2005年11月03日

起業バカ 起業カモと言うべきか? 自らの起業失敗談もあり参考になる

起業バカ


アメリカのペーパーブックスを思わせるような装丁の光文社のペーパーブックスシリーズのベストセラー。著者はフリーライターの渡辺仁さんである。

中高年世代では退職金を元手に起業したり、フランチャイズチェーンのオーナーになったりすることを考えている人も多いと思う。

筆者もその予備軍の様なものであるが、そういった人が一読すべき本である。

『起業バカ』というタイトルなので、失敗しても繰り返し起業する不屈の起業家かと思ったが、生半可な気持ちで起業する世間知らずの『起業バカnaive entrepreneurs(ナイーブ・アントレプルナー)』、いわば『デモしか起業家』をカモsuckerにしている誘いの手口を紹介する。

光文社ペーパーバックスの特色なのであろうか、ちょっとした言葉に英語訳がついている。目障りに思う人も多いかもしれないが、英語はこなれており、英訳の質も高く、渡辺さんはかなりの英語力を持っていることがわかる。

たとえば「脱サラやリストラで起業start-upした人は、年間18万人。1年以内の起業を目指して準備中が約60〜70万人。起業希望者は130万人いるという。これを後押しbackingするように小泉首相も3年間で起業を36万件のペースに引き上げるなどと宣言した。」といったぐあいである。


落とし穴booby trap

問題の根源はリストラされた中高年起業家は世間知らずのシロウトlaymanが多く、団塊世代baby-boomer680万人の退職金を狙って様々な落とし穴booby trapが仕掛けられているのだと。

時限立法で認められている資本金1円起業でも、実は登録免許税などは減免されていないので、登録税だけで15万円掛かるとか、政府の支援策も中途半端なのだ。

ちなみに渡辺さんの推定では起業で成功become successfulできたのは、1500人に1人であると。


渡辺さん自身の起業

渡辺さんは1951年生まれというから、団塊の世代の少し下だ。

渡辺さんはライターとしてニュービジネスやベンチャービジネスの成功例、失敗例など2,500社ほど取材した経験があり、サラリーマン編集長時代にビジネス誌を立ち上げ、成功していた。

50歳を過ぎて、自分自身でベンチャー支援と、ニュービジネス支援の "Incubation" という100ページほどの雑誌を2002年4月から隔月刊で2004年2月の7号まで発行したが、資金不足で7号で廃刊となった。

フリーランスのライター、カメラマンら12〜3人を抱え、広告代理店を3社、コストは600〜700万円かけて2万部刷り、実売1万2千部、広告600万円で採算がとれる予定だった。

以前月に2万部売った実績があるので、たかをくくっていたところ、広告も売れず、自分は編集と営業の両方をやらざるを得なかったので、結局あぶはち取らずとなった。

なんとか会社を建て直そうとしていたときに、不動産を紹介して欲しいとのおいしそうなアプローチがあり、わらを持つかむ思いで話にのったが見事にだまされてしまい、結局資金ショートで倒産した。


起業バカの3大失敗原因

この本では22の実例が取り上げられている。起業バカが失敗する原因を整理すると次の3つであると:

1.『会社病』あるいは『会社バカ』 

世間の動きにうとく、常識からずれている。

実例7 テレビ電話によるパソコン教育システム

会社では成功した発明者だったが、独立して中高年ビジネスマン向けに自宅でのパソコン学習システムの事業を始めた。しかし中高年サラリーマンは自己投資しないことに気づかず、あえなく倒産。

実例5 オーダーメード・スーツのネット販売

オーダーメード・スーツが2,3万円台でできると新聞、ファッション誌で取り上げられたニュービジネスだったが、ひとりでやっていたため、デザイナーや縫製工場が確保できておらず、注文をこなせずあえなく失敗した。

『思いこみ』illusion、『自信過剰』overconfidence、『経験不足』lack of experienceの3パターンが、サラリーマン時代の体験をそのままビジネスに持ち込んで失敗する『起業バカ』の典型例であると。


2.『新聞病』あるいは『活字バカ』

新聞・雑誌を信じ込んでしまう。

実例1 仏壇・仏具洗浄ビジネスのフランチャイズ

新聞記事で見つけ、大阪の本部でトレーニングして関東で起業した。全国寺院名鑑をたよりに片っ端から寺院に売り込んだが、閉鎖社会のせいで仕事がとれなかった。


3.フランチャイズなどに多い『依存病』あるいは『神頼みバカ』

フランチャイズ本部におんぶにだっことなり、思考停止して他人に依存してしまう。

弁当店のフランチャイズオーナーとなった人の平均年齢は約50歳だという。

開業資金は宅配ピザで1500万円、弁当店2,000万円、コンビニで3,000万円程度かかり、これに加えて運転資金が必要だが、ちょうど退職金をつぎ込んで商売を始めるには手が届くサイズである。

しかし他人任せの脱サラパターンは失敗確率が高く、危険きわまりないと。

事例14 本部の縛りが強すぎたコンビニ

一部上場企業とはいいながら、いい加減な出店調査に基づく出店をし、立地に失敗。売上が伸びず、本部からは指導と称して商品を押しつけられる。

もちろんすべてのコンビニチェーンがそうではないが、コンビニは大企業が個人を食い物にするビジネスであると失敗した経験者は語っている。

本部への上納金は月100万円で、オーナーの月給は後から計算すると8万円だったと!

POSデータも届くのは10日後で、売れ筋予測もなにもなかったと。

この人は過度の疲労とストレスが原因で心療内科にかかり、店じまい。

実例6 英語のホーム・ティーチャー

商圏も限定せず、指導もない悪徳フランチャイズに引っかかった離婚主婦。結局本部は教材や文具の販売がねらいではなかったのかと。

フランチャイズの場合は、商取引なので、消費者保護がなく、英語教材の通販などで認められるクーリング期間もない。本部の言いなりに契約してしまっても文句は言えないのである。

こういった悪徳商法の広告は「1年で出資金が倍に!」とか言う甘い言葉で朝日、読売、日経などの大新聞にも載っているので、広告を鵜呑みにしてだまされるケースが多い。

広告にだまされ、悪徳フランチャイズやマルチ商法に引っかかったのだ。

実例15 調剤薬局、
実例16 パソコン学習塾
実例17 弁当店の委託経営

死屍累々である。


話題の人楽天副社長の國重さんもちょっと登場


実例19 ハイパーネット 社長失格 板倉雄一郎氏

社長失格―ぼくの会社がつぶれた理由


筆者も数年前にこの本を読んだ。元ハイパーネット社長板倉雄一郎さんも載っている。そういえば今や時の人である楽天副社長の國重さんは、住友銀行丸の内支店長だったときにハイパーネットにいち早く融資したのだ。

國重さんの『いくら必要なんだ?』というような会話で、2億5000万円の融資が住友銀行からなされ、他行も追随した。1996年には銀行、リース会社から総額30億円を調達し、板倉さんはビルゲイツとも面談する、この頃がピークで、売上が伸び悩むと住友銀行はいち早く貸しはがしを始め、結局ハイパーネットは倒産する。


名経営者でも失敗する ましてやシロウトをや!

名経営者が、なぜ失敗するのか?


渡辺さんは、Forbes(?)で今年米国のビジネススクールNo. 1に選ばれたダートマス大学の経営学の権威フィンケルシュタイン教授の『名経営者が、なぜ失敗するのか?』という本を引用して、名経営者でも見込み違い、カン違いによる失敗がいかに多いかを説く。

この本も一読の価値がありそうだ。読んだらあらすじをまたご紹介する。


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Posted by yaori at 23:47│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 起業

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