2005年10月11日

好き嫌いで人事 松井道夫氏の新たな宣戦布告!

好き嫌いで人事

おやんなさいよでもつまんないよ


今回のあらすじは長いです。

松井証券社長の松井道夫氏の近著。

松井さんの本のネーミングには本当に感心する。前著の『おやんなさいよでもつまんないよ』も秀逸だったが、この本もタイトルから連想される様なワンマン会社の人事の本ではない。

これから飛躍的に拡大する個人の株投資市場で圧倒的なシェアーを取りに行こうという松井道夫氏の宣戦布告本である。

また松井証券の良いところもちゃんと宣伝している。ホリエモンはライブドアの最強のPRマンだが、松井氏も松井証券の最強のPRマンである。自分では凡人だと謙遜するが、着想が良く実行力が抜群で凄い人である。

松井証券は85年間住み慣れた兜町から昨年半蔵門に引っ越したことから話は始まる。官僚主義の兆しが見えたので、大企業病を払拭させるために移転したのだ。

ビジネスの世界はIT革命により集団から個へのパラダイム転換期にある。お客に自社を選んで貰うため、『会社にとっていちばん損する方法』、つまり『顧客がいちばん得する方法』を考えられなければダメなのだ。

顧客に支持されるビジネスの仕組みを提案する会社を目指し、それ以外の社員はいらない。今は2フロアーだが、徹底的に規模を縮小しいずれはワンフロアーにすると。既に松井氏が社長になってから大半の社員は入れ替わり、今は野村、大和、日興、山一などの出身者が多くなっている。

また移転を機会に管理職も30名を15名に減らし、プロジェクトごとに担当部長をもうけるという形にして、アメーバ型組織としている。役員も担当はローテーションで変わる。

そんな社員に向かって松井氏は『給料を貰って働く人間は要らない。働いて給料を貰う人間しか要らない。』と言い続けている。新入社員から全員年俸制とし、ボーナスをなくした。

退職金は奴隷制度だと排し、月給に上乗せ。証券マンなら自分で財を築けと年金制度もない。

社員教育もない。大人を洗脳もできないし、人は囲い込めるものではないからだ。それでも社員が150名なのに14名の証券アナリストがいる。資格を持つ社員の比率は業界でもトップクラスだ。

松井証券の従業員一人あたりの経常利益は1億5千万円で業界でダントツに高いが、これを5億円にすることを目標にしている。


松井証券の躍進

松井氏が日本郵船を辞め、義父が経営している松井証券に入社した18年前の株式取り扱い金額は年間で1,000億円だった。今は1日1,000億円と約300倍である。松井証券は証券ビッグバンの流れに乗り、IT革命の流れに乗り、万年ブービーからはい上がった。

以前のドブ板式、販売員中心の手間の掛かる個人営業から、営業いらずのインターネットに変え、『頑張らなくても良い仕組み』を考えたからこそこれだけの飛躍ができたのである。

1996年 株式保護預かり料の無料化
1997年 店頭株式の手数料半額化
1998年 日本初のインターネット取引ネットストック開始
1999年 新手数料ボックスレートの開始


ボックスレートの導入

世界で初めてボックスレート(定額取引手数料)を開始したが、他社は手数料を値下げして追いつき、今や松井証券の手数料は割高となっている。

あるオンライン証券会社(eトレード証券?)は松井証券の手数料の1/3の水準まで下げ、松井の後追いでサービス入れデイトレーダーを引きつけ、取引量も松井の倍くらいになっている。

利益は松井の半分以下だが、油断していると差を広げられるおそれがあるので、今度は特許を押さえたサービスで対抗すると。オンライン証券で生き残るのは松井とeトレードとあと1社か2社だろうと。


無期限信用取引

2003年に開始した無期限信用取引は、現物取引感覚で信用取引ができるクリーンヒットだった。

それまでは6ヶ月と期間が決められており、6ヶ月で必ず現金決済しなければならなかった。

松井の社員が『一般信用取引』として制度として存在していることに気づき、他社より先に導入した。


拡大する個人の株式投資の構図

証券業界では口座数で規模が比較されるが、ネット証券の数十倍の口座数を持つ大手証券が実際の個人株式取引扱いではネット証券の遙か後塵を拝している。

IT革命により顧客は一人でいくつも口座を持ち、一番都合が良いところを使い回しているのだ。もはや自己中心で『顧客を重視』するのでなく『顧客中心』で世界は回っているのだ。

松井証券は対面とネット取引の両方をそれなりの規模で経験した唯一の会社だ。二万人の顧客を分析してわかったことは、年一回しか売買しなかった人が、ネットの出現により年10回売買するようになったのだ。

当時このことがわかっていたのは松井証券だけで、このデータを元に戦略を考えたのだ。

当時バカにしていた大手証券会社も、最近ボックスレートを松井証券と同じに設定して、無期限信用取引もマネしてきたと。「良いものは取り入れる」と言っているらしいが、返り討ちにしてやると。

ストックで言うと個人投資家の80兆円のうち、オンライン証券会社が預かっているのは5兆円に過ぎない。

しかしその5兆円が平均20回転するので、100兆円のフローを生んでいる。拡大余地はまだまだある。

筆者も同感である。団塊世代が一斉に退職する2007年には100兆円の退職金資産ができるという。この人たちはネットも使い慣れているので、対面式の大手証券会社よりは、オンライン証券に親近感を感じるだろう。

この100兆円の何割かが流れ込んで、1年間に何回転もするだろうゆえ、日本の株式市場はヒートアップ間違いないだろう。以前Great Boom Aheadというアメリカのベビーブーマーの本を紹介したが、日本でもGreat Boom Aheadだと思う。


松井証券の人事=『実力主義』

松井証券は『実力主義』であると。

「実力とは、人間トータルの力量である。個としての従業員が給料をいくらもらっているのか、給料水準に比較して仕事のさばき方はどうか、優しいか厳しいか、暖かいか冷たいか、理論的か感情的か、一緒に仕事をしていると啓発されるか…等々の総和である。」

トータルな人間として接したとき、当然、好悪の情が生まれてくる。この感情が人の実力を図る目安になると。

それが『好き嫌いで決める』と言う根拠であると。

実際には松井証券の評価は社員を3レイヤーにわけて、自己申告、部下からの評価、管理職相互の360度評価、2回の評価面接から構成されている。

これを年二回実施して人事評価が決まる。年俸も実力評価の要素ゆえ、年俸上位30名の年俸は公表している。

年俸は必ず、上がるか下がるかで、同じということはない。

本のタイトルは『好き嫌い』だが、ここまで整備された360度評価を『好き嫌い』とは到底呼べないと思う。


松井証券の役員の待遇

松井証券では社員の役職定年は39歳だ。これを過ぎるといくら長く勤めても役職は上がらない。

自然な新陳代謝で退職するか、役員になるしかないのだ。社員の年俸は300万円から最高が2000万円だが、役員報酬は青天井である。

松井証券の8名の役員の平均年齢は44歳で、松井氏(52歳)と同年齢の一人が平均年齢を引き上げているが、新しく役員に就任するのは30代後半になるケースが多くなる。

役員の任期は1年で、プレッシャーもあるが報酬は世間並みは全く考慮していない。ニッサンのカルロスゴーン方式だ。

筆者は丹羽さんの謙虚さに恐れ入ったが、、松井さんは伊藤忠の丹羽さんが、カローラに乗っているという話は「社長がカローラ(いい車だが…)に乗っていることを誇る『風土』はいったい何なのだろうか?」と語っている。

役員年俸たとえば一億円とかだと、横並びを強く意識する日本の大企業ではありえない。その意味では太く短くか細く長くかどっちもありだな、という気がする。


新たな宣戦布告=IPO引受販売手数料無料宣言!

『頑張らなくても良い方法』を頑張って考えるのが松井証券のやり方だ。顧客が待ってましたと飛びついてくる仕組みである。それを新規公開株(IPO)引受販売手数料の無料化でやると、この本で発表している。

IPOは上場審査を行う主幹事証券会社と、引受販売する幹事証券会社の2種類がある。上場審査は主幹事証券会社に任せ、松井証券は引受手数料無料で、引受販売幹事証券会社のシェアーを狙うのだ。

これには理由がある。

個人向け取引の80%はオンライン証券が握り、大手証券会社のシェアーは20%程度しかない。

大手証券会社は資産家がターゲットで、大多数の一般大衆、個人投資家はターゲットではないのだ。

ところがIPO株の引受シェアーは、大手証券会社に握られ、オンライン証券会社は2〜3%しかない。

IPO株の買い手の大半は個人投資家だが、主幹事の大手証券会社が大半のIPO株を握っているので、オンライン証券会社にIPO株に申し込んでも、抽選で当たる可能性は宝くじに当たる様なものだ。

このボトルネックを解消するためには、オンライン証券会社が少しでも多くのIPO株を引き受ける必要がある。

IPO株の販売手数料は無料で引き受けるので、企業からの手数料収入はないが、投資家はいずれにせよ松井証券で株を売買するので、そこでの商売が広がれば良いという考えである。

初値が売り出し値の数倍が当たり前という現状のIPO株人気は、個人投資家のIPO熱が異常に高まっているのが原因である。

松井証券が多数の個人投資家を引きつけ、IPO株の事前人気が上がれば、企業も安心して株式公開に踏み切れる一方、松井証券も活発な個人投資家を引きつけられるので、非常に良いポイントをついていると思う。


社長として何が一番大事か?

最後に社長として何が一番大事かという質問には「思いこみと開き直り」だと答えることにしている。社長の決断は開き直って決断するしかないと。

時代とのギャップを埋められるのは社長しかいない。その意味で社長の頭の中が最大のコストなのであると。創造的破壊、捨てる決断、いずれも社長の決断でしかできないものだ。

サラリーマン時代は不満は一杯あったが、不安はなかった。社長となって不満はなくなったが不安だらけとなった。

社長と副社長の距離は社長と新入社員の距離よりも遠い。松井氏は『不安との同棲生活』を満喫していると語る。

「面白い時代になったものである。」と。凄い経営者である。


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Posted by yaori at 22:57│Comments(0)TrackBack(1) ビジネス | 企業経営

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