2014年05月26日

呆韓論 呆れる写真も満載! 元時事通信ソウル特派員の室谷さんの韓国批判

呆韓論 (産経セレクト S 1)
室谷克実
産経新聞出版
2013-12-05


元時事通信ソウル特派員の室谷克実さんの韓国批判。このブログでは室谷さんの「日韓がタブーにする半島の歴史」を紹介している




韓国の対日感情は、朴正煕大統領に続く、全 斗煥、盧泰愚までの軍事政権の時はそれほど悪くなかったが、長年の反日教育のためにどんどん悪化しているのは、憂慮すべきことだ。

最近でも、李明博大統領は経済界出身で、大阪生まれだ。李明博大統領なら、日韓関係も少しは改善するかと期待して、ソウル市長時代の「都市伝説 ソウル大改造」や、「すべては夜明け前から始まる」のあらすじを紹介した。



しかし、李明博大統領も、当初こそ日本に対する関係改善の姿勢を示したが、その後は支持率低下に苦しみ、最後は竹島を訪問するなど、スタンドプレイに走った。

現在の朴槿恵大統領にも期待して、大統領就任の時に「朴槿恵の挑戦」のあらすじを紹介している




朴槿恵大統領は、親日派だった朴正煕大統領の娘なので、「高木正雄」(=朴正煕の日本名)の娘と言われるのを極端に嫌っているという。少しでも親日の姿勢を示せば、「それ見たことか、やはり親日派か」と言われて国民の支持を失うことを恐れ、日本には厳しくあたらなければならないのだろう。

それにしても、日米間の首脳会議の時の朴槿恵大統領のかたくなな態度と、中国の習近平主席には笑顔をふりまく両極端な態度は、最近の「中国という蟻地獄に落ちた韓国」などの本が指摘している通り、韓国は中国の属国として生きていくつもりなのかと思わせるほどだ。




朴槿恵大統領の正当性が疑われている

この本の最初に、朴槿恵政権の正当性が疑われていることが紹介されている。

朴槿恵大統領は2013年2月に就任した。2012年12月に行われた大統領選挙は、朴槿恵候補51%:文在寅候補48%という接戦だった。

当選した要因として、朴候補は選挙戦中に、国家情報院(元KCIA)や国軍サイバー司令部によるツイッターやSNSへの応援書き込み支援を受けていたことが判明している

また高齢層の支持を得るために、65歳以上のすべてに毎月20万ウォン(2万円)の年金を支給すると公約していた。しかし、当選した後は、財政状況が厳しいため、「詐欺公約」と非難されるほど内容が切り詰められてしまった。

これら国家情報院や国軍サイバー専門部隊の支援と、「詐欺公約」がなければ、朴槿恵は大統領にはなれなかっただろう。加えて、「セウォル号」事故で、不信任も急増している。こんな政治基盤が弱い大統領だけに、反日の姿勢を貫いて国民の支持を得るのは必須なのだろうと思う。


この本の目次

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、目次を紹介しておく。

はじめに

序章 妄想と非常識に巻き込まれた日本

第1章 「自由と民主主義」の価値を同じくしない国

第2章 恥を知らない国際非常識国家

第3章 反日ならすぐにバレる嘘でも吐く

第4章 世界から軽蔑される哀れな反日病

第5章 歪みだらけのオンリー・イン・コリア

第6章 呆れかえるウリジナルの暴走

第7章 本当に恐ろしい人間差別大国

第8章 「売春輸出大国」の鉄面皮

第9章 わかりあえない不衛生・不法・不道徳

第1 0章 反撃の種「対馬」の仕込み方

終章 官邸、皇居の耳目役への警鐘

おわりに


序章を読めば大体の論点がわかる

この本の序章に最も重要な部分が、かいつまんで説明されている。

日の丸を食いちぎる人や、安倍首相と橋下大阪市長の顔写真を踏みつける人、韓国サッカー応援団の安重根フラッグ、ソウルの日本体感前に置かれた慰安婦像などの写真も序章に紹介されている。

実は序章を読めば、この本の論点が簡単に理解できる。本当は「なか見!検索」に最適の本なのだが、仕方がないので、まずは書店で序章を立ち読みすることをおすすめする。


朴槿恵大統領の「1000年恨み節」

序章の中で、朴槿恵大統領が、2013年3月1日(独立運動記念日)の記念演説で、「1000年恨み節」を語ったことを紹介している。曰く、「被害者と加害者の立場は1000年経っても変わらない」と

「1000年恨み節」なら、元寇は1274年と、1281年。もとはといえば、高麗の皇太子が元のフビライに日本征服を促したことが原因だと室谷さんは言う。

ネットで「元寇」で検索したら玉川大学の公開サイトで、元寇について詳しく解説しているものがあるので、ここをクリックして見てほしい

本も出ているので、今度読んでみる。

知るほど楽しい鎌倉時代
多賀 譲治
理工図書
2011-01



参考になった点をいくつか紹介しておく。

★「日帝統治の体験者ほど反日の度合いが低い」
室谷さんは特派員時代に、韓国13代目の大統領となった盧泰愚が体育相だった時に、パーティで話したことがあるという。

韓国人記者もたくさんいたので、室谷さんは韓国語で話かけたら、盧泰愚は日本語で答えたという。

「あなたの韓国語より、私の日本語の方がうまい。遠慮はいりません。日本語でどうぞ」

さらに話を続けると、

「私たちの世代で日本語を話せないとしたら、バカですよ。若い人は日本語を知らないから、私と全斗煥は、副官に聞かれたくない話は日本語で話したものです。今でも電話をしていて微妙な話題になると、秘書に聞かれないよう、どちらからともなく日本語になります」。

盧泰愚氏は、国民学校で担任だった日本人の教師をソウルに招待したという。

上の親日派世代は鬼籍に入るか、発言力を失う中、反日ファンタジー歴史学しか知らない人びとが韓国の政界、マスコミを牛耳っているのだと。

★朴槿恵大統領は中国語が堪能
朴槿恵大統領は、西江大学電子工学科卒、フランス留学経験があり、学生の時に習った中国語が堪能と言われている。

韓国が中国傾斜を強めている最近の傾向には、こういった背景もあるのだろう。

外華内貧
韓国人にとって大切なことは、外面を華やかに飾ることだと。「外華内貧」は朝鮮半島で創作された数少ない4文字熟語で、「見栄っ張り」、「格好つけ屋」などという意味だという。この4文字熟語ほど韓国人の何たるかを示す言葉はないと室谷さんは語る。

この本ではあまり詳しく紹介していないが、室谷さんの「悪韓論」では、韓国型新幹線(KTX)の韓国製部品の強度の問題によるエンジントラブル多発や、わいろを受け取って、不合格品を原子力発電所に取り付けさせて逮捕された100人余りの技術者のことを紹介している。

悪韓論 (新潮新書)
室谷 克実
新潮社
2013-04-17






★信じがたい離職率
この本のなかで”2007年の古いデータで恐縮だが”と紹介されている雇用統計に驚く。

入社1年以内の離職率     : 30.1%
入社2年以内の離職率     : 68.9%(青年求職者対象となっている)
3年以上一つの職場に勤めた率: 18.3%(つまり離職率81.7%!)

いくら韓国の離職率が高いとはいっても、にわかには信じられないデータだ。

額に汗する仕事そのものを蔑視し、そうした仕事をする人を露骨に軽蔑し、そして、そうした仕事に携わる人自身も、自分の職業に何らの誇りも持っていない。これが、朝鮮半島の歴史が作り上げた産業文化の底流だという。

彼らが作る製品あるいは半製品・部品が精度に欠けるのは、至極当然の帰結なのだと室谷さんは語る。

★慶尚道と全羅道の対立
金大中氏が大統領になるまでは、全羅道(後期百済の中心地域)に対する差別はすさまじかったという。もともとは、高麗王朝の始祖、王建が残した「訓要十条」に、旧百済地区からの人材登用を戒め、それがため高麗、李朝を通じて、全羅道の両班はほとんど官職に就けなかった。

朴正煕、全 斗煥、盧泰愚、金泳三と続いた慶尚道出身の大統領時代に、官民、軍警とともに、慶尚道優位の人材登用、予算配分が続き、全羅道差別は極みに達したという。

もともと異民族のように扱われていた済州島出身者も同様だったという。ちなみに呉善花さんは済州島出身だ。

2012年12月の大統領選挙の結果を見ても、全羅道では野党候補が9割の得票率で、全羅道の中心地の光州での朴槿恵の得票率は7.8%しかなかった。一方、慶尚北道では朴槿恵支持が8割だった。

百済と新羅の対立が現代まで残っているとは!

まとめるのが難しい国である。だから対日批判で国をまとめようとするのだろう。

室谷さんの本は、「悪韓論」も読んだ。こちらは、具体例が多く取り上げられているので、今度あらすじを紹介する。

悪韓論 (新潮新書)
室谷 克実
新潮社
2013-04-17



冒頭に記したように、序章を読めば、まさに呆れるような写真とともに、このの本の論点が理解できる。まずは書店で序章を立ち読みすることをおすすめする。


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2014年05月24日

給食で死ぬ!! 毎日サプリを飲んでいたらどうなるんだ?



給食を米飯と魚中心に変え、校内に花を多く置いたら、いじめ・非行・暴力がなくなり、優秀校になったという長野県真田町の元教育長で、中学校長の経験もある大塚貢さんの本。

大塚さんの給食改革による成果をわかりやすく説明するマンガ本もある。




大塚さんの講演のダイジェスト版がYouTubeに収録されている。これは5分程度なので、まずはこのダイジェスト版を見て頂きたい。このほかに2時間ほどの講演もYouTubeに収録されている




大塚さんの主張

大塚さんは、いじめ、カツアゲ、タバコ、空き巣などの犯罪だらけで、廊下をバイクで走り抜ける生徒もいた非行の激しい中学校に校長として赴任して、次の手法で改革した。

1.まずは、「わかる、できる楽しい授業」にすることに注力した。

2.一週間の給食5食すべてを米飯に変えた。

3.花づくりを推進した。

無農薬、低農薬の素材をつかった給食を実現し、魚を多く食べさせるようにしたという。



お金はかかるが、発芽玄米給食に変えたら、アトピーの子が激減するという効果もあった。

授業改革、花づくり、給食の改善の3本柱で、いじめが減り、不登校が激減した。読書の習慣が出てきた。学力も全国でトップクラスになった。


大塚さんが改革する前の状況

大塚さんが上記3点の改革に取り組む前は、生徒の4割が朝食抜きで、食べていてもコンビニ弁当などの、食品添加物だらけの食事と、レトルト食品、肉食だった。

朝食を摂らないとエネルギーが不足し、それが子供の無気力やイライラにつながる。

また、コンビニ食品による食生活を続けていると、栄養が偏り、いわゆる「血がドロドロ」状態となると大塚さんはいう。

血液をきれいにするカルシウムやマグネシウム、亜鉛、鉄分をはじめ、各種のミネラルも不足するためだ。野菜不足だから、ビタミンが足りなくて、血管が硬くなるなどのトラブルも招きかねない。

このブログでも紹介した「食品の裏側」から引用して、コンビニ食品等でよく使われている食品添加物の「タンパク質加水分解物」は発がん性があると注意喚起している。




学校に花を植える効果

佐世保小6女児同級生殺害事件」、「板橋両親殺害事件」、「奈良医師宅放火殺人事件」、「秋葉原通り魔事件」、「土浦荒川沖駅通り魔事件」、「元厚生事務次官宅連続襲撃事件」、「秋田児童連続殺害事件」、「神戸連続児童殺傷事件」などの凶悪犯罪が起こった学校は、どこも花がないという。

この本では、「花いっぱい運動」を続けるエアコン・暖房機などのメーカーのコロナの社長の話を紹介している。コロナは社員食堂で無農薬栽培のコメや野菜を提供している。

コロナの社長はレイチェル・カーソンの「沈黙の春」を読んでから、農薬の危険性に気づいたという。

沈黙の春 (新潮文庫)
レイチェル カーソン
新潮社
1974-02-20



アメリカでもオバマ大統領夫人のミッシェルさんが中心となって、ハンバーガーなどの高カロリー給食を追放する運動を進めている。

給食改革を取り上げた「ジェイミーの食育革命in USA」という映画もできている。この舞台はウェストヴァージニア州ハンティントンだ。筆者も行ったことがあるオハイオ川沿いの町だ。

飛行機のエンジン部品に使われる超合金の工場があるので、筆者はそこを訪問した。実はハンティントンは全米屈指の肥満率の町だという。



筆者が米国駐在の時は、息子たちが米国の小学校に行っていたので、筆者も小学校の食堂に行ったことがある。セルフサービス式で、サラダなどもあったと思うが、ピザ、ハンバーガー、チョコレートケーキ、コーラ等の高カロリー食が中心だった。

米国で、給食革命が叫ばれるのもわかる。


筆者の意見

大塚さんの「奇跡の食育」が成果を挙げているのは、よいと思うが、「給食を米食に変えたら、イジメ・非行・暴力がなくなった」というのは、因果関係として、いまひとつ理解できないものがある。

子供からサプリを飲ませる人は少ないかもしれないが、一か月分でも1,000円しかかからないマルチビタミン・ミネラルを飲めば、すべての必要なビタミンとミネラルは補給できる。

小林製薬 栄養補助食品 マルチビタミン・ミネラル+コエンザイムQ10(120粒入)【小林製薬の栄養補助食品】[サプリ サプリメント]
小林製薬 栄養補助食品 マルチビタミン・ミネラル+コエンザイムQ10(120粒入)【小林製薬の栄養補助食品】[サプリ サプリメント]

筆者は、25年くらい毎日マルチビタミン・ミネラルを飲んでいる。運動を続けていることもあり、血圧も最適値だ。

「給食で死ぬ!!」という刺激的なタイトルといい、魚食を訴えているだけに、ややフィッシー(fishy)な印象があるが、本当に効果があるのであれば、ぜひ全国の学校で試してもらいたいものである。


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2014年05月20日

夢を売る男 百田尚樹さんの出版界を描いたブラックユーモア小説

夢を売る男
百田 尚樹
太田出版
2013-02-15


処女作「永遠の0」が映画化とともに、爆発的に売れ、「海賊とよばれた男」も本屋大賞一位と、一躍売れっ子作家になった百田尚樹さんの出版界を題材にした小説。

まさに小説はエンターテインメント、文句なしに楽しめる。

主人公の牛河原勘治は、中小出版社の丸栄社の取締役編集部長。元は文芸出版社の夏波書房の編集長だったが、売れない小説ばかり出すことに疲れて、印刷会社上がりの丸栄社に転職した(この岩波書店を想起させる夏波書房というのが、大沢在昌がいう「小説のトゲ」だ)。

丸栄社は、著者に出版費用を一部負担させるというジョイント・プレスというビジネスモデルで、他の出版社が本が売れなくて万年赤字経営が続いているのを尻目に、毎年大幅な黒字を続けていた。

普通の自費出版なら30万円程度で、本はすべて著者のものになる。

しかしこのジョイント・プレスという方式は、著者が200〜300万円を負担するにもかかわらず、できた本自体はすべて丸栄社のものだ。

本が欲しかったら著者は自分で著者割引を受けて、丸栄社から購入しなければならない。もう絶版というときには、著者はあわてて500部単位で購入する。

本が売れても売れなくても、丸栄社は儲かる。丸儲けのビジネスモデルなのだ。

プライドの高い素人や、どうしても自分の本を出したい作家志望者などを、どんどん落として、本を出させていく口八丁、手八丁のやりとりが軽妙で面白い。

曰く、「新聞広告を出す」、「取次ルートで販売する」、「ISBNコードもつく」、「国会図書館にも納められる」、「プロが編集し、校正する」等々。

百田さん自身も、

「元テレビ局の百田何某(なにがし)みたいに、毎日、全然違うメニューを出すような作家も問題だがな。前に食ったラーメンが美味かったから、また来てみたらカレー屋になっているような店に顧客がつくはずもない。しかも次に来てみれば、たこ焼き屋になってる始末だからな」

「馬鹿ですね」

「まあ、じきに消える作家だ」

という風に登場する。

一作ごとに違った芸風なのはさすがだ。このブログで小説家育成講座の「売れる作家の全技術」を紹介した大沢在昌は、次のように言っている。

「プロになっても、引き出しが少ないために苦労している人は実はたくさんいる。書く時間よりも読む時間をはるかに多く持ち、どんどん読んで、どんどん引き出しを増やして、アイデアを膨らましている人が作家を目指している。」

小説講座 売れる作家の全技術 デビューだけで満足してはいけない
大沢 在昌
角川書店(角川グループパブリッシング)
2012-08-01


まさにこの通り。百田さんの引き出しの多さには敬服する。

この程度のあらすじにとどめておく。大変楽しめる小説である。

是非一読をおすすめする。

なお、本当に本を出したい人には、商社に勤めるビジネスマンが書いた、こちらの本をおすすめする。

ビジネスマンのための40歳からの本を書く技術
三輪 裕範
ディスカヴァー・トゥエンティワン
2009-01-18



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2014年05月18日

熔ける 大王製紙元社長の井川意高さんの転落記



カジノの借金の穴埋めのため、自分が社長をしている大王製紙子会社から約107億円ものカジノ資金を借りまくったことで特別背任罪が確定し、現在、セコムや三井物産がやっているPFIによる東日本初の民営刑務所・喜連川社会復帰促進センターで服役中の元大王製紙社長・井川意高(もとたか)さんの本。

井川さんは、借りた金はすべて金利をつけて返済したから執行猶予が妥当だとして上告していたが、2013年6月に最高裁が上告を棄却して、4年の懲役刑が確定した。

この本の”つかみ”に、シンガポールのマリーナ・ベイ・サンズホテルのカジノで、20億円のチップを目の前に置き、ジャンケットというカジノに雇われた私設コンシェルジュさえもが、勝ち逃げを示唆しているのにもかかわらず、さらに勝負して結局すべてを失った話が出てくる。

負けが込んでいたから、20億円の勝ちでは引き下がれなかったという。およそ金額が尋常ではない。


井川意高さんの経歴

井川意高さんは大王製紙の創業家の3代目。1987年に東大法学部を卒業して、大王製紙に入社した。第4代社長として2007年から2011年まで大王製紙の社長を務めた。

社長になる前は、名古屋にあった子会社の立て直しでも実績を上げた。

社長に就任してからは、タイやベトナムでの合弁事業や、エリエールのナプキンやP&Gから買収した大人用のオムツのアテント事業など、消費者向け商品の開発でも成果を上げた。


井川家の人びと

井川さんの祖父の井川伊勢吉さんは、もともと製紙原料商だった。つぶれかけた製紙工場を引き受けて立て直して、小さな製紙会社をまとめ上げて、全国区の大王製紙を創業した。一度、1962年に倒産したが、会社更生法で見事に復活させている。

1943年から大王製紙の社長を長く務め、1987年に井川さんのお父さんの井川睛困気鵑飽き継いだ。

井川睛困気鵑蓮大王製紙の社長を1995年まで勤め、中興の祖と言われている。仕事にも息子たちの教育にも厳しかったことが、この本で語られている。往復ビンタ、ゴルフクラブのヘッドで殴られそうになったこともあるという。

大王製紙は、もともと四国の愛媛県、現在は四国中央市となっている伊予三島市で製紙工場を始め、その後、全国に工場展開し、タイやベトナムにも合弁会社を持っている。

大王製紙は井川家の会社だったが、「大王製紙事件」と呼ばれる井川意高さんの特別背任事件で、井川家は持ち株を北越紀州製紙に売った。現在は北越紀州製紙の持ち分法適用会社となっている。

しかし、大王製紙グループの商事会社などの関連会社は、井川家が株式を押さえている会社もある。大王製紙本体からは井川家は手を引いたが、依然として大王製紙の事業には様々な面で関与している。


この本で井川さんが言いたいこと

井川さんは、中学から今の筑駒に入学、東大法学部にストレートで合格し、東大在学中はBMW635を乗り回していたという。典型的な金持ちのおぼっちゃんだ。清泉女子大出身の最初の奥さんとは、在学中に知り合ったという。

BMW635CSi (ベージュ・メタリック)
BMW635CSi (ベージュ・メタリック)

はっきり言って、あまりに恵まれすぎていて、実刑で服役することになっても別に憐憫の情はわいてこない。

子会社から巨額のカジノ資金を借り入れたが、すべて返済した。会社に迷惑はかけていない。だから情状酌量で、執行猶予が妥当ではないかという主張は、あまりに身勝手だ。主張を露骨に書いているわけではないが、行間から発するメッセージは、その主張そのものだ。

井川さんも、「わずかな望みを懸けた執行猶予判決を得ることはできなかった」と書いている。

筆者が大学で刑法を勉強した時は、故・団藤重光先生の構成要件を違法有責類型とする学説が主流だった。たぶん、今でもそれは変わらないだろう。

会社からの告発もあるので、特別背任罪構成要件は満たしている。後から、金を返せば罪が軽くなるような単純な話ではないことは、東大法学部出身の井川さんも大学で学んだだろう。

ホリエモンは、井川さんと面識があり、井川さんが東京拘置所に収監されたときに、厚い座布団をまっさきに差し入れてくれたという。

このブログではホリエモンの「刑務所なう。」を紹介している。さすが拘置所暮らし経験者というところか。



井川さんは、ギャンブル狂はWHOに認められた「病的賭博」や、アメリカ精神医学会に認められた「ギャンブル依存症」という「病気」であって、「癖」ではないという。

アメリカ精神医学会の「ギャンブル依存症」の10要件を列挙し、「私が重度のギャンブル依存症患者であることは間違いない」と語っている。

その主張は正しいと思うが、今となっては、むなしい。

あとがきの井川さんの言葉が、含蓄がある。

「一番信用できないのは、自分 − 106億8千万円の代償として私が得たものは、かくも悲しい事実のみだった」。

最後に、「本書の印税は、全額社会福祉事業に寄付いたします。井川意高」というメッセージがある。

ホリエモンがエールを送っている通り、井川さんはまだ若い。模範囚として4年の刑期を半分くらいに短縮し、2015年くらいには社会復帰を果たすだろう。1964年生まれだから、51歳だ。

是非、第二の人生で、カジノ狂い病を克服して、活躍してほしいものである。


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2014年05月10日

オーディション社会 韓国 敗者復活戦がない韓国社会



競争社会の割には、敗者復活戦がない韓国社会の問題点を明らかにした本。

著者の佐藤大介さんは、毎日新聞社を経て、2002年に共同通信社社員となり、2007年に韓国の延世大学に社命留学、その後2009年から2011年末までソウル特派員として勤務していた。

韓国の問題点を指摘する本は多い。

このブログでも「韓国併合への道 完全版」を紹介した日本に帰化した韓国人・呉善花(オ・ソンファ)さんや、元時事通信ソウル特派員の室谷克美さんなどが代表格だろう。

呉善花さんは、処女作の「スカートの風」以来、どちらかというと自分の反省を込めて、自分が体験した日本と韓国の差を様々な例で紹介している。それが韓国政府の怒りを買い、日本に帰化した後は、韓国からは入国拒否の扱いを受けている。







室谷さんは、もはや「芸風」が韓国嫌悪となっており、このブログでも紹介した「日韓がタブーにする半島の歴史」に続いて「悪韓論」、「呆韓論」などの本を次々に出している。



現在「呆韓論」を読んでいるので、こちらのあらすじもいずれ紹介する。

呆韓論 (産経セレクト S 1)
室谷克実
産経新聞出版
2013-12-05


船長や船員が一般乗客を装っていち早く逃げたなど、信じられない事実がどんどん出てくる「セウォル号」の沈没事故、ソウルの地下鉄衝突事故など、韓国の信頼度が著しく低下している。

韓国のテレビでは、船長の適切な対応で全員が助かった日本のフェリー転覆事故を報道して、「セウォル号」との差を報道している。



到底こんな国には住みたくないと思うのが人情だろうが、日本にとっては、韓国が隣国であることは変えられない。

きれいごとのように聞こえるかもしれないが、室谷さんのように、呆れて、「すべての問題の根源と責任はかの国の病にある」といって、避難ばかりしてつき合うことをやめて無関心になるのではなく、少なくとも実情は知っておくべきだと思う。

その意味で、この本は役に立つ。

参考になった点をいくつか紹介しておく。

★韓国のオーディション番組は、人口の4%が参加したといわれるほど人気だ。「スーパースターK」と、スーザン・ボイルを生んだ英国のオーディション番組「ゴット・タレント」の韓国版の「コリア・ゴット・タレント」の2つが特に有名で、スーザン・ボイルと同じように、見かけはぱっとしないが、歌唱力抜群の歌手を生み出している。

その代表格がホガクだ。

身長163センチのずんぐりした容姿で、幼いころに両親が離婚。一緒に暮らしていた父の健康が悪化したことから、中学生で学校をやめ、修理工をして生活費を稼いでいた。母の消息を探し当てたが、別の過程を持っており、再会することはできなかったという過去を持つ。



もう一人は、 チェ・ソンボンだ。3歳で孤児院に預けられ、暴力を受けて5歳で脱走。10年以上もガムなどを売りながら、路上生活をしていたという。



本家のスーザン・ボイルはこんな形で見出された。



韓国社会は競争が厳しく、敗者復活戦もない。ホガクやチェ・ソンボンが人気を集めた背景として「代理満足」(テリマンジョク)があるといわれている。代理満足とは自分が目標を成し遂げられなかった場合、本人に代わって、自分が感情移入できる出場者が目標を達成することで満足感を得られることだ。

★人生の競争は「教育」から始まる
韓国の教育熱はすごい。家計の5割が塾の費用という家庭もあるという。

英語教育熱が高まり、子どもと母親が、英語教育を学ぶために海外で暮らし、父親は韓国でせっせと稼ぐ「キロギアッパ」とよばれる居残り父親が5万人を超えるとも言われている。日本でいう「逆単身」だ。

★韓国は高校全入制
韓国では1970年代に高校入試が加熱し、中学浪人が増加したことから、今は私立も公立も一緒にして、高校標準化が行われ、生徒は学区単位の抽選の結果、各高校に振り分けられる。

韓国では私立といっても、教育の裁量権はなく、日本の受験校の様に中高一貫教育で、高校2年までで高校の全教程を完了するといったことはできない。

これによって、高校間のレベルの差はなくなったが、学校内の学力格差が問題となった。できる生徒は、低レベルの授業に満足できず、大学入試のために塾や予備校に通う結果となっている。

★しかし、実際にはソウル大学などの難関校へ入学するには特殊目的高校に入らないと難しい
高校標準化の例外として、特殊目的高校というエリート校が存在する。もともとは、科学、語学、芸術、スポーツなどの専門教育を受けるための高校だったが、現在は有名大学進学のためのエリート校となっている。

実際、韓国の最難関校のソウル大学の合格者出身高校のトップ20はほとんど特殊目的高校となっている。

高校標準化ではあるが、できる子は特殊目的高校に入学するために、激しい受験戦争を戦っているのだ。ちなみに、プサン他4校ある科学英才学校の倍率は15倍だが、入学後は寮費は無料、授業料も安い。実際にはほとんどの生徒が奨学金を得ていて、実質負担はゼロだという。

★就職のためにボランティア活動証が金で買える
韓国では就職競争も激しい。英語ができる、ボランティア活動に従事した、部活動のリーダーだった等の「スペック」がないと、大企業には就職できない。

だからボランティア活動に従事したという証明書を出してくれる団体を紹介するブローカーが、多数活動しているという。大体日本円で30〜50万円の登録料で正式の活動証明書がもらえるという。

★「八八万ウォン世代」
韓国の就職事情は厳しい。「スペック」をそろえて、みんな大企業や安定している公務員を目指す。しかし、2010年の185大学の卒業者25万人のうち、就職できたのは52%の13万人だ。半数は就職ができない。やむをえず非正規雇用労働者となる者も多い。

正規労働者と非正規労働者の賃金は大きな差がある。正規労働者では平均1,400円の時給が、非正規労働者では平均800円である。

1997年のIMF主導の改革で、2万社を超える中小企業が倒産し、200万人が失業した。このしわ寄せを受けているのが若者だ。1990年には雇用全体の27%が若者だったが、2000年には23%、2010年位は15.3%まで落ち込んだ。

そんな韓国のワーキングプア世代について書いた「八八万ウォン世代」がベストセラーになっている。




★大企業は弱者を救わない
韓国の2010年の企業数は335万社、このうち従業員300人未満の中小企業が99.9%を占め、300人以上の企業は0.1%に過ぎない。

雇用全体でも79%が中小・零細企業だ。

さらにサムスンなど超大企業は、毎年5〜10%のパフォーマンスの悪い従業員を切り捨てている。大企業に入ってからも、激しい競争に晒されるのだ。いったん切り捨てられると敗者復活の道はほとんどない。

1997年の通貨危機の際に、韓国は財閥の経営改革や金融機関の再編などに踏み切り、輸出主導で2年たたずに景気回復にこぎつけ、「IMFの優等生」と呼ばれた。その結果、GDPにおける貿易依存度は88%と世界でも最も高いレベルだ。

輸出中心型企業を中心とする大企業の労働者の平均月収は2011年で42万円、一方、中小企業の正社員の平均月収は26万円で、格差は拡大している。

★お住まいはどちら?
最後に韓国での「住所」というブランド力について紹介している。ソウルでも江南(ハンナム)地区は高級住宅地として有名で、 ハンナムスタイルというPSY(サイ)のヒットソングにもなっている。



日本も、ある程度は、住所はブランドになる。たとえば、関西なら芦屋、東京なら田園調布とか成城学園などだ。しかし、大きい家が相続税対策で小分けされ、小さな家やアパートになっているので、住所=ブランドがだんだん薄れている。相続税課税強化で、今後もこの傾向は続くだろう。

筆者の故郷の神奈川県藤沢市鵠沼も、昔は大邸宅ばかりだったが、今は普通の込み入った住宅地になってしまった。昔の面影はほとんどない。

★家庭崩壊と自殺大国
最後は、「家庭崩壊と自殺大国」というタイトルで、韓国はOECDで自殺率一位であることを紹介している。

特に高齢者の年金が充実していないので、高齢者の自殺が多いのが特徴である。また、有名人の自殺も多い。

元巨人軍の趙 成Α淵船隋Ε愁鵐潺鵝砲留さんの女優チェ・ジンシルが自殺したことは知っていたし、この本でも紹介されている。しかし、趙 成自身も2013年1月に自殺していることをウィキペディアで知った。

たしかに「自殺大国」なのかもしれないが、複雑な思いだ。


この本を読んで、韓国人を応援したいという気になる人は少ないと思う。「セウォル号」事故を見ても、韓国人に生まれなくてよかったと思う人が大半だろう。

しかし、様々な競争を勝ち抜いたきた韓国人のなかには、当然、世界でもトップクラスの人材もいる。今度紹介する「呆韓論」のように、バカにして呆れているだけでは、足をすくわれる。

この本では兵役のことを一切触れていないが、筆者は兵役こそ、韓国社会に緊張感と規律、そして馬力をもたらしているのではないかと思っている。

もちろん中には脱落者もいるが、幼いころから自らを鍛え抜き、厳しい競争を勝ち抜き、兵役も経験して、緊張感のある人生を生きてきた韓国人トップエリートは侮れない。彼らはハングリーでワールド・クラスの競争力がある。それが筆者の持つ韓国人の印象である。


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2014年05月07日

電力と震災 原発はどこでも同じ、ではない 東北電力の地道な地震対策



日経出身で、2004年に独立し、「東電国有化の罠」とか、「JAL再建の真実」など、企業ものを中心に書いている経済ジャーナリスト・町田徹さんの本。

表紙の写真は白洲次郎が東北電力会長の時に、只見川水系のダム建設現場を視察した時の写真だ。

東電国有化の罠 (ちくま新書)
町田 徹
筑摩書房
2012-06-05


只見川水系の開発における白洲次郎の活躍については、北康利さんの「白洲次郎ー占領を背負った男」のあらすじの「続きを読む」に詳しく紹介しているので、参照願いたい。



この本では、東北電力の初代社長の内ヶ贇五郎(うんごろう)や、初代会長の白洲次郎のエピソードについても紹介しており、興味深い。

白洲次郎は、会長室を東北電力の本社ではなく、東京支社に置かせて、水力発電所やダムの建設など政府の開発計画ににらみを利かせていたという。東北電力が建設現場用ランドローバー200台、ヘリコプター、マイクロ波通信などを導入したのも、白洲次郎のアイデアだという。

YouTubeで筆者の町田徹さんが、本の内容を紹介している音声が載っている。



電力会社は、攻撃しようと思えば、いくらでも攻撃できると思う。たとえば料金値上げや、無駄な出費などだ。ところが、この本では東北電力の悪い点はほとんど書いていない。

東北人のイメージのように、冒頓(ぼくとつ)で真面目、しっかりしているという印象を受ける。

東日本大震災では、震源地に最も近かった東北電力の女川原子力発電所は冷温停止に成功し、東電福島第一原発ではメルトダウン事故となった。今もなお周辺は立ち入り禁止区域となっている。

女川原発が海抜15メートルという高台に立地していたことが最大の要因だが、それ以外にも高い防潮堤と引き波対策のためのブロック、事務本館の耐震補強と通信網等、様々な東北電力の地震・津波対策が功を奏して、福島と女川の差になったことがよくわかる。女川原発では、震災後PRセンターに避難してきた被災者40名を原発敷地内に収容することまでやっている。被災者を多数だした福島第一とは、えらい違いだ。

女川原発のこのような地震への備えは、宮城県出身で、三陸津波の恐ろしさを熟知していた平井弥之助という技術者出身の東北電力副社長が、平安時代に起こった貞観津波クラスの巨大津波に耐える必要があると力説していたからだという。

女川原発は無事だったが、女川原発で働いていた技術者の家族が住んでいた女川町既婚者住宅(4階建て)は津波にのまれ、16名の妻子が命を失った。いまだに5名が行方不明ということも、この本では書いている。

ちなみに、3月11日に首相官邸から東北電力の福島支店に問い合わせがあり、東北電力では急遽、電源車を4台手配して、東電の福島第一原発に当日の夜11時までに到着させた。しかし、これらの電源車は、がれきで原発にたどり着けず、やむなくその場に放棄せざるを得なかったという。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応している。今のところ、飛び飛びではあるが、かなりのページが「なか見!検索」で読める。

全部読むのも疲れるので、まずはここをクリックして目次を見て、ついでに中身もざっと見てほしい。

300ページ余りの本だが、一気に読める。

いくつか参考になった点を紹介しておく。

まずは東北電力の規模だ。

次が2013年3月末時点での各電力会社の契約件数である。

東京電力 : 2,888万件
関西電力 : 1、357万件
中部電力 : 1,052万件
九州電力 :   863万件
東北電力 :   767万件
中国電力 :   522万件
北海道電力:   401万件
四国電力 :   287万件
北陸電力 :   210万件
沖縄電力 :    86万件

東北電力は東電のほぼ1/4の規模である。

この本では震災の時に、東北電力社長以下の面々が、それぞれの部署で、どのように緊急対応したかが紹介されている。

たとえば、東北電力の海輪社長は地震当日名古屋に出張中だったが、急遽取りやめ引き返した。仙台空港が閉鎖されていたので、名古屋から飛行機で新潟に戻り、陸路仙台を目指した。

原町石炭火力発電所では、18メートルの津波で大型船が陸に打ち上げられ、クレーンも4基のうち、3基が横倒しになった。しかし、職員は高さ38メートルのタービン建屋の屋上に避難して無事だった。唯一、消防車の誘導の為に残っていた総務課副長が津波にのまれて殉職した。

東北電力の電力ミックスは次の通りだ。火力が一番大きい。東北電力は戦前の電力大合同前は、221社の中小電力会社の集合体だったせいか、水力発電所が多い。

火力 : 17発電所 1,253万KW(東新潟ーLNG, 秋田ー石油、新仙台ー重油、原町ー石炭等)
原子力:  2発電所   327万KW(女川、東通)
水力 : 227発電所  254万KW

東北電力の釜石営業所、石巻営業所、石巻技術センターなどの職員の奮闘も紹介している。

新潟支店では、中越地震、中越沖地震の時に助けてもらったので、今度は自分たちが助ける番と、地震発生から44分後の午後3時30分に第一陣375名が被災地に向け出発している。地震発生後48時間以内に、700名を復旧支援部隊として派遣した。

新潟支店は地震後1年の間に、93回にわたり復旧支援部隊を送り出し、その数は延べ4万6千名に上る。当時の新潟支店長だった矢萩さんは、山形県の国立鶴岡工業高専卒のたたき上げで、現在はお客様本部長として副社長に昇進している。

東北電力は、地震発生後は停電を早急に解消し、火力発電所を順次復旧させて電力供給力回復をはかった。復旧のためには金には糸目をつけないということで、すでに納入先が決まっていたガスタービンを、採算を度外視して世界中から買い集め、計画停電を回避した努力が紹介されている。

東北電力の原町火力発電所の事務本館ビルには、表面がはげ落ちて無残な姿となったタービン軸受が展示されているという。地震に対する準備を常に怠らない様にとの戒めからだ。

最後に町田さんは、新潟県の泉田知事と話した時に、泉田知事が柏崎刈羽原発の早期再稼働を認めてもよい唯一のシナリオは、「東京電力から東北電力が原発を買い取って、東北電力が運転する」ことだと語っていたことを紹介している。

この話は、にわかには信じられないが、東電と東北電力に対する泉田知事のとらえ方の違いは、たしかに両社の体質の違いを物語っているのかもしれない。

筆者の通っている財団があるビルには原子力規制庁が入っており、今でも毎週金曜日夜になると、原発反対派が10名前後集まってくる。

この原発反対派の人たちのように「原発はどこでも同じ」と考えている人は聞く耳を持たないかもしれないが、女川原発と東通原発の両方を現地取材してきた町田さんの報告は、原発問題を考える上で考慮に値する。


東北電力を持ち上げすぎという印象もあるが、「電力会社はどこも同じ」ではないことがわかる。読みやすく、参考になる本である。


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2014年05月03日

統計学が最強の学問である あたまにスッと入らない統計学のすすめ



家内が図書館から借りていたので読んでみた。

町田の図書館でも10冊蔵書があり、80人が予約していて、なかなか人気のある本だ。まさに、本はタイトルで売れるという好例だろう。

同じ著者・西内啓さんの、「1億人のための統計解析」の読んだ。こちらは、「統計学が最強の学問である」に輪をかけて理解できなかった。

エクセルを使うと相当高度な分析までできることはわかったが、ケースもあまり興味を惹くものではない。実際にエクセルを立ち上げて、試してみればまた違うのかもしれないが、そこまで興味が持てなかった。

ちなみに、ケースは1.和食レストランの夜の売り上げを増やす、2.事務機器販売の販売戦略を立てる、3.情シスの手助けなしで、ECサイトの顧客行動を分析する、4.画像処理機器の過去5年のデータを元に販売予測を立てる、というものだ。



さて、この「統計学が最強の学問である」という本だが、はっきり言って「統計学のすすめ」であって、「入門書」ではない。

しろうと向けに書かれた本にしては、難しすぎる。あたまにスッと入らないし、この本を読んでも単語の意味すらわからない。

たとえば、この本でよく出てくる「カイ(χ=ギリシャ文字)二乗(じじょう)検定」と「p値」だが、言葉の説明すらない。その部分を引用すると(本書83ページ)、

「こうしたクロス集計表(ある企業のA/Bテストの結果が前に出てくる)について『意味のある偏り(かたより)』なのか、それとも『誤差でもこれぐらいの差は生じるのか』といったことを確かめる解析手法に『カイ二乗検定』というものがある。…」

というぐあいに、結局「カイ二乗検定」というものが何なのか、わからずじまいだ。

同様に、この本で頻出する「p値」だが(本書84ページ)、

「この『実際には何の差もないのに誤差や偶然によって、たまたまデータのような差(正確にはそれ以上に極端な差を含む)が生じる確率』のことを統計学の専門用語で「p値」という。

このp値が小さければ(慣例的には5%以下)、それに基づいて科学者たちば、『この結果は偶然得られたとは考えにくい』と判断する。」

この「カイ二乗分析」や「p値」といった消化不良の専門用語が、この本のところどころに出てくるので、フラストレーションが溜まる。

目的がいわゆるビッグデータに興味がある人なら、以前このブログで紹介したトーマス・ダベンポートさんの「分析力を武器とする企業」が世界的ベストセラーで、具体例を満載しているので、こちらの方が良いと思う。

分析力を武器とする企業
トーマス・H・ダベンポート
日経BP社
2008-07-24


ちなみにダベンポートさんの本では、この本にも取り上げられている「オムツを買う人は、ビールも一緒に買う」という事例のルーツを調べた結果、それは都市伝説であろうと結論づけている。

ともあれ、参考になる点をいくつか紹介しておく。

★あみだくじ必勝法
あみだくじにも当たる確率がある。この本で紹介されている8本の縦線、4本の横線のあみだくじの場合、4番目の線の当たる確率が21%で、一番右の8番目の線は3.3%だという。

★ダイレクトメールで売上を上げる方法
西内さんがかかわった案件で、いままで漫然と送っていたダイレクトメールを、「どういった顧客には送り、どういった顧客には送らないか」を最適化することで、同じコストで、売上を6%上げる「ズル」ができたという。

DMによるマーケティングの高度化に興味がある人には、まずはこのブログの詳細なあらすじを読んでから、「TESCO顧客ロイヤルティ戦略」を読むことをおすすめする。

Tesco顧客ロイヤルティ戦略
C. ハンビィ
海文堂出版
2007-09


★サンプリングが情報コストを激減させる
分析対象のデータをすべて分析対象とする実務上の必要はない。「標準偏差」という考えが80年以上前に統計学で生まれた。

たとえば失業率が6%、標準偏差が0.5%だったとしたら、失業率が6%+/ー1%の5〜7%に収まっている確率は95%だということだ。

ある一定数のサンプル数があれば、それ以上増やしても、標準偏差の差は小さい。たとえば10万人の顧客のデータを調べる時、8,000名まで調べれば、標準偏差は1%となり、実務上はかなり正確なデータとなる。

ちなみに、前述のTESCOは、以前は全英のスーパーマーケットの売上POSデータの5%を分析対象としていた。競合のSainsburyは100%分析しているので、現在はもっと精度を上げてきているかもしれない。

★世間にあふれる因果関係を考えない統計解析
この説明も参考になる。たとえば、ある商品の購入者にその商品の広告を見たかと聞くと、5割近くが見た・たぶん見たと回答したとする。これで単純にキャンペーンの効果があったと結論づけることはできない。

非購入者にも、その商品の広告を見たかと聞くと、非購入者の方が広告を見たという結果が出ることがあるからだ。

「広告を認知していたから商品を購入した」のか、「商品を購入したから広告をその後も認知していた」のかがわからないのだ。これが「因果関係の向き」だ。

★「ランダム化」は最強の武器
現代統計学の父として、この本で紹介されているロナルド・フィッシャーは、ミルクティーは牛乳を先に入れるか、紅茶を先に淹れるかで議論になったときに、それぞれの淹れ方のカップを10個用意して、ランダムに置き、婦人にテストさせた。1920年代末のことだ。

これがランダム化比較実験の最初だという。その他にもフィッシャーは、農地を40に分割して、ランダムに20カ所選んで、肥料Aと肥料Bをテストするといったランダム化実験を行っている。

ちなみに婦人は正確に違いを言い当てたという。その後2003年に英国王立化学協会は、牛乳は75度を超えると変質するので、牛乳は紅茶の前に注がれるべきだと発表しているという。

なるほど、だから低温殺菌牛乳は65度とか75度とかで加熱殺菌しているので、味が変わらないのだろう。



もっとも、日本の普通の牛乳の場合は135度で数秒殺菌しているので、日本の牛乳でミルクティーを作れば、どちらが先でも味は変わらないかもしれない。

★「ミシンを2台買ったら1割引き」で売上は上がるのか?

アメリカで成功したキャンペーンの事例だ。このキャンペーンにより、顧客はわざわざ友人や隣人を誘って、共同購入を呼び掛けた。つまり、優秀なセールススタッフを雇い入れるのと同じ効果があったのだ。

ミシンを2台も買う人はいないので、不発に終わったキャンペーンでは?という第一印象だったが、なるほどと思う。こんな考え方もあったのだ。

この本の後半はかなり専門的な説明で、回帰分析一般化線形モデル重回帰分析ロジスティック回帰、テキストマイニングの「形態素解析」、ベイズ派と頻度論派の確率をめぐる対立、といった話題が紹介されている。

筆者が大学の教養課程で受けた統計学の授業の教官は、たしか村上さんだったと思う。てっきり、村上陽一郎教授だとばかり思っていたが、村上正康教授かもしれない。村上正康教授は、「統計学演習」という本を出している。

統計学演習
村上 正康
培風館
1989-01



チャレンジしてみたい人にはいいかもしれないが、統計学の入門書としては、ちょっと難しいので、統計学のすすめとして読むのが良いと思う。


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