2005年08月01日

ヒルズな人たち ストーリーの出来はばらつきがあるが参考になる


ヒルズな人たち―IT業界ビックリ紳士録

日本のIT業界を代表する著名人の生い立ちやエピソードの紹介。

今や六本木ヒルズが日本のIT業界のメッカとなっているので、人目を引くタイトルをつけている。

こういった目立つタイトルを付けた本は、いかにも売らんかなというコマーシャリズム丸出しで、玉石混淆というよりなことが多い。この本はストーリーの出来はかなりばらつきがあるが、のストーリーもあり参考になる。

この本は次の面々を取り上げている。

ライブドア       堀江貴文

楽天          三木谷浩史

ソフトバンク      孫正義

サイバーエージェント  藤田晋(すすむ)

元プロジー社長     榎本大輔

オーケイウェブ社長   兼元謙任(かねもとかねとう)

USEN          宇野康秀

センティビジョン    明瀬洋一

M2X           松島庸(いさお)

光通信         重田康光

著者のフリージャーナリスト佐々木俊尚氏のつきあいの深さが違うのか、あるいはフリージャーナリストというポジションでは、なかなか直接インタビューは難しいのか、それぞれのストーリーの出来がかなりばらついている。

ホリエモンはとっつきがたいようで、三木谷氏に『堀江?そんなのもいましたかね』と言わせて溜飲を下げたり、『ミもフタもない人間嫌いの男』と決めつけており、内容も薄い。

イーバンク電話脅迫事件(ライブドアとイーバンクの泥仕合で、イーバンクの松尾社長が、ライブドア宮内氏のケータイに『あんまり遊んでると、おまえの会社ぶっつぶしちゃうよ。俺は本気になるぞ。お前。それじゃな』という留守録を残したとライブドアが公開したもの)が契機で、ホリエモンが老人支配社会への怒りを覚える様になったと言っている。

これはホリエモン本人が言っているわけでもなく、単に推測にすぎないのでは?

三木谷さんのところで参考になったエピソードは、楽天出店料は5万円/月と価格破壊だが、支払いは6ヶ月分前払いとして、低価格で大手モールに対抗し、なおかつ資金ショートを防ぐという手法を取ったという点。

孫さんの経歴・ビジネス歴の部分は読みやすく、孫さんの政治力についてもふれており、よくまとまっている。ただ、様々な本に既に書かれており、特に新しい発見はない。

強いて言えばソフトバンクIDC社長の真藤豊さんはスピードネット社長として孫さんに三井物産からヘッドハントされてきたが、ソフトバンクが引いたので社長をわずか8ヶ月で退任したこと。

サイバーエージェントの藤田さんのところには参考になる指摘がある。

藤田さんの様な『団塊ジュニア世代』の起業家は、考え方は良識的で、態度は紳士的。強烈に自己を主張することもない。

カリスマ的な強烈な個性は乏しいが、すぐれたビジネスプランを考え出し、そのプランをもとにして会社がうまく売上を上げていく社内システムをつくりだしているのだ。

優れたシステムをつくり、あとは優秀な人材を配置すれば会社は自動的に拡大する。システムをつくりだす能力さえあれば、経営者はカリスマである必要はないのであると。

サイバーはJリーグの様にJ1〜J3という新規ビジネスの社内格付け制度=CAJJがあり、毎月昇格あるいは降格(撤退)したプロジェクトを月次決算の時に公表している。社員のモチベーションも自然と上がり優れた社内システムである。

OK Web(オーケーウェブ)の兼元(かねもと)さんの話は一番面白い。

孫さんの様に子供の時に在日韓国人として受けた差別。食うや食わずでドラム缶で寝泊まりしたこともある。

2ちゃんねるの様ないわば『共食い鮫』が集まっている様な掲示板に対し、『助け合いのネット』をつくれないかという発想。

これがナレッジマネージメントにもつながり、gooへのOEM提供『教えてgoo』の他、NECやトレンドマイクロなどのカスタマーサポート部分のアウトソーシングビジネスに広がっている。

ネットの匿名性が2ちゃんねるの書き込みの攻撃性を助長していると思うが、これはYahoo!知恵袋とOK Webの違いを見ればよくわかる。Yahoo!知恵袋はほとんどがID非公開なので不用意に質問するとひどい目にあう。

筆者もOK Webを利用しているが、質問すると早ければ30分から1時間くらいで回答が寄せられるあたたかみのあるコミュニティは感激もの。

また自分で答えられる質問があるとつい答えてあげたくなる。是非広がって欲しいサイトである。

USENの宇野さんの部分も参考になる。

宇野さんは溜池山王で働く社長のblogというのをやっているが、ホリエモンとか藤田さんに比べてマスコミカバレージやブログの情報発信量が少ないので、宇野さんのことは今まであまり知らなかった。

宇野さんは華僑の息子で日本に帰化した。

宇野さんの父親が始めた大阪有線は無断配線という黒いイメージがあったが、宇野さんが亡父の後を継ぎ、USENに社名を変更し、数百億円の利用料を支払いすべて正常化した。

USENブロードバンドは光接続の利用者拡大に苦労しているが、発想を切り換え、他社からラストワンマイル工事を請け負うビジネスをメインとした。

エイベックスや映画配給大手ギャガを傘下に持ち、満を持して無料ブロードバンド放送GyaOを立ち上げている。

学生時代から人を集めて組織するのが天才的にうまかったとのこと。納得である。

宇野さんはリクルートコスモスに入社し営業のノウハウを徹底的に仕込まれたあと、25歳でインテリジェンスを創業する。藤田さんのメンター、三木谷さんの良き相談相手となっている。

最後に著者が次のようにまとめている。

ネット起業家には2つの世代的特徴がある。

一つは1960年代半ば生まれの『新人類世代』。もう一つは1970年代前半生まれの『団塊ジュニア世代』である。

『新人類世代』は新しい価値観を持ち、コンピューターに対する親和性は従来の世代と比較にならないほど高く、この人達が経済界に新たなパラダイムシフトを起こしていく。

『団塊ジュニア世代』は戦後初の『失われた世代』、つまり親よりも生活レベルが下がる世代である。

価値観消滅の世代なので、必死に頑張って豊かになりたいとかいったモチベーションは希薄となり、生活や遊びをまったり楽しむという『コンサマトリー(consummatory)』と呼ばれる『そのこと自体を楽しむ』というメンタリティが特徴である。

つまり「面白ければそれでいいじゃん」というノリで、旧来の価値観に支配されない世代であり、旧世代からは「何を考えているのかわからない」といったことになる。

そういえばとなるほどと思い当たることもある。参考になる指摘である。

いずれにせよ彼らネット起業家は優秀な人を自分のまわりに集め、その人たちをうまくとりまとめて仕事を進めていく運営能力が優れている。

これが21世紀の経営者像なのだろう。

ネット業界はバブっているなどと斜に構えず、冷静な分析が必要である。
その意味でこの本は参考になる。

参考になれば次クリックお願いします


人気ブログバナー




Posted by yaori at 00:00│Comments(1)TrackBack(0) インターネット | 佐々木俊尚

この記事へのトラックバックURL

この記事へのコメント
ラジオ聴きにきていただいたみたいで、ありがとうございますー☆

ばんばん更新してきますので、また遊びにきてくださいねっ♪
Posted by りょうか at 2005年08月02日 23:10