2016年12月25日

韓流経営 LINE LINEの世界展開を推し進めた中心人物とは

韓流経営 LINE (扶桑社新書)
NewsPicks取材班
扶桑社
2016-07-02


日本発のSNS、LINE株式会社の成功の裏側をNewsPicksに移籍した「週刊ダイヤモンド」の4人の記者が取材した本。

NewsPicksとは、経済情報に特化したニュースサイトだ。

LINEは日本企業だが、親会社は韓国最大のIT企業ネイバーだ。ネイバーは韓国での検索サービスNO.1で、韓国ではGoogleを寄せ付けない73%という圧倒的なシェアを誇っている。

この本では、次の3つの疑問を記者が追いかけている。

1.誰が本当の経営者なのか?

2.どこが本当の本社なのか?

3.LINEはどのように開発されてきたのか?


ネタバレ的に事実を示すと、LINEのストックオプションのランキング(本書238ページ)で、この答えが大体わかる(数字は丸めている)。

1位 シン・ジョンホ(LINE取締役 CGO 最高グローバル責任者 10.3百万株(想定売却益 152億円)

2位 イ・ヘジン(ネイバー会長) 5.6百万株(82億円)

3位 イ・ジュンホ 1.6百万株(24億円)

4位 パク・イビン 11万株(1億6千万円)

5位 出澤 剛  9万7千株(1億4千万円)

6位 舛田 淳  9万5千株(1億4千万円)

14位 森川 亮 5万3千株(8千万円)

想定売却益は、取得株価を1,320円、公募価格の2,800円で計算したものだ。

上記のストックオプションのランキングは本書238ページに掲載されているが、元々の情報はIPOの時に公開されているLINEの有価証券届出書(新規公開時)の最後の「株主の状況」に記載されている。

これを見るとネイバーの二人が圧倒的な貢献度であることがわかる。LINEは、もともと東日本大震災の際に、電話が機能しなかったことを見たイ・ヘジンが、新たにインターネットを使ったコミュニケーション手法として日本に来て短期間に開発したものだ

LINEの世界展開は目覚ましいものがあると感じていたが、実は韓国にあるLINE+(プラス)が世界展開の中心となっており、初期段階で各国に送り込まれたのは韓国のLINE+の人材だった。

日本のLINEの社員がかかわることは、ほとんどなかったという。

LINEの開発や、世界展開では日本のLINEがかかわることは少なかったが、LINEのマネタイズ(収益アップ)には2010年に買収したライブドアの人材がおおいに貢献した。

スタンプを広告商品として開発したのだ。この本では、その初期のヒットが「 アメイジング・スパイダーマン」の映画キャンペーンの一つとして導入されたスパイダーマンのスタンプだ。



LINEのスタンプのおかげで、スパイダーマンの情報を受け取るフォロワーは113万人に達したという。

LINEは2016年7月にニューヨークと東京で同時上場した。東証のルールは上場会社の35%以上の株式がオープンな市場で取引されなければならないというものだが、同時上場の場合は、このルールは免除される。だから韓国ネイバーが株の80%強を保有したままLINEは東京市場で上場できたのだ。

筆者もLINEを使っており、家族間のコミュニケーションは、昔はメールだったが、今はほとんどLINEだ。非常に便利なLINEは、実は日本の会社というよりは、韓国の会社だったわけだが、そんなことはLINEの価値には関係ない。

世界にはFacebookが買収したWhatsAppという手ごわい競合がおり、LINEはアジア、WhatsAppは欧米というテリトリーわけができている。

上場で資金を得たLINEが、今後どのように世界展開を拡大していくのか。興味のあるところである。

上記のシン・ジョンホさんと、イ・ヘジンさんのリンク先の日経ビジネスの記事を見ただけでも、かなりの情報がわかるが、この本もわかりやすく、よくまとまっている。

お勧めの一冊である。


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2016年12月18日

元検事が明かす「口の割らせ方」 面白い事例が満載



検事出身の弁護士・大澤孝征さんが、自らの体験に基づいて語る本音を語らせる方法。図書館の新刊書コーナーにあったので読んでみた。

まず大澤さんは、本音を言わない理由として次の類型を挙げている。

1.自分自身を守るため
2.虚栄心やプライドなどの感情的な理由から
3.他人をかばうため
4.相手が信用できないため

このうち4の相手が信用できないためという理由が最も多いのではないかと。だから相手に本音を語ってもらうためには、相手の信頼感を得ることが最重要だと説く。


最初に自白を勝ち取ったケース

大澤さんがまだ検事駆け出しの時に、どうしても自白しない被疑者がいた。パン泥棒で、物証や証言は揃っているのだが、本人がどうしても自供しない。勾留期限もぎりぎりになっていた。

大澤さんは部長から、「ばか者!こんな事件を自白させられないで、どうする。これから警察署に行って調べなおしてこい。俺が署長に電話をしてやる」と怒られ、部長の車と専任の事務官をつけてもらって警察署に赴いた。

警察署では署長が出迎え、取調室に案内された。

これまで刑事たちが取り調べても全く自供しなかった被疑者に会い、刑事たちがお手並み拝見と見守る中で、新人の大澤さんは結局、陳腐な、当たり前のことしか言えなかった。

「いくら調べても、いくら考えても、犯人は君しかいないんだ。証拠から見ても、君がやったとしか思えない。だからもう、正直に話してもらえないか」

そうすると、驚いたことに、被疑者は、「検事さん、私がやりました、認めます」と自供を始めた。

大澤さんは「えーっ、認めるの?」と驚いたが、急いで調書を取った。

あとで、「なぜ急に言う気になったの?」と聞くと。

「いやあ、検事さんの顔ですよ。検事さんが入ってきたときの顔があまりにも真剣でいい顔をしていた。自分のことをこんなに真剣に考えてくれていると思ったら、私も嘘はつけませんよ」と語った。

全身全霊で相手にぶつかる、「取り調べは、捜査官の人間性に尽きる」のだと。

狭い密室で、話すものかとがんばる者と、何とか口を割らせようとがんばる者が必死でやりあうのだから、互いの人間性がむき出しになる。そこで真剣勝負ができれば、検事として大きな自信となる。

そのことを新人にわからせるために、部長は逃げ場のない状況に追い詰めたのだろうと。

このような自らの体験に基づく話が満載で、興味深く読める。いくつか事例を紹介しておく。


結婚詐欺師の告白

30代の風采が上がらない男なのに、美女ばかり10人くらいから、ほぼすべての貯金を奪った結婚詐欺の常習犯から聞いた話が面白い。

美人は実はそれほどモテないのだと。

女性同士のグループで、一番早く結婚するのは、3〜4番手の女性からで、美人は最後の方に残ってしまうことも多い。それは男性側に自信がないためだ。フラれる可能性が高いため、男性は一番の美人にはなかなか結婚を申し込まない。

でも一番の美人にしてみれば、自分よりきれいではない友人がどんどん結婚していって、なぜ自分が売れ残るのかという不満をおおいに抱いている、また、自他ともに認める美貌の持ち主だけにプライドも高い。いつか自分の美貌にふさわしい相手が現れるはずと信じている。

そこに結婚詐欺師は目をつける。

医師や大学教授、弁護士、公認会計士などの社会的信用の高い肩書の名刺を作るなど、小道具を準備して、用意周到に女性に近づく。

そのとき、さえない中年男であることが、むしろ真実味を高める。

「医者というけど、この風采だから少し結婚が遅れてしまったのかな。見た目はさえないけど、医者だから頭はいいだろうし、稼ぎもあるだろう」と思わせるような、いかにも本当の医者のように巧みに演じる。

最初は高級レストランなどで贅沢なデートをする。初期投資に金を惜しまず、どんどん金をつかう。

そうすると、「いままで恋愛に縁遠かった男が、自分にメロメロになって尽くしている」と思った女性の方が、いつのまにか結婚詐欺師に籠絡され、自分の貯金をほぼ全額巻き上がられてしまうのだ。

この話は、結婚詐欺師が自慢話として語ったという。罪を犯した人間であっても、他人から認められたいという「承認欲求」を持っているものなのだと。


警察の組織ぐるみの陰謀を暴く

県議会議員の息子が首謀者だった集団強姦事件で、「在宅送致」という方法で、軽微な事件として済ませようとしていた警察の組織ぐるみの陰謀を、現職の刑事を取り調べて暴いた話も面白い。

今ではこんなことは起こらないと思うが、有力な県会議員の息子が首謀者だったので、その議員に対する配慮から警察が組織ぐるみで隠ぺいしようと、出世コースから外れた刑事に担当させて「在宅送致」しようとした。

この刑事は、上からの命令で、やむなく調書をつくったが、自分でも憤懣やるかたなかったので、調書のなかで、被疑者たちは余罪があるようだと、さらっと書いていた。そこに大澤さんは気付いて、この刑事は、最初は否定していたが、必ず落ちると確信していたという。

そこで、刑事の良心とプライドに訴えかけた。

「被害者の涙を見た君が、こんな悪党どもを野放しにして、何も処罰しないような処分ができるのか。刑事として、悔しくはないのか!」

そうすると刑事から本音がでた。

「悔しいですよ!自分だってこんなの、納得できるわけがない」

「察してください。私だってこんなことはやりたくなかった…」

これを聞いて、大澤さんは、その足で警察署に乗り込み、署長に「事情はすべてわかっている。他の余罪をきちんと捜査しなければ、地検で独自に捜査して被疑者を逮捕する。そして公表する」と宣言した。

この事件は最終的に20数名もの逮捕者を出し、議員の息子はもちろん、主要な被疑者たちは10年以上の重い実刑が科せられたという。


チェーン店の店長の使い込み

大澤さんが弁護士となってからの有名チェーン店を展開するやり手の経営者の話も面白い。

30年ほど前の話で、内部告発で、ある店長の使い込みが疑われ、役員による調査では100万円の使い込みを認めた。

さらに、元検事の大澤さんに、まだ隠しているのではないか調べてほしいとの依頼が寄せられ、帳簿や領収書を調べて店長に厳しく尋ねたところ、1,000万円の横領を認めた。

そこで、経営者に刑事告訴を勧めると、経営者は1カ月考えさせてくれという。

1カ月経ったら、経営者から「1,000万円取り戻しましたから、もう本人を許してやってください。彼を呼び出して、先生の方から当座の生活費として100万円を渡してやってくれませんか」と連絡があった。

実は、あの店長が大澤さんの取り調べを受け、1,000万円という額を告白した経緯を店長会議で報告したところ、20数店ある各店舗の店長が恐れをなし、1カ月間どの店長も使い込みをしなかった。

だから、1カ月で前月比1,000万円の利益が上がったのだと。

たたき上げで、トップにのし上がった経営者は、やむを得ない出費の際には、店の売り上げをごまかして、ねん出するしかない店長の立場を知っていた。

そして、相手を許し、100万円を渡した理由は、あの男は、そのまま勤めあげれば1,000万円以上の退職金を支払うはずだった。

許して生活費を渡して温情を示してやると、あの男は今後もこの業界で生きていくはずだから、きっと経営者のことを神様のように思って周囲に吹聴するはずだと。

「多少の宣伝費だと思えば、100万円は安いものですよ」

平然とした顔でそう言ってのける経営者に、大澤さんは開いた口がふさがらなかったという。


裁判官の心を動かした妻の証言

裁判官の心を動かした妻の証言という話も面白い。

酒に酔って何度も他人の家に不法侵入し、住居侵入罪で問われていた男性の裁判で、執行猶予がつくかどうか微妙なケースがあった。

被告人尋問が終わり、奥さんが証人として、裁判官からの質問を受けた。

「奥さん、こんな事件を繰り返す旦那さんは、女として許せないとは思いませんか?」

「はい」

「はっきり言って、ひとでなしですよね」

「そうですね」

「あなたは旦那が戻ってきたら監督すると言っていますけど、こんな人にはいつか愛想が尽きるんじゃないですか?監督すると言ったって無理でしょう」

「いえ、私がきちんと監督します」

「なぜですか。なぜ、あなたはこんな人を監督できると言い切れるんですか」

「好きだからです」

50代の女性の、まっすぐな言葉に裁判官も検事も、一瞬言葉を失ったという。しかし、裁判官は執拗に食い下がり。

「では、あなたが監督していて、旦那さんが再びこんな事件を起こしたらどうしますか」

「私も刑務所に入ります。一緒に!」

何という愚直な言葉。しかし胸を打つ言葉だった。

裁判官はじっと彼女を見つめた後、夫に言った。

「被告人、今、奥さんが言ったことを忘れないように」

これで執行猶予が勝ち取れた。

この本の最後の章では、「実践編 相手の本心を知るためのQ&A」で、結婚して5年目の妻から寄せられた夫に対する疑念とか。新入社員が職場になじめず、何を聞いても「大丈夫」と言っていながら、いきなりうつ病の診断書を持ってきたケース、子供がいじめにあっているようだが、本人は何も言わないといったケースが取り上げられている。

大澤さんは、司法試験に合格した後、サークルの後輩に司法試験の指導をしていた。

司法試験に受かりたければ一日に12時間勉強し、さらに自信を持つためには16時間勉強しろと。

頭の良し悪しや才能のあるなしは関係ない。集中力を保てるかどうか、それを続けられる意思があるかどうか、それだけの話だと。

参考書は目次から索引まで5回精読するのだと。

筆者も実は、学生時代に3年生のときと、4年生の時に司法試験を受験して、最初の短答式で落ちて、全くかすらなかった。

元々あまり法曹職になりたいという強い希望もなかったので、4年で卒業して会社に就職したが、大澤さんの言うように一日に12時間くらいは集中して勉強できるようでなければ司法試験には受からないと思う。

筆者は到底それほど勉強していなかったから、司法試験に落ちるのは当然といえば当然だ。

元検事でカタい話題ではあるが、紹介されている話は面白い。たまたま新刊書コーナーに置いてあった本だが、大変参考になった。これだから図書館通いはやめられない。

一読をお勧めする。


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2016年12月11日

電通マン36人に教わった36通りの「鬼」気配り いまは逆風だが



高橋まつりさんの過労死自殺で、いまや社会全体からブラック企業の代表とみなされ、逆風下にある電通マンの気くばりの紹介。

「バブルへGO」などの作品で知られる正体不明のクリエイター集団、ホイチョイ・プロダクションズがまとめたものだ。



著者(たぶんホイチョイ代表の馬場康夫さん)は、大手電機メーカー(日立製作所)の宣伝部に勤務した経験があり、当時電通や博報堂などの広告代理店とつきあっていたという。

当時は、他の会社の人が平気で社内を歩き回っていた時代で、電通の営業が「お茶にでも」と誘うのは、部長か部長代理、下はせいぜい主任どまりで、ヒラ社員や窓際族は全く誘われなかったという。

一方、博報堂の営業は決裁権のない若い部員でもバンバンお茶に誘ってくれたから、若手社員は電通よりも博報堂の営業と親しくなった。

広告の良しあしで扱いを決める「競合プレゼン」で、博報堂がいいアイデアを出しても、キャンペーンの扱いはたいてい電通に行ってしまった。だから、若手社員は電通は日ごろのおべっか攻勢で、決定権のある部長や副部長を抱きこんでいるからだと噂しあった。

電通のような「寝技」で仕事を取るのは邪道で、広告の扱いはクリエイティブ力やメディア・プラニング力で決められるべきものだから、電通よりも博報堂を心から応援していた。

しかし、仕事を続けるうちに、その考えが変わってきたという。電通は、得意先、それも決定権のある得意先に対して小さな「貸し」をできるだけたくさんつくっておく、あるいは小さな「借り」をできるだけつくらないようにするという点で、端倪(たんげい)すべからざる(はかりしれないという意味)技術を身につけていたという。

以下で紹介するような細かな気くばりのノウハウが伝承されていて、ビジネス上の大きな成果を生んでいたのだ。

そのことに気が付いたのは、ある程度自分でも仕事を任される入社5〜6年後だったという。

博報堂の社員は好人物が多く、共通の話題などで一緒に盛り上がれるが、自分がある程度仕事を任され、多忙になって、リアルなサービスを求めるようになってくると、話は別だ。

博報堂の新入社員は「得意先を不愉快にさせないことが基本」という原則論を学ぶが、原則論だけでは、この本に紹介されているような小技は身につかない。細かな気くばりの技術は会社全体で蓄積し、体系立てて教育しないと伝承されない。

そういう電通の気くばりは、実は立派なクリエイティブではないかと、ある時からリスペクトするようになったという。

そうした気くばりは、電通だけではない。グローバル・スタンダードなのだと。

この本では、電通の吉田英雄社長が1961年に訪米した時に、表敬訪問した全米最大手の広告代理店ヤング&ルビカムで、吉田社長が大のゴルフ好きなことを調べていたヤングの会長から漢字で正確に吉田英雄と刺繍してあるゴルフバックと、吉田のイニシャルを刻んだゴルフボールをプレゼントされたことを紹介している。

この本の冒頭で、ディズニーランドを日本誘致するときに、三井不動産と三菱地所が競合した時の話を紹介している。三菱地所はディズニーの一行を100キロ離れた富士山麓にバスで連れて行った。

三井不動産は一行をバスで千葉県の舞浜に連れていき、近さを強調するために、バスで食事をとった。バスには小さい冷蔵庫しか置いていなかったにもかかわらず、ディズニーのミッション6名全員に振り袖姿のコンパニオンが、食前酒を「なんでも注文してください」と言った。

メンバーは半信半疑で、めいめい「ブラディメアリーを、ウォッカはストリチナヤで」とか、「ペリエ」とか勝手に注文したが、すべてその小さな冷蔵庫から飲み物は取り出され、メンバーの一人は「あれはアイスボックスじゃなくて、マジックボックスだ」と驚嘆したという。

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実は三井不動産は、ロスアンジェルスの広告マンから、ディズニーの来日メンバーが普段どういう食前酒をのんでいるかのレポートを受け、各人の注文が3パターンしかなく、しかもその多くはダブっていることをつかんでいた。だから小さい冷蔵庫にすべてを詰め込むことができたのだ。

もちろん結果は、舞浜を押す三井不動産の勝利に終わった。

当時の三井不動産の担当者の堀貞一郎は、のちに電通に移っている。

それでは36の「鬼」気くばりを紹介しよう。全部紹介するとネタバレとなってしまうので、ピックアップして紹介する。( )カッコ内に筆者のコメントを付け加える。

1.安物の同じボールペンを必ず2本持ち歩く。(得意先に差し上げて、「貸し」をつくるためである)

2.お詫びやお礼をメールだけで済まさない。

3.名刺は相手より下から出す。

4.得意先の吸っているタバコを常に携行する。

8.3日後に100%の答えを出すより、翌日、60%の答えを出す。(これが高橋まつりさんの過労自殺につながった電通の流儀なのかもしれない)

10.接待の席には、相手の家族向けのおみやげを用意する。

11.見送りはタクシーが角を曲がるまでおじぎをつづける。(この本の著者も同じことを経験したことがあるという。博報堂の営業は解散していたが、電通の営業はおじぎを続けていたと。最近は車のディーラーでも同じことを徹底している)

12.得意先にタクシーで行くときは、100メートル手前で降りて歩く、

14.宴会やゴルフには写真係を置く。

16.葬儀用に白黒の名刺を用意する。

17.葬儀は必ず最後まで参列する。

20.接待では、相手の行きつけの店を予約し、こっちが払う。

22.土下座は、相手の怒りのピークではしない。一晩置いて、翌日みんなでする。

23.メールでCCは多用しない。相手の文面は要約して送る。

26.宴会のために揃いのハッピを作る。

28.会議室は最後に出る。建物は最初に出る。

29.クリップは絶対に相手の社名や「御中」にかけない。

30.口が裂けても逆接の接続詞は口にしない。(「ですが」、「だけど」、「やはり」は禁句、まずは相手の言うことを肯定し、そのあとで、「こういうふうにも考えられないでしょうか」と切り出す)。

32.書類に上司と並んでハンコを押すときは、上司より下に、斜めに傾けてつく。(筆者は全く知らなかった)。

最後に東日本大震災の時に、福島第一原発が水素爆発を起こした時、東京電力に乗り込んで、幹部を怒鳴りつけて「原発から撤退したら東電は潰れる」と恫喝した菅直人の話が載っている。

気くばりの名人木下藤吉郎だったら、どう行動しただろうかと。

菅直人の仕事ぶりは、広告代理店にたとえると、プラニング能力や調査といった「理」の部分は抜群だが、しばしば、それを実行する人を動かすための「気くばり」に欠ける博報堂の仕事ぶりに似ている気がすると、著者の馬場さんはいう。

田中角栄や小沢一郎に代表されるかつての自民党政治は、プランニングや調査といった「理」よりもむしろ、「気くばり」で人を動かし、ものごとを進めてきた電通の仕事ぶりに似ていると。

電通はいまやブラック企業の代表のように言われているが、営業力はじめ広告代理店としての力は抜群だ。その営業力の基本となる「気くばり」が紹介されている。一つ一つを取ってみると、それほどスゴイ気くばりではないが、これらすべてをできるのが、本当の電通の営業なのだろう。

「鬼十則」を廃した電通がこれからどこへ行くのか。興味があるところである。


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2016年12月08日

雑談力 百田尚樹の56の話のネタとストーリーテリング術

雑談力 (PHP新書)
百田 尚樹
PHP研究所
2016-10-15


「書くよりしゃべるほうが100倍好き」を語るベストセラー作家百田尚樹さんの話のヒント集。百田さんは原稿、プレゼン等なしで、何時間でもしゃべれるという。そんな話のネタがたくさん詰まっているのがこの本だ(本の帯では、56のネタを公開と書いてある)。

この本はアマゾンの「なか見!検索」に対応していないので、「なんちゃってなか見!検索」で、抜粋した目次と主な話のネタを紹介しておく。( )でくくってあるのは筆者のコメント。

第1章 人を引き付ける話をする技術
・起承転結が基本
・つかみが大事
 最初の1ぺージで物語を動かす
 「バーバリライオン」の話のつかみをどうするか
 (バーバリライオンは単に例として出てきたものだ。1920年代に絶滅したと思われていた巨大なライオンのことで、普通のライオンの1.5倍、体長4メートルを超えるという。モロッコ国王の私設動物園で生きていたのが発見され、絶滅種のリストから外された。ちなみにファッションのバーバリーはBurberryで、スペルが異なる)。

・質問から入る
 
・常識を揺さぶるような話から入る
 人工衛星は永遠に落ち続けている
 自然界で生きていけない動物はカイコ

・単純なうんちくほどつまらないものはない
 (葛飾北斎は生涯で93回引っ越しをした(ちなみに北斎は30回も号を変えている)) 

・数字は重要
 シャチの体重は10トン
 万里の長城は本当に2万キロもあるのか?

・面白い話にはストーリーがある
 (ロゼッタストーンと解読者のフランスのシャンポリオンの話)

・数学でさえ、面白い話になる
 微積分はいかにして生まれたか
 (微積分はニュートン(とライプニッツ)の発明で、楕円形の惑星の軌道の断面積を求めるために、楕円をピンストライプの様に細い長方形で埋め尽くして面積を求めるやり方を考えたものだ)。

・話の急所を理解していること

・ストックを持とう
 (本を読む時も、テレビを見る時も、人の話を聞く時も面白いと思えば、それを覚えて話のネタにする)
 
・自慢話で人を感動させるのは難しい
 (共感や感動を生む普遍性が求められる)

・失敗談ほど面白いものはない
 ラブレターで大失敗
 (高校受験の話。百田さんは、県で偏差値最下位1,2位を争うくらい偏差値の低い高校出身だという) 

・雑談で選ばない方が無難なテーマ
 (動物の性の話など)

第2章 その気になれば、誰でも雑談上手になれる
・相手ではなく、自分が関心を持つ話題を探せ
 私の小説のテーマ
 零戦の話 − 機体に直線がない奇跡の戦闘機
・一番大切なことは「人を楽しませたい」という気持ち
 同じ「自分の話」でもまったく違う

・自分の感性に自信を持て
 (自分が面白いものは、他人も面白いという自信を持つ)

・ネタをどう仕込むか
 (以下は目次を読めば大体百田さんの言っていることがわかると思う)

・「面白さ」の7割以上が話術

・面白い話は何度でもできる

・話が上手くなる一番の方法は、経験を積むこと

・話し上手は聞き上手

・話は生き物 − 私が講演で行っていること

・とっておきの練習法 − 映画や小説の話をする
 (たとえば「7人の侍」の話を説明する)

第3章 こんな話に人は夢中になる
・意外なオチは記憶に残る
 「板垣死すとも、自由は死なず」とは言っていない?
 ガガーリンの小噺
 アメリカは「120億ドル」のスペースペン、ソ連は…

・スポーツ選手のすごさを伝える時のコツ
 超人的な大投手 サチェル・ペイジ
 同時3階級制覇 ヘンリー・アームストロング

・個人的な思い出話でも、普遍性を持たせればOK
 「ラ・フォンテーヌ寓話」はネタの宝庫

ラ・フォンテーヌ寓話
ラ・フォンテーヌ
ロクリン社
2016-04-11


 「宇治拾遺物語」と「徒然草」もネタの宝庫。

宇治拾遺物語 (角川ソフィア文庫)
中島 悦次
KADOKAWA/角川学芸出版
1962-04-30





・時代の不運に泣いた人の話は共感を呼ぶ
 世界で初めてグライダー飛行をしたのは日本人?
 (浮田幸吉の話)

ちなみに浮田幸吉の話は、本になっている。

始祖鳥記 (小学館文庫)
飯嶋 和一
小学館
2002-11


 あまりにも不遇だった日本の天才研究者たち
 (光ファイバーの原理の発見者の西澤潤一教授やフェライトの父と呼ばれる武井武氏)

・色恋の話は男女問わず受ける
 作曲家ベルリオーズの屈折した愛情
 ブラームスクララ・シューマン

・数字も見方を変えれば面白くなる
 後宮3千人
 国鉄の赤字37兆円!
 宝くじの1等当選確率は250万分の1

・犯罪ものの話題は難しいが、面白い
 オランダの「英雄」メーヘレン
 (ナチスに偽物のフェルメールを売った男)

 「偉大な寓話」とすら思える脱獄囚の話

日本の脱獄囚の話は小説になっている。
破獄 (新潮文庫)
吉村 昭
新潮社
1986-12-23


・歴史上の有名人の意外な裏話
 宮本武蔵の新資料発見(宮本武蔵は卑怯だった?)
 野口英世の唖然とする実像

第4章 親友とする真面目な話
・殺害された市民の数は、全人口より多い? 
 計算が合わない
 南京大虐殺の復活

・一人の男の虚言が大問題を生んだ(従軍慰安婦問題
 吉田証言の衝撃
 吉田清治とは何者か
 ミステリー

・戦後40年、突然の抗議(靖国神社問題
 中国の靖国批判はいつはじまったか
 バチカンも認めた靖国神社

(たぶんこの本で一番百田さんが言いたかったのは、最終章の南京大虐殺、従軍慰安婦、靖国神社問題についてだったと思う。親友と議論する話題ということで紹介している)

簡単に読める軽い本だが、最終章の話題は重い。話のネタとして役立つと思う。


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