
動きが激しいインターネット、IT・コンピューター、通信・ブロードバンド、エレクトロニクス、コンテンツ業界など国内の25業界、海外の10業界を図説したハンドブック。
楽天のTBSとの経営統合提案
10月13日に楽天がTBSとの経営統合を申し入れたが、楽天とTBS、どっちが時価総額で大きいのか?売上高ではどうか?利益はどうか?TBSの業界での地位は?フジテレビとTBSの比較は?ケーブルテレビのJ-COMとTBSはどっちが大きいのか?等々このハンドブックを見れば一発でわかる。
時価総額だとTBSは楽天の1兆円に対し6,000億円しかない。フジテレビは8,100億円、J-COMは6,320億円。TBSは時価総額ではJ-COMより少ないのだ。(もっとも10月13日一日で1,000億円時価総額が増えたので、TBSは7、000億円となった)
売上高あるいは取扱高と利益では次の通りだ(最新の数字):
売上高 純利益 経常利益
フジテレビ 4,800億円 228億円 445億円
TBS 2,630億円 91億円 190億円
J-COM 1,600億円 108億円 226億円(営業利益)
楽天 455億円 ▲143億円 155億円
TBSは長年フジテレビ、日本テレビに次ぐ民放3位の地位を保っていたが、視聴率低迷が続き、昨年テレビ朝日に抜かれてしまい、民放4位で定着しそうな状態だった。
加えてハードディスクレコーダー普及によりCMカットが広まり、マス・マーケティングは死んだと言われる今、ケーブルテレビと異なり、視聴者から直接収入が得られず、広告収入しか頼る道がない民放の経営は実は非常に厳しいものがある。
ひところインターネットは恐竜を絶滅させたと言われる巨大隕石にたとえられたが、下手をすると民放業界が恐竜の様になってしまう恐れもあるのだ。
売上高を見るとまさに小が大を飲み込むという感じがするが、これが成長率を反映した現在の株価をベースにした時価総額の実体なのだろう。
AOLとタイムワーナーの前例
それ以外にも様々な情報がこのハンドブック一冊からわかり、今回の楽天ーTBSのケースを理解するのに本当に役に立つ。
たとえば今回の統合話ですぐに頭に浮かぶのが、筆者がアメリカに駐在していた時の2000年1月に起こったAOLのタイムワーナー合併だ。
当時はダイアルアップ全盛の時代で、AOLは日本のNIFTYとBiglobeを合わせた様な存在で、たぶん全米のインターネットプロバイダーの3〜4割程度のシェアーを持っていたのではないか。
当時筆者はピッツバーグに住んでいたが、AOLの会員ならインスタントメッセンジャーでチャットができるので、オンライン中にサンフランシスコの知人から急にチャットでメッセージが来て、驚いた記憶がある。
AOLを使っていないとなにか仲間はずれな様な気がしたものだ。
その新興勢力のAOLが、ワーナーを吸収合併して間がないタイムを合併したのだ。たしか合併比率も60:40くらいでAOLが大きく、AOLの会長のスティーブ・ケースが30歳台(?)、タイムワーナーのレビン会長が60歳台という、いかにも旧勢力が新勢力に飲まれたという構図だった。
このハンドブックにはタイムワーナーが取り上げられているので、その辺の歴史も書いてある。
その後AOLはブロードバンド化に出遅れ、ケーブルテレビインターネットにシェアーを奪われ、2003年には社名からAOLが消えた。
それでもAOLは会員2千万人の世界最大のISPなので、GoogleがAOLを買収する動きがある。インターネット第二世代の勝者、AOLの名前が消えるのも時間の問題の様だ。
話がそれたが、今回の楽天のTBSとの経営統合提案もAOLのタイムワーナー買収のストーリーを予見させる様な動きだ。
ハンドブックの内容
このハンドブックでは日本のインターネット業界について、eコマース、ネット広告、ネット金融、音楽配信、ポータル(検索サイト)の5業種で、各社の売上高、営業利益が類似業界の主要企業の業績や資本関係と比較して説明してあり、非常にわかりやすい。
たとえば日本のeコマースではYahoo!、楽天の両巨頭の他、ディー・エヌ・エー(ビッダーズ)、ライブドア、専門サイトでGDO、ケンコーコム、情報系でカカクコム、ネット通販のネットプライス、アマゾン(但し全世界)、ケータイのインデックス、ドワンゴ、サイバード、フォーサイド、さらに通販の千趣会、アスクル、ニッセンが1枚の業界地図にまとめられている。
多くの業界で業界全体のグラフも示されており、参考になる。
IT・コンピューター業界はパソコン、コンピューター、ITコンサルティング、ITサービス、半導体の5業種。
通信・ブロードバンド業界は移動体通信、固定電話、ブロードバンド、ブロードバンド映像配信、携帯電話端末の5業種。
エレクトロニクス業界は薄型テレビ1,薄型テレビ2,デジタルカメラ、DVDレコーダー、プリンタ、複写機の5業種。
コンテンツ業界は映画、音楽、放送、アニメ、ゲームの5業種。
海外はeコマース、ポータル、コンピューター、ソフトウェア、通信、携帯電話端末、デジタルオーディオプレイヤー、プリンタ・複写機、映画、メディアコングロマリットの10業種。
音楽業界で日本のオーディオレコードの生産金額は1998年がピークで6、000億円だったが、毎年減少し2004年では3,800億円まで減少している。
減少の主因は若者人口の減少であるとされていると。
音楽配信マーケットが注目されるわけだ。
コラムも秀逸
ところどころはさんであるコラムも面白い。
ライブドアに明日はあるか?
ネットは新聞を飲み込むのか?
シリコンバレーは復活したのか?
本当にICタグは役に立つのか?
革命は繰り返されるのか?(ソフトバンクの携帯電話参入)
インターネット電話の破壊力
次世代DVD規格バトルの行方
地上波デジタル化の光と影
それぞれ鋭い切り口で参考になる。
簡単に読め、それぞれの業界について数字等の引用が必要な場合には大変役立つ。
おすすめハンドブックである。
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