2014年02月13日

知らないと恥をかく世界の大問題 4 池上彰さんのわかりやすい解説



わかりやすい解説で定評がある池上彰さんの世界情勢解説の最新版。

このブログでも紹介した1は2009年に発刊され、今回紹介する4は2013年5月の発刊だ。

知らないと恥をかく世界の大問題 (角川SSC新書)
池上 彰
角川SSコミュニケーションズ
2009-11


このシリーズはすべて読んでいる。毎回参考になることが満載で、大変役に立つ。まずは、ここをクリックしてアマゾンのなか見!検索で目次と最初のページを見てほしい。最初のページに載っている世界地図とその地域で起こっている問題の一覧もよくまとまっていて大変参考になる。

ちょうど前回ブログで紹介した「中国はもう終わっている」を読んだ後なので、中国関係の情報も参考になった。

中国の汚職はケタが違う。逮捕された薄煕来の蓄財は5,000億円近いと言われ、清廉といわれていた温家宝もニューヨークタイムズが、親族に2,150億円もの蓄財があると報じているという。

もちろん薄煕来も習近平も子供を米国に留学させている。ほかの多くの共産党の幹部も同様だ。

中国では腐敗した官僚のことを、「裸官」というそうだ。不正な口利きで蓄財し、子供を海外に留学させ、得たお金はマネーロンダリングで、留学先の国に送金する。万一に備えて家族や資産を海外に送り出し、自分だけが中国にハダカでとどまっているので、「裸官」というのだと。

これでは国のトップがこれでは、中国国民が不満を持つのは当たり前であると池上さんは語る。

中国では経済成長に陰りがみられ、「保八」が「破八」になっている。中国では地方政府の役人が、勝手に土地利用権を売って利益を上げている。これが汚職とバブルを引き起こしており、以前から不動産バブルが崩壊すると言われている。

この本ではゴーストタウンとなっている新築高層マンション群の写真を紹介している。

尖閣海域で中国の監視船の領海侵犯が昨年から頻発している。中国の実効支配のやり方は次のパターンなのだと。

1.領有権を主張する
2.漁民を送り込む
3.漁船団・監視船を送り込む
4.漁民保護の名目で海軍を投入する
5.上陸し、施設を建設する

これが南沙諸島、スカボロー礁等を中国が実効支配したやり方だ。

ベトナム軍が実効支配していたスプラトリー群島を1988年に中国軍海兵隊が攻撃したビデオがYouTubeに公開されている。ベトナム軍の輸送船を中国軍の駆逐艦が攻撃するシーンが紹介されている。



日米安保条約があるから中国は手を出せないだけで、米軍の後ろ盾がなかったら、間違いなく中国は尖閣諸島に上記のステップでアプローチするだろう。

もっとも日本側でも尖閣については領土問題は存在しないと公式発言しているが、実態として棚上げとしてきた。その証拠に、日本人の尖閣上陸は許されていない。また尖閣周辺の天然ガス開発でも、日本企業の採掘申し入れを日本政府は認めてきていない。

歴代首相は、「棚上げと向こうが言ったのだから、相手を刺激するようなことはやめよう」とやってきたのだと。

韓国の現代自動車の燃費虚偽表示問題。米国で人気の韓国車「エラントラ」は日本車より燃費がいい(40マイル/ガロン)という触れ込みだったが、アメリカの消費者団体が調査したところ、実際には25マイル/ガロンだった。

燃費虚偽表示問題は2013年末に和解が成立したが、韓国車のブランドイメージ毀損は免れない

韓国はアベノミクスを批判しているが、円安・ウォン高で韓国製品の競争力が落ちていることのあせりがあったのかもしれない。

2012年12月の総選挙で自民党は大勝したものと思っていたが、実は3年前に自民党が負けた時よりも得票数は少なかったのだと。2009年が1,881万票で、2012年が1,662万票。実に219万票も減っている。

国民は決して自民党を勝たせたわけではないのだと。民主党に愛想をつかせ、「支持する政党がない」として棄権してしまった人も多かった。

アベノミクスはマスコミの造語で、レーガン大統領の「リーガノミクス」に由来するという。

レーガン大統領の経済政策は、当時の大統領予備選の対立候補だったブッシュ父から「ブードゥーエコノミー」と呼ばれたほど、経済学的には支持が少ない大胆な政策だった。

安倍首相の経済政策もどうなんだろうと、マスコミが疑問を持って名付けたのが「アベノミクス」なのだと。

その他の話題も大変参考になった。簡単に読めるので、一読をおすすめする。


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2014年02月09日

中国はもう終わっている 二人の帰化日本人の対談



中国からの帰化日本人の石平さんと、台湾からの帰化日本人の黄文雄さんの対談。

この本はアマゾンの「なか見、検索!」に対応していないので、ちょっと長くなるが、”なんちゃってなか見、検索!”で目次を紹介しておく。

第1章 中国経済の崩壊でこれから何が起こるのか
・中国の株価下落でなぜ世界が大騒ぎしたのか
・いまごろリーマン・ショックのつけが表面に
・中国でシャドーバンキングはなぜ生まれたのか
・中国の不良債権は300兆円
・地方政府の崩壊が秒読み
・ますます信用できなくなっている中国の統計
・続々と撤退する外国資本と大量失業者の発生
・中国社会を崩壊させる2つのグループ

第2章 習近平体制は間もなく破綻する
・身内を攻撃する習近平
・習近平と江沢民派との闘いが始まった
・習近平は「大政奉還」を狙っている
・毛沢東路線に回帰する習近平
・習近平が煽るウルトラ・ナショナリズム
・憲政をめぐって分裂する中国
・中国で民主化は可能なのか
・李克強は習近平に取って代わるか
・胡錦濤と習近平の「最終戦争」

第3章 日中はこうして激突する
・アベノミクスを執拗に攻撃する中国
・中国とともに沈没する韓国
・オバマに「宿題」を突きつけられた習近平
・スノーデン問題で冷え込む米中関係
・着々と進む安倍政権の「中国包囲網」
・TPP経済圏の出現に焦る中国
・中韓接近で変化する朝鮮半島情勢
・中国と接近した国の末路
・中国は尖閣問題をどうしたいのか
・中国の本当の狙いは南シナ海か
・習近平が恐れる軍部の暴走
・靖国問題はもう中国のカードにならない
・沖縄問題と反原発に媚中派が結集
・沖縄は中国に飲み込まれるか
・台湾も香港も中国離れが進む

第4章 2014年世界から見捨てられる中国
・偽りの経済成長で深刻化する大気汚染と疫病蔓延
・350年前の人口爆発から始まった環境汚染
・環境悪化が中国の経済成長を不可能にする
・ウイグル問題の爆発が迫っている
・世界から締め出される中国
・日本は中国崩壊に備えよ

目次を読むだけでも、大体の内容が推測できると思う。最近の話題が多く、刺激的なタイトルばかり並んでいて、すぐにでも習近平体制が崩壊しそうな印象を受ける。

そんなに危ういのか、にわかには判断ができないが、参考になった点を紹介しておく。

ちなみに、石平さんは、結構激しいことを言っている。

「私から見ると、まるで中国と韓国は「ドラえもん」のジャイアンとスネ夫ですね。共倒れ同士がお互いを慰めあって、連携して日本に無理な要求をしている。彼らが生き残る道は、頭を下げて日本といい関係をつくるしかないのに、変な意地を通している。とくに、韓国を待っているのは、中国の属国になって中国と共倒れになるという、哀れな将来ですよ。」

まるで長谷川慶太郎さんのようだ。

破綻する中国、繁栄する日本
長谷川 慶太郎
実業之日本社
2014-01-31


★中国の高度成長は終わった。これでせっかく生まれた中産階級は冷え、不動産が暴落し、地方政府の財政が破たんする。富裕層はますます海外に逃げ出す。

★2013年7月に卒業して、9月に就職する中国の大学生は約700万人いる。2013年5月時点で就職内定率は16.8%で、「史上最悪の就職氷河期」と言われており、大量の大学卒業生が職にあぶれることになる。都市と農村の中間地区に集団で暮らす蟻族(平均月収は2,000元=2万6千円以下)が増加する。

★習近平は訪米して、オバマ大統領と8時間も費やして会談したが、延々と日本批判を繰り返す習近平に対して、オバマは「それまでだ。日本はアメリカの同盟国であり、友人だ。あなたはその点をはっきり理解する必要がある」と反論したという。子供の教育問題で時間がないという理由で、習近平の奥さんもオバマ夫人と会えなかった。

★オバマ大統領の最大の関心事は、サイバー攻撃問題と北朝鮮問題で、習近平主席からかなりの譲歩を取り付けた。しかし習近平にはたいした成果はなかった。

★中国によって侵害されているアメリカの知的財産権は年間3,000億ドル(30兆円)にも上る。ハッキング、情報窃盗に協力しているという疑いが、華為技術(ファーウェイ)にかけられている。華為は1988年に人民解放軍の元幹部の任正非社長が人民解放軍の仲間と設立した。

★アジアの中で日本を嫌いなのは中国と韓国だけ。安倍政権の「中国包囲網」は着々と進んでいる。日露間でも2+2(外務大臣と防衛大臣による安全保障協議委員会)設置で合意した。インドとの協力関係も進んでいる。安倍政権は、戦後初めて国益に基づいた戦略的外交を展開している。

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出典:本書134ページ

★韓国軍の統帥権は、朝鮮戦争以来アメリカにゆだねられており、これが2012年に返還される予定だったが、2015年に延長してもらった。それ以降は韓国軍が自ら作戦を指揮しなければならない。韓国は日本の集団的自衛権に反対しているので、韓国が攻撃された場合、アメリカは当然韓国を支援するだろうが、日本は韓国を支援することはできなくなる。

★現実的に中国軍が尖閣に上陸して、占領することは、アメリカが尖閣を日米安保条約の適用範囲と明言しているから不可能。せいぜい、国民に見える形でギリギリの挑発を繰り返すしかない。あわよくば、それで何とか安倍政権に圧力をかけて屈服させたいと思っている。

★南シナ海が中国の本当の狙い。アメリカの軍事力に対抗するために、南シナ海の海底に原子力潜水艦の基地をつくって、そこからICBMでアメリカ本土を核攻撃できる体制をつくることができる。これが中国の対アメリカの切り札となり、南シナ海こそ「核心的利益」だ。

★中国のアフリカ援助は、中国人を派遣し、現地に雇用を生まない「ひもつき援助」なので、ザンビアのマイケル・マタ大統領は、「中国資本をたたきだせ」、「彼らはインベスターではなく、インフェスター(寄生者)だ」と主張して2011年の大統領選挙に勝利した。また、ボツワナのイアン・カーマ大統領も「中国が労働者をつれてくるなら、それは『ノー』だ」と語っているという。

★日本は中国とは正反対のやり方で、直接見返りは求めずに、無償援助や技術移転を中心にアフリカ外交をやっており、中国は脅威に感じている。


石平さんと黄文雄さんは、中国と韓国を悪く言い過ぎではないかという気もするが、ここまで日本の肩を持ってくれる帰化中国人も少ないと思う。

中国、韓国の今後の動向が、この本の指摘するようになるのかどうかはわからないが、いずれにせよ目が離せないことは間違いない。一つの見方として参考になる本だった。


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2014年02月02日

日本電産永守重信、世界一への方程式



パソコン向けハードディスク市場の急激な縮小から、2013年3月期には純利益が前年同期比80%も減少したにもかかわらず、2013年に文字通りV字回復を示した日本電産・創業社長の永守重信さんの経営手腕を紹介した本。

永守さんと長い付き合いがあるという日経ビジネス編集委員の田村賢司さんが書いている。永守さんは、2012年第4四半期に254億円という営業赤字を計上して、2013年の業績急回復の布石を打った。「残尿感なし。絞りきった!」と言っていたという。

文字通りV字回復を実現したのはさすがだ

このブログで紹介した「人を動かす人になれ」などの永守さん自身の本に比べて、迫力はないが、日本電産の戦略を紹介していて大変参考になる。


大前研一さんなどが絶賛する日本電産の永守さんに注目したのは、「人を動かす人になれ」のあらすじでも書いた通り、筆者のアルゼンチン駐在時代の友人が銀行を辞めて、日本電産に転職しているからだ。

1998年発刊の「人を動かす人になれ」では”365日フル回転”と永守さんは書いていたが、最近は元旦だけは休むらしい。それでも、事実上フル稼働であることに変わりはない。

1984年からここ30年間の売上高と営業利益の推移は次の通りだ。

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出典:本書17ページ

なかなかここまでは仕事漬けにはなれない。すごい経営者である。

この本では37社の企業を買収して、急速に業容を拡大した日本電産が、最初はハードディスク駆動用の精密モーター関連分野に集中、そして次は車載用・家電用・産業用モーターなどの異業種向け多角化と、2段ロケットで、さらなる成長を遂げた姿を紹介している。

過去10年の業績推移の中ほどで紹介されている商品グループ別売上高推移を見ると、車載用・家電用・産業用モーターの売り上げが、精密モーターと肩を並べるくらいまで成長してきていることがわかると思う。

XPパソコンを買い替えた記事で書いた様に、パソコン向けハードディスクはどんどん駆動部がないSSDに変わっている。ノートPCでは特に顕著だ。

コストの問題から、サーバやデスクトップPC向けは当分ハードディスクで変わらないだろうし、大容量のハードディスクをバックアップ用の外付けとして使用する用途はなくならない。

だから、ハードディスクがなくなることは近い将来ないだろうが、それでも精密モーターの最大市場だったハードディスクや、ブルーレイなどのメディア向けディスクドライブの市場は、大きな成長は見込めない。

そんな状況を見越したM&Aは、タイムリーで優れた企業戦略だ。

この本では、モーターの技術的な側面も紹介していて面白い。たとえば日本電産の得意なのはブラシレスモーターである。

最近も教えているかどうかわからないが、筆者が中学の時に工作でつくったようなモーターはブラシ付モーターだ。

ブラシレスモーター















出典:東芝ホームページ

ブラシレスは回転部分に接するブラシがないため、ブラシ部分の摩耗がなく、メインテナンスフリーで、高速回転が可能、騒音も少ないというメリットがある。家電や自動車などのモーターに静穏化が求められる傾向のなかで、売り上げを伸ばしているのがブラシレスモーターだ。

精密モーター分野では、軸受をボールベアリングからオイルで満たすFDB(Fluid Dynamic Bearing)に変えて、より一層の高速化を実現した。

これが日本電産がハードディスク用モーターで市場シェア80%を勝ち取った一つの要因になった。

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出典:日本電産ホームページ

FDBモーター

















出典:日本電産ホームページ

買収した37社(2014年に入って1社買収したので、現在は38社)の、時系列的なリストは次の通りだ。
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出典:本書111ページ

地域と製品をマトリクス表にすると見事に日本電産の世界戦略が見えてくる。

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出典:本書130ページ

日本電産は、買収した会社の経営陣にそのまま経営を担当させる。日本電産から送り込む役員はせいぜい数名だ。永守さん自身が会長として毎週行くこともある。

買収された会社はそれなりの理由があって、赤字だったために、買収されたわけだが、それを永守流のKプロ(経費節減)、Mプロ(「まけてよ」の意味、購買コスト削減)、意識改革で大体1年で黒字転換する。

その方程式の例が紹介されている。(日本電産セイミツグループの健全企業経営の指針)

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出典:本書55ページ

この実現のために、世界各地の日本電産グループの会社には、永守さんをキャラクター化した次のようなポスターが貼ってあるという。スローガンは日本語、英語、中国語で書かれている。

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出典:本書162ページ

この本の最後に、「奇人変人の創業者とどう向き合えばよいのか」という永守さんが、一部の経営幹部に送ったメールが紹介されている。

強烈な個性を持った経営者だけに、転職組で、永守流に合わずに辞めていく人もいる。

永守さんは、途中入社の幹部に対しても、どこまで永守さんの叱責に耐えられるかを見極めて、「これなら簡単に敵前逃亡しない人物だから信用できる」と判断して責任ある地位に登用してきたという。いわばストレステストに合格することで、信頼関係が構築できたと判断するやり方なのだと。

役員の中では、長年の同士ともいえるプロパー生え抜き役員の他に、買収した会社の経営者、自動車部品のカルソニック・カンセイ前社長、三菱自動車で電気自動車を育成した役員、三菱電機から外資系を経たCFOなど、多用な人材がいる。

著者の田村さんは、創業から20年は「超ワンマン」の時代、M&Aが本格化した1990年代からは「みこし型ワンマン」の時代、2010年から海外M&Aが増え、「分権型ワンマン」の時代と呼ぶ。

強い思いは変わらない「変わらぬ永守」と、経営者としてのあり方を自ら変えていく「変わる永守」がいるのだと締めくくっている。

200ページ余りの本だが、平易で簡単に読める。日本電産の戦略と永守さんの考えがよくわかる優れた本である。


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Posted by yaori at 01:39Comments(0)TrackBack(0)