2016年02月13日

武道館 朝井リョウの新作 今度はアイドル路線

武道館
朝井 リョウ
文藝春秋
2015-04-24


筆者が注目している若手作家の朝井リョウさんの新作。

デビュー作は映画にもなった「桐島、部活やめるってよ」だ。






今度は「NEXT YOU」という10代のアイドル少女グループが主人公だ。

本の帯のつんく♂の推薦文がすばらしい。

「アイドルって作るものでなく、楽しむものである方が良いに決まってる。

なのに、著者はこうやってアイドルを生み出す側にチャレンジした。

それも文学の世界で……。

なんたる野望。

なんたるマニアック。

なんたる妄想力。」

筆者は小説は感情移入できるものが好きなので、正直この本はツラかった。

ただ、アイドルビジネスの2つの問題点、つまりメンバーの独立とスキャンダル(恋愛禁止からの逸脱)にフォーカスして掘り下げているので、よく取材しているなあと感心する。

物語は最初は6人でスタートした「NEXT YOU」というアイドルグループの一人が、1年もたたずに「卒業」するところから始まる。「みんなで武道館に行こう」と約束していたメンバーの一人が脱落してしまったのだ。

主人公の愛子は、高校に通いながらアイドルの仕事を続けている。同じマンションの上の階に住む大地とは幼馴染(おさななじみ)だ。

大地と愛子は子供の時から仲良しだ、しかしアイドルは恋愛禁止。たとえ幼馴染でも。

アイドルグループは愛子たち1期生の次は2期生、3期生とどんどん増殖していく。NEXT YOUもいったん5人になった後、どんどん人数が増えていく。

「ファン裏切り親密デート」、「破廉恥スキャンダル」などというマスコミの報道。

握手会や投票権付CD商法。

そしてメンバーの「卒業」。

目標にしていた武道館でのコンサートが決まったのに、なんで今「卒業」なの?…。

というようなストーリーだ。

つんく♂の「なんたる妄想力。」という表現がぴったりだ。

朝井さんは出版社社員との兼業はどうやら2015年でやめて、現在は作家に専業しているようだ。

それで出版ペースも上がっているのだと思う。

才能ある作家だけに、どんどん新しいジャンルに挑戦していってほしいものだ。


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Posted by yaori at 23:01Comments(0)TrackBack(0)

2016年02月11日

鹿の王 2015年本屋大賞受賞作 中央アジアを舞台にしたファンタジー小説

鹿の王 (上) ‐‐生き残った者‐‐
上橋 菜穂子
KADOKAWA/角川書店
2014-09-24


鹿の王 (下) ‐‐還って行く者‐‐
上橋 菜穂子
KADOKAWA/角川書店
2014-09-24


2015年の本屋大賞を受賞した文化人類学者の上橋菜穂子さんの小説。

中央アジアの一国で、現在は隣国の東乎瑠(ツオル)に併合されたアカファ国の戦士ヴァンと、東乎瑠(ツオル)の医師ホッサルが活躍する物語。

KADOKAWAがこの本の紹介サイトを開設しており、そこに登場人物のマンガがある。登場人物のイメージが湧くと思うので紹介しておく。

鹿の王























出典:KADOKAWA 鹿の王特設サイト

アカファ国の戦士「独角」は、東乎瑠(ツオル)との防衛戦で全滅し、リーダーで飛鹿(ピュイカと呼ばれる乗鹿用の鹿)乗りの名人のヴァンは捕虜となり、岩塩鉱山で強制労働を強いられる。

ある日、岩塩鉱山に狼に率いられた狼犬の群れが突入し、鎖を自力で断ち切って逃げ出したヴァンと、かまどに隠されていた赤ん坊のユナ以外で鉱山に居た全員は狼犬(半仔=ハンチャイと本の中では呼ばれる)に襲われて死んでしまう。

狼に率いられた狼犬の群れは、東乎瑠(ツオル)の支配者の鷹狩りにも乱入し、東乎瑠(ツオル)の王の長男までもが狼犬にかまれて命を落とす。

この病は高熱が出て、全身に発疹が広がるという症状を示すものだが、単なる狂犬病ではなく、狼犬にかまれなかった者も同じ病で命を落とす者が続出する。狼犬の血をすったダニからも感染していたのだ。

東乎瑠(ツオル)の医師ホッサルは、この病が単なる狂犬病とは異なることに気づき、血清をつくるために狼犬にかまれても死ななかったヴァンを狩人のサエに頼んで探す。

病気を調べていくとホッサルは今回の一連の出来事の裏で、大掛かりなたくらみを企てている者がいることに気づく……。

というような雄大な自然を背景にしたドラマだ。

作者の上橋 菜穂子さんは医者ではないが、伝染病のことを相当研究していることがわかる。

医師のホッサルを主人公として描いていることから、この本は医療小説として2015年の日本医療小説大賞を受賞している。

単行本で上下1,100ページ余りの大作なので、何日もかかって読んでいるうち、東乎瑠(ツオル)とか飛鹿(ピュイカ)とかの独特の読み方をつい忘れてしまうが、気にせず読んでいくと、またフリガナがふってあって親切である。

医療小説という一面もあり、同じ中央アジアを舞台としている井上靖の「蒼き狼」や「楼蘭」の様な壮大さはないが、興味深く読める小説である。

蒼き狼 (新潮文庫)
井上 靖
新潮社
1954-06-29



楼蘭 (新潮文庫)
井上 靖
新潮社
1968-01-29



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Posted by yaori at 07:30Comments(0)TrackBack(0)

2016年02月07日

海辺のカフカ 1Q84の原型がここにある

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)
村上 春樹
新潮社
2005-02-28


村上春樹作品をいくつか読んでいる。

出世作の「ノルウェイの森」の次は「海辺のカフカ」を読んだ。

「1Q84」のパラレルワールドのようなストーリー展開だ。

田村カフカという中野区に住む中学3年生の少年が主人公で、もう一つのストーリーは同じく中野区に住むナカタという猫と話せるが、知的障害のある老人が中心人物だ。

カフカはもちろん小説家フランツ・カフカの名字で、チェコ語で「カラス」の意味だという。

変身 (新潮文庫)
フランツ・カフカ
新潮社
1952-07-28


少年の別人格として「カラスと呼ばれる少年」も、内なる声としてストーリー展開に重要な役割を果たす。

ナカタ老人が少年の時に記憶力を失った事件に、UFOが絡んでおり、次の「未知との遭遇」のビデオの最後の場面を思わせるような、行方不明になった旧日本軍人が現れる展開もある(次はスペイン語吹き替えバージョン)。



この作品はまだ映画化されていないが、蜷川幸雄さんが舞台化している。



カフカ少年が家出をして、夜行バスで高松に来る。図書館の司書と親しくなって、彼の隠れ家にかくまってもらう。そのあとナカタ老人もトラックをヒッチハイクして、高松に来る。

ナカタ老人を乗せたトラック運転手が、仕事を放りだしてナカタ老人に付き合い、高松で「入口の石」探しに協力する。

パラレルワールドの入口だ。

猫殺しのジョニー・ウォーカーや、「入口の石」のありかを教えるカーネル・サンダースも出てくる。音楽は、プリンスやシューベルトのピアノソナタ第17番などが出てくる。

ファンタジックな、引き込まれるストーリーだ。

大変楽しめる作品である。


小説のあらすじはいつも通り詳しくは紹介しないので、雑駁なあらすじ紹介となったが、参考になれば投票ボタンをクリック願いたい。

  
Posted by yaori at 00:07Comments(0)TrackBack(0)