2006年06月19日

愚直に実行せよ! 中谷巌のリーダーシップ論

愚直に実行せよ! 人と組織を動かすリーダー論


多摩大学学長で、三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長などを兼任する中谷巌さんの近著。

中谷さんは一橋大学教授の時にソニーの取締役に招聘されたが、当時は公務員の兼業が認められていなかったので、一橋大学を辞任してソニーの取締役に就任したことで有名だ。

新たに刊行されたPHPビジネス新書のトップコンサルタント揃い踏みの一冊だ。

もともと『21世紀のリーダーシップ論』として『PHPビジネスレビュー』に連載したものをまとめたもの。

中谷さんが語るリーダーの基本は次の4つだ。

1.高い「志」があること

2.明確なビジョンや戦略を持ち、それを明確に説明する力があること

3.変革実現に向けて愚直に実行する粘りがあること

4.リーダーが理想実現のために身をもって示すこと

リーダーは自分でリーダーになろうと思ってそうなるのではなく、身をもって示しているうちにいつの間にか他人によってリーダーにさせられてしまう、そういう存在であると。

そういう状況が生まれてくると、それがさらにリーダーにエネルギーを与え、身をもって示す行動に拍車がかかり、ますます支持者が増えていく。

リーダーと支持者がだんだんと一体化し、互いにより大きな行動へと輪が広がっていく。こういうリーダーと支持者の一体化こそ変革を成功させる最終的な条件となると中谷さんは語る。

中谷さんは多摩大学で『四十代CEO育成講座』を立ち上げ、塾頭としてグローバルに通用するビジネス・リーダーの育成に情熱を傾けてきた。この本のかなりの部分は、その講座で出逢った塾生、講師、同志との知的格闘によるものである。


1.「志」がある
リーダーに求められる第一の資質は「志」があることである。大きな「志」がなく、私利私欲だけで動く人間はすぐ見透かされてしまい、人はついてこない。

「志」の背後にある考え方は、おそらく「自分の存在は他人によって支えられている」、「自分が今日あるのは自分だけの力ではない、周りの人たちが自分を支え、そのおかげでここまでこれたのだ」という感謝の念ではないだろうかと中谷さんは語る。

立派な「志」を持つには世界観、人間観がしっかりしていなくてはならない。

人間とはいかなる存在か、人間は何のために生きているのか、人間社会のあるべき姿はどういうものか、など自分なりの世界観、人間観がしっかりしていないと、なにが問題なのかという肝心のものが見えてこないし、問題意識も出てこない。

その意味では、「志」を持つためには経営戦略論とかマーケティングなどのスキル系の知識だけでは不十分で、むしろ大切なのは人間そのものに深い愛情と好奇心を持っていることであり、そのためには、教養を磨かなければならない。

高等教育は受けていなくても教養のある人はたくさんいると松下幸之助を例にだしているが、中谷さんも松下幸之助の影響を強く受けている様だ。


2.ビジョンと説明能力がある
ビジョンは「志」を具体的な行動に落としこむために必要になる。明確なシナリオを描き、その中身をしっかりとしたロジックに基づいて他人に共感を呼ぶ形で説明できること。これがビジョンと説明能力である。

目的地は誰にでもわかる簡潔明瞭なものでなければならないと。

なぜその目的地に着くことが重要なのか、その目的地に着くための最も有効な方策は何か。リーダーは誰もが納得する方法でこういったことを簡潔明瞭に説明できなければならない。どんなすばらしい思いを持っていても、人々が共鳴できる説明能力がリーダーになければ人に理解されず、改革は失敗に終わる。

3.愚直な実行力がある
リーダーは必ずしもカリスマ性がある必要はない。

カリスマ性はないが、現場によく足を運び、自分の成し遂げようとしていることが現場レベルでしっかりと実行に移されているかどうか、とことんこだわる人。

派手さはないが、目標にこだわり、あくまで愚直にそれを実行する人。

こういうリーダーこそ、実はリーダーとして尊敬され、人々の信望を集めているというケースは少なくない。

逆に構想力やビジョンを描く能力に秀でていても、そのことを発表し、命令してしまえばあとは部下の仕事だとばかりに、現場にもろくに出向かないし、自分のビジョンが予定通り着実に実行されているかを数字だけでチェックすればよいと考えているリーダーは、多くの場合、長期的な意味では失敗している。

特に日本型リーダーは現場にしょっちゅう足を運び、現場の人々に我々のリーダーは本気で自分たちと一緒にやろうとしていると現場の人々に感じされることが重要である。

日本の様に組織の末端で仕事をしている人ですら、組織全体のパフォーマンスに関心を持ち、自分たちの力で問題を克服しなければと感じる当事者意識の高い文化風土のなかでは、リーダーが現場に関心を持ち、常に現場と接触を保つ行為は非常に重要である。

4.身をもって示す姿勢がある
リーダーになるための第四の条件は、コミットメント(決意)である。「このリーダーは口先で言っているのではない、本気でやるつもりだ」と思わせることが必要だ。

命令だけして、自分は遊んでいるリーダーに、誰が命を投げ出してくれるだろうか。本気だと思わせる明確な行動が必要なのである。

リーダーのコミットメントという話でよく引き合いに出されるのがウィリアム征服王であると。

ウィリアム征服王はたった12,000人の兵士で遠征し、軍がイギリス海峡を渡り終えたあと、船をすべて焼き払うように命令した。

リーダーの決意が本物であることを知った兵士は、パワー全開し、150万人を擁するアングロ・サクソンを征服したのだ。


リーダーには人間観、人間愛、世界観が重要だという考えに基づき、様々な具体例が紹介されている。

カルロス・ゴーンのニッサンでの文化適合型行動。ゴーン改革は従業員に当事者意識を持たせ、V字回復で、成果を早く出して様子見派を味方につけ、手柄を独り占めにしなかったことで成功した。

リーダーたるもの、教養を身につけよと中谷さんは語る。

たとえばワインの知識、歴代の日本の首相のフランス訪問のワインから、日本の首相のランキングがわかりますかと。

日本の歴史に関する深い知識、パレスチナ問題、日本文化等々。

身をもって示す例では歌舞伎の『菅原伝授手習鑑』の4段目寺子屋の菅原道真の子供を救うために、自らの息子を身代わりに差し出す究極の自己犠牲を挙げている。

子を持つ親として、聞きたいストーリーではないが、歌舞伎を一回しか見たことがない筆者にとって、勉強になった。機会があれば是非鑑賞したいものだ。

リーダーシップについて学べ、なおかつ教養がつく得難い本であった。


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Posted by yaori at 23:38│Comments(1)TrackBack(0) ビジネス | 中谷巌

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Posted by GW at 2006年06月22日 23:30