘクタールで最大95万円が補償される。これなら単に農地だけ持って、形だけ農業するふりをした方が良い。年に1−2週間しか農作業に従事しない疑似農家を助ける制度なのだと。

そして所得補償の対象となるコメは1兆8千億円、小麦は300億円、大豆は240億円しか生産規模がない。

日本全体の農業生産は8兆円で、野菜が2兆3千億円、果樹が8千億円、花卉(かき)が4,000億円だ。

民主党は、EUは直接所得補償のおかげで自給率を向上できたというが、小麦に対するEUの補助金は1ヘクタール当たり5万円程度だ。

ところが民主党案は、日本で1ヘクタールで小麦をつくるとそのコストが60万円、小麦の販売価格が6万円だから、差額54万円を全額補填するというもので、実にEUの補助金の10倍以上の法外なのものだ。

「食品自給率のなぞ」で農水省の課長も認める通り、そもそも国産小麦は品質が悪く、安くしか売れないという。

また輸入とはいえオーストラリアの小麦は日本のラーメン、うどん向けにつくった品種で、日本に売るしかない品種だという。また日本の食品として必要な小麦は540万トン、それを米国300万トン、カナダ150万トン、オーストラリア100万トンと、いずれも友好国から輸入している。アメリカと戦争でもしない限り、これらの友好国からの供給がストップすることはないだろう。


民主党の本当のねらいは疑似農家関連の500万票

浅川さんは農業界全体を弱体化させることが民主党の本当のねらいだと語る。小沢一郎前幹事長も、選挙でわかりやすい「所得補償」に政策名を変えろと指示したという。

民主党は100万戸の疑似農家の、家族や親類を入れた500万人という票が欲しいのだと。

都市部と比べて一票の差が2−3倍ある地方では、500万人の疑似農家関係者が一大勢力で、農家の票を抑えたら地方や都市郊外の小選挙区で勝利することができる。


日本の農家の数はまだ多すぎる

日本の農家は他の先進国に比べてまだ多すぎるという。日本は人口の1.6%が農家だが、米国はじめ欧州各国でも1%を切っている。

日本の面積30アール以上、農業売り上げ50万円以上の農家は200万戸ある。売り上げ1,000万円以上の農家はわずか7%だが、かれらが日本の農業生産の8兆円の6割を生産しているのだ。

農家の所得につき「農業経営者」が独自に行った2,600人のアンケート結果では、平均所得は343万円で、社員4−9名の中小企業の年収平均243万円を上回っているという。

農業人口の高齢化が問題とされるが、全体の7%のプロ農家が高齢化したのではない。全体の8割を占める疑似農家の多くが、リタイアして農業に精を出し始めた人たちだからだ。農業人口の高齢化は必ずしも悪いことではないという。


農業は成長産業

農業は成長産業というのが世界の常識だ。次が世界の貿易額のグラフだが、年々拡大し、特に近年は相場上昇とともに急激に拡大している。

世界の農産物貿易







米国のオバマ大統領は、「世界市場のなかで、高度な技術力とマーケティング力、そして経営判断が求められる複雑な仕事だ」と農業を評している。

そんな将来性のある農業振興のため、浅川さんは次の8つの政策を提案している。

1.民間版・市民レンタル農園の整備
2.農家による作物別全国組合の設立 成功例は米国ポテト協会などだ
3.科学技術に立脚した農業ビジネス振興 たとえばイチゴのとちおとめを世界商品にすることなど
4.輸出の促進
5.検疫体制の強化
6.農業の国際交渉ができる人材の育成または採用
7.若手農家の海外研修制度
8.海外農場の進出支援

日本の農業の可能性を信じているのが和郷園の木内博一代表だという。日本の農作物は世界一だと思っているので、ジャパンプレミアムを創設するのだと。

和郷園がタイで生産するバナナはドールよりも高く売れているという。


農家弱者論との対比

「食品自給率のなぞ」や「食品自給率100%を目ざさない国に未来はない」は、従来型の議論が中心で、単に食料輸入断絶というあり得ない事態の不安をあおるだけで、何の解決も提案していない様に思える。

農水省の課長は「ご飯を一食につきもうひと口食べると食品自給率が1%アップする」と、もっとご飯をたべることが自給率アップに繋がるという。

どうせ国民に訴えるなら、技術革新で生まれ、世界中で生産の中心となっているGMO食品を本格導入して、国産農産物の生産量を上げるとか、食べ残しを減らす運動を推し進めるとか、賞味期限切れの食品撲滅運動を行うとか、別のことで自給率をアップさせることができるだろう。

両論比較して読むことで、むしろ浅川さんの鋭い指摘と、統計の読み方に強い印象を受けた。

浅川さんの主張の根拠を提供しているのが青山学院大学の神門教授の次の本だ。

日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)日本の食と農 危機の本質 (シリーズ 日本の〈現代〉)
著者:神門 善久
販売元:NTT出版
発売日:2006-06-24
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


こちらも近々読んでみる。


冒頭に述べた通り筆者が読んでから買った数少ない本の一つである。一読の価値はあると思う。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 00:04Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月23日

あなたに貸す金はない! 借金難民続出時代のサバイバル法

2010年6月23日追記:

6月18日よりいよいよ改正貸金業法が全面施行された。

テレビなどで取り上げられているが、個人の信用情報はすべての金融機関で共有される。

どこからどれだけ借りているというのがガラス張りになり、総借入額が年収1/3以下に制限されるので、借金難民が続出することが懸念される。

主婦の借り入れも極端に制限される。

国民があまり消費者金融から借りないようにという国の”親心”かもしれないが、国債増発で借金まみれの国にそんなことを指導される筋合いはないと言いたい人も多いと思う。

噴出する問題点について1年以上前から警鐘をならしていたのは、消費生活評論家岩田昭男さんだ。

ちょうど1年前に紹介したクレジットクランチ時代のサバイバル法を解説した消費生活評論家 岩田昭男氏の「あなたに貸す金はない」のあらすじを再掲する。

まさにタイムリーな話題を、問題の根本の研究から、自らの体験も織り込んだサバイバル法まで詳しく解説した大変参考になる本である。


2009年6月11日初掲:

あなたに貸す金はない! 国が生み出す新しい「借金地獄」 (アスキー新書)あなたに貸す金はない! 国が生み出す新しい「借金地獄」 (アスキー新書)
著者:岩田 昭男
販売元:アスキー・メディアワークス
発売日:2009-05-08
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


このブログで紹介した「信用力格差社会」「信用偏差値」に続く、改正貸金業法の影響に警鐘を鳴らす消費生活評論家 岩田昭男氏の最新作。

「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”「信用力」格差社会―カードでわかるあなたの“経済偏差値”
著者:岩田 昭男
販売元:東洋経済新報社
発売日:2008-11
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)「信用偏差値」―あなたを格付けする (文春新書)
著者:岩田 昭男
販売元:文藝春秋
発売日:2008-11
おすすめ度:3.0
クチコミを見る


いよいよ今月、2009年6月より改正貸金業法が一部施行され、個人の借り入れなどの信用情報が全金融機関で共有される様になる。

現在5社ある信用情報機関がグループ化され、統合された機関となるのは今年秋頃と見られるが、個人の信用情報の共有は機関が設立する前からスタートするのだ。

この件についてマスコミは全く騒いでいないが、この本の帯に書いてある通り「借金大パニック襲来!!1000万人が借りられなくなる!」ことになるのは必至なのだ。

岩田氏は、昨年から前掲の2冊で、警鐘を鳴らしていたが、本件についてはマスコミはまったく騒いでいないのは驚くべきことだ。


改正貸金業法の骨子

貸金業法の改正骨子をおさらいしておくと、次の5点が大きな改正点である。

1.金利規制(グレーゾーン金利撤廃)
2.過剰貸付の抑制(年収の1/3までの総量規制と、すべての業態をまとめる指定金融情報機関設立)
3.業務規制(貸金業登録の最低総資産額を500万円から5,000万円に引き上げ)
4.ヤミ金融対策(罰則強化)
5.多重債務者対策(借りられなくなる人のセーフティネット強化)

法律は2006年12月に成立し、2010年6月に完全施行される。すでに段階的に施行されており、グレーゾーン金利撤廃の影響で消費者金融会社とクレジットカード会社が3大金融グループの草刈り場となっているのは周知の通りだ。

岩田氏は最近タモリが、アコムのTVコマーシャルに出演していることを取り上げている。

サラ金という今までのイメージから、三菱UFJファイナンシャルグループというメガバンク傘下の消費者金融会社に変わったので、タモリもコマーシャルに出ても良いと思ったのではないかと。

今月からいよいよ影響が出てくるのは上記2.の過剰貸し付けの抑制だ。

具体的には個人の借入情報をすべての金融機関が見られることになり、その人の年収の1/3までが無担保貸し付けの限度額となり、これを越える借り入れは断られることになる。

また既に年収の1/3を超える借金がある人は、残高が年収の1/3を下回るまで新しい借り入れはできず、返済するだけとなる。

いままでは消費者金融の借り入れ残高は、クレジットカード会社や銀行ではアクセスできなかったので、クレジットカードのキャッシング枠で借り入れるとか、銀行のフリーローンで借り入れることができた。

業態ごとに信用情報の交流がないので、クレジットカードで多重債務に陥っても、消費者金融に行けば何度でも借り入れができるということができていた。

今度は総借入額が年収の1/3を超えると、一切新規の借り入れができなくなるのだ。


個人信用情報の統合

日本には現在次の5つの個人信用情報機関がある。

1.全国銀行個人信用情報センター(KSC) 銀行系
2.CIC クレジットカード、信販系
3.CCB クレジットカード、信販系
4.全国信用情報センター連合会(全情連、JIC) 消費者金融系
5.テラネット 消費者金融系

このうち最も古く40年の歴史のある全情連のデータベースは加盟各社のデータがリアルタイムで統合されており、入金があるたびに更新されるという点で最も優れている。消費者金融業界の貸し倒れが少ないのも、このデータベースが充実しているからだといわれている。

上記の3,4,5が統合されることになりそうで、1,2については動向は決まっていないが、いずれにせよ2009年6月以降は信用情報はすべての機関で一本化されることが決まっている。

信用情報をより広く共有化することにより、多重債務を抑止しようとするものだ。


クレジットクランチ、借金難民続出の時代

これまでは年収の2倍まで借りられると言われていたのに、これが一挙に1/3までしか借りられなくなったら、多くの人は借金難民となり、おまけにクレジットカードも作れないというクレジットクランチ時代が到来し、カード難民が続出する。

筆者も住宅ローンと車のローンを抱えているが、岩田氏は、我が身を振り返って、借金は生活習慣病だと語る。

多重債務者は生活習慣病で、一時は財産100億円を超えていたのに詐欺をはたらいて有罪となった小室哲哉氏のように、収入が減少しても生活レベルは急には落とせないので放っておけば必ず再発すると。

だから本当に必要なのは借金メタボ対策のカウンセリングなのだと。借金メタボには生活ダイエットが必要であり、生活を切りつめることが必要なのだ。


借金サバイバル法

この本は岩田氏の借金サバイバル法が伝授されていて、大変参考になる。

たとえば最近弁護士がやたらテレビや電車の車内広告で借金整理の宣伝しているが、弁護士に頼むのはデメリットの方が大きいと言い切る。

返済している途中の弁護士や司法書士による債務整理は事故に当たるので、すぐにブラックリストに載ってしまう。一度ブラックリストに載ると5年間は借り入れできなくなる。

弁護士は「別にブラックリストに載っても良いではないか」と説明するらしいが、ブラックリストに載って5年間も一切借り入れもクレジットカードも作れないとなると、誰でも不安に思うだろう。

それと弁護士に頼むと着手金が1社あたり2万1千円、借り入れが5社だと10万円強がすぐに必要だ。そして過払い金を取り戻せても、弁護士が成功報酬2万1千円、返還金の20%とチャラになった残高の10%を取る。

業者が債務減額に応じただけだと、減額された金額の10%が弁護士報酬になる。

なんだかんだで弁護士報酬はバカにならない。弁護士も儲からなければ、あれだけ頻繁に大金をかけてテレビコマーシャルなどやらないはずだ。

岩田氏は弁護士を使わず、自分で過払い金請求をすることを勧め、この本で過払い金返還請求の手順まで懇切丁寧に説明している。

個人情報保護法の規定により、開示請求があれば貸金業者は取引経過を開示しなければならないという最高裁判決が出ているので、まずは取引経過を取り寄せ、次のような過払い金請求マニュアル本についている附属CDソフトで過払い金を計算し、利息分(5〜6%)を加えて配達証明郵便で業者に請求書を送るのだと。

そうすると業者から返還額を書いた書類を送ってくるので、それに同意して捺印して送り返すと1〜2ヶ月で入金するという。

Q&A 過払金返還請求の手引―サラ金からの簡易・迅速な回収をめざしてQ&A 過払金返還請求の手引―サラ金からの簡易・迅速な回収をめざして
販売元:民事法研究会
発売日:2008-06
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


50万円借りて、毎月1万3千円ずつ払って完済していた場合には、過払い請求するとなんと約73万円が返還されるという。


とっておきのノウハウ伝授

岩田さんは、最後にとっておきのノウハウも惜しげなく教えている。

数社から借金がある場合、まず1社を何が何でも完済するのだと。そして完済した後で、過払い金返還請求する。完済後は過払い金返還請求しても事故にはならないのだ。

そして過払い金が入金したらそれを使って2番目の業者の債務を完済して、完済後に同じく過払い金返還請求する。同じ事を3番目め、N番目の業者に繰り返すのだ。

すごい実践的アドバイスである。

そのほか、ノウハウとして、キャッシング=手数料と肝に銘じるとか、リボルビング払いはしないなどの、「岩田流 多重債務を防ぐポイント」として8ヶ条、家計簿をつけてみよう、収入を増やす努力をして、支出を切りつめる、いよいよとなったら公的機関に頼るなどの、「岩田流 借金生活脱出法」6ヶ条を紹介している。

東京都の場合、消費生活センターに連絡するとなんとかなるだろうと。

テレビによく出てくる「年収300万円シリーズ」で、自分は年収数千万円を稼いでいる評論家の本などとは全然違う地に足がついた実践的指南である。


参考になる情報が満載

貸金業法改正で影響が出るのは、年収400万円以下、特に200万円以下の人と、主婦やフリーターなどで、それ以外の人はあまり影響はないと思われるが、情報としても参考になる。

たとえば次のような情報が紹介されている。

★トヨタファイナンスはキャッシング枠をなくし、無担保ローンから撤退する。これはレクサスカードなどの優良顧客を守りたかったのではないかと岩田氏は推測する。

キャッシング枠があるとその情報は指定信用情報機関に上げられ、貸金業各社が見ることになり、優良顧客であればDM攻勢が来ることになる。トヨタファイナンスはそれを避けたかったのではないかと。

★年末派遣村にやってきた派遣切りにあった失業者の多くは多重債務者で、たとえ生活保護を受けるためでも住民登録は嫌がる人が多い。債権者に見つかってしまうからだ。

★本当は恐ろしいリボルビング払い これは説明不要だろう。アメリカのクレジットカードは基本がリボルビング払いなので、サブプライムローン問題が出てきた時に破産者が急増した理由の一つとなった。

★東京都はバングラデシュのグラミン銀行を参考にして、生活再生資金貸付事業を社団法人生活サポート基金に委託して行っている。

岩田さんの本だと年利12.5%、返済期間120回となっているが、ホームページでは最高300万円、年利3.5%(ただし保証人必要)、最長7年間となっている。保証人がいないと金利が異なるのだろう。

ただし、まだ実績は5件しかないという。

★岩手県消費者信用生協によるスイッチローンは、信用生協、県内市町村、岩手弁護士会、提携金融機関が共同で多重債務者を救済するという全国でも例を見ない優れたシステム。

★改正割賦販売法によりショッピング枠にも網がかかる。こちらは経済産業省の主管で、(年収 ー 生活維持費) x 大臣が定める係数(0.5〜1)でクレジットカードのショッピング枠を決めるという、いかにもお役所らしい計算式だ。

係数もまだ決まっていないし、車のローン除外、海外旅行時には最大2ヶ月限度額2倍とか、公共料金の支払いを除外するとか、主婦は無条件で合計30万円だが、世帯主の収入を主婦の限度額に算入できるとか、例外をめぐってまだまだ議論が続きそうだ。

★貸金業者数は2000年の3万社から、2008年の9千社にまで激減し、さらに減少が見込まれる。


PtoP個人間借金サイト

最後にこの本には載っていないが、最近のYahoo!のニュースで気がついたPtoPの個人間でお金を貸し借りするサイトが気になるので、紹介しておく。

maneoというサイトで、個人間の金銭貸借をオークション形式で仲介するサイトのようだ。手数料は1.5%だという。

Maneo




日本では企業が貸金業をやることは、出資法で厳しく規制されており、ライセンスが必要だが、個人間の貸し借りだったら法の網をくぐれるということなのだろうか?

無規制でこんなサービスが日本でやれるとは信じられないような気がするが、今のところ貸付金総額7千5百万円ということなので、まるめて1億円としても手数料1.5%なら、創業以来の収入が150万円しかないので、このままでは採算が合わずサービス撤退は時間の問題だろう。

はたしてこのようなサービスが生き延びるのか興味があるところだ。

最近グラミン銀行のムハマド・ユヌス氏の自伝をオーディオブックで読んで(聞いて)感動したので、近々あらすじを紹介するが、グラミン銀行の場合、女性5人でグループをつくってお互いを励まし合うという「隣組」あるいは「細胞」のような組織がベースとなっているから、99%という高率の返済率となっている。

Banker to the Poor: Micro-Lending and the Battle Against World PovertyBanker to the Poor: Micro-Lending and the Battle Against World Poverty
著者:Muhammad Yunus
販売元:Blackstone Audiobooks
発売日:2007-01
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


そういうモラル面での歯止めがない個人間融資は、危険な賭けではないかと思うが、筆者の直感が間違っているかもしれない。


この本には、Q&Aも充実しており、興味ある質問ばかりで大変参考になる。

クレジットスコアやクレジットレポートの実例なども解説されており、これ一冊でクレジットクランチ時代の問題点やサバイバル法がすべてわかる。

時宜を得た本で、わかりやすくためになる。

是非一読をおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリックして頂きたい。



  
Posted by yaori at 12:41Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月22日

下流の宴 林真理子さんの新聞連載小説

下流の宴下流の宴
著者:林 真理子
販売元:毎日新聞社
発売日:2010-03-25
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

林真理子さんが昨年3月から12月まで毎日新聞に連載していた小説。

家内は林真理子さんのファンなので、ほとんどの作品を読んでいる。この作品も家内が図書館から借りていたのを読んでみた。

面白いので3時間くらいで一気に読んでしまった。

小説のあらすじは筆者のポリシーとして詳しく紹介しないが、「下流」という話題をうまくテーマにして、会社勤めのエンジニアと結婚した医者の娘(47歳の主婦)の一家を中心として話を展開している。

一家の長女は某ブランド女子大を卒業した美人の才媛で、一流会社には就職できなかったが、派遣社員でIT企業で広報担当として働き、上昇気流をつかもうと外資系投資会社社員などとのつきあいに精を出す。

長男は中高一貫の進学校を高校2年で中退し、マンガ喫茶でフリーターとして働く。ネットゲームのOFF会で、沖縄の離島出身の高卒のカノジョと知り合って同棲をはじめる。

カノジョを両親に紹介しようとして、拒絶に会う。医者の娘であることを鼻に掛け、身分の違いを強調する母親との話の展開から、カノジョは彼と結婚するために医学部に合格することを宣言する。

これからはドラゴン桜のような受験専門講師の話も出てくる。2年で国立大学医学部(宮崎大学医学部という設定)合格を目指すのだ。

マンガ喫茶の様子や、セレブのパーティの話も紹介されていて興味深い。

大変楽しめて、気分転換ができた。是非一読をおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 00:20Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月19日

JAL崩壊 パイロット待遇見直しの火付け役?となった暴露本

JAL崩壊 (文春新書)JAL崩壊 (文春新書)
著者:日本航空・グループ2010
販売元:文藝春秋
発売日:2010-03-17
おすすめ度:2.5
クチコミを見る

グループ2010という匿名のJAL客室乗務員グループの暴露本。

次がこの本の目次だ。是非アマゾンのなか見!検索でも目次を見て欲しい。目次にサブタイトルが含まれていて、大体この本の筋がわかる。

第1章 悪夢の始まりはJASとの合併

第2章 わがままパイロットの「金、女、組合」

第3章 「負け犬スッチー」と「魔女の館」

第4章 うるさいうるさいうるさい客

第5章 労働組合は裁判がお好き


客室乗務員のねたみ本

暴露本なので、くわしいあらすじは紹介しないが、客室乗務員のぼやきとねたみだらけの本だ。

2010年1月のJALの会社更生法申請以来、タクシー・ハイヤー利用や特殊手当てなどパイロットなどの優遇待遇がどんどん廃止されているが、それの火付け役となったような形になったのがこの本だ。

著者グループにパイロットは含まれていないので、パイロットに関してはぼろくそだ。

実は筆者の家内もその昔JALに勤めていたので、社員特権のEF(Employee Free?)という無料旅行の権利を使ってハネムーンに行ったり、海外や国内にも旅行した。

その意味ではJALにはいろいろお世話になったが、いまや社員の無料旅行の権利もさぞかし制限されていることだろう。

家内はシフトで成田ターミナルに勤めていたので、早朝や深夜勤務のときは家にタクシーの送迎があった。たぶん今はそういう仕事は子会社や派遣社員を使っているのだろうし、タクシーの送迎なんてありえない話なのだろう。

結婚前は家内は成田のJALの寮にいたが、当時は同じ寮の客室乗務員には空港までハイヤーかタクシーの送迎があった。現在は最寄の駅やシティターミナルまでタクシーを使えるという制度に改悪になっているようだ。

パイロットにはつい最近までタクシーやハイヤーの送迎があったようだが、これも最近メスが入ったようだ。この本は2010年3月に出たばかりなので、パイロット待遇改悪の火付け役?となったのかもしれない。

それにしても昔は客室乗務員は、一般社員に比べてはるかに良い待遇だったはずなので、ここまでパイロットをねたむのは、意外な気がする。

しかしこの本を読むと海外でもパイロットと客室乗務員のホテルは別々で、パイロットは一流ホテル、客室乗務員はホリデーインという話なので、客室乗務員がパイロットをねたむのもわかるような気がする。

他の海外のエアラインは当然パイロットも客室乗務員も同じホテルなので、チーム意識が醸成できる。JALのようにパイロットと客室乗務員を完全別待遇でやっていると、チームとしての一体感が醸成できないと思う。


ANA国際線の優れたサービス

筆者は当然JALを愛用していたが、結婚して2年で米国に転勤になった時に家内も退社したので、あるときからANAに切り替えた。

というのはANAのサービスが抜群だったからだ。

1980年代後半にANAが国際線に進出し、米国の最初の乗り入れ先はワシントンだった。日米航空交渉でJFKの発着枠が取れなかったのだ。

当時のANAの国際線のお客に対するサービス精神は見上げたもので、客室乗務員の士気は高く、一切私語はなかった。食事もJALより格段においしく、ワインはビジネスクラスでもシャトーワインを取りそろえ、サービスは非常に良かった。

筆者は喫煙者ではないが、喫煙者の同僚は、ANAに乗ったらスチュワーデスがピンセットで吸殻を回収しに来て、常に灰皿をきれいにしてたのに感動したと言っていた。

ANAに乗った後でJALに乗ると客室乗務員の私語の多さと、アラームで呼んでもなかなか来ないダレた雰囲気が気になったものだ。


JASとの合併が諸悪の根元?

この本で驚いたのは、JAL関係者がJASとの合併が諸悪の根源と考えていることだ。

その理由は機体が全く互換性がなかったこと、JASパイロットの待遇がJALと同じか、むしろ上回るようになり、ヒラ機長から管理職機長格上げ奮発で年収3,000〜4,000万円が続出したこと、英語のできないJASパイロットがトラブルを続発させたことなどだ。

客室乗務員は管理職になると地上管理業務が中心となり減収となるので、その補填で「月間乗務保障手当」を貰っていたらしいが、これも不況で廃止され、管理職になると給料が下がるのと大違いだとねたんでいる。

筆者はJALがJASを買収し、国内線のシェアでANAを上回る55%のシェアを獲得したのは、経営戦略として妥当だと思う。今でも国際線と国内線のシームレス運航が、成功する航空会社の条件なのは変わりない。

ところがこの本では、そういった根本戦略の正しさを全く理解せず、JALからJAS買収を申し入れたのは失敗だった、むしろJASがにっちもさっちも行かなくなって、熟柿が落ちるように救済合併すれば、虎の子の羽田などの発着枠をライバルに手放さなくてもすんだはずだ、もっと良い条件で合併できたはずだなどと、結果論、ないものねだりに終始している。

正しい基本戦略をきちんと実行できるかどうかは、経営陣の問題でもあるが、社員全体の問題でもある。

おまけに、「CA(キャビンアテンダント)の合コンの相手が、「○紅」、「△藤忠」だったのがJALという名に変わった途端、「○○物産」、「××商事」になって生きがいとやる気に繋がったという嘘のような本当の話もあります」とか言っているのには、もはやあきれるばかりだ。


正しい指摘もある

この本全体が誹謗中傷だらけだが、正しい指摘もある。

「テレビなどで、”したり顔”の評論家や学者がよく言っていた「国が滅茶苦茶に空港を作り、そこにJALが運航しなければならい羽目になったのが赤字の原因である」というのは違います」

「合併後、新しくできた空港にJALが飛ばしたのは静岡空港と神戸空港だけで、あとはJASが持っていた地方や離島の不採算路線を引き継いだもの。愚かにも初めから赤字とわかっている路線を何の条件もつけることなく抱え込んだのです」

「JALの経営危機を招いた元凶の一つにもかかわらず誰も何も言わない大きな問題が他にあります。それは為替とオイルの「ヘッジ」問題です。」

なぜかマスコミはこのヘッジ損失を取り上げないという。


たまたま目撃した客室乗務員と客とのケンカ

第4章 うるさいうるさいうるさい客、つまり”UUU”は問題客の暗号だという。たしかに問題客も中にはいるだろうが、筆者は問題乗務員を目撃したことがある。

1995年頃にヨーロッパに出張に行った時だが、筆者はいつも2階のビジネスクラスの席をリクエストするのだが、下のビジネスクラスの席で、50代のおっさんのパーサーが客と大げんかして、言い争っていた。

たまたま下に降りて行って、その場面に出くわしたのだが、客席全体のムードをぶちこわす傍若無人ぶりだった。たぶん客のマナーが悪いのだろうが、それにしても、公衆の面前で客と言い争うとは信じられないサービス精神の欠如である。


一体感がない会社

全体を通して「俺たちは悪くない。悪いのは奴らだ」というような態度だ。なかには良い社員も当然いるのだろうが、これでは会社もまとまらないだろう。

社内にいくつも組合があり、パイロット、客室乗務員、一般社員が階層をつくって、それぞれ対立するという社内分裂が、結局JALの最大の問題で、それがため会社が破綻したのではないかと思う。


そのことをよく表している本である。

読み物としては面白い。

まずはアマゾンのなか見!検索で、どんなサブタイトルが並んでいるか見て、それから本を手に取ることをおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 02:49Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月16日

分析力を武器とする企業 データ分析の教科書

分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学分析力を武器とする企業 強さを支える新しい戦略の科学
著者:トーマス・H・ダベンポート
販売元:日経BP社
発売日:2008-07-24
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

データ分析を経営に生かす実例とその理論や分析ツールを解説したデータ分析の教科書。

英国のデータ分析専門会社の人から紹介されて読んでみた。。

この分野は筆者が特に興味を持っている分野なので、いままで「CRMの実際」という日経文庫や、流通業界では世界最高峰の英国TESCOのCRMを取り上げた「TESCOの顧客ロイヤリティ分析」などを読んで研究してきた。

CRMの実際 (日経文庫)CRMの実際 (日経文庫)
著者:古林 宏
販売元:日本経済新聞社
発売日:2003-04
おすすめ度:3.5
クチコミを見る

Tesco顧客ロイヤルティ戦略Tesco顧客ロイヤルティ戦略
著者:C. ハンビィ
販売元:海文堂出版
発売日:2007-09
おすすめ度:2.5
クチコミを見る

日経文庫は2003年の本だが基本を抑えるのには適している。

TESCOの本は、ポイントカードを使ったCRMはどうあるべきかという実例を詳しく紹介しており大変参考になった。このブログでも原著の第2版のあらすじを詳しく紹介している。

ポイントカードを使った顧客管理を突っ込んで研究したい人は、2004年に出た第1版の翻訳である日本語版の「TESCO顧客ロイヤルティ戦略」よりは、テスコクラブカード戦略の見直しまで取り上げている2008年に出た英語の第2版「Scoring Points」の方をおすすめする。

Scoring Points: How Tesco Continues to Win Customer LoyaltyScoring Points: How Tesco Continues to Win Customer Loyalty
著者:Clive Humby
販売元:Kogan Page Ltd
発売日:2008-09
クチコミを見る

筆者が読んだ時は、ハードカバーしかなかったが、現在はペーパーバック版が出ているので、アマゾンで2,500円で買える。

話が横道にずれたが、「分析力を武器とする企業」は、基本も抑え、各社の実例も広く浅く紹介している。

次の表のような顧客分析を生かす企業の実例が取り上げられている。

分析志向の企業リスト













出典:本書23ページ

分析力を武器にする企業は次の4つの特徴を持つという。

1.分析力が戦略的優位性のベースになっている。

2.分析に組織を挙げて取り組んでいる。

3.経営幹部が分析力の活用に熱心である。アマゾンのジェフ・ベゾスが良い例だ。

4.分析力に社運を賭け戦略の中心に置いている。


参考になった具体例をいくつか紹介しておく。

★ネットフレックス

オンラインDVDレンタル。日本のツタヤDISCUSや、テレビで盛んに宣伝しているDMM.COMのようなサービスだ。

DVDの送料は無料、貸出期限は無制限、延滞料は一切無し。借りたDVDを返せば、次のDVDが借りられるというシステムだ。

ネットフレックスは「シネマッチ」というアルゴリズムを組み込んだ映画リコメンドエンジンを持っている。顧客の好みを分析して、映画を推薦するのだ。

ネットフレックスは100万ドルの賞金を出して、社内外の力を借りて「シネマッチ」のアルゴリズムを10%以上改善したという。

ネットフレックスの最優先顧客はめったに借りない会員だという。月額料金は固定なので、めったに借りない人の方が利益率が高いので、この種類のお客をつなぎ止めておくことが重要だ。

いずれはDVDレンタルはオンラインダウンロードに変わるだろうが、ネットフレックスは自社の分析力さえあれば、バーチャルに移行しても利益は上がると自信を持っているという。


★ボストンレッドソックス

データ分析をプロ野球に利用して成功したオークランド・アスレティックスの例は、「マネーボール」という本に詳しい。この本も近々読んでみる。

マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)マネー・ボール (ランダムハウス講談社文庫)
著者:マイケル・ルイス
販売元:ランダムハウス講談社
発売日:2006-03-02
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

まだ松坂大輔が加入する前、ボストンレッドソックスは2002年に野球のデータ分析の専門家を雇って、成果を上げ、2003年にはアメリカンリーグのチャンピオンシップシリーズに進出する。

しかしヤンキーズとのチャンピオンシップシリーズでは、監督のグレディ・リトルはデータ分析の専門家の意見を退け、優勝がかかる第5戦先発のペドロ・マルティネスをデータ分析による限界の105球を超えて8回にも登板させた。

データ分析ではペドロ・マルティネスは、105球までなら相手チームの打率は2割3分だが、106から120球だと打率は3割7分に上がっていたのだが、監督は自らのガットフーリング(直感)を信じたわけだ。

筆者は今でも覚えているが、たしかこの第5戦の大逆転劇で、松井が同点のホームを踏んで、躍り上がって喜んでいたことを思い出す。YouTubeにその時のビデオが載っている。



2003年で監督はクビ、翌年は分析力と戦力補強が役立ち、86年間の「ベーブ・ルースの呪い」を破って念願のワールドシリーズを制覇したのだ。


★ロッキー・マウンテン・スチール
昔鉄鋼原料を取り扱っていた筆者には懐かしい名前だ。ロッキー・マウンテン・スチールはオレゴンスチールの子会社でシームレス鋼管を製造していたが、不況で生産中止していた。

筆者の記憶が正しければ、この会社は昔のUSスチールの工場ではないかと思う。戦争中に万が一敵が西海岸に侵攻してきても、ロッキー山脈のあたりにあれば、爆撃にも平気だということで建設した工場ではなかったかと思う。

鋼管市況が高騰したので、社内外の生産再開を求める声に対し、副社長のロブ・サイモンは"profit insight"というソフトウェアで再開時期を分析し、製品販売での逸失利益を出すことなく工場再開を決めたのだという。

ロッキー・マウンテン・スチールは今はEvrazという会社の一部門になっているようだ。


★マス広告の問題点

マス広告の問題点は、デパートの先駆者のジョン・ワナメーカーが嘆いたように「広告費の半分は無駄に失われている。だが、それがどの半分かがわからない」点だ。

それを科学的に分析するのが、現代の広告業界が力を入れている分野だという。DDB Worldwide社の子会社のDDBマトリクス社が有名だ。

ちなみにDDB Worldwide社のホームページには"Fun Theory"という、人は面白ければ動くという一連の広告活動が紹介されている。

階段をピアノの鍵盤のように改造して、音が出るようにしたら、エスカレーターより階段を使う人が増えたという。フォルクスワーゲンの広告で、興味深い実験が紹介されている。


データ分析のウソ

★英国の名宰相ベンジャミン・ディズレーリは「嘘には3種類ある。嘘、大嘘、統計だ」と語ったという。恣意的な統計は人を欺くこともできる。

★紙おむつとビールの伝説は都市伝説
オスコというドラッグ・ストアチェーンが話の元らしいが、オスコではビールと紙おむつと一緒に陳列したことはないし、そもそもビールを売っていない店もあるという。

この例を紹介して、データ・マイニング・ソフトなどを使ってデータを分析するだけでは不十分で、統計分析のスキルを備えたデータ分析のアナリストが社内に必要だと力説している。

興味のある人向けに、用語解説とツール解説を続きを読むに載せる。

データ分析の用法、手法、ツールなど、広く浅くトピックスを取り上げていて参考になる本だった。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  続きを読む
Posted by yaori at 00:23Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月14日

マスコミは、もはや政治を語れない ジャーナリスト佐々木俊尚さんの近著

マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論壇」 (現代プレミアブック)マスコミは、もはや政治を語れない 徹底検証:「民主党政権」で勃興する「ネット論壇」 (現代プレミアブック)
著者:佐々木 俊尚
販売元:講談社
発売日:2010-02-26
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

ネット関係の著作を量産しているジャーナリスト佐々木俊尚さんの2010年2月の最新刊。

タイトルの「マスコミは、もはや政治を語れない」というのは、昨年の民主党の圧勝は小選挙区という選挙手法によるもので、全得票率では議席数ほどの差がついていないことをマスコミはどこも語らないことを指している。

他にも日本のマスコミ特有の問題として、記者クラブ問題を取り上げている。

そもそも記者クラブは、日本とアフリカのガボンにしかないと言われているそうだ。

民主党公約の記者クラブ開放が結局、外国メディア増加と雑誌記者への開放のみに終わり、フリージャーナリストなども含む開かれた記者クラブとはほど遠くなった。

しかしブログなどのネット論壇が登場し、記者クラブを通して政府が言論をコントロールする時代は終わりつつあると佐々木さんは語る。

しかし全くマスコミにグリップが効かない状態もリスクがあるという。

たとえば既存マスコミが強くなかった韓国では、ネット論壇が世論を形成し、根拠のないデマが流布して、女優のチェ・ジンシルなどが自殺するという事態まで発生している。

「ネットで書かれたことは、瞬時に全国民に伝わる」というのは恐ろしいこともあるのだと。


インターネット大家族

フェースブックは日本ではあまり普及していないが、世界で3億人のユーザーがいる世界最大のSNSだ。

高齢者の間でもフェースブックは浸透しており、最近ではフェースブック上で、祖父母と孫が連絡を取り合い、「インターネット大家族」のようなものができているという。

上記のような話題も含め、マスメディアでは報道されない見方が取り上げられている。印象に残ったものをいくつか紹介する。


★事業仕分けの歴史的意義

事業仕分けを仕切った枝野さんと蓮舫さんがそろって菅内閣の重要ポストに入ったが、事業仕分けの意義は、すべてが公開されたことだという。

いままで密室で決められていた予算折衝が白日の下にさらされる訳だ。


★池上彰さんの仕事

新聞が「ニュースをわかりやすく解説する」という本来の仕事を放棄しているので、池上さんの仕事が成り立っていると池上さんは語る。
 
知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)
著者:池上 彰
販売元:角川SSコミュニケーションズ
発売日:2009-11
おすすめ度:4.0
クチコミを見る


★亀井徳政令

亀井大臣は辞任したので、あるいは自見徳政令になるのかもしれない。

亀井静香大臣は「東京大学でマルクス経済学を学び、キューバのゲリラ指導者チェ・ゲバラを心から尊敬する極めて危険な社会主義者だから、甘く見ない方が良い」と、「金融日記」という人気ブログの作者の外資系投資銀行勤務の藤沢数希氏は語っているという。

経済学については、少なくとも昭和50年代までは東大のマル経、一橋の近経と言われていたので、元警察官僚の亀井さんがマルクス経済学のゼミを取っていても不思議ではない。

こんな色眼鏡のかけ方をしていると、昭和50年代までの東大経済学部の卒業生の過半数はマル経を取ったと思うので、すべて同じような社会主義者と見られることになるだろう。

日本のネット論壇はまだまだだと思うが、この本では背後からハミング大西宏のマーケティング・エッセンス漂流する身体などが紹介されている。

いずれ「ネット論壇」といえるようなものが日本でも出現するのかもしれないが、アメリカのネットメディア(たとえば"A Bright Fire"など)が影響力を勝ち得ているのに対して、日本ではまだ時間が掛かると思う。

いずれにせよ、情報ソースの拡大という面では意味があると思うので、この本で紹介されているブログのいくつかを時々チェックしてみようと思う。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 13:45Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月11日

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 前ドコモ夏野剛さんの近著

グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)グーグルに依存し、アマゾンを真似るバカ企業 (幻冬舎新書)
著者:夏野 剛
販売元:幻冬舎
発売日:2009-07
おすすめ度:2.5
クチコミを見る

前NTTドコモ執行役員でiモードやおサイフケータイの推進者夏野剛さんの近著。

本のタイトルが過激だが、別にグーグルを使うなといっているわけではない。

以前の”Web 2.0”ブームでは、誰もがSNS(Social Networking Service)に走ったが、SNS大手のMixiモバゲータウンも伸び悩んでいる。SNSを取り入れて、いかにビジネスに生かすかが課題なのだ。

今の”クラウド・コンピューティング”ブームで、その代表格のGoogle AppsGメールを導入したり、アマゾンを真似てリコメンドなどを始めても、それだけで成功できる訳ではない。ビジネスが成功できるかどうかは、価値を創造して顧客を創れるかどうかであり、その意味ではリアルもネットも同じだと夏野さんは語る。

さらにiモードの仕掛け人だった夏野さんは、ケータイもパソコンもビジネスモデルに違いはないと言い切る。


ウェブビジネスの未来

この本で一番参考になったのは、第3章ウェブビジネスの未来だ。これは次の3節から成っている。


第1節 ウェブ広告の未来

ウェブ広告の身上は確実な効果測定で、ネット広告はマス広告を確実に超えると予言している。ラジオと雑誌はリスナー、ターゲットが絞られるという意味で、もはやマス広告ではなく、あくまで新聞・テレビとネットの比較だという。

未来の広告として、筆者も好きなスピルバーグの「マイノリティ・レポート」の個人にカスタマイズした広告を紹介している。




また夏野さんも、英国のTESCOのポイントカードを使ったデータベースマーケティングを、個人にカスタマイズされた販売促進の先進的な代表例として紹介している。

「TESC0の顧客ロイヤルティ戦略」に関しては、筆者も非常に興味を持っている。

その中心人物が書いた本を筆者のブログで紹介しているので、興味のある人は参照して欲しい。

Tesco顧客ロイヤルティ戦略Tesco顧客ロイヤルティ戦略
著者:C. ハンビィ
販売元:海文堂出版
発売日:2007-09
おすすめ度:2.5
クチコミを見る



第2節 仮想通貨(電子マネー)がウェブビジネスを加速させる

おサイフケータイと電子マネーは夏野さんがNTTドコモにいたときに、積極的に推進した戦略だ。

夏野さんはドコモ時代に「コンビニやタクシーで電子マネーを使えるようにする」という発想が、思った以上に受け入れられず、社内外の人を説得するのが大変だったと語っている。

「現金決済と電子マネーのどちらに将来の発展可能性があるか」という議論になかなかならず、売り上げアップと支払い手数料の費用対効果とか、店員教育の負担増といった目先のプラス・マイナスの議論となったので、普及は困難を極めたという。

このコメントは筆者には意外だ。

はたから見たら夏野さんが率いるドコモは、カネにあかせて三井住友カードの1/3を買ったり、ローソンなどのコンビニに出資して、おサイフケータイの端末を一気に普及させたりして、強引に推し進めていると思っていた。

いずれにせよ努力が実を結び、2001年11月にスイカとエディがスタートしてから、2008年10月で電子マネーの発行枚数は1億枚を超えて、さらに拡大しつつある。

電子マネーでも会員の個人情報と商品情報が収集できるので、IYグループのnanacoなどで、マーケティングに利用する動きが出ているという。

夏野さんは電子マネーを導入することにより、支払いが簡単になり、「ついで買い」が増え、客単価が上がると説得したという。

いまや多くのコンビニではiDや電子マネーが使えるようになっている。たとえば筆者はローソンではiD、7/11ではナナコモバイルが使えるので、もっぱら使うコンビニはローソンと7/11に限られている。

コンビニで小銭出すのが面倒くさいのだ。

夏野さんの狙った通りの効果が出ていると思う。これから多くの人がケータイで決済できる便利さを知ると、さらに利用は拡大するだろう。


第3節ネットメディアとデジタルコンテンツ

アメリカのNBSとNews CorpのジョイントベンチャーのHuluやYouTube、日本では夏野さんが取締役となっているドワンゴのニコニコ動画などが紹介されている。

マス広告市場の縮小に伴って、テレビ局の収益も悪化しているが、夏野さんはテレビは優良コンテンツを持っており、これをオンデマンドで有料で配信するか、広告付きで無料で配信すれば良いと提案する。

若者離れ、広告減のテレビを救うのはITだと。

ドコモで苦労したからだろう、随所に50代以上の経営者のインターネットリテラシーが低いことを批判している。

最後に夏野さんは「日本の将来は明るい。この明るさを生かして、IT時代を進んでいこう」と檄を飛ばす。

ドコモ時代に推進したiモードやおサイフケータイを使った様々なサービスが出てきている。

「先進的なIT技術に目を奪われて、海外の企業を真似たり、憧れたりするのは意味がない。自分たちのポテンシャルをもっと生かした先に、日本が持つ真の競争力が現れるのだ」と。


簡単に読めて参考になる本だった。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。




  
Posted by yaori at 00:19Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月09日

学歴の耐えられない軽さ 知らなかった新卒就職事情

学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識学歴の耐えられない軽さ やばくないか、その大学、その会社、その常識
著者:海老原 嗣生
販売元:朝日新聞出版
発売日:2009-12-18
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

元リクルート「Works」編集長で、マンガの「エンゼルバンク」のカリスマ転職エージェント海老沢康生のモデルとなった人材コンサルティング会社ニッチモ社長の海老原嗣生(つぐお)さんの本。

エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)エンゼルバンク ドラゴン桜外伝(1) (モーニングKC)
著者:三田 紀房
販売元:講談社
発売日:2008-01-23
おすすめ度:3.5
クチコミを見る

「やばくないか、その大学、その会社、その常識」という副題がついているので、てっきりトップクラス以下の大学の話かと思ったら、日本の新卒就職事情についての本だった。

大学生の息子がいずれ就職マーケットに参入するので、この本は大変参考になった。

アマゾンのなか見!検索に対応していないので、目次を紹介しておく。目次を読むとこの本の論点が大体わかると思う。

第1章 学歴のインフレーション

1.学歴と常識の間 ー 秋田県も知らない若手社員

2.12年にわたる野放し状態 ー 大学無試験化という危険な社会実験

3.早慶は昔の早慶ならず ー 数字が語る経営戦略と入学者の変容

4.禁断の偏差値トリック ー 一般入試でさえ、学力低下競争へ

5.お手軽入試、アカデミズムにも歪み ー 教科減・マークシートの影響

6.高校未履修問題の矛先を変えたマスコミ ー 罪深い進学校病

7.企業には「かつての学歴」がちょうど良い ー 大量優等生と少数異能

8.金の卵のために鶏を殺した大学 ー 拡大経営とブランド失墜

9.大学を「補習の府」に ー 再建のための秘策

第2章 人気企業が危ない

1.大学サークルに缶ビールを贈った大手企業 ー ランキング病?

2.秘技、旧帝大「生物、食品・農学部」卒 ー 採用実績校のお化粧

3.就活の縮図、インターンシップ ー 偏差値と人気ランキングの泥仕合

4.不吉な前兆? ー 人気ランキングに入った企業は衰退が始まる

5.奥田さんと稲盛さんと土光さんの正しい生き方 ー 不況期就職勝ち組

第3章 若者はけっこうカワイソウじゃない

1.就職氷河を厚くした玄田論文 ー 「過去企業への憧れ」という病根

2.就活期の景況で人生は決まらない ー 誰でも20代にチャンスは2回

3.「就社より就職」というウソ ー 13歳のハローワーク幻想

4.「総合職」という蜜の味 ー ”何でも屋”という誤った批判

5.答えは従業員150人の企業 ー 社内で再チャレンジできる最小単位

6.フリーターの尊厳をまず認める ー 脱フリーターという横暴


この本を読んで、大きな変化に気が付いていなかったことがわかった。


若者人口は減っているのに大学生は増えている

一つは19ー22歳の人口は1993年にピークを迎え、その後減少しているのに、大学の学生数は増加していることだ。

次はこの本に紹介されている統計だ。大学進学率が現在は50%を超えており、特に女性の大学進学率は筆者の学生時代の10%台から、3倍の44%となっている。

基礎人口と大学進学率推移














出典:本書70ページ

大学の数も増えており、これだけ大学生が増えたら学力の低い学生がいることはむしろ当然だろう。この本で紹介されているように秋田県の場所もわからない一流大学卒の社員が出てくることもうなずける。


新卒正社員採用数は減っていない

もう一つは新卒正社員採用数は増えており、新卒を非正規社員に置き換えるという動きはないことだ。

次がこの本で紹介されている新卒正社員の就職数推移のグラフだ。女性の新卒就職者が増えたので、全般的に新卒正社員数は増えている。

正社員就職数推移






出典:本書176ページ

筆者の会社でも女性の総合職が増えているが、思えば当たり前のことである。今や大学生のほぼ半分は女性なのだから。

筆者の学生の時は1,2年生のクラスは法学部と経済学部が一緒だったが、女子がゼロのクラスもいくつかあった。

女子が少ないので、まんべんなく割り振ると一クラスに1−2人になってしまうので、5人くらいまとめていくつかのクラスに集中的に割り振っていたからだ。今の学生には信じられない話だろう。


この本では雇用についての誤解をデータで反証している。たとえば:


★なぜ、若者は3年で辞めるようになったのか? − 若者は50年以上前から、3年で辞めている。

次がリクルートエージェント社が2007年に大卒ホワイトカラー5万人に実施した調査での年齢別転職経験者比率を示したグラフだ。

20代までに半数は転職を経験し、35歳以降はほぼ定着するという傾向は昔も今も同じだと海老原さんは語る。

大卒ホワイトカラーの年齢別転職経験者比率






出典:本書134ページ

★成果主義が普及して、職場が殺伐となった? − 成果主義とそれ以前で査定はほとんど変わっていない。

★就職氷河期の多くの人たちは世間の底辺で何を考えているのか? − 就職氷河期でも就職できた人が圧倒的多数。

新卒の求人倍率は常に1を超えており、中途採用者の倍率がめったに1を超えないことと際だったコントラストを成している。

今も昔も大変なのは転職や中途採用市場で、新卒ではないのだ。

新卒と中途の求人倍率推移



















★大企業が平気でリストラをする昨今、不安な熟年が増えている? − つぶれる寸前の会社でないとリストラはしない。

★不況だからこそ語学や資格を身につけキャリアを守るべきか? − 語学を身につけ資格をとってもキャリアの足しにはならない。


早慶の学生確保戦略

早稲田大学と慶應大学の入試方法、学部新設、定員数を分析して、それぞれの学生確保戦略を分析していて面白い。

早稲田大学は学部は新設しても定員は増やさず、一般入試定員を絞る方法で、人気と偏差値を高く維持している。

慶應大学は新規学部を開設して定員は増やしたが、試験方式を国立大学と併願しやすい方式を導入する方法で、同じく人気と偏差値を維持している。

どちらも少子化を乗り切り、高い倍率を維持しているが、学生の質はかつてと異なるという。

偏差値についても、筆者の学生時代の様に全受験者を一律の偏差値で比較するのではなく、試験科目ごとに受験校別の集団に分けて比較するので、同じテストの点数でも偏差値は異なる。

それを示したのが、次のグラフだ。

偏差値のしくみ






出典:本書43ページ

だから慶應の経済学部より法学部の方が偏差値が高いというのは、同じ母集団での比較ではなく、本来比較してはならないものを比較しているのだと。

いままであまり意識していなかった就職分野なので、大変参考になった。これから新卒就職戦線に参入する学生には、少なくとも社員150名以上の職種転換が可能な規模の会社に就職することを勧めている。

同じ企業での異動も含めてリベンジ転職のチャンスは35歳頃までに2回はあるという。その会社が20年後も一流企業である保証はないので、人気や待遇ではなく、「徹底的に社風で選ぶ」べきだと。


大変参考になったので、海老原さんの別の本、「雇用の常識『本当に見えるウソ』」も今度読んでみる。

雇用の常識「本当に見えるウソ」雇用の常識「本当に見えるウソ」
著者:海老原 嗣生
販売元:プレジデント社
発売日:2009-05-18
おすすめ度:4.5
クチコミを見る


非常に参考になる本だった。もっと詳しく紹介したいところだが、本を読むときに興ざめなのでこの程度にしておく。

話題も豊富で飽きさせない。データを駆使して解説するという姿勢も好感が持てる。簡単に読めるので、是非一読をおすすめする。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 00:23Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月07日

村上式シンプル英語勉強法 もう遅い なんてことは 絶対に ない

村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける村上式シンプル英語勉強法―使える英語を、本気で身につける
著者:村上 憲郎
販売元:ダイヤモンド社
発売日:2008-08-01
おすすめ度:4.0
クチコミを見る

元グーグル本社副社長・日本法人社長の村上憲郎(のりお)さんの実戦的英語勉強法。このブログでは「村上式シンプル仕事術」を紹介した

英語はいわば「2台めの自転車に乗る方法」だから、必要なことしかやらない。高額教材はいらない。英語を頭で考えず体に覚えさせる、というのが村上さんの英語勉強法の特徴だ。

英語が使えることが目標なので、村上さんの発想は参考になる。


村上さんの英語勉強法

村上さんの英語勉強法の骨子は次の5点だ。

1.英語を読む そのためには300万語読む
300万語は小説で30冊、ノンフィクションで15冊程度。読むときは「息継ぎをしない」というのがポイントだ。

たしかに途中で「息継ぎ」して他の本などを読むと、いままでの筋を忘れてしまうことがある。英語は集中して読め、というのが村上さんのメッセージだ。

2.単語を覚える そのためには毎日1万語を眺める
丸暗記ではなく、毎日眺めるのがポイント。

3.英語を聴く トータル1000時間 筋トレ感覚で聴く
テキストは見ず、ひたすら耳を鍛える。

4.英語を書く 「英借文」とブラインドタッチを身につける
英語は作文ではなく、タイプすることが「書く」ことだ。

5.英語を話す 
「あいさつ」、「依頼」、「質問」、「意思表現」、「相手の意向を聞く」の5パターンの基本表現を覚える。自分及び自分の関心事で100の英文を丸暗記。


村上さんも英語ができなかった

村上さんが英語を本格的に勉強しはじめたのは、31歳で日立電子から外資系のDECに転職した時だ。生まれて初めて海外旅行し、アメリカで研修を受けたが、全くしゃべれなかった。

帰国後も外人からの電話をわざと取らされたりで、コンチクショー!と思ったという。

それで絶対に英語を身につけてやると決心した。劣等感が、村上さんの英語上達の原動力だ。

筆者も村上さんと同じように、最初の海外旅行がアルゼンチンへの赴任だった。

いまでこそTOEIC945点だが、最初の海外赴任のために乗ったパンナム機で、米人スチュワーデスに「ミルク」が通じず、結局ビールを持ってこられた屈辱が筆者の英語上達の原点だ。

それ以外にも何度も、「もっと英語を上達してやる!」と思ったことがある。屈辱感と「絶対に英語をものにする」という強い意志が、英語上達の秘訣だ。

村上さんは、「もう遅いなんてことは、絶対に、ない。」、「誰でも、どこにいても、努力すれば、勉強すればいくらでも伸ばせる。それが英語だ。」と語る。まさにその通りだと思う。


英語を読む

英語を読むとは、英語を英語のまま(日本語に置き換えないで)、内容を英語で読むことだ。これが英語上達の第一歩だ。

何語を学ぶにも、日本語に置き換えないで考えることが必要だ。


単語を覚える

単語を覚えるためには、平日は3,000語、土日は1万語ひたすら眺める。眺めているうちに覚えるのだと。熟語、イディオムは捨てて良いと。

筆者はこのやり方はやったことがない。筆者は20年以上「タイム誌」を購読していた。わからない単語をハイライトしておき、後で辞書で調べるという作業をコツコツ20年間行った。

1ページに下手すると5も10も、わからない単語に出くわすという状態は最後まで変わらなかった。しかし、地道に辞書を引いて覚えたので、英語のボキャブラリーというよりは、適切な英単語の選択、いいまわしには絶対の自信がついた。

会話は誰でも一定期間勉強すればできるようになる。英語のうまい下手は、結局書いたものの勝負で、その決め手は絶妙な単語の選択ができるかどうかだ。

「タイム誌」を読んでいると、単語の選択にはほれぼれする。実に適切な単語を選択して、記事を書いているのだ。


英語を聴く

英語を聴く力は、「耳の筋力」で「知力」ではない。1日1時間 X 3年=合計1,000時間聴くのだと。

リスニングのおすすめとして、ダボス会議のサイトやCNN,Newsweekのサイトが紹介されている。

weforum








世界経済フォーラムのページでは各国語にその場で翻訳できる機能が付いている。

筆者が愛用しているaudiobookのサイトAudibleもおすすめだ。
audible






現在筆者はウェレン・バフェットの伝記、"The Snowball"を通勤時間に聞いている。全部で37時間という大作だ。

The Snowball






これまでバフェットのインベスターとしての公的生活しか知らなかったが、この伝記には私生活のことも多く書かれている。

正直バフェットという人は好きになれない。どこに旅行しても食べるのはハンバーガーとフレンチフライだし、ソニーの盛田さんのニューヨークの家に招待されたときは、出された15皿のスシを一口も食べなかった。中国にビルゲイツと経済ミッションで旅行したときも、食べるものはハンバーガー(かステーキ)とフレンチフライだけ。

家族はいるが、奥さんとは長年別居しているが、公的行事には奥さんと出席する。オマハの自宅に公認の愛人と住んでおり、公的行事に愛人と出席することもある。お母さんの家系は精神病の家系で、いろいろな人が自殺したり、発狂したりしている。

ビル&メリンダ・ゲイツ財団に100億ドルもの寄付をして、アンドリュー・カーネギーの言葉通り、「富を持って死ぬことは不名誉である」を実践したが、それでも好きなタイプの人ではない。

もうすぐ37時間のオーディオブックを聞き終えるので、聞き終えたら内容を紹介する。


英語を書く

村上さんは「英作文は無理。英借文しかない」と気づいてから、すごく気持ちが楽になったという。英借文用のテンプレートをストックせよと。

筆者はいまでこそネイティブ並みの英文レターを書ける自信があるが、実は最初のピッツバーグ駐在の時に、大学でコミュニケーションを専攻した米人若手社員にビジネス文例集をつくってもらって、それがベースとなっている。

海外赴任する得意先の人にも、その文例集をコピーしてプレゼントしたら喜ばれたものだ。

その意味でも村上さんの「借文」は正しい考え方だと思う。

ちなみに村上さんは、借文よりまずタイプだと語る。ブラインドタッチをマスターすることが作文よりも前にすべきことだと。

そして内容よりレターのフォーマット(見栄え)が重要だ。英文レターは読みにくかったらダメ。米国はフォーマット重視の社会だと。

この点は筆者も賛成だ。筆者はまず英文レターを書くときは、フォントや行数を調整して1ページに極力全部収まるように書く。そしてパッと見て、そのレターが美しいかどうかを重視している。

内容も勿論だが、やはりレターは読みやすく、美しい方がよい。


英語を話す

英語を話すについては、日常英会話は5パターンしかない。つまり、

1.あいさつ

2.依頼する たとえば"Could you please..."とか、"Can I..."を自分の常套句にする。

3.何かを尋ねる

4.意思を伝える たとえば"I'd like to..."とか"I will..."とかの文例だ。

5.相手の意向を聞く たとえば"Would you like to..."や"Shall I...?"だ。

日常会話はこの5パターンのみというのが、村上流だ。

会話のもう一つのヒントは、どんな話でも自分の用意した100の話題に持って行くことだ。

英会話で最も難しいのは雑談だ。ビジネス会話なら話すことは大体決まっているので、慣れれば誰でもできるようになるが、雑談は教養と英語力の両方が必要だ。

普段から本や新聞・雑誌を読み、話のネタをストックしておき、それを小出しに使うのだ。

村上さんは、そのために100の話題を準備しろという。うまく相手を自分のペースに引き込み、あとは用意した100の話題から、TPOに応じて小出しにするのである。


以上村上さんの英語勉強法の5つのポイントを紹介した。実践的な英語勉強法で、誰でも効果が上がると思う。

筆者なりに一ひねりすると、これを是非通勤・通学時間に実践してほしい。

通勤電車に乗って思うのだが、本を読んでいる人はせいぜい2割くらいしかいない。あとはゲームかケータイ、あるいは寝ているかだ。

通勤・通学時間を有効利用することで、確実に他人に差をつけることができる。本を読んだり、オーディオブックを聴いたり、英単語を眺めたりすることで、選ばれた2割に入れるのだ。

時間は誰にも平等に与えられており、「継続は力なり」だ。通勤・通学時間などを有効利用して、村上さんやこのブログで紹介している英語勉強法を是非学んでほしい。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 00:00Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月04日

不祥事は財産だ 9件の不祥事の顛末と学習

不祥事は財産だ-プラスに転じる組織行動の基本則 (祥伝社新書184) (祥伝社新書 184)不祥事は財産だ-プラスに転じる組織行動の基本則 (祥伝社新書184) (祥伝社新書 184)
著者:樋口 晴彦
販売元:祥伝社
発売日:2009-12-01
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

樋口晴彦警察大学警察政策研究センター教授の「組織行動」シリーズ第3弾。

樋口さんは東大経済学部卒。上級職として警察庁に入り、数々の警察のポジションを経験。外務省情報調査局勤務も経験し、官費でダートマス大学でMBAも取得している。

樋口さんは失敗学の権威、東大畑中洋太郎名誉教授が会長となっている失敗学会理事も務めている。

畑中さんの「失敗学にすすめ」は昔読んだが、大変参考になる本だった。

失敗学のすすめ (講談社文庫)失敗学のすすめ (講談社文庫)
著者:畑村 洋太郎
販売元:講談社
発売日:2005-04-15
おすすめ度:4.5
クチコミを見る



9件の最近の事故・不祥事

この本では9件の最近の事故・不祥事の原因と顛末を紹介している。

1.雑司ヶ谷下水道事故 ー マニュアル通りの危険

2.三菱化学鹿島事業所火災事故 ー リスク管理の死角となった下請け会社

3.海上自衛隊イージス艦防衛機密流出事件 ー 被害を拡大させた抜本的対策の遅延

4.三井物産DPFデータ改ざん事件 ー 成果主義が誘発した企業不祥事

5.日興コーディアル不正会計事件 ー 金融エリートたちの暴走

6.ジーエス・ユアサ循環取引事件 ー 機能しなかった内部通報制度

7.シンドラーエレベーター事件 ー 業界内対立構造がもたらした情報の断絶

8.加ト吉循環取引事件 ー 売上至上主義の組織文化

9.赤福不適正表示事件 ー 強すぎた「もったいない」意識

これに加えて、歴史に学ぶ視点ということで、たぶん樋口さんの趣味なのだろう、信長最大の危機(志賀の陣)、日本の条約型重巡「妙高」の優劣、乃木将軍旅順攻略戦などのトピックについて解説している。

最近の失敗学研究では必ず取り上げられるJR福知山線の脱線事故がないのが気に掛かるが、解説されている不祥事はどれも記憶に新しい事件ばかりで、新聞などでは報道されていなかった経緯や顛末、そして最も重要な学習効果を説明していて興味深い。


三井物産DPF事件

特に筆者が興味深かったのは、三井物産のDPF(ディーゼルエンジン排ガス浄化装置)の経緯と顛末、後日談だ。

樋口さんはこの事件の遠因は三井物産の行きすぎた成果主義だと整理している。

当初S飛行機工業と共同で開発していたが、期待した性能が得られなかったのでS飛行機工業が開発の1年延期を申し出たのに対し、三井物産は子会社による単独開発を決定。

問題はワイヤーメッシュフィルターの目詰まりによる溶損で、高価なインコネル(クロム、ニッケルを大量に使った超耐熱材、ジェットエンジンなどに使われる)を使って、実験機試験を通したが、ステンレスワイヤーを使った量産品では基準を満たす見込みはなかった。

そこで三井物産の担当者は、データを改ざんする一方、都の立会人を接待攻勢で籠絡し、きちんと試験に立ち会わせないで都の認定を取得し、量産を開始した。

不祥事が発覚したのは、三井物産の社内監査だった。

この会社は実質一人の人間が牛耳っており内部統制上の問題があるとして、特命監査を実施。データ改ざんや、背任行為が発覚、三井物産は事態を公表した。

石原都知事は「都民の願いを裏切る卑劣な行為」と三井物産を非難したが、樋口さんによれば、石原都知事の反応には失笑を禁じ得ないと。こういった性能不良の製品が大量に出回ったのは、都の怠慢によるものだとまで言っている。

都が勝手に決めた厳しい基準を満たす小型DPFはなく、都は三井物産の装置が合格しないと、困る事態になっていた。だからうすうす事情が分かっていても、目をつぶったのではないかとも勘ぐれるという。

この事件のあと、三井物産は社内監査を強化。人事評価では伝統の成果主義を改め、定性評価を8割まで上げた。そしてCSR関連分野は社内承認を厳しくした。

三井物産の当時の槍田(うつだ)社長は「コンプライアンス無くして、仕事無し、会社無し」、「コンプライアンスの徹底で会社がつぶれるというのであれば、それでもかまわない」と大胆なメッセージを社内に発信し、社内の意識改革を行った。

槍田さんは「業績への影響を気にして、私が何も言わなかったら、この会社は変わらない」、「物産には目標を達成しようという企業風土が骨の髄までしみこんでいる。」、「そんななかで、私まで利益、利益と言い出したら、『形状記憶合金』のように元の状態に戻り『数字の病気』が出てしまう」と語っている。

いかにも東大工学部精密機械工学科出身の槍田さんらしいコメントだ。

三井物産は不祥事を風化させないために、「風化させないために」と題する新書230ページの社内資料を作成し、湯河原の社員研修所には問題のDPFが飾られている。

三井物産DPF











出典:本書91ページ

たしかに10年ほど前までは、すべての会社でコンプライアンスに対する意識が低かったと思う。別に不正を働いていたわけではないが、たとえば残業時間などは36協定を破るのが常態化していた。

そんななかで、会社がつぶれるという危機を持って、社内の意識改革に努めた槍田さん以下の物産のトップマネージメントは良い実例を残してくれたと思う。


三井物産の独立採算制と成果主義

次は筆者の意見である。

筆者は槍田さんとは直接面識はないが、槍田さんが常務で情報産業本部長時代に、物産と共同事業をやっていた経験もある。湯河原の研修所で、物産の仲間と一緒に研修したこともある(事件の前なので当然DPF展示はない)。

三井物産といえば昔は部別独立採算制で、海外駐在員も含め部長が全人事権を掌握し、他社の本部長並の権限を持っていた。

だから一つの商品を、たとえば鉄鋼と非鉄の複数の部が、社内で取り合うというようなことも起きていた。

DPFも本来なら機械本部が取り扱うところだろうが、機械ではなく化学品で見つけてきた商材なので、化学品部門(現在は機能化学品本部機能化学品業務部が窓口)が取り扱っていたのだろう。

この本で指摘されている三井物産の成果主義以外にも、商材を見つけた人がたとえ商品エクスパートでなくても、そのビジネスを手がけるという社内ルールにも、この”ありえない事件”の根本原因があるのかもしれない。

ちなみにこの物産のDPF顛末は、2004年の事件ながら、いまだに物産のホームページに掲載されている。まさに「風化させないために」だ。


その他、上記に挙げたような事件が、詳しく解説されていて参考になる。

今や不祥事を起こすと企業には致命的なダメージにもなる。この本のタイトルのように「不祥事は財産」とできる余裕のある企業は大企業に限られると思うが、少なくとも他の企業には他山の石となるので、その意味では知的財産と言えるかもしれない。


乃木将軍を無能呼ばわりの司馬史観は誤り

おまけの乃木大将の話は、司馬史観のベースとなった陸軍大学の兵学教官が執筆した「機密日露戦史」を批判している。乃木批判は後世の後知恵であると。

機密日露戦史機密日露戦史
著者:谷 寿夫
販売元:原書房
発売日:2004-05-25
おすすめ度:5.0
クチコミを見る


「機密日露戦史」は参謀本部が自らの非を認めず、第三軍司令部や乃木将軍に責任転嫁する意図を持って書かれたと樋口さんは語る。

それに加え、藩閥批判(乃木将軍は長州、伊地知参謀長は薩摩出身)と奇策重視の陸軍大学の教育方針を正当化する意図もあったという。

乃木将軍の件は、世によく知られた事案でも、真の教訓が伝えられているとは限らない格好の例であると。

最後にまとめとして、「重大な失敗事案について、担当者個人のミスだけを問題視している文献を当てにしてはならない」というのが樋口さんの識別法だと語っている。


最近起こった事件を中心に解説しているので、興味深く、簡単に読めて参考になる本だった。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。


  
Posted by yaori at 00:59Comments(0)TrackBack(0)

2010年06月02日

新・ニッポン開国論 伊藤忠会長の丹羽さんのコラム集

新・ニッポン開国論新・ニッポン開国論
著者:丹羽宇一郎
販売元:日経BP出版センター
発売日:2010-03-04
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

伊藤忠商事会長の丹羽宇一郎さんが書いている「日経ビジネス」の最後のページのコラムを編集した本。

このブログでは丹羽さんの本は、「人は仕事で磨かれる」とキャノンの御手洗さんとの対談集の「会社は誰のために」を紹介した。このうち「人は仕事で磨かれる」は、まさにタイトルどおりの本で、大変参考になった。筆者が読んでから買った数少ない本のうちの一冊だ。

この本では4ページくらいの長さのコラムを編集しているので、簡単に読める。

この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、是非目次を見て貰いたい。

参考になったものをいくつか紹介しておく。


★不況期こそコミュニケーションを
今は正社員、派遣社員、パートタイマー、アルバイトなど様々な職種の人が集まってチームを構成することが多い。その際にメンバーが孤立すると、不祥事が起きる温床となる。それを防ぐためにはリーダーは1にコミュニケーション、2にコミュニケーション、3にコミュニケーションだ。つまりコミュニケーションに尽きる。


★国を滅ぼす「もうひとつの恐ろしい感染症」
企業が失敗する条件は、「保守」、「思い上がり」、「自己満足」だ。それに対し企業が成功する条件は、「顧客」、「競争」、「変革」だ。「間接的ゴマすり症候群」が蔓延しつつあるという。トップに逆らわない静かな取締役会などがその症状だ。


★リーダーは私利私欲を自制せよ
次世代教育で最も大事なのは倫理だ。己に克つ強い心、つまり克己心(こっきしん)を持った人材を育てなければならない。


★農業は国の宝
国土に占める農地の割合は日本は12.5%で、他の先進国に比べて極めて低い。アメリカ4割、英国で6〜7割、その他先進国で5〜6割だという。日本の地方を再生させるには農業しかないと丹羽さんは力説する。

日本の米作りを強化して、コスト競争力をつけろと提案する。


★コーヒー一杯分の恩返しを
丹羽さんは国連の世界食糧計画(WFP)を支援するNPO,”国連WFP協会”の会長を務めているという。1人分20円で給食が提供できるので、コーヒー一杯分でも10人分の給食費がカバーできる。是非募金を!と呼びかけている。

丹羽さんは”国連WFP協会会長”としてケニアを訪問したとしか書いていないが、このブログで紹介した「20円で世界をつなぐ仕事」によると、日本発のNPO運動"Table for Two"は伊藤忠の社員食堂からスタートしたはずだ。

“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事“想い”と“頭脳”で稼ぐ 社会起業・実戦ガイド 「20円」で世界をつなぐ仕事
著者:小暮 真久
販売元:日本能率協会マネジメントセンター
発売日:2009-03-21
おすすめ度:4.5
クチコミを見る

自分や自社の社会貢献活動を全然宣伝していない。奥ゆかしいというか、謙虚だ。地下鉄で通勤し、12年物のカローラIIを乗り続けているという丹羽さんの人柄がうかがわれる。


★消費税年金ポイントカードで衰退は食い止められる
年金は年金版ポイントカードを導入して、消費税に応じた年金ポイントが貯まるしくみを提案している。課題も多いが、消費税年金は基礎年金の補完的な役割を果たせると思うと。

実現性はともかく、ポイントカードをつくれば国民一人一人が年金ポイントを常に意識することとなり、効果があるかもしれない。

もちろんその前に、アメリカの社会保障番号のようなものを取り入れることも必要だろう。


★高卒採用で老人企業を防ぐ
まだ私案ではあるが、丹羽さんは伊藤忠の人事担当に高卒・専門学校卒の採用を検討するように指示を出したという。まずはグループで採用し、いずれ伊藤忠本体でも働けるようにしたいと。

大卒も就職難だが、高卒はさらに大変のようだ。たしかに総合商社は昭和40年代までは高卒も採用していた。筆者の先輩でも高卒で優秀な人もいる。丹羽さんの発想は面白いと思う。


丹羽さんのコラムはいつも読んでいるが、こうして本にまとめても参考になることが多い。



参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。



  
Posted by yaori at 12:55Comments(0)TrackBack(0)