2012年07月31日

人工光型植物工場 千葉大学元学長・古在名誉教授の植物工場紹介

人工光型植物工場人工光型植物工場
著者:古在 豊樹
オーム社(2012-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
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先日会社で千葉大学元学長で植物工場の権威の古在名誉教授の講演を聞いたので、著書を読んでみた。

古在教授は中田英寿の所属しているプロダクションのサニーサイドアップ社長の次原さんと、"All you need is green"という本も出しており、こちらも読んでみた。

ALL YOU NEED IS GREEN コザイ教授とツギハラ社長が考える「環境と貧困」ALL YOU NEED IS GREEN コザイ教授とツギハラ社長が考える「環境と貧困」
著者:古在 豊樹
講談社(2008-07-01)
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古在教授は昔の東京帝大学総長の古在由直(よしなお)さんの孫で、マルクス主義哲学者の古在由重(よししげ)さんの息子だ。

お父さんの古在由重さんは、犯罪者(治安維持法違反で2回逮捕)なのでろくな職業にもつけず、家族は貧困にあえぎ、古在教授自身も差別を受けたという。幣原家とも姻戚関係があり、学者の名門の古在家出身で、千葉大学元学長という経歴からは想像もできない過去の体験だ。

お母さんは通信教育の添削で家族の収入を得て、古在教授も子供の時に造花づくりや、封筒貼りの内職、クズ鉄拾いもやったという。そんな体験があるから、「貧しいが目標を持って困難に立ち向かっている農家」は世界中どこであれ、支援したくなるのだと言って、中国には1986年から、ベトナムにも1993年から出かけて行って植物の苗を作る技術を支援している。

次原さんとの出会いは、古在教授が千葉大学学長となって、千葉大学の知名度を上げるためにサニーサイドアップに相談したことがきっかけだ。たまたま新聞記事などでサニーサイドアップのことを知り、古在教授自らが電話して訪ねてきたという。

サニーサイドアップの社是は「たのしいさわぎをおこしたい。」だという。

サニーサイドアップ所属の中田英寿が世界的な貧困撲滅のためのホワイトバンドキャンペーンを日本に紹介し、キャンペーンは成功した。しかし、集まったお金は貧困国支援のために使われるのでなく、支援活動・政治活動に使われる「アドボカシー」という使い方だったために、日本では誤解されてバッシングを受けた。

ホワイトバンドのキャンペーン自体はG8によるアフリカへの500億ドルの援助決定や、世銀とIMFによる最貧国への550億ドルの債務放棄などの呼び水となり、ある程度の効果はあげている。

しかし貧困問題解決にはまだ道は遠いので、ホワイトバンドキャンペーンの後、サニーサイドアップと協力して、千葉大学では「世界の貧困問題をいかに解決できるか」という授業科目と自主ゼミが設けられたという。


「植物工場」

別の本の紹介で脱線したが、本書に戻って、古在教授の植物工場の講演を聞いた第一印象は、これはスゴイというものだった。

この本の表紙の写真のように植物工場は、多層構造のため、丈の高い植物の生産には向かないが、その生産性は露地ものや農場産品の比ではない。苗やレタスなどの葉物野菜の生産に適しており、無農薬なので、収穫して洗わずにそのまま食べられる。

日本各地に植物工場があり、レタスなどを生産しているが、これらのレタスは一切家庭用には出回らない。すべて中食や外食産業に販売されている。

というのは普通のレタスだと、外側に農薬がついているので、何枚かは捨てなければならず、畑で採れたものは虫が混入しているかもしれないので、外食産業では洗って、一枚一枚人手で裏表を調べて虫がいないことを確認するという手間をかけている。レタスの芯も捨てているので、廃棄率は30〜40%だという。

ところが植物工場でつくったレタスは、葉っぱを捨てる必要がなく、洗う必要もないので下準備の工程が不要となり、人件費を削減できる。芯も小さいので、捨てる部分は5%程度だという。

天然の野菜だと、次の表のとおり旬の時以外は、栄養的に食味的にも落ちるが、植物工場だと1年中、旬の野菜を生産でき、栄養価、食味ともに高い。ちなみに講演で使ったスライドでは、次の表に横に一本の線が引いてあった。それが植物工場の野菜の栄養価だ。

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出典:本書61ページ

水や養分も極限まで減らすことができるので、永田農法のように植物にストレスを感じさせ、糖度を上げた野菜が生産できる。

植物生産には適切な温度と、光、CO2,水と若干の必須無機成分だけが必要だ。

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出典:本書5ページ

植物工場の内部の写真は、MKVドリームという会社のホームページで紹介されている。植物工場の構造図は次のようなものだ。多段棚+光源、それと循環する養液とヒートポンプエアコンがあればよい。

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出典:本書27ページ

ヒートポンプ技術により、エアコンを使えば水利用効率は97%まで上がる。砂漠でも十分操業可能だ。

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出典:本書28ページ

各種の苗を生産するために必要な電気代は、大体1円/本以下である。

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出典:本書34ページ

この本では、中国、韓国、台湾やオランダなどの植物工場の例が紹介されている。日本でも経産省または農水省の支援を受けて、各地で植物工場が稼働して、商業生産を開始している。

太陽光型植物工場―先進的植物工場のサステナブル・デザイン太陽光型植物工場―先進的植物工場のサステナブル・デザイン
著者:古在 豊樹
オーム社(2009-12)
販売元:Amazon.co.jp
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この本の他に、古在教授は「太陽光型植物工場」という本も出版している。太陽光による植物工場は、太陽光自体は無料だが、電気の安定供給という面では難があり、結局は売電と一緒に組み合わせる必要がある。

その意味では人工光型植物工場の方がオールマイティだ。


このブログでも「日本農業が必ず復活する45の理由」のあらすじで、砂漠農業を紹介したが、砂漠にかぎらず植物工場は様々な場所で展開可能だと思う。

日本の農業が必ず復活する45の理由日本の農業が必ず復活する45の理由
著者:浅川 芳裕
文藝春秋(2011-06-28)
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非常に参考になる本だった。


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2012年07月25日

プロ野球重大事件 ノムさんの暴露本

プロ野球重大事件    誰も知らない”あの真相” (角川oneテーマ21)プロ野球重大事件 誰も知らない”あの真相” (角川oneテーマ21)
著者:野村 克也
角川書店(角川グループパブリッシング)(2012-02-10)
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野村克也楽天名誉監督のぶちまけ話。

巨人軍の元GM清武さんが、ナベツネとケンカして辞めて以来、清武さんがメディアに各種情報をリークしていると巨人軍関係者から非難されている。今日も清武さんが巨人軍などに名誉棄損で1千万円の損害賠償訴訟を起こしたと発表したばかりだ。

清武の乱は、巨人軍のお家騒動ととらえられているが、本質にはプロ野球のあり方についての大きな問題をはらんでいるとノムさんは語る。


オーナーとは何者なのか?

清武の乱、落合の解任、ナベツネが難色を示し、楽天が反対して難産だった横浜DeNAの誕生。これらはすべて「オーナーとは何者なのか?」という問題を提起したのだと。

落合は、就任一年目でリーグ優勝し、8年間でリーグ優勝4回、日本一1回、一度もAクラスから転落したことがないという実績を上げた。しかし、推定3億7千万円という高い年俸と、好成績ゆえに選手の年俸上昇により球団は黒字になったことがないというお家の事情から、シーズン中に落合の解任は発表された。

優勝でもされたらクビを切りにくくなるからという理由だろう。

後任監督が立浪でなく、70歳の高木守道というのも財政事情のためだということを物語っている。

DeNAベイスターズ誕生の際にも、巨人のナベツネが「モバゲー」を球団名につけることに反対し、楽天の三木谷会長は、DeNAの経営の健全性がないことを理由にTBSによる球団売却に執拗に反対した。

ノムさんは、三木谷さんが反対したのは、2005年にTBS株の買収に失敗したことと、DeNAの創業者との間に個人的にいざこざがあったことが原因になっているらしいと語る。

ちなみにDeNAの中畑監督についてノムさんは、現代野球に不可欠の理論性、緻密さ、データの活用といった要素からは(あくまでイメージだが)最も遠いところにいると評している。

たしかにそうかもしれないが、DeNAは知名度を上げ、マスコミから注目されるために、中畑監督を欲しがっていたのであり、別に成績を上げようなどとは思っていないと思う。

筆者は今年、横浜ファンを引退したから冷静に言えるのだが、その意味では中畑監督は正解だと思う。


野球は文化的公共財

どのオーナーも加藤良三コミッショナーの「野球は文化的公共財である」という重みを全く理解していない。オーナーは監督の最大の敵なのだと。

楽天の三木谷会長や、島田オーナーは、「成績が悪ければ解雇される。成績が向上すれば続投する」という球界の不文律を無視して、楽天監督4年目に2位にまで引き上げたノムさんを解雇した。ノムさんはよっぽど頭にきたようだ。三木谷さんも島田さんも球場に足を運ぶことはほとんどなかったという。

ちなみに三木谷さんもこの本を読んだのかもしれないが、急に楽天のオーナー復帰を発表している

そんなノムさんが絶賛するのが、ソフトバンクの孫さんだ。楽天がクライマックスシリーズに進出したときに、面識もないソフトバンクの孫さんから激励のメッセージをもらったという。

「真の人格者とは、こういうものなのか」と孫オーナーのもとで監督を務めることができた王貞治をうらやましく思ったという。

昨年ソフトバンクが日本一になった時には、ホークスの選手は孫オーナーを胴上げし、孫さんはビールかけにも嬉々として参加した。

ノムさんはヤクルト監督就任の際にも、オーナーのサポートがあったことを語っている。


暴露話あれこれ

杉内が巨人に移籍した原因は、ソフトバンクの編成を取り仕切っている小林至取締役の心無いひと言が原因だったという。「きみがFAになっても、必要とする球団はない」。

小林取締役は東大野球部出身のプロ選手だが、プロでは一軍登板を果たせず、引退後は渡米としてMBAを取り、スポーツビジネスに携わった。その後、ソフトバンクの取締役に就任し、杉内事件の責任を取り、編成部からはずれた。

暴露の第一弾は、長嶋と杉浦に当時の南海球団は、月額2万円の小遣いを卒業まで支給していたことだ。南海には立大の先輩の大沢啓二さんがいて、長嶋と杉浦に「おまえらも南海に来い」、「わかりました」という具合だったという。

大卒の初任給が1万5千円の時代の2万円なので、ちょっとした金だったが、南海は長嶋の契約金からいままで払っていた小遣いを減額すると申し渡して、当時1,800万円という巨額の契約金を提示した巨人に長嶋をさらわれた。

契約金の前渡しとは思っていなかった長嶋はいっぺんで南海に幻滅したらしい。長嶋は大沢さんに土下座して謝ったという。


巨人と試合する時は、敵は10人

「巨人と試合する時は、敵は10人だと思え」といろいろな人に言われたが、1961年の日本シリーズで、セリーグ出身の円城寺審判が、スタンカのストライクをボールと判定、「ふつうならストライクだが、風があったので沈んだ。それでボールだ」と。

これでスタンカは気落ちして、結局南海は日本シリーズで敗退した。ノムさんは「円城寺 あれがボールか 秋の空」という川柳をつくったという。

スタンカは、さよならヒットを浴びたとき、本塁のバックアップに入るとみせかけて、円城寺主審に体当たり、ほかの選手やコーチも暴行を加えたという。

日本初のスコアラーは、鶴岡監督時代の南海の尾張スコアラーだという。元新聞記者の人で、7色の鉛筆をつかって、敵と味方の特徴をメモにしていったという。後に西武の根本さんに乞われて広岡監督のもとでデータ野球に貢献したという。


サッチーの武勇伝

ノムさんが1977年に南海の監督を解任されたのは、女性問題、つまりサッチーのためだという。前妻との離婚調停中に、サッチーと同棲していたことが問題視され、南海のオーナーと後援会長のトップ会談が行われて決まった。

後援会長の比叡山の僧侶からは、トップ会談の前に「野球を取るか、女を取るか、ここで決断せい」と言われて、「女を取ります」と即答して席を立ったという。

車で待っていたサッチーが話を聞いて、寺に乗り込み、「野村を守るのが後援会長たるあんたの立場でしょ!野球ができなくなるとはどういうことよ!」と坊さんに向かって啖呵をきったら、剣幕におののいた坊さんは受話器を取り上げて「警察を呼ぶぞ」と言ったという。

ノムさんは坊さんに幻滅するとともに、サッチーに「この女はただものではないな」とあらためて思ったのだと。

今はTBSの関口博のサンデーモーニングに出ている張本さんは、今はご意見番みたいにいわれているが、「張本くらいチームを私物化した選手もいないだろう」とこき下ろしている。

ツーアウト・ランナー一塁で、ランナーに「走るな。じっとしとれ」と言って、ランナーを走らさずにヒットが出やすくさせたという。バッティングにしか興味がなく、肩も弱く、フライは追いかけるふりをするけど、本気で球を追うことはしないというありさまだったと。

そのほか、球界のケチの話。長嶋一茂、息子カツノリの話なども面白い。この本はアマゾンのなか見!検索に対応しているので、ここをクリックして、目次を見て、どんな内容なのかチェックしてほしい。

ノムさんは、もう監督はやらないつもりのようだ。他人の迷惑も考えず、言いたい放題だ。読者としては楽しめる本である。


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2012年07月23日

世界で一番売れている薬 実は日本人が発見していた

世界で一番売れている薬世界で一番売れている薬
著者:山内 喜美子
小学館(2006-12-15)
販売元:Amazon.co.jp
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世界で一番売れている薬

世界で一番売れている薬をご存知だろうか?

それは「スタチン」と総称される高コレステロール治療薬だ。アメリカのファイザーやメルクなど主要な製薬メーカーが販売しており、欧米で7種類、日本で6種類のスタチンが販売されている。

なかでもファイザーの「アトルバスタチン」が、世界の医薬品売上ランキングのダントツトップを占めている。

そのスタチンは1973年に当時三共にいた日本人の研究者によって青カビから発見された。しかしスタチンは日本では商品化されず、アメリカのメルクが「ロバスタチン」としてはじめて商品化した。1987年のことだった。

この本では、日本人研究者がスタチンを初めて発見していながら、日本では商品化されなかったストーリーを描いている。


遠藤さんの経歴

スタチンの発見者・遠藤章さんは、1938年に秋田県の農村に生まれた。東北大学農学部の農芸化学科を卒業し、在学中に影響を受けた本の一つは、ペニシリンの発見者フレミングの伝記だったという。

フレミング博士―ペニシリンの発見 人類の恩人 (1954年)
著者:L.J.ルドヴィチ
法政大学出版局(1954)
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1957年に三共に入社した遠藤さんは、最初は研究所ではなくカビからつくった酵素を作っている田無工場に配属される。この時の研究で貴腐ワインをつくる薬剤を製品化し、その研究で1966年に農学博士となっている。

1966年からニューヨークのブロンクスにあるアインシュタイン医科大学にポスドクとして2年間留学して、高コレステロールで悩んでいるアメリカ人が多いことを知る。

留学時代には、ニューヨーク郊外にあるウッドローン墓地にある尊敬する野口英世の墓と、三共の創始者の高峰譲吉の墓を数回訪れたという。


コレステロール低下剤の開発

遠藤さんは帰国して三共の醗酵研究室に戻り、青カビからML−236Bと呼ばれるコレステロール低下剤を発見する。

ラットに使って、コレステロール低下が認められないので、一度は研究は打ち切られそうになるが、あきらめず研究をつづけ、ラットに効かなくてもイヌには効いたことで復活する。

1976年にはイギリスのビーチャム社(現グラクソ・スミスクライン社)が「コンパクチン」と名付けた抗生物質を発表した。遠藤さん達が発見したML−236Bと全く同一の物質だとわかったが、三共は1974年に特許出願していたので、三共の特許取得に問題はなく、三共は「メバスタチン」として臨床試験を開始した。

コレステロール研究の第一人者で後にノーベル医学書を受賞するテキサス大学のゴールドスタインブラウン教授から「メバスタチン」を使ってみたいという申し出はあったが、日本での臨床実験を優先した。


三共での開発の遅れ

ところが当の三共で社内の勢力争いが起き、中央研究所が開発したRWX−163で醗酵研究所のML−236Bを葬ろうと画策し、発見者の遠藤さんをML−236Bの担当から外すことになった。RWX−163はラットのコレステロール低下に効果があったという。

ML−236Bに注目した金沢大学と大阪大学の医師が、遠藤さんと遠藤さんの上司のみが知る秘密プロジェクトで、ML−236Bのヒトへの適用をはじめ、コレステロール低下が確認され、三共は重い腰を上げて、ML−236Bを開発商品として正式に認定した。


メルクのアプローチ

一方、アメリカのメルクは、コレステロールの研究者でNIHにいたロイ・バジェロスを研究所の所長として迎え入れ、コレステロール低下剤の開発に力を入れていた。

三共の特許公開後、メルクは1976年に秘密保持契約を結んでML−236Bの試薬提供を依頼してきた。しかし、その秘密保持契約には重大な欠陥があり、試薬をメルクが分析して、その知見を自社の開発に生かすというような事態となっても、秘密保持契約違反には当たらないという条項があった。

著者の山内さんは、秘密保持契約にいかにも重大な欠陥があったように書いているが、商社で鉄鋼原料やインターネットビジネスの営業を担当してきた筆者から見れば、一般的な条項だと思う。

以下の話にある通り、メルクが三共のお人よしにつけこんで、うまくこの条項を利用したというべきだろう。「生き馬の目を抜く」といわれるビジネス界ではありうることだ。


メルクの開発と特許戦略

三共は秘密保持契約の欠陥に気づいていたが、大きなリストと考えず、最初に5g、バジェロスが来日して追加要請があって1977年に100gサンプルを提供した。メルクは1978年に結果は良好だったとして、報告書のコピーを送ってきて、独占ライセンス交渉を要求した。

また、メルクはML−236Bと自社の製品を組み合わせた発明で、特許を申請すると三共に申し入れてきた。まさに秘密保持契約の欠陥を利用した行為で、三共にとっては「敵に塩を送る」結果となった。

メルクと提携して世界規模の開発を期待していた三共は、淡い期待を裏切られることとなる。ちなみにバジェロスはこれらの功績で、1985年にメルクのCEOに就任している。

遠藤さんは1978年に三共を退職し、東京農工大学助教授に転職した。研究活動を続けるためという理由だった。遠藤さん自身は否定するが、メルクの戦法に引っかかった三共の経営陣への幻滅もあったのではと著者の山内さんは推測する。

遠藤さんは東京農工大学で紅麹の研究から、1979年に偶然コレステロール合成阻止剤を見つけ、「モナコリンK」と名付ける。これにもメルクが試薬提供を求め、分析した結果、メルクが発明したMK803と同一物質だったと連絡してくる。

メルクは自社特許を成立させるべく米国の「先発明主義」を使って画策した。しかし論文を学術雑誌に投稿し、それが受理されるという「科学の世界の不文律」から、モナコリンの特許が認められ、メルクは三共から特許実施権を買うことになった。モナコリン雑誌掲載は1979年、メルクは1980年だったのだ。

金沢大学の医師が「ニューイングランド・ジャーナル」でML−236Bの効果を発表した論文が注目を集めたにもかかわらず、ML−236Bは国内で試験中に「イヌで副作用が生じた」という理由から開発中止となる。発がん性物質が発見されたのではというもっぱらの噂だった。


メルクが商品化一番乗り

メルクも三共の開発中止に驚かされたが、自社特許を使ってFDAに新薬申請を行い、1987年に「ロバスタチン」として商品化し、世界で最初に商品化されたスタチンを作り出した。

三共は結局メルクに遅れること2年、1989年に「メバロチン」として商品化した。ピーク時の1999年には輸出分とあわせると1,850億円の売り上げがあったという。


世界で一番売れている薬

その後さまざまな「スタチン」が製造され、現在では1997年に売り出された「アトルバスタチン」が「ロバスタチン」の3倍の強さを誇り、総コレステロールとLDLコレステロールを60%下げる薬として世界売上トップにある。スタチンを使っている人は世界で3千万人と推定され、市場規模は3兆円程度(2005年度)だという。

三共の特許は「メバロチン」の特許が、国内では2002年、米国では2006年に切れ、ジェネリックが出回っている。


「日本国際賞」受賞もむなしく感じる

遠藤さんは72歳のときに、2006年の「日本国際賞」を受賞している。「スタチン」の発見と開発に貢献したことが受賞理由である。「日本国際賞」はノーベル賞に匹敵するものを日本でもつくろうということで始まった制度で、授賞式には天皇皇后両陛下、内閣総理大臣と衆参両議院議長が臨席する。賞金は5,000万円だ。

日本人の研究者が発見したコレステロール低下剤が、結局は欧米製薬大手のヒット商品つくりに貢献したような結果となった。

発見者の遠藤さんが、東北大学農芸化学出身で、ピカピカの薬学研究者でなかったこと、三共での研究所間の主導権争い、日本の製薬メーカーの(ひと言で言って)力不足、欧米トップメーカーの製品開発力と車の両輪となっている特許戦略、日本に比べて圧倒的に早い欧米の新薬認定プロセス等々、複合的な要因で生じた差なのだろう。

ほとんど話題にならなかった「日本国際賞」受賞がむなしく思える。


iPS細胞実用化では特許の専門家も加えたチームを編成

以前紹介した「大発見の思考法」のとおり、京都大学の山中教授がヘッドとなっている京大iPS細胞研究所には製薬会社出身の国際特許専門のスタッフも含め、総勢で200名のスタッフがいる。

「大発見」の思考法 (文春新書)「大発見」の思考法 (文春新書)
著者:山中 伸弥
文藝春秋(2011-01-19)
販売元:Amazon.co.jp
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iPS細胞研究所は基礎研究、治療法が見つかっていない病気のメカニズム研究、iPS細胞を活用した創薬や再生医療などの臨床応用、倫理・安全基準研究、知的財産権管理、広報室も備えたiPS細胞を総合的に研究する世界初の施設だ。

たぶん三共の例の他にも、知財マネジメントと開発を両輪で運用しなかったために、せっかくの研究成果を海外の企業に横取りされてしまったケースは、日本企業には多いのではないかと思う。

そういった反省も含めての京都大学iPS細胞研究所の設立だと思う。その意味で、この本も事例研究として参考になると思う。


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2012年07月21日

TPP亡国論 大体予想通りの内容 日本の将来像はどう考えるんだ?

TPP亡国論 (集英社新書)TPP亡国論 (集英社新書)
著者:中野 剛志
集英社(2011-03-17)
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以前紹介した小林よしのりの「反TPP論」で、参考文献の一つとして挙げられていたので読んでみた。

ゴーマニズム宣言スペシャル 反TPP論ゴーマニズム宣言スペシャル 反TPP論
著者:小林 よしのり
幻冬舎(2012-02-24)
販売元:Amazon.co.jp
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大体予想通りの内容だ。詳しくは紹介しないが、日本の最大の問題はデフレであり、1990年代バブル崩壊後の不況で、デフレを心配しなければならない状況にあったにもかかわらず、新自由主義的な構造改革を断行した。その結果デフレから脱却できずにいると中野さんは説く。

戦後の経済運営の歴史上、こんな初歩的なミスを犯した国はほかにない。だから戦後、日本以外にデフレを経験した国がないのだと。

著者の中野剛志さんは、1971年生まれの元経済産業相課長補佐で、エディンバラ大学の社会学の博士号を取っており、京都大学工学研究科助教を経て、現在は経済産業省に復帰しているという。

第1次オイルショックが1974年なので、生まれてこのかたインフレを経験したことがない人なので、わからないのだろうが、いま実効金利率が1%程度で済んでいるから、1,000兆円の国債残高でも大きな問題が生じていないのだ。

インフレとなってたとえば金利が5%になったら、利払いだけで国の財政は破たんする。

筆者がアルゼンチンに駐在していた1970年代末は、インフレ率が100%を超えている時代だった。超インフレ国のアルゼンチンに住んでいた経験がある筆者にとって、インフレは国民の財産をむしりとる国の政策だと思う。

なにせいままでの蓄えが、インフレ率100%だと1年で半減、2年で1/4になってしまうのだ。銀行に預ければ金利はつくが、インフレは下回るので、目減りすることに変わりはない。

ペソでもらった給料を、すぐにドルにしたり、金貨にしたりしていたが、それでもインフレには負ける。

日本でインフレ率100%という事態にはならないとは思うが、国民総資産1,400兆円とかいっても、5−10%くらいのインフレが起これば、数年で激しく目減りし、日本人の世界的地位も凋落を続けることだろう。

そうなるともはや挽回は不可能だ。

ところで、この本の最後は次の言葉で終わる。

「第三の開国?その前に、第一の開国が、まだ終わっていないのです。」

この意味は、日本はまだアメリカなどの陰謀から「自ら守る力」、「自立の力」を持っていないのだという。

農業問題については、反TPP論者の「食料自給率100%を目ざさない国に未来はない」と一緒に、このブログで紹介した浅川さんの「日本は世界第5の農業大国」もも紹介している。

賛否両論併記ということで、結局中野さんが何を言いたいのかよくわからない。

食料自給率100%を目ざさない国に未来はない (集英社新書)食料自給率100%を目ざさない国に未来はない (集英社新書)
著者:島崎 治道
集英社(2009-09-17)
販売元:Amazon.co.jp
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日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)日本は世界5位の農業大国 大嘘だらけの食料自給率 (講談社プラスアルファ新書)
著者:浅川 芳裕
講談社(2010-02-19)
販売元:Amazon.co.jp
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TPPに反対する人たちの論拠は農水省のTPPによる影響試算であることは、以前紹介した「TPPを考える」と同様だ。

TPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させるTPPを考える―「開国」は日本農業と地域社会を壊滅させる
著者:石田 信隆
家の光協会(2011-02)
販売元:Amazon.co.jp
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中野さんは6月に経済産業省に復職したようだが、経済産業省の官僚としてどうやってTPP亡国論をブツのだろう?

この人は、どういう日本の将来像を持っているのだろう。ここをクリックして、目次を見ればわかるが、個別論だけで全体像がよくわからない。そんな印象を受ける本である。


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2012年07月19日

勝ち続ける経営 "Made for you"は本当だった 日本マクドナルドの原田さんの経営改革

2012年7月19日追記:

マクドナルドは、"Made for you"というキャッチフレーズ通り実践していることを体験した。

筆者はマクドナルドのメニューでは、ガッツリ型のダブル・クオーター・パウンダー・チーズが好きだ。トレーニングした後など、無性に食べたくなる時がある。

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出典:マクドナルド ホームページ

この写真にもあるとおり、どっさりケチャップがかかっている。しかし、ハンバーガーにケチャップをかけるのはどうしても好きになれず、いつも一旦バンズをはずして中のケチャップを取って食べていた。

ペーパーナプキンで拭き取っていたが、ナプキンにケチャップがついて見苦しいので、いつも何とかならないかと思っていた。

先日のテレビのバラエティ番組で、ロッテリアは特殊な注文に喜んで応じるという話を聞いたので、マクドナルドでも"Made for you"というくらいだから、ひょっとして特殊な注文に応じてくれるのでは?と思ってケチャップなしができるかどうか聞いてみた。

そうしたら全く問題なく、ケチャップなしをつくってくれた。筆者は望み通りのものを食べられ、マクドナルドもケチャップを節約でき(?)、全体としてエコが達成でき、WIN−WINだった。

いままでマクドナルドはマニュアル通りつくっているので、特殊な注文には応じてくれないと思っていたが、頼めばやってくれるのだ。

日本マクドナルドCEOの原田さんに感謝するとともに、原田さんの本のあらすじを再掲する。


2012年5月9日初掲:

勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論勝ち続ける経営 日本マクドナルド原田泳幸の経営改革論
著者:原田泳幸
朝日新聞出版(2011-12-07)
販売元:Amazon.co.jp
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日本マクドナルドの原田社長が朝日新聞のAERAビジネスセミナーで、2010年12月と2011年6月に、経営改革を語った講演録。最初の100ページが講演で、60ページ余りのQ&Aが収録されている。Q&Aも面白い。

セミナーのタイトルは「非常識を常識に マクドナルドの経営改革」というものだったという。

原田さんはマクドナルドに移る前の33年間はIT業界で仕事をしていた。アップル・ジャパンには14年間在籍し、最後の7年間はアップル・ジャパンの社長を務めていた。その原田さんが2004年にアップル・ジャパン社長から日本マクドナルドの社長に転職したときは「マックからマックへの転職」と言われたものだ。

原田さんが日本マクドナルドの社長になる前には、稀代のベンチャー起業家で、創業者の藤田田さん経営の末期で、日本マクドナルドの業績は既存店売上高が7年間マイナスというどん底の状態だった。そんな日本マクドナルドの業績を原田さんは、7年連続プラスに変えた。

このセミナーはそんな原田さんが語る日本マクドナルドの経営改革だ。読んでみると「非常識を常識に」というタイトルは、全く当てはまらないと思う。すべて基本に忠実なオーソドックスなアプローチだったことがよくわかる。


新しいバス

原田さんが入社して、すぐ全社員を集めて次のように宣言したという。

「今から新しいバスが出発する。新しいバスのチケットを買いたい人は買え。買いたくない人はバスに乗らなくてかまわない。」

当時のマクドナルドの年商は4,000億円、それが現在は6,000億円まで拡大している。

日本マクドナルドは1971年の銀座三越での初出店後、20年間で1,000店まで拡大し、その次の10年で3,000店まで拡大した。これが既存店売り上げの減少をもたらし、結果的に経常利益は減少した。創業者の藤田田さんは2002年に社長を退き、2004年に原田さんが社長として着任して経営改革を実施した。


経営不振の原因:QSCの欠如

原田さんが社長として着任した時に、経営幹部からは出店過多でカニバリゼーション(店舗がお互いに客を奪い合っている)が起こっていると説明を受けたが、原因はもっと単純なことだったという。

それはQSCという基本中の基本ができていなかったからだ。Q=クオリティ、S=サービス、C=クレンリネスだ。それにV=バリュー(価値ある食事体験)を入れてQSCVとも呼ぶ。

外食産業では店の売り上げは店長の能力に大きく左右される。急成長したマクドナルドは人材の育成が追い付いていなかった。店長次第で、クルー=アルバイトの満足度も変わる。クルーの満足度は離職率に影響し、離職率が上がるとQSCは低下し、顧客満足度が下がり、売り上げも下がるという悪循環となっていたのだ。

だから原田さんが社長となった最初の年から、今まで「基本に立ち返れ。基本以外はなにもするな。QSCが一番大事」と言い続けているという。


当たり前のことをやる

当たり前のことをやることがビジネスでは最も難しいのだと。当たり前のことをやり、その会社「らしさ」を取り戻したという例は、業績回復企業には共通して見られるという。

原田さん着任前のマクドナルドは、一時はカレーライスやチャーハンを出していた。経営改革の第一歩はマクドナルドらしさを取り戻すため、基本に立ち返るものだった。


ブランド力の向上

マクドナルドのブランドはブランド・ジャパンの評価で、2007年に81位に入ってから毎年上昇し、2011年には4位にまでなった。これは根拠があってのことだという。

それはブランド・ジャパンの評価の4機軸である、フレンドリー、コンビニエント、アウトスタンディング、イノベーティブの4つにあわせて次のような戦略を展開してきたのだ。

★つくり置きをやめて、オーダーを受けてからつくり、”メイド・フォー・ユー”というキャッチフレーズで、味を向上させた。

★100円マックというバリュー商品を打ち出しながら、8年間で6回値上げを実施した。

★地域別価格、24時間営業、マイナスイメージを払拭するためのヘルシーメニューの導入

その結果競合とのQSC差は拡大し、見事に客数の増加につながったという統計が紹介されている。

従業員満足度も忘れてはならない点だという。マクドナルドでは毎年クルーの技能コンテストを開催するほか、16万人いるアルバイトのトレーニングはニンテンドーDSで行っているという。

アウトスタンディングについては、メガマックやマックグリドル、クオーターパウンダーなどのボリュームメニューの効果をマクドナルドらしさの例として説明している。そのための広告戦略にも大変気を使っていることがわかる。ビッグアメリカ・シリーズのハンバーガーは広告効果もあり爆発的な売り上げを記録したという。

マクドナルドのコーヒーはベストクオリティのコーヒーを低価格で提供している。しかしマクドナルドのコーヒーは他の競合店と競争するためのものではなく、あくまでビックマックを売るためのものなのだと。


常に新陳代謝

店舗の新陳代謝も積極的に実施している。2007年の店舗数は3750店余りだったが、不採算店を閉鎖し、新規に出店を重ね、2011年には3,280店になり、店舗当たりの売上高も増加している。

フランチャイズのオーナー・オペレーターは440人から200人に減った。しかしフランチャイズ比率は30%から65%まで増やし、1オーナーあたりの店舗数も増やして、キャシュフローを向上させた。


レストランはピープルビジネス

原田さんはレストランビジネスはピープルビジネスだという。コストダウンで一番大事な点は、コストを削るのではなく、同じコストで売上げを拡大することだ。”もっとお金をつかって、もっと売る提案を持ってこい”と社員には言っているという。

人材への投資は惜しみなく行う。

サービス残業訴訟があったこともあり、クルーの残業を肩代わりしていた店長に残業手当を出すようにした。しかし今はクルーを増やしているので、店長がクルーの代わりに残業するという事態はなくなり、店長の残業手当支給はほぼゼロだという。


経営理念

三木谷さんの「スピード、スピード、スピード」は有名だが、原田さんもビジネスではスピードが何よりも大事と語る。だからeクーポンに力を入れ、ニンテンドーDSを使ったマックでDSも力をいれている。

マクドナルドの経営では、成果主義を徹底し、年功序列を廃止したという。マクドナルドでは降格は決して恥ずかしいことではないという文化が生まれつつあるという。

原田さんは社員に3年以内にどういう後継者を作りますかとよく聞くという。人材のパイプラインが重要なのだ。


マクドナルドの場合は”Think Global, Act Local”

楽天などの企業はThink Global, Act Globalなのだろうが、マクドナルドの外食産業の場合は、Think Global, Act Localなどだと。だから日本語で考えて、日本語でしゃべれ。英語で考えて、英語でしゃべれ」と社員には言うという。


原田語録

講演の最後に、原田さんがいつも社員に言っている言葉が紹介されている。大変参考になるので紹介しておく。

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出典:本書101ページ


Q&Aも面白い

60ページにわたるQ&Aも面白い。印象に残った回答を箇条書きで紹介しておく。

★マネジメントはなんといってもコミュニケーションが一番大事。

★マックフライポテトは独自性のない商品のように見えるかもしれないが、あの長さでカリカリに揚げるのは大変なノウハウ。ポテトは揚げたあと7分で廃棄するという。テイクアウトしてレンジで温める人が多いのが残念だと。

★やはりチーズバーガーが一番おいしい。

★キャリアを自分で考えるな。キャリアとは周りからくるものと思え。

★チームのパフォーマンスを最大化するのがリーダー

★社長は職位ではない。職種であり、現場に行くのも自分の命題の発見のために行く。たとえばコーヒーのクリームとガムシロップのパッケージが同じ白で、間違えやすかったのに気づいて色分けさせたが、これは経営の課題。

★座右の銘はない。推薦書もない。

★学生時代のデパートの集金のアルバイトが役に立った。5000円の集金なら500円とりあえずもらい、毎週行って5000円回収できる。10人いれば、9人が”また来て”という答えだったという。生活設計にけじめのない人がツケで買っているということだ。

★風土はトップしか変えられない。


原田さんは最後に、「当たり前のことをちゃんとやれ」ということが、世間一般では驚くほどできていない、だから重要なのだと。あたまにスッと入る実践的経営論である。


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2012年07月18日

サイバーテロ 漂流少女 情報セキュリティの専門家が書いた小説

サイバーテロ 漂流少女サイバーテロ 漂流少女
著者:一田和樹
原書房(2012-02-16)
販売元:Amazon.co.jp
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情報セキュリティの専門家で、情報セキュリティ専門サイトScanNetSecurity「工藤伸次のセキュリティ事件簿」という連載を書いている一田和樹さんの小説。

一田さんは、バンクーバー在住の作家で、サイバーセキュリティコンサルタントをやっており、ブログを開設している

筆者も情報セキュリティの専門家なので、楽しく読めた。日本の情報セキュリティの専門会社(株)ラック(株)ネットセキュリティ総合研究所の専門家たちが、査読をしたそうなので、小説とはいえ実際に起こりうるリスクを取り上げていて参考になる。

読んだときに興ざめなので、小説のあらすじは詳しくは紹介しない。

最初に街頭に立つ少女が、パソコンを操ってBluetooth通信で、主人公の乗るタクシーを制御不能に追い込んで事故を起こさせるシーンが出てくる。

日本では半信半疑に思う人が多いかもしれないが、米国に駐在していた筆者はエンジンが止まってハンドルがロックされた経験があるので、これはありうると感じた。

日本では聞かないが、これは「ストーリング」といって、20年ほど前までは米国車では非常に多いトラブルだった。

自動車はパワーステアリング、パワーブレーキが多いので、エンジンが急に止まるとハンドルがロックされ、ブレーキも効かず、運転不能に陥る。急いでシフトをニュートラルに戻し、再度エンジンをかけなる必要がある。

筆者が最初の米国駐在の時にかったGMのビュイック・センチュリーは、調子の悪いときは、会社に行くほんの30分の間に何度もエンジンが止まったことがある。それが夕方帰宅するときは、一度もエンジンが止まらず、全く問題ないという不思議な現象だった。

安全性に問題があり、修理してもまた同じ問題が発生したので、結局本田(アキュラ)レジェンドに変えたら、問題がなくなった。

最近の自動車はECUという電子制御ユニットが搭載されており、マイコンで様々なコントロールを行っている。各パーツ同士の通信は無線化されているのだという。

米国のワシントン大学とカリフォルニア大学サンディエゴ校は、共同研究でフォード車を使って、時速45キロで走行中の車をハッキングできることを実演したという。電波の届く範囲は40メートルだった。

この小説では、単なるウェブサイトの不正アクセスや改ざんなどではなく、産業システムに組み込まれた工場や発電・送電等プログラムへの攻撃や、金融システムの混乱を誘引するサイバーテロを描いている。

ひそかに入手した個人情報と最新のアンチウィルスソフトを偽装したスパイウェアを用いて、何百万人ものオンラインバンキング口座から金を引き出すことなど、日本社会全体がマルファンクション(誤操作)に追い込まれる危険性を描いている。

主人公が日本のNISC(内閣官房情報セキュリティセンター)にも一目置かれているフリーランスの情報セキュリティ専門家で、ストーリーも日本のセキュリティ専門家たちの子供たちがからんでくるという、ちょっとありえないような設定ではあるが、サイバーテロの描写や手口は真に迫っており、楽しく読める。

ベストセラーになるような小説ではないが、情報セキュリティに関心のある人には参考になり、楽しく読めると思う。


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2012年07月16日

白洲正子 鶴川日記 白川正子のエッセー集

鶴川日記 (PHP文芸文庫)鶴川日記 (PHP文芸文庫)
著者:白洲 正子
PHP研究所(2012-05-17)
販売元:Amazon.co.jp
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筆者は東京都町田市の鶴川に住んでいる。

鶴川には香具山美術館(鶴川にある香具山古墳から発掘された縄文時代の土器などを陳列)、自由民権資料館(多摩地方で盛んだった自由民権運動の資料館)などもあるが、鶴川で一番有名な名所・旧跡は白洲次郎・正子夫妻がすんだ武相荘(ぶあいそう)だろう。

筆者は武相荘から車で5分くらいのところに住んでいるので、白洲次郎の本は「プリンシパルのない日本」などを読んだし、北康利さんの「白洲次郎 占領を背負った男」のあらすじはこのブログで紹介している

が、いままで白洲正子の本を読んだことがなかった。

今回はじめて白洲正子の本を読んで、やはりタダモノではないという印象を受けた。アメリカ留学帰りでありながら、美術品・陶器・絵画・古典・和歌の造詣が深く、この本を読んでも、底知れない知識と表現力を感じさせる。

上記の文章の”が、いままで…なかった。”という、”が、”で文章を始めるという使い方も、実はこの「鶴川日記」で白洲正子が用いている自由奔放ながら、嫌味のないスタイルをマネしたものだ。

この本のタイトルになった「鶴川日記」は、太平洋戦争前後の鶴川での生活や昔の鶴川の風土を紹介していて、鶴川に住む筆者には特に興味深い。鶴川が縄文時代からある由緒ある集落だとは知らなかった。

他に、タモリが喜びそうな「東京の坂道」(タモリは「タモリのTOKYO坂道美学入門」という本を出している)。

新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門新訂版 タモリのTOKYO坂道美学入門
講談社(2011-10-25)
販売元:Amazon.co.jp
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白洲正子が親しくしていた梅原龍三郎さんや角川源義さん(角川書店創始者、角川春樹さんの父)、正子の祖父樺山資紀のことなどを書いた「心に残る人々」の3部構成だ。

祖父の樺山資紀は180センチを超すがっしりした体格の大男だったという。たしかにそういわれてウィキペディアの写真を見ると大男だったというのがわかる。

白洲正子は小林秀雄や稀代の目利き青山二郎のいわば取り巻きのような存在だったようだが、筆者も受験勉強で悩まされた小林秀雄の文章よりもよほどわかりやすい。

もっと白洲正子の本を読もうと思わせる本である。


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2012年07月15日

Galaxy S III パーフェクトマニュアル スマホにはマニュアルは必須だと思う

GALAXY S III Perfect ManualGALAXY S III Perfect Manual
著者:福田 和宏
ソーテック社(2012-06-30)
販売元:Amazon.co.jp
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10日ほどまえに、携帯電話を長年使っていたドコモP905iから、サムスンのGalaxy S IIIに代えた。

スマートフォンがおさいふケータイに対応するのを待っていたところ、Galaxy S IIIが対応したので、それで機種変更の決断がついた。

さっそくiDと、モバイルスイカ、ナナコモバイルを入れた。

CIMG3189






これらの電子マネーを移行するためには、いったん前の機種で残高をサーバーに預ける処理をして、パスワードを受け取り、今度は新しい端末でアクセスして、そのパスワードを使って残高を移行するという手続きが必要となる。

スイカ、iD、ナナコは問題なくでき、あとはヤマダ電機のケイタイdeポイントを移行するのみだ。

おさいふケータイは問題なく操作できたが、問題はその他の操作だ。電話もメールもインターネットも勝手が違って、非常に使いづらい。大体、インターネットを見た後、どうやって終わるのかよくわからない。

iModeはインターネット接続を切る操作がわかりやすかったが、Galaxyではいまだにどうやったらネット接続を切れるのかわからない。それがマニュアルを買った理由でもある。

iPhoneも同じらしいが、スマホは電池消費は激しく、短くて2日長くても3日で電池を使い切ってしまうので、充電器は欠かせない。

付属しているマニュアルはエコなのかもしれないが、豆本みたいなもので見づらく、使いづらい。やむなく買ったのが、このパーフェクトマニュアルだ。マニュアルを読んで使い方をもっと研究してみる。


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2012年07月14日

あなたの知らない神奈川県の歴史 神奈川県出身ながら本当に知らなかった

あなたの知らない神奈川県の歴史 (洋泉社歴史新書)あなたの知らない神奈川県の歴史 (洋泉社歴史新書)
洋泉社(2012-04-06)
販売元:Amazon.co.jp
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本屋で目に付いたので読んでみた。

筆者は神奈川県藤沢市出身で、今は神奈川県に隣接する東京都町田市に住んでいる。高校野球だと、地元の日大三高とともに、やはり出身地の神奈川県の高校も応援している。

プロ野球も、昨年まではずっと郷土の球団である大洋ホエールズ以来の横浜ファンだったが、DeNAが買収してくれたのをきっかけに、横浜ファンをやめることができた。今はプロ野球でひいきのチームはなく、心安らかな日々である。DeNA様様である。

この本は神奈川県民のみを対象に書かれたものではないが、神奈川県に住む人や神奈川県出身の人は、常識として是非一読をお勧めしたい。

というのは、高校などの日本史は、日本全体の歴史を扱っているので、神奈川県は鎌倉幕府が開かれた時代と、ペリーが来日して横浜を開港し、外国人居留地が出来た江戸時代末期から明治時代初頭を除いては、スポットライトを浴びることが少ないからだ。

筆者は藤沢出身なので、鎌倉にはよく出かけたし、外国人のお客を何度も鎌倉観光に連れて行ったこともある。鎌倉についてはある程度知識と土地勘もあるが、あらためて神奈川県の歴史を読み直してみると、結構間違って覚えていたことがあることに気が付く。

たとえば稲村ヶ崎だ。新田義貞が黄金の太刀を稲村ヶ崎から海に投げ入れると、潮が引いて陸地づたいに鎌倉に攻め入ることが出来たという言い伝えは知っていたが、年代を間違えて覚えていた。新田義貞は鎌倉幕府の重臣だと思っていた。

その他にも鎌倉時代の北条氏と、戦国時代の北条早雲を始祖とする北条氏とは血縁関係はないことなど、あいまいだった知識が確認できて役にたつ。

この本に載っている神奈川県歴史MAPも役に立つ。

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出典:本書

これを見ると、現在の神奈川県の中心地の横浜や川崎は、歴史上はほとんど登場しないことがわかると思う。歴史的には寒川神社がある寒川町など神奈川県中央部が神奈川県の中心地で、大和市には上野遺跡という縄文時代の遺跡もある。

神奈川県の国府は、日本で唯一場所が特定されていないそうだが、少なくとも3回場所が変わったことから、最初の国府があった高座郡国分村から地震などで場所が移転し、現在では平塚市四之宮、伊勢原市比々多、秦野市字御門と3説あるとのことである。

神奈川県には国府津(こうず)という町がある。JRの駅もあって、昔の御殿場線の始発駅である。京都から神奈川県の国府まで行く港は現存しているので、まさか国府のあった場所がまだ確定していないとは知らなかった。

ちなみに神奈川県の古い名称である相模の国の「相模」の由来は分かっていないそうである。

神奈川県は元々天領や大名の飛び地、旗本の領地などが多く、江戸時代は、小田原藩、荻野山中藩(厚木市)、武蔵金沢藩(横浜市金沢区)のみが藩として存在していた。廃藩置県で藩が県となり、明治4年に三浦郡、鎌倉郡、高座郡の相模三郡と、橘樹(たちばな)郡、久良岐(くらき)郡、都築郡、多摩郡の武蔵四群が統合して新生神奈川県となった。

小田原県と荻野県は伊豆の韮山県と一緒になって足柄県だった。以前このブログで紹介した「地図と愉しむ東京歴史散歩」に載っていた通り、コレラ発生がきっかけで多摩郡を東京に移管したり、足柄県を静岡県と分割したりして現在の神奈川県の地域となったのは明治26年だったという。

カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩カラー版 地図と愉しむ東京歴史散歩
著者:竹内 正浩
中央公論新社(2011-09-22)
販売元:Amazon.co.jp
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神奈川県の歴史のピークはもちろん鎌倉時代だ。この本ではQ&A方式で、次に様な質問に答えている。

Q9  伊豆に流されていたのに、なぜ源頼朝は鎌倉に幕府を開いたのか?(鎌倉は関東の武士に命令するには最適の場所だった)

Q11 「幕府」って具体的には鎌倉市内のどこにあったの?(市内3か所で移転した)

Q13 源義経が腰越から出した有名な手紙(腰越状)は実在するか?(フィクションの可能性が強い)

Q15 鎌倉幕府にしかない「執権」ってどんな役職?(鎌倉幕府は執権と連署(副執権)、十数名からなる評定衆の合議制が政権運営体)

Q21 元の国書(蒙古牒状)ってそんなに無礼な内容だったの?(クビライが送った書状は脅しともとれる慇懃無礼な内容で、元の使者の杜世忠らは藤沢市龍ノ口(常立寺)で斬首された。これがため2度の元寇につながり、鎌倉幕府は元寇は防いだものの、褒賞を与えることができずに御家人の不満が高まり、滅亡した)

Q25 新田義貞による海側の稲村ケ崎からの鎌倉突入はホントにできたのか?(前述の通り、新田義貞は引き潮時に鎌倉に攻め入った)

Q31 太田道灌が「当方滅亡」と叫んで暗殺された「風呂」はどこにあった?(江戸城を築城した太田道灌は教養に富む築城の天才だったが、主人にねたまれ、伊勢原市日向にあった糟屋館で暗殺された)

Q34 戦国大名・毛利氏の出身地は鎌倉だった!?

Q39 鎌倉時代の北条氏と戦国時代の北条氏とは血縁はあるのか?(血縁はないが、北条氏の権威を利用した)

Q43 秀吉が作った石垣山一夜城はハリボテの城だったのか?(ハリボテは見せ掛けで、実際には述べ4万人の人夫が80日間動員された)

Q50 川崎大師はなぜ「厄除け」になったのか?(もともと平安時代のスタートから厄除けで有名だったが、江戸時代に11代将軍家斉の厄除けで将軍家が参詣するようになった)

Q52 江戸時代なのに相模国には「県」があった(唯一の例外は、津久井県だ)

Q53 富士山の大噴火がもたらした影響とは?(宝永4年=1707年)の富士山の噴火で神奈川県内は20〜30センチの火山灰が積り、農業は全滅だったという)

Q56 ペリー艦隊来航で「黒船」見物ブームがあったってホント?(幕府は黒船見物禁止令を出したが、黒船見たさの庶民には効果はなかった)

Q58 外国人居留地はどのように成立・発展した?(関所があったので居留地は「関内」と呼ばれていた。もともとあった村は関所の外に強制的に移転させられ、それが「元村」(元町)呼ばれた)

Q59 「鎌倉ハム」、「高座豚」は横浜開港と関係がある?(鎌倉ハムは1874年にイギリス人ウィリアム・カーチスが作りはじめ、地元の名士・斎藤家にノウハウが伝えられた。)

Q60 ペリーが持ってきた鉄道模型はその後どうなった?(幕末に火災で焼失した)

Q64 かつての湘南には海がなかった(旧津久井郡の城山町に「湘南村」がかつてあった)

Q66 JR鶴見線の駅名は人名だらけ(浅野財閥の「浅野」、「大川」や安田善次郎の「安善」、「武蔵白石」駅などだ)

Q67 関東大震災の被害は東京より横浜の方が大きかった?(震源地は相模湾北部で、横浜は人口の93%が被災、東京は75%が被災した)


ちなみに、神奈川県らしい姓というと「三浦」と「石渡」だという。


神奈川県民でなくとも、マメ知識にはもってこいの本である。


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2012年07月11日

池上彰のやさしい経済学1 わかりやすくためになる経済学の基礎

池上彰のやさしい経済学―1 しくみがわかる池上彰のやさしい経済学―1 しくみがわかる
著者:池上 彰
日本経済新聞出版社(2012-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
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池上さんの「やさしい〜」シリーズは何冊も読んだ。この本の姉妹編の「やさしい経済学2」も読んだが、1の方が経済学の勉強という意味で役に立つ。

この本では、そもそも経済って何だろうか?という質問から始まって、最初の2章は、経済学の基礎知識の説明や、銀行ってどんな仕事をしているんだろう?というような、まさに「週刊子どもニュース」のノリだ。

たとえば、お金に関する漢字の多くが貝偏なのは、中国では子安貝をお金に使ったから。サラリーと呼ぶのは、古代ローマでは塩(サラリウム)が兵士の給料として支給されていから、というような面白くてためになる情報が多い。

しかし、この本の真価は、その次の偉大な経済学者の理論のわかりやすい紹介にある。池上さんは、この本でアダム・スミス、カール・マルクス、(デヴィド・リカード)、ケインズ、ミルトン・フリードマンの4人についてわかりやすく解説している。

現在日経新聞で連載している関連記事も同様の内容だ。

池上











出典:日経新聞

実は、4人の中で筆者が読んだのは、アダム・スミスの本だけということで、不勉強を反省するとともに、筆者の経済学の知識が乏しいことにあらためて気づかされた。

筆者は大学2年の時に内田忠夫先生の「経済学」を学んだが、ほとんど覚えていない上に、その後読んだ本も限られている。

内田先生の授業を受けて、推薦書のサミュエルソンの「経済学」を英語で読もうと思って、本を買うまではよかったのだが、大学生の英語力では限界があり、数式などもあって、結局挫折してしまった。

EconomicsEconomics
著者:Paul Anthony Samuelson
McGraw-Hill(2010-04)
販売元:Amazon.co.jp
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それが後を引いて、経済学は難しいという固定観念ができてしまった。マルクスの「資本論」も読んだというか、字面だけ眺めたようなものだ。難解な上に、時代も違うので、全然理解できなかった。

資本論 1 (岩波文庫 白 125-1)資本論 1 (岩波文庫 白 125-1)
著者:マルクス
岩波書店(1969-01-16)
販売元:Amazon.co.jp
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最近「まんがで読破」シリーズの「資本論」を読んだが、これがはたして理解に役立つのかわからない。

資本論 (まんがで読破)資本論 (まんがで読破)
著者:マルクス
イースト・プレス(2008-12-01)
販売元:Amazon.co.jp
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続・資本論 (まんがで読破)続・資本論 (まんがで読破)
著者:マルクス
イースト・プレス(2009-04-28)
販売元:Amazon.co.jp
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アダム・スミスの「国富論」は数年前に、日経新聞版が出た時に読んだ。これはまさに古典であり、それまで聞いてきたことを自分で確かめたという感じだ。「国富論」は”見えざる手”で有名だが、”見えざる手”という表現は一か所に、それも目立たず出てくるだけだ。

その後のアダム・スミスの評価がこの一言で決まったといってもよい言葉だが、本の中ではさらりと扱われているのが印象に残る。

国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究(上)
著者:アダム・スミス
日本経済新聞社出版局(2007-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
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国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)国富論 国の豊かさの本質と原因についての研究 (下)
著者:アダム・スミス
日本経済新聞社出版局(2007-03-24)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

この本は京都造形芸術大学での講義を元にしたもので、前記のように日経新聞でも毎週?連載されている。経済学部ではない大学生に対する講義なので、非常にわかりやすい。

まず、アダム・スミスについては、「見えざる手」=市場の自動調節機能を中心に、「国富論」で出てくるピンを自分で作る場合と、分業して作る場合などの有名な例を紹介しながら説明している。

マルクスについては、資産家の友人のエンゲルスの援助を受けられたからこそ、労働が価値を生み出し(労働価値説)、資本家は労働者を搾取しているとして、いずれは労働者が革命を起こすと説きつづけられたことを説明している。

しかし、その後生まれた社会主義国は効率が悪いので、ことごとく失敗して、ソ連など大半の国は資本主義に戻ったことなどを、旧東ドイツ製のトラバントというおもちゃのような自動車を例に出しながら説明している。

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出典:Wikipedia

ケインズについては、1929年の世界恐慌のあと、恐慌から脱出する政策として、政府が赤字国債を発行して資金を調達し、それを使って公共事業を拡大して、雇用を維持し、経済を回復させるという処方箋を書いて、米国を大恐慌から回復させた(もっとも米国が経済回復したのは、第2次世界大戦で大量の武器を生産したからという説もある)ことを紹介している。

またロシアのバレリーナと大恋愛して、それでお金が必要だったことも付け加えている。

デヴィッド・リカードについては、「比較優位」の考え方で、国際貿易は双方の国にとってメリットがあると主張して、国際貿易の飛躍的拡大をもたらしたことを紹介している。

最後にシカゴ学派のボス、新自由主義の旗手・ミルトン・フリードマンの経済理論をわかりやすく紹介している。

筆者はミルトン・フリードマンやシカゴ学派の理論については、ほとんど理解していなかったことが、この本を読んでわかったので、現在「資本主義と自由」を読んでいる。

資本主義と自由 (日経BPクラシックス)資本主義と自由 (日経BPクラシックス)
著者:ミルトン・フリードマン
日経BP社(2008-04-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

小泉・竹中改革は、シカゴ学派の新自由主義を日本に導入しようとするものだ。「もしドラ」の二番煎じのような「もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら」も、この点を書いているのではないかと思うので、今度読んでみる。

もし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだらもし小泉進次郎がフリードマンの『資本主義と自由』を読んだら
日経BP社(2011-11-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

フリードマンの学説は、シカゴ学派、マネタリストと呼ばれ、絶対自由主義の立場は、このブログで紹介したマイケル・サンデルの「これからの正義の話をしよう」で有名になった「リバタリアン」と呼ばれており、小さな政府を提唱し、米国の「ティーパーティ」政治運動にも影響を与えている。

これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)これからの「正義」の話をしよう (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
著者:マイケル サンデル
早川書房(2011-11-25)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

フリードマンの理論を、池上さんは、次の「こんなものいらない」リストで紹介しており、こんな考え方もあるんだと、頭の体操をすることを勧めている。

1.農産物の買い取り保証価格制度
2.輸入関税または輸出制限
3.家賃統制、物価・賃金統制
4.最低賃金主義や価格上限統制
5.現行の社会保障制度
6.事業や職業に関する免許制度
7.営利目的の郵便事業の禁止(これが小泉郵政民営化の基本だ)
8.公営の有料道路
9.商品やサービスの参入規制
10.産業や銀行に対する詳細な規制
11.通信や放送に関する規制
12.公営住宅及び住宅建設の補助金
13.平時の徴兵制
14.国立公園
15.企業のメセナ活動
16.累進課税(ユニタリータックス提唱)

フリードマンは、学校選択制も提唱している。

日本でも新自由主義的な政策は、橋本政権から「金融ビッグバン」ということで始めており、小泉改革では派遣労働の自由化を推し進めたことで、格差拡大をもたらしたと非難されている。

エキセントリックな議論が多く、賛否両論があるフリードマンだが、上記のような本を何冊か読んでみる。


まさに「やさしい経済学」というタイトル通りだ。経済にはあまり詳しくない人に絶対おすすめの本である。


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2012年07月10日

30年?ぶりにプロティンを飲み始めた 後でアクシデント

パワープロテイン プロフェッショナルタイプ(1.2kg)【kentai(ケンタイ)】[プロテイン]
パワープロテイン プロフェッショナルタイプ(1.2kg)【kentai(ケンタイ)】[プロテイン]

30年?ぶりにプロテインを飲み始めた。

2012070123390000














筆者は豆乳とシェイカーにいれて、ミックスして飲む。

筆者は毎週運動しており、従来からの1キロの水泳に加えて、昨年からウェイトトレーニングを再開している。週1回のみだが、一応現状維持はできていると思っていた。

ところが、ベンチプレスでパワーリフティング経験者の最低限と思っていた100キロが上がらなくなったので、プロテインを再開した。

ウェイトトレーニングをやりだした次男がプロテインを飲み始めたこともある。ただし次男は味付きのプロテインだが、筆者は当然、味付けしていないプロフェッショナルタイプだ。

最近はホエイプロテインも大豆プロテインと同じくらいの価格で売られている。ホエイプロテインの方が、吸収にはいいのかもしれないが、ひょっとするとコレステロールが高いのでは?と思って、昔ながらの大豆プロティンにした。

ザバス アクア ホエイプロテイン100 グレープフルーツ風味(360g)【ザバス(SAVAS)】[プロテイン]
ザバス アクア ホエイプロテイン100 グレープフルーツ風味(360g)【ザバス(SAVAS)】[プロテイン]


同じ理由で牛乳でなく、豆乳にしている。血圧は低めなので問題はあまりないが、コレステロール値が上限に来ているので、この辺を気にしているものだ。

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筆者がウェイトトレーニングを始めた40年前は、国産のプロテインパウダーはなく、輸入のウェイダー社製のものを牛乳に混ぜて飲んでいた。

ウイダーマッスルフィットプロテイン ココア味 1.0kgウイダーマッスルフィットプロテイン ココア味 1.0kg
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たしか大学3−4年の時に、明治製菓がプロテインパウダーを売り出したので、それ以降は明治のプロテインパウダーを飲んでいた。会社に入ってからはラグビーをやっていたので、プロテインは継続していた。

当時の明治製菓の担当者が野沢秀雄さんという健康体力研究所(ケンタイ)の創設者だ。

よく学生のボディビル選手権を見に来ていたものだ。

昔のプロテインは牛乳に溶けにくく、塊となって残るので、プロテインドリンクの味を気にするどころではなかった。まず少量のドリンクとパウダーをスプーンでかき混ぜ、一応こなれてきたところで、残りのドリンクをいれて混ぜ合わせる。なんとかのどに流し込むという感じだ。

だから今もプロフェショナルタイプの味付けなしのプロテインで全く問題がない。昔のプロテインパウダーに比べて圧倒的に粒子が細かいので、よくドリンクに溶け、量を間違えない限り塊になって残るということはない。

日本でつくっているメーカーは、今でもザバスの明治製菓とケンタイ(たぶん製造は昔の経緯で、明治製菓だとおもう)くらいしかないが、さすがに40年間の技術革新は大きい。

プロテインを飲むと、筋力アップとともに、プロテインダイエットの効果も期待できる。筆者も体重が減少気味になってきた。

筋力アップとダイエット両方を狙って、当分プロテインを続けてみる。

と書いたところで、左足太ももに痛みを感じて、歩行が困難になった。毎週トレーニングと水泳1キロで体調を整えてきた筆者にとって、歩けなくなるとは、まさに青天のへきれきだった。

さっそく近くの整形外科に行って、レントゲンを撮ったら、股関節にカルシウムが蓄積していて、これが足の神経を圧迫して痛みの原因となっていた。

注射で処置してもらい、土日は完全休養で、なんとか月曜日にはひょこひょこながら歩けるようになった。

歩けなくなってみると、”歩ける”ことはなんと恵まれたことなのか痛感した。

筆者は毎日カルシウムも含んでいるマルチビタミン・ミネラル・サプリを飲んでおり、それに加えて最近は上記のように豆乳も飲み始めている(調整豆乳は牛乳なみにカルシウムは強化している)。

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カルシウム過多傾向にあったのかもしれないが、それにしてもすぐに骨や軟骨に蓄積するとは思えないので、原因は要調査だ。

カルシウム蓄積症は、腰痛と同じような症状がでて、ひどいと筆者のように急に歩けなくなる。スポーツマンの人は、カルシウムのとりすぎには注意してほしい。


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2012年07月09日

再掲: 銃・病原菌・鉄 なぜ新大陸民族は旧大陸民族に敗れたのか?

2012年7月7日追記

[ナショナル ジオグラフィックDVD BOX] 銃・病原菌・鉄(DVD3巻セット)[ナショナル ジオグラフィックDVD BOX] 銃・病原菌・鉄(DVD3巻セット)
著者:ナショナル ジオグラフィック
日経ナショナル ジオグラフィック社(2007-06-28)
販売元:Amazon.co.jp
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「銃・病原菌・鉄」全3巻のDVDを港区図書館で借りて見た。港区図書館は6,700枚のDVDの蔵書があり、予約して借りられるのだ。

1巻が最も人気があるので、3−2−1という順番だが、ほぼ1年かけて全3巻を見終えた。

1巻に解説書がついていて、地図と年代表がある。本を理解する上で、以下のあらすじと若干重複する図があるが、こちらの方がわかりやすいので、紹介しておく。

ちなみにダイアモンド教授は日本に何度も来たことがあり、お母さんは日本語を勉強しているという。皇太子殿下にもお会いしたことがあるという。

次が本書の主題である農業と家畜の飼育の発祥地の地図だ。各大陸の文明発展の違いは「地理的要因」によるという、ダイアモンド教授の根拠となっている地図である。

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次が農耕や家畜の飼育の始まった時期だ。ダイアモンド博士の主張する「肥沃な三角地帯」で麦などの農耕と羊、山羊、豚、牛などの家畜の飼育が始まり、農耕しなくてよい人たちが金属器や陶器の技術開発に携わったり、軍人になったという説を裏付けるものだ。

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そしてその発展は、同じ緯度を横にヨーロッパやインド、中国に発展した。エジプトでは、ピラミッド建設をおこなっても労働者を食べさせることができるほど農耕が発達した。

ヨーロッパ人は肥沃な三日月地帯から来た小麦、牛、羊などを新大陸に持ち込み、新大陸を支配した。

次がこの本のテーマとなっている「銃・病原菌・鉄」によりわずか数百人のスペイン人が、数万人のインカやアステカの兵士達を破り、アステカ王国、インカ王国を滅亡させた当時の地図と年代表だ。

scanner373











scanner374











インカを滅ぼしたピサロも、アステカを滅ぼしたコルテスも緒戦は大勝利だったものの、時には敗戦を喫していることがわかる。

アマゾンの文化人類学書売り上げで、依然として10位内に入っている。本もいいが、ナショナルジェオグラフィック制作のDVDもいい。買うのは高いが、機会があれば、DVDも視聴することをおすすめする。


2011年11月23日初掲

銃・病原菌・鉄 上下巻セット銃・病原菌・鉄 上下巻セット
著者:ジャレド ダイアモンド
草思社(2010-12-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

中南米のアステカやインカ帝国はなぜ少数のスペイン人によって滅ぼされたのか、文明の発展や文化の伝播はどのような特長があるのかを解説した上下約700ページの大作。

この作品は1998年にピューリッツアー賞を受賞し、日本では2000年に翻訳が発売された。根強い人気があり、朝日新聞の「2000年〜2010年に出版された本」の第1位に選ばれている。

著者のジャレド・ダイアモンド博士は生物学の学者で、この本の他には「人間はどこまでチンパンジーか」などといった竹内久美子さんが得意の路線でも本を出している。

人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り人間はどこまでチンパンジーか?―人類進化の栄光と翳り
著者:ジャレド ダイアモンド
新曜社(1993-10-01)
販売元:Amazon.co.jp
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浮気人類進化論―きびしい社会といいかげんな社会 (文春文庫)浮気人類進化論―きびしい社会といいかげんな社会 (文春文庫)
著者:竹内 久美子
文藝春秋(1998-11)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

今回の研究を思い立ったきっかけは、研究のために長期滞在していたニューギニアで、マオリ人のヤリ(人名)から「欧米人は様々な物資を作り出して、ニューギニアに持ってきたが、ニューギニア人はそうした物資を作り出さなかった。その差はどこから生まれたのか」という質問だという。

たしかに新大陸民族が旧大陸民族や文化を滅ぼしたという例はない。それはなぜなのか。

一般的にはこの本のタイトルのように「銃・鉄」が旧大陸と新大陸の差を生み、旧大陸の「病原菌」が免疫のない新大陸民族を根絶やしにしたと言われているが、そもそもなぜそのような差がついて、新大陸の病原菌は旧大陸に蔓延しなかったのか。ヨーロッパ人が新大陸を征服したのは、人種や民族が優秀だったからではなく、「地理的要因」の差がこの差をもたらしたとダイアモンド博士は語る。


人類の誕生と拡散

人類は700万年前にアフリカで類人猿から枝別れして誕生し、400万年前に直立しはじめ、170万年前から直立歩行を始めている。そしてアフリカからユーラシア大陸各地、アメリカ大陸、オーストラリア、ニュージーランドに次の図のように拡散した。

人類の拡散





出典:本書上巻51ページ


農耕と家畜飼育が文明のカギ

各大陸に生きる住民は1万3千年前の最終氷河期が終わった頃までに発達の度合いは大差なく、すべて狩猟民族だった。8,500年前にメソポタミアで農耕が始まり、つづいて中国やインダスでも農耕と家畜の飼育が始まった。

ところがアメリカ大陸では農耕の始まりはこれから5〜6,000年遅れ、オーストラリアやニュージーランドのアボリジニは結局農耕を知らなかった。

飼育栽培化比較









出典:本書上巻143ページ

植物栽培と家畜飼育により自分で食物を生産できなければ、余剰食糧はできず、人口も増えない。コロンブス以前のアメリカ大陸の先住民人口は2,000万人と言われているのに対して、狩猟生活のオーストラリアのアボリジニは最大でも数十万人だったという。

農耕や家畜による大規模生産が階層化された社会の前提条件だ。食糧生産の余裕が出た社会は高度化して、文字を生み出し、職業軍人が生まれる。

小麦、大麦、米などの穀類の他、エンドウマメやレンズ豆の栽培も始まった。穀類とタンパク質の多いマメ類を組み合わせることで、必要な栄養素の揃ったバランスある食生活が可能となり、体格向上につながった。

ちょっと脱線するが、「主食をやめたら健康になる」という本が出ていることを、大学の先輩に教えて貰った。

主食をやめると健康になる ー 糖質制限食で体質が変わる!主食をやめると健康になる ー 糖質制限食で体質が変わる!
著者:江部 康二
ダイヤモンド社(2011-11-11)
販売元:Amazon.co.jp
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著者の京都・高雄病院長・江部康二さんはブログで次のように書いている

「糖質制限食は「変わった食事」というイメージを持たれがちですが、実は人類本来の自然な食事です。人類が誕生したのが約700万年前で、農耕が始まるまでは狩猟・採集を生業とし、すべての人類が糖質制限食を実践していました。農耕開始後1万年間だけが、主食が穀物(糖質)へと変化しました。

すなわち穀物を主食としたのは、人類の歴史のなかでわずか700分の1の期間にすぎないのです。糖質制限食と高糖質食、どちらが人類にとって自然な食事なのかは言うまでもありません。糖質制限食はいわば人類の健康食なので、糖尿病や肥満・メタボに限らず、さまざまな生活習慣病が改善するのも当たり前といえば当たり前なのです。」


出典:ドクター江部の糖尿病徒然日記

本のあとがきに、「もう一つ忘れてはならないことがあります。それは農耕以前の人類においては飢餓は日常的な出来事であり、体脂肪はそれに対する唯一のセーフティーネットであったということです。」と書いてあるので、江部さんも十分分かった上で書いているのだろうが、原始人は健康なのではない、常に餓死と隣り合わせの栄養失調だったのだ。寿命も現代人に比べてはるかに短い。たとえメタボであっても現代人の寿命のほうが原始人に比べてはるかに長いのだ。

狩猟しか知らない原始人は毎日食うや食わずで、それゆえ人口が増えるどころではなかった。だから農耕を知らないオーストラリアのアボリジニは、最大でせいぜい数十万人しか生存できなかったのだ。

江部さんの本はメタボや糖尿病の患者を主に対象としているので、上記の部分も糖尿病の患者に主食なしのダイエットを続けさせるための意図的な説明なのだろうが、文字通り解釈して原始人の方が健康だったというような書評があるので、注意が必要だ。

閑話休題。


病原菌

旧大陸を起源とする天然痘、麻疹、インフルエンザ、チフス、ジフテリア、マラリアなどの病原菌がヨーロッパ人によって新大陸にもたらされ、推定で2,000万人いた先住民の95%が病死してしまった。

スペイン人のエルナン・デソトが遠征した16世紀前半にはミシシッピ河下流に多くのインディアンの大集落があったが、1600年頃までにほとんど先住民の大集落はなくなったという。

旧大陸からの病原菌が蔓延して、抗体のないアメリカ先住民を根絶やしにしてしまったのだ。

逆に新大陸から旧大陸にもたらされて蔓延した病原菌はない。梅毒が唯一の例外である可能性もあるが、梅毒の起源については依然として議論されている。

なぜ旧大陸の人間がこれらの病原菌に抵抗力があったかについては、家畜と一緒に生活し、家畜の伝染病に人間も罹ることにより免疫がつくられ、それゆえ抵抗力があったと推論している。

人類の進出は東西は早く、南北は時間がかかるというのも重要な論点だ。上記の「人類の拡散」の図にあるように、アメリカ大陸に人類が進出したのは1万2千年前、そしてオーストラリアに進出したのは4万年前だ。ユーラシア大陸全域には50万年前に進出していたことに比べて遅いことがわかる。

文明の伝播も南北は時間がかかる。たとえばユーラシア大陸ではフェニキア文字や中国の甲骨文字が周辺地域に広まっていったが、北アメリカのアステカでは文字を使っていたが、同時期に南アメリカにあるインカ帝国インカ帝国では文字はなかったというような例が挙げられている。

ちなみに筆者は30年ほど前に訪問したペルーのリマの天野博物館で、インカの特徴ある土器や縄文字を見た。インカには縄文字はあったものの、これは生産統計などを記録するためのものであり、複雑な内容を伝えることはできなかったという。

Quipu













出典:Wikipedia

その他、食料生産は文字の誕生の必要条件とか、マダガスカル島の先住民の言語はボルネオの先住民に近いなど参考になる情報が多い。

鋳鉄、磁針、火薬、製紙技術、印刷術で世界をリードしていた中国の文化の先端性が失われたのは、宮廷内の権力闘争の結果、明の皇帝の鶴の一声で外洋航海が禁止されたからだ。

中国では15世紀初頭には鄭和の南海遠征で船長120メートルもの大型船で外洋航海していて、アフリカまで到達していたが、その後は中国が他の地域に進出することはなかった。

トウモロコシが作付け面積当たりの収穫量は最も多い作物だが、トウモロコシはアメリカ大陸が起源で、野生種祖先はテオシントと呼ばれる雑草だと言われていることをこの本で知った。

テオシント






出典:筑波実験植物園ホームページ


700ページもの大作で、最初はややとっつきにくいが、読み始めると興味深く読める。大変参考になるダイアモンド博士の研究成果である。


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2012年07月06日

内定とれない東大生 昔も今も就活の本質は同じだと思うけど…

内定とれない東大生 〜「新」学歴社会の就活ぶっちゃけ話 (扶桑社新書)内定とれない東大生 〜「新」学歴社会の就活ぶっちゃけ話 (扶桑社新書)
著者:東大就職研究所
扶桑社(2012-03-01)
販売元:Amazon.co.jp
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刺激的な題なので読んでみた。町田市立図書館にリクエストしたら、東京都立図書館の蔵書をまわしてくれた。題が題だけに、東大生や東大生の知人がいる人しか読まないだろうから、蔵書数100万冊を誇る町田市立図書館でも、この本は購入するつもりが無いようだ。

「東大就職研究所」まとめということになっているが、実際は内定が決まった現役東大生4人がアンケートなどの調査を担当して、東大出身ながら、就活で2勝58敗だったという教養学部出身の扶桑社の女性編集者と一緒にとりまとめたものだ。

このブログで以前、長男の東大入学式のことを書いたが、早いもので、その長男は今年就職した。多くの企業にES(エントリーシート)を送り、3年生の冬からは、ほとんど毎日就活していて、数多くの会社訪問やOB訪問をやっていた。

長男からは、運動部の先輩でも内定が取れずに留年した人がいると聞いていたので、正直半信半疑だったが、以前このブログで紹介した海老原嗣生(つぐお)さんの「就職に強い大学・学部」と、この本を読むことで大体全容がつかめたような気がする。

偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)偏差値・知名度ではわからない 就職に強い大学・学部 (朝日新書)
著者:海老原 嗣生
朝日新聞出版(2012-03-13)
販売元:Amazon.co.jp
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この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、ここをクリックして目次を見てほしい。

構成は次の通りだ。

第1章 東大最強「新」学歴社会の真実

第2章 東大卒「ない内定」その理由
    ここで5件の内定とれない東大生の例が紹介されている
    学部・性別は、法学部男性、文学部の男性3名、女性1名だ。

第3章 大手人気企業「内定長者」の素顔
    ここでは5件の内定長者の例が紹介されている。
    法学部の女性一人を除いて、全員男性、学部は文系学部、法学部、経済学部、文学部だ。

第4章 東大トップ層「日系企業離れ」の本音
    ここでは9件の例が紹介されている。
    経済学部の女性一人を除いて、全員男性、学部は法学部、経済学部、工学部、教養学部、大学院などだ

第5章 最強「東大女子」の時代はまだか
    ここでは3例だ。経済学部1名、理系学部2名だ。

終章  提言「就活」を再定義する


この本では、いろいろな事例調査や、採用コンサル会社HRプロの寺澤社長などから得られた結果を紹介しているが、ひと言でいうと次の通りだ。

★企業は公(おおやけ)には認めないが、実際には大学によって大体の採用枠を決めている。東大生はほかの大学に比べて優遇されていることは間違いないが、東大枠が決まっているので、東大生同士の争いになって、結局目立たない・パッとしない・志望理由のはっきりしないヤツは競争に負ける。

★東大でも就職に強い学部があり、東大生でも女子にはハンディキャップがある。

TBSの「ドラゴン桜」の公式サイトに「桜木格言」として収録されているものの一つに次のものがある。

「いいか学校ってのはな、いうなりゃキップ売り場だ。(中略)俺の売っているのは、東大行きという極上のプラチナチケットだ!これを買えば旅の始めは大変だが、後には見事な絶景と快適な列車が待っている。(中略)買わなきゃ一生ドンコウで、断崖絶壁を走るんだ。答えは買うに決まっている。」

東大入学は一般的には「プラチナチケット」と言われているが、ミクロで見ると上記のような事実がある。もっとも、これは大なり小なり昔からあったことで、今に始まったわけではない。

東大に関係のない人だと、「東大生のESは見ない」、「マイページは人事担当者が作成」など傲慢に思えるような話があるので、アマゾンのカスタマーレビューはボロボロだが、参考になる話もある。いくつか簡単に紹介しておく。

★就職サイト経由のエントリーが一般化するにつれ、企業はES攻めの自衛策として、応募条件に事業計画書の提出とか(CCC)を追加して、ESを難問化している。

たとえば、「50歳になったときホリプロで何をしていたいか」、「もし3000万円あったら、あなたはどのように使いますか(博報堂)」、「就活について考えていることを、川柳にしてください。(旭化成)」、「鳩山由紀夫、石川遼、東野圭吾にそれぞれ薦める本は何ですか。理由を書いてください(各一行)(講談社)」などだ。

★ネット企業Rに内定した法学部の女性の話。大学3年の夏から就活生向けセミナーを開いている主なベンチャー企業ーライブレボリューションスローガンジョブウェブなどのセミナーに参加し、「ロジカルシンキングとは」などを学んだ。

★同じ女性の話。就活は準備がすべて。練習以上のものは出ません。ぶっつけ本番では失敗します。友達に話している姿を動画に撮ってもらって、フィードバックをお願いしたり、「自己PRしてください」など必ず聞かれることは、練習しないのは怠慢。今の就活で問われているのは、そういうことだと思います。

さすが「内定長者」らしく、理にかなった実践的な考え方だ。

★就活を勝ち抜くコミュニケーション能力は次の二つ。
・論理的に話す力
・非言語コミュニケーション(ぼそぼそと話す、自信なさげな表情など) このブログでも紹介した「人は見た目が9割」という本を紹介している。

人は見た目が9割 (新潮新書)人は見た目が9割 (新潮新書)
著者:竹内 一郎
新潮社(2005-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

★東大就職研究所が、最後にたどりついたキーワードは「謙虚さ」だという。東大に入っても好奇心を持ち続け、果敢にチャレンジし続ける姿勢が評価されているのだと。その通りだと思う。個人もPDCAをまわして継続的に改善(向上)するのだ。

★東大法学部や経済学部の学生のなかでも外資系企業の存在感は非常に高く、かつての司法試験、公務員試験を目指したトップレベルの学生の就職先となっている。外資系希望者の就活サイトは、アルファリーダーズインフィニティ・キャンパスだという。これらのサイトは存在自体が知られておらず、偏差値ピラミッドでいけば、早慶まで?だという。

★東大と提携している中国トップの精華大学に1年間交換留学に行った学生の話。僕は最初は「東大の学生だ」と自己紹介していたが、途中から東大というのをやめた。自分はTOEFLで85点で、英語はまあまあできるほうだと思っていたが、中国の学生はTOEFL110点でまあまあという感じ。恥ずかしくて東大とは言えないと。英語ができる中国人学生に聞いてみたら、高校の授業はすべて英語だったと。日本の教育はこのままではマズいと思った。

★外資系企業では自分の意見をきちんと伝えようとするヤツが勝つ。もっとも外資系企業と日系企業両方から内定もらっている人は少ない。その意味では、外資系企業内定者も「内定とれない東大生」である。日系企業は、昔と変わらず、「従順で、何かを命じれば期待通りにはこなす」程度の人間が欲しいだけではないのかというのが、東大就職研究所の本音(逆襲)だと。

★最後に東大教養学部出身で就活2勝58敗だという扶桑社の女性編集者が、自分の就活を振り返って語っている話が、反面教師で参考になる。この女性は:
・大学3年の10月に片っ端から就職サイトに登録した。
・多くの東大生が行かないと口をそろえる大規模合同会社説明会に足を運んだ。
・東大生限定の説明会には行かなかった。
・マニュアル本に則って自己分析をして、その結果からメーカー、出版のキーワードに引っかかった企業に片っ端からESを送った。
・面接では「こう見えても東大生なんです」と言わんばかりの道化を演じていた。

つまり「パターン化された就活」に疑いもはさまず突っ走っていたのだという。だから採用側もマニュアル通りのいわば思考停止の東大生に”NO”をつきつけたのだろうと自己分析している。


就職サイトができて、一度つくったESを電子的に何社にでも送れるようになったという差はあるが、就活の本質は昔も今も変わらないと思う。そんなことを感じる本である。


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2012年07月04日

刑務所なう。 ホリエモンの獄中記半年分

刑務所なう。刑務所なう。
著者:堀江 貴文
文藝春秋(2012-03-15)
販売元:Amazon.co.jp
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ホリエモンの獄中日記。

このブログの初期ではホリエモンの本を何冊か紹介したが、その後ライブドア事件と有罪判決が起こり、ホリエモンは忘れ去られつつあった。このブログでもホリエモンカテゴリーは整理しようかと思っていたところだ。

2011年4月にホリエモンの実刑(懲役2年6ヶ月)が最高裁で確定し、2011年6月20日に東京拘置所に収監され、6月27日に長野刑務所(A級犯:初犯から懲役8年までの囚人)に移送された。

この本では6月20日から12月31日までの毎日3食の食事献立と、毎日の生活、新聞、ラジオ、映画、本などの感想を書いている。

ホリエモンは、獄中からもブログ(六本木で働いていた元社長のブログ)やツイッターメルマガを書いており、この本はそれらの投稿や獄中記を集めたものだ。

同じ東京拘置所経験者の佐藤優さんは「週刊東洋経済」の「知の技法・出世の作法」という連載で、ホリエモンのことを”自らの未来の夢を描き、それを実現するために実力をつけて、努力によって夢を実現するタイプの人=「工作人」の典型”と呼んでいるが、その意味ではこの獄中からの情報発信もユニークだ。

ホリエモンの住んでいる部屋の様子は、この本の表紙の反対側に載っている。

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出典:本書表表紙見返し

上の絵にはテレビがあるが、実際には長野刑務所に移ってから、しばらくしてテレビが入ったのだという。東京拘置所の畳はプラスティックの人造畳だが、長野刑務所の畳は天然畳で、気分が全然違うという。

普通は雑居房より、独居房の方が良いのではないかと思うが、ホリエモンは最初のうちは早く他人と話せる雑居房に移りたいと、一時はうつ状態のようになったという。

しかしこの本の最後の12月末になったら、最初に言われた「共同室より単独室の方が良いですよ。いずれ慣れますから。」という意味がわかってきたという。

佐藤優さんの「国家の罠」には、独居房にいてうつ状態になったという話はなかった。

国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて (新潮文庫)
著者:佐藤 優
新潮社(2007-10)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

ホリエモンの精神状態がよくわからないところだ。

この本のところどころにホリエモンの刑務所生活を示すこんなマンガが載っている。

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出典:本書222〜223ページ

長野刑務所は全国でもトップ3に入るメシのうまい刑務所だそうだ。ただ独居房には暖房がないので、住環境としては北海道の刑務所の方が、冬は暖房があるので、快適だろうということだ。

毎日400円程度で、よくこれだけ工夫して献立を作っていると思わせる苦心の献立が毎日並び、元日などは記念食のようなものもでる。

このあたりは東京拘置所での食生活をレポートしていた佐藤優さんの本に通じるところがある。

結局ほぼ半年で体重は95.7KGから72.4KGに23キロも減り、だいぶスマートになったはずだ。

シャバでは、贅沢な暮らしをしてたぶん毎日飲み歩いていたホリエモンなので、禁酒と、いわばプロテインダイエット(おかずは食べるが麦飯の量は減らす)、適度な運動を続けると、これだけ体重が落ちるという実験レポートのようだ。

食べたいと思っていた念願のカップ麺(カップそば)が12月31日に年越しそばとして出てきて、これを食べたら胃が小さくなっていて全部食べられなかった話がでてくる。麦飯の量を減らして胃を小さくしたのが、ダイエット成功の最大の要因だと思う。

全部で500ページほどある本の中身については、詳しく紹介しない。

ところどころ出てくる、AKBのプロデューサーの秋元康さんが大王製紙の井川会長と同じくらいカジノにハマっているとか、鈴木亜美がフライデーされた相手も知っているとか、ネタバラシのたぐいの話や、宇宙開発が半分くらいの「時事ネタ評論」を除いては、あまり印象に残る話はない。

さすがに刑務所に収監されていれば、当然のことながら情報量は激減する。やむを得ないところだろう。

本屋でパラパラ立ち読みするか、図書館で借りて読むことをおすすめする。


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2012年07月02日

ふしぎなキリスト教 一神教って全然違う

ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)ふしぎなキリスト教 (講談社現代新書)
著者:橋爪 大三郎
講談社(2011-05-18)
販売元:Amazon.co.jp
クチコミを見る

東京工業大学教授の橋爪大三郎さんと、元京都大学教授の大澤真幸(まさち)さんという二人の社会学者が、キリスト教とイエス・キリストについてQ&A方式で解説した本。

まずはユダヤ教、キリスト教の違いだ。

答えはほとんど同じだが、唯一の違いはイエス・キリストがいることだ。

キリスト教はいわば2段ロケットのようにユダヤ教をベースにし、それに使徒がまとめたイエス・キリストの言葉を加えている。ユダヤ教の聖典である旧約聖書がキリスト教にもそのまま取り入れられている。

ユダヤ教もキリスト教も神は「ヤハウェ(エホバ)」で、アッラーも同一の神である。神と人間の間をつなぐのが預言者だ。

神は自分に似せて人間をつくったが、神は人間には似ていない。いわば3次元と4次元の差のようなものだという。偶像崇拝はキリスト教、ユダヤ教、イスラム教では禁じられている。偶像は人間のつくったもので、神がつくったものではないからだ。

神は世界をつくったので、自然法則も一時停止できる。これが奇跡である。一神教であれば、科学と奇跡とは両立する。

神の作った自然の法則を理解するのは科学で、同じく神がつくった自然法則の例外が奇跡だからだ。つまり科学は奇跡を解明する必要はないのだ。

イエス・キリストは実在の人物か

イエスを処刑したローマの記録を学者がいろいろ調べたが、イエス・キリストの記録は見つからなかったという。イエスの記録は、聖書の福音書に記されているのみだが、イエスの言葉は比喩が豊富で、生き生きとして一人の人間としての一貫性が感じられるので、イエスは実在したと考えられている。

新約聖書は4つの福音書とパウロの書簡より構成されている。4つの福音書ではマルコの福音書が最も古い。マタイとルカの福音書はマルコの福音書と今は失われた「Q資料」を参照している。ヨハネの福音書は、ほかの3つとは内容が相当異なる。


死刑となったイエスの罪は?

イエスはモーゼの律法に違反した重大刑事犯なので、議会が逮捕して裁判にかけたところ、イエスが神を冒涜する発言をしたので死刑が宣告された。ローマ総督ピラトにも「これは本当に死刑でよいのか?」という迷いがあったという。

イエスは最後の晩餐で、12人の使徒に対して、「お前たちの一人が私を裏切る」と予言しているが。最近発見された「ユダの福音書」ではキリストは「ユダよ。お前は弟子たちの中で一番信頼できる。私を、銀貨で売り渡してほしい、これを頼めるのはお前だけだ」といわれ、ユダはその通り実行したことになっているという。

これについては、ナショナル・ジェオグラフィックで「ユダの福音書を追え」という本を出しており、「ユダとは誰か」という本もあるので、今度読んでみる。

ユダの福音書を追えユダの福音書を追え
著者:ハーバート・クロスニー
日経ナショナル ジオグラフィック社/日経BP出版センター(2006-04-29)
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ユダとは誰か―原始キリスト教と『ユダの福音書』の中のユダユダとは誰か―原始キリスト教と『ユダの福音書』の中のユダ
著者:荒井 献
岩波書店(2007-05-30)
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ペテロ以来代々法王の座を受け継いでいるバチカンは、すぐに声明を出したが、日本では全くニュースにならなかったという。

パウロはイエスの12人の使徒ではなく、生前のイエスには会ったこともない。しかし、あるときイエス・キリストに出会い、いったん目が見えなくなるが、ほどなく視力が回復し、それからの人生は福音の旅をした。


「聖霊」とは何かも面白い

キリスト教の教義は三位一体と言われる。三位とは神。キリスト、そして聖霊である。イエスは昇天し、次に降りてくるのは終末の時である。それまでの神と人間の連絡手段が聖霊だ。

聖霊が宿ると、人は外国語を話しだしたり、重要なことも教えてくれる。パウロに宿って、聖書に収録されるパウロの手紙を書かせたのも聖霊である。381年の第一回公会議でも聖霊が働いて、三位一体説を採用するという結論が出された。

言語も面白い。

イエスはヘブライ語を話しており、ギリシャ語はできなかった。しかし新約聖書はすべてギリシャ語である。ところがカトリック教会の元締めである西方ローマ教会はラテン語に聖書を訳し、それからはヨーロッパの聖書研究はすべてラテン語で行われることになった。

宗教改革は、神と人間の関係を正すこと。聖書は認めるが、教会や聖職者は認めない。聖書中心主義である。すこしでも考え方が違っていると、プロテスタントは別の宗派となり、多くの宗派が生まれ、時々集散・離合があった。

プロテスタントと資本主義の精神を論じたのがマックス・ウェーバーの有名な著書である。

プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神 (岩波文庫)
著者:マックス ヴェーバー
岩波書店(1989-01-17)
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豆知識としては、イスラム教では宗教音楽が禁止されているというもの初めて知った。

手軽に読めてキリスト教の基本を知るうえで役に立つ本である。


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Posted by yaori at 23:11Comments(1)TrackBack(0)