2006年02月11日

高学歴ノーリターン 高学歴者でも格差拡大のギャンブル資本主義の時代

高学歴ノーリターン The School Record Dose Not Pay


厚生労働省キャリア官僚から兵庫県立大学助教授に転出した中野雅至(まさし)さんの日本の学歴価値の再考察。

中野さんは同志社大学出身で一旦、大和郡山市役所に就職するが、国家公務員上級職試験に合格し、旧労働省に入省。労働省、厚生省の様々なポジションをキャリア官僚として経験し、ミシガン大学へのMBA留学も経験する。

投稿論文で研究者としての実績を積み重ね、公募で兵庫県立大学に転職する。

一見留学経験もあるバリバリのキャリア官僚に見えるが、東大中心の官僚世界で同志社大学卒の中野氏は同志社卒の後輩もなく、いわばアウトサイダーだと感じていた様だ。

東大社会ともいえる中央官庁勤務と米国でのMBA留学経験をふまえて、東大を頂点とする日本のピラミッド型学歴社会が、運と人脈だよりの高学歴ノーリターンの社会になりつつあることを描いている。


『お役所の掟』の再来?

旧厚生省と言えば『お役所の掟』などの役所の実態暴露シリーズがベストセラーとなり、結局厚生省を懲戒免職となった故・宮本政於(まさお)さんを思い出す。


お役所の掟―ぶっとび霞が関事情


『お役所の掟』ほどではないが、キャリア官僚の長時間勤務の実態が描かれていて、読み物としても面白い。

こんなタイトルである:

主導したくてしているわけじゃない!事務局地獄

コピー機が火を噴く ペーパーコピー地獄

パワーポイントの普及とともに広がった 矢印地獄

知性は全く必要なし (ワープロ)代打ち稼業地獄

意外に平気でやってしまう ゴマすり地獄

振り返ればむなしさだけが残る 多能工化地獄

鬱病・自殺地獄

労務管理という概念は一切なし マネジメント無視地獄(部下をつぶして出世する)


高学歴者の3層化

中野さんは日本の高学歴者は次の三層化していると。

1.リスクを取る勇気やリーダーシップのある「カリスマ性のある高学歴者」…5%

2.親が金持ちの「ボンボン高学歴者」…20%

3.下・中間層出身で目立った取り柄のない「さえない高学歴者」…75%

社会全体で格差が拡大していることは、いろいろな人が指摘するところだが、高学歴のサラリーマンも収入は増えず税負担は増えるばかりで、大半がもはや勝ち組とはいえなくなっていると。


ギャンブル資本主義社会の到来

ロバート・ライシュは『勝利の代償』でこれからは変人(アーティスト、発明者、デザイナー、エンジニアなど)と精神分析家(営業担当者、需要開拓者、流行観察者など)の、他の人々がなにを欲しているのか、何を見たいのか、市場の機会を生み出せる人が勝者となる時代であると語っている。


勝者の代償―ニューエコノミーの深淵と未来


中野さんは、『一流大学を卒業したヤツより、カネを稼ぐヤツが偉い』という考えが優位になってきており、ピラミッド型学歴社会からギャンブル資本主義社会へ変化すると語る。

運と人脈がすべてを決すると。

例えば著者の中野さんはこうやって本を書いているが、中には「この程度であれば俺でも書ける」と思っている読者も必ずいるだろうと。自分もそうであったと。

しかし、しょせんそんなことはぼやきに過ぎず、重要なことは「出版の機会をうまく捕まえたかどうか」であると。

人脈やコネを利用して、市場やマスコミに売り込んで、実力を認めさせることができるかどうかが重要なのだ。つまりすべて市場化能力のなせるワザなのだと。

自分の実力や能力を売りこむ際に最も重要なものは人脈で、ギャンブル資本主義社会で頼れるものは人脈であると。


大学の価値は誰と出会ったかである

中野さんは大学教育の本当の価値は、なにを学んだかではなく、誰と出会ったかであると説く。

たとえば米国の大学院に留学する場合、選考書類は1.TOEFLのスコア、2.大学時代の成績、3.エッセー(自己アピール)、4.そして推薦状だ。

ビッグショットの推薦状があれば、おおかたの大学は通る。米国の有名大学は私立大学が中心で、コネクションが重要なのだ。

コネが重要な要素となれば、最も得するのはどこか。小泉首相の出身校ボンボン大学の慶応大学であり、最も多くの社長を輩出する日本大学だと。

戦前の金持ち社会と同じ「慶応ボンと東大番頭時代」が既に訪れているのだと。


新・学歴社会

この様に高学歴が必ずしもハイリターンを保証しない時代になってきてはいるが、こつこつと努力することの重要性、夢を持たせることの重要性を保つためには、学歴はわかりやすい羅針盤であると。

米国でもトップのMBAプログラムの卒業生の初任給はスタンフォードで1300万円と高く、あきらかに高学歴ハイリターンの報酬となっている。

理想的な学歴社会とは学歴アップデート社会であり、東大>京大>一橋>それ以外といった順位付けはやめ、米国の様にトップ20は常に変動するというような形が良いと提言している。

最後に2004年度の高額納税者番付が付いているので、これもスポニチの記事を紹介しておこう。


筆者は某大学某学部出身だが、出身運動部のOB会などに行くと、最近の卒業生で定職に就いていない人の割合が増えてきた様な気がする。

筆者の学生時代でも留年を繰り返して大学にいつまでも残っていた人はいたが、それでも司法試験浪人とか一応ちゃんと目的はあった人が多かったと思う。

近々あらすじを紹介する大前研一氏の『私はこうして発想する』で、大前氏は現在の日本の教育では21世紀に必要とされる人間が生まれてこないと語っている。

筆者も国際的ビジネスマンに要求・評価される教育水準が、マスプロ教育中心の大学では不足で、専門性の高い大学院卒まで上がってきたのが実体ではないかと思っているが、現象面で中野さんが『高学歴ノーリターン』と呼ぶ事態も起こっているような気がする。

面白く読め、そんなことを考えさせられる本でした。


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Posted by yaori at 00:14│Comments(0)TrackBack(0) 人生設計 | ビジネス

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