2005年08月31日

世界一の金持ちになってみろ! ホリエモンの旧体制打倒宣言

世界一の金持ちになってみろ!―単純に考えればうまくいく


1年前の2004年10月に出版されたホリエモンと評論家竹村健一氏との対話集。タイトルは『金持ち』だが、今になって読み返すとホリエモンの政界進出宣言の様に思える。

ホリエモンはまえがきでこう語っている。

「この国にはおかしな、理不尽な仕組みが山ほどある。特に仕事の実行スピードにかかわる部分には大変な非合理が発生している。」

中略

「理不尽な仕組みを変えないのは、古い組織に属する人たちが、動かないからである。結局新興企業がむりやりこじ開けて市場に参入するまでは変わろうとしないのだ。」

「明治維新の時、江戸城を無血開城させたのは旧勢力である江戸幕府で重要な職位にあった勝海舟だった。不合理でスピードの遅い経営をしている旧世代の企業と、新興勢力が無駄な争いをして消費者に迷惑をかけるのは、時間とお金の浪費である。」

「勝海舟のような人物が現代の旧勢力にも現れてくることを祈りつつ、私は新興勢力としてできるだけのことをしていこうと思っている。」

たんに経済のことだけではない。この時点で政治のことまで視野に入れているのではないか?

それにしても勝海舟=小泉純一郎ということになるのかな?この時点でホリエモン自身も勝海舟=小泉さんとは考えていなかったはず。急転直下、亀井さんへの無所属刺客となるとはなんかおかしな展開だ。

小泉さんの側近は、たぶんこの本を読んだのだろうと思うが、ホリエモンに目を付けたり、マドンナ刺客を打ち出したりして今回の選挙戦略を立てた自民党の戦略家はスゴイ。

ホリエモンと亀井静香さんの広島6区がメインイベントとすると、他にもサブメインイベント的な小池百合子対小林興起、野田聖子対佐藤ゆかりとか、片山さつきさん等のマドンナ刺客とか、格闘技チックに郵政民営化反対候補と刺客『対決』を20余りの選挙区で演出している。

片山さつきさんは東大卒、大蔵省で女性初の主計官となった。舛添要一氏と離婚後、マルマン創業者の子息の産業再生機構執行役員と再婚している。一緒に会議などに出たことがある筆者の知人によると、15年ほど前の話だが、大蔵省時代はミニスカートでキメていたそうだ。容貌もさることながら、論理鋭く光るものがあったそうだが、大衆相手で力を出せるかどうかは未知数といったところ。

これでは否が応でも今回の選挙は注目され、若者中心に投票に行く人も増え、全国イベントして盛り上がることは間違いない。

自民党は昨年の参議院選挙で惨敗したので、あのまま行けば民主党の政権獲得、日本もアメリカ型の二大政党政治に移るかと思われていた。

ところが今回の造反議員を逆手に取り、今回の選挙を『郵政民営化選挙』という国民の大多数が興味が薄いテーマにすり替え、格闘技イベントに仕立てている。

小泉さんの人気回復の勢いに乗って、このままだと政権維持ができそうなくらいまで回復してきた。

アメリカでは二大政党制とはいえ、議員個人が法案の是非を判断する。一般的に共和党の議員はブッシュ大統領寄りではあるが、民主党の議員でも必ずしも反対ではないので、大統領が共和党、民主党の個別の議員に攻勢をかけて法案に賛成してもらったりしている。

日本は議院内閣制なので、アメリカの大統領制とは異なるが、各議員が一つの議案の党議拘束に従わなかったからといって、党から追放することで良いのかどうかどうも理解できないところである。

議員は選挙区から選ばれてはいるが、日本国民全体の代議士=代表である。その議員個人には判断力はなく、党の多数派の意見に100%賛同するしかないというのもおかしなものである。

いずれにせよ自民党は選挙巧者で、今のところ自民党ペースに進んでいるが、小泉さんのことだから、『人生いろいろ』発言の様に、一夜にして人気を失うこともありうる。だから岡田さんとの党首討論を忌避しているのだろう。

政権交代となるかどうか注目したいところである。

ところでこの本であるが、申し訳ないが『竹村さんは老いたなあ』という印象が残った。昔の竹村さんであればもっと突っ込んだだろうが、ホリエモンペースですべて進んでおり、竹村発言も刺身のツマだ。

筆者もたしかにホリエモンは優れた経営者だと思うし、新進気鋭の若手経営者を支持するのは良いが、「彼は私以上に変わった『新しい人間』ーそんな印象を受けました」ではあまりに毒がなさ過ぎるのではないのか?

もっとぶつかり合いを期待していたのだが…。


なにはともあれ、この本の参考になる部分をいくつか紹介すると:


なぜ貯金しなければいけないのか理解できなかった(ホリエモン)

「たとえば郵便局に貯金をしたとします。そのお金がどこに行くかというと財政投融資の資金として公共事業に回される。日本中、いたるところにある無駄な道路や橋は、この資金でつくられています。」

「本来なら償還がすめば返済されるはずなのですが、いつまでたっても赤字なので、お金が戻ってこない。」

「そんなところに資金を投じるより、もっと消費活動に資金を回せば、経済が循環して景気はよくなっていくはずです。お金を使えば使うほど景気は良くなっていく。この原則を知らずに、単に『貯金しろ』というのは間違っている。」

一生懸命働いて高収入を得る。それをしたいことに使う。そうすると人間は幸福感を得られるし、明日もまた頑張ろうという気になる。それがホリエモンの考え方であると竹村氏は言う。

ホリエモンの六本木ヒルズの2LDKは220M2、リビング40畳、家賃1万円/M2だそうだが、ホリエモンは自宅の居間から東京の夜景を眺めながら次の戦略を練るのだと。

モトローラのガルビン会長は敷地の中に芦ノ湖があるような広大な別荘を持っているそうだが、ガルビン氏は「私が別荘に行くのは、明日に向かうファイトを仕入れに行く」と言っていたそうだ。

ホリエモンの考え方はガルビン氏の考えと共通しており、人間の活力の源泉となるのは、こうした充実感や幸福感ではないのかと竹村氏は語っている。


シニア層は積極的に若者にお金を貸して欲しい

直接間接的に若者にお金を貸して、若者に事業を拡大させる。若者の収入が増えて、事業規模が大きくなれば、また彼らはお金を借りて事業を拡大していく。

こうして景気が回復すればシニア層が老後に不安を持たなくなる。また税金も間接税主体とすればお金が回るほど税収も増えて社会保障や福祉に回す財源も増える。


最善の経営をすれば、売上倍増は偶然でなく勝ち取れる

ホリエモンは自分で経営をやって、売上を毎年大きく増やしてきたが、徹底的なコスト見直し、業務の効率化を図り、営業力を強化し、高い事業目標の完遂をすれば、当然の結果であると。


本来の利益を上げようと思うなら、歳をとったサラリーマン社長を、時代に敏感で、気力も体力も充実した若い人材に代えなければダメだ

経験は密度の濃さX年数である。ホリエモンは人の何倍もの密度の濃い8年間を過ごしてきたので、経験はベテランサラリーマンに負けないと。

しかし大半の企業は60歳前後のサラリーマン社長が経営を行っている。一般のサラリーマンなら退職する年齢である。変化やチャンスをとらえるセンサーも働かず、スピードも柔軟性もないのではないかと。

経験は豊富かもしれないが、それは古い前の時代のビジネスで得たもので、トップの仕事をするならば、まず新しいビジネスを学習し、新しいビジネスに対応できるように訓練する必要があるが、多くの企業はそんなことはしていない。

多くの企業は本当はもっと大きな利益を得られるチャンスを、自分から放棄しているとしか思えないと。

子会社として傘下におさめた企業の社長に本社のトップ候補からはずされた部長などが行くことがよくある。それがむしろ社内遊泳が苦手な実力派であればまだいいが、引退前の腰掛けにしかならない社長が結構多いらしい。

経営者を60代のサラリーマン社長から、30〜40代の若くて優秀な人材に代えたら、もっと成果があがり、社内も活性化する。

ライブドアもどんどんM&Aをやってみたいと。


ライブドアの成果報酬制度

ホリエモンは、稼ぐ人というのは能率がすごくいいので、稼ぐ人にお金をどんどん渡していこうというのが持論であり、期待度と成果に対してはきちんと報酬を出す主義であると。

ヘッドハンティングしたような人には月収で200万円くらいの給与を出し、4半期毎に査定をし、ある一定額を超えたら自己申告制になる。

ライブドアの成果報酬は360度査定で、自己評価と10名程度の同僚の評価を中心とする他者評価でポイントを決める。

上司の評価は反映されない。個別の評価はフィードバックされないが、ランクだけはわかるようにしてある。

基本はその部門が4半期にどれだけ利益を上げたかで評価される。

年収が1000万円を超える社員の査定にはホリエモンも加わるが、他は自己評価と他者評価できまると。

マネージャーは年収2000〜3000万円で、部下が50〜100人、年間利益5〜10億円といったところ。年金も退職金もない。

経費もないので、交際費は経費では落とせない。交際費は名前を変えた遊興費にすぎないので、そういった無駄な出費は認めていない。ホリエモン自身も食事はすべて自腹であると。

なるほどと思わせる。ホリエモンは愚直なまでに基本に忠実な優れた経営者だと思う。

政界に向いているとは決して思えない。たぶん大前さんの時のように惨敗するだろう。それでも新風は吹き込めるのか?注目したい。



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Posted by yaori at 01:52│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | ホリエモン

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