2006年05月06日

私はこうして発想する 大前研一の21世紀を生き抜く発想術

私はこうして発想する


大前研一氏のビジネスブレークスルー(BBT)大学院大学の紹介を中心とした21世紀に通用する人材育成の提言。

大前研一氏の設立したビジネスブレークスルー大学院大学は、MBA取得のためのコースとして1998年にスカパーを使った衛星放送チャンネルとして始まり、2005年に株式会社ビジネスブレークスルーとなった。

勝手連的に始まったアタッカーズビジネススクール一新塾とならぶ大前さんの組織的活動である

スカパーで多くのチャンネルが始まったが、結局現在はテレビ通販とアダルト程度しか採算がとれていないなかで、ビジネスブレークスルーは数少ない生き残りの一つである。

日本で例のない校舎のない大学院を目指し、CS放送とインターネットを駆使した遠隔教育の先駆者として4,000時間以上の膨大な教育コンテンツを蓄積しており、ビジネス基礎講座とか、経営者ライブ、大前研一ライブといった番組を放送している。

Aircampusというインターネットによる双方向授業のためのソフトウェアを開発して、遠隔教育でも対面教育に匹敵するクオリティの授業が行えると。

大前氏の発想の技術は次の6つのメソッドによる発想の積み重ねであると:

メソッド 1 先入観を疑う
メソッド 2 ネットワークから考える
メソッド 3 他ににはないものを目指す
メソッド 4 歴史から教訓を引き出す
メソッド 5 敵の立場で読む
メソッド 6 討論する

21世紀を生き抜くために最も重要なスキルが、発想する技術であると大前さんは語る。

それぞれのメソッドの印象に残った話を紹介しよう。


メソッド1 先入観を疑え

『少子化は大学の危機』とは先入観である。大学はOBに門戸を開けと提案する。

BBTの一期生の平均年齢は38歳、30代が54%、40代が34%で、44%が公認会計士、税理士、中小企業診断士などの資格を持ち、医師、薬剤師もいる。

経営について教えるなら、やはり数年以上の経験のある人たちを対象とすべきであると。

忙しい社会人のための教育ツールが遠隔教育システムのAircampusである。

人口減少に即効薬のクスリは移民を受け入れることであると。

一新塾の新刊書『一新力』で外国人との共生プロジェクトを紹介したが、大前さんの提唱する移民を受け入れるためには、外国人労働者との共生が機能しなければならない。

『一新力』の紹介でもふれたが、一新塾は単に口で言うだけでなく、地に足ついた意義ある活動をしているので感心する。


メソッド2 ネットワークから考える

大前さんのいうネットワークとは、顧客との接点の話だ。いわゆる『ラスト1マイル』とも言えると思う。

BBT大学院大学は、CS放送でUSC(南カリフォルニア大学)のMBA取得コースを始めたが、USCから放送では出席を取れないため、単位が付与できないと指摘された。そのためインターネットを利用した独自の視聴認証システムを開発して、ビジネスモデル特許を取得した。

インターネットの出現を見たときに、大前さんはこれで双方向の授業を実現できるネットワークができると考えたそうだ。

『放送とITの融合』といっても、自前のテレビ局を持てば、他の局のコンテンツは扱えず色つきのネットワークとなってしまうので、ホリエモンは本気でないと見破ったそうだ。

一番重要なのは「インターネットのユーザーは選択を好む」ということである。

さまざまなコンテンツを一箇所ですべて比較できることがベストであり、『無任所中立』というのが一番優れている。

流しっぱなしのテレビに対してケーブルテレビのような課金できるネットワークは強い。ITと放送の融合が実現していると大前さんは語っている。


メソッド3 ”他にはないもの”を目指す

大前さんはCNNの例を挙げている。アメリカの3大ネットワークは幕の内弁当で、CNNは一品料理で成功した。

余談であるが、マイクロソフトのXbox 360も恐るべき機械であると。大前さんはこれを見たときにソニーは次世代ゲーム機では負けるなと思ったと。CNETの記事も引用しておく。

「家庭において、いかに放送とITの融和を起こしていくか」という明確な戦略と哲学が詰め込まれているのだと。

今後ブロードバンドを使ってパソコンでビデオをダウンロードし、それをXbox 360に転送して、リビングのテレビで見るとか、パソコンに入っている旅行の写真をXbox 360に転送して、テレビで見るという、いわば21世紀のデジタル幻灯機(プロジェクター)なのだと。

筆者はこの説明を聞いてもまだピンとこないが、ゲーム業界がどうなるか注目したい。

ソニーはPS3をハイビジョン画質をウリにしようとしているが、子供たち用の小さなテレビでは、PS3のどこがすごいのか実感できないのだと。泥んこ道をフェラーリで走る様なものだと。


メソッド4 歴史から教訓を引き出す

昨年中国の反日デモなどが報道され、中国の若い世代は反日教育が刷り込まれており、問題の根は深いと言われ、日本の経済界でも悲観論が出ている。

これを歴史から教訓を引き出して、突破してみようと大前さんは語る。

中国のイデオロギー教育は、反日に転換する前は、反米、反資本主義であり、その時々で変わる。また中国は内政問題があり、『敵がいないと困る国』なのであると。

日本企業は1980年代にアメリカで起こった強烈なジャパン・バッシングを切り抜け、米国市場で成功した。

それは日本企業が「アメリカ市場抜きでは生きていけない」と不退転の決意を持っていたから切り抜けられたのであると。

台湾企業は「狭い台湾では生き残れない。中国で成功しなかったら未来はない」という意識で中国に大挙して進出している。

日本企業も同じことで、『今こそ中国市場に突っ込む』という発想を持って欲しいと語る。

トップで中国語を勉強している人がどれだけいるか?と。米国市場に対してと同様の熱意と信念で取り組むべきであると提言する。

大前さんはこの章の最後に靖国神社問題にふれている。

戦後30年以上A級戦犯は合祀されていなかった。昭和天皇はかつては、毎年夏に靖国神社にいっていたものが、A級戦犯が合祀されてからは行かなくなった。大前氏は昭和天皇の判断を正しいと思うと。

大前さんは20年近く前に書いた『新・国富論』で、A級戦犯の合祀をやめ、参拝のための場所を別につくるべきだと主張したが、それは今でも変わらないと。


大前研一の新・国富論



メソッド5 敵の立場で読む

この場合の敵とはビジネス上のライバルあるいは顧客などである。

『お客の立場になって考える』というのが大前さんの基本である。

『相手の立場になって考えてみる』ーこれはビジネスに限らず、言い古された言葉ではあるが、問題点を把握するためには不可欠の手段であると大前さんも語る。

練習問題として『あなたが金正日だったらどうする』をあげている。

また韓国経済人のホンネということで、北朝鮮と南北統一したら、人口7千万人の核保有国が東アジアに誕生するので、日本と中国との間のバランサーとなると指摘している。

日本では韓国がこのように変質したと認識しているマスコミはほとんどないが、日本の常任理事国入りに反対するのも、こういった南北統一後の核保有国としての韓国の方が常任理事国にふさわしいという未来像があるからであると。

21世紀は韓国の時代であると韓国人は思い始めていると。

『中国は日本を併合する』というエキセントリックなタイトルの本が最近出たので、近々あらすじを紹介するが、日本外交は本当に今のままでよいのか、筆者は大いに疑問に思っている。

小泉首相の靖国問題のミスハンドルで、どれほど貴重な時間を浪費し、国益を損ねたかわからない。

ゴールデンウィークにアフリカに行く前に、中国、韓国との関係を正常化しろと言いたいが、もはや小泉首相では無理だろう。小沢一郎に期待している昨今である。


メソッド6 討論する

BBT大学院大学はAircampusを使って、リアルタイム・オンライン・ケーススタディを行っている。

パワーポイントはもちろん、4,000時間にもおよぶBBTの過去の講義へのリンクを貼ることができ、事実に基づく議論ができるのだ。

いわばインターネット上の掲示板の様なものだが、一週間で千件の発言を呼ぶこともあると。

大前さんが教鞭を取る『新・資本論ケーススタディ』は、その時注目を集めているテーマで学生たちの集中力を高めている。

上記の金正日の質問もこのケーススタディで使った題材だ。他に「あなたが三菱自動車のトップならどうする?」など、最新の話題をケースにして研究している。

普通の大学院は、たとえばハーバードビジネススクールでも、会社を研究してケーススタディに取り上げるまでに平均9ヶ月、長いものでは数年かかっている。

これでは『死体解剖』であり、あらかじめ答を導き出すフレーム(枠組み)が決まっており、答えも決まっていると。

しかし経営の現実はそんな簡単なものではないので、枠組みを越えた発想が、新しい時代を切り開いていくのだと。


最後に

大前さんは松下幸之助の『とらわれない素直な心』で見ると、違う景色、違う発想ができると説く。

今の日本の最大の問題は少子高齢化でも、財政赤字でもなく、今の人材ではこれまでのような経済競争力を維持していくことはできないということであると。

『世界のどこに出しても恥ずかしくない』『どこに出してもリーダーシップがふるえる』21世紀型の人材をつくる教育がないことが最大の問題であると。

筆者も同感である。

トヨタが全寮制の中等教育学校を始めたが、これも同じ様な問題意識からだと思う。

簡単に世の中を変えることができるとは思わないが、しかし日本全体の意識を変えて行くには、マスコミなどに報道されない事実を知ることと、FAW(Forces At Work)背後で動いている力がなにかを考える姿勢を、一人一人が持つことが重要だと思う。

ウェブ2.0がすすみ、ブログなどを通して個人が自らの意見を発表する場は今後とも増えていくと思うが、筆者も大前さんなどの良書のあらすじを紹介することで、少しでも多くの人が問題意識を共有できるよう心がけたい。


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Posted by yaori at 20:47│Comments(0)TrackBack(0) 大前研一 | ビジネス

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