2011年12月31日

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録 「前のめり」で戦う銀行トップ

+++今回のあらすじは長いです+++

ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録ザ・ラストバンカー 西川善文回顧録
著者:西川 善文
講談社(2011-10-14)
販売元:Amazon.co.jp
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住友銀行(現三井住友銀行)のトップとして君臨し、小泉元首相に推されて2006年に民営化された日本郵政の社長となった西川善文さんの回顧録。

西川さんは悪役とされることが多かった。だから筆者自身も、この本はあまり読む気がしなかったが、会社の知人から面白かったという話を聞いたので読んでみた。たしかに大変面白い、「経団連は無用の長物」などという発言もある。

西川さんも最後に書いているが、この本では大規模プロジェクトへの融資による日本産業への貢献とか、組織の飛躍的拡大をもたらした経営策の実践とか、大手銀行の頭取を務めた人なら必ずあるだろう華やいだ話題が少ない。そういうことがなかったのではなく、それを懐かしむほどのんびりした時代ではなかったのだと西川さんは語る。

アメリカでは政府の要職や有名企業トップを務めた人が、退任後すぐに回顧録を出す例は多い。たとえばGEのジャック・ウェルチの本などは、会社の上司や部下を実名で批判し、自分の功績を際立たせるような書きっぷりだ。

ジャック・ウェルチ わが経営(上) (日経ビジネス人文庫)ジャック・ウェルチ わが経営(上) (日経ビジネス人文庫)
著者:ジャック・ウェルチ
日本経済新聞社(2005-04-29)
販売元:Amazon.co.jp
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一方、西川さんがこの本で批判している上司・仲間は、一時「住友銀行の天皇」と呼ばれた磯田一郎さんだけで、会社再生や郵政合理化の実情を淡々と語っている。


「前のめり」の経営

西川さんは銀行役員時代から、記者会見などでスタッフの用意したメモに沿わないで発言したり、経営に関してトップダウンで決断したという。それを「西川の独断」などと批判する人もいるが、リーダーシップとは「直面する難題から逃げないこと」だと語る。遅滞なくスピード感を持って決断する。トップが逃げないから部下も逃げない。「前のめりで戦う」のだと。

坂本竜馬が死ぬ時も前のめりに死んだ?という話はあるが、「前のめり」という言葉をビジネスで使っている本は記憶にない。一般的にはコンサーバティブな金融機関のトップが「前のめり」で経営していたと語るのは、20社ほどあった都市銀行が3大グループに集約されるという激動の金融再編の時代に経営を任されたからだろう。

思えば、筆者が大学を卒業した1976年には、都市銀行は第一勧業銀行、三菱銀行、富士銀行、住友銀行、三井銀行、協和銀行、東京銀行、太陽神戸銀行、大和銀行、あさひ銀行、埼玉銀行、東海銀行、北海道拓殖銀行などがあり、長期信用銀行としては日本興業銀行、日本長期信用銀行(長銀)、日本不動産銀行などがあった。

これらがすべて消滅するか、現在の3大金融グループに再編された。筆者の友人には銀行に就職した人もいるが、コンタクトもなく、今どうしているのかわからない友人が多い。


西川さんの経歴

西川さんは1938年・奈良県生まれ。戦時中は米軍戦闘機の機銃掃射も経験したという。親類に東大を出て毎日新聞の記者となった人がいて、西川さんも新聞記者になることを夢見て東大受験を目指したが、受験直前に体調を崩し、結局大阪大学法学部に入学した。

新聞記者を目指していたが、友達のさそいで住友銀行の面接を受け、Tシャツ姿で行くと、「新聞記者などやめておきなさい」と言われ、人事部長だった磯田一郎さんの面接を受けた。京大ラグビー部出身の磯田さんは体もがっしりして迫力があり、大学時代はラグビーに明け暮れ、勉強などほとんどしていなかったという。その日のうちに人事担当専務と会い、内定をもらったという。

1961年(昭和36年)に住友銀行に入社し、支店勤務から調査部で粉飾決算などを見抜く経験を積み、後に頭取となる巽さんに引っ張られて審査部に異動した。

当時の日本ではM&Aをビジネスとしていた会社はほとんどなかったが、西川さんはいずれM&Aの時代が来るだろうと予想して、審査部時代にM&Aを研究したという。そして西川さんの最初の功績が安宅産業の破たん処理だ。


安宅産業破たん処理

安宅産業は1904年創業の総合商社で、1975年当時は業界9位だった。新日鐵の5大指定商社の一社で、金属や機械部門は強かったが、エネルギー部門が弱かった。

上位商社に追いつくためにカナダのニューファウンドランド・リファイナリー(NRC)に突っ込み、巨額の融資をしたところで、オイルショックが襲い、中東原油の精製をやっていたNRCは巨額の損失を出し始め、不動産投資失敗も加わって安宅産業の息の根を止めた。

負債総額1兆円の安宅が破たんすると日本企業の国際信用が失わわれ、「日本経済は焦土と化してしまうかもしれない」との懸念から、メインバンクの住友銀行と協和銀行が中心となって、伊藤忠商事が安宅の優良部門を吸収合併し、銀行は債権放棄して破たん処理を実現した。

安宅の合併相手を探す段階では、住友商事にも2度、話を持って行った。しかし、住友商事はつねに慎重でリスクを取ることが少ない企業体質で、すでに住友金属の鉄鋼商権を持っていたこともあり、安宅産業との合併はには引き気味だった。また、当時の住銀の樋口廣太郎常務(元アサヒビール社長)と住友商事の財務担当の屋代副社長が不仲だったという。

それでも伊藤忠と安宅の合併が決まった後、住友商事は誰も引き取らなかった資産を引き取ってくれたという。それが米国ニューヨーク州北部にある鉄鋼メーカーのオーバーン・スチールだ。オーバーンには筆者も行ったことがある。ニューヨーク州の北部の風光明媚なフィンガー・レイク地帯にあり、世界最初の電気イスでの死刑執行で有名?な町だ。


安宅コレクション

この本では、伊藤忠側の交渉責任者だった不毛地帯のモデル・瀬島龍三さんのシンプルでストレートな交渉ぶりや、当時「社賓(しゃひん)」という肩書だった創業者の息子の安宅英一氏が集めた安宅コレクションについても触れている。

不毛地帯 (1) (新潮文庫)不毛地帯 (1) (新潮文庫)
著者:山崎 豊子
新潮社(1983-11)
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帳簿には70億円と記載があったが、売れば500億円以上にもなるという大変なコレクションで、近代日本画家・速水御舟(はやみぎょしゅう)の作品106点と朝鮮(高麗・李朝)と中国(後漢から明朝)の陶磁器850点だった。

コレクションの散逸を防ぐために御舟の作品はすべて山種美術館に買ってもらい、古陶磁器は安宅の破たん処理が終了した段階で、大阪市に寄付して1982年に開館した大阪市立東洋陶磁器美術館を建設して所蔵した。

安宅コレクションについては「美の猟犬」という本が詳しいので、いずれあらすじを紹介する。

美の猟犬―安宅コレクション余聞美の猟犬―安宅コレクション余聞
著者:伊藤 郁太郎
日本経済新聞出版社(2007-10)
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磯田一郎の時代

磯田一郎さんといえば「向こう傷を恐れるな」という言葉が有名だ。1977年に安宅産業の破たん処理が決着がついたタイミングで頭取に昇格、以後15年間、住銀の頭取・会長としてトップに君臨し、「住友銀行の天皇」と呼ばれた。

この本では「磯田一郎の時代」ということで、関東の支店数を一気に伸ばすために店舗数だけは多いが、ボロ店舗ばかりの平和相互銀行の合併や、バブル期に闇勢力と組んで不動産と(磯田さんの長女がからむ)美術品投資にのめりこんだイトマンへの肩入れなどを具体名を挙げて説明している。

日本経済の構造変化で、株式や社債なその直接金融が増え、銀行融資などの間接金融が細るなかで、「磯田一郎の時代」は終わった。磯田一郎さんにとどめを刺したのは西川さんだと自ら語る。

安宅産業、平和相互銀行、イトマンと問題案件を企画部長として処理したので、西川さんには、問題処理に強く、厄介事は西川さんに任せておけという評価が定着したという。


「不良債権と寝た男」

西川さんは、ある新聞に「不良債権と寝た男」と書かれたという。

日本経済は1986年からバブル経済期に入り、不動産価格が1986年は前年比75%、1987年は37%と上昇し続け、株価も1989年12月に日経平均株価が38,915円という史上最高値をつけた。

その後不動産価格も株価もピークを打って下がり始め、株価は1992年8月にはピークの半値以下の15,024円にまで下落した。

バブル崩壊によって日本経済はガタガタになり、1992年秋に大蔵省は大手21行の不良債権額は12兆3千億円あるという試算を発表した。筆者も覚えているが、当時は到底12兆円などという額ではない、50兆円、あるいは100兆円あるのではないかと言っていたものだ。

西川さんは、当時の住友銀行頭取の小松さんから、1992年夏に当時の宮澤総理から軽井沢の別荘に大手行の頭取が全員呼ばれて公的資金投入を打診されたという話を、後日明かされたという。頭取はみんな反対したが、今思うと、あの時に決めておけば、こんな大騒ぎにならなかっただろうと小松さんは言っていたという。

銀行の赤字決算は終戦直後も含めて、それまで例がなかったので、不良債権処理に保有株式を売って黒字決算を続けていた。しかし、西川さんは当時の巽会長と森川頭取に進言し、1995年に8,000億円の不良債権処理を行い、3,300億円の赤字決算とした。そうすると株価は逆に上昇した。

日本の不良債権処理が進んだのは1997年に大蔵省が不良債権償却証明制度を廃止し、銀行の自己査定による債権処理が可能になったことと、1998年の公的資金注入制度の効果だと西川さんは語る。


日本版金融ビッグバン

不良債権処理を進める一方、故・橋本竜太郎首相は1996年に日本版金融ビッグバンを提唱し、銀行、証券会社、保険会社の垣根が一部取り払われ、金融ホールディングカンパニーも認められた。

西川さんはチャンスだと考え、積極的に個人向け投資信託販売を拡大し、外部人材を起用するほか、山一證券から150名の窓口販売要員を採用して、リテール部門を拡大した。

ネット証券業にも進出したが、設立したDLJディレクトSFG証券は楽天に売却した。その関係で、楽天・三木谷浩史社長と知り合い、その斬新で革命的な考え方に共感することが多かったので、西川さんは頭取退任後、楽天の顧問に就任した。


頭取就任は「男子の本懐」

1997年6月に西川さんは住友銀行の頭取に就任した。58歳での就任で、50歳台の頭取就任は「住銀の法王」と呼ばれた堀田庄三さん以来だという。

就任記者会見では西川さんは「男子の本懐です」と語ったという。当時、銀行は企業の不良債権処理を手伝って、企業が再生できるようにする「野戦病院」のような役目だった。日本経済再生に貢献する重大な責任を任されたという意味で、「男子の本懐」という言葉になったのだという。

男子の本懐 (新潮文庫)男子の本懐 (新潮文庫)
著者:城山 三郎
新潮社(1983-11)
販売元:Amazon.co.jp
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西川さんが頭取に就任してからは、住銀の長年の重要取引先だった大和証券と法人部門の合弁会社(大和証券SBCM、ただし2009年に合弁解消)設立、さくら銀行との合併で2001年4月の三井住友銀行の誕生、ゴールドマン・サックスとの資本提携強化、GS幹事の海外マーケットでの資金調達などダイナミックなM&Aを行った。

2兆円にものぼる資本準備金を不良債権処理にあてる為の、さくら銀行子会社のわかしお銀行との逆さ合併(存続会社はわかしお銀行で、三井住友銀行は消滅)には驚かされたものだ。

UFJ信託銀行と住友信託銀行との合併が決まっていたのにキャンセルされて「売られたケンカ」だとして、UFJ銀行をめぐって東京三菱との買収合戦に乗り出した話を紹介している。

同じ関西系の長年のライバル同士のUFJ(旧三和銀行)と住友銀行では、合併は難しいと筆者は思っていたが、この本では当時のUFJ銀行のトップや関係者は、住友銀行との合併を望んでいた様にも思えたことを紹介している。


日本郵政会社の社長に就任

2005年、西川さんは三井住友銀行の頭取を退任し、特別顧問となった。退任直後に大腸ガンが見つかり手術を待っているときに、ウシオ電機の牛尾会長から「小泉総理や竹中大臣が郵政民営化のリーダーを西川さんにお願いしたいと言っている」との話があった。

西川さんは一旦は断ったが、手術後竹中大臣から「小泉総理はもう決めています。」という話があり、奥さんの反対にもかかわらず引き受けることになった。小泉総理からは一言、「ご苦労だけど、西川さん、頼むよ」と言われたという。

この本では郵政民営化準備会社の社長となった2006年1月から民主党が政権を取り、亀井郵政・金融担当大臣より自分で進退を判断しろと通告されて社長を辞任する2009年10月までの出来事を、80ページほどにわたり解説している。

恥ずかしながら筆者自身も郵政民営化の目的がいま一つクリアーに理解できていないが、西川さんは郵政民営化の目的は、大きくは次の2点であると最初に整理している。

1.資金の流れを官から民に変えることで、国民の資金を成長分野に集め、結果として日本経済の活性化や効率化を図る。

2.少子高齢化社会の到来によって先細りが懸念される郵政事業を、民営化で新規事業にも参入できるようにし、国民の利便性を高めると同時に収益性を向上させる。

西川さんはこの民営化の目的を理解してもらわないと、西川さんが全精力を注ぎこんだ意味が分かってもらえないと語る。

この本で知名度があがり、一番得したのはたぶんコンサル会社のA.T.カーニーだろう。コスト削減に強いコンサルタントとして住友銀行時代と日本郵政時代に登場している。

筆者は2000年ごろA.T.カーニーと、以前紹介した逆オークションなどの電子調達関係プロジェクトで一緒に仕事をしたことがある。

総理、増税よりも競り下げを!総理、増税よりも競り下げを!
著者:村井宗明
ダイヤモンド社(2011-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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A.T.カーニーの子会社が持っていた逆オークションのソフトウェアを使って日本でも逆オークションのトライアルを実施し、A.T.カーニー・ジャパンの人たちと一緒にJ/Vをやれないか検討したのだ。当時のメンバー2人がプリンシパルになっている。

調達関係のコンサルでは2000年の段階でA.T.カーニーがベストだった。住友銀行のコスト削減でも実績を出して、日本郵政にも採用されたようだ。さすがA.T.カーニーである。

日本郵政社長時代のエピソードだけでも十分一冊の本が書けるほど、いろいろなことが起こっているが、詳しく紹介するとあらすじが長くなりすぎるので、箇条書きで紹介する。

★2004年には郵貯と簡保は合計で350兆円の規模となり、国民の金融資産1,400兆円の1/4を占めていた。

★運用は2000年までは全額大蔵省の資金運用部に預託する義務があり、10年物国債の利回り+0.2%の金利を保証されていた。

★郵貯の「ヒト・モノ・カネ」のネットワークは想像以上に緻密で底力があり、これこそが郵便局の最大の経営資源だ。

★郵政民営化によりいままで免除されていた法人税、事業税、預金保険料などを支払うようになり国や地方の税収が増えた。

★全銀システムとは店番号と口座番号が違うので、銀行から郵貯には送金できなかったが、民営化後にやっと全銀システムと接続した。

★西川さんが社長に就任してすぐに取り組んだのが次の3つのプロジェクトだ。

1.調達コストの削減と調達戦略の一元化
2.コールセンターの一元化
3.「郵政福祉」、「郵貯振興会」などのファミリー企業との取引関係の見直し

★ゆうパックの欠点だった冷蔵・冷凍輸送ができないことを、日通のペリカン便と合併することにより解消し、シェアアップを狙ったが、なかなか国会の承認が得られなかった。

★麻生内閣の鳩山邦夫総務大臣が政治問題化した「かんぽの宿」一括売却問題と東京中央郵便局再開発問題について、西川さんは鳩山大臣の論点を詳細に逐一反論している。よほど悔しかったのだろう。


総じて淡々とした書きっぷりに好感が持てる。

筆者が知っている案件もあり、その記述から判断すると、この本に書かれているのは表向きの説明といえる。それでも一面の真実をとらえていると思う。

一読する価値のある同時代史だと思う。先入観だけで判断せず、まずは手に取ってパラパラめくって欲しい。


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Posted by yaori at 02:21Comments(0)TrackBack(0)

2011年12月28日

もしも法大生が「デール・カーネギー」の原則を身につけたら

2011年12月28日追記

デール・カーネギー・ジャパンの人から法政大学で開講した「もしも法大生が『デール・カーネギー』の原則を身につけたら」という特別授業の情報をもらった。

なんちゃって「もし〜ドラ」のネーミングではあるが、大変好評だったそうだ。

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだらもし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら
著者:岩崎 夏海
ダイヤモンド社(2009-12-04)
販売元:Amazon.co.jp
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もし法大生が





筆者の息子も大学3年生の時にデール・カーネギー・トレーニングを受講させた。大学生の時にカーネギーを知っておけば、必ずや将来役に立つと思う。

カーネギーの話題は万国共通で、世界どこに行ってもカーネギーの本を共通の話題にできる。是非、大学生の間でもカーネギーの本が広まってほしいものだ。


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2011年7月8日追記:

ウォレン・バフェットがデール・カーネギー・トレーニングについてニュース番組のなかで語っている映像がYouTubeで公開されているので、追記しておく。




2010年9月2日初掲:

このブログで時々紹介しているデール・カーネギーの「人を動かす」。アマゾンの売上ランキングでも常に50位前後で、日本で450万部売れているという永遠のベストセラーだ。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
販売元:創元社
発売日:1999-10-31
おすすめ度:5.0
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「人を動かす」などのカーネギーの教えに沿ったトレーニングコースが日本でも開催されているデール・カーネギー・トレーニングで、今回大学生の息子が12週間のデール・カーネギー・トレーニングを終了した。次が修了証だ。
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「スノーボール」によると、これと同じものが、ウォーレン・バフェットのオマハ、ネブラスカの事務所の壁に掲げてあるという。

スノーボール (上) ウォーレン・バフェット伝スノーボール (上) ウォーレン・バフェット伝
著者:アリス シュローダー
販売元:日本経済新聞出版社
発売日:2009-11-20
おすすめ度:4.0
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実は息子が大学生になったらカーネギー・トレーニングを受講させようという計画は、かなり以前から考えていた。新さんの「成功する5つの習慣」を読んだ頃だと思うので、たぶん6年前頃だろう。

成功する5つの習慣











カーネギー・トレーニングでは、送り出す方にもCoaching and Communication Sheetという受講前アンケートを用意しており、その最初の質問は「あなたがチームメンバーのために部下に成長してもらいたい・変化させたい点は?」というものだった。

これにはただひとこと「他人の立場になって考える態度を身につけること。それに尽きる。」と書いた。

8月に卒業式があり、これに参加したところ、息子の研修成果発表は、「いままで単なる遊び相手としてしか見ていなかった弟(高校2年生)を、一人の人間として見られるようになった」というものだった。

まさに筆者が望んでいた通りの考え方を身につけることが出来たようで、大変感激するとともに満足した。

息子以外は全員社会人で、エンジニアの人が半分くらいだった。最優秀賞は、臨床に復帰したお医者さんが受賞した。1967年にこのコースを受講し、社員全員に同じコースを受講させているという会社社長とも卒業式でご一緒して、大変参考になった。

クラス専属のアシスタント(トレーニングの卒業生から選抜)も加わってのわきあいあいのクラスの雰囲気、身振り手振りのパフォーマンスを意識した発表の仕方、二人一組になっての事前の打ち合わせ、そしてトレーナーの川田さんのプロフェッショナルな指導、すべてが新鮮な驚きで、大変感銘を受けた。次男もいずれトレーニングを受けさせようと思う。

息子には、このトレーニングコースで学んだことを生かしてカーネギーの本によく登場する初代USスチール社長のチャールズ・シュワブの様なコミュニケーションの達人を目指して欲しいものだ。

デール・カーネギー・トレーニング・ジャパンの個人向け講座は、毎週木曜日又は土曜日に開催されるそれぞれ12週間のトレーニングが主体で、企業向けのカスタマイズトレーニングが主な事業のようだ。

DCトレーニング










興味のある人はデール・カーネギー・トレーニングのウェブサイトを見て、情報を収集してほしい。受講料15万円と決して安くないが、一生を通じて役に立つコミュニケーションの運転免許と思えば、十分価値はあると思う。


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Posted by yaori at 12:49Comments(0)TrackBack(0)

2011年12月26日

日本酒は奥深い 銘柄その1 福井県の早瀬浦と白岳仙

2011年12月26日追記:

日本酒は奥深い。燗にすると全然違うことは下記したが、福井県の「早瀬浦」を近くの日本酒と焼酎のコレクションで有名な「まさるや」という酒屋で買って「熱燗」、「ぬる燗」など、いろいろな温度で燗にして飲んでみた。

2011121820570000















「早瀬浦」の裏には次のラベルが貼ってある。

2011121820570001















享保3年(1718年)創業というのには驚く。

純米酒らしい、ほっとするような飲み心地の酒だ。冷酒で良いと思った「浦霞」本醸造はアルコール添加していることもあり、燗にするとアルコール臭が気になる。やはり燗にするには純米酒に限るようだ。

東日本大震災を契機に日本酒を飲みだしたわけだが、日本酒は奥深い。さらにいろいろ試してみる。


2011年12月12日追記:

友人の内田さん(俳優の内田朝陽君のお父さん)の店で、日本酒の飲み比べをした。といっても五百万石という米を使った純米酒を2本飲み比べてみただけだが、あまりの違いに驚くとともに、日本酒の奥深さを感じた。

飲み比べたのは同じ福井県の「早瀬浦」と「白岳仙」。内田さんの店はワインで有名なので、たまたま内田さんが店に置いていた日本酒だ。(楽天のリンクは必ずしも飲んだものと一致していないが、ラベルデザインの参考として紹介する)。

早瀬浦 純米酒 1800ml
早瀬浦 純米酒 1800ml
白岳仙 純米吟醸 奥越五百万石 1800ml
白岳仙 純米吟醸 奥越五百万石 1800ml


「白岳仙」はヒヤの状態でタル香がして、いわゆる吟醸酒のつくり。樽で熟成しているのだと思う。ぬる燗にするとタル香はなくなる。

「早瀬浦」はヒヤではほとんど香りがしないが、ぬる燗にするために湯で温めた器に移すと、バニラ香のようななんともいえないいい香りが漂う。赤ワインではバニラ香がするものがあるが、日本酒でバニラ香がするとは驚きだ。どういった成分がバニラ香を生みだすのかよくわからないが、なにか醸造の秘訣があるのだろう。

同じ福井県という産地で、同じ五百万石という米を使っていても、全然違う酒ができる。日本酒の奥の深さを垣間見た気持ちだ。これからも機会をつくって、もっと日本酒を研究していこうと思う。


2011年12月1日初掲:

蔵元を知って味わう日本酒事典蔵元を知って味わう日本酒事典
ナツメ社(2011-01-21)
販売元:Amazon.co.jp
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日本酒の教科書日本酒の教科書
著者:木村 克己
新星出版社(2010-02)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者は1978ー80年のアルゼンチン駐在以来、ずっとワイン派だった。自宅で飲むのはほとんどワイン。昨年くらいから食事によってはロゼも飲むようになったが、ほとんどずっと赤ワインだった。

日本酒は買ったこともないし、法事などでもらったものを飲むほかは家で飲んだこともなかった。

とはいえ、やはり刺身や煮魚などの日本料理には、ワインより日本酒の方が合うのではないかと思っていたことも事実だ。それのあらわれが、昨年からロゼワインを飲むようになったことだ。

そんなワイン党の筆者が宗旨変えして、上記に紹介した「日本酒事典」と「日本酒の教科書」を読んで、日本酒を飲み始めた。(どちらも参考になるが、「日本酒事典」の方が瓶の写真も紹介しており、銘柄ラベル写真だけの「日本酒の教科書」よりもなぜか親しみを感じた)

きっかけは東日本大震災だ。日本酒を飲むことで、すこしでも東北地方の復興の役に立てるのであればと思って飲み始めた。



醸造業の裾野は広い。もちろん原料の農業の振興にもなるし、バイオ技術や醸造設備産業にも貢献するとともに、地元の観光振興にも役立つ。

山梨の勝沼が良い例だ。ワイン産業としては世界的には小規模ではあるが、日本でも最大級のワイン産地として一大観光名所となっている。ワイナリー巡りなど観光客が一年を通して訪問するし、山梨大学工学部にはワイン科学特別教育プログラムもあり教育産業にも波及効果がある。

もちろん筆者が日本酒に切り替えたからといって、効果はたかがしれており、えらそうに言うべきことではない。しかし気は心、同じように賛同してくれる人もあると思うので紹介する。

筆者が飲み始めたのは宮城県塩竃の浦霞。もろに被災地にある酒蔵だ。浦霞自身もかなりの地震の被害を受けたはずだが、一本につき5円という復興資金を寄付することを実施している。

次が浦霞の種類だ。左から本醸造、ササニシキを使った純米酒、特別純米酒の「禅」と外箱というラインアップだ。

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本醸造は仕込みの段階で10%まで醸造アルコールを添加している。本来日本酒は純米酒が正統であり、アルコール添加酒は邪道、儲け主義だという非難の声がある。たとえば「美味しんぼ」では、純米酒こそが日本酒だといい、青リンゴなどの香りのする吟醸酒はハナから受け付けない。

美味しんぼ (54) (ビッグコミックス)美味しんぼ (54) (ビッグコミックス)
著者:雁屋 哲
小学館(1995-12)
販売元:Amazon.co.jp
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しかし筆者は浦霞で本醸造、純米酒、特別純米酒を飲み比べた結果、本醸造が一番気に入ったので、本醸造の一升瓶を買った。いままで40年近く酒を飲んでいるが、自分用に一升瓶を買ったのは初めてだ。

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アルコール添加はあくまで仕込みプロセスの一環であり、アルコールを10%添加することによって、いわゆる吟醸香が増し、「キレ」が良い辛口の酒に仕上がる。「美味しんぼ」の作者はアルコール添加酒を全く受け付けないが、筆者はこと浦霞に関しては、本醸造が安くてうまいと思う。

【佐浦】浦霞 本醸造 1800ml
【佐浦】浦霞 本醸造 1800ml

要はその人が飲み比べて一番気に入ったものを選べば良いので、別に純米酒にこだわる必要はないと思う。

ちなみに筆者は次の氷ポケットのあるデキャンターに入れて冷やして飲んでいる。

2011100910310000














キンキンには冷えないが、冷えすぎないで良い。

日本酒はワインに比べて安いので、良い日本酒を何本か飲み比べても、720MLの瓶であれば、せいぜい一本1,000〜2,000円で買える。

冒頭に紹介した「日本酒事典」や「日本酒の教科書」を読んで、基礎知識をつけた上で、日本酒を飲んで頂きたい。大手の酒蔵は江戸時代から続く老舗ばかりであることに驚くだろう。まさに日本酒は日本の伝統文化である。

東北の酒を飲めば東北復興にも微力ながらつながる。そんな気持ちも込めて日本酒を飲んで欲しい。


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2011年12月21日

日本の未来について話そう マッキンゼー編集の日本再生への提言

日本の未来について話そう日本の未来について話そう
小学館(2011-07-01)
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3.11後の日本の再生についてマッキンゼーが世界各国、各界の経営者、知識人、著名人などにインタビューし、あるいは寄稿を頼んでまとめた日本再生への提言集。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているが、すべての目次は表示されないので、「なんちゃってなか見!検索」で目次を紹介しておく。

はじめに 明るい未来を創るために ドミニク・バートン(マッキンゼー代表パートナー社長)

第1章 日本の再生へ向けて

3.11が予感させる「国家の地殻変動」 船橋洋一(朝日新聞社 前主筆)

がれきのなかに見えた日本の課題と未来 ヘンリー・トリックス(「エコノミスト」日本支局長

「ガマン」の力 トム・リード(「ワシントンポスト」前東京支局長

実行の時がきた ピーター・タスカ(評論家、アーカス・インベストメント創業パートナー)

日本よ、いますぐ目を覚ませ 長谷川閑史(武田薬品 代表取締役社長)

第2章 再び変化の時代へ

コスモポリタン国家への転換 イアン・ブルマ(作家)

変革へのギアチェンジ カルロス・ゴーン(ニッサンCEO/ルノーCEO)

モノづくりの時代を超えて 孫正義(ソフトバンク社長)

若者よ、日本を出でよ 柳井正(ファーストリテーリング社長)

「変化への抵抗」という錯覚 ジョン・ダワー(MIT名誉教授)

ジャパン・アズ・ナンバーワンはどこへ エズラ・ヴォーゲル(ハーバード大学名誉教授)

「失われた20年」からの脱却 デビッド・ザンガー

第3章 再建のための現状把握

過去から未来へのメッセージ スティーブン・ローチ(モルガン・スタンレー・アジ
ア会長)

7人のサムライを呼べ アダム・ボーゼン(ピーターソン国債経済研究所 シニア・フェロー)

数字で見る日本の競争力 クラウス・シュワブ

日本が世界の未来に向けて貢献すべきものとは 岩崎夏海(作家)

光(エネルギー)を絶やさないために ブルッキングス研究所

第4章 国際化への鍵

「日本企業のグローバル化」への具体的施策 マッキンゼー

グローバル企業への変身 前田新造(資生堂会長)

鎖国を解く グレン・S・フクシマ(エアバス・ジャパン会長)

保守化する若者 山田昌弘(中央大学教授)

野茂効果 ロバート・ホワイティング(作家)

ベンチから見た日本野球 ボビー・バレンタイン(野球監督)

サッカーで見る日本 岡田武史(前サッカー日本代表監督)

第5章 日本外交政策の選択

日本に突きつけられた選択肢 ビル・エモット(「エコノミスト」前編集長)

米国の戦略的資産としての日本 マイケル・グリーン(ジョージタウン大学準教授 CSIS日本部長)

中国と向き合う 田中均(日本国際文化交流センター シニア・フェロー)

外交力のない国、ニッポン ポール・ブルースタイン(ブルッキングス研究所)

第6章グローバルな視座

パーフェクトブレンドを求めて ハワード・シュルツ(スターバックス会長)

米国中西部から極東へ ボブ・マクドナルド(P&G CEO)

社長 島耕作からのアドバイス 弘兼憲史(漫画家)

着眼大局、着手小局 坂根正弘(コマツ会長)

アジアのパイオニア ピーター・レッシャー(シーメンスAG CEO)

第7章 技術と思考のイノベーション

ガラパゴスからの脱出 関口和一(日本経済新聞論説委員)

Tシャツか着物か セナパティ・ゴバラクリシュナン(インフォシスCEO)

日本のハイテク企業を再起動させる4つのモデル マッキンゼー

シリコンバレーのDNA 南場智子(DeNA前CEO)

日本ゲーム産業のネクストミッション 稲船敬二(コンセプト社長)

独自性から強さを築く ジョン・チェンバース(CISCO CEO)、エザード・
オーバービーク(CISCOジャパン社長)

クリーン・テクノロジーの先鋒の地位を守れるか マッキンゼー

第8章 人材の「発見」と活用

リーダーの必須条件 柴田拓実(野村ホールディングス COO)

若者に席を譲ろう 岡田元也(イオン社長)

ワーク・ライフバランスと女性の活躍 小室淑恵(ワーク・ライフバランス社長)

家族を第一に 佐々木かをり(イーウーマン社長)

企業家と女性が拓く日本の未来 スティーブ・ヴァンアンデル(アムウェイ・コーポレーション会長)

教育改革の第一歩は、民間校長の登用 藤原和博(前和田中学校長、著述業)

第9章 文化の継承と発展

秋田犬の系譜 マーサ・シェリル(小説家)

目利きの文化 ベルナール・アルノー(LVMH CEO)

「ポスト・ラグジュアリー」の時代 タイラー・ブリュレ(「フィナンシャルタイムズ」コラムニスト)

日本美食革命 グゥエン・ロビンソン(「フィナンシャルタイムズ」記者)

外から見た日本ブランド論 クリストファー・グレイヴス(オグルビーCEO)

立体緑園都市構想 森稔(森ビル社長)

日本建築に宿る温故知新の心 鈴木エドワード(建築家)

たとえ多くが変わっても ピコ・アイヤー(作家)

おわりに 日本のロードマップーこれから20年の道筋 エアン・ショー(マッキンゼー日本支社長)


さすがマッキンゼーという感じで、様々な立場の人が、いろいろな見地から寄稿しているが、フォーカスが定まらない印象がある。この手のオムニバス論文集ではやむをえないところかもしれない。

あえて言えば、財政再建、移民問題、教育問題(向上心)が日本再生のカギとなるというのが、多くの論者の語るところだ。

この中でもっとも注目したのは、かつてベストセラーとなった「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を書いたハーバード大学名誉教授のエズラ・ヴォーゲルさんの「ジャパン・アズ・ナンバーワンはどこへ」だ。
 
Japan As Number One: Lessons for AmericaJapan As Number One: Lessons for America
著者:Ezra F. Vogel
iUniverse(1999-06)
販売元:Amazon.co.jp
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ジャパン・アズ・ナンバーワンジャパン・アズ・ナンバーワン
著者:エズラ・F. ヴォーゲル
阪急コミュニケーションズ(2004-12)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

筆者も会社に入ってすぐにジャパン・アズ・ナンバーワンを英語で読んだ。元々は1979年発刊なので、たぶん1980年頃だと思う。表紙は今は赤だが、出版された当時は同じデザインで青だった。

米国の傲慢な思い込みに対する警鐘として書いた本だが、多くの人がタイトルに飛びつき、マスコミが取り上げて、日本が世界一の経済国になるなどありえないと批判した。

ヴォーゲルさんは、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」でも日本が世界一の経済大国になるとは、ひとことも言っておらず、「日本という国はいろいろなことをたいていの国より上手にこなしている」と言ったまでだと語る。

そのヴォーゲルさんは、今の日本の将来を大変心配していると語る。

日本の根本問題は高齢化などではなく、日本には政治家が長期的視点に立って考えることができる制度が必要なのに、それが欠けていることが最大の問題だという。

毎年莫大な歳出赤字を垂れ流すシステムでは到底続けていけない。

日本にはかつて、たとえば経済産業省のような有能な人材から成るエリート集団が存在しており、かれらが1970年代を通じて一貫した将来計画を打ち出していた。ところが1990年代に各政党が崩壊すると、一貫性がなくなった。

かつては中曽根康弘首相(在任は1982〜1987年)のような強力なリーダーがいたが、いま強力なリーダーになりえる人材は河野太郎氏や林芳正氏くらいしかいないという。

中国に関しては、日本は中国に「戦後日本がどのように平和主義に転じたか、1980年代に日本がどれだけ中国を援助したかを、どのように国民に伝えていますか?」と問うべきだという。

高齢化については、ヴォーゲルさんは80歳だが、いまでも多少の仕事はしていると語る。肉体労働中心の昔ならともかく、頭脳労働の場合には60歳定年よりも5〜10歳ほど延長しても良いのではないかと。

日本は深刻な高齢化問題に直面しているとは考えていないとヴォーゲルさんは語る。


作家のロバート・ホワイティングさんの「野茂効果」や、十年前は海外比率は10%だったのが、今は40%以上となっているという資生堂の前田さんや、「コーヒージェリーフラペチーノ」や「抹茶ラテ」は日本発だと語るスターバックスのシュルツCEOの話、コマツの坂根会長の話も参考になった。

65人が寄稿する400ページあまりの本だが、興味ある論者のものをピックアップして読んでも良いと思う。


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仕事で成長したい5%の日本人へ ゴーンさんを呼び捨てにできる日本人・今北さん

2011年12月15日追記:

今北さんの講演を聞いた。今北さんの本には次のような今北さんの写真入りの帯がついている。

今北













カルロス・ゴーンを思わせるような「濃い」顔立ちが印象的な人だ。

本に書いてあることも、書いてないこともあったが、本に書いてないことで最も印象に残ったのは、今北さんがバッテル研究所時代に、日本の自動車部品メーカーの社長と一緒に、技術供与交渉をしていたイタリアの自動車部品メーカーに行った時の話だ。

先方の社長とアポイントがあったが、予定時刻を30分過ぎても社長は現れない、今北さんはイライラしながら社長を待っていた。

やっと現れたと思ったら、せいぜい30歳台後半の三代目の社長は、今北さんの通訳に頼る日本メーカーの社長に対して「英語も出来ないでグローバルビジネスができるのか」と言った。

これに対して日本のメーカーの社長は唯二知っている英語を使って"I'm sorry."と言ったという(もう一つ知っている英語は"Thank you."だった)。そしておもむろに日本語で話し始めた。

「私は母を尊敬しています。」

今北さんは社長が逆上して、頭がおかしくなったのではないかと思ったという。

「母は私に、1.他人にはまごころを持って接すること、2.ウソはついてはいけないことを教えてくれました。あなたもそのイスにすわっているからには、あなたも祖先をさぞかし尊敬しているのでしょう。」

これに対してイタリア人の若社長は自分の非礼を謝り、"I'm sorry."と言った。それからはビジネスもスムーズに運んだという。(筆者の記憶で上記発言を再現しているので、正確な表現でないかもしれない)

今北さんが強調するのは人間力、英語で言うとコンピテンシーだ。

いくら英語力があってもそれはスキルであり、必要条件でしかない。このやりとりの様な知的ボクシング=「対決」=英語で言うとCreative confrontationで勝つためには、実践を通して「知的腕力」をつけなければならない。

知的ボクシングに勝つためには、「教養」が絶対に必要だ。「教養」は英語ではRefinementということばが最もあてはまる。単に知識だけではない。

同じ国際ビジネスマンとして、今北さんも筆者と同じ様な経験をしていると思った。

今北さんは国際セミナーで英語で質問ができなかったという。それである時思い立って、講演者の本を読み、十分研究して講演に臨み、先頭を切って質問のために手を挙げた。

ところが立ち上がってマイクが来たときに、頭の中が真っ白になって、あれだけ用意した質問を忘れてしまった。

しかし周りは今北さんがそんな状態になっていても、誰も気にしていなかった。

この経験で、今北さんは自分が思うほど、他人は自分のことを気にしていないことを学んだ。それからは、国際会議でもアガることなく、質問できるようになったという。

筆者もアルゼンチンでの研修生から帰って、1980年に欧州に出張したときに、オーストリアの国営会社の副社長に説明している途中でロジックがおかしくなり、英語での説明途中でつっかえて、頭の中が真っ白になった経験がある。

話を変えてなんとか繕ったが、この失敗を忘れず、それ以来英語のロジカルな表現力をつけるために「タイム・インテンシブ・コース」という「タイム」誌を毎週読んで、二週間に一度記事のあらすじを英文にまとめて添削してもらうという通信教育を6年間続けた。

最初の駐在でピッツバーグに赴任してからは、自分の書いた英文をコミュニケーションを専攻したアメリカ人スタッフに毎回添削してもらっていた。

「タイム」誌は20年以上毎週読んでいた。読むだけではなく、気にいった記事はわからない単語を辞書で調べ上げて読んでいた。「タイム」誌の英語は、その意味を正確にあらわす最も適当な単語を使っているので、何年たっても「タイム」誌の1ページに、10以上もわからない単語があったものだ。

あの頭の中が真っ白になるという屈辱を経験したから、TOEIC940点にまで英語力は向上し、ネイティブ並みの英文レターが書けるようになった。

Time Asia October 17, 2011 (単号)Time Asia October 17, 2011 (単号)
DIP(2011-10-13)
販売元:Amazon.co.jp
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今北さんがスイスのバッテル研究所に入社したときに、国際会議はフランス語でやっていたので、英語で会議を開くように依頼して断られたという。その時のくやしさが、今北さんがフランス語をマスターするための原動力となった。

それから今北さんは必死でフランス語を勉強して、ついにはフランスのルノー公団からスカウトされるほどになった。

筆者もアルゼンチンに赴任したときは、スペイン語は全然わからなかった。だから二年間賄い付きの下宿に住んでアルゼンチン人と一緒に過ごし、事務所での勤務時間外に語学学校や個人教授を受けた。そして二年間の研修の後、帰国したらスペイン語社内検定一級まで上達した。

このような頭が真っ白、言葉が通じない屈辱感、それが語学上達のバネとなり、コミュニケーション能力をつけるきっかけとなるのだ。

もうひとつはセールスコールだ。

今北さんはバッテルに入った当初は自分で仕事を見つけることができず、他の研究員のアシスタントで、電話調査をやらされた。毎日電話を掛けては、ガチャンと切られることの連続で、電話恐怖症、ノイローゼに近くなったという。

しかしあるとき、「こんなことで命までは取られない」と頭を切り替えて、電話調査を再開すると、中には親切な人もいて、いろいろ教えてもらい。今度はその情報を使って、別の人から聞き取り調査するという好循環が生まれ、調査がうまくいったという。

筆者もアルゼンチン駐在の時やピッツバーグ駐在の時は、必要があれば業界名簿やイエローページを頼りに、電話して売り込んだものだ。アルゼンチンの時は、そうやって香港製の天井扇風機を1コンテナー分売った。

何事もあきらめないで続けることが大事なのだ。


2011年12月14日初掲:

仕事で成長したい5%の日本人へ (新潮新書)仕事で成長したい5%の日本人へ (新潮新書)
著者:今北 純一
新潮社(2010-05)
販売元:Amazon.co.jp
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フランス企業での職務経験が長く、現在もパリ在住で日本とフランスの間を毎月行き来しているコンサルタント会社CVA(Corporate Value Associates)のパートナー・東京オフィス代表・今北純一さんの本。

近々今北さんの講演を聞く機会があり、事前に本が配られたので読んでみた。

今北さんは昭和21年生まれ。東大応用物理学科から化学工学の修士課程を卒業後、旭硝子に入社。ニューヨーク州立大学留学、オックスフォード大学の招聘教官を経て、1977年にスイスのバッテル研究所にスカウトされる。それから1981年ルノー公団、1985年から14年間のエアー・リキード社勤務を経て、1999年から現在まで元同僚が設立したCVA社のパートナーを務める。

今北さんが講演に行くと、国籍や性別にかかわらず大体5%の人が熱いまなざしを寄せてくるという。新しいことにチャレンジしたいという能動的な意識で講演を聴く人たちだ。この本はその5%の人に向けた本だという。この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次も是非見てほしい。よくできた目次なので、大体の筋がわかると思う。


成長にはMVPが必要

今北さんは人間が成長する上でMVPが必要だという。M=Mission、V=Vision、P=Passionだ。このうちPassionを持った人が最も強い。

筆者もPassionが最重要という話には同感だ。

実は、筆者は数年前に社内誌に「読書生産性アップのために」というような題で寄稿したことがある。年間300冊、一日ほぼ1冊本を読み、歩いているときや混んでいて本が読めない電車の中ではオーディオブックを聞く。そしてきにいった本はあらすじをブログに書いて「備忘録」として活用するという筆者の読書法を紹介したものだ。

自分の読書法にはそれなりに自信を持っていたが、結果としてその自信が悪い方に出て、「上から目線」のような文を書いてしまった。

1/4ページの原稿で、同じ見開きには他の人が、糸井重里の「ブイヨンの気持ち。」とか、このブログでも紹介した「マイクロソフトでは出会えなかった天職」の途上国に本を送る"Room to Read"運動など、一生懸命に自分の話を伝えようと書いている。そういった一生懸命さが伝わり、つい引き込まれる話ばかりだった。

ブイヨンの気持ち。 (ほぼ日ブックス)ブイヨンの気持ち。 (ほぼ日ブックス)
著者:糸井重里
東京糸井重里事務所(2009-04-13)
販売元:Amazon.co.jp
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マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になったマイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった
著者:ジョン ウッド
武田ランダムハウスジャパン(2007-09-21)
販売元:Amazon.co.jp
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それに対して、筆者が書いた文は整理されていてわかりやすかったかもしれないが、読者にどうしても伝えたいというパッションが感じられず、気持ちがこもっていない。反省するところ大だった。

それからはブログにしろ、社内誌にしろ、何かを書くときは必ず読者に是非とも伝えたいという筆者の思いが伝わるように、心を込めて書いている。あらすじを書くにもPassionが大事なのだ。

閑話休題。

この本で今北さんは「人は仕事で成長する」と語る。まさにこのブログで紹介した元伊藤忠商事会長・丹羽さんの「人は仕事で磨かれる」と同じだ。

人は仕事で磨かれる (文春文庫)人は仕事で磨かれる (文春文庫)
著者:丹羽 宇一郎
文藝春秋(2008-02-08)
販売元:Amazon.co.jp
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自分の仕事上の経験から学んだことや、ラグビーの平尾誠二さん、指揮者の佐渡裕さん、柔道の山下泰裕さん、将棋の羽生善治さんなどの「自分の世界を持っている人たち」との付き合いから学んだことを数多く紹介しており大変参考になる。

いくつか印象に残った話を紹介しておく。


面接で「いくら欲しいのか?」と聞かれたら、どう答える?

今北さんは30歳の時、イギリスの会社との面接で「いくら欲しいのか?」と言われて絶句したという。

たしかに、そう言われると、筆者もどう答えたらよいかとっさには答えが思いつかない。高ければ高いほど良いわけでもない。たとえば「1億円」と言っても、その根拠を聞かれて説明に窮すると逆効果だろう。

この質問で、今北さんは自分の能力を判断するのは他人であるということ、それでも交渉の余地はあるという2つのことを思い知らされた。これが今北さんの「次なる飛躍への瞬間」となったという。

この他にも今北さんのヨーロッパ人との付き合いで得られた貴重な経験を紹介している。ユーモアを大事にして、知的対決を愛するヨーロッパ人の絶妙な切り返しには感心する。


"You must succeed"の意味

たとえば、エアー・リキード社で日本での「モノシラン」という半導体用ガス販売を命じられたときに、会長から英訳すると"You must succeed"と言われたことがあるという。(「モノ知らん」とは偶然とはいえ変な名前のガスもあったものだ。ちなみにエアー・リキード社は液化工業ガスの最大手の一社だ)

これは「あなたは成功するに違いない」という意味にもとれるし、「あなたは成功しなければならない(義務がある)」という意味にもとれる。

今北さんが前任者の無謀な計画のもとに立ち上げられた日本での合弁事業を、ライバルにも大量供給するという逆転満塁ホームランで成功させて帰国し、会長にあのときの言葉はどちらの意味か?と聞くと、「あなたの思っている方ですよ」と答えたという。

なかなかそういう受け答えはできるものではない。こういうのが欧米社会でしばしば行われている「知的対決」なのだと。

ところで、最初の「いくら欲しいのか?」という質問の模範解答も紹介されている。なるほどと思う。ネタをばらすと面白くないので、これは続きを読むに書いておく


サラリーマン生活の不条理が転職のきっかけ

今北さんは新卒で入社した旭硝子の研究所で、寮と研究所を往復するサラリーマン生活に不条理を感じたという。

大学の修士論文のテーマである「ポントリヤーギンの最大原理」を使って化学工場の自動制御の最適化を研究するというのは同じでも、大学にいると授業料(たぶん当時は月1,000円だと思うが)を払わなければならないのに、会社に入るとたとえ寮でマージャンしていても給料がもらえる。

そして同じ年の高専卒の研究者は、今北さんの修士論文をあっというまに理解して、今北さんができないコンピュータープログラムを自分で書きあげる実力を持っているのに、給料は大学院卒の今北さんよりはるかに少ない。

周りの友人が「高専卒だから当たり前」というのが理解できなかったという。


カルロス・ゴーンさんに日本の話をする

今北さんは日産・ルノーのCEOカルロス・ゴーンさんとの付き合いもある。

ゴーンさんが日産のCOOとして日本に赴任する前に、元ルノー唯一の日本人社員ということで、つてをたどって今北さんに話を聞きに来たことがあった。その時に今北さんは、日本には2種類の沈黙があると忠告したという。

最初の沈黙はノーアイデアの沈黙、2つめの沈黙は「ボスは聞く耳を持たない」と判断された時の沈黙だという。2つめの沈黙には注意しろと今北さんはゴーンさんにアドバイスしたという。

日本に赴任したゴーンさんと再度会ったら、ゴーンさんは「日本の労働組合は英語をしゃべる」と驚いていたというエピソードを紹介している。


その他にも同僚の知見を適宜反映させたレポートでクライアントを獲得したら、同僚から50:50のプロフィットシェアリングを申し入れられたケースとか、オックスフォード大学での招聘教官として赴任した時に、担当する学生に逆にテストされた話、あとでわかったことだが部下がジスカールデスタン元大統領の甥で、欧州の人脈の強さに驚いた話など、今北さんの貴重な国際ビジネス経験を紹介していて、大変興味深く読める。

平尾誠二さんの「トンガの選手を一人入れたら、おどろくほどチーム全体の力がアップしました」という話も面白い。「天性のエンターテイナー」の指揮者の佐渡裕さん、「柔道を介して日本を理解してもらう」ことが現在のミッションと語る柔道の山下泰裕さん、「本番で試すということをやらない限り、成長はない」と語る将棋の羽生善治さんなどの話も参考になる。

いろいろ参考になる話が多いが、この辺でやめておく。

今北さんの他の本も読みたくなった。自分自身に置き換えてシミュレーションができ、頭の体操もできる知的刺激に富んだ本である。


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2011年12月18日

終わらざる夏 千島列島最北端 占守島の戦いをめぐる浅田次郎のファンタジックな小説

終わらざる夏 上終わらざる夏 上
著者:浅田 次郎
集英社(2010-07-05)
販売元:Amazon.co.jp
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終わらざる夏 下終わらざる夏 下
著者:浅田 次郎
集英社(2010-07-05)
販売元:Amazon.co.jp
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浅田次郎が第2次世界大戦終了3日後後、千島諸島最北端の占守島(しゅむしゅとう)で突如起きた、日本軍守備隊とソ連軍との戦いを取り上げた小説。

上下約1、000ページという大作だ。

占守島の地図がこの本の最後に載っている。

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出典:本書裏表紙

カムチャッカ半島の目と鼻の先で、終戦直後にカムチャッカ半島の砲台から砲撃を受けという。十分に砲弾が届く距離だ。

YouTubeに占守島の戦いのことが載っている。



全編を通じて映画のような構成だ。45歳で突然召集された出版社の英語専門編集者、日中戦争でたびたび戦果を挙げて金鵄勲章を与えられたが、右手には2本しか指が残っていない3度目の召集のトラック運転手・軍曹、医高専出身だが優秀さを買われて東大医学部に派遣されていた間に召集された医師の3人とその家族や仲間のエピソードで全編を構成している。

下巻の最後に占守島の戦いの場面があるが、直接的な描写ではなく、ソ連兵の回想というかたちで描写している。

小説のあらすじは例によって詳しく紹介しない。全体にスクリーンにぼかしが入ったような読後感がある。

とくにエンディングなどは、まさに映画のようにぼかしとフェードで戦闘が取り上げられているような感じだ。戦った軍人はその後シベリア抑留され、多くが命を落としていることも描かれている。

占守島の戦い自体は、日本軍23,000人に対して、ソビエト軍8,000で、日本側の勝利に終わった。攻める側が守る側より兵力が劣っていては、当然負けるだろう。

小説で詳しく書いてあるが、関東軍の精鋭戦車舞台が占守島に配属転換され、新品の97式戦車など50両を持っていた。

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出典:いずれもWikipedia

食糧は毎日のようにサケとイクラを食べていたという。タンパク質豊富な食事をしていたので、兵隊はいたって健康で、武器・弾薬ともに十分で、敗残の軍隊という感じではない。

ソ連が終戦後占守島を攻めてきた理由は不明だが、あわよくば千島列島を総なめにして北海道まで占領しようというスターリンの領土欲のためと思われる。

そんな冒険主義のソ連軍を占守島で出鼻をくじき、それ以上の侵攻を止めた占守島守備隊の功績は大きい。

靖国神社の遊就館でも占守島守備隊のことを紹介したパンフレットが置いてある、

この資料には転載のことについて何も書いていないが、たぶん多くの人の目に触れることが、靖国神社がこのパンフレットを用意した目的だと思うので紹介しておく。

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出典:「士魂会事務局

たぶん浅田さんも日本人は決して忘れてはならないもう一つの「日露戦争」として、この話を小説にしたのだと思う。

重い題材だが、全体をファンタジックに描いている。映画化が待ち望まれる作品である。


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2011年12月08日

知識ゼロからの焼酎入門 知らなかったモダン焼酎の進歩

知識ゼロからの焼酎入門知識ゼロからの焼酎入門
著者:日本酒類研究会
幻冬舎(2004-02)
販売元:Amazon.co.jp
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日本酒の本をいろいろ読む一方、もうひとつの代表的”日本酒”である焼酎の本も読んでみた。

フルカラーの「日本酒事典」などに比べて、こちらは焼酎の銘柄の紹介も白黒写真で、ややショボい感じが否めないが、それでも焼酎の基礎知識を得るには格好の本だと思う。


蔵元を知って味わう日本酒事典蔵元を知って味わう日本酒事典
ナツメ社(2011-01-21)
販売元:Amazon.co.jp
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焼酎が蒸留酒であることは知られているが、あまり知られていない焼酎にしかない特徴としては次が挙げられる。

1.血栓を予防するのではなく、できた血栓を溶かす効果があるのは焼酎だけ

赤ワインなどのポリフェノールは血管に血栓ができるのを防ぐ効果があるとされているが、焼酎は血栓を溶かすウロキナーゼを増やす効果がダントツに高い。scanner253



















出典:本書8ページ


2.焼酎の原料はでんぷん質であればなんでも良く、世界のアルコール飲料の中でも原料の制限のないユニークな存在

麦、芋、米、そば、黒糖など様々な原料から焼酎ができる。変わったところでは、ミルク、しそなどがある。その他にも多くの原料から焼酎が造られている。

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出典:本書85ページ

マンガ「美味しんぼ 95 焼酎革命」でも最近の焼酎の劇的な変化がわかる。特に若い造り手が焼酎の近代化を積極的に推進している。

美味しんぼ (95) (ビッグコミックス)美味しんぼ (95) (ビッグコミックス)
著者:雁屋 哲
小学館(2006-05-30)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

山翡翠 (山せみ) 720ml
山翡翠 (山せみ) 720ml

幻冬舎の「知識ゼロからの〜」シリーズは大体1日で読めて、手軽に基礎知識を得られるので、ありがたいシリーズ本だ。


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2011年12月05日

映画・スパイ・ゾルゲ 3時間の歴史大作を見た



スパイ・ゾルゲ [DVD]スパイ・ゾルゲ [DVD]
出演:イアン・グレン
東宝(2003-11-21)
販売元:Amazon.co.jp
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図書館で借りて映画「スパイ・ゾルゲ」を見た。

日本にドイツの新聞社の特派員として駐在しているふりをして、実はソ連のスパイとして日独の情報をスターリンに送っていたリヒャルト・ゾルゲの名前はこのブログでは、近衛文隆の人生について描いた「夢顔さんによろしく」、「プリンス近衛殺人事件」で紹介した。

夢顔さんによろしく 上―最後の貴公子・近衛文隆の生涯   文春文庫 に 9-3夢顔さんによろしく 上―最後の貴公子・近衛文隆の生涯 文春文庫 に 9-3
著者:西木 正明
文藝春秋(2002-10)
販売元:Amazon.co.jp
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プリンス近衛殺人事件プリンス近衛殺人事件
著者:V.A. アルハンゲリスキー
新潮社(2000-12)
販売元:Amazon.co.jp
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近衛文隆はシベリア抑留中に出した妻の正子さん宛のレターの最後に、「夢顔さんによろしく」と何回か書き送っていた。

この「夢顔」さんとは誰のことか、当時は本人の正子さんにもわからなかったようだ。「夢顔さんによろしく」のあらすじでは、謎を明かさなかったが、実はこの「夢顔」さんがゾルゲのことである。

文隆は1941年にゾルゲが内通者の朝日新聞社員・尾崎秀実(ほつみ)とともにソ連のスパイとして逮捕されたことを知っていた。これがゾルゲ事件である。

ゾルゲと尾崎が1944年に処刑されたことは公にされていなかったので、文隆はゾルゲが戦後ソ連のヒーローとして復活したと思っていた。

それで妻の正子宛に、シベリアに抑留されている文隆開放の為にゾルゲの助けを借りることを暗号文で示唆したのだ。

もちろんゾルゲは日本で1944年に処刑されているので、文隆の願いは届かなかったが、旧東ドイツではゾルゲの切手が発行されているほどで、共産主義のヒーローとして戦後復権している。

Stamp_Richard_Sorge





出典:Wikipedia

またWikipediaによると、ロシアの駐日大使が着任するとゾルゲの墓参りに行くそうなので、現在でもゾルゲはロシアのヒーローと見なされているようだ。

映画のあらすじは例によって詳しくは紹介しない。

全編3時間という長編大作で、映画館で上映された時は、途中で休憩が入ったそうだが、この映画を見ると当時の時代背景や風俗がよくわかって大変参考になる。

映画のストーリーとしてはラブストーリーも織り交ぜた歴史物と言っておこう。昭和の歴史に興味のある人は、一見の価値がある映画である。


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2011年12月01日

日本酒事典 日本酒を飲み始める人のために

蔵元を知って味わう日本酒事典蔵元を知って味わう日本酒事典
ナツメ社(2011-01-21)
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日本酒の教科書日本酒の教科書
著者:木村 克己
新星出版社(2010-02)
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筆者は1978ー80年のアルゼンチン駐在以来、ずっとワイン派だった。自宅で飲むのはほとんどワイン。昨年くらいから食事によってはロゼも飲むようになったが、ほとんどずっと赤ワインだった。

日本酒は買ったこともないし、法事などでもらったものを飲むほかは家で飲んだこともなかった。

とはいえ、やはり刺身や煮魚などの日本料理には、ワインより日本酒の方が合うのではないかと思っていたことも事実だ。それのあらわれが、昨年からロゼワインを飲むようになったことだ。

そんなワイン党の筆者が宗旨変えして、上記に紹介した「日本酒事典」と「日本酒の教科書」を読んで、日本酒を飲み始めた。(どちらも参考になるが、「日本酒事典」の方が瓶の写真も紹介しており、銘柄ラベル写真だけの「日本酒の教科書」よりもなぜか親しみを感じた)

きっかけは東日本大震災だ。日本酒を飲むことで、すこしでも東北地方の復興の役に立てるのであればと思って飲み始めた。



醸造業の裾野は広い。もちろん原料の農業の振興にもなるし、バイオ技術や醸造設備産業にも貢献するとともに、地元の観光振興にも役立つ。

山梨の勝沼が良い例だ。ワイン産業としては世界的には小規模ではあるが、日本でも最大級のワイン産地として一大観光名所となっている。ワイナリー巡りなど観光客が一年を通して訪問するし、山梨大学工学部にはワイン科学特別教育プログラムもあり教育産業にも波及効果がある。

もちろん筆者が日本酒に切り替えたからといって、効果はたかがしれており、えらそうに言うべきことではない。しかし気は心、同じように賛同してくれる人もあると思うので紹介する。

筆者が飲み始めたのは宮城県塩竃の浦霞。もろに被災地にある酒蔵だ。浦霞自身もかなりの地震の被害を受けたはずだが、一本につき5円という復興資金を寄付することを実施している。

次が浦霞の種類だ。左から本醸造、ササニシキを使った純米酒、特別純米酒の「禅」と外箱というラインアップだ。

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本醸造は仕込みの段階で10%まで醸造アルコールを添加している。本来日本酒は純米酒が正統であり、アルコール添加酒は邪道、儲け主義だという非難の声がある。たとえば「美味しんぼ」では、純米酒こそが日本酒だといい、青リンゴなどの香りのする吟醸酒はハナから受け付けない。

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しかし筆者は浦霞で本醸造、純米酒、特別純米酒を飲み比べた結果、本醸造が一番気に入ったので、本醸造の一升瓶を買った。いままで40年近く酒を飲んでいるが、自分用に一升瓶を買ったのは初めてだ。

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アルコール添加はあくまで仕込みプロセスの一環であり、アルコールを10%添加することによって、いわゆる吟醸香が増し、「キレ」が良い辛口の酒に仕上がる。「美味しんぼ」の作者はアルコール添加酒を全く受け付けないが、筆者はこと浦霞に関しては、本醸造が安くてうまいと思う。

【佐浦】浦霞 本醸造 1800ml
【佐浦】浦霞 本醸造 1800ml

要はその人が飲み比べて一番気に入ったものを選べば良いので、別に純米酒にこだわる必要はないと思う。

ちなみに筆者は次の氷ポケットのあるデキャンターに入れて冷やして飲んでいる。

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キンキンには冷えないが、冷えすぎないで良い。

日本酒はワインに比べて安いので、良い日本酒を何本か飲み比べても、720MLの瓶であれば、せいぜい一本1,000〜2,000円で買える。

冒頭に紹介した「日本酒事典」や「日本酒の教科書」を読んで、基礎知識をつけた上で、日本酒を飲んで頂きたい。大手の酒蔵は江戸時代から続く老舗ばかりであることに驚くだろう。まさに日本酒は日本の伝統文化である。

東北の酒を飲めば東北復興にも微力ながらつながる。そんな気持ちも込めて日本酒を飲んで欲しい。


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Posted by yaori at 13:20Comments(0)TrackBack(0)