2016年08月30日

iPS細胞が医療をここまで変える iPS細胞研究の最新情報

iPS細胞が医療をここまで変える (PHP新書)
京都大学iPS細胞研究所
PHP研究所
2016-07-16


2006年に発表されたiPS細胞の発見から10年経って、現在のiPS細胞研究の現状をまとめた本。

京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授が監修している。

iPS細胞の基本的なことについては、以前山中教授と益川教授の対談「『大発見』の思考法」のあらすじで紹介しているので、こちらを参照願いたい。

「大発見」の思考法 (文春新書)
山中 伸弥
文藝春秋
2011-01-19


iPS細胞は、細胞に3〜4の遺伝子を加えると、体のどんな細胞にも変化できる幹細胞となるというものだ。

iPS細胞はほぼ無限に増やせ、ほぼすべての細胞になることができる。

用途としては、本人の細胞から網膜や臓器など、いろいろな部位を拒否反応なしでつくる再生医療と、マウスなどの動物を使用せず、直接ヒトの細胞をつかって薬のテストや病気になるメカニズムを解明する病気や薬の研究だ。

これらの研究には従来ES細胞という受精卵を用いた細胞が使われてきたが、受精卵という将来人間に成長する可能性のある細胞を研究に使うことに倫理的な問題があり、米国のブッシュ政権はES細胞の研究に公的研究費の支給を禁止した。

iPS細胞は、ES細胞と同様の初期化された細胞でありながら、倫理問題がなく、しかも本人の細胞を使えるということで、画期的な発明である。

さて、最初のiPS細胞発見の発表から10年経って、この本では日本や世界の次のような研究機関でのiPS細胞研究や支援の現状をリポートしている。

日本
・京都大学CiRA(iPS細胞研究所、サイラ)
CiRA、理化学研究所、大阪大学、神戸市立医療センターの共同による加齢黄斑変性の患者に対する他人のiPS細胞からつくった網膜の細胞移植成功

米国:
UCSF(カリフォルニア大学サンフランシスコ分校)の山中教授が兼任しているグラッドストーン研究所
・スタンフォード大学
・カリフォルニア再生医療機構
・ニューヨーク幹細胞財団
・ハーバード幹細胞研究所

ヨーロッパ・アジア:
・カロリンスカ研究所(スウェーデン)
・ユーロ・ステム・セル
・ケンブリッジ大学
・シンガポール科学技術研究庁(A*STAR)
韓国・CHAヘルスシステムズ

残念ながらここで特筆するような研究成果はなく、発見から10年たっても、基礎研究の段階のところが多い。

ただ、再生医療の分野では、数万あるといわれている細胞のHLA型のなかで、父からも母からも同じHLA型を受け継いだHLAホモ接合体の人の細胞を使ってiPS細胞をつくると、拒絶反応が少なく移植できるという話はグッドニュースだ。

再生医療では、次が5年以内に臨床応用が見込まれている。

・ドーパミン算生神経細胞(パーキンソン病治療)
・角膜
・血小板
・心筋
・軟骨
・神経幹細胞

筆者の亡くなった母もパーキンソン病を患っていた。

この本では、娘と息子が先天性糖尿病なので、糖尿病の治療法を研究している米国の学者など、医学の発展のために日夜努力している研究者が多く紹介されている。

時間はかかるだろうが、少しずつは進歩している。ぜひ早急に実用化につなげてほしいものである。


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Posted by yaori at 07:53Comments(0)TrackBack(0)

2016年08月14日

柔道ニッポン復活に貢献した石井教授の愛弟子・岡田隆日体大准教授

NHKの「クローズアップ現代」が久々にクリーンヒットを飛ばした。柔道ニッポン復活をオリンピック直前の番組で予言したのだ。

NHKクローズアップ現代






















リオオリンピック直前の8月4日に放映した「リオ五輪“最強伝説”への道 柔道・井上康生監督 再び頂点へ」がそれだ。
NHKのサイトで、番組の内容が詳しく紹介されているので、上記リンクをクリックしてみていただきたい。

井上康生監督のもと、新たな戦略で4年間取り組んだ成果が、リオオリンピックの男子全階級メダル獲得という輝かしい結果だ。その結果を予測させるような優れた構成のオリンピック直前番組だ。

井上康生監督は、「世界の柔道に対応していくためには、そのルーツから勉強しないと対応できない。」との考えで、ブラジリアン柔術や沖縄角力のトレーニングを取り入れた。

そして、もう一つ強化したのが筋力トレーニングだ。東大の石井教授の愛弟子の岡田隆日体大准教授をトレーナーに採用して、選手の筋力の強化に努めた。

ラグビージャパンのエディ・ジョーンズヘッドコーチのフィジカル強化を思いださせる手法だ。

岡田隆准教授は、現役のボディビルダーで、2014年の東京オープンボディビル選手権大会の70キロ級で優勝している。

今回のリオオリンピックのテレビ中継でも、常に井上康生監督の横に座っていたインテルの長友選手に似た人なので、気付いた人もいると思う。

筆者が岡田准教授の存在に気付いたのは、井上康生監督が出席した、東大スポーツ先端科学研究拠点の発足セミナーだった。石井教授が、東大スポーツ先端科学研究拠点の拠点長に就任したお披露目のセミナーで、このときも岡田准教授は井上康生監督と一緒に行動していた。

テレビの映像ではあまりわからないが、半そでシャツからのぞく腕の太さは相当なものだ。

その岡田准教授が書いたトレーニングの本がいくつかあるので、紹介しておく。

筋力トレーニングだと。



体脂肪減少だと。



筆者も筋力アップをめざしているので、「筋肥大メソッド」は参考になりそうだ。さっそく読んでみる。


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Posted by yaori at 23:45Comments(0)TrackBack(0)

2016年08月07日

影響力の武器 カーネギーとは比較にならないと思うけど

影響力の武器[第三版]: なぜ、人は動かされるのか
ロバート・B・チャルディーニ
誠信書房
2014-07-10


現在アマゾンの本の売り上げランキングで205位につけているベストセラーだ。

京大客員准教授の瀧本哲史さんの「読書は格闘技」に、カーネギーの「人を動かす」と対比して紹介されていたので読んでみた。



瀧本さんによるとカーネギーの「人を動かす」は、「他者を味方につける」分野のチャンピオンだが、致命的な弱点があるという。

それは読みやすさを作り出しているエピソード中心の構成は、科学的な実証性に欠け、全部で30も原則があるというのは、体系性がないし、抽象度のレベルもそろっておらず、重なりもある。

チャレンジャーの「影響力の武器」はその弱点を正確についてきたという。著者は米国を代表する社会心理学者ロバート・B・チャルディーニで、この本で紹介されている人を動かすテクニックは、社会心理学上の実験によって証明されているものばかりで、実験には学術論文の出典が示されている。

とはいえ、筆者には「人を動かす」と「影響力の武器」は全く別物に思える。

「人を動かす」は科学的な実証性に欠けると瀧本さんは言うが、実証性があろうとなかろうと筆者には関係ない。自分で試してみて、それが役に立てば、それで良いのである。

多くの人が、カーネギーの本を推薦書に挙げるのは、その人に役に立ったからだろう。

第一、「人を動かす」は読んでいて、新たに感動を覚えることが毎回あるが、「影響力の武器」は、学術書であるからかもしれないが、感動が全くない。

ともあれ、「影響力の武器」は何かを他人に売ろうとするときには役立つ社会心理学の法則を集めた本なので、参考になる点も多い。法則のいくつかを紹介しておく。

1.カチッ・サー
この本で「カチッ・サー」という訳で紹介されている英語の"automaticity"とは、テープレコーダーに行動パターンが録音されているように、一定の条件で、スイッチが入って、同じ行動が現れることをいう。

実験として紹介されているのは、図書館のコピー機で、「すみません。5枚だけなんですが、先にコピー取らせてもらえませんか?」という実験だ。理由を言って頼む場合と、何も理由を言わずに頼む場合では、成功率が倍違ったという。

セールスに役立つ例としては、宝石店ですべての商品の値段を間違って倍にしたら、陳列ケースの商品がすべて売り切れたという。

「高価なもの=良いもの」というステレオタイプが、お客の心理にぴったり、はまったのだ。

2.コントラストの原理
洋品店では、客に高い商品を先に買わせるよう店員を指導しているという。(ちょっと半端な数字だが)275ドルのスーツを買った人には、75ドルのセーターは安く感じる。スーツと一緒に小物を買わせるのも同じだ。

車のディーラーも同じだ。数百万円の車を買った後は、数万円のアクセサリーやオプションは取りに足らないものに見えるが、最終価格はオプションで跳ね上がってしまうことがしばしば起こる。

不動産のセールスマンは、最初に魅力のない物件を紹介するという。「セットアップ」物件と呼んで、これらは客に売るためではなく、ただ他の住宅を魅力的に見せるために入れられる。

3.返報性
ちょっとしたギフトやおまけを受け取ることで、客は買うつもりがなかったものも喜んで買うようになる。スーパーマーケットの無料試供品や試食品がいい例だ。

アムウェイ社は、家具用クリーナー、洗剤、防臭スプレー、殺虫剤、窓ふきクリーナーなどを無料試供品としてひとまとめにして、2〜3日置いていくという。数日後に取りにきて、気に入ったものだけを買うシステムだ。客は少しでも使ったものは、注文しなければ悪いという気持ちになってしまう。

この本にはアメリカ退役身障者軍人協会の住所ラベルシート付の寄付要請のことが書いてある。米国に住んでいた時に、よく受け取ったものだ。

単に寄付を要請すると、成功率は18%だが、自分の名前と住所を印刷したラベルシートを同封して寄付を要請すると、成功率は倍の35%に跳ね上がったという。

4.ドア・イン・ザ・フェイス・テクニック
最初に大きな要求を出して、それが拒否されたら小さい要求を出す。ボーイスカウトの大会チケットが例として挙げられている。まず、5ドルのチケットを買ってくれと頼み、それがダメなら1ドルのチョコバーを買ってくれと頼む。

5.コミットメントと一貫性
クリスマスシーズンには、決まってその時の人気ギフトが登場する。この本では、キャベッジバッチキッズ、ビニーベービーズなどが紹介されている。筆者が覚えているのは「たまごっち」、今だったらポケモンとかだろう。







クリスマス前に人気が沸騰して、手に入らなくなり、なんとか手に入れることができたのはクリスマスが終わってからというよくあるパターンだ。おもちゃメーカーは、クリスマスが過ぎても販売を持続することができる。

5.フット・イン・ゼ・ドア・テクニック
まず小さい要求で承諾をもらい、次に大きな要求を出す。この本の例は、最初に「安全運転」シールを貼ることをOKもらい、次に「安全運転をしよう」という大きな看板を設置することにOKをもらうというやりかただ。

看板を置くことを最初に要求された人は17%しか、看板設置にOKしなかったが、最初に「安全運転」シールを貼ることをOKしたグループは、実に74%が看板設置をOKした。シールを貼ることで、コミットメントが生まれ、看板設置までもOKしてしまうのだ。

筆者も最近この事例を経験した。

筆者の会社は普通の売り込みは一切シャットアウトだが、某生命会社のセールスレディはエレベーターホールまで行けるのだ。先日保険のセールスレディから、エレベーターホールでティッシュをもらったら、名前を聞かれたので、保険は間に合っていると言いながらも、名前を教えてしまった。

そうすると、次は生年月日を教えてくれという。これは拒否して、切り抜けたが、まさにフット・イン・ゼ・ドア・テクニックそのものだ。

6.ローボール・テクニック
最初にある条件で承諾を得て、あとからその条件をひっくり返して、もっと店に有利な条件で契約するやりかただ。

たとえば新車を500ドル安い値段を示して、客から買う約束を取り付けた後、ローン申し込み書などにサインしていると、計算上のミスとかが発見されたり、価格が安すぎてマネージャーのOKが取れないとかいった理由で、当初より高い値段で買わせる手口だ。

チャルディーニさんは、地元のシボレー販売店で、セール訓練生のふりをして紛れ込んでいた時に、この策略に接したという。

会員制リゾートで、アンケートと称して、旅好きだという証拠を挙げさせておいて一貫性に付け込んで、会員権を売り込むやり方は、一貫性を保ちたいという人の弱点を突いたやり方だ。

7.自殺報道は類似した人々の自殺を促してしまう
自殺報道は類似した人々の自殺を促してしまうという統計が示されている。

8.類似性を操作することによって、好意と承諾を得る
車のセールスマンは、類似点の手がかりを探すように訓練されている。旅行、ゴルフ、出身地、出身校など。

保険会社のセールス記録を調べたある研究者は、年齢、宗教、喫煙の習慣がセールスマンと似ている客は、保険契約をしやすいことがわかったという。

ギネスブックに載っている世界一の車のセールスマンは、毎月13,000人ものお客さんにメッセージを印刷したカードを送っていたという。あからさまな好意の表現が効果があったのだ。

9.希少性
不動産のセールスマンは、なかなか決断できない客に、別の買い手が現れたという話をでっちあげることがある。好んで用いられるのは、「税金対策として物件を物色している州外の投資家」や、「この町に移り住むことになった医者夫婦」だという。

チャルディーニさんの弟のリチャードの学生時代の金儲けの話が紹介されている。リチャードは週末に中古車を数台買っておいて、次の週の日曜版で広告を出す。広告を見て電話してきた見込み客にはすべて、車を下見する時間として、同じ時間を指定する。そうすると鉢合わせした客同士でライバル心から言い値で車が売れるのだという。

このような実際的なテクニックを紹介しているので、車や不動産、保険などを買おうとしている人は、セールスマンの手口に引っかからない様に読んでおくことをお勧めする。

もちろん自分がセールスを担当している人にも役に立つだろう。

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