2005年10月08日

東欧チャンス 大前研一が今度は東欧を推薦! 

東欧チャンス


大前研一の最新作。

『チャイナ・インパクト』で中国は地域国家の集合体として考えるべきとか、中国お客様論、大連での日本語コールセンターとか中国における様々なビジネスアイデアを紹介した大前研一が、今度は東欧を紹介する。

日本ではなじみの薄い地域だが、筆者は仕事の関係で旧ユーゴスラビア(行ったことがあるのは現在のクロアチア、マケドニア)、アルバニア、スロバキア、ロシアを何回か訪問したことがあるので、親しみがある。

それぞれ特色ある国だが、約10年前にスロバキアに初めて出張して、3人で鹿肉料理をメインディッシュに夕食をとり、ワインも飲んで全部で30ドルだったのには驚いた。思わず一人分の料金かとおもったくらい物価が安い。

ポーランド国境のオラバ地方の工場を訪問したのだが、ロシアは公害だらけなのに、スロバキアでは環境対策はしっかりしていた。生活レベルもロシアの田舎より数段上と感じた。

ホテルでは英語はダメだが、ドイツ語はできるとか、ドルはダメだがドイツマルクはOKとか、ドイツの経済圏であるということを痛感した旅だった。


まずは中国の現状分析

中国の反日デモは学生運動のようなもので心配ないが、問題は小泉首相である。中国と仲の良い田中角栄に始まる橋本派を、抵抗勢力と目の敵にして、つぶしていった。また解決困難な領土問題などは、棚上げという手もあるのに白黒つけようとする態度が摩擦を引き起こしている。

中国は将来米国、EUと対抗できる3強となるだろう。日本は中国・韓国と一つの経済圏としてまとまって、米国、EUとわたりあっていくことを考える必要があるとして、故・天谷直弘氏(通産審議官)の『町人国家論』も紹介している。

しかしそうはいっても中国一辺倒で良いのかという見方もあり、本書では昨年5月にEUに加盟したポーランド、チェコ、スロバキア、ハンガリー、スロベニア、エストニア、ラトビアなどの東欧諸国でのビジネスチャンスを説く。


東欧のビジネスメリット

EUなので関税がゼロなこと。安い労働力があること。工場労働者では中国にかなわないが、ホワイトカラー、技術者は能力が高く、定着率も良く、賃金も割安である。

語学力が高く、ドイツ語、あるいは英語の会話が可能な人材が国民の2〜3割いるので、ドイツ語圏等のバックオフィス業務を移転するBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)が盛んである。

さらに国民のほとんどがロシア語ができるので、将来のロシアとの取引の拡大の可能性がある。

人、モノ、サービス、資本の移動の自由が適用されるので、通関が不要で、東欧からポルトガルあるいはイギリスまで国境検問なしでほぼ1日で輸送ができることは大変なメリットである。

25カ国となった拡張EUは人口4億5千万人、GDP合計は米国を上回る12兆ドル。(日本は4.6兆ドル)生活水準、教育水準、購買力も高く、魅力ある市場である。

東欧諸国のウィークポイントは人口が少ないこと。チェコやハンガリーは1、000万人、最大のポーランドでも3,800万人。ポーランドは失業率が20%と高く、まだまだ労働力の供給余力はあるが、それでも東欧からさらに安い労働力を求めてルーマニア、ブルガリア、さらにウクライナなどに移る流れがある。

たとえば労働集約的な自動車用ワイヤーハーネス(電気配線)を製造する矢崎総業は時系列的にスロバキア→チェコ→リトアニア→ルーマニア→ウクライナと次々に工場を建設している。

頭脳集約的な業務はホワイトカラーの質が高い東欧に。安い労働力が必要な製造業はさらに南東欧かCISなどの周辺国を利用するか、半製品を中国から輸入して、付加価値をつけてEUに無税で輸出する。このような戦略を取れるのが東欧の大きな魅力である。

Building Wealth: The New Rules for Individuals, Companies, and Nations in a Knowledge-Based Economy


レスター・サローの"Building Wealth"を思い出す。宇宙から見た場合、地球上で文化が発達し、裕福で教育水準が高い人が多く住んでいる最も魅力的な場所。それがEUだ。


バルト3国

まずはバルト3国から。筆者は今まで50程度の国を訪問したことがあるが、同じように見える3国が、これだけ違うとは知らなかった。

エストニアはフィンランド、ラトビアはスウェーデン、リトアニアはデンマークとのつながりが深い。それぞれ人種も歴史も異なるのだ。


チェコ

チェコは伝統的に機械産業、特に自動車に強い。

余談となるが筆者の友人の祖父が戦前三菱商事(?)に勤めており、チェコから機関銃を輸入した時、いくつかの機関銃の部品をバラバラにして混ぜ、再度組み立てるとすべてぴったり合ったと。

当時の日本の機関銃は部品の精度が悪く、他の銃の部品とまぜるとちゃんと合わない銃が続出したそうで、やすりで削ってなんとか一丁の銃にしていた由。チェコの機械産業のレベルに驚いたという話だった。

チェコの自動車メーカーシュコダは1839年創業。兵器製造を手がけ、戦前は戦車も作っていた。2000年にフォルクスワーゲンの100%子会社となったが、国内向けブランドは依然シュコダを使っている。シュコダとはギター侍ではないが『残念』という意味だそうだ。

東欧でのBPO(ビジネスプロセスアウトソーシング)の代表例が会計・コンサルグループのアクセンチュアのバックオフィスだ。東欧人は言語能力に優れ、教育レベルが高いので、EU向けのBPOには最適なのだ。

全世界で間接部門の人間を1万5千人かかえ、プラハには900人いるが、これを2,500人まで増やす予定だ

チェコへの外国投資では日本はドイツについで2番目である。

日本からの投資促進に大きな貢献をしているのが、チェコインベストという投資誘致機関である。日本には横浜にオフィスがある。チェコインベストはワンストップサービスを提供でき、すべての政府の手続きの窓口になったり、地元企業を紹介してくれる。

チェコにはボヘミアングラスとか観光資源とか優秀な工業力の他にも外貨を獲得できる手段に恵まれている。筆者はスロバキアには数回行ったが、チェコにはまだ行ったことがない。是非観光で行きたいものだ。

松下電器はイギリスがユーロに加盟しないため、為替の乱高下が経営を圧迫したので、ウェールズのカーディフにあったテレビ工場を、チェコに移し成功している。チェコの輸出大手10社には松下が入っているほどだ。

日本からは1991年に進出した旭硝子を皮切りに、松下電器、三菱電機、京セラ、シマノなど141社が進出。

トヨタもPSA(プジョー・シトロエン)と合弁で30万台規模の工場を建設し、2005年から生産を開始する。

これを機にデンソー、アイシン精機、豊田工機なども進出した。

トヨタのヨーロッパ進出は1964年のポルトガル工場の後は長年動きがなく、ヨーロッパでは他社の後塵を拝していたが、1992年の英国、1994年のトルコ、続いてフランス、ポーランド、チェコと矢継ぎ早に工場を建設しており、2007年のロシア工場でとりあえず完結する。

日本企業にとってもチェコは活動しやすい国の様である。


スロバキア

チェコが工業国であるのに対して、スロバキアは農業国であるが、製鉄所や軍需産業もある。US Steelが買収したコジッチェ製鉄所は見事立ち直り、米国からの民間ベースの経済支援の好例とジャック・ウェルチが近著『ウィニング』の中でほめている。

このコジッチェ製鉄所は筆者の新日鐵の友人がドイツ駐在時代に訪問し、鋼板の平坦度に驚いたという話をしていた事を思い出す。薄い鉄板を全く波打たないように圧延するのは難しいのだ。以前から技術は非常に高いものを持っていた。

スロバキアにはフォルクスワーゲンが進出し、30万台のポロ、ゴルフを組み立てている。プジョー、起亜産業も進出し工場を建設中だ。

日本企業では矢崎総業、ソニー、松下電器、住友電装など19社が進出している。


ハンガリー

ハンガリーは今までに13名のノーベル賞受賞者を出しており、人口が1,000万人しかいないことを考えると人口比世界一だ。理数系教育レベルの高さは定評があり、大学・研究機関も充実している。外国投資のNo. 1はアメリカで、GE、アルコア、IBM等が進出している。

ハンガリー出身の有名人というと、インテルのアンディ・グローブ、投資家のジョージ・ソロスなどがいる。

ハンガリーはエレクトロニクス工業が発達していることから、テレビでサムスン、TCL、海信など、携帯電話のノキアが進出している。

EMS(受託生産)では元国営企業のVIDEOTONが部品から外枠まで製品を一貫生産しており、製造業ではダントツの大手だ。

この本ではGRAFISOFTというCAD(コンピューターを使ってのデザイン)ソフトの会社を紹介している。創業者でCEOのガレロ氏は東京工業大学に留学した経歴の持ち主。他にも日本語が話せるスタッフが多い。製品のアーキCADは日本で9万4千円で売っているが、もっと高く売るべきだと大前氏はすすめる。

ハンガリーにはチェコに次ぐ87社の日本企業が進出しており、筆頭が1991年に進出したマジャール・スズキ、他にソニー、三洋電機、TDKなどがある。

マジャール・スズキはスロバキア国境に近いロケーションで、年産9万台の車を生産している。

主力のスイフトはハンガリーでは1万1千ユーロ(160万円前後)で普通のハンガリー人でも十分手の届く価格だ。従業員の2割は賃金の安いスロバキア人だ。

三洋電機はノキアの携帯電話向けのバッテリーを生産するためにリチウムイオン電池などを生産している。

ちなみにハンガリー人とルーマニア人は仲が良くないということはこの本で初めて知った。行ってみなければわからないものだ。


ポーランド

ポーランドは鉱工業が中心だったが、造船などの古い産業は北、自動車やエレクトロニクスなどはチェコ国境に近い南部と分かれている。フォルクスワーゲン、フィアット、トヨタ、オペル、大宇が進出している。

フィアット本体は赤字でリストラ中だが、ポーランドのフィアットは好調だ。デルファイ、バレオ、マネットマレリなどの自動車関連メーカーの誘致にも成功している

伝統的にフランス、移民の関係からアメリカと親密であり、外国からの投資もフランス、オランダ、アメリカという順番となっている。

隣国ドイツは4番目にとどまっている。

ポーランドには74社、トヨタ、いすゞ、ブリジストン、デンソー、住友電工、日本精工などの日本企業が進出している。

トヨタはロシアのプーチン大統領の出身地サンクトペテルブルグにも年産5万台規模の工場を建設しており、東欧の部品が多く使われる事になるだろう。

大前氏のおすすめは加工食品業だ。

ポーランドの豚肉は競争力が高く、加工食品はすでに輸出品の2位になっており、ポーリッシュハム・ソーセージなどが有名だ。

アメリカのスミスフィールド社が買収したANIMEX社と住友商事が代理店契約を交わし、鶏肉などを日本に輸入している。ANIMEX社はアメリカでも人気のある高級ハムブランドの『クラカス・ハム』のメーカーだ。

ANIMEX社はダウンと馬肉も日本に輸出しており、日本の羽毛の多くはポーランドのダウンが使われており、輸入馬刺の6割はポーランド産だ。


ブルガリア・ルーマニア

ブルガリアはヨーグルトで有名だが、ダノン、ネッスルなどの国際食品企業が進出してきている。

ブルガリア出身の琴欧州が大関を狙って頑張っているが、筆者の先輩の福井宏一郎氏が今年銀行出身者として約50年ぶりに大使になったことでも有名である。

南東欧ではNATOには加盟したブルガリアとルーマニアが労働力も安く、農業も盛んで工業力もあり注目株だ。2007年1月には両国ともEUに加盟する予定だ。

ルーマニアには自動車関連の矢崎総業、住友電工・住友電装、光洋精工などが進出している。

一人あたりGDPで見るとチェコ、ハンガリーが1万ドルでギリシャ、ポルトガルと同水準。スロバキアが7千ドル、ポーランドが6千ドルとメキシコと同水準である。ルーマニア、ブルガリアは4千から3千ドルで、アルゼンチン、ブラジルなどと同水準である。


以上東欧を各国ごとに見てみたが、矢崎総業、住友電工のワイヤーハーネスメーカー2社の進出がめざましいことを初めて知った。パイオニア精神を持った企業だと思う。

たしかに東欧はEUの玄関口としてチャンスだと思う。


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Posted by yaori at 00:38│Comments(0)TrackBack(1)ビジネス | 大前研一

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