2013年12月28日

まほろ駅前狂騒曲 まほろ駅前多田便利軒シリーズ最新作

まほろ駅前狂騒曲
三浦 しをん
文藝春秋
2013-10-30


三浦しをんさんの、まほろ駅前多田便利軒シリーズの最新作。筆者の住んでいる町田市をモデルにしている。三浦しをんさんもかつて町田に住んで、書店でアルバイトをしていたようだ。

このシリーズは映画化され、多田便利軒のオーナーの多田に瑛太、いそうろう兼助手の行天に松田龍平という若手人気俳優が出演している。



第2作はテレビドラマになっている。




町田市は町おこしの一環で、映画が公開されるタイミングで通りの名前を「まほろ大通り」などに変えるなど、この小説を応援している。町田市図書館でも「まほろ駅前…」シリーズは大量に蔵書している。

この本も10月末に発売されたばかりの本だが、町田図書館で28冊も蔵書があるので、早めに予約したら12月にはもう読めた。

登場人物のイラストが楽しい。

scanner591
































出典:本書イラスト

いつも通り小説のあらすじは詳しく紹介しない。「まほろ」駅前にある便利屋ー多田便利軒をめぐる出来事だ。

多田は幼い息子の死をきっかけに、妻と離婚して今の便利屋稼業を始めた。

そこに転がりこんできたのが高校の同級生の行天だ。行天は女性同士のカップルに精子を提供して、子供をつくるのを手伝ったという過去がある。

この本で、行天は「怖いものがあるのか」と聞かれて、「あるよ。記憶」と答える。

なぜ記憶が怖いんだ?

行天の両親のことや、幼い頃のことが今回初めて明らかになる。

無農薬野菜をまほろ市各地で生産し、販売しているHHFA(Home and Healthy Food Association)という集団が今回登場する。

そのリーダーが行天を知っていた。なぜだ?

行天とこの集団との接点は?

多田のロマンスや、行天の精子で人工授精して誕生した行天の娘・はるもはじめて登場する。

横中バス(神奈中バスのパロディ)の間引き運転有無の調査を多田に依頼するおじいさんや、息子に依頼されて息子を装って多田が見舞いに行く市民病院に入院している認知症のおばあさんなど、いわばレギュラー出演者も出てくる。(上のイラストから、それらしい人物がわかると思う)

470ページ余りの作品だが、一気に読んでしまう。まさにエンターテインメント小説である。


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2013年12月26日

実録 ドイツで決闘した日本人 いまだに決闘しているとは!



会社の読書家の友人から教えてもらった。

ドイツ留学時代に学生結社「コーラ・レノ・ニカーリア」のメンバーとなり、ドイツで2回決闘した経験のある京都外国語大学の 菅野瑞治也(みちなり)教授の本。

表紙の写真にある黒マスクをしているのが決闘者で、刀を持っているが白っぽい防着を着ているのがセコンドだ。

決闘の様子は、ドイツ語の"Mensur"のページに詳しいので参照してほしい

菅野教授は3年弱のドイツマンハイム大学留学中に、友人から学生結社「コーラ・レノ・ニカーリア」の会員になるように誘われ、入会した。

ドイツの学生結社は、会員の精神的成長を目的に、メンズーア(決闘)を義務としているので、菅野さんも入会してから剣術の練習をやり、2回の決闘に臨んだ。

決闘といっても、個人間の問題を解決することが目的ではなく、結社会員の精神鍛錬を目的としているので、使う剣は先端が丸くなったもので、突きは禁止なので、死者が出ることはない。しかし、先端から10〜15センチは真剣で、当たるともちろんケガする。

団体戦もあり、真剣勝負のスポーツのような感じだ。

目、鼻、首、そして胴体や腕はワイヤーでできた防具をつけるが、目と鼻を除いた顔と頭は無防備だ。

Menzura-Korporacja_Sarmatia_2004









































出典:Wikipedia

だから決闘ではお互いに顔や頭にキズを受ける。

医者が決闘につきそうので、その場でキズの手当、縫合をしてくれるが、無麻酔なので、その痛みは尋常ではないという。

菅野さんも2回の決闘で顔と頭に刀キズを負っている。

いまだに、こんな決闘などが行われているとは信じがたいが、ドイツのビスマルク、ゲーテ、ニーチェ、マルクスなどもすべて決闘経験者なのだという。

決闘を経験することで、はじめてコーラ・レノ・ニカーリアの会員になれるという。決闘を会員資格として要求している学生結社は他にもあるという。

この本ではドイツでの学生結社での生活や、決闘の様子を詳しく紹介していて興味深い。こんな世界がまだあったのだと思う。


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2013年12月23日

からのゆりかご おどろくべき英国の強制児童移民の実態

からのゆりかご―大英帝国の迷い子たち
マーガレット ハンフリーズ
近代文藝社
2012-02-10


英国が英連邦各国の白人優越主義を守るため、私生児や孤児など恵まれない児童を1900年頃から1980年頃まで、オーストラリア、ニュージーランド、南アフリカ、ジンバブエなどに送り出した児童移民計画を明るみに出した本。

"Oranges and Sunshine"という題で映画化もされている。



オレンジと太陽 [DVD]
エミリー・ワトソン
角川書店
2013-03-29



著者の英国ニッティンガム在住のソシアルワーカーのマーガレット・ハンフリーズさんは、仕事の延長で養子問題を調べるプロジェクトを1984年に立ち上げた。

そして2年後の1986年に、ハンフリーズさんは彼女の養子問題研究を知ったオーストラリアのアデレード在住の女性から手紙を受け取る。

彼女は早くして両親を亡くして孤児院に入り、4歳でオーストラリアに移民してとして送られてきたのだという。

ハンフリーズさんは、4歳の子供を移民に出すなど、ありえないと思ったが、調べてみるとこの女性以外にも子供の時にオーストラリアに一人で移住して、自分の出生証明書も持っていないという人が多くいることがわかる。

これらの児童移民の英国での親族、ルーツ探しに協力しながら、ハンフリーズさんは児童移民は1900年ころからキリスト教の福祉施設やクリスチャン・ブラザースなどの修道士などが、英国の身寄りのない、あるいは親が何らかの事情で子供を育てられない子供を英国連邦の各国に児童移民として送り込んでいることを知る。

判断力のない子供を移民に送り込むなんてありえないと、ハンフリーズさんは考えたが、調べていくとその数は80年余りで10万人にも上ることがわかった。

特に太平洋戦争が始まった前後は、日本軍がシンガポール、インドネシアと侵攻してきて、オーストラリアまで迫る勢いだったので、オーストラリア軍を増強するために、数年すれば兵士になれる10代前半の子供を積極的に受けいれていたことがわかった。

英国もこれらの英連邦諸国の要請にこたえ、児童移民を組織的に送っていたのだ。

ハンフリーズさんの活動は、BBCでドキュメンタリー化され、オーストラリアでも番組が作られた。

そして映画化された。



中には、親には養子に出したと偽って、子供を英連邦諸国に送り込んだケースもあるという。

豪州政府、英国政府は事実を認め、2009年〜2010年に首相が謝罪している。

この本では、ハンフリーズさんが何度もオーストラリアや英連邦諸国を訪問して、元児童移民の人たちの親族や親、故郷のことなどを、移民の記録や孤児院の記録など、多くの記録を探しながらたどっていく様子がノンフィクションとして紹介されている。

子供を勝手に移民させてしまうという、あり得ない話だが、実話である。

冒頭の表紙の写真だけ見ると、子供たちはちゃんとスーツを着て、良い待遇でオーストラリアに着いた様に見えるが、実はスーツは写真を撮るためだけに着せられたのだと元児童移民は語っている。

ハンフリーズさんの活動を好ましく思わない何者かに、ハンフリーズさんは狙われる危険を冒して、元児童移民に尽くしていたことが紹介されている。

感動の実話である。


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2013年12月16日

トコトンやさしい天然ガスの本 基礎知識を得るのに最適の本



図書館の新刊書コーナーに置いてあったので読んでみた。2013年9月25日に出たばかりの本だ。

近年「シェールガス革命」と言われている。世界最大の天然ガス消費国の米国は、5年ほど前は、いずれ天然ガス輸入国になるとみられて、液化天然ガスを輸入するターミナル建設のプロジェクトまであったほどだ。

ところが、水平掘削技術と水圧破砕技術の発達により、シェール(頁岩=けつがん。ページのように薄く割れる性質を持つ堆積岩)層からのシェールガス開発が可能になってくると、事態は一変した。

普通の天然ガスとシェールガスの賦存状況の違いは次の図がわかりやすい。

GasDepositDiagram



















出典:Wikipedia

ガスが岩盤に貯まったところに、上から垂直にパイプを下して掘削するのが普通の天然ガス。これは見るからに簡単だ。

それに対してシェールガスは、上からのパイプをシェール層に沿って、水平方向にも展開し、高圧の水を吹き込んでシェール層に閉じ込められていたガスを回収する高度な採掘方法だ。

現在では深さ2,000メートルほどのシェール層に、。水平に3,000メートルほどのガス井戸が掘られている。そしてこの水平部で水圧破砕を行うのだ。

これにより米国の天然ガス生産は飛躍的に増加し、数年後は米国はシェールガス輸出国になることが確実とみられている。

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出典:本書132−133ページ

しかし、シェールガス生産の問題点は、まさに上記のグラフで明らかになっている。

最初こそ、猛烈な勢いでガスが噴出するが、すぐに勢いが弱まり、なんと1年目の減衰率は82%だ。

10年間でガス井の可採埋蔵量の80%を回収する場合、1年目でほぼ半分のガスを回収し、あとの9年で残りの半分をチマチマ時間をかけて回収することになる。

つまり、生産量のコントロールが難しいのだ。多くの企業がシェールガス開発に走れば、一挙にガスが供給過剰となって、ガスの市場価格が暴落する。

一方、1年目の減衰が激しいので、ガス開発企業はガス供給量を保つためには、継続的に掘削を続けざるを得ない。

ガス田を当てれば、あとは自噴するので、寝ていても儲かるという従来型の天然ガスのビジネスモデルとは違うのだ。

こんなことがわかってきたので、米国のシェールガスの技術的回収可能量は2011年には862Tcf(兆cubic feet)とされていたが、2013年に、ほぼ半分の481Tcfに見直しされている。マセーラスガス田の回収可能量の下方修正が大きな原因だとされている。

大変参考になった。

そのほかにも、石炭からとれるメタンガス(Coal Bed Methane)、日本の千葉県などで生産されている水溶性天然ガスとヨウ素資源(日本は世界第2位のヨウ素生産国だ)、2013年3月に行われたメタンハイドレートの産出テスト、バイオマスによるメタンガスの製造技術など、興味深い話題をわかりやすく取り上げている。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応しているので、まずはここをクリックして目次と出だしの8章までの部分を見て欲しい。出だしに「天然ガス」とはどいうものか紹介されていて、これだけでも勉強になると思う。

天然ガスの基礎知識を得るには最適の本である。


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