2005年11月22日

アマゾンの秘密 組織としてのアマゾンの強さの要因がかいま見える

アマゾンの秘密──世界最大のネット書店はいかに日本で成功したか


アマゾン日本のサービス立ち上げ時にコンサルタントとして働いていた松本晃一さんのレポート。先にご紹介したアマゾン配送センター潜入レポートのアマゾン・ドット・コムの光と影とこの本くらいしかアマゾンに関する日本書はないので、こちらも読んでみた。

アマゾンは元従業員も守秘義務契約で縛っているので、核心に触れる情報は公開はできないのだろう。

松本さんは2000年3月から2002年6月までアマゾンに勤務していたが、この本の出版されたのは2005年1月で、最新の情報をカバーしている訳ではない。

それでも立ち上げ当初のCEOの長谷川純一氏に見込まれて契約社員(但し契約はコンサル契約)として採用されただけあって、アマゾンの裏側やアマゾンの経営哲学の様なものが、かいま見えて参考になる。

松本さんは2000年3月に採用されたが、1999年に日本でのアマゾンのサービス立ち上げは決定されており、秘密裏にプロジェクトチームが結成されていた。

2000年内にサービスを立ち上げ、アウトソースせず自力でサイトを立ち上げるというのがアマゾンCEOのジェフ・ベゾスから与えられた使命だった。

アマゾンの特徴であるいくつかのCRM機能が日本でどのように立ち上げられたのかのドキュメンタリーとしても面白い。

いくつか印象に残った点を挙げてみよう。


アマゾンのCRMデータには性別・年齢がない

アマゾンと言えば、膨大な顧客・購買データを利用したデータベースマーケティングやCRMが有名で、『atamanisuttoさん、おすすめがあります』とか『この本を買った人は他にこんな本も買っています』とかのリコメンドがその例である。

しかし通常は顧客の年齢や性別、職業や地位などを調べてプロファイル化することによって、20代女性とかいったターゲット層を決めるのに対して、アマゾンでは顧客の個人的なプロファイルに関わる特性を購買活動に結びつけていない。

アマゾンにとって重要なことは、その顧客が誰であるかということではなく、その顧客が何を買ったか、またどの商品に興味を持ったかという点である。

ネットという非常にプライベートな世界では、たとえば少女コミックでも購入者は必ずしも女性のみとは限らないので、購買実績を重視するのだ。

そういえばアマゾンでは配達の時に必要なので住所とか電話番号、メールアドレス、時としてクレジットカード情報の入力は必要だが、それ以外の年齢や性別などの情報は一切不要である。

顧客一人一人を点として捉え、相似の購入行動という線を見いだし、向かう方向性をリコメンドしていくことによって顧客が真に望んでいるものの発見へのヒントを見いだすという考え方なのだ。


アマゾンレビューとカスタマーレビュー

アマゾンのコンテンツには2種類ある。カタログコンテンツと呼ばれる出版社、著者から提供される書評等と、エディトリアルコンテンツと呼ばれるアマゾンのエディターや専門のライターまたは読者から提供される書籍紹介文である。

エディトリアルコンテンツにはアマゾン自身で制作するアマゾンレビューと読者の投稿によるカスタマーレビューの2種類がある。

アマゾンジャパン立ち上げ時には、アマゾンレビューのライターを確保するために、日本の出版社からライターの紹介して貰ったが、日本の出版社はアマゾンを『黒船』として警戒するのではなく、総じて協力的であったと松本さんは語っている。

日本の出版業界改革の為にも、アマゾンを応援したいという出版業界の人が多かったことは驚きであったと。

松本さんはカスタマーレビューこそアマゾンの成功の要因だと語っている。アマゾンのおすすめ度はカスタマーレビューのおすすめ度に基づいており、出版社などから提供される情報・意見よりも顧客の意見を尊重するというアマゾンの基本姿勢が良くあらわれている。

アマゾンではABテストという大規模なテストを行い、カスタマーレビューのあるサイトの方がカスタマーレビューのないサイトよりもコンバージョンレート(実購買率)が高いことを検証している。

ABテストとはある一定期間、異なるサイト構成のAバージョン、Bバージョンを展開して、どちらのバージョンが効果があったのかを測定する、いわば本番テストの様なものである。

また書籍に関してはカスタマーレビューの効果は高いが、音楽CDなどでは大きな影響は出ていないということも検証の結果、わかっている。

こんなデータがあったので、アマゾンジャパン立ち上げの時には毎週抽選で5,000名のカスタマーレビュー投稿者にアマゾンギフト券が当たるというキャンペーンを行い、順調にスタートさせたのだ。

アフィリエイトマーケティングの元祖アマゾンのアソシエイトプログラムと並び、カスタマーレビューも『買い手のマーケティング』という、昔ながらの口コミをITを使って実現する手法なのだ。


アマゾンのサイトは巨大なソフトウェア


アマゾンのURLには/OBIDOS/という文字が入っているが、これはアマゾン独自のシステムであり、マクロ言語である。これは顧客の購買行動から導かれた個人向けの情報を動的にページ生成し配信する仕組みだ。

いわばサイト全体が巨大なソフトウェアという性格を持っている。

アマゾンでは社内のヘルプデスクをリメディシステムと名付け、障害を発見した人は『リメディチケット』と呼ばれる障害報告をオンラインでシステムに登録する仕組みとなっている。

もしトラブルがあるとシアトルのビルダーと連絡を取って障害対応する。

松本さんが在職中に一度『インパクトレベル1のリメディチケット』が切られる事態が発生したそうだが、リメディチケットには5段階あり、最緊急の事態がインパクトレベル1である。


小さな書店

アマゾンは1995年創業で、しばしば経営危機がささやかれながらここまで成長してきた。

インターネットの先駆者だけあってアマゾンの開発したアソシエイトプログラム(アフィリエイトプログラム)とか、リコメンドなど、現在の消費者向けウェブサービスの最先端を走っている。

アマゾンの日本代表と言っても名前も顔もわからず、個人の顔が見えない会社であるが、ジェフ・ペゾスの『小さな書店』コンセプトをネット上で実現させるために、組織としての蓄積はすごいものがある。

そんなことを考えさせる本であった。

参考になれば次クリックと右のアンケートお願いします


人気ブログバナー















Posted by yaori at 13:04│Comments(0)TrackBack(0)インターネット | ビジネス

この記事へのトラックバックURL

http://trackback.blogsys.jp/livedoor/yaori/50222681