2012年04月30日

TPPを考える 農協(JA)グループのTPP反対論の根拠は?

TPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させるTPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させる
著者:石田 信隆
家の光協会(2011-02)
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農協(JA)グループの出版・文化事業を担当する「家の光協会」が発行するTPP反対論。農林中金出身で、現在は農林中金総合研究所理事の石田信隆さんの本だ。

「家の光協会」のビルは別件で訪問したことがある。てっきり宗教団体だと思っていたが、農協の宣伝部門だった。

”1時間でよくわかる”という枕詞がついている60ページほどの小冊子だ。「『開国』は日本農業と地域社会を壊滅させる」というサブタイトルがついている。

この本で挙げられている論点は、次に紹介する浅川芳裕さんの「日本の農業が必ず復活する45の理由」や、「TPPで日本は世界一の農業国になる」でボコボコにされている農林水産省の論点そのままだ。

日本の農業が必ず復活する45の理由日本の農業が必ず復活する45の理由
著者:浅川 芳裕
文藝春秋(2011-06-28)
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TPPで日本は世界一の農業大国になるTPPで日本は世界一の農業大国になる
著者:浅川 芳裕
ベストセラーズ(2012-03-16)
販売元:Amazon.co.jp
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JAグループがTPPに反対する理由の最大のものは、TPPで関税が撤廃され、安い外国産農産物が日本に大量に輸入されると、日本の農業生産は壊滅的な打撃を受けるからというもので、農林水産省のTPP影響評価の数字をそのまま使っている。

TPP影響資産





コメ生産は一部の銘柄米のみに9割減少し、農林水産業全体で4兆5千億円も生産が減少する。

結果として食糧自給率(カロリーベース)は現在の40%から13%に激減する。

そうすると、いままで水田稲作や林業に頼っていた日本の治水インフラも大打撃を受け、”農業の多面的機能の損失額”は3兆7千億円にも達し、あわせたGDP減少額は8兆4千億円にも上るという農水省の試算をもとにした議論だ。

この農林水産省によるずさん極まりないTPPダメージ試算と、筆者のコメントは次の通りだ:

★コメの生産は9割減少し、約2兆円減少する。

農水省資料_ページ_04





⇒ちょっと待て。平成22年度のコメの生産額は1兆5千億円だ。日本のコメ生産がすべてなくなっても2兆円も減少しないぞ。

★牛肉の生産が4千5百億円減少

農水省資料_ページ_08






⇒ちょっと待て。平成22年度の肉用牛の生産額は4千6百億円だ。日本の牛肉生産がすべてなくなるのか?

★乳製品の生産が4千5百億円減少

農水省資料_ページ_07






⇒ちょっと待て。平成22年度の生乳の生産額は6千7百億円だ。牛乳のように毎日新鮮なものを輸送し、長期間の輸送には適さないものがなぜ1/3の規模に減少するんだ?

★砂糖の国内生産はゼロになる(他にもいくつも国内生産がゼロとなる品目がある)

農水省資料_ページ_06






⇒ちょっと待て。政府が農家を保護するやりかたは関税だけではない。TPPは農業の輸出補助金は禁じているが、農業に対する様々な政府援助を禁じているわけではない。

水産物ではひじきの国内生産がゼロになるという。わかめは93%減、昆布は70%減だ。日本人が日本の豊富な海藻を食べずに、70〜100%外国産の海藻に切り替えるのか?日本人がすこしくらいの価格差で、東北の被災地や北海道の漁民を見捨てるのか?

水産林業影響











農業協同組合新聞(JACOM)がホームページで図解しているので、ここをクリックして参照してほしい。

日本の農林水産業は関税に守られないと国際競争力がないと言いたいのだろうが、全く現実味のない前提を持ち出して、こんなずさんな試算を平気で出してくる農林水産省の存在意義はもはや無いのではないかという気がしてくる。

農林水産省試算を錦の御旗にしているこの本の信頼性も、推して知るべしではあるが、ともかく印象に残点を箇条書きで紹介しておく。

★日本はすでに十分に開かれた国で、いまさら「開国」は不要
日本の平均税率は2009年で全商品が4.9%、農産品が21%。

非農産物の関税は日本が一番低く、農産物の関税がEU,アメリカより高いので、全品目では米<日本<EUの順である。

★日本の農業保護の水準が高いのは、耕地面積が狭いなどのハンディキャップが高いため。

★アメリカ主導でTPP参加するということは、アメリカの巨額の農業補助金をそのままにして、日本の関税だけ撤廃するもので「不平等条約」だ。WTOのルールはアメリカやEUの主導でつくられたもので、それに日本が乗っていると、どんなルールの不利益変更に見舞われるかもしれない。

★農業の多面的機能が失われる。

食と農のあした3_ページ_1






貨幣的価値を見積もると、農業の多面的機能の喪失額は年間3兆7千億円だという。

食と農のあした3_ページ_3






★農産物輸出でも、加工品輸出が中心となるので、たとえ農産物輸出が1兆円を突破しても、農産物の輸出はせいぜい1千5百億円程度。農業生産額の2%にも満たない。

★「TPPに乗り遅れるな」というような性急な姿勢でTPP交渉に参加することは、看護師資格や弁護士資格などの広い範囲の交渉に安易に妥協して、国の形が取り返しがつかないほど変わってしまう恐れがある。

★アメリカはWTOで拒否された投資、競争政策、政府調達分野などをTPPで実現しようとしている。

結論として、「平成の開国」は不要。今必要なのは、行き過ぎた自由化によってあまりにも低い水準となった食料自給率を回復させるための「不平等条約」の改正なのだと。

JAグループの主張は、「いまこそTPPに対抗する多様な協同の輪を」といいうことで、次の2点を提言している。

1.地域を大切にし地域というまとまりのなかで、そこにある自然・資源・人が結びつきながら、1+1が2ではなく3になるような、よい相互作用を生み出すこと。

2.日本もその一員であるアジアを重視した戦略をとること。

なにを言いたいのかわからないが、TPP反対連合をつくろうと呼びかけていることだけはわかる。

2012年は「国際協同組合年」だそうだが、これは協同組合がもたらす社会経済的発展への貢献が認められたものだという。


筆者の考察(ご参考)

次はあらすじでなく、筆者の意見である。

いままでいくつか農業や食料に関する本を読んできたが、この本も含めて食料自給率の低さを問題とする本は、カロリーベースの食料自給率しか根拠として示していない。

ところが、カロリーベースの食料自給率を編み出した本家本元の農林水産省でさえ、計算根拠を明らかにしていないカロリーべースと、国際統計から計算できる生産額ベースの自給率の両方を発表している。

自給率






しかも上記グラフの示す通り、生産額ベースの自給率は近年上昇しており、農水省が2030年の目標としている自給率70%を、ほぼ達成しているのだ。

農家も収入を増やすべく必死に努力しているのだから、コメや麦など価格の安いものより、カロリーは低いが価格が高い野菜や果物などの作物にシフトするのは当たり前だろう。

農水省もその辺がわかっているから、カロリーベースと生産額ベースの自給率を両方発表しているのだろう。

日本の産業は常に新陳代謝を繰り返し、たとえ一時は国際競争力があった産業でも、国際競争力を失えば、どんどん縮小あるいは高付加価値生産に切り替えて体質を変えてきた。

たとえば石炭産業は、現在では日本国内ではほとんどなくなったが、昭和20年代までは黒いダイヤといわれて、基幹産業の一つだった。基幹産業でも競争力がなくなれば、変わらざるを得ない。

繊維産業は昭和40〜50年代は、日米貿易摩擦を引き起こしたほど競争力のある業界だった。当時は、輸入の衣料などブランド品を除いて皆無だったが、今や日本製の衣料を見つけるのが難しくなってきているほどだ。

繊維業界は海外メーカーを技術指導して現地生産に切り替え、自分で体質を変えてきたのだ。

農業も同じで、農家は自分で体質を変えてきている。一般的には農業従事者は毎年減少して、しかも65歳以上の高齢者の割合はどんどん上昇していると言われている。

農業従事者_ページ_2










しかし上記の「基幹的農業従事者」には、「農家」でない人、つまり、農家や農業法人に雇われている従業員は含まれていない。その数は定期雇用と臨時雇用を含めて233万人と上記の「基幹的農業従事者」と同じ数だけいる。農家は減っているが、農家に雇われる人は増えているのだ。これは浅川さんの「日本の農業が必ず復活する45の理由」で説明されている。

浅川さんの「日本は世界5位の農業大国」のあらすじで紹介した通り、日本の農業生産額は世界第5位だ。

日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)
著者:浅川 芳裕
講談社(2010-02-19)
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牛肉、オレンジで見せた様に、日本の農業は決して弱者ではない。むしろTPPで自由化されたら、アジアの高所得層向けに輸出できることを心待ちにしている農家も多いはずだ。

この「TPPを考える」では農協のTPP反対論は伝わってくるが、農家の声はゼロである。この本が農家向けの教宣本だからかもしれないが、農協が農家から遊離した組織であることを物語っているような本である。


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2012年04月29日

ニーチェの言葉 いまなぜニーチェ?

超訳 ニーチェの言葉超訳 ニーチェの言葉
ディスカヴァー・トゥエンティワン(2010-01-12)
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ベストセラーになっているフリードリヒ・ニーチェの言葉を集めた作品。「超訳」となっているので、かなり読みやすいように言い換えられているのだと思う。

ニーチェの作品は、学生時代にいくつか読んだが、読んだという記憶だけで、内容は全く覚えていない。難解だという印象だけは残っている。

ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)ツァラトゥストラはこう言った 上 (岩波文庫 青 639-2)
著者:ニーチェ
岩波書店(1967-04-16)
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その難解なニーチェの作品から、次のようなグループに言葉をまとめている。

I  己について
II  喜について
III 生について
IV  心について
V  友について
VI  世について
VII 人について
VIII 愛について
IX  知について
X  美について

なか見!検索に対応しているのでここをクリックして目次をチェックしてほしい。


ばらばらの言葉で哲学を語れるのか?

哲学書の部分部分をコピー・ペーストとして一冊の本に仕立て上げるというのは、新しい発想だと思うが、ばらばらの言葉をまとめてもニーチェの哲学を語るものにはならないと思う。

人生訓のような本となっており、実存主義哲学の先駆者のニーチェ哲学の特徴や価値が全くわからない。

人生訓といえば代表作は論語だが、論語はもともと孔子のその時々の言葉を特に意図なくまとめたもので、系統だった本ではない。

論語 増補版 (講談社学術文庫)論語 増補版 (講談社学術文庫)
著者:加地 伸行
講談社(2009-09-10)
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これに対してニーチェの著作は、それぞれに基本となる主張があり、それに沿って論理を展開している。だからばらばらにして人生訓の本をつくるのは無理があると思う。

ニーチェが言ったということで特筆すべき言葉でもないと思うが、ともあれ、いくつか印象に残った言葉を紹介しておく。


043 脱皮して生きていく
脱皮しない蛇は破滅する。人間もまったく同じだ。(中略)常に新しく生きていくために、わたしたちは考えを新陳代謝させていかなくてはならないのだ。


061 勝利に偶然はない
勝利した者はもれなく、偶然などというものを信じていない。たとえ彼が、謙遜の気持ちから偶然性を口にするにしてもだ。

この言葉は「負けに不思議の負けなし」という野村前監督の勝負観と好対照をなす。筆者としては野村監督の言っている方が実態にあっているような気がする。

負けに不思議の負けなし〈完全版〉 上 (朝日文庫)負けに不思議の負けなし〈完全版〉 上 (朝日文庫)
著者:野村 克也
朝日新聞出版(2009-03-06)
販売元:Amazon.co.jp
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065 反対する人の心理
提示されたある案に対して反対するとき、よく考え抜いたうえで確固とした根拠があって反対する人はごく少ない。多くの人は、その案や意見が述べられたときの調子とか言い方、言った人の性格や雰囲気に対して反発の気分があるから、反対するのだ。

このことがわかれば、多くの人を味方にできる方法が何かがおのずと知れてくる。(後略)


118 カリスマ性の技術
自分をカリスマ性を持った深みのある人間であるように見せたいなら一種の暗さ、見えにくさを身につけるようにすればよい。自分をすべてさらけださないように、底が見えないようにするのだ。

多くの人は、底が見えないことに一種の神秘性と深さを感じるからだ。自然にある池や沼にしても、濁って底が見えない人は深いと思って恐れてしまう。カリスマ的人物と呼ばれる人への恐れとは、その程度のものなのだ。


119 体験だけでは足りない
確かに体験は重要だ。体験によって人は成長することができる。しかし、さまざまな体験を多くしたからといって、他の人よりもすぐれていると言うことはできない。
体験しても、あとでよく考察しなかったら、何にもならないのだ。(後略)



140 怠惰(たいだ)から生まれる信念
(前略)信念がある人というのはなんとなく偉いように思われているが、その人は、自分のかつての意見をずっと持っているだけであり、その時点から精神が止まってしまっている人なのだ。つまり、精神の怠惰が信念をつくっているというわけだ。

どんなに正しそうに見える意見も主張も、絶えず新陳代謝をくり返し、時代の変化の中で考え直され、つくり直されていかなければならない。

ニーチェは自分の主張自体も「新陳代謝」、つまり常に見直すべきだと語っている。ニーチェのような大哲学者で、そのようなことを言う人は少ない。その意味からも尊敬すべき姿勢であり、筆者も自らの反省をこめてここに紹介する。

最後に本と読書についての部分を紹介しておく。

Nietzsche1













Nietzsche















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2012年04月24日

本当に考える力がつく多読術 実践!多読術 結局、拾い読みじゃん

本当に考える力がつく多読術本当に考える力がつく多読術
著者:園 善博
三笠書房(2010-04-03)
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実践! 多読術  本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)実践! 多読術 本は「組み合わせ」で読みこなせ (角川oneテーマ21)
著者:成毛 眞
角川書店(角川グループパブリッシング)(2010-07-10)
販売元:Amazon.co.jp
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多読術の本を2冊ほど読んでみた。

推薦本の紹介以外は、あまり得たところはないので、詳しくは紹介しない。いずれも多読=速読=拾い読みである。つまりスキップして読んでいるから速読=多読できるのだ。

筆者はほぼ一日1冊のペースで本を読んでいるが、必ず通読する。ところが、「本当に考える力がつく多読術」という本を書いている園善博さんは、逆に通読は勧めないという。

いわば「合目的読書法」という感じで、まず目次を最初から最後まで読んで、どんな情報が得られるか想像する。その情報を得るメリットを書き出し、本を読み終えた自分がどうなっているのかイメージして書き出し、そのうえで本を読むのだという。

いわゆる「カラーバス効果」のような考え方だ。

筆者も、目次からある程度内容を予測して本を読んでいるが、このように得られる情報のメリットを予測し、それがどう自分に生かせるのかまでイメージして本を読んでいるわけではない。

筆者は通読して印象に残ったところにポストイットを貼って、あとであらすじにまとめてブログに書いている。通読と拾い読みの差はあるが、結果的には同じことをやっているのかもしれない。今度は園さんの方法も参考にして、得られるものをはっきり意識して読んでみる。

もっとも、読書は量が問題ではない。質、つまり本を読んで、本からどれだけのものを得られるかが重要であって、多読しても、それが右から左に流れて、すぐに本の内容を忘れるようであれば意味がない。

実は筆者は大学生の時に一日一冊をノルマにして本を年に300冊ほど読んだことがあるが、書いてある文字を目で追っているだけで、ほとんど本の内容を理解しないままで終わってしまった。

カフカの「変身」やカミュの「異邦人」など、読んだという記憶があるだけで、内容は出だしの部分しか覚えていない。

変身 (新潮文庫)変身 (新潮文庫)
著者:フランツ カフカ
新潮社(1952-07-30)
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異邦人 (新潮文庫)異邦人 (新潮文庫)
著者:カミュ
新潮社(1954-09)
販売元:Amazon.co.jp
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サルトルの「実存主義とは何か」などは、単に字面を目で追っただけで、全く内容を覚えていない。

実存主義とは何か実存主義とは何か
著者:J‐P・サルトル
人文書院(1996-02)
販売元:Amazon.co.jp
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この時の反省があるから、通読+ブログ備忘録にこだわるのだ。また、通読すれば、著者は次は何を書くのだろうというわくわく感を維持しながら本を読み切ることができる。

最初から当たりをつけて、拾い読みしては、このわくわく感=期待感が、フルに味わえないと思う。

成毛さん、園さん、松岡正剛さんのような多読本の著者のように、金をもらって本の書評を書いているわけではないので、一般読者はやはり本を読んで知識と感動を得るというのが、正攻法だと思う。

閑話休題。

ちなみに、園さんもカーネギーのことを書いている。「人を動かす」は今出版されている自己啓発本と内容がほとんど変わらない古典なので、園さんはカーネギーの原典しか読まないという。

人を動かす 新装版人を動かす 新装版
著者:デール カーネギー
創元社(1999-10-31)
販売元:Amazon.co.jp
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成毛さんは、買ったり貰ったりで、月に100〜200冊の本を手に取り、最後まで読み通すのはそのうち10〜15%だという。

成毛さんも、本に書き込むをするのではなく、参考になった個所にポストイットを貼っておくという筆者と同じ読み方をしている。

ただお金持ちの成毛さんならともかく、今度紹介する松岡正剛さんの「多読術」も含めて、多読本の著者は図書館の利用について一言も触れていないことが気になった。

多読術 (ちくまプリマー新書)多読術 (ちくまプリマー新書)
著者:松岡 正剛
筑摩書房(2009-04-08)
販売元:Amazon.co.jp
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図書館を利用しないで、一日数冊という多読が可能な人はよっぽど金持ちか、本に埋もれて生活しているような人だろう。著者として自分の本を売らなければならない立場にあり、出版業界や本の流通業界に気兼ねしているのだろうが、図書館利用について何も書かないのは片手落ちのように思える。

成毛さんの「実践、多読術」の1/3は推薦書の紹介で、様々なジャンルの本が紹介されているので、知的好奇心を刺激される。たとえば次のような本だ。

図説 科学で読むイスラム文化図説 科学で読むイスラム文化
著者:ハワード・R. ターナー
青土社(2000-12)
販売元:Amazon.co.jp
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チョコレートの真実 [DIPシリーズ]チョコレートの真実 [DIPシリーズ]
著者:キャロル・オフ
英治出版(2007-08-27)
販売元:Amazon.co.jp
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731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)731―石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く (新潮文庫)
著者:青木 冨貴子
新潮社(2008-01-29)
販売元:Amazon.co.jp
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ノアの洪水ノアの洪水
著者:ウォルター・ピットマン
集英社(2003-08-26)
販売元:Amazon.co.jp
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そのほかにも面白そうな本がいくつも紹介されていて参考になる。


多読家の流儀ではないかもしれないが、自分は通読を続けて行こうという気持ちになる「多読」本だった。



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2012年04月22日

私たちがつくる食と農のあした 農水省がつくった子供向けパンフレット

これから何回か農業に関する本を取り上げていくので、その前に2010年3月に民主党政権下で閣議決定された、現在の国策である「食料・農業・農村基本計画」について農林水産省が子ども向けにつくったパンフレットで問題点を整理しておく。

次が「私たちがつくる食と農のあした」という農林水産省がつくった子ども向けパンフレットの表紙だ。農林水産省のホームページでも何部かに分けてダウンロードできる

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目次は次のようになっている。全部で50ページのマンガ入りのパンフレットで、全国の図書館には必ず置いていると思うので、最寄りの図書館の「産業:農業」コーナーをチェックしてみて欲しい。たぶん全国の小学校にも配布されたのだと思う。

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いま、食に起こっていることとして、あまり食とは関係のないような生活習慣病の増加も指摘されており、さらに朝ごはんを食べない若者の比率が3割にも上ることが指摘されている。

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日本の農業を取り巻く問題点についてもわかりやすく整理されている。

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日本の農業・農村の再生のために、2020年に食料自給率5割(カロリーベース)をめざし、次のような政策を打ち出している。

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この政策が実現すると、2020年には小麦、飼料用作物(コメ)、大豆の国際生産が飛躍的に拡大し、朝食を食べる人が増えて、コメの消費も増加するという将来像を打ち出している。

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食品自給率が5割を超えると、何が変わるのかを示したのがこの図だ。国産小麦と食用大豆の国産品が増える比率が大幅にアップする他は、あまり目立った変化は内容に思える。

油の摂りすぎの抑制というのは、たぶん輸入大豆の多くは、食用油生産用に使われることから、輸入の大豆が減る効果という意味なのだろうが、なぜ食料自給率がアップする効果として挙げられているのかよくわからない。あるいは逆に油の摂りすぎを抑制して、輸入大豆を減らそうということなのかもしれない。

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食品自給率については、日本の農林水産省が創り出した独自の「カロリーベースの自給率」という指標をつかって、各国の食料自給率を比較し、主要国では日本が最低の食料自給率であることを示している。

「国内の農地を有効利用しないで、大量輸入して大量に捨てるなんて、国際的にも許されない状況になってきているのだよ」というコメントがついている。

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農林水産省は、公式の発表の際には、農水省がつくっていながら計算根拠も公表せず、日本しか使っていないカロリーベースの自給率と、公表されている統計から計算した生産金額ベースの自給率を両方発表するが、この子ども向けの本では、カロリーベースしか記載していない。

たぶん生産金額ベースでは自給率が69%となり、インパクトがなく、予算も取れないからだろう。うがった見方をすれば、子どもが小さいうちから、日本独自のカロリーベースの自給率の低さを刷り込もうとしているように思える。

自給率
















肝心の、「なぜ自給率を上げないといけないのか」については、次の様に説明しているが、要は「我が国の輸入食料の確保が厳しくなる可能性」しか理由として挙げていない。

バーチャルウォーターや二酸化炭素排出量なども付け加えて、「地球のために」とか「日本はたくさんの国に助けてもらっているのね」とかコメントを入れているが、なぜ自給率を上げなければならないのかの、理由になっていない。

日本は石油・石炭などのエネルギー、そして鉄鉱石や銅などの非鉄地金、レアアースなど産業用原料も、ほとんど100%海外に依存している。

堺屋太一さんが通産省の官僚だった時に書いた「油断」で描かれていたように、石油がなければ農業機械も温室もビニールハウスも使えず、日本の農業生産は成り立たない状況にあるのに、なぜ無理矢理食料自給率だけ上げなければならないのかがわからない。

油断! (日経ビジネス人文庫)油断! (日経ビジネス人文庫)
著者:堺屋 太一
日本経済新聞社(2005-12)
販売元:Amazon.co.jp
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「食料輸出国もいざという時は自国民を優先」という説明をして、過去輸出規制を実施したことがある国をピックアップしているが、日本の主要な輸入先であるアメリカとオーストラリアはこれに入っていない(もっともアメリカはニクソン大統領の時に、大豆の輸出規制をした前科はある)。

またこのリストは輸出規制を実施した国ということで、輸出税を賦課した国も含まれているが、たとえば筆者が駐在した1980年ころのアルゼンチンは、自国内では到底消費できない量の小麦を生産していたが、税金を取る一つの財源として小麦に輸出税を掛けていたのであり、自国民を優先していたということではない。

輸出規制国






















「食料需給は逼迫し、食料価格は高止まり」というページでは、穀物相場は一本調子で上昇するような予測を建てている。

価格予想























実際の穀物市況は、乱高下している。傾向的にはたしかに昔の低い価格レベルとは違う水準となっているが、需給が逼迫しているわけではなく、世界の貿易額は大幅に拡大している。

農業がこれだけ巨大な貿易産業になると、将来日本が他の国に「買い負ける」ということはありえても、金を出しても買えないという事態になることは到底考えられない。

というのは農業は一度限りの商売ではない。毎年ほぼ自動的に一定量の生産物を売らなければならないので、たとえある年が不作で、相場が高騰しても、輸出には一切回さないなどという、売り手と買い手の信頼関係を根底から壊すようなことは生産者はやらないからだ。

穀物市況


















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出典:農林水産省 平成22年度食料・農業・農村白書

農業の多角的機能としては、洪水を防ぎ暮らしを守るとか、土砂崩れを防ぐとか、安らぎをもたらすといったものが挙げられている。これらを金額で評価すると、年間約6兆円の効果があると、日本学術会議が評価したという。

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食料自給率をカロリーベースでしか記載しておらず、しかもその基準が日本のみでしか使われていないことを一切説明していないので、40%という食料自給率のみが独り歩きして、子どもに誤解を与えるような内容だが、農林水産省の主張がよくわかるという面では役立つ資料だ。


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2012年04月19日

日本酒は奥深い 銘柄その5 石川県の「天狗舞」

「日本酒事典」を買って以来、被災地宮城県塩釜の「浦霞」を皮切りに、日本各地の日本酒を試している。

蔵元を知って味わう日本酒事典蔵元を知って味わう日本酒事典
ナツメ社(2011-01-21)
販売元:Amazon.co.jp
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今回は石川県の「天狗舞」を飲んだ。

2012040718440000














2012040718470000














天狗舞 山廃仕込純米  1800ミリ純米酒部門において最高峰となりました!
天狗舞 山廃仕込純米  1800ミリ純米酒部門において最高峰となりました!


ボトルに吊るしてあるラベルは2011年のInternational Wine Challengeで純米酒部門の最高金賞受賞記念のものだ。

ちなみにIWCは日本酒も大きく取り上げており、現在のトップページにはSAKE SEMINAR2012と銘打って、ロンドンで”Back to the Future - Sokujo vs Kimoto”というセミナーが開催されることを告知している。もちろん「即醸」VS 「生酛(きもと)」のことだ。

IWCtop






海外の熱心な日本酒ファンのレベルの高さに驚かされる。

「天狗舞」は輸出も積極的に取り組んでおり、ホームページもきれいにつくりこんでいる。英語や中国語も対応しており、日本の酒蔵のホームページで、ここまで海外向けの情報発信を考えているところも少ないのではないかと思う。

天狗舞1






天狗舞2






飲んでみると淡麗そのもの。冷やと燗で飲んでみたが、冷やが一番淡麗という感じが出るように思える。

日本酒は奥深い。

次は最近読んだ「グローバル資本主義を卒業した僕の選択と結論」という本に、たまたま紹介されていた山形の「出羽桜」を飲んでみる。この本の著者の石井至さんも、最近日本酒を飲んで日本酒に対する認識が変わった人の一人だ。

グローバル資本主義を卒業した僕の選択と結論グローバル資本主義を卒業した僕の選択と結論
著者:石井至
日経BP社(2012-02-23)
販売元:Amazon.co.jp
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出羽桜酒造 出羽桜 桜花吟醸 火入れ 1.8L【1本から5円義捐金となります】【みんなの笑顔のために】
出羽桜酒造 出羽桜 桜花吟醸 火入れ 1.8L【1本から5円義捐金となります】【みんなの笑顔のために】



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2012年04月18日

次回を目指せ リック! (共和党大統領候補者リック・サントラム)

2012年4月18日再掲:

リック・サントラムが大統領候補戦から撤退した。これで米国共和党の大統領候補はロムニー前マサチューセッツ州知事に一本化される見込みだ。

リックは旗色がわるかったことと、先天的に染色体異常を持つ3歳の娘が入院したことから、24日の出身地のペンシルベニア州の予備選挙の前に撤退宣言をしたようだ。

ちょっと残念だが、熱心なカトリックのリックは妊娠中絶に反対している点などから、今回の候補者選びで米国の多くの選挙民の支持を得ることは難しかったかもしれない。

リックはまだ53歳だし、また次の機会もあるだろう。引き続き頑張れ、リック!



2012年3月29日初掲:

今年は米国の大統領選挙の年だ。筆者は米国に合計9年間駐在していたので、いまだに大統領選挙の興奮を覚えている。

特に印象深かったのは、2000年のアル・ゴア対ジョージ・W.ブッシュのフロリダ州での再集計のゴタゴタだ。

いったんはアル・ゴアは敗北宣言をしてジョージ・W.ブッシュに祝福の電話を入れたが、フロリダ州の結果があまりにも僅差だったので、再集計を申し入れ、結局3−4週間かかって、無効票も入れて再集計し、ブッシュの勝利が確定したのだ。

なにか気が抜けた3週間だったことを思い出す。

ところで2012年の共和党の大統領選挙は、前マサチューセッツ州知事のロムニー候補とペンシルベニア州選出の前上院議員のリック・サントラム、長年共和党の顔だった前上院院内総務ニュート・ギングリッジ他で争われている。

当初はロムニー候補が優勢だったが、リック・サントラム候補が盛り返している。

RickSantorum





筆者はリック・サントラム候補と知人のパーティで一緒になったことがある。筆者の知人・ソニーのフレッド・石井さんが、自宅でリック・サントラムを招いたパーティを開き、それに当時ピッツバーグ日本語補習授業校の運営委員長だった筆者も招待されたのだ。

ちなみにフレッド・石井さんは、当時で在米約20年。サンディエゴのソニーのテレビ工場に勤めたあと、ピッツバーグのテレビ工場のトップとして勤務されており、ピッツバーグ日本語補習授業校の運営では大変お世話になった。

これがその時のリックと、ソニーのテレビ工場ナンバー2との3ショットの写真だ。

RickSantrum






2000年ころの写真だ。筆者も若いが、リックも若い。

たとえ共和党の候補者となっても、現職のオバマと戦って勝てるかどうかわからないが、パーティで会ったこともあり、心情的にはリック・サントラムを大統領候補として応援したい。

このブログでも紹介した通り、オバマは名家の出身でなく、社会派弁護士としてシカゴ郊外で活動を始め、民主党の党大会で注目されて、のし上がってきた。

マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝マイ・ドリーム―バラク・オバマ自伝
著者:バラク・オバマ
ダイヤモンド社(2007-12-14)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

リック・サントラムも同じく名家の出身でなく、ピッツバーグ地区の大学を卒業し、弁護士となり、ピッツバーグ出身のハインツ上院議員(ケチャップのハインツ家出身)のサポーターとなり、共和党のヒエラルキーで出世した。

同じ弁護士出身だが、考え方はかなり異なる。オバマはリベラルなのに対して、リック・サントラムは保守そして、宗教心が厚い。

オバマ対サントラムなら、面白い選挙となると思う。

リックがんばれ!



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2012年04月17日

君に成功を贈る 中村天風の若者向け講演

君に成功を贈る君に成功を贈る
著者:中村 天風
日本経営合理化協会出版局(2001-12)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログで「成功の実現」という1万円もする本を紹介した中村天風の講演を集めた本。こちらは1,800円という手頃な値段がついているが、内容は充実している。

成功の実現成功の実現
著者:中村 天風
日本経営合理化協会出版局(1988-09)
販売元:Amazon.co.jp
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この本の最後に中村天風について、次の様に紹介されている。

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出典:本書272ページ


この本で中村天風は、まず「有意義な幸福な人生に生きるには、なにをおいても一番先に必要なことは何か」と聴衆に質問する。

答は「他人に好かれる人間にならなければいけない」だと。

どんなときにも「真心(まごころ)の親切」で接しなければならない。キーワードは、フランスの哲学者ベルグソンの言葉・「イフ・アイ・ワー・ヒム"If I were him"」だという。カーネギーの「相手の立場になって考える」と同じ事だが、「イフ・アイ・ワー・ヒム"If I were him"」の方が覚えやすいかもしれない。

最初の「幸福な人生に生きる」という章の項目とのタイトルは次の通りだ。上記のような説法が続く。

・他人に好かれる人になりなさい

・出世成功する人は、誰からも好かれる人である

・あまり好き嫌いのないようにしてごらん

・嫌いな相手には、つとめて親切にしてごらん

・自分のことをするときと同じ気持で、他人のことをしてあげてごらん

・何をする場合でも、現在恵まれていることに感謝しなさい

・つつましやかに感謝の念をもって生きるようになったら、どれだけ人生のスケールが大きくなるかわからない

・自分自身を自分自身が磨かない限り、自分というものは本当にえらくならない


この本の目次は、日本経営合理化協会出版局のホームページで紹介されているので、参照して欲しい。

ひと言で言うと、スティーブン・コヴィーが言う"PMA=Positive Mental Attitude"のすすめだ。ひょっとすると中村さんの方が元祖かもしれない。

いくつか印象に残った話を紹介しておく。

中村さんは軍事探偵として送り出された時に、当時の上官の川村中将に、「おめでとう。男、生まれて男一代。男らしく生きて男らしく死ぬ。うらやましいな。次は靖国神社で会おう」と言われたという。

死ぬことを恐ろしいと思わないから、ロシア兵に捕まって銃殺されそうになっても強い気持ちで生き抜けたという。

「こうなりたい」という状態を心の中に情熱の炎でもって、ありありと描く。そうすると「観念のダブルページ」というものがおこり、力が増すのだという。稲盛さんもこのブログで紹介した「生き方」で「思い続けると、成功への道筋が見えてくる。それもカラーで夢が見える」と語っている。元は中村さんの「観念のダブルページ」のようだ。

生き方―人間として一番大切なこと生き方―人間として一番大切なこと
著者:稲盛 和夫
サンマーク出版(2004-07)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る


ひょっとして、稲盛さんのうどんをゆでる釜の話も、出所は中村天風かもしれない。地獄も極楽も長い箸でうどんを食べることは同じ。天国では長い箸を使って、向こうの人にたべさせてあげる。向こうの人も自分に食べさせてくれる。ところが、地獄では長い箸を使って、自分で食べようとするので、いさかいが絶えないという話だ。


クンバハカ法

心の乱れが起こると、神経系統はうまく働かなくなる。だから「感情なり感覚なりの衝動や刺激を受けた時には、第一番に腹に力を入れ、そのときにアットワンスに肛門の穴をしめて肩を落とす」のだと。

これで波の荒い日に船に乗っていても大丈夫だという。

これがクンバハカ法だ。


ひとつだけ残したいもの

面白い挿話が紹介されている。

ある町に悪魔が現れて「今日からお前たちのものをすべて俺が奪い取ることにする。しかし、悪魔にも情けはある。たったひとつだけ、残したいものだけは見逃してやる。明日までに残しておいて欲しいものを一つだけ書き出せ。それ以外のものは一切、俺が奪いさるからな」と言ったという。

「私はお金だ」、「私は食い物」、「私は家だ」、「私は名誉だ」とみんなてんでんに書き出した。

あなたならどうするか?

そして翌日になったらその町にはたった一人の人間しかいなくなっていた。

なぜか?

答えは続きを読むに書いておいたので、興味ある人は見て欲しい。


「日常の心得」が参考になる

最後に「日常の心得」として、中村さんの教えが4ページにまとめられているので、”なんちゃってなか見!検索”で紹介しておく。

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出典:本書268〜271ページ


中村天風の本を図書館で借りるなら「成功の実現」、買うならこの「君に成功を贈る」だろう。

日本経営合理化協会出版局のホームページでもこの「君に成功を贈る」が月間ランキング1位、「成功の実現」が2位となっている。

字も大きく、1日で読める。

うさんくささを忘れて、人生の導師の言葉と思って読むと、頭にスッと入ると思う。図書館でもいまだに人気がある本だが、まずは図書館で借りて読むことをお勧めする。


参考になれば、投票ボタンをクリック願いたい。






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2012年04月14日

降霊会の夜 浅田次郎の最新小説 あり得ないストーリーだが引き込まれる!

降霊会の夜降霊会の夜
著者:浅田 次郎
朝日新聞出版(2012-03-07)
販売元:Amazon.co.jp
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家内が図書館で借りていたので、返却前に一日で読んだ。

こんな新刊小説も前もって図書館にリクエストを入れておけば、発刊日(本には3月30日と書いてある)から2週間で読めるのだ。

もし図書館をあまり使っていない人は、ぜひ最寄りの図書館のオンライン予約に登録して予約を活用してみてほしい。

小説のあらすじは例によって詳しく紹介しない。死者、それも亡くなった友達の一家全員などが、巫女を通して自分で語るという、あり得ないストーリーなのだが、引き込まれて一気に読んでしまう。

この本は”なか見!検索”にも対応しているので、出だしの部分は読めるし、アマゾンのカスタマーレビューを見ると、どんなストーリーかある程度推測できると思うので、興味あれば参照してほしい。


ファンタジックで異色の小説ではあるが、楽しめることは間違いない。


あまり参考にならなかったかもしれないが、投票ボタンをクリックいただければありがたい。


  
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2012年04月09日

僕は君たちに武器を配りたい 役に立つ京大の人気講座 

+++今回のあらすじは長いです+++

僕は君たちに武器を配りたい僕は君たちに武器を配りたい
著者:瀧本 哲史
講談社(2011-09-22)
販売元:Amazon.co.jp
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このブログで紹介した「武器としての決断思考」の著者・瀧本哲史京大准教授の本。「武器としての決断思考」と同じ日に出版されている。瀧本さんは東大法学部助手のあと、マッキンゼーに就職し、現在は独立して「エンジェル投資家」としてスタートアップ企業に投資している。

武器としての決断思考 (星海社新書)武器としての決断思考 (星海社新書)
著者:瀧本 哲史
講談社(2011-09-22)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者が読んでから買った数少ない本の一つだ。

目次では簡単にしか紹介していないが、この本の裏表紙に、この本の各項目のタイトルをびっしり箇条書きにしているので紹介しておく。

本書で手に入れる武器






出典:本書裏表紙

このブログでも紹介したベストセラー、「フラット化する世界」で生き抜くために知っておくべき知識と思考法を、あれもこれもという感じで、瀧本さんが惜しげもなく与えていることがわかると思う。

フラット化する世界〔普及版〕上フラット化する世界〔普及版〕上
著者:トーマス・フリードマン
日本経済新聞出版社(2010-07-21)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

日本の大手企業の有効求人倍率は0.5前後。大企業を目指す学生には狭い門となり、大手企業は軒並み数百倍の倍率で、エントリーシート提出さえ競争があるような状態だ。

また、世の中には学生を食い物にしている企業もある。正社員というエサで釣って、社員を使い捨てする「ブラック企業」も居酒屋チェーン、IT産業や広告業界にある。また学生を狙った就活ビジネスも盛んだ。

一方従業員100名以下の名の知られていない中小企業の求人倍率は4.5倍。むしろ学生の売り手市場だ。これらの企業の中には、将来大きく飛躍する企業もあるだろう。

そんな就職環境の中で、瀧本さんは「寄らば大樹の陰」という思考ではなく、将来グーグルやアップルの地位を奪うような企業の一員となり、自らの手で夢を現実にしてほしいという気持ちを込めて、この本を書いたという。

しかし、これはノウハウ本ではない。あくまで生き抜くための考え方を教えるものだ。魚を与えるのではなく、魚の捕り方を教えている。


京都大学の医学部生がワーキングプア?

最初に驚く話を紹介している。瀧本さんは京都大学で4年間「起業論」を講義しており、大きなテーマとして「大学を卒業後、どうやって自分の価値を、資本主義の中で高めていくか」を取り上げている。

瀧本さんの講義は京大でも人気講座となっており、学部別の受講者を調べてみると、医学部の学生が一番多いことがわかった。

京都大学医学部といえば、受験業界では東大理掘憤絣愽堯砲畔造崙餞悗如医者は高い報酬と社会的地位が得られる仕事の代表格だ。

そんな京大医学部の学生がなぜ瀧本さんの授業を受けるのか?、学生にヒアリングしてみたところ、彼らが自分の将来に明確な不安を抱いていることが分かったという。

「この国では将来医者になっても、幸せになれない」と感じているのだ。僻地はともかく、都市では医者は余っており、大病院の研修医の労働環境は厳しく、魔女狩りのような医療訴訟もある。

毎日の激務と責任の重さには到底見合わない報酬。彼らは、「これからますます医者は買いたたかれる存在になっていく。これまでと同じような努力をしても報われそうにない」と気づいたのだという。そこで彼らは医者の勉強をキャリアに生かすため別の道を考えはじめた。京大医学部の学生の40%は瀧本さんの授業を受けているという。

この話はよくわかる。

筆者の知人の桐蔭法科大学の学科長の蒲先生も、桐蔭法科大学で司法試験を目指す学生には医者が多いと言っていた。医者で弁護士というダブル資格を持つオンリーワンの存在になろうとしているのだ。


英語やIT、会計を勉強して年収が増えるか?

昨今の自己啓発本のブームにより、英語やIT、会計を勉強して、資格試験に合格すれば、キャリアアップにつながり、年収が増える、幸せになれるというストーリーが繰り返し宣伝されている。

しかし瀧本さんは英語やIT、会計を勉強して年収が増えた人がどれだけいたのだろう?と疑問を投げかけている。

元々高学歴や語学教育に投資する余裕のある会社の社員の年収が高いことによる、疑似因果関係の可能性もあるという。


「儲かる漁師」の6タイプ

瀧本さんは「儲かる漁師」を整理すると次の6タイプだという。

1.トレーダー(商品を遠くまで運んで売ることができる人)
2.エキスパート(自分の専門性を高めて、高いスキルによって仕事をする人)
3.マーケター(商品に付加価値をつけて、市場にあわせて売ることができる人)
4.イノベーター(まったく新しい仕組みをイノベーションできる人)
5.リーダー(自分が起業家となり、みんなをマネージしてリーダーとして行動する人)
6.インベスター(投資家として市場に参加している人)

このうち今後生き残っていくのがむずかしくなるのが、1のトレーダーと、2のエキスパートだ。トレーダーは、インターネットの普及で生産者が直接ネット販売できるようになったり、仕入れ条件、販売条件が公開されていくと活動できる余地が少なくなる。

筆者自身がトレーダーだったから、このことはよくわかる。今やトレードで少しくらい儲けるよりも、「儲かる仕組み」を作り上げることが重要なのだ。だから商社もトレードで収益を上げるよりは、生産者なりディストリビューターなりに投資して、投資リターンで儲けるビジネスモデルに転換しつつある。

トレードはなくなることはないが、どんどん重要性は落ちるだろう。

エクスパートは、弁護士、公認会計士など「士」業の人たちが代表例だ。今や弁護士になっても、昔のイソ弁(事務所に入って、居候として働く弁護士)はいい方で、ノキ弁(軒先だけ借りる弁護士)、野良(ノラ)弁(弁護士事務所に入れず、必要な時に呼び出される弁護士)までいるそうだ。

この本では成功報酬で敵対的買収専門の弁護士や、「クラスアクション」と呼ばれる消費者団体訴訟で儲ける弁護士などの例が紹介されている。

公認会計士、建築士も同じような状況だ。全産業のコモディティ化がどんどん進んでいるのだ。ホワイトカラーの仕事がコモディティ化している。生き残る方法は「唯一無二」の存在、スペシャルティを身に付けることだ。


賃金が下がったのは派遣が増えたからではない。技術革新のせいだ

日本ではデフレ経済下、賃金が上がらないという状態が続いている。派遣労働者が増えたからだと「小泉・竹中路線」を批判する人がいるが、本当の理由は産業界の技術革新が進み、熟練工ではなく、コモディティ化した労働者を使っても高品質の製品がつくれるようになってきたからだ。

この点が筆者が冒頭でこの本と「フラット化する世界」と対比して紹介している理由である。

日本は「擦りあわせ製造業」と呼ばれ、汎用部品を組み合わせるのではなく、それぞれの部品の細かい仕様をカスタマイズして決め、組み合わせて最高の性能が出るようにすることがお家芸だった。

代表的な例が、自動車のドアだ。日本車のドアは音にこだわり、占めるときにバスンという感じで、ドアがぴったりはまる。実際ドアと車体の隙間も小さい。部品の整合を究極まで突き止めているからだ。

これに対してアメ車などは、ドアと車体の隙間が1センチくらいあり、ドアを閉めるとガシャという金属音がして感じが悪い。しかしドアの閉まる音にこだわりを持つ人は少ない。ガシャでも閉まっていればよいのだ。

かつて日産は「100分の1の技術から1000分の1の技術へ」というキャッチフレーズで、自社の技術力の高さを売り物にして、「技術のニッサン」と呼んでいた。しかし、この差をわかる人は少なく、色がたくさん選べることのほうがニッサンマーチが売れる理由となった。

1のトレーダー、2のエクスパートは縮小するが、3のマーケター、4のイノベーター、5のリーダー、6のインベスターについては、今後延びる職業として瀧本さんはそれぞれ1章を充てて説明している。大変参考になるが、詳しく紹介しているとあらすじが長くなりすぎるので、他の部分からも含めて、印象に残った話をいくつか紹介しておく。


イノベーター型の起業家を目指すならTTP

大ヒット商品はいろいろな技術の組み合わせでできたものが多い。たとえばソニーのウォークマンは、カセット再生機とステレオイヤホンを組み合わせて小型化したものだ。任天堂DSもWIIも「枯れた技術の組み合わせ」だという。

イノベーター型起業家を目指すなら、特定分野の専門家になるよりも、いろいろな技術を知って、それの組み合わせを考える方が大切だ。TPPならぬTTP(徹底的にパクる)のだと。

イノベーションの発想術も実はそう難しくはない。ある業界で「常識」とされていることを書き出し、ことごとくその反対のことを検討してみればよいと瀧本さんは言う。たとえば車は大人が買うものだから、こどもをお客にできないか?とかだ。


人物評伝も面白い

この本で紹介されている人物評伝も面白い。いくつか例をあげておく。


スティーブ・バルマー 地獄に叩き落とすリーダー

マイクロソフトのスティーブ・バルマーは、ハーバード大学でビル・ゲイツと同じ学生寮の同じ部屋に住んでいて、卒業後P&Gに就職して順調に出世し、スタンフォードでMBAを取ろうとしていたところを、ビル・ゲイツに口説き落された。

「コンピューターが世界を変えようとしているときに、石鹸なんか売っている場合じゃない。おれと一緒にやろうよ」。中退してマイクロソフトに入った。

「ビルが天国を語り、スティーブが地獄に叩き落とす」という比喩でよく知られる人物であるという。

マイクロソフトがここまで大きくなったのは、理想の姿を実現するために、必要な企業活動を猛スピードで実行し、競合を叩き潰してきたからだ。

マイクロソフトに入社するには、とびきり頭がよくなくてはならないことは、「ビル・ゲイツの面接試験」で紹介した通りだ。そんなとびきり優秀な人たちを馬車馬のように使うのがスティーブ・バルマーの凄いところだ。

ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?ビル・ゲイツの面接試験―富士山をどう動かしますか?
著者:ウィリアム パウンドストーン
青土社(2003-06-15)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

エネルギッシュで、マイクロソフトの役員がグーグルに引き抜かれそうになった時には、会議で椅子を投げつけたという逸話もある。"Steve Balmer Crazy"で検索すると、YouTubeにもいくつか映像が載っている。こんな感じでプロレスラーのように登場するのだ。



こういうとんでもない人がいるからこそ、マイクロソフトはあれだけの企業になったのだと瀧本さんは語る。


カルロス・ゴーン

カルロス・ゴーンは宗教的指導者だと。優れた経営者は宗教の教祖に近いところがあるからだ。カルロス・ゴーンはニッサンの社長就任演説で「私は結果を出すために来ました。リーダーにはコミットメントが必要です。結果を出すことができなかったら、私はこの会社を辞めます」と宣言した。

半信半疑だったニッサンの社員は、これで「この社長を信じてみよう」と従った。

優れたリーダーには「自分はすごい」という勘違いが必要なのだと。そういう宗教家のような確信に満ちた態度がなければ、先導していくことはできない。

その意味では瀧本さんが見たところ、最近の政治家の中では小泉純一郎元総理が一番リーダーの素質を持っていたという。

とんでもない発言をしているのだが、一般大衆はああいったわかりやすい言葉を歯切れよく語る指導者についていくものなのだ。

「すばらしい人」が大きなことを成し遂げたことはほとんどない。歴史に名を残すリーダーはみなある種の「狂気の人」なのだと。


Room to Readのジョン・ウッドは体育会系

このブログでも紹介した"Room to Read"代表のジョン・ウッドは、瀧本さんによると現在世界で最も成功している社会起業家だという。

マイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になったマイクロソフトでは出会えなかった天職 僕はこうして社会起業家になった
著者:ジョン ウッド
武田ランダムハウスジャパン(2007-09-21)
販売元:Amazon.co.jp
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"Room to Read"の会議はほとんど企業の営業ミーティングと同じだという。寄付が目標に達していなければ、厳しく糾弾される。反対に目標に達していれば、「さあ、みんなで拍手しましょう」というノリで運営されているのだという。

「メンバーのやる気が足りないのですが、どうしたらよいでしょうか?」と聞かれた時には、「簡単なことだ。自分自身が結果を出し続ければよい。リーダーが結果を出せばみんなついてくる。あなたが結果を出していないからダメなんだ。まずは結果を出してください」と答えたという。まさに体育会系の思考法である。

講演では、「上司、部下、周りの人、メディアに『ルーム・トゥ・リードに寄付しないのはおかしいじゃないか』と呼びかけてくれ」と必ず聴衆に言うのだと。

「マイクロソフトでは出会えなかった天職」のあらすじで、「寝袋が自分の家になる」と言っているくだりなど、モーレツぶりを紹介しているので参照してほしい。


人格破綻者 スティーブ・ジョッブス

アップルのCEOだったスティーブ・ジョッブスは、今でこそカリスマ経営者として称賛されているが、実態はとんでもない人物だと瀧本さんは語る。

「スティーブ・ジョッブス」のあらすじをまだ紹介していないが、まさに瀧本さんの言う通りだ。「現実歪曲フィールド」がスティーブの中に内蔵されており、昨日批判した部下の意見を、今日はまるで最初から自分の意見だったかのようにいうこともよくあるという。まさに絶対に上司に持ちたくない人物の典型だ。

スティーブ・ジョブズ Iスティーブ・ジョブズ I
著者:ウォルター・アイザックソン
講談社(2011-10-25)
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「女子会」はリクルートが「L25」でつくった

東京に住む若い人は年収300〜400万円。これでは自宅に住んでいないと、お金は貯まらない。男性は食事に行っても、女性の分まで払うので、男性は余裕がない。そこでリクルートが目をつけたのが、東京で働く自宅通勤の女性で、女性にお金を使わせる方法が「女子会」だったのだ。

若い女性を「L25」で集めて、「ホットペッパー」のクーポンでお店に誘導して、お金を使ってもらうという


専業主婦の高いリスク

瀧本さんの友人が早稲田大学でスピーチをすることになった時に、事前にリサーチしたら、女子学生の1/3が「一般職で就職し、職場の男性と早く結婚して、寿退社する」というシナリオを考えているというので、その友人は「君たちは現状が全く分かっていない」といさめたという。

ずっと健康な男はいないし、絶対に潰れない会社もない。夫に自分の人生のすべてを賭けるということは、他人に自分の人生のリスクを100%ゆだねることで、それほど危険なことはない。

さらに早稲田大学という狭いマーケットの中では、ちやほやされていても、「お嫁さんマーケット」には「女子力」の高い女子がたくさんいる。高学歴女性が「御嬢さんマーケット」で勝負できると思うのは、非常にリスキーな選択なのだ。


若者を奴隷にする会社

中小企業でブラック化するパターンに多いのが、「カン違いカリスマ社長が君臨し、イエスマンだけが役員に残り、社員はみな奴隷」という構図だという。このブログでも紹介した某社長がまさに典型的な例なのだろう。

2ちゃんねるの「ブラック企業ランキング」というものがあることを初めて知った。


どのような会社に就職すべきか?

良く聞かれるこの質問に瀧本さんは次のように答えているという。高級ホテルのマリオットチェーンは、ホテルのマネージャー「従業員に対してお客様のように接しなさい。そうすれば従業員はあなたが接したように、お客様に接するでしょう」と教えているという。

つまり従業員を大切にする会社は、お客も大切にする会社なのである。

だから企業を見極めるポイントは、「お客さんを大切にしているか」だ。顧客を大事にしている会社は従業員も大切にする。


日経新聞を信じるな

数年前国がまだ納税額による長者番付を発表していた時に、サラリーマンが100億円の年俸をもらっていると有名になったことがある。

しかしあの証券会社の運営部長は実はその会社のオーナーで、役員にボーナスを出すと個人の所得税と法人税がかかるので、節税対策としてオーナーである自分を従業員として、従業員の賞与して支給したのだ。

当時この事実を報道したメディアは一社もない。中には気がついていた記者もいたかもしれないが、彼らは「サラリーマンでも高報酬」というストーリーのほうがウケが良いから、見て見ぬふりをしていたのだ。

「日経新聞くらい読んでおかないと恥ずかしい」と新入社員の時からたたきこまれるが、情報源として日経を読んでも、そこに書いてあることを信じるなということだ。


確実に儲ける方法

みんなの知らない情報をもとに投資すれば確実に儲かる。しかし公開株式取引においてはインサイダー取引として厳しく禁じられている。そうであれば、株式投資ではない形で投資するのだ。

社員になることが一つだし、経営陣の一員となったり、株式公開前に投資することも一法だ。この会社は将来伸びるに違いないと思ったら、自分の労働力、時間、人間関係を投資するのだ。

日本でも零細な企業同士が、お互いを見込んで大きくビジネスを伸ばした例があるという。現在は物流の最大手企業となった某社は(たぶんこのブログで「小倉昌男経営学」を紹介したヤマト運輸?)、伝票などの印刷をすべて系列の印刷会社に発注している。

その印刷会社はもともと京都にある町の小さな印刷所だったが、数十年前某社がまだトラック数台の規模だった時に、社長がたまたま京都に立ち寄った際に名刺を切らしてしまい、その印刷所に頼んだのがきっかけだった。

急な注文にも嫌な顔一つせず、注文通りの名刺をすぐ印刷してくれたので、それかららすべての印刷物を頼むようになったという。その物流会社が大きくなるにつれ、印刷会社も規模を拡大して、現在では2,000人近い社員を雇うようになった。

ある会社や個人が逆境にあるときこそ、投資を検討するまたとないチャンスだと瀧本さんは語る。実際、瀧本さんは逆境にあり、みんなが連絡を取らなくなるような人に投資して成功してきたという。

この手の話は結構多い。たとえばトヨタでさえ、昭和20年代には労働争議が起こって、一時は倒産しそうになった。その時に手を引いたサプライヤーは、何十年経っても取引ができなかった。

人は苦しいときに助けてくれた人のことを忘れない。そのことは、今も昔も変わらないのだ。


信者ビジネス

瀧本さんはハーレーダヴィッドソンのバイクを信者ビジネスと呼んでいる。エコの時代にあれだけ燃費の悪いバイクを買う人の心は、興味のない人には理解できないという。しかしハーレーファンにはハーレー以外は乗り物でなく、もはや宗教に近いレベルだ。

信者ビジネスで参考になるのは、ホリエモンのビジネスだという。

ホリエモンは起業してウェブサイト制作を行った後、オークション、オンライン証券、データセンター、ブログなど様々なビジネスを立ち上げるが、どれもデファックトスタンダードは取れなかった。(ウェブサイト制作をやっていた時代の話は、このブログで紹介したサイバーエージェントの藤田晋さんの「渋谷ではたらく社長の告白」に出てくる)

そこでホリエモンはビジネスモデルを変え、遅れた層向けに(ネットスラングでDQN=ドキュンと呼ぶらしい)サービスではなく、彼自身の会社を売ることにしたのだという。たしかに”ライブドア”は”オン・ザ・エッジ”と呼んでいたホリエモンの会社が買収して、その社名に変えたのだった。

彼自身が有名人となりマスコミに取り上げられることが、彼の会社のサービスの最大の宣伝となっていたのだ。このブログにも当時の名残で、ホリエモンの本を何冊も紹介し、11番目のカテゴリーとして”ホリエモン”を設けているくらいだ。

ホリエモン自身が広告塔となり、自社株をどんどん分割して、ホリエモンの言葉を借りりると”小中学生がお小遣いで買える”ようにしていたことを思い出す。なるほどと思う瀧本さんの指摘だ。


奴隷の勉強、自由人の勉強

最後に瀧本さんは、自由人の勉強としてリベラルアーツ、つまり哲学、芸術や歴史、文学、自然科学などの教養を学ぶことの重要性を強調している。

幅広い学問領域を横断的に学ぶことで、「物事を様々な角度から批判的に考える能力」、「問題を発見し解決する能力」、「多様な人々とコミュニケーションする能力」、「深い人格と優れた身体能力」が身につけられる。

リベラル・アーツで学ぶ基礎的な教養が、社会に出ても役に立つ。成功している俳優は、きちんとした大学を出ている人が多い。たとえば「ハリー・ポッター」シリーズのヒロインのエマ・ワトソンは、名門ブラウン大学の学生だが、彼女は自分の出演料を成功報酬にしたために、20歳にして20億円もの資産を持つようになったという。

逆にスポーツ選手などでは、一世を風靡しながら、晩年は一文無しになっている人もいる。

リベラル・アーツが人間を自由にするための学問であるのに対し「英語、IT,会計知識」の勉強は、あくまで人に使われるための知識であり、「奴隷の学問」なのだと。

念のため筆者の意見を付け加えるが、この本で瀧本さんが「奴隷の学問」とはいっていても、「英語、IT、会計知識」が不要であると言っているわけではない。

教養を軽視する傾向がある大学生に(筆者も学生時代はその傾向があった。教養学部時代は特に目的意識を持たずに漫然と過ごしていたという反省がある)、教養の重要さを強調しているということだろう。

瀧本さんは小中学生の時に読んだ「君たちはどう生きるか」に影響を受けたという。

君たちはどう生きるか (ポプラポケット文庫 日本の名作)君たちはどう生きるか (ポプラポケット文庫 日本の名作)
著者:吉野源三郎
ポプラ社(2011-08-06)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

「君たちはどう生きるか」は、昭和を代表する知識人として知られ、戦後は岩波書店の取締役を務めた吉野源三郎が、1937年に出版したもので、父親を亡くしたコペル君という少年が、「人間分子、網の目の法則」に気が付くというストーリーだ。

現在筆者もこの本を読んでいる。1937年に発刊された本だが、2011年にポプラ社からふりがなつきで子供用の文庫本としても出版されている。

「君たちはどう生きるか」の教えもあり、瀧本さんはこれから社会に出ていく若者に対して武器を持たせるつもりでこの本を書いたのだという。

冒頭に書いたように、読んだ本しか買わない筆者が、今年買った数少ない本の一つだ。

熱心な著者が本当に読者のためを思って書いた本である。

表紙の体裁も異質だし、面白い本のように見えないかもしれないが、衝動買いしても間違いのない本だと思う。


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2012年04月01日

日本酒は奥深い 銘柄その4 お燗専用大吟醸酒 九頭龍大吟醸を飲んだ

2012年4月1日追記

「早瀬浦」と同じ福井県の酒、「黒龍」のお燗専用大吟醸酒を飲んだ。大吟醸とは、原料米の精製率を50%以下として、雑味を取り去った酒だ。香りが良いので、普通は冷酒などで飲むことが多いが、「黒龍」では燗専用の大吟醸酒を出している。

黒龍 「九頭龍」大吟醸燗酒 720ml ※箱入り
黒龍 「九頭龍」大吟醸燗酒 720ml ※箱入り

ワインのような外観の瓶で、フェルトでできたラベルが貼ってあり、上から光があたるとラベルの「九頭龍」という文字が赤く浮き出るという凝ったラベルだ。

黒龍大吟醸














コメの精製度は50%だ。

黒龍大吟醸2














以下に紹介した「日本酒事典」によると、「黒龍」の酒造所の近くに九頭竜川(くずりゅうがわ)が流れており、大吟醸酒にはその水を使っているので、川にちなんだブランド名を付けたということだ。

日本酒は奥深い。さらに別の酒も試してみる。


2011年12月1日初掲:

蔵元を知って味わう日本酒事典蔵元を知って味わう日本酒事典
ナツメ社(2011-01-21)
販売元:Amazon.co.jp
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日本酒の教科書日本酒の教科書
著者:木村 克己
新星出版社(2010-02)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者は1978ー80年のアルゼンチン駐在以来、ずっとワイン派だった。自宅で飲むのはほとんどワイン。昨年くらいから食事によってはロゼも飲むようになったが、ほとんどずっと赤ワインだった。

日本酒は買ったこともないし、法事などでもらったものを飲むほかは家で飲んだこともなかった。

とはいえ、やはり刺身や煮魚などの日本料理には、ワインより日本酒の方が合うのではないかと思っていたことも事実だ。それのあらわれが、昨年からロゼワインを飲むようになったことだ。

そんなワイン党の筆者が宗旨変えして、上記に紹介した「日本酒事典」と「日本酒の教科書」を読んで、日本酒を飲み始めた。(どちらも参考になるが、「日本酒事典」の方が瓶の写真も紹介しており、銘柄ラベル写真だけの「日本酒の教科書」よりもなぜか親しみを感じた)

きっかけは東日本大震災だ。日本酒を飲むことで、すこしでも東北地方の復興の役に立てるのであればと思って飲み始めた。



醸造業の裾野は広い。もちろん原料の農業の振興にもなるし、バイオ技術や醸造設備産業にも貢献するとともに、地元の観光振興にも役立つ。

山梨の勝沼が良い例だ。ワイン産業としては世界的には小規模ではあるが、日本でも最大級のワイン産地として一大観光名所となっている。ワイナリー巡りなど観光客が一年を通して訪問するし、山梨大学工学部にはワイン科学特別教育プログラムもあり教育産業にも波及効果がある。

もちろん筆者が日本酒に切り替えたからといって、効果はたかがしれており、えらそうに言うべきことではない。しかし気は心、同じように賛同してくれる人もあると思うので紹介する。

筆者が飲み始めたのは宮城県塩竃の浦霞。もろに被災地にある酒蔵だ。浦霞自身もかなりの地震の被害を受けたはずだが、一本につき5円という復興資金を寄付することを実施している。

次が浦霞の種類だ。左から本醸造、ササニシキを使った純米酒、特別純米酒の「禅」と外箱というラインアップだ。

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本醸造は仕込みの段階で10%まで醸造アルコールを添加している。本来日本酒は純米酒が正統であり、アルコール添加酒は邪道、儲け主義だという非難の声がある。たとえば「美味しんぼ」では、純米酒こそが日本酒だといい、青リンゴなどの香りのする吟醸酒はハナから受け付けない。

美味しんぼ (54) (ビッグコミックス)美味しんぼ (54) (ビッグコミックス)
著者:雁屋 哲
小学館(1995-12)
販売元:Amazon.co.jp
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しかし筆者は浦霞で本醸造、純米酒、特別純米酒を飲み比べた結果、本醸造が一番気に入ったので、本醸造の一升瓶を買った。いままで40年近く酒を飲んでいるが、自分用に一升瓶を買ったのは初めてだ。

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アルコール添加はあくまで仕込みプロセスの一環であり、アルコールを10%添加することによって、いわゆる吟醸香が増し、「キレ」が良い辛口の酒に仕上がる。「美味しんぼ」の作者はアルコール添加酒を全く受け付けないが、筆者はこと浦霞に関しては、本醸造が安くてうまいと思う。

【佐浦】浦霞 本醸造 1800ml
【佐浦】浦霞 本醸造 1800ml

要はその人が飲み比べて一番気に入ったものを選べば良いので、別に純米酒にこだわる必要はないと思う。

ちなみに筆者は次の氷ポケットのあるデキャンターに入れて冷やして飲んでいる。

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キンキンには冷えないが、冷えすぎないで良い。

日本酒はワインに比べて安いので、良い日本酒を何本か飲み比べても、720MLの瓶であれば、せいぜい一本1,000〜2,000円で買える。

冒頭に紹介した「日本酒事典」や「日本酒の教科書」を読んで、基礎知識をつけた上で、日本酒を飲んで頂きたい。大手の酒蔵は江戸時代から続く老舗ばかりであることに驚くだろう。まさに日本酒は日本の伝統文化である。

東北の酒を飲めば東北復興にも微力ながらつながる。そんな気持ちも込めて日本酒を飲んで欲しい。


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Posted by yaori at 02:47Comments(0)TrackBack(0)