2019年08月31日

ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?睡眠研究の先駆者デメント氏の本

ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?
ウィリアム.C・デメント
講談社
2002-07-25


NHKの「睡眠負債」で紹介されていたので読んでみた。

睡眠負債 『ちょっと寝不足』が命を縮める (朝日新書)
NHKスペシャル取材班
朝日新聞出版
2018-04-13


著者はレム睡眠の発見者の一人で、スタンフォード大学睡眠医学研究所初代所長のデメントさんだ。「睡眠負債 Sleep debt」という概念の提唱者だ。

デメントさんは1990年に米国議会の睡眠障害に関する委員会の委員長となり、睡眠障害が数百億ドルの国家的損失につながっているという報告書をまとめている。

睡眠不足が招いた重大な事故の一つが、1989年の「エクソン・バルディーズ」の座礁による原油大量流出事故だ。この原因は船長の飲酒と当初報告されたが、その後三等航海士が2日間で6時間しか眠っておらず、極端な寝不足で操船ミスを起こしたことが明らかになった。

睡眠不足による自動車事故などは、ほぼ毎日のように起こっている。特にアルコールは睡眠負債と結びつくと強烈な眠気を引き起こす。飲酒運転が原因とされる事故の多くは、実は睡眠負債が影の主役を務めているのだと。

この本では、1952年にデメントさんがシカゴ大学メディカルスクール2年目で睡眠研究の第一人者のクライトマン教授の研究室で、REM睡眠の発見者とされるアゼンリンスキーの助手をしていた時の、REM睡眠観察についても紹介されている。

フロイトの「夢判断」を読んでいたデメントさんは、元々はREM睡眠と夢の関係を立証したかったのだという。



スタンフォード大学に移って、1971年にデメントさんはスタンフォードでフェローシップ滞在経験を持つ神経科医のフランスのギルミノー博士をスタンフォードに招聘した。

ギルミノー教授は睡眠時無呼吸症候群の権威として、スタンフォード大学が睡眠研究で世界的地位を築くのに貢献した。ちなみにギルミノー教授は、今年2019年に亡くなったばかりだ

「スタンフォード式最高の睡眠」の著者の西野精治教授の恩師だ



この本では、睡眠に関する世界的な権威だけあって、医学的な見地からの情報が多く報告されている。

特に恐ろしいのは、睡眠時無呼吸症候群などによる病的な睡眠不良だ。これについては、この本では一つの章で取り上げている。寝ている間にイビキをかくとか、呼吸が止まっていることは自分では気づかないので、最悪の場合突然死することもある。「隠れた殺し屋」だと。

この本では治療法として、酸素呼吸器のようなCPAP(continuous positive airway pressure)やマウスピースを用いる方法が紹介されている。

220px-CPAP













出典:Wikipedia

外科的試みで、この本で紹介されているのは、舌を動かす筋肉を前方に出して、戻らないよう90度ねじってから固定するという手術と、新技術として数分で終わるという高周波焼き切り法が紹介されている。

ここで注意が必要なのは、原著が書かれたのは1999年で、20年前の本なので、医療法も現在とは異なっていることだ。

この本の「訳者あとがきに代えて」でさえ、「本書には気管切開も紹介されているが、この治療法は患者のクオリティオブライフが大きく損なわれるため、現在はほとんど行われていないという」と付け加えている。

訳注でも紹介すべき点ではないかと思われる。

この本では、罹患率がカナダのケベック州で14%、米国では5%と発表されている「むずむず脚症候群」や、夜驚症などについても紹介している。

筆者は子供の時に夜驚症だった。デメントさんの娘さんも夜驚症で、自分もうろたえたという。

動物の睡眠、イルカの脳は2時間おきに左右交代で眠るとか、理想の覚せい剤となる可能性のあるモダフィニルなどについても紹介している。

終章の「今夜から始めよう!三週間の眠り改善プログラム」では、眠る環境、光、カフェイン、アルコール、運動、仮眠、仕事について考えることやメール対応などを網羅したプログラムを紹介していて、自分の睡眠のチェックに役立つだろう。


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Posted by yaori at 12:41Comments(0)

スリープ・リボリューション 眠りについて総合的に見直す本



NHKスペシャルで放送された「睡眠負債」に紹介されていたので読んでみた。著者は、ハフィントンポストの創設者のアリアナ・ハフィントンさんだ。
睡眠負債 『ちょっと寝不足』が命を縮める (朝日新書)
NHKスペシャル取材班
朝日新聞出版
2018-04-13


この本は本文約370ページ、付録として「睡眠チェックリスト」、「寝つきを良くし、夜中に目覚めないための瞑想ガイド」、「ホテルの睡眠革命」、「マットレスを見直す」がついている。約50ページの原注もあり、詳細に論拠が示されている。

原著に関するウェブサイトも開設しており、英語だが、参考になる情報が掲載されている。

たとえば上記ウェブサイトの「Guided Meditation download」をクリックすると、アリアナさんの妹のアガピ・スタシノポロスさんの瞑想ガイドが聞ける。

米国でベストセラーになった本なので、いろいろなメディアが紹介している。



NHKの本は番組の取材が中心なので、焦点を絞っているが、この本は次の目次でもわかる通り、睡眠に関して多角的に研究した本だ。

第1章 睡眠危機の時代
第2章 睡眠産業
第3章 歴史に見る睡眠
第4章 睡眠の科学
第5章 睡眠障害
第6章 夢
第7章 眠り方をマスターする
第8章 ベッドの人口問題
第9章 すべきこと、すべきでないこと
第10章 仮眠、時差、時差ぼけ
第11章 睡眠と職場
第12章 見直される睡眠パワー
第13章 記録を伸ばす、スポーツ界の究極の睡眠法
第14章 テクノロジーとの付き合い方(深入り禁止)

一般的に睡眠は一晩に7時間以上取るべきとされているが、米国では3人に一人が平日に十分な睡眠をとれていない。

リストバンド型の活動量計を製造しているジョウボーンは、睡眠が少ない都市のランキングを公表しているという。それによると東京が世界で一番一晩当たりの睡眠が少ないという次のような結果となっている。
東京 5時間45分
ソウル 6時間3分
ドバイ 6時間13分
シンガポール 6時間27分
香港 6時間29分
ラスベガス 6時間32分

筆者の睡眠時間に近い結果で、たぶん実態はこんなものだろう。




筆者は以前アルゼンチンに2年間研修生として住んでいたが、アルゼンチン人は超夜型だ。レストランが開店するのが夜8時〜9時、一番混むのが10時〜13時頃というのが普通だ。

当時は、アルゼンチン人はいつ寝ているのだろうと不思議に思っていたが、睡眠時間データからすると、どうやら日本人の方が夜型のようだ。

なにげなくハフィントンさんの本を読んでいたら、夢のところで、長年気になっていた曲が偶然紹介されていた。ロマンティクスの1983年の"Talking in your sleep"という曲だ。



昔、テレビ(ベストヒットUSA?)で小林克也さんが「デトロイト出身の4人組」と紹介したことが記憶にあり、曲のメロディーも覚えているのだが、バンドの名前と曲のタイトルが長年わからなかった。夢で出会えたようなものだ。

ハフィントンさんの本では、働きすぎが戦後アメリカの最も危険なステータス・シンボルとして紹介されている。

たとえばウォルマートのサム・ウォルトンは、土曜日の朝の会議のために、土曜日は2時か3時にオフィスに行って、その週の数値にくまなく目を通すと自伝に書いている。



日本の「サラリーマン」も成功のために睡眠を擬制にしている悲劇的な例として紹介されている。

睡眠では4つのステージがあることがわかっている。

ステージ1は浅い眠り、容易に目覚めることができる。目や筋肉も動いている。
ステージ2はもう少し深い眠りで、眼球と深部体温も下がる。
ステージ3は最も深い眠りで、目も筋肉も動かない。
ステージ4がいわゆるレム(REM)睡眠で、入眠から約1.5時間後に始まる。急速な眼球運動(Rapid Eye Movement=REM)が見られ、血圧と心拍数が上昇し、筋肉はマヒしたような状態になる。

ハフィントンさんは、レム睡眠の発見者の一人で、スタンフォード大学睡眠医学研究所初代所長のデメント氏のたとえを紹介している。

「レム睡眠が発見されるまで、睡眠は車をガレージに入れてエンジンを切るようなものだと考えられていた。動かないし、ガソリンも減らない。でも実は睡眠は、車を止めてギアをニュートラルにしておくに近い。エンジンは回り続けているんだ」。

大学の睡眠革命として、ミシガン大学などが図書館の仮眠室に設置したメトロナップ社のエナジーポッドという仮眠リクライニングチェアを紹介している。



よくここまで情報を集めたと思う。睡眠に関する情報満載の本だ。睡眠に関して一冊だけ読むなら、この本をお勧めする。


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Posted by yaori at 09:32Comments(0)

2019年08月26日

睡眠負債 どれだけ、どう睡眠をとればいいのか

筆者注:マリアナ・ハフィントンさんの本とデメントさんの本のあらすじを別途掲載したので、あらすじを再掲する。

睡眠負債 『ちょっと寝不足』が命を縮める (朝日新書)
NHKスペシャル取材班
朝日新聞出版
2018-04-13



NHKスペシャルで取り上げられた「睡眠負債」の取材結果を本にしたもの。テレビ番組ではとりあげられなかった事柄も豊富に取り上げている。

睡眠負債が毎日積みあがると、土日に寝た程度では解消できず、仕事や家事など生活の質を下げるだけでなく、重大事故の原因となったり、がんやアルツハイマー病といった命にかかわる病気のリスクを高めたりすることもある。

放送された内容は、「放送した内容・リスク☑結果」というページにまとめられているので、こちらも参照願いたい。

筆者は平日は大体寝るのは1時前後で、起きるのは6時〜7時の間だ。午前中にアポイントがあるときは6時台、アポイントがないときは7時頃にしている。つまり、大体毎日5〜6時間の睡眠時間だ。

会社員だった2年前までは、6時台のロマンスカーで通勤していたので、平日の睡眠時間は、ほぼコンスタントに5時間以下だった(ロマンスカーでも30分弱は寝ていたが…)。そして、土日は大体午後に2時間程度昼寝することが多かった。

伝説上の話かもしれないが、ナポレオンやエジソンは4時間しか眠らなかったといわれているので、筆者も平日は5時間程度の睡眠と土日の昼寝でやっていけると思っていた。

以前よりは睡眠時間は若干長くなっているが、今の方が午後眠くなることが多い。一つには、会社員だったころは、ほぼ毎日1万歩程度歩いていたが、今は多くても6千歩程度だ。たぶん1万歩毎日歩くことで、適当に疲れてよく眠れていたのだろう。

今は、土日に「寝だめ」しても、到底解消はできず、これが「睡眠負債」となっていた。そんなわけで、睡眠のとり方を見直すためにこの本を読んでみた。

NHKスペシャルでは、芸人の陣内智則が出ていて「結局、何時間というのを教えてもろてええですか?」と単刀直入に聞いたのに対して、睡眠評価研究機構の白川代表は「基本的に7時間前後なんですよ。これが一番健康被害がない、あるいは死亡率が下がる時間なんですね。7時間から8時間です」と答えている。

この本で紹介されている細かい議論を踏まえた上での発言だ。

この本が契機となって、睡眠に関する他の本も読んでみた。ハフィントンポストの創設者のアリアナ・ハフィントンさんの「スリープ・リボリューション」のあらすじは別途取り上げているので、そちらを参照していただきたい。




睡眠では4つのステージがあることがわかっている。
ステージ1は浅い眠り、容易に目覚めることができる。目や筋肉も動いている。
ステージ2はもう少し深い眠りで、眼球と深部体温も下がる。
ステージ3は最も深い眠りで、目も筋肉も動かない。
ステージ4がいわゆるレム(REM)睡眠で、入眠から約1.5時間後に始まる。急速な眼球運動(Rapid Eye Movement=REM)が見られ、血圧と心拍数が上昇し、筋肉はマヒしたような状態になる。

この本が紹介しているもう一冊の本が、「ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?」で、著者はレム睡眠の発見者の一人で、スタンフォード大学睡眠医学研究所初代所長のデメント氏だ。デメント氏が「睡眠負債 Sleep debt」という概念の提唱者だ。

デメント氏は、REM睡眠を次の様に表現している。

「レム睡眠が発見されるまで、睡眠は車をガレージに入れてエンジンを切るようなものだと考えられていた。動かないし、ガソリンも減らない。でも実は睡眠は、車を止めてギアをニュートラルにしておくに近い。エンジンは回り続けているんだ」。

ヒトはなぜ人生の3分の1も眠るのか?
ウィリアム.C・デメント
講談社
2002-07-25


デメント氏の本はさすがに睡眠に関する世界的な権威なので、医学的な見地からの情報が多く報告されているが、原著が書かれたのは1999年で、20年前の本なので、医療法も現在とは異なっているので、別途あらすじを紹介する

この本では、「睡眠負債」ががんを含む腫瘍の成長が早くなり、重大な結果をもたらすというシカゴ大学の研究者のインタビューも紹介している。

睡眠の質・量が不足すると、がんを殺すはずのM1マクロファージが、がんの仲間のM2マクロファージになってしまうのだと。

睡眠負債による注意力、運動能力の低下が重大な事故等を招く危険性があるので、厚生労働省では「勤務時間インターバル」の導入を企業に勧めている。つまり、勤務終了後に一定時間以上の「休息時間」を設けることで、働く人の生活時間や睡眠時間を確保するものだ。

残業などで勤務が延びた場合には、翌日の出社時間を繰り下げるといったものだ。

EUは1993年に11時間のインターバルを企業に義務付けるように求めている。

「ベッドで眠れなくとも、目を閉じていれば眠っているのと同じ効果がある」という俗説は、明らかに否定されている。横になっているだけでは、睡眠状態でなく、覚醒状態であり脳は疲労する。

寝だめも「ダメ」だ。平日にマイナス2時間だと、土日で2X5日=10時間余計に、つまり合計20時間寝なければならないが、そんなことはできないだろう。

寝る時間を1時間早くして、起きる時間を1時間遅くするのが専門家のアドバイスだという。できるかな?筆者は自信がないが…。

「すみやかに寝るための10カ条」は次の通りだ。
1.午前中に日の光を浴びよ
2.食事の時間は一定にせよ
3.運動は夕方に。散歩もよし
4.カフェインは寝る3時間前まで
5.酒は寝る3時間前まで
6.寝る2時間まえより強い光を避けよ
7.風呂は寝る30分前に
8.寝室は18度〜26度に保つべし
9.布団でのスマホ・ゲームは御法度
10.寝なきゃとあせるべからず

この本の最後の60ページほどは、全部で76問のQ&Aに充てており、このQ&Aも参考になる。パラパラと本屋で、ページをめくって興味あるところを読めば参考になると思う。いくつか紹介しておくと:

電車や車の中での仮眠では、睡眠負債は補えないが、脳をリフレッシュさせる一過性の効果はある。一方、昼寝は夕方に近くなると夜の睡眠時間に影響してしまう恐れがあるが、午後1〜3時くらいの間の昼寝なら睡眠時間を補完する効果がある。

二度寝は気持ちがいいが、睡眠のリズムを整えるという意味では逆効果だ。一回体温が下がってしまうので、睡眠から覚醒への切り替えが悪くなる。朝、目が覚めてしまったら起きてしまって、昼寝をする方がましだと。

睡眠の質は時間とは直接的な関係はない。睡眠が短くても大丈夫な人はわずか0.5%(ショートスリーパーの率)であり、大多数の人は最低6時間、できれば7時間必要で、睡眠の質がよくても、時間が短ければ睡眠負債は溜まる。

酒は睡眠には逆効果なので、飲みすぎると睡眠の質が悪くなり、微量だと興奮性の作用があるので、寝つきが悪くなる。寝つきが悪い人は、寝る前に体温を上げる軽いストレッチなどを5分程度やるとよい。

人によるが、カフェインは就寝前3〜4時間は控えた方がよいという。

筆者はカフェインについて、全く誤解していた可能性がある。この本は気づきを与えてくれたので、大変有益だった。

実は筆者は、夜12時頃までコーヒーを飲んでいても問題なく眠れるので、カフェインには影響を受けない体質だと思っていた。しかし、この本やハフィントンさんの本、デメント氏の本など、睡眠に関する本を何冊か読んでみると、違う見方もあるように思えてきた。

つまり、毎晩1時前後まで起きていられるのはカフェインで刺激し続けているせいで、それでも1時頃が限度なので、限界をすぎると「バタンキュー」となって、よく眠れるのではないかと思えてきた。

カフェインのせいか、途中でトイレのために起きることもあり、睡眠を中断されることがしばしばある。睡眠の質確保という意味でも、カフェインについては気を付けた方がよさそうだ。

基礎代謝と睡眠は関係しており、筋肉量が減ると睡眠時間が減る。だから、高齢者の睡眠時間は若い時に比べて短くなるのだ。

たしかに、筆者は最近トレーニング回数を増やして、週3回トレーニングしている。トレーニングした日は、筋肉疲労があるので、寝つきもよい。睡眠中に成長ホルモンが分泌されるので、一流アスリートは良い睡眠を重視しているという。

トレーニングは、単に体力維持・向上のみではなく、睡眠にも良い効果を与えるのだ。

この本と、上記に紹介している睡眠に関する本を読んで、これまで睡眠時間を短くすることが、生産的活動に充てる時間を増やすことだと思ってきたが、これが大変危険な考えであることがわかった。

寝る直前のメール対応も、寝つきが悪い原因となる。

これからは睡眠時間を削ってまで仕事や書き物をすることはしないようにし、もし睡眠時間を削った場合には、昼寝等で取り返す習慣をつけようと思う。

気づきを与えてくれるという意味で、大変参考になる本である。

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Posted by yaori at 22:50Comments(0)

2019年08月12日

君たちはどう生きるか 1937年の作品が今よみがえる

君たちはどう生きるか (岩波文庫)
吉野 源三郎
岩波書店
1982-11-16


戦前、1937年=昭和12年に発刊された本が、平成〜令和の時代にベストセラーとしてよみがえった。この本の漫画版もよく売れているようだ。



岩波文庫版を読んでみた。

旧制中学2年生のコペル君が主人公だ。コペル君のお父さんは、大銀行の重役だったが、2年前に亡くなったという設定だ。お母さんの実の弟で、大学の法学部を卒業して間もない叔父さんが、コペル君の家にちょくちょくきて、コペル君にいろいろ教えてくれる。この本はコペル君と叔父さんの会話と、手紙のやり取りが物語の中心となっている。

学校生活での出来事、たとえば、商売人(豆腐屋)の子どもに対するいじめや、それに義憤を感じて立ち上がる仲間、上級生のいじめに立ち向かう仲間と、意気地なしで逃避してしまい、後悔にさいなまれて学校を休んでしまうコペル君などを描いている。

旧制中学といえば、昔はエリートコースだ。一般の人は高等小学校を卒業して就職するところを、旧制中学出身者は、旧制高校、大学と進学する人が多かった。だから、商売人の子どもに対する嫌がらせというのもあったのかもしれない。

筆者の出身の神奈川県の湘南高校も、昔は湘南中学だった。新制高校となってすぐの1949年(昭和24年)に夏の甲子園で野球部が全国優勝している。

学校生活や、なにげない普通の暮らしで感じたコペル君の感想や質問に対して、叔父さんが詳しく説明してくれるという展開だ。

銀座のデパートの屋上(屋上でも7階しかないというのがいかにも時代を感じさせる)から見た人や車の動き、それと粉ミルクや羊毛がオーストラリアから日本に来て、その間に多くの人が携わっている話(マルクス経済学では「生産関係」という)、ニュートンがリンゴが木から落ちるのを見て、空にある月が落ちてこないことに思いをはせ、万有引力の法則を思い立った話などを取り上げている。

資産家の息子の友達の家を訪問して、友達のお姉さんからナポレオンの話を聞いたという設定で、ナポレオンの代表的な勝利である1809年のワグラムの戦いと、これまたナポレオンの代表的な敗北である1813年から1814年のフランス対全欧州の戦争を紹介している。

1814年の進軍としてこの本で紹介されている絵は次のものだ。

Meissonier_-_1814,_Campagne_de_France

















出典:Wikipedia

偉大な人間とはどんな人か、ということで、この本では詳しくナポレオンを取り上げている。Youtubeでも1993年のテレビ番組が公開されているので、時間のある人はこれを見ると参考になると思う。



岩波新書でもナポレオンについての本がある。割合最近の2018年発刊の本なので、筆者はこれを読んでみる。




最後にこの本では、仏像はギリシャ人がはじめてつくったという話を紹介している。




コペル君の亡くなったお父さんの「人間として立派な人間になってもらいたい」という言葉が随所に出てきて、面白い読み物ながらも、全体として修身(道徳)の本となっている。

簡単に読めて、ためになるベストセラーである。

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Posted by yaori at 01:58Comments(0)