2020年12月25日

2020年6月30日にまたここで会おう 瀧本哲史さんの東大講義録

2020年12月25日再掲:

エンジェル投資家瀧本さんのことが日経新聞の「インベスターズ」というシリーズで取り上げられている。瀧本さんのマッキンゼーでの後輩で秋田県沖の洋上風力発電入札で、最有力候補にあげられているレノバの社長も登場する。

レノバは直近で株価が3倍に高騰したという。

瀧本さんの「2020年6月30日にまたここで会おう」のサイドストーリーとして紹介しておく。


2020年6月30日初掲:



これのブログで、「戦略がすべて」「僕は君たちに武器を配りたい」「武器としての決断思考」のあらすじを紹介してきた瀧本哲史さんの、2012年6月30日に東大の伊藤謝恩ホールで行われた講義録。

タイトルとなっている「2020年6月30日にまたここで会おう」は、2012年の講義の最後で瀧本さんが約束した言葉だ。残念なことに瀧本さん自身は2019年8月に病没している。まさか、自分がそれまで生きられないとは、瀧本さんは予想もしていなかっただろう。

瀧本さんのお父さん(心理学者で獨協大学名誉教授)が、この本の発刊に寄せて「瀧本哲史の業績と生涯」という一文を瀧本さんが共同で立ち上げた企業法務革新基盤株式会社のウェブサイトに載せている。

若手評論家の古市憲寿さんも、クイズ東大王で有名な鈴木光さんとの対談で、鈴木光さんのゼミの教官で、古市さんの友人だった瀧本さんについて語っている。

出版社の星海社新書の初代編集長が、瀧本さんの言葉通りに、同じ場所(伊藤謝恩ホール)で2012年の講義に参加した300人と、10代、20代の若者も集めてイベントを開催したいと「あとがきにかえて」に書いている。しかし、星海社のウェブサイトを見ても、伊藤謝恩ホールのカレンダーでも、何もアナウンスがないので、たぶんコロナウイルスの関係でイベントは開催できなかったのだろう。

その代わりに、というわけではないが、2020年6月30日にこの本のあらすじをアップする。

瀧本さんは、東大助手ーマッキンゼーーエンジェル投資家/京都大学客員准教授というキャリアを歩んだ。エンジェル投資家はあまり表に出ないほうがいいと思っていたが、考えを変えて、本をだしたり、メディアにも出るようになった。

一番の理由は、日本への危機感だという。

この国は構造的に衰退に向かっているのではないか、中央政府とかエスタブリッシュメントと言われている人たちが、機能していないんじゃないか。だから、裏方に逃げず、より積極的にひとを支援していかないとマズいと思ったのだ。

一度、日本を捨てて海外脱出するオプションも検討したが、「残存者利益がある」と思ってやめた。中国に抜かれたとはいえ、今もGDP3位だし、中国の統計も細かく見ると疑わしい、過去の伝統もあるし、基盤もあるから、むしろチャンスがあるのではないか。

それで、日本に残って、「武器モデル」を広めていくことで、日本を良くしていくことにした。

ワイマール前夜の様に、カリスマリーダーの出現に期待せず、みんなが自分で考え、自分で決めていく世界をつくっていくのが、国家の本来の姿だとして、仏教の「自燈明」を紹介している。仏陀が死ぬとき、弟子たちに「これからは自分で考えて自分で決めろ」、自ら明かりを燈せと言った。それが大事なのだと。

ハンガリー出身で、イングランド銀行をつぶした男といわれる天才投資家のジョージ・ソロスは、東欧の民主化を支援するためにいろいろなことをやったが、一番有効だったのは、コピー機をばらまくことだったという。共産圏ではコピー機や印刷機は全部国家管理だったが、ソロスのまいたコピー機を使って、活動家が自分のビラをばらまくようになって、民主化運動が盛り上がっていった。

瀧本さんは、ソロスの話から、若い人に「武器」を配って、支援するような活動をしたほうが、世の中を変えられる可能性は高いのではないかと考えた。それが「武器としての決断思考」や、「武器としての交渉思考」だ。

武器としての決断思考 (星海社新書)
瀧本 哲史
講談社
2011-09-22



武器としての交渉思考 (星海社新書)
瀧本 哲史
講談社
2012-06-26



残酷な高度資本主義社会の中でサバイブするために必要な思考と知識を詰め込んだ本が、「僕は君たちに武器を配りたい」だ。




今回の講義も、10代、20代(29歳までに制限)の人を300人全国から集めて、大アジテーション大会を開きたいのだと。

瀧本さんはアラン・ブルームという哲学者の言葉を引用して、「教養の役割とは、他の見方、考え方があり得ることを示すことである」と教養の大切さを説明している。学問や学びは、答えを知ることではなく、先人たちの思考や研究を通して、「新しい視点」を手に入れることだ。

「どこかに絶対的に正しい答えがあるんじゃないか」と考えること自体をやめること。バイブルとカリスマの否定が瀧本さんの基本的な世界観だ。

京大での「起業論」の講義は、東大での指導教官だった内田貴名誉教授の「ケースメソッド」を取り入れ、事例の選択から、資料収集、分析、調査、発表までを学生が主体となって行い、教官と学生が討議しながら進めていくやり方だ。

教養としてまず学ぶのは「レトリック」(言葉をいかに魅力的に伝えるか)と「ロジック」(誰もが納得できる理路を言葉にすること)だ。

自分の主張の正しさを的確に伝える行動がディベートで、それにはロジックが不可欠だ。

そして、「言葉の力」で動かすのがレトリックだ。明治維新は、人々が言葉の力で国を動かしたわかりやすい例だと。言葉によって相手の行動を変えていくのだ。

日本のデモグラフィックと、高齢者の選挙参加率の高さから言って、選挙では高齢者対若者が2:1で若者の意見が通らない。しかし、瀧本さんは、一人の若者が旧世代の人を一人説得すれば、1:2になると説く。

2020年の人口動態


















出典:GD Freak.com

だから、自分や家族の収入を上げて、将来に備えようと考えるよりも、今の不公平な社会保障制度を変えていく方が、労力的にもコスト的にもはるかに現実的なんだと語る。具体的に政策を実現するには、既存政党には頼れないので、霞が関の官僚に対抗できる「霞が関の競合」チームを若者でつくり、民間のシンクタンクをたくさんつくるのだと。

日本を変えていけるのは、若者しかいない。明治維新を推進した薩摩の大久保利通は35歳、長州の木戸孝允は32歳。幕府側の榎本武揚は29歳だった。日本も、若い人が政治や政策立案に積極的に関わって、30代のうちに国政の中心を担うようにならないといけない。元英国首相のキャメロンが党首になったのは、39歳だった。フランスのマクロン大統領も就任したのは39歳だった。

この本で紹介した李明博元大統領の逸話も紹介している。

天動説から地動説に変わったのも、旧世代が死んで、世代交代が起こったからなのだ。パラダイムシフトは、実のところ世代交代なのだ。

東大法学部でも同じことが起こったという。

刑法では、「行為無価値説」と「結果無価値説」が対立していた。行為無価値説は、犯罪を犯したとき、悪い動機があれば刑罰を重くすべきだという考え方で、結果無価値説は、動機とかは全く関係なく、悪いことをした結果のみで判断すべきだという考え方だ。

行為無価値説の代表が、後に最高裁判事になった団藤重光先生で、これに対し平野龍一先生は、結果無価値説で対立していた。しかし、団藤先生の後を継いだ藤木英雄先生が45歳で早死してしまったので、学説的には結果無価値説が勝利したのだと。団藤先生は筆者が大学入学した年に定年退官したので、筆者は3人の先生の講義を聞いた唯一の世代だが、こんな結末になっていたとは知らなかった。

交渉に関する講義では、それまで365日24時間出入りOKだった学生会館を、関西の某大学が平日の8時までしか使えなくしたという事例を題材にして、交渉の際の情報分析の重要性を説明している。

交渉の際の気を付けなければいけないテクニックとして、アンカリングを紹介している。この事例では大学側が8時でなく、10時までと譲歩してきたとき、2時間ゲットしたからOKと喜んではいけない。

もともと365日24時間使えていたのだから、8時から10時に妥協したと見せかけても、妥協でもなんでもなく、論点をずらしたアンカリングに騙されるなということだ。

実例では、大学側が土日も開けると譲歩を見せて決着したという。大学側のアンカリングの勝利だ。

大学側の戦略に乗らず、交渉していくには、まず大学側がなぜ8時閉館としたいのかを調査し、その理由を論理的につぶしていくことだと。講義の中で冗談交じりで「武器としての決断思考」の紹介や、隣の席の人と向き合って、何でもいいから自分の持ち物を売り込むという実験もしている。

福武ホールを寄付した某大手教育関連会社は、生徒募集のDMを打つタイミングを、テストの1週間前と、テストの結果がわかった時に決めているという。相手のニーズから逆算して考えているのだと。

グループウェアの「サイボウズ」が広く使われているは、ボタンがでかくて、ボタンに「印刷」など全部機能が書いてあって、使い慣れていない人でも一発で使い方がわかるから、システム部門の人間が問合せに煩わされなくて済むからだと。

交渉とは、「自分の都合」ではなく、「相手の都合」を分析する。そのためには、「話す」のではなく、「聞く」。そして、非合理な相手は「サル」だと思って、研究する(笑)だと。

瀧本さんは、「なぜ日本にはリーダーが育たないのか?」はカリスマリーダーを前提としている議論で、質問自体が間違っているという。「どうすれば日本に『小さなリーダー』たちが育っていくか?」を考えていくべきだと。

だから、ショボい場所から(クリントンは全米最貧州の知事、オバマはシカゴの市民運動家だった)、失敗を恐れず(「ベンチャーは3勝97敗」くらいだと)、仲間は必ずいるので、伊藤博文(44歳で総理大臣に就任)の記録を抜こう!と。

途中で質問の時間を取っている。質問を促す話術も感心する。

質問を促すクイズとして、「横軸に偏差値のような『賢さ具合』をとって、縦軸に『質問の数』をとるグラフがあるとしたら、それはどういう線を描くでしょう?」というものだ。

この会場も手を挙げにくいけど、質問してもリスクはない理由は、二つあると説明する。

一つは、「さっき言ったじゃん」という顔をしていても、他の人も本心では「じつは俺もよくわかっていなかった。グッジョブ!」と思っているものだと。

もう一つは、瀧本さんは討論系の授業をたくさんやっているので、テクニックがある。それは、どんなにヘボい質問がでても、何事もなかったように、その質問を善意に解釈して、「グッド・クエスチョンですね」みたいな感じに答えるというものだ。だから安心して質問してくれと。

これで20人くらいが手を挙げて、活発な質疑が繰り広げられた。

瀧本さんは、来世がある宗教を信じていないのだと。科学的に来世があることは証明されていないので、「来世がない」ことを前提に自分の時間を使った方が良いと思っている。

自分の時間とリソースを最大限活用するには、すごく困っているところが大逆転して一番よくなるようにすることが効果最大だ。だから、「日本はダメだ」みたいな本が出回っている現状、日本を良くしたいと思って活動しているのだと。

最後のスライドは「Do your homework」だ。

自分たちで考えて、行動に移せ。それが「homework」だ。

そして、2020年までには日本の将来はある程度見えていると思うので、8年後の2020年6月30日の火曜日にまたここに再び集まって、みんなで「homework」の答え合わせをしたいと、この本のタイトルになっている約束をする。

無茶なことでもやってみろと。

映画「七人の侍」制作での黒澤明監督のことを紹介している。



七人の侍 [DVD]
山形勲
東宝
2002-10-25


「七人の侍」は日本の時代劇のさきがけとなる映画で、それ以前は歌舞伎的なチャンバラ劇を映画にするものしかなかった。だから、映画会社の人に、今度こういうエキストラを何千人も使って、リアルな戦いシーンがある映画を作りますといっても、ピンとこなかったので、当初は予算も少ししかつかなかった。

そこで、黒澤明監督は、もらった予算を使って、クライマックスの前までつくって、そのフィルムを映画会社の重役たちに見せた。とてつもない迫力で重役たちは盛り上がったところで、「はい、終わり」。

「実は、予算がたりないので、ここまでしかつくりませんでした」、「追加のお金を出さないと全部ぽしゃりますけど、どうしますか?」と脅したのだと。

こんな映画が当たるなんて映画会社の人は理解できなかったので、であれば、とりあえずやってしまえということで行動に移して、歴史に残る名画が誕生したのだ。ちなみに、「七人の侍」が公開されたとき、黒澤明監督は44歳だった。

この講義の最後は「Bon voyage」(ボン・ヴォワージュ)でしめている。これは船長同士の挨拶で、自分でリスクを取っている人間同士、自立した人間同士の挨拶なのだと。

このあらすじは2020年6月30日0時0分にアップするように設定してある。瀧本さん亡き後、コロナ対策もあり、集会は行われないと思うが、集会が重要なのではない。行動を起こすことが重要なのだ。

世の中をよくするために、自分で何ができるのか。考えてみるきっかけとなる瀧本さんの「遺言・檄文」である。


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2020年12月13日

日本VS韓国 池上さんの日韓関係分析

日本VS韓国 対立がなくならない本当の理由 (文春e-book)
池上彰+「池上彰スペシャル!」制作チーム
文藝春秋
2020-09-17


日韓関係を分析した池上さんの近著。

目次は次の通りだ。

第1章 なぜ日本に厳しく、北朝鮮に甘いのか
第2章 反日の象徴「不買運動」のその後
第3章 意外と知らない!?徴用工問題
第4章 若者世代に変化のきざし
第5章「反日種族主義」と嘘の歴史教育
第6章 日本と韓国がわかり合うために
池上彰からのラストメッセージ

日本でもベストセラーとなっている「反日種族主義」の編著者の元ソウル大学教授李栄薫(イ・ヨンフン)さんとの対談も載っている。

反日種族主義 日韓危機の根源 (文春e-book)
李 栄薫・編著
文藝春秋
2019-11-14



新型コロナウイルス対策で、ドライブスルーPCR検査導入などで韓国は比較的成功してきたので、文在寅(ムン・ジェイン)政権は日本に対してPCR検査キットの支援を検討していたが、日本政府からの要請がなかったので実現しなかったという。

韓国は米国にはPCR検査キットを60万回分2020年4月に輸出している。

コロナウイルス対策で、国際協力が必要なときに、日韓関係の悪化がそれを阻んでいるのだ。

この本を読むと、反日教育を強制されたと韓国の高校生が告発して話題になったり、日韓の対立の根源は、「嘘の歴史教育」にあると指摘して自国を痛烈に批判した「反日種族主義」が、日本と韓国でベストセラーになったり、日韓関係好転の芽は出つつあることがわかる。

日韓合同プロデュースのNiziUの活躍も、いずれ日韓の交流拡大に役立つことだろうが、メンバーが日本人ばかりなので、韓国では、デビューが白紙らしい。


現在の日韓関係の悪化の原因は、「徴用工問題」に尽きる。これまでも「慰安婦問題」が日韓関係を悪化させてきたが、「徴用工問題」では、日本企業に損害が生じる恐れが強い。

韓国の最高裁にあたる大法院が元徴用工の日本企業に対する「慰謝料」請求を認めたことから、日本政府は1965年の日韓国交回復時の日韓請求権協定に反する行為として韓国政府に抗議した。これに対し文在寅大統領は、「韓国は三権分立の国であり、司法の決定に行政は関与できない」と突っぱねたのだ。

韓国の歴代大統領は、反日政策を繰り返すと国民の支持が得られる。文在寅大統領は、就任以来一貫して反日姿勢を取ってきているので、当然の反応なのだろう。

文在寅大統領の両親は北朝鮮出身で、朝鮮戦争の混乱期に韓国に逃げてきた。文在寅大統領自身は、巨済島(コジュド)の生まれだが、弁護士出身の革新派として、弁護士事務所の同僚の廬武鉉大統領を支えて出世し、北朝鮮との統一を悲願としており、「親日残滓」(親日派)の清算は長年の宿題だと公式に表明している根っからの反日派だ。

文在寅大統領は、1960〜70年代以降に中学、高校の反日教育を受けた世代で、純粋な反日世代だという。「反日種族主義」の編著者の李栄薫さんは、今が反日教育を受けた世代の絶頂の時ではないかと語っている。

日本が韓国に対して半導体製造用資材の輸出管理を強化したことに反発して始まった日本製品の不買運動は、最近でこそ若干収まって、日本のビールも韓国の小売店の店頭に戻ってきているようだが、ユニクロの韓国最大の明洞(ミョンドン)旗艦店は閉店となる。

2019年の韓国の若年層の失業率は10%を超え、文在寅大統領の不支持率が支持率を上回る状態だったので、2020年4月の総選挙を迎える前に反日姿勢を強調して、経済政策の失敗を隠して、選挙に勝利したいという思惑があったのではないかと池上さんは疑問を投げかけている(実際には、文在寅政権のコロナウイルス対策が評価されて、4月の総選挙は与党が勝利した)。

1965年の日韓国交正常化に至る交渉過程での記録から、韓国は「対日請求要綱8項目」を出し、その中の5に「被徴用韓人の未収金、補償金及びその他の請求権の弁済を請求する」が含まれており、1961年5月の日本側の「個人に対して支払ってほしいということか?」という問合せに対して、韓国政府は、「国として請求して、国内での支払いは国内措置として必要な範囲でとる」と答えている。

その結果、日本政府は無償3億ドル、有償2億ドル、合計5億ドルの経済協力金を韓国に供与した。当時の韓国の国家予算の3.5億ドルを上回る規模の経済協力だった。これにより1965年の日韓請求権協定には「完全かつ最終的に解決された」と文言が明記され、最終決着した。

徴用工による訴訟は日韓国交正常化以降も続き、日本と韓国で訴えを起こし続けてきて、毎回元徴用工側が敗訴してきたが、2012年に大法院が「日本が韓国を植民地支配していたことが不法行為で、未払金を請求しているのではない、『慰謝料』を請求しているのだ」という理由で、元徴用工勝訴の差し戻し判決を下した。

当時の李明博大統領は、即座に請求権問題は解決済みだとして大法院の判決を否定したが、文在寅大統領は、歴代の韓国政権の見解を覆したのだ。

実は韓国国内では、徴用工問題では韓国政府が補償金を払えと要求している団体もある。

池上さんは、徴用工問題を考える上で、日経新聞の元ソウル支局長の峯岸さんの「日韓の断層」という本を引用して、日韓の対立は、「順法対正義」の対立になっているという。

日韓の断層 (日経プレミアシリーズ)
峯岸 博
日本経済新聞出版
2019-05-22


日本人は法律を守らなければならないという考えだが、韓国人は正義にもとるような法律や条約は変えればいいという考え方だという。

韓国は1987年に民主化宣言が出されるまでは軍事独裁政権だったが、大勢の国民がデモや集会に参加し、民主化を国民の手で勝ち取った。だから歴代政権が作った法律や条約よりも、正義が優先すると考えているのだと。

「反日種族主義」の紹介のところで、池上さんは韓国の小学校6年の社会科教科書には、「強制労働に動員されたわが民族」という写真のところに、1926年9月の「旭川新聞」が「残酷極まる土工の虐待」として、日本人の労働者が過酷な労働されられていたことを告発する記事から取った写真を「韓国徴用工」の写真として載せていることを紹介している。このことは「反日種族主義」の韓国版も指摘しているという。

池上さんも、この本の最後に李榮薫さんとの対談を終えて、「私たちの側にもやるべきことはたくさんある。そんな印象を受けました。」と記している。

上皇様が天皇在位中の平成13年の誕生日の代表質問に対して、次の様に語っておられることはよく知られている。

「私自身としては,桓武天皇の生母が百済の武寧王の子孫であると,続日本紀に記されていることに,韓国とのゆかりを感じています。武寧王は日本との関係が深く,この時以来,日本に五経博士が代々招へいされるようになりました。また,武寧王の子,聖明王は,日本に仏教を伝えたことで知られております。

しかし,残念なことに,韓国との交流は,このような交流ばかりではありませんでした。このことを,私どもは忘れてはならないと思います。

ワールドカップを控え,両国民の交流が盛んになってきていますが,それが良い方向に向かうためには,両国の人々が,それぞれの国が歩んできた道を,個々の出来事において正確に知ることに努め,個人個人として,互いの立場を理解していくことが大切と考えます。ワールドカップが両国民の協力により滞りなく行われ,このことを通して,両国民の間に理解と信頼感が深まることを願っております。」

この問答は宮内庁のホームページに公開されている。ちょうど日韓ワールドカップの直前でのインタビューなので、こんな発言があったものだ。再度読み直してほしい。

「近くて遠い国」=これは北朝鮮のことだが、国民感情的には韓国についても同様の思いを感じている人も多いと思う。日韓両国民がいつまでも、そんな感情を抱いたままでいいのか?そんなことを考えさせられる本である。

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Posted by yaori at 02:01Comments(0)