2015年03月24日

【再掲】マイナンバー制度と企業の実務対応

2015年3月24日追記:

政府がマイナンバーの理解度テストをインターネットで公開している。

全部で10問あり、参考になるので、ここをクリックして一度試してほしい。

ちなみに、同じサイト(Yahoo!の特別ページ)で上戸彩さんのCMと、上戸彩さんのメッセージを公開しているので、こちらも紹介しておく。


2015年3月9日追記:

政府が上戸彩さんを使って、マイナンバーの宣伝を始めた。どうってことないCMだが、まずはマイナンバーという名前の周知を狙っている様だ。




2015年2月25日再掲:

今年に入って一般的なマイナンバーの実務対応セミナーはどこも満席が続出している。会社の友人に教えてもらった最近の内閣府のアンケートでは、マイナンバー制度の内容まで知っていたという人は28.3%に留まるという結果が出ている。

個人が手書きで対応するなら、全く問題ないが、税金関係や社会保障関係の処理をシステム化している企業では、システム改変等が必要となる。

日本では数年前からプログラマー不足が恒常化しており、一時はやった中国などでのオフショア開発も最近は下火で、多くのシステム開発会社では需要はあるが、人手不足で対応できないという状態が続いている。

2015年2月23日に発表された帝国データバンクの「人手不足に対する企業の動向調査」でも、従業員が最も不足しているのは「情報サービス」で、「不足」と回答した割合が59.3%となり、業種別に見て最も高かったという結果を公表している。

帝国データバンクでは、”「人材不足が深刻化しており、IT エンジニアが確保できない」(ソフト受託開発、東京都)や「人材不足で仕事を断っている」(ソフト受託開発、京都府)など、年度末の需要期に加えて、マイナンバー制度の導入や金融機関のシステム投資拡大などもあり人手不足が高水準で続いている。”という解説も付けくわえている。

日本の全法人約400万社が、2016年1月からマイナンバーの利用が義務付けられているので、マイナンバー対応のシステム改変だけでも、大変なシステム開発ラッシュとなることが見込まれる。

システム改変を伴うマイナンバー対応準備は前広に実施する必要があるので、「マイナンバー制度と企業の実務対応」のあらすじを再掲する。


2015年1月12日追記:

この本の著者の榎並さんが、2014年11月10日に開催された経団連の「マイナンバー実務対応シンポジウム」で講演しているので、紹介しておく。配布資料はここをクリックしてダウンロードして頂きたい。

シンポジウム全体の議事要旨と配布資料も公開されている。

この配布資料と榎並さんの講演要旨を読めば、実務対応で何をやらなければならないかよくわかると思う。

詳しくは本を読むとして、とりあえずは配布資料を参照してほしい。


2014年12月29日初掲:



2015年10月に全国民に対して配布されるマイナンバー制度の企業対応をまとめた本。

著者の榎並利博さんは富士通総研の主席研究員で、このブログで紹介した「マイナンバーがやってくる」も共著者として出版しているマイナンバーのオーソリティだ。



マイナンバーについては、内閣官房の社会保障・税番号制度のウェブサイトに掲載されているマイナンバー制度概要資料が参考になる。他にも「マイナンバー制度で企業実務はこう変わる」などの企業向け解説書もある。



読み比べてみたが、榎並さんの本の方が、分かりやすく、いろいろな情報満載で、実用的だと思う。

この本の「序章」を読めば、大体やるべきことがわかる

この本の最大の利点は「序章」(4ページ〜16ページ)を読めば、やるべきことが大体わかる点だ。実務書として大変よくできていると思う。

「序章」は次のような節にわかれている。

チェックポイント 1.マイナンバー対応の組織体制

民間企業は基本的には、「個人番号関係事務実施者」(単にマイナンバーを行政機関に提供するなど、補助的に扱う人)となるが、企業年金と健康保険組合に限っては、行政機関と同じ「個人番号利用事務実施者」(マイナンバーを業務利用する人)となる場合がある。

「個人番号利用事務実施者」となると、マイナンバー導入のためのシステム改変前に、「特定個人情報保護評価」(Privacy Impact Assessment=リスク分析)を実施する必要があり、また国の「情報提供ネットワークシステム」に接続するので、それなりの情報セキュリティが必要だ。違反した場合には罰則が科せられる。

「マイナンバー法」は「個人情報保護法」(一般法)に対して、特別法という位置づけとなるので、マイナンバーの取扱いに限っては、「個人情報保護法」の要求事項に加えて、「マイナンバー法」の要求事項も満たさなければならない。

民間企業でマイナンバーを取扱うのは、次のような部署だ。

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出典:本書5ページ

民間企業は現在は従業員の住んでいる自治体ごとに仕分けて、源泉徴収票と給与支払調書を郵送している。これが大変な手間だった。

マイナンバーを導入することによって、今後はオンラインでeLTAX(”エルタックス”=地方税ポータル)にデータを送れば、マイナンバーを利用して、eLTAXが、税務署やそれぞれの自治体に必要なデータを振り分けて送信することになり、民間企業の手間は軽減される。

一方、マイナンバーの取扱いで最も注意すべき点は、現状では税金、社会保険、健康保険(+激甚災害対応)以外の目的でマイナンバーを利用することは法律で禁止されていることだ。

たとえば、社員番号としてマイナンバーを利用することなどは、法律上禁止されている。だから、マイナンバーと他の個人情報を一緒に記載したエクセルシートなどを作成することは、上記の目的に限られる。

罰則も個人情報保護法に比べて、各段に厳しくなり、保護法では、主管官庁の改善命令等に従わない場合のみ、罰則が適用されたのが、今度は不正提供や不正取得、漏えいに直接罰が設けられるようになった。不正手段でカードを取得することだけでも最高6か月以下の懲役刑が課せられる。

図1




















出典:内閣官房 社会保障・税番号制度 ホームページの「番号制度の概要」資料


チェックポイント 2. すべての民間企業が対応しなければならないこと

「個人情報保護法」は5,000件以上の個人情報を取扱っている法人・個人が対象だが、マイナンバーには5,000件という制限はなく、すべての民間企業が対象となる。日本には約400万社の企業があるといわれている。そのすべてが2016年1月からマイナンバーに対応する必要がある。

すべての民間企業は、マイナンバーを安全に管理するために規則を制定したり、教育研修を行ったり、取扱う従業者に対して適切な監督を行うことが求められている。また、国や自治体が行うマイナンバー関係の施策に協力する義務もある。

といっても特に難しいことではない。2016年1月からの社会保険(厚生年金、介護保険等)、健康保険、税金の手続きの際に、個人から取得した本人及び必要に応じて被扶養者のマイナンバーと、国税庁より配布される法人番号の両方を記載するだけのことだ。

たとえば従業員、株主、講演講師、不動産賃貸人などからマイナンバーを集め、税務署への支払調書に記載することになる。

これが手書きで届出書に記入するなら話は簡単だが、多くの企業が給与計算とか税金の支払い、社会保険の手続きをシステム化しているので、2016年1月の運用開始前に、マイナンバーと企業番号の両方を組み入れるためにシステムを改変しなければならない。

これが「マイナンバー特需」といわれる、システム開発ラッシュだ。

システム的に対応できない企業は、社労士とか公認会計士などの外部の委託先に頼むことになる。

筆者はプライバシーマーク審査員として、システム開発会社を数多く訪問してきたが、日本のシステム開発会社はどこも人手不足で、今でさえ受注したくとも、人手が足りないので、受注できない状況だ。

みずほ銀行のシステム入れ替え特需(3,000億円といわれている)に加え、「マイナンバー特需」が出てくると、システム開発会社の能力を上回るシステム開発需要が発生することが予想されている。

一時、はやっていたような中国でのオフショア開発とかも、最近はほとんど話を聞かない。オフショア開発を続けている会社もあると思うが、とても日本の特需に対応できるような規模ではない。

多くの企業でのシステム開発の遅れが、筆者が最も懸念している点だ。


チェックポイント 3. 金融業界における特別な対応

金融業界では、毎年税務署に膨大な支払調書を提出している。たとえば、投資信託、先物取引、株式の特定口座、生命保険支払、年金型の生命保険等の支払調書などだ。これらの支払調書のすべてにマイナンバーを記載する必要がある。

また、マイナンバーのもう一つの利用目的として、激甚災害被災者救援がある。激甚災害で通帳やカードをなくした人にもマイナンバーの通知で、金銭の払い出しが可能となるのだ。


チェックポイント 4. マイナンバー関連業務の受託

マイナンバー関連業務の取扱いを再委託する場合には、委託元の承諾を得る必要がある。


チェックポイント 5. 民間企業がマイナンバーを業務利用する場合

民間企業でも「個人番号利用事務実施者」となる例外的な場合がある。

それは、確定給付あるいは確定拠出年金制度がある事業主が、従業者の企業年金の管理にマイナンバーを使う場合だ。

この場合、「情報照会者」として国の「情報提供ネットワーク」(2017年1月運用開始)に接続して、年金の給付状況などを照会することができる。


チェックポイント 6. 健康保険組合は個人番号利用事務実施者となる

大企業の健康保険組合や国民健康保険組合は、保険給付や保険料徴収にマイナンバーを利用するので、「情報提供ネットワーク」に接続する必要がある。

さらに、情報照会者から依頼があった場合、医療保険給付関係情報を提供しなければならない立場となるので、中間サーバを設置して、被保険者や被扶養者の医療保険情報を「情報提供ネットワーク」に提供する必要がある。

中間サーバが必要な理由は、マイナンバーの安全対策として、各機関が保存する個人情報とマイナンバーは直接結びつけず、マイナンバーを翻訳する符号を保存するという複雑な仕組みになっているからだ。

行政機関と同等の作業となるので、単一企業組合などの場合を除いて、特定個人情報保護評価も必要となってくる。

民間企業でのマイナンバー取扱いで、最もややこしいのはこの健康保険組合での取扱いだ。


チェックポイント 7. 情報提供ネットワークシステムへの接続

情報提供ネットワークシステムへ接続するためには、インターフェースシステム、中間サーバ、住基連携用サーバが必要となってくる。

住基連携用サーバが必要な理由は、上記のようにマイナンバーと個人情報を結びつける符号を住基ネットから取得するためだ。

住基連携用サーバで住基ネットから住民票コードを割り出し、それを情報提供ネットワークに送信して、住民票コードに対応する符号を生成してもらい、中間サーバ経由で符号を受領するという手順となる。


チェックポイント 8. 特定個人情報保護評価の実施

確定拠出・給付年金制度を持っている企業、単一組合を除く健康保険組合で情報提供ネットワークに接続する場合は、接続する業務について特定個人情報ファイル(マイナンバーを含む個人情報)が取扱われる前に、プライバシーに与える影響評価(PIA=Privacy Impact Assessment)を行う必要がある。

これが特定個人情報保護評価だ。プライバシーマーク認定企業では、社内に保有する個人情報を台帳等で特定して、次に取扱いのライフサイクル等に沿ってリスク分析をする。これと基本的には同じ作業となる。

この特定個人情報保護評価は、取扱う個人情報の件数、事故の有無、取扱者の人数により閾(しきい)値が設けられている。それが次の図だ。

閾値判断





















出典:特定個人情報保護委員会 特定個人情報保護評価指針の解説(平成26年11月11日)第5.

つまり、「基礎項目評価書」は1,000人未満の小規模機関を除いて、全部が必須。

1万人までの小規模は基礎項目評価書のみ、1万人~10万人、10万人〜30万人は、取扱者数や事故の発生によって、重点項目評価表または全項目評価表、30万人以上は全項目評価表という振り分けとなる。

作成した基礎項目評価書と重点項目評価表は、特定個人情報保護委員会に提出され、公表される

また全項目評価表は、特定個人情報保護委員会で内容審査及び承認を受けて公表される。

評価は年1回以上見直す必要があり、評価作業を実施する組織体制も確立しておく必要がある。


チェックポイント 9. マイナンバー対応のスケジュール

マイナンバー対応スケジュールは次のようになる。

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出典: 本書16ページ

前述のように日本全体でプログラマーが不足している。マイナンバー運用開始まで、あと1年あるともいえるし、あと1年しかないともいえる。

情報提供ネットワークに接続するのであれば、システムの要件定義段階までに特定個人情報保護評価も実施する必要がある。

早めに準備を開始しておくことが肝要だと思う。


その他の特記事項:

この本は上記のような実務的な対応のポイントを紹介しているとともに、マイナンバー制度そのものについても、様々な情報を掲載しており、参考になる。特記事項として箇条書きでいくつか紹介しておく。

★マイナンバーはもともと民主党のマニフェストで提案されていた
2009年の選挙の際の民主党のマニフェストで提案されていた。民主党政権時代に、法案が国会に提出されたが、審議未了で廃案となった。

2012年末に政権交代し、自民党はむしろマイナンバーの民間利用の検討準備期間を、当初案の5年から3年に早め、安倍政権下で2013年5月にマイナンバー法が成立した。

特定個人情報保護委員会の権限強化も、自民党案で織り込まれた。2015年には「個人情報保護法」自体が改正され、「特定個人情報保護委員会」が、諸外国の「個人情報コミッショナー」と同等の「個人情報保護委員会」に改組される見込みである。

★ノルウェーでは個人の氏名、住所、生年、年収、資産、税額までインターネットで公開されている。
これは驚きだ。北欧諸国はスウェーデンが1972年に世界で初めて個人情報保護法を制定していることでもわかるとおり、個人情報保護には世界で最も進んでいる地域とみなされている。

日本人から見れば、こういった情報を公開することは、プライバシーの侵害になるということで、大騒ぎになると思うが、ノルウェーではこういった情報はプライバシーとは考えられていないのだと。

インターネットで"Skattelister"で検索すると、ノルウェー語のページが出てくる。意味が良くわからないが、どうやら"Skatte=tax"、"Inntekt=income"、"formue=fortune=asset"のようだ。

トップページではノルウェーの高額取得者のリストや国民の年収分布グラフなどが公開されている。

日本ではプライバシーと個人情報の区別があいまいだが、ノルウェーでは資産や年収はプライバシーとはみなされていないのだろう。

★スウェーデンでは国税庁傘下のSPAR(住民情報登録機関)が住民情報を提供する名簿ビジネスを有料でやっている。ダイレクトメールを受け取りたくない住民はオプトアウト(受け取り拒否)できる仕組みだ。

日本のように名簿屋を悪者として敵視するのも、行き過ぎではないかという気がする。スパムメールは確かに迷惑だが、ダイレクトメールであれば、オプトアウトで受け取り拒否すれば、それで済むのではないかと思う。

★預金口座へのマイナンバー適用
マイナンバー法でも、投資信託、先物取引、株式の特定口座、生命保険支払、年金課型の生命保険等の支払調書にはマイナンバーの記載が求められている。最近の新聞記事で、2018年1月からは任意で、預金口座にもマイナンバーの記載を求めると報道されていた。

預金金利支払では税金を源泉徴収されており、時間の問題で、預金口座にもマイナンバー記載が求められるだろう。当然の流れだと思う。

★医療・介護分野へのマイナンバー導入
厚生労働省は医療分野を囲い込むために、日本医師会を巻き込んで自前の「医療ID」制度をつくりたいのだろうが、榎並さんは、マイナンバーによる医療分野の情報連携によるイノベーションの可能性と在宅医療・介護分野へのマイナンバーの活用のメリットを説いている。

マイナンバーの医療分野への活用というよりは、マイナンバーを本人確認の手段として使うという目的であり、方向性としては、正しいと思う。

「医療ID」などの独自の個人認証制度をつくるのは、政府として莫大な二重投資となり、マイナンバーが全国民に普及して、だんだんに民間利用なども進んでいけば、「医療ID」は、いずれ立ち消えとなるのではないかと思う。

★韓国の現金領収証制度
韓国では消費活性化と所得捕捉のために、1999年からクレジットカード利用促進策を実施し、2005年から現金の流れも捕捉するために、現金領収証制度を導入した。

現金で店で買い物する際に、住民登録番号と携帯電話の番号を店に提示すると、店側がクレジットカードのネットワークを利用して、オーソリ(支払確約)を受けて「現金領収証」を発行する。

消費者には、現金領収証は所得控除や福引に使えるというメリットがある。

マイナンバー制度への企業の対応についても、それに関連する話題についても、大変参考になる実用的な本である。


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2015年03月22日

税金を払わない巨大企業



国税庁勤務の経験もある中央大学名誉教授の富岡幸雄さんの本。富岡さんは「税務会計学講義」などの、税務会計に関する著書もあり、税務会計研究学会の顧問を務めている。富岡さんは今年90歳の高齢なので、実際には「取材・構成」として名前が出ている河貴一さんがライターだと思う。

税務会計学講義
富岡 幸雄
中央経済社
2013-04


この本の主張は、一言で言って本のタイトル通りだ。

この本はアマゾンの”なか見!検索”に対応していないので、”なんちゃってなか見!検索”で、目次と主要な章題を紹介しておく。大企業批判の、いわば「アジ=アジテーション本」であることがわかるだろう。

第1章 大企業は国に税金を払っていない

日本の法人税は本当に高いのか
マスコミが誤用する「実効税率」
巨大企業の驚くべき実効税負担率

1%未満は三大メガバンクとソフトバンク
5期通期でも三大メガバンク、持ち株会社がランクイン
なぜ商社の実行税負担率は低いのか

受取配当金が巨額でも法人税には関係なし
利益の10倍以上もある受取配当金
子会社、関連会社からであれば申告ゼロに

第2章 企業エゴむき出しの経済界リーダーたち
減税を叫ぶ経済界リーダーの厚顔ぶり
住友化学
みずほフィナンシャルグループ
三菱商事
三井物産

日産自動車
トヨタ自動車
本田技研工業
HOYA
ファーストリテイリング
日本航空

第3章 大企業はどのように法人税を少なくしているのか
巨大企業の負担は法定税率の半分以下
税金逃れの手口と税法上の問題
 ヾ覿箸硫餬彖犧
◆ヾ覿箸侶弍直霾鵑良堝明さ
 受取配当金を課税対象外に 上昇する配当性向 二重課税のケースはまれ

ぁ〜点覇段盟蔀嵋,砲茲詬ザ税制
ァ‘睇留保の増加策
Α.織奪ス・イロージョンとタックス・シェルターの悪用

А^榲床然柄犧
─.璽蹇Ε織奪スなどの節税スキーム
 多国籍企業に対する税制の不備と対応の遅れ
企業エゴと経営者の社会的責任

第4章 日本を棄て世界で大儲けしている巨大企業
日本企業もアメリカ発の手口を模倣
海外企業買収の裏には

第5章 激化する世界税金戦争
”企業性善説”が通用しない時代
議会で追及されたグーグルの節税手法
アップルCEOティム・クックの反論

アマゾンジャパンも法人税を払っていない
日本の大企業も税率が低い国へ
アメリカの知財戦略
租税国家を脅かす「国際的二重非課税問題」
「税源浸食と利益移転」を阻止せよ
OECD租税委員会の対応

第6章 富裕層を優遇する巨大ループホール
世界一安い日本の富裕層の税金
何度も延長された証券優遇税制
富裕層もタックス・ヘイブンを悪用
不十分な所得税最高税率の引き上げ

第7章 消費増税は不況を招く
消費増税はデフレ要因
置き去りにされる社会保障
消費税10%でも税制は大赤字
アンバランスな庶民と法人の税負担
中小企業の7割は赤字経営

第8章 崩壊した法人税制を建て直せ!
消費増税より税制の結果を修正すべき
法人税減税効果は果たしてあるか?
苦しい代替財源探し

この本で紹介している2013年3月期の実行税負担率の低い大企業のリストは次のようなものだ。

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出典:本書

連結純利益が1兆円もある三井住友FGが3百万円、同じく純利益が6、500億円のソフトバンクが5百万円の法人税しか払っていないとは、たしかに驚きだ。

同じ時期の11位から20位までのリストは次の通り。

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出典:本書

2008年から2012年3月期までの5期通算での実効性負担率の低いランキングは次の通りだ。

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出典:本書

11位以下、26位までは次の通りだ。

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出典:本書

この本は大企業への課税を強化しろという点にあるが、その中でも中心となるのが、受取配当金への課税を強化しろというものだ。

次が2008年から2013年3月期までの6期の受取配当金の多い企業ランキングだ。

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出典:本書

日本の大手金融グループ、大手商社、自動車メーカーや大手電機メーカーは国内、海外からの子会社からの受取配当金が税引前純利益の多くを占めている。これは日本企業の国際化や、グループ経営強化の流れを反映している。

受取配当金に対する課税は「受取配当金益金不算入制度」により、子会社は課税益金から100%不算入、それ以外は50%が課税益金不算入が認められている。これが大手企業の実効税負担率を軽減している。

この制度が導入された理由は、子会社で課税されて、親会社でもまた課税されるとなると、二重に課税されることになり、子会社を親会社が吸収した方が税負担が軽くなるという事態が生じるからだ。

金融機関や電機メーカーの実行税負担率が低いのは、各種の租税特別措置(研究開発や設備投資、環境やエネルギー対策等)や、欠損金の繰越が認められているからだ。

商社やメーカーの実行税負担率が低いのは、外国で支払った税金を控除できる外国税額控除を使っていることも大きい。外国で支払った税金は二重課税を避けるために、本邦では控除できるのだ。

一方、法人税減税をバランスさせる措置として、次のような代替財源確保策が打ち出し/検討されている。

1.欠損金の繰越控除制度の見直し
  繰越控除期間の延長、控除上限額の引下げ、帳簿書類の保存期間の延長と納税者側の立証責任の発生
2.受取配当等の益金不算入制度の見直し
  益金不算入制度の対象範囲や割合などの見直し
3.減価償却制度の見直し
  定率法を廃止し、定額法に一本化
4.地方税の損金算入の見直し
  法人事業税や固定資産税等の損金不算入化
5.中小法人課税の見直し
  中小法人の範囲見直し(資本金基準の見直し)、軽減税率見直し
6.特例措置の見直し、法人成りによる個人・法人間の税率差の歪みの是正(給与所得控除の見直し、
  留保金課税の中小法人適用)
7.公益法人課税等の見直し
  公益法人等の範囲や収益事業の範囲の見直し(例えば社会福祉法人が実施する介護事業を収益
  事業へ)、軽減税率とみなし寄附金制度の見直し
8.地方法人課税の見直し(法人事業税を中心に)
9.国際課税の見直し(外国子会社配当益金不算入制度の見直し)

この本の主張するように、たしかに法人の実行税負担率は低い。その主因となっている受取配当金の益金への不算入は、いずれにせよ見直されることになるだろう。

グーグルのダブルアイリシュ・ウィズ・ダッチサンドイッチという手法による国際節税手法も紹介されている。

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出典:efxcursion.com(ネット検索)

世の中には節税のために、複雑な仕組みを考える人もいるものである。

現在行われている法人税改革の必要性と、法人税負担の実態がわかって参考になる本である。


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2015年03月12日

生ませない社会 産科医療の実態



読書家の友人に勧められて読んでみた。

日本はいよいよ人口減少時代に入り、出生数も減少している。

日本_出生数と合計特殊出生率の推移














出典: Wikipedia Commons

出生数が減れば、産科の数もそれにしたがって減少するのは、やむを得ないところだが、日本の場合には出生数の減少以上に、産科の数の減少が激しい。

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出典:医療施設(動態)調査・病院報告の概況(全日本病院協会 医療行政情報)

たとえば1990年と2007年を比較すると、出生数は124万人から110万人に14万人、10%強減っている。一方、産婦人科数は一般病院では2、189から1,344に減少している。実に40%弱の減少だ。

ネットで検索してみたら、NTTコムリサーチが出している2007年の「産婦人科医が足りない!」というレポートが見つかったので、リンクで紹介しておく

このレポートによると、産科医の減少は出生数減少によるいわば需要減少を上回るペースで減少している、これは産科は夜間や休日でも対応が必要で、勤務がきついうえに、医療過誤で訴えられるリスクが高いからだ。

この本によると、ある大学病院の40代の産婦人科医の賃金は年間1,000万円程度で、アルバイトしたほうが高い給与が得られるという。

医療過誤保険の料率が高いため、若い医者は到底負担できないことも、産科医の高齢化が目立つ理由の一つだろう。

この本では、異常な産科医の労働条件が改善することが難しいなら、米国のように医療費を「ドクター・フィー」(直接報酬が医師に支払われるシステム)と病院に払うホスピタル・フィーに分ける制度にしなければ、インセンティブにつながらないという意見を紹介している。

この本では医療側の事情を紹介するとともに、産む側の女性の産前産後の休暇が取りづらい状況、職場でのマタニティ・ハラスメント、同僚の冷たい態度、夫の育休の取りづらさなど、この本のタイトル通り、日本がいまだに「生ませない社会」であることをレポートしている。

もちろん中には女性従業員が妊娠し、出産しても働き続けられるように、産前産後の休みと、育休を充実させ、保育面でも企業内保育所など、数々の便宜を提供している大会社もあるが、380万社あるといわれている日本の会社は、ほとんどが中小企業であることを考えれば、このような会社はごく一部と言わざるを得ない。

ちなみに企業内保育所は、そもそもラッシュアワーに子連れで会社まで来ることがきわめて困難なので、時差出勤とセットにしない限り、あまり意味がないと思う。

日本の出産では、帝王切開の比率が上がっている。

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出典:平成22年度我が国の保健統計 35ページ

高年齢出産が増えていることも、帝王切開の増加につながっているが、この本では「医師がうまいことを言って、帝王切開に持ち込む」という助産婦の発言を紹介している。

お産をやってくれる医師不足のためアルバイト医師を使っているが、アルバイト医師には残業させられないからとか、大病院では100人に一人でも異常が起こると、訴訟になるから経験を積めず、無難に帝王切開になってしまうといった病院側の理由なのだと。

帝王切開とならんで、会陰切開も不必要に増えているという。この本では、産科医師不足のため、看護師に施術させたという証言を紹介している。

筆者の長男は米国で生まれ、次男は日本で生まれた。

いずれも大学付属病院で生まれたが、米国の産婦人科の制度は、常日頃妊婦を診ている町の産婦人科が、いざ出産となると、大学病院の出産室を借りて赤ん坊を取り上げるというシステムで、医療設備の整った大学病院で出産するので、妊婦と家族の安心感は高い。

ただし、医療保険が普通分娩では大体出産後1泊程度しか認めないので、生まれるとすぐに退院となる。帝王切開の場合には5日ほど病院にいることになる。

会社の保険でカバーされたが、たしか一泊1、600ドル?程度で、ずいぶん高いと感じた記憶がある。

次男の場合は、妊娠中の診察も大学付属病院で診てもらったので、家から車で30分程度、家内が自分で車を運転していった。いよいよとなったら、タクシーで運び込んだ。

いずれも帝王切開で生まれた。長男の時は、当初は普通分娩で頑張ったが、なかなか生まれないので、心音が弱くなってきているとの医師の判断で、帝王切開に切り替えた。

筆者も消毒を受けて手術服に着替え、分娩室に入って家内の手を握って、励ましていたが、帝王切開となるので分娩室から出され、生まれた時に新生児を抱かせてもらった。

今は日本でも希望すれば、夫も分娩室に入って妻を励ますことができるのかもしれない。

次男のときは、日本で帝王切開だったので、生まれてすぐの処置が済んで新生児室に運ばれてくるのを待つばかりだった。

この本を読んで、昔のことが思い出される。


300ページ余りの本で、具体例をたくさん挙げている。

日本の産科医療にも、また妊婦の職場での処遇や産後の勤務待遇にも改善すべき点が多いことがよくわかる本である。


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2015年03月07日

世界で暗闘する超グローバル企業36社の秘密



読書家の友人に勧められて読んでみた。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で取り上げられている企業を紹介する。

金融
ゴールドマン・サックス
モルガン・スタンレー
バンク・オブ・アメリカ
パリ・オルレアンSA(ロスチャイルド家
ドイツ銀行(ドイチェ・バンク)
中国4大商業銀行の野望

エネルギー
BP Plc
ガスプロム
シェブロン・コーポレーション
中国3大国有石油企業の研究

鉱物資源
BHPビリトンリオ・ティント
ヴァーレ
(三井物産はヴァーレの持株会社ヴァレパールの15%の株式を保有)

商社
ジャーディン・マセソン・ホールディングス

資源商社
グレンコア・インターナショナル(グレンコア・エクストラータ、登記上の本社はタックス・ヘイブンのイギリス王室属領のジャージーにある)

メーカー
GE
(エディソンが創業したが、その後エディソンは持ち株を売却)

原子力総合
アレヴァSA

旅客機・軍需
ボーイング

マスメディア
ニューズ・コーポレーション

インフラ
GDFスエズ

建設
サウジ・ビンラディン・グループ

食品
ネスレダノンの「ボトルウォーター戦争」
アンハイザー・ブッシュ・インベブ

総合小売
ウォルマート・ストアーズ

電機・半導体・他
サムスン(三星)・グループ

財閥
タタ財閥

新興国
トルコ4大財閥 コチ サバンジュ ドアン ドウシュ

業界でトップの上位3社など、ルールに基づいたまとめ方はしておらず、随意リストなので、あまり整理されていない印象を受ける。

上記ではウィキペディアの記事を中心にリンクを入れておいたので、気になる企業があれば、リンクをクリックしてさらに詳しい紹介を参照してほしい。

この本で参考になったのがジャーディン・マセソンだ。

中国のお茶や生糸を輸入して、インドのアヘンを中国に売って、アヘン戦争の原因をつくったのがジャーディン・マセソンである。

日本では1859年に横浜に事務所を開設、続いて神戸、長崎にも事務所を開設し、長崎支店長のグラバーは武器商人として薩長を支援し、坂本竜馬の亀山社中との取引があった。明治になると三菱財閥の岩崎弥太郎と深くかかわることになる。

吉田茂首相の養父の吉田健三は、ジャーディン・マセソンの横浜支店長をつとめたあと、起業した。吉田茂は養父の莫大な遺産を相続している。

現在は日本での影響力はなくなったが、アジアでは依然として各国で建設、運輸、ホテル(マンダリン・オリエンタルなど)、製造業(インドネシアでトヨタ車を製造しているアストラ・インターナショナルなど)。

現在はジャーディン家の閨閥のケズウィック家が経営を握っている。

ボーイングの歴史も参考になった。

1929年にボーイング、ユナイテッド航空機、ノースロップ航空機、プラット&ホイットニー、シコルスキーなどが大合同してユナイテッド・エアクラフト・アンド・トランスポート社を設立したが、ルーズベルト大統領時代に独占禁止法違反で解体され、西部のボーイング、当部のユナイテッド・テクノロジー、航空会社のユナイテッド航空に分割されたのだ。

現在のCEOのジョン・マクナニーは、GEでジャック・ウェルチの後継者を争ったが、後継者レースに敗れ、スリーエムのCEOに転出、その後2001年にボーイングのCEOに選ばれたものだ。

マクナニーは、ジョージ・ブッシュ大統領とエール大学で同級生だったという。

グレンコアについても、筆者は依然は鉄鋼原料の貿易を担当していたので、思い出深い。

もともフィリップ・ブラザースにいたマーク・リッチが、独立してMarc Rich + CO.を設立し、石油ショックの時にイラン原油で大儲けしたが、イラン革命後もホメイニ政権と取引を続けて莫大な利益を上げていたため、脱税の容疑で米国から指名手配され、1990年にグレンコアに社名を変えたものだ。

現在ではメタルのほか、石油、石炭の資源商社としてロンドン証券取引所などに上場し、日本商社を上回る時価総額で評価されている。

筆者が会社に入社した約40年ほど前はフィリップ・ブラザースは世界でも最大手のメタルトレーダーで、その後、証券会社のソロモン・ブラザースを買収するほどの勢いがあった。

東京・大阪はじめ、世界中にオフィスがあったが、名前もフィブロ(Phibro)に変えて、シティグループを経て、現在はオキシデンタル・オイルの子会社として米国コネチカット、ロンドン、アイルランド、シンガポールの4か所のみにオフィスがある。

フィブロがまだ会社として残っていたことも驚きだが、世界最大のメタルトレーダーがここまで規模が小さくなってしまったことも、また驚きだ。

自分ではこれまでの40年は短いと感じているが、やはり40年間の栄枯盛衰は避けられないものだ。

平家物語の「祇園精舎の鐘のこえ、諸行無常の響きあり、沙羅双樹の花の色、盛者必衰のことわりをあらわす。…」という冒頭の文が、思い出される。

上記のリストで社名をクリックすれば、ウィキペディアでかなりのことはわかるが、本としてまとまっていた方が読みやすいので、興味のある人は一度手にとってみてもよいと思う。


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Posted by yaori at 23:27Comments(0)TrackBack(0)