2011年08月25日

われ日本海の橋とならん 中国で最も有名な日本人 加藤嘉一さんの本

われ日本海の橋とならんわれ日本海の橋とならん
著者:加藤 嘉一
ダイヤモンド社(2011-07-23)
販売元:Amazon.co.jp
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以前紹介した一新塾のメンバーの友人から紹介されて読んでみた。

明治時代、新渡戸稲造は、アメリカ留学に際して「われ太平洋の橋とならん」と語ったという。

それにならって、”中国で一番有名な日本人”の加藤嘉一(よしかず)さんが、中国政府の官費留学生として北京大学に学び、大学院まで卒業した自らの経験を紹介し、日本の若者に対し、日本人が海外に出て行くことは”ローリスク・ハイリターン”なのだと、海外への雄飛を呼びかける。

楽天の三木谷さんもツイッターでこの本を紹介していた

「友人に頂き読みましたが。本当に共感するところが多い本でした。このような若者がどんどんとでてこないと!」

書店に並んでいる本には、次のような帯がついている。

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著者の加藤嘉一さんは、1984年静岡県の伊豆地方の生まれ。現在27歳の若者だ。

山梨学院大学附属高校から提携校の北京大学に中国政府の官費留学生として学部4年間と大学院の2年間学ぶ。(ちなみに学生は全員寮生活で、宿舎費は年間1万3千円、食費は一日15元=200円程度だという)


言葉は世界へのパスポート

箱根駅伝で有名な山梨学院大学の附属高校という校名でピンとくるように、中学時代から陸上競技に打ち込む一方、いずれは世界に出るべく英語勉強にも精を出す。

加藤さんの英語勉強法は、1.毎日辞書を読み覚える。2.自転車通学途上で「一人芝居」で英語会話をする。3.英語新聞を毎日読む。というものだ。中・高時代は、国連職員になるというのが目標だったという。

加藤さんは2003年から北京大学に留学する。ちょうどSARS問題で半年間休講だったので、その間毎日、色々な人と世間話9時間、単語の読み書き2時間、人民日報を音読して暗記、ラジオで中国語放送を聞くという中国語漬けの生活を送って、半年でネイティブなみの中国を話すようになる。

言葉は「世界」へのパスポートであり、その国の人々から受け入れられ、心の永住権を得るためのグリーンカードなのだと。

筆者も全く同感である。筆者は会社に入って3年目でアルゼンチンの研修生として2年間ブエノスアイレスで暮らした。その後米国ピッツバーグには2回にわたり合計9年間駐在した。

「芸は身を助ける」ならぬ「言葉は身を助ける」が筆者の持論だ。


北京大学での学生生活

北京大学の公用語は英語で、英語力とパワーポイントなどを使ってのプレゼン能力は、若者フォーラムで交流のある東大生も舌を巻くほどで、比較にならないという。加藤さん自身も「世界には、こんなにすごいやつがいるのか!」と衝撃を受けたという。

学内のコピー料金は安く、分厚い専門書も200円もあればコピーできてしまうので、学生は英語の専門書や「タイム」や「ニューズウィーク」など海外の雑誌もまわし読みかコピーで必ず目を通すという。


中国のテレビのインタビューで一躍有名人に

中国語がかなりできるようになった2005年4月に、反日デモで日本大使館が投石されたり、日本料理屋が壊されたりした最中に、香港のテレビ局のインタビューを受ける。

インタビューで日中どちらに非があるかを問われ、簡単に現状分析を語り、「外交的な案件であるかぎり、どちらに非があるというようなものではない」と切り返し、「問題解決には相互理解に基づく建設的な議論が必要である」と語った。

その時の受け答えが見事で、中国語が完璧だったことから、中国メディアの取材が殺到し、現在はテレビ局のコメンテーターや中国語版ファイナンシャルタイムズに自分のコラム「第3の目」を持ってコラムニストとしても活躍している。

年間300本以上の取材を受け、100回以上の講演を行い、毎年2〜3冊のペースで出版し、胡錦涛主席とも会見し、胡錦涛主席は加藤さんのブログの読者だという。加藤さんは中国共産党の指導部と個人的にコンタクトできる間柄だという。

中国のメディアは「加藤現象」と呼び、「中国でもっとも有名な日本人」と呼ばれているという。

まさに「言葉は身を助ける」の典型だ。


加藤さんのストライクゾーン

加藤さん自身は次の4つの観点から自分の発言をコントロールしているという。

1.自分は日本人であること。2.ここは中国であること。3.政府・インテリ層にとって価値ある提言であること。4.大衆に伝わる言葉であること。この4つの接点が加藤さんのストラークゾーンなのだと。


中国についての7つのよくある質問

加藤さんは、次の7つのよくある質問から始めている。

1.中国に自由はあるのか? 
民主主義国の日本でも目に見えないタブーがある。中国には天安門事件という最大のタブーがあるが、それ以外は比較的自由だ。

2.共産党の一党独裁は絶対なのか?
中国共産党は7800万人もの党員を抱える世界最大の政党である。民主主義的選挙はないが、政治は国内世論を後ろ盾とする健全な権力闘争が存在し、成果主義が根付いている。

3.人々は民主化を求めているか?
天安門事件で最も流血を見たのは北京大学生だった。人々は現実主義者となり、民主主義信奉者は少ない。共産主義も民主主義も手段なのだと考えている。

4.ジャーナリズムは存在するのか?
一部の官製メディアを除き、地方メディアは独立採算、これにインターネットメディアが加わる。天安門事件という最大のタブーはあるがそれ以外は誰にもコントロールはできない状態だ。

ちなみに中国にはGoogleもFacebookもYouTubeもないが、中国版のGoogle, Facebook,YouTubeの様なサイトがあるので、ほぼ同じサービス・情報が得られるのだと。

5.本当に覇権主義国家なのか?
中国の人口は13億人。13億人をまとめるのは大変な仕事であり、中国の指導者が最も恐れているのは国内の分裂だ。インターネットにより情報統制は不可能となったので、国民の世論が爆発しそうな国家主権と領土保全問題には、強い態度を取らざるをえない。これが中国が「核心的利益」を追求する背景だ。

6.途上国なのか超大国なのか?
経済規模はアメリカに次ぐ規模だが、いまなお「戦略的途上国」の立場を取るという「ダブルスタンダード」がある。加藤さんは「戦略的途上国」を卒業せよと訴えているという。

先日読んだ「2011〜2015年の中国経済」という東大の田中修教授の本の最後にも”中国は「大国」か”という文があった。

2011~2015年の中国経済―第12次5カ年計画を読む2011~2015年の中国経済―第12次5カ年計画を読む
著者:田中 修
蒼蒼社(2011-07)
販売元:Amazon.co.jp
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田中教授は「心・技・体」が揃わない中国はまだ大国とはいえないと、加藤さんと若干異なる観点から同様の結論を出していた。

7.反日感情はどの程度なのか?
中国は第2次世界大戦の戦勝国であり、日本軍国主義と戦って勝利し、戦禍と貧困にあえぐ中国人民を解放し、新生中国を建設したのは共産党だという「建国神話」がある。(筆者注:これが「神話」である理由は、日本を倒したのは米国とその圧倒的な武器・物資支援であって、共産党は山の中に閉じこもっていただけという見方があるためだ)

そのため「親日国」ではないが、日本製品の評価は高く、親日的な人もいる。


日中関係について

加藤さんは、尖閣列島沖中国漁船拿捕事件の時に、中国政府がレアアースの輸出停止を打ち出したのは、中国政府が事前にシミュレーションを行って、先手を打ってきたものだと語る。

中国は天安門事件の反省から、1990年代から「愛国教育」を行ってきた。その結果、「反日は正義」と考える若者が「日本の横暴を許すのか!」と爆発してしまう新しいリスクが生じてきている。

中国政府にとって、日本と敵対するメリットはなにもないが、反日は「建国神話」ともつながり、厳しい態度を取らざるを得ないのだ。

だから小泉首相の靖国問題が一段落すると、当時の谷内外務次官と戴秉国(たいへいこく)外交部常務副部長との間で、「日中総合政策対話」を始め、その成果として「戦略的互恵関係」を打ち出した。

これは以前紹介した、宮本前駐北京日本大使の「これから中国とどう付き合うか」に詳しい。

これから、中国とどう付き合うかこれから、中国とどう付き合うか
著者:宮本 雄二
日本経済新聞出版社(2011-01-06)
販売元:Amazon.co.jp
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その象徴的なできごとが、東日本大震災に際し、中国が日本に初めて救援物資を送り、救援隊を送ったことだ。

中国は3000万元(3.8億円)の救援物資と15名の救助隊を派遣し。約20億円のガソリン、ディーゼルオイル、ミネラルウォーターなどを日本に初めて送った。


「暇人」という政治勢力

加藤さんは若者と並び、失うものを持たない政治勢力があるという。それを仮に「暇人」と呼んでいる。仕事はしないが、不動産はあるので最低限の生活はできる人たちだと。

この「暇人」=政治パワー論は初めて聞いた。まさに北京で学生・民衆と一緒になって生活していないと分からない指摘なのだと思う。


日本の政治不在に警鐘

加藤さんは日本の政治不在にも警鐘を鳴らしている。

中国の四川省大地震の時に、温家宝首相はその日のうちに被災地入りし、胡錦涛主席が5日目に現地入りした。

トップダウンで取り組む姿勢が明らかだし、わかりやすい。

さらに四川大地震の復興には、自治体レベルの復興支援が機能した。たとえば北京市がA市、上海市がB市、天津市がC市という具合だ。

一方日本の菅直人首相が現地入りしたのは23日後、それ以前はヘリコプターで上空から視察しだたけだった。

中国と対比するとリーダーシップ不在の日本の現状が浮かび上がる。中国は3.11以降、トップダウンですべての原発計画を白紙に戻している。


見方がちょっと外人化?

加藤さんは3.11地震の翌週の月曜日にいつも通り通勤する東京のサラリーマンを見て驚いたという。

「今日くらいは家族と一緒に過ごしたらどうなんだ?ここで有給休暇を使わずしていつ使うのか?」。日本人は忍耐心や我慢心が強すぎるのではないかと。

加藤さんに指摘されるまで、そんな考えは思いもつかなかった。筆者自身も家では本棚の本が倒れたり、ランプや飾り皿などが破損するという被害があったが、会社を休むという発想は全くなかった。

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あの時は日本人誰もが、大地震・津波から一刻も早く"Business as usual"、いつもの状態に戻ろうとしていたのだと思う。その意味で加藤さんの「休みを取る」という発想には違和感を感じる。

やはり日本に住んでいないと、良い意味でも悪い意味でも一般的な日本人のセンスとはズレる部分があるようだ。


若者よ海外に出でよ

最後に加藤さんは、日本の若者に海外に出ようと呼びかける。

具体的にはすべての大学生に2年間の猶予を与え、1年間は海外留学、1年間は社会で介護事業などでインターンとして働くことを提案している。1年間の留学費を後半の1年間の労働でまかなうのだと。

筆者も24歳でアルゼンチンに赴任した。加藤さんのアイデアの実現性はともかく、是非日本人には”ローリスク・ハイリターン”の海外を目指して欲しい。


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2011年08月22日

映画 ソイレントグリーン 人類の飢餓問題解決策?

港区図書館でDVDを借りて、学生時代に見た「ソイレントグリーン」を見た。

ソイレント・グリーン [DVD]ソイレント・グリーン [DVD]
出演:チャールトン・ヘストン
ワーナー・ホーム・ビデオ(2003-08-08)
販売元:Amazon.co.jp

2008年に亡くなったチャールストン・ヘストン主演のSF映画だ。1973年の作品なので、約40年前の作品だ。

2022年のニューヨークが舞台で、未来のニューヨークは車もポンコツで、50年前から全然進歩していないという設定になっている。



次がこの映画の最後のシーンだ。



映画を見た人でないと、このセリフの意味がわからないかもしれない。タネ明かしをすると興ざめなので、コメントは差し控えておく。どうしても筋を知りたい人は、ウィキペディアで”ソイレントグリーン”で検索して欲しい。

この映画が出来た前の年の1972年にベストセラーとなったローマクラブの「成長の限界」は、エネルギー問題や食料問題が人類の成長の足かせとなると予言している。

成長の限界―ローマ・クラブ人類の危機レポート成長の限界―ローマ・クラブ人類の危機レポート
著者:ドネラ H.メドウズ
ダイヤモンド社(1972-05)
販売元:Amazon.co.jp
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ローマ・クラブの予言の通り食糧危機が起きると、人類の未来はこうなるという予測したのが、この映画だ。

筆者はちょうど大学生になったばかりの頃で、エネルギー枯渇と食料危機のため、漠然と人類の未来に不安を感じていたことを思い出す。

ジョージ・ハリソンが中心になってバングラデシュのためのコンサートを開催して、そのアルバムや映画が大ヒットした頃だ。

Concert for BangladeshConcert for Bangladesh
アーティスト:George Harrison
Capitol(1991-07-30)
販売元:Amazon.co.jp
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1960年代には中国でも飢餓で何千万人という人が死んでいたし、1970年代にはアフリカのビアフラ(現在はナイジェリア)やバングラデシュでも飢餓で何百万人も死んでいった。

当時は飢餓が解決できるという確信はなかった。それが今や人類は60億人に増加しても、飢餓が大きな問題になることはない。

今度紹介する「大気を変える錬金術」のハーバー・ボッシュ法による、空気中の窒素固定法により肥料が増産できるようになったり、収穫量が飛躍的に増加する遺伝子組み換え作物ができたからだろう。

大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀大気を変える錬金術――ハーバー、ボッシュと化学の世紀
著者:トーマス・ヘイガー
みすず書房(2010-05-21)
販売元:Amazon.co.jp
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エネルギー問題については、原子力の利用拡大も大きい。

東電の福島原発の事故以来、原発反対の声が強まっているが、ほんの40年前までは、化石燃料の枯渇でエネルギー危機が来ることを、世界中が恐れていたことを思い出して欲しい。

拙速な反・原子力の流れに巻き込まれず、人類の未来を見据えた議論が必要だと思う。

1972年のこのSF映画を見て、そんなことを思った。


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2011年08月20日

ホームレス中学生 笑えて泣ける家庭の「解散」劇

2011年8月20日追記:

最近このブログを訪問される人が増えている。通常、訪問者数は500人/日程度なのだが、先週は800人/日を超えた。

8月中旬からの特徴は、「読書感想文」と「ホームレス中学生」で検索して、このブログを訪問する人がそれぞれ100名/日おられることだ。

どうやら夏休みの読書感想文に「ホームレス中学生」を選んで、作文を書く際にインターネットで検索したら、このブログを見つけたという人が多いようだ。

あるいはこのブログで紹介した田村君のお兄さんの「ホームレス大学生」の読書感想文を書く人もいるのかもしれない。

以下の追記の通り、ちょうど3年前の2008年8月にも同じ現象が起きている。その時は気が付かなかったが、読書感想文ということでピンときた。

読書感想文に役立つかどうかわからないが、リクエスト?に応えて「ホームレス中学生」のあらすじを再掲する。


2008年8月18日追記:

「ホームレス中学生 あらすじ」で検索して、当ブログを訪問する方が急に増え、大体1日150人前後おられる。現在の検索ワードNo. 1だ。

本は200万部を超え、7月にフジテレビでホームレス中学生がドラマとなったことや、10月には小池徹平主演で映画にもなることから、人気が再燃している様なので、あらすじを再掲する。

しかしフジテレビのドラマで田村君役をやった13歳の黒木辰哉君。こうしてみると信じられないほど田村君に似ている。

ホームレス中学生TV





映画は小池徹平主演なので、田村君とは似ていないが、前評判は上々の様だ。

ホームレス中学生映画






テレビドラマも面白かったが、映画も楽しみである。


2008年4月22日初掲

ホームレス中学生ホームレス中学生
著者:麒麟・田村裕
販売元:ワニブックス
発売日:2007-08-31
おすすめ度:4.0
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漫才コンビ麒麟の田村君の、中学生の時に公園に一ヶ月ほど住んでいたというホームレス生活を中心とした自伝。

衆議院議員の麻生太郎氏も推薦している。

「突然の「解散」が家庭にもあったとは…。お笑いタレントが書いた本に、これほど泣かされるとは…。ここには、日本人として忘れてはならない何かがあります」

アンパンマンのやなせたかしさんも推薦文を載せている。

「人々にパンを与えたアンパンマン、ハトからパンを奪った田村くん。どちらの話も、みんなに勇気を与えてくれる」

本の表紙は段ボールを似せてつくっており、帯には段ボールをかじり、雑草を手にする田村君の写真が載っている。

大阪の吹田市のマンションに一家四人(既にお母さんは直腸ガンのため田村君が小学五年生の時に亡くなっており、お父さんと、お兄さん、お姉さん、田村君の三人兄弟)で住んでいた田村君一家は、田村君が中学二年の一学期の終業式の日に、自宅マンションから追い出される。

お父さんの収入が激減し、ローンが払えないため差し押さえになったのだ。

お父さんは以前は大手製薬会社に勤めていたが、お母さんを看病しているときに、やはりガンとなり、仕事をクビになったのだ。

お父さんは「ご覧の通り、まことに残念ではございますが、家のほうには入れなくなりました。厳しいとは思いますが、これからは各々頑張って生きて下さい。………解散!」と言い残してどこかに行ってしまう。

コンビニでバイトしていた京都教育大学生のお兄さんと、受験生のお姉さんは吹田市のいざなぎ神社の公園、田村君は「友達の家に泊めて貰う」と強がりを言って、実は通称「まきふん公園」のカタツムリ型滑り台の中で生活を始めた。

数日で生活費がなくなり、まずは雑草、次に段ボールを水に濡らして食べてみるが、到底食べられるものではなかった。自動販売機の取り忘れ釣り銭や、ハトのえさのパンの耳を貰ったりして生活していると、子供達が田村くんに気が付き、石を投げて攻撃してくる。

一ヶ月弱公園生活をしていると、道でクラスメートの川井君に会い、お母さんの好意で、川井君の家に住まわせて貰うことになる。お姉さんも親類の家に引き取られ、お兄さんだけは学校の校舎などで生活を続けた。

川井君のお母さんなどが費用を出してくれて、兄弟一緒にアパートを借りて住むことになる。生活保護を受けて田村君は普通の中学生活に戻り、バスケ部も続け、お兄さんの薦めもあり吹田高校に進学してからもバスケを続ける。

そのうち、みんなの前ではおどけてみんなを楽しませていたが、一人になると生きていてもしょうがないという気持ちがもたげてきた。そんなときに田村君を救ったのは、教師として悩んでいた担任の工藤先生の手紙だった。

田村君は生きる望みを取り戻し、みんなにほめられるような立派な人間となりたいと決意する。

一時は一日2,000円貰っていた生活費は、300円となり一日一膳だけご飯を家で食べて良いという条件に変わった。

このときに田村君が「味の向こう側」と呼ぶ、ご飯を一口10分以上噛んでいると味わえる最後の瞬間の味と出会う。兄弟はごはん一膳で二時間以上噛んでいたという。

田村君が回転寿司屋で皿洗いのバイトを始めて300円生活は半年ほどで一日1,000円に改訂されたが、300円生活は本当に苦しかったという。

高校ではバスケの顧問の先生に見込まれて生徒会長になった。田村君がしゃべるとみんなが聞いてくれると先生は言ったそうだ。

田村君の人を惹きつける人なつっこさ、カリスマは高校時代からも傑出していたのだろう。

その後吉本のNSC(吉本総合芸能学院)に入学し、現在の相方川島君と出会い、麒麟を結成する。

実はお兄さんも一時NSCに在籍していたが、兄弟二人も生活の安定しない芸人を目指すのは支援してくれた人たちに申し訳ないということで、お兄さんは自分から辞めたのだと田村君は言う。

いろいろな人の支援、そして天国のお母さんの導きがあって今の芸人生活に入れたので、お母さんへのメッセージでこの本を締めくくっている。


若いとはいえ人生の荒波をくぐってきた人の言葉は重みがある。コミカルに書いてはいるが、ウルウルしてしまうところも多い。

ベストセラーになるべくしてなった感動の自伝だ。

簡単に読めるし、どこの本屋でも置いているはずなので、是非手にとってめくって欲しい本である。


参考になれば次クリック投票お願いします。




  
Posted by yaori at 23:42Comments(3)TrackBack(0)

2011年08月16日

頑張れ! 武田ランダムハウスジャパン 第2弾 最後の授業

このブログでも書いた「アインシュタイン その生涯と宇宙」の翻訳不備が、新聞やテレビでも取り上げられて一騒動起こった。出版社の武田ランダムハウスジャパンの損害は数千万円になると思うが、是非再発防止策を出版業界全体で考えて欲しいものだ。

武田ランダムハウスジャパンは良い本を多く出している。前回はアカデミー賞受賞の「スラムドッグ$ミリオネア」の原作の「ぼくと1ルピーの神様」を紹介したが、同じく武田ランダムハウスジャパンのホームページで気が付いて読んだ本をもう一冊紹介する。

それは膵臓ガンに冒され、余命数ヶ月となった2007年9月にカーネギー・メロン大学で最後の講義を行ったバーチャル・リアリティの権威ランディ・パウシュ教授の「最後の授業」だ。

最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版最後の授業 ぼくの命があるうちに DVD付き版
著者:ランディ パウシュ
武田ランダムハウスジャパン(2008-06-19)
販売元:Amazon.co.jp
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この本の紹介ビデオはYouTubeにも載っている。



全部で1時間強の「最後の講義」は9部に分けてYouTubeに載っている。ここでは最初の第1部と最後の第9部を紹介しておく。





講義は1時間だけだが、本ではランディが自分の生い立ちや学生生活を振り返り、自分の夢を実現するには何を心掛ければ良いのかを語る。

ランディはブラウン大学を卒業した後、ピッツバーグのカーネギー・メロン大学の大学院の博士課程に進む。

筆者はピッツバーグに合計9年間駐在していたので、カーネギー・メロン大学はこのブログで紹介したロボテックスの金出先生はじめ、親しみがある大学だ。特にカーネギー・メロン大学のAIやロボットの研究は世界トップクラスで、日本からも多くの留学生が学んでいる。

カーネギー・メロン大学は日本ではあまり知名度が高くないかもしれないが、世界の大学ランキング2010の20位にランクインしている。日本では東大の26位が最高位だ。

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出典:「米国の一流大学は本当にすごいのか?」14ページ

ランディの大学院進学の際は、一旦はカーネギー・メロン大学から不合格通知を受けたが、ブラウン大学の恩師アンディ・ファン・ダムとカーネギー・メロン大学の学部長がオランダ人同士で親しかったこともあり、無理矢理頼んで入学した。

この本の中でもしばしば出てくる「レンガの壁」を乗り越えるには、決して諦めてはいけない、助けてくれる人があれば力を借りればよい。そして壁を乗り越えた後は、他の人のために自分の経験を話すのだと。

この本の前半は自分の生い立ちや経験についてで、後半の第4章からが夢を叶えるための講義だ。

この本は「なか見!検索」に対応していないし、本の目次には章題しか示していないので、「なんちゃってなか見!検索」で第4章、第5章の節題まで含めた目次を紹介しておく。この本の伝えたいメッセージがわかると思う。

第4章 夢をかなえようとしているきみたちへ
・時間を管理する
・仲間の意見に耳を傾ける
・幸運は、準備と機会がめぐりあったときに起こる
・きみはもっとできる
・人の夢をかなえるプロジェクト

第5章 人生をどう生きるか
・自分に夢を見る自由を与える
・格好よくあるよりまじめであれ
・ときには降参する
・不満を口にしない
・他人の考えを気にしすぎない
・チームワークの大切さを知る
・人のいちばんいいところを見つける
・何を言ったのでなく、何をやったかに注目する
・決まり文句に学ぶ
・「最初のペンギン」になる
・相手の視点に立って発想する
・「ありがとう」を伝える
・忠誠心は双方向
・ひたむきに取り組む
・人にしてもらったことを人にしてあげる
・お願いごとにはひと工夫
・準備を怠らない
・謝るときは心から
・誠実であれ
・子供のころの夢を想い出す
・思いやりを示す
・自分に値しない仕事はない
・自分の常識にとらわれない
・決してあきらめない
・責任を引き受ける
・とにかく頼んでみる
・すべての瞬間を楽しむ
・楽観的になる
・たくさんのインプット(講義を見た人からのメッセージ)

ランディはカーネギーの本についてはふれていていないが、「相手の視点に立って発想する」などは、まさにカーネギーの教え通りで、この本を読んでいてカーネギーとの共通点が多いと感じた。

ランディの8歳の時の夢は次の通りだという。

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出典:本書38ページ

この本の前半ではこの夢をかなえるためにランディがしてきたことを語っている。「NFLでプレーする」は最後の授業の後、ピッツバーグスティーラーズの練習に参加することで、かなえられたという。

また「カーク船長になる」とは、スター・トレックのカーク船長のことだが、カーク船長役のウィリアム・シャトナーはカーネギー・メロン大学のバーチャル・リアリティ研究室を訪ねてきたことがあるという。

ランディが末期ガンになったと聞き、カーク船長は写真にメッセージを書いて送ってきた。それは有名な"I don't believe in No-Win Scenario"、つまり「勝つシナリオが必ずある」(これは筆者の意訳。元々は「勝ち目のないシナリオなんかない」となっていた)という言葉だ。

Star Trek












出典:本書65ページ

ランディはバーチャル・リアリティクラスをたちあげ、演劇学教授のドン・マリネリと共同でエンターテインメント・テクノロジー・センター(ETC)を創設した。

ETCはオーストラリアと日本の大阪に研究拠点を持ち、韓国とシンガポールにも拠点があるという。

カーネギー・メロン大学の開発した簡単にアニメーションをつくれるアリスというソフトウェアが紹介されている。今度一度試してみる。

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ちなみにカーネギー・メロン大学は神戸市に日本校があり、大学の研究機関CyLabの教育部門である情報ネットワーキング研究所(INI)の過程を通してアメリカの修士号を取得できるという。

いくつか印象に残った部分を紹介しておく。

★「自分に言い寄ってくる男性がいたら、気をつけることは簡単。彼の言うことはすべて無視して、彼のすることだけに注意すればいいの」
この本はランディの3人の子供(一番上が5歳)にも向けられた内容なので、一番下の娘のクロエ(1歳半)には、ランディの女性同僚から聞いた言葉を贈っている。
なるほど。

★「最初のペンギン」になる
これは最初に海に飛び込んだペンギンは勇気があるということから、ランディのバーチャル・リアリティのクラスでは、リスクを冒して新しい技術に取り組んだが、目標を達成できなかったグループに「最初のペンギン」賞を与えているという。

経験とは、求めていたものを手に入れられなかったときに(つまり失敗した時に)、手に入るものだと。

★相手の視点に立って発想する
ランディは、バージニア大学でユーザー・インターフェイスの授業を教えていた時に、ビデオカセットデッキを教室に持って行って、ハンマーで壊したという。

昔の日米貿易摩擦の時に、アメリカの国会議員がトヨタの車をハンマーで壊したり、東芝のカセットデッキをハンマーで壊したことを想い出させる逸話だ。

「使いにくいものをつくれば、人は怒る。あまりに頭に来て、それを壊したくなる。人々が壊したくなるものをつくりたくはないでしょう」

いらいらした大衆が簡潔さを切望していることを忘れずにいてほしいと。

★「ありがとう」を伝える
これは手書きの礼状のすすめだ。カーネギー・メロン大学のETCの志望者を不合格にしようと思ったが、彼女が書いた手書きの礼状(事務受付係宛で合否判定とは関係ない係)を見て、採用を決めたという。

今はディズニーのイマジニア(ディズニーランドのクリエイター集団ウォルト・ディズニー・イマジニアリング社社員)になっているという。

手書きの手紙は魔法を起こすという。

夢を形にする発想術夢を形にする発想術
著者:イマジニア
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2007-02-05)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


★自分に値しない仕事はない
ランディは就職前の学生にこう助言するという。

「郵便を仕分ける仕事に決まっても、心から喜ぶべきだ。仕分け室に行ったら、やるべきことはひとつ。郵便の仕分けの達人になることだ」

同趣旨のことを楽天の三木谷さんも言っている。

三木谷さんが日本興業銀行に入行して、ルーティン業務の外国為替部門に配属されたときも、めげずに外為処理の生産性を上げる努力をした。それが認められてハーバードビジネススクール留学が決まったという。

「一生懸命」は元々は「一所懸命」で、持ち場で努力するということだ。


ランディは2007年9月18日の「最後の授業」の後、1年近く生きて2008年7月25日に亡くなっている。

墓碑に何と書いて欲しいかと聞かれ、「末期ガンの宣告を受けても30年間生き続けた男」と書いて欲しいと言ったという。30年ではないが、たぶん「末期ガンの宣告を受けて3年間生き続けた男」にはなると思う。3年でも驚くべき長さである。

YouTubeのビデオでもわかるが、「最後の授業」の時のランディは、軽々と腕立て伏せをしたり、腕立て伏せをしながら拍手をしたり、とてもガンに冒されている人とは見えない。1年も経たずに亡くなったことが信じられない。

実は筆者の友人の奥さんが今年初めに膵臓ガンで亡くなった。膵臓ガンは進行が早く、直すことが難しいので致死率も高い。昨年の夏の段階で友人からは奥さんが膵臓ガンになったことを聞いていた。彼女の場合たぶん発見から1年あまりの余命だったのだろう。

時価総額が世界最大となったアップルのスティーブ・ジョッブスも膵臓ガンの宣告を受けたが、手術のできる珍しいタイプだったので、いままで生きながらえていることを、2005年スタンフォード卒業式の伝説のスピーチで語っている。


本も良いが、YouTubeのビデオも日本語字幕付きなので、是非見て欲しい。必ずや何か感じ取るものがあるはずだ。


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2011年08月08日

やめないよ キング・カズ 三浦知良のエッセー集

やめないよ (新潮新書)やめないよ (新潮新書)
著者:三浦知良
新潮社(2011-01-14)
販売元:Amazon.co.jp
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日経新聞のスポーツ欄にほぼ隔週で連載しているキング・カズこと横浜FC所属三浦知良選手のエッセー集。

筆者は一度だけカズの試合を見たことがある。

横浜FCがJ−1に昇格してのリーグ戦で、ジェフ千葉との試合を横浜スタジアムに見に行ったのだ。

その時カズはたしか故障明けで、試合には出場しなかった。

kazu1






kazu2






試合が始まってしばらくして控えの選手がアップを始めた。そこで目の前で練習していたカズを見ただけだったが、体がえらくスリムなのに驚いた。

この本でも時々出てくるが、カズは現役サッカー選手なので、体をいわばF−1マシンのように保っているという。筋肉質で持久力も瞬発力もあり、体脂肪は1ケタ台に保っているが、逆に寒さに弱く、ウィルスにも弱い。

40代の男性なら少なくとも体脂肪率は12ー13%くらいあった方が抵抗力もあって健康体なのではないかと。

カズの場合、23年落ちのF−1マシンのようなものなので、エンジン(心肺機能)は強いが、一度走るとタイヤ(筋肉)がすごくすり減り、サスペンション(関節)への負担は大きい。だから専属トレーナーや調理師が必要なのだと。

もっとも時々トレーナーの指示を無視して、六本木・麻布方面に「テスト走行」に出かけることもあるとうそぶく。

「テスト走行」の話も面白い。

キング・カズだけに、巨人軍原監督とグアムの空港で「ヘーイ、キング・カズ!」と呼びかけられた話とか、行きつけの店に行ったら、マリナーズのイチローがカズの指定席を占領していて「カズさん、ブラジル(2014年ワールドカップ)行くんでしょ?見たいね。」と言われた話とか、すごい人脈だ。

イチローには「あのね、J−2で出ていないんだから・・・・。」というと、「関係ないでしょ。見たいね。」と言われ、そこまで言われると行けるような気がしてきたという。

WBCの優勝監督の原監督は、グアムの空港でカズが野球好きの息子を紹介すると「それじゃ、ジャイアンツで待っているぞ!」と手を振って去っていたという。

なんというさわやかさだろうとカズも驚嘆している。

サッカーではジーコの精神が残っているチームとして鹿島を絶賛している。ジーコは「勝負がかかれば何であれ負けるな」とじゃんけんでもリラックスゲームでも常に真剣に取り組んでいたという。

スタメンから外れた選手による練習試合でも、鹿島との試合では「試合に出たい」というハングリーさが浦和とは違っていたという。

これは2009年の話だ。

2009年のJリーグ最終戦では、昇格して1年目で降格が決まっていた横浜FCが一位の浦和に勝つという番狂わせを起こし、2位に急上昇していた鹿島が逆転優勝したドラマがあった。

鹿島のオリヴェイラ監督が練習試合の後で訪ねてきてくれたという。「カズ、君は我々の誇りだ。元気にやっているじゃないか。本当は何歳なんだ?」

カズは練習試合でもフル出場していると。

声を出して仲間を統率し、試合後は入念にクールダウンする。ひそかに見届けていた彼は言ってくれた。

「君はエゼンプロ(手本)だ。その精神を鹿島の選手も見習ってほしい。」リーグを3連覇した優勝監督の激励に涙が出たという。

先週の松田直樹選手の弔問に訪れていたカズがテレビのニュースに報道されていたが、引き締まった面構えはまさに戦士そのものだ。

松田選手が所属していた松本山雅チームは松田選手が亡くなる直前に、7月30日にアウェーで筆者の住む町田市の町田ゼルビアと試合をしている

松本山雅





試合前のポスターでは相手チームの松田選手が全面に出ていたが、この試合は松田選手は交代でも出場していない。松田選手はJFL後期日程は全試合出場していたので、やはり体調が悪かったのかもしれない。

サッカー選手は常にフィットの状態に保っているのだと思うが、カズの「F−1」という言葉であらわされる通り、松田選手のような「もろい」面もある。

カズには、ひきつづき体に気をつけて、現役生活を続けて、1点でも多くのゴールを挙げ、日本に元気を与えてほしい。

ガンバレ、カズ!


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Posted by yaori at 13:01Comments(0)TrackBack(0)

2011年08月06日

頑張れ!武田ランダムハウスジャパン! ぼくと1ルピーの神様 映画より面白い!

このブログでも書いた「アインシュタイン その生涯と宇宙」の翻訳不備。

大新聞でも取り上げられて一騒動起こっている。出版社の武田ランダムハウスジャパンの損害は数千万円になると思う。

いずれブログでこの本のあらすじを紹介するが、13章の「さまよえるシオニスト」の前後をのぞければ、翻訳もふくめてこの本の出来は悪くない。

新聞は不祥事として報道し、初版本がコレクターアイテムとなり、アマゾンではいまや4万円で売りに出されている。

しかし今必要なのは出版社である武田ランダムハウスジャパンのバッシングではない。

問題はどうやって再発を防止するかだ。

武田ランダムハウスジャパンは他にも良い本を多く出している。今回の件があって、ホームページを見て、興味を惹かれて読んだ本が「ぼくと1ルピーの神様」だ。

ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)ぼくと1ルピーの神様 (ランダムハウス講談社文庫)
著者:ヴィカス スワラップ
武田ランダムハウスジャパン(2009-02-20)
販売元:Amazon.co.jp
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この本は2009年度アカデミー賞受賞作品の映画「スラムドッグ$ミリオネア」の原作である。



スラムドッグ$ミリオネア [DVD]スラムドッグ$ミリオネア [DVD]
出演:デーブ・パテル
メディアファクトリー(2009-10-23)
販売元:Amazon.co.jp
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実は家内がWOWWOWで録画していたのを知らずに、ツタヤでDVDを借りてしまった。

3回繰り返して見てしまったが、非常に楽しめる映画である。

そして原作の「ぼくと1ルピーの神様」も良い。映画の脚本と原作はかなりストーリーが異なるが、映画以上に原作も大変楽しめる作品だ。

原作者はインドの現役外交官で、トルコ、アメリカ、エチオピア、イギリスに赴任経験がある。

この作品がデビュー作で、16カ国語に訳されるベストセラーになったという。

映画でもヒンズー教徒が主人公の家族が住むイスラム教徒の村を攻撃するシーンがあったが、小説でもインドのヒンズー教徒とイスラム教徒の人種問題がところどころに出てくる。

たとえばこんな感じだ。

500,000ルピーの章では、1971年のインド・パキスタン戦争の話を取り上げている。インド人兵士が次のように語る場面がある。

「パキスタンの兵士はインド人兵士の死体を、決してインド軍に引き渡さないというもっぱらの噂だった。たとえ死んだ兵士がヒンドゥー教徒であろうと、ムスリムの習慣に従って、死体を地中に埋めるらしいと。」

「私が死んだら、絶対に火葬にしてほしいんです。さもなければ、私の魂は3万6千年の間地獄をさまよい、決して安らぎを得ることはできなくなります。」

また主人公の新しい雇い主となる大女優からは、次のような会話がある。

「じゃあイスラム教徒ね。ごめんなさい、一緒に住んでいる母が、イスラム教徒の手が触れたものは一切口にしないの。わたくし自身は、汚れがうつるとかいう非科学的なことは信じていないけれど、どうにもできないわ」

この辺が映画のストーリーとは直接関係ない部分で出てくる。

インドの中の少数派イスラム教徒とヒンズー教徒の対立は根深いもののようだ。

閑話休題。

武田ランダムハウスジャパンはこんな良い本も出している。

是非バッシングに耐え、損失に耐えて、再発防止策を出版業界で徹底して、出版業に精を出して欲しい。

頑張れ!武田ランダムハウスジャパン!


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Posted by yaori at 01:37Comments(0)TrackBack(0)

2011年08月04日

アインシュタイン その生涯と宇宙 翻訳不備 続報

2011年8月4・5日追記

いよいよ大新聞が取り上げ始めた。ヨミウリオンラインに記事が出ている。なんと初版本はコレクターアイテムとなり、2万円で売りに出されているという。

アインシュタイン校正不備5






日経新聞も8月5日付けの夕刊で取り上げている。

アインシュタイン校正不備





出版社をたたくのではなく、出版業界でぜひ再発防止策をきちんと打ち出してほしいものだ。


2011年8月3日追記

7月17日にブログで知らせた「アインシュタインその世界と宇宙」下巻の翻訳不備が、とうとうマスコミの知るところとなった。

アインシュタイン校正不備2






このニュースサイトのみならず、他のニュースサイトにも報道されている。

ネットで検索すると、プロの翻訳者向けのサイトというBuckeye the Translator でも報告されているのを発見。Buckeyeということなので、オハイオ州にいたことのある人のサイトと思う。

アインシュタイン校正不備3






さらにこのサイトでは一番ひどい誤訳の部分の原文を入手して、いろいろな機械翻訳に掛けた結果、Exite翻訳エンジンだと同様の結果が出ることをつきとめた人がいると報じている。アインシュタイン校正不備4






問題の「旗の包茎」の原文は"flag-draped car"だったことがわかった。"drape"という言葉は、カーテンなどを指すときに"drapery"という言葉がよく用いられる。

元タイム誌の編集長が書いた本なので、英語も格調高いのではないかと見込んでいたが、さすがに難しい英語の言い回しをしている。

"Flag-draped"とは「旗を横断幕あるいは垂れ幕にした」という意味だと思う。つまりアインシュタインを歓迎して、200台もの横断幕を飾った車に乗った興奮した民衆が熱烈に歓迎したというような意味だろう。

アマゾンによると下巻の発売日が8月24日に決まったようだ。たぶん日本の出版史でも最悪で前代未聞の翻訳不備・校正不備の不祥事だと思う。その意味ではこの事件を出版界の戒めとして風化させないという意味で、あえてリコールには応ぜずそのままキープしようかと思い始めている。

ちなみにアマゾンで一番に書いていたウィットに富んだカスタマーレビューは、削除されたようだが、翻訳者のコメントや他のコメントが寄せられていて、翻訳者と編集者の力関係とか考えさせられる指摘があるので、参照して欲しい。


2011年7月17日初掲:

アインシュタイン その生涯と宇宙 下アインシュタイン その生涯と宇宙 下
著者:ウォルター アイザックソン
武田ランダムハウスジャパン(2011-06-23)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

現在「アインシュタイン その生涯と宇宙」上下 約800ページの大作を読んでいる。

元タイムの編集長で、アスペン研究所とCNNのCEOを勤めるWalter Isaacsonさんの作品だ。

Einstein: His Life and UniverseEinstein: His Life and Universe
著者:Walter Isaacson
Simon & Schuster(2008-05-13)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

知識のない物理や数学の話題も出てくるので、先週から必死に読んでいる。読み終えたらいずれあらすじを紹介するが、読んでいるうちに驚くべき事態を発見したので、このブログの読者だけに紹介しておく。

まずは、ここをクリックしてアマゾンの「カスタマーレビュー」を読んで欲しい。

いち早く読んだ読者の7月4日の「ボルンの妻のヘートヴィヒに最大限にしてください。」(!?), というウィットに富んだカスタマーレビューが秀逸である。

そして7月15日に今度は訳者の一人の松田卓也神戸大学名誉教授が弁明と実情報告をカスタマーレビューに載せている。

小泉元首相の言葉ではないが、最初のカスタマーレビューで引用されている「笑っちゃう」本書の第13章、60−61ページは次の通りだ。

アインシュタイン校正不備2






出典:本書60−61ページ

第13章「さまよえるシオニスト」はアインシュタインが1921年に米国を初めて訪問する旅と、1922年にノーベル賞授賞式を欠席して日本を訪問した時のことを取り上げている章で、日本人であれば最も読みたい章なのだ。

実は上記の60−61ページは、あまりにひどい翻訳で頭に来たので、筆者が出版社に送ろうとスキャンしたものだ。

出版社の連絡先を調べてみると、出版社の武田ランダムハウスジャパンのホームページ、「お詫びとお知らせ」というのが出ていることを発見した。

もしやと思って、クリックしてみると案の定、下巻だけ回収するという。

アインシュタイン校正不備





アマゾンのカスタマーレビューでも極めつけとして紹介されているのはこの部分だ。

「極めつけはp.61.。 

 「驚異的な場面だったが,それはクリーブランドで超えられていた。数数千が,訪問代表団と会合するためにユニオン列車車庫に群がった,そして,パレードは二〇〇台の酔っぱらっていて旗の包茎(ママ)の車を含んでいた。

なにか,ダリとかシュールレアリズムの絵画のような情景であるが・・・。 」


この部分を思い出すとつい「笑っちゃう」。

誤解のないように記しておくが、筆者はこの出版社、編集者、監訳者、訳者たちをつるし上げるつもりは全くない。

そのつもりならツイッターに書く。

本の愛好家として、今回のケースを同様の事故防止のため出版界として再発防止策を是非検討して欲しいのだ。

というのは今回の出版事故は根が深いと思うからだ。

訳者の松田さんは機械翻訳と説明しているが、上記で引用した61ページの該当部分は機械翻訳なのかよくわからない。

「包茎」に当たる英語の”phimosis”という単語は、米国駐在合計9年の筆者でも見たことも聞いたこともない単語だ。

原著にこの単語が使ってあれば、機械翻訳で「包茎」という言葉が出てくるのもわかるが、英語の原著にこのような単語があるとは到底思えない。


ちなみにあなたは"circumcision"という言葉をご存じだろうか?

この"circumcision"は、米国で息子が生まれたときは絶対に知っておかなければならない言葉だ。

意味は「割礼」だ。

米国の病院では男の子が生まれた時に、医者や看護婦が"circumcision"をするかと聞く。筆者の場合には2,3度聞かれた。

筆者の場合は初め何のことかわからなかったので、とっさに"No"と断った。

あまりしつこく聞くので、辞書で調べて、その意味を知って驚いた。

筆者をユダヤ人と間違えた訳ではないと思うので、たぶん米国の病院では男の子が生まれると医者が必ず聞くのだろう。

単語の意味を知らずに"Yes"とか答えていたら、ピッツバーグ生まれの長男はゴルゴ13のように割礼してしまうところだった。

閑話休題。


次に日本語の誤変換だが、「はたのほうけいのくるま」とひらがなで書いてみると、日本語のタイプミスに起因する誤変換とも思えない。

つまりこの「旗の包茎」という単語がなぜここに登場するのかさっぱり原因がわからないのだ。

さらに、本は通常次のチェック過程があるはずだ。

1.訳者が原稿をチェック。

2.監訳者が原稿をチェック。

3.編集者が原稿をチェック。

4.ゲラ刷りの「デザイン原稿」を訳者、監訳者、編集者がチェック。

5.最終原稿を訳者、監訳者、編集者、校正者がチェック。

6.印刷された本を訳者、監訳者、編集者、出版社の他の担当者が読む。

それでいて、なぜ今回のような致命的ミスが見過ごされたのか?その理由がわからない。


筆者は勝間和代さんのような「フォトリーディング」などはできない。

もっぱら通勤時間を利用して年間300冊くらい本を読むが、1ページ、1ページを丹念に読んでいるのだ。

この「アインシュタイン その生涯と世界」も、アインシュタインの伝記の決定版として非常に期待して読んでいる(現在下巻の250ページ)。

サッカー日本代表の長谷部誠選手が、推薦する本に「アインシュタインは語る」を挙げていたことは以前紹介した。

アインシュタインは語るアインシュタインは語る
大月書店(2006-08)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

アインシュタインの最新の伝記であるこの本に期待していた読者は、筆者だけではないと思う。

この本の上巻から変換ミスや誤植がやや目立つなと感じていたが、全体として翻訳のクオリティは悪くない。

翻訳本のなかには、原著で読んだ方がよっぽど理解しやすいものもあるが、この本は上巻までは原著で読む必要を感じていなかった。


トヨタは「なぜを5回繰り返せ」と現場に徹底しているという。

せっかくの貴重な文献を台無しにして、訳者・監訳者の信用を失墜させ、愛読者の期待を裏切り、しかも恥を日本全国の図書館や書店にさらす今回の事態を、是非「なぜなぜ5回」で根本原因を追及し、二度とこのような事態が発生しないように再発防止策を徹底して欲しいものだ。

頼むぜ 武田ランダムハウスジャパン!


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Posted by yaori at 12:37Comments(0)TrackBack(0)