2015年07月27日

コトラーの戦略的マーケティング いまだに平積みで売られている本



フィリップ・コトラー教授のマーケティングの古典を読んでみた。今でも三省堂のビジネス書コーナーには、平積みで置かれている。2000年に翻訳が出たので、原典は1999年、つまりインターネットバブルの時に出版されている。

出てくる事例は、たとえば1999年10月に亡くなったソニーの故・盛田昭夫さんだったり、現在は苦戦しているマクドナルドや、政府支援でやっと立ち直ったGMの今は無くなったサターンデビジョンなどが成功例として取り上げられていたりして、古いものもあるが、依然としてマーケティングの基本を理解するには適切な本である。

まずマーケティングとセールスの違いを知らなければならない。筆者も1986年から1990年の最初の米国駐在時に、米国人のセールスマネージャーを採用するときに、米国人の人事担当VPから「マーケティングマネージャーとセールスマネージャーは違うよ」と言われて知った。

良く知られた寓話を使って、コトラーが説明している。

南太平洋に浮かぶ島に自分たちの市場があるかどうかを検討している靴メーカーの話だ。最初に派遣された受注担当者は、「ここの人びとは靴をはいていない。ここには市場はない」と報告した。

この報告に納得できなかった社長は次は営業マンを送った。「ここの人びとは靴をはいていない。ものすごい市場がある」と電報を打った。

この営業マンが圧倒的な数の裸足の人たちを目撃して、われを忘れてしまったので、今度はマーケターが送り込まれた。

部族の首長と数人の現地人にインタビューしたマーケターは、こう電報を送信した。

「ここの人びとは靴をはいていない。しかしながら、彼らは足に問題を抱えている。私は、靴をはくことで足の問題が防げることを首長に示した。首長はその考えに夢中になっている。部族の70%が一足10ドルで靴を買うだろうと首長は見ている。

初年度、われわれは5000足を販売できる見込みだ。島に靴を運ぶ輸送費と流通経路の整備にかかる費用は1足あたり6ドル。初年度の利益は2万ドルを超える計算になる。

われわれが計画している投資額からすると、投資利益率(ROI)は20%となり、通常の15%を上回っている。言うまでもなく、この市場に参入することで、将来手に入る価値は高い。ぜひ参入すべきである。」

この寓話にあるように、マーケティングは次の要素で構成されている。

R=調査(Research)

STP=セグメンテーション(S)、ターゲティング(T)、ポジショニング(P)

MM=マーケティングミックス(一般には4Pとして知られている、プロダクト(製品)、プライス(価格)、プレイス(流通チャンネル)、プロモーション(宣伝))

I=実施(インプレメンテーション)

C=コントロール(フィードバック、結果の評価、STP戦略とMM戦術の見直し、もしくは改善)

いわゆるPDCAによる継続的改善と似た考え方だ。

参考になる例がいろいろ紹介されている。

イケアの創業者イングヴァール・カンプラッドは、スウェーデンの高い家具に悩まされていた若い家族が、安くて高品質の家具が買えるようにした。その戦略は、次の通りだ。これが「マーケティング機会」だ。
1.大量購入・大量注文で大幅なディスカウントを達成する
2.家具を組み立て式にして、輸送費を節約する
3.顧客はショールームで見て購入し、自分の車で持ち帰るので配送料がかからない
4.顧客は自分で家具を組み立てる
5.代表的なスウェーデンの家具小売店が高いマージンで少量の家具を販売しているのに対して、イケアは低いマージンで大量に売りさばく

マクドナルドのレイ・クロックの非凡な才能は、多くの人が早くて、安くて、おいしい食べ物を望み、同じ味を期待していることに気が付いたことにある。マクドナルドが登場するまで、そうしたサービスを提供したものはいなかった。

マイケル・ポーター教授は、「競争の戦略」のなかで、企業の各事業部は、次のいずれかに集中すべきだと提案している。
1.製品の差別化戦略
2.コスト・リーダーシップ戦略
3.ニッチャー戦略
このいずれも中途半端に終わると、どれか一つの戦略に優れた競合企業に負けるだろうと警告した。




★クラリタス社(現在はNielsenの一部)が開発したプリズム(Potential Rating Index by Zip Markets)は郵便番号で分割して、全米50万以上の住宅区域を、プリズム・クラスターと呼ばれる62の異なったライフスタイルのグループに分類している。クラスターは39の因子をグループ化した次の主要な5つのサブカテゴリーを考慮して決定されている。
1.教育水準と経済的な豊かさ
2.家族のライフサイクル
3.生活の都市化の度合い
4.人種と民族性
5.移動性

それぞれのクラスターは次のような名前が付けられている。
1.Blue Blood Estates(名門出)
2.Winner's Circle(勝利者の集まり)
3.Hometown Retired(悠々自適の引退者)
4.Shotgun and Pickups(「上昇志向者」という訳になっているが、銃を好み、シーズンになるとピックアップトラックで狩猟に出かける人たち)
5.Back Country Folks(Uターン族)

Wikipedia英語版にすべて列挙されているので、参照願いたい。

いくつか例を挙げると。
6.American Dream(大都市に現れた高級志向の少数民族の集まり。彼らは輸入車、雑誌の「エル=Elle」、シリアルのミューズリー、週末のテニス、デザイナーブランドのジーンズを好む傾向がある。平均世帯所得は4万6千ドル)。

7.田園生活を好む産業労働者(中央街のオフィスや工場に勤める若い家族が含まれ、彼らのライフスタイルは、トラック、雑誌の「トゥルー・ストーリー」、シェイクン・ベイク(即席のケーキの素)、熱帯魚によって代表される。平均世帯所得は2万2千9百ドル)。

8.カシミヤとカントリークラブ(これらの年輩のベビーブーマーたちは、郊外で豊かな生活を送っている。彼らが購入するのは、メルセデス・ベンツ、「ゴルフ・ダイジェスト」誌、塩の代替製品、ヨーロッパ旅行、最新型のテレビ。平均世帯所得は6万8千6百ドル)。
 
なかなか興味深い。

★統合型マーケティング・コミュニケーション(IMC)
コトラー教授は、企業のマーケティング・コミュニケーション活動がきちんと統合された形で展開されていないことは周知の事実であり、これを解決するには、VPC(Vice President of Communications)を任命すればよいと語る。VPCが関与するのは単に一般的なメディア媒体にとどまらず、会社の服装規定や業務用トラックのペインティング、工場の外観など多岐に及ぶ。

顧客や見込み客は次のようなちょっとしたことで、その企業や製品について、自分なりの判断を下してしまうことがある。
・見込み客が工場を訪問した時、その散らかりようや床のゴミに唖然とした。
・見込み客が営業マンの訪問を受けた時、営業マンの息が臭く、服装もだらしなく、態度にしまりがなかった。
・顧客が企業広告を見て、センスがないと判断した。
・大々的に広告を打っている勢いのある企業のトラックが、実は古く、おんぼろであることに顧客が気づいた。

★よりよいサービスの例 
フォーシーズンズホテルや、ノードストローム百貨店の例は有名だが、コトラー教授は次のような例を挙げている。

USAA保険 
軍人とその家族に、保険業と銀行業のサービスを販売している。戸別訪問は行っておらず、保険はすべてテレマーケティングを通して販売している。USAA保険のCTIには、各顧客の記録が入っており、電話を受けると顧客の記録がテレマーケターの画面に映し出され、テレマーケターは顧客が喜ぶことをいろいろと話しかけることができる。

サックスフィフスアベニュー 
個人向けのショッピング・サービスでは、顧客は電話で予約し、店に着くとスイートルームに通され、専任の購買代理人が服を運んでくるか、自宅に服を届ける。もし全店セールの予定があれば、自宅に連絡が行き、もし同じものを購入した後で、セールが行われれば、代金が払い戻される。毎年一定金額以上を購入した顧客には、サックスは贈り物を送っている。

ハーレー・ダビッドソン 
ハーレーのバイクの購入者には、ハーレー・オーナーズ・グループ(HOG)の初年度無料会員証が与えられる。会員更新料は年間40ドルで、永年会費は350ドルである(注:現在は会費は上がっているかもしれない)。36万人の会員には、次がプレゼントされる。
1.特典情報が記載された会員マニュアル。
2.40ページの隔月誌 HOG Tales
3.オートバイ雑誌 The Enthusiast
4.特製のピンとバッチ
5.HOGツーリング・ハンドブック
6.12段階の達成段階別マイレージ・プログラム
7.ツーリングのABCに関したコンテスト
8.世界中どこでもハーレー・ダビッドソンのバイクがレンタルできるプログラム
9.月例会や組織的なツーリング、資金集めの各種活動への招待
10.バイクの手入れとHOGライフスタイルについての記事が掲載された月刊誌
11.安く加入できる傷害保険及び生命保険

ハーレー・ダビッドソンは自社製品を愛し、お互いに集うことが好きな顧客のブランド・コミュニティの構築に成功し、さらにブランドを革のジャケット、サングラス、ビール、タバコまで拡張した。



★資生堂クラブ(花椿クラブ)、クラブ任天堂リアドロ・コレクターの集いなど紹介している。

★マーケティング監査
コトラー教授は、最後にコペルニクス社によるマーケティング監査の手法について紹介している。

Kotler1





















Kotler2





















出典:本書309〜311ページ


この手のマーケティングの教科書としては読みやすい。マーケテイングにおける基本が具体例とともに紹介されていて参考になる本である。


参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。

  
Posted by yaori at 00:06Comments(0)TrackBack(0)

2015年07月19日

憂欝でなければ仕事じゃない



幻冬舎社長の見城徹さんと、サイバーエージェント社長の藤田晋さんが、見城さんの35の過激な言葉一つ一つについて交互に語る本。

この本をつくるために、藤田さんは2010年の後半から、2011年の3月まで毎週のように見城さんと打ち合わせしてきたという。

この本はアマゾンの”なか見!検索”に対応していないので、目次を紹介しておく。

目次1






















目次2























出典:本書

このブログでは見城さんの「編集者という病」を紹介している。この本を読めば、見城さんが大変な人だということがわかるだろう。




この本でも見城さんらしい過激なフレーズが並ぶ。「憂鬱でなければ、仕事じゃない」というこの本のタイトルからして過激だ。

一方のサイバーエージェントの藤田晋さんのベストセラー「渋谷で働く社長の告白」のあらすじも、このブログで紹介している。




「渋谷で働く〜」を出した頃は、女優の奥菜恵と結婚していた時代なので、2004年頃の話だ。今は当然経営者としても成長して、この本でも、なるほどと思わせる発言が多い。

いくつか印象に残った部分を紹介しておく。

ふもとの太った豚になるな。頂上で凍え死ぬ豹になれ

これはヘミングウェイの「キリマンジャロの雪」の冒頭に出てくる一節だ。




グレゴリー・ペック主演の映画でも最初の1分45秒くらいに、この話が出てくるので、注意して見て欲しい。



見城さんは、頂上で凍え死ぬ豹になりたいといつも思っていると。だから、1997年に創業4年目で幻冬舎文庫を立ち上げたときは、一挙に62冊の文庫本を売り出した。文庫は新刊書のストックがないとできないので、通常は10年かかるという。

幻冬舎の前に大手出版社で文庫を出したのが光文社で、幻冬舎文庫スタートより12年前に31冊の文庫を出した。だから幻冬舎は、その倍の62冊の文庫を売り出したのだ。

その時に新聞の全面広告を出し、「新しく出ている者が無謀をやらなくて、一体何が変わるだろうか」というキャッチで宣伝した。まさにその当時の見城さんの正直な気持ちそのものだったという。

アルチュール・ランボーの詩集「地獄の季節」の”俺たちの舟は、動かぬ霧の中を、纜(ともづな)を解いて、悲惨の港を目指し”という一節をイメージした荒海に小舟が乗り出していくイラストをつけたという。

地獄の季節 (岩波文庫)
ランボオ
岩波書店
1970-09



幻冬舎には広告部員は見城さん一人だけだと。自分で広告代理店と交渉し、メディアを決め、どんな広告にするかイメージし、コピーも手掛ける。キャラクターが必要なら、自分で選び、交渉する。

宣伝だけは誰にも任せない。最初からそう決めていた。
それは、見城さんが本を売るセンスに誰よりも自信があるからだと。


スポーツは仕事のシャドーボクシングである

見城さんは、週6日ジムに行くという。都内4つのホテルのジムの会員になっているのだと。仕事が一段落した時に、一番近いところに行けるようにするためだ。

若いころは、仕事よりトレーニングを優先して、ボディビルの大会に出ようとベンチプレス130キロまで挙げたという。

今でも見城さんは、強迫観念に駆られながらトレーニングするという。トレーニングすると、心の中でファイティングポーズを取れるからだ。

トレーニングは決して楽しいことではないが、自分を追い込み、憂鬱なことを乗り越える。そうすることが、仕事をするときの姿勢に、大きな影響を及ぼす。そもそも仕事とは、憂鬱なものだと。

筆者もこの態度を見習わなければならない。筆者もトレーニングをしているが、ジムに行くのは週1回、プールに行くのも週1回。減量中のこともあり、ベンチプレス100キロまで戻したものが、95キロまで落ちている。マズイ傾向だ。

週6日はともかく、やはり週3日くらいはやらないと。

見城さんは自分の言葉ながら、「憂鬱でなければ、仕事じゃない」という本のタイトルが気に入ったという。デューク・エリントンの「スイングしなけりゃ意味がない」という曲と重なったからだと。



実際、仕事は「正」であり、憂鬱は「負」である。その両極をスイングすることで、はじめて結果が出るのだと。

見城さんは、「京味」(新橋)に行けなくなったら、仕事はやめるという。「京味」は一人5万円くらいする。「京味」に行けなくなったら、仕事がうまくいかないということを意味するので、見城さんにとっては、「京味」が絶対的な仕事の基準なのだと。

藤田さんにとっては、西麻布の「エスペランス」が「京味」にあたるという。

一つ一つのテーマについて見城さんと、藤田さんが見開きで2ページずつ書いており読みやすい。見城ワールドと藤田ワールドの入門書のような内容だ。

簡単に読めるので、是非一度手にとって見て欲しい本である。


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Posted by yaori at 01:14Comments(0)TrackBack(0)

2015年07月12日

卵を1日2個以上食べてもコレステロールは上がらない?

会社の診療所に行った時に、いつも「ロハス・メディカル」という月刊の院内情報小冊子を待ち時間などに目を通すが、その2015年7・8月号に「それって本当?タマゴを一日2個以上食べてもいい」という記事があった。

卵とコレステロール_ページ_1





















卵とコレステロール_ページ_2




















出典:「ロハス・メディカル」2015年7・8月号 P2〜5

なんと20世紀初めにウサギを使って、卵の白身や卵黄を食べさせたら、血管や内臓疾患が発生したという実験が、いままでタマゴを食べると血中のコレステロールが上がるという説の根拠だったという。

実はウサギは草食動物で、自分ではコレステロール生成ができない。卵黄などを食べさせたら悪影響が出るのは当然で、実験結果を雑食動物の人間に当てはめることは無理があった。

同じロハス・メディカルの2015年5月号にあるように、人間の血中のコレステロールのほとんどは体内で作られるので、食品中のコレステロールは関係ないことがわかったのだ。

本当にコレステロールを上げるのは、マーガリンなどに含まれるトランス脂肪酸ではないかという説が現在は支配的だという。

実はこの説は比較的最近出てきたもので、米国でも今年の2月に農務省と保健福祉省が、コレステロールの一日当たりの摂取量の上限を廃止する草案を発表したばかりだ。

筆者もコレステロールが上限値に近いので、いままで卵は食べるときでも、1日1個に制限していたが、これからはどうやらあまり気にする必要はなさそうだ。

大変役立った。

病院に行ったら、この「ロハス・メディカル」を待合室に置いているところも多いので、見つけたらぜひ一度目を通すことをおすすめする。


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Posted by yaori at 00:58Comments(0)TrackBack(0)