2006年06月05日

中国は日本を併合する センセーショナルなタイトルだが内容は真剣だ

中国は日本を併合する


扇情的なタイトルが目を引く。防衛庁防衛研究所に20年間勤務し、その後杏林大学教授を務めた平松茂雄氏が著者だ。

正直言って本のタイトルがけしからんので、頭に来て読んだというのがホンネだが、本の内容は真剣だ。

『併合』という言葉を使うと、領土として組み入れられるという印象があるが、中国が世界、少なくともアジアの中心となり、日本は手も足もでない状態に追い込まれつつあると平松さんは指摘する。

本の帯に「櫻井よしこ氏推薦」、「数十年にわたって中国情報を収集、分析した本書は私たちに衝撃の事実を突きつける。中華大帝国の再現と日本併合を最終目的とする中国の企みの実態、全国民必読の書である」とある。

たしかにこの本を読んで、中国の最近の一連の動きを全体として見ると、中国は戦わずして、日本を政治・経済圏に取り込むべく着々と準備をしていると考えるのが適当かもしれない。

一連の行動とは;
東シナ海での海上ガス・石油田開発
海洋調査船の日本近辺調査
中国原子力潜水艦の日本領海侵犯
南シナ海でのミスチーフ環礁の領土化
台湾との関係
宇宙開発を通してのロケット制御技術=核ミサイル技術向上
等である。


『長征精神』遠大な中国の核戦略

平松さんは中国の戦略は、すべて遠大なビジョンをベースとする『長征精神』に基づいてのものであると指摘する。

『国家意思』のあり過ぎる中国、なさ過ぎる日本なのだと。

長征とは国民党の蒋介石から圧迫されて、中国共産党軍が1934年から1年掛けて本拠を陜西省の延安に移すまで移動した大移動だが、中国では新しい困難な課題に取り組むときは必ず、この『長征精神』が強調される。

中国は長期的な国家戦略を元に動いており、1958年の台湾との金門島砲撃事件のあと、1959年にソ連が中国に対する核技術供与をやめたときに、毛沢東は「1万年掛かっても原爆をつくる」と語ったほどだ。

フルシチョフは毛沢東の「原爆で中国の半分の3億人が死んでも、残り3億人が生き残り、何年か経てば6億人となり、もっと多くなる」という発言に驚き、非人間的な野獣の考えであると激しく非難したと言われる。

毛沢東は1950年に朝鮮戦争に参戦し300万人の軍隊を送ったほか、1958年に金門島を砲撃する等、多くの犠牲者を出す熱い戦争をしており、毛沢東の中国が原爆を持ったら、世界大戦がはじまっていたかもしれない。

毛沢東は「他人の侮り(あなどり)を受けない」ことをモットーにソ連の核の傘の下に入ることを拒否した。

結局中国は核兵器を自力で開発し、1980年代までに大陸間弾道ミサイル、複数弾頭ミサイル、潜水艦からの弾道ミサイル水中発射、静止衛星打ち上げのすべてに成功した。

その間に米ロの核兵器は小型・移動式、命中精度向上、多弾頭化など、中国の核兵器よりさらに進歩したが、1990年代以降はむしろ核兵器廃棄に進んでおり、今や中国は米ロの2大大国と張り合える核戦力を保有すると言える。


中国の東シナ海資源戦略

日本と中国の間の国境・経済問題は尖閣列島の領有権と東シナ海のガス田開発の二つだ。

1968年に国連アジア極東経済委員会が実施した東シナ海の海底調査で、東シナ海付近には中東に匹敵する豊富な石油資源の可能性があると発表されている。

日本政府はその後30年以上、日本の石油企業からの日本側大陸棚での鉱区を設定しての資源調査を許可しなかったのに、中国側の海洋調査、次いでガス油井設置は黙認したのだ。

中国の東シナ海でのガス、石油開発は春暁、天外天、断橋、残雪の4箇所の海上採掘施設を建設し、処理設備と中国大陸へのガスパイプラインも建設中で、2008年の北京オリンピックまでには完成すると見られている。

これらのガス田は日中中間線の中国側に位置しているが、日本政府は今頃になって中国側から日本側の資源をストローで吸い取ろうとしているとか騒いで、やっと日本企業の資源開発を認めた。

日本と中国に圧倒的な経済格差があった30年間に日本側の開発を認めなかったのは、日本政府の怠慢と言われても仕方がないだろう。

中国は東シナ海だけでなく、南シナ海では南沙諸島(スプラトリー諸島)やミスチーフ環礁に恒久施設を建設し、ベトナム、フィリピンなどの反対を無視して自国の領土化している。

いずれも石油やガス資源があると見られている地域であり、地下資源の開発が目的の行動だ。

尖閣列島は日本の固有の領土にもかかわらず、中国が領有権を主張し、中国民衆が時々騒いでいる。


台湾の軍事統一が中国の究極の目的

台湾は中国にとって地政学的に非常に重要である。もし台湾を中心として大規模な戦略的封鎖が実施されると、中国の海軍と海運は封じ込められてしまう。

逆に中国が台湾を統一できれば、台湾海峡バシー海峡という日本のシーレーンを抑え、日本の資源輸送ルートを抑えることができるのだ。

中国の戦略は台湾を軍事統一することを狙っており、有事には米国の空母機動艦隊の台湾近海への進展を阻むために、中国の潜水艦を使って機雷を設置することを画策している。

中国の海洋調査はそのための海底地形図つくりをしているのだ。

日本の対潜水艦戦闘能力が傑出していることは、『その時自衛隊は戦えるか』で紹介したが、
中国に対抗するために、台湾と連携して対潜水艦対策を進める必要があるのだと平松さんは語っている。

平松さんは、台湾問題は日本にとって他人事と済ませられる問題ではないと語る。

中国は台湾は中国の内政問題であるとして、世界や日本の世論にゆさぶりをかけ、もし台湾を中国が軍事統一するようなことがあると、もはや日本の将来は決まったようなものだ。

その中国に対して、日本は1979年から2004年までに3兆3千億円、民間援助もあわせると6兆円の援助を供与してきた。

日本はODAによって中国の経済成長をささえ、実質世界一の外貨準備高を保有するまで支援し、軍事国家として成長する中国の国家戦略を支援してきたのである。

その間、日本から平均2,000億円の援助を受けながら、中国は毎年600億円の援助をベトナム、カンボジア、パキスタン、アフガニスタンなどに与え、さらにアフリカ諸国などにも積極的に経済援助をしている。

日本政府は国家安全保障の脅威をもたらしている国に対して、友好や人道の名の下に莫大な援助を続け、中国の軍事力の強化を助け、自国の安全を危険にさらすという愚行を犯してきたと平松さんは断じる。

中国はドイツの国連常任理事国入りには賛成するが、日本の常任理事国入りには反対している。対中ODAは政治的にも意義がなかった。


台湾独立と国連加盟

台湾は未だに中華民国と名乗り、中国の正統政府が台湾に逃れただけという立場なので、国連でも北京政府が台湾政府を追い出し、その後がまに座っている。

台湾は独立国ではないから、たとえ中国が台湾に侵攻してきても、国連はなにも手出しできない。

だから台湾が独立国になって国連に加盟することは、東アジア地域の安全保障の上で重要な意味がある。そのため中国は強硬に反対し、またアメリカも中国を刺激しないために、台湾の独立には反対している、

台湾は国民投票を2008年に実施すると見られるが、台湾独立を宣言して、それを日米が軍事力も含めて支援する形となれば、それによって中国とのパワーバランスが保たれるだろうと平松さんは語る。

最後に、もし中国が台湾を軍事的に統一したら、次は朝鮮半島、日本と飲み込んでいくだろう。その時日本はどうするのかと平松さんは警告する。

けしからんタイトルだが、『併合』を『手も足も出なくなる』と読み替えれば、納得できる本だった。


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Posted by yaori at 23:04│Comments(0)TrackBack(0) 自衛隊・安全保障 | ノンフィクション

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