2006年07月04日

国家の品格 ベストセラーの学者本 昨年は養老孟司 今年は藤原正彦

国家の品格


今年のベストセラーの一つ。数学者の藤原正彦さんが『国家の品格』と題して行った講演に加筆したものだ。

昨年は解剖学の養老孟司さんの本がベストセラーになったが、どうやら今年の学者本は藤原さんが一押しの様だ。

藤原さんはベストセラー小説の『博士が愛した数式』を書いた小川洋子さんとの共著で、『世にも美しい数学入門』という本を出していることでも知られている。


世にも美しい数学入門


数学者が国家の品格を論議するという、どちらかというと領空侵犯の様な本ではあるが、純粋な主張が共感を呼んでいる様だ。

藤原さんは30代にアメリカの大学で教えた経験があり、以前はアメリカ流の論理を押し通すやり方だったが、論理だけでは物事は片づかないと考えるようになった。

40代でイギリスのケンブリッジで滞在した時に、同じ英語圏と言ってもイギリスでは論理より伝統や誠実さ、ユーモアが重んじられていることを知り、帰国後は論理より情緒とか形が重要と思えてきたと。

情緒は教育によって培われ、形は主に武士道精神からくる行動基準で、これが元々日本の国柄ともいうべき、日本人が持っていた美風であった.

しかし西欧化、アメリカ化によって、最近ではホリエモンや楽天の金にあかせたメディア買収の動きなど、日本は情緒と形を忘れ、市場経済に代表される論理と合理に身を売ってしまった。

日本は国柄を失い、『国家の品格』を失った。

グローバル化は世界を均質にするものであり、日本はこれに対抗し、孤高の日本でなくてはならないと語る。普通の国になってはいけないのだと。

世界に範をを垂れることが、日本の果たしうる人類への世界史的貢献なのだと藤原さんは語る。

奥さんに言わせると藤原さんの話の半分は誤り、残りの半分は誇張だとのことだが、欧米は産業革命までは文化もなく野蛮だったとか、犯罪、家庭崩壊、教育崩壊など先進国はすべて荒廃しており、西欧的な論理、近代的合理精神の破綻であるとか言いたい放題だ。

考えさせられるのは、最も重要なことは論理では説明できないという点だ。

数学では不完全性定理というものがあり、どんなに立派な公理系があっても正誤を判定できない命題が存在することが証明されている。

例として人間社会では「人殺しは悪いこと」なのか論理的に説明できないと。

「いけないことはいけない」としかいえないのだ。

藤原さんは自由、平等、民主主義にも疑いを向ける。

権力を批判する自由以外は、すべてルールや制限があり本当の自由はなく、ホッブス、ロック、カルヴァン、ジェファーソンなどの例を挙げて、自由とは欧米が作り上げたフィクションであると語る。

民主主義では国民は永遠に成熟しないので、真のエリートが必要なのであると。

エリートは偏差値エリートの官僚ではなく、イギリスのオックスフォード、ケンブリッジ出身者や、フランスのグランゼコールなどの国民のために命を捧げる様な真のエリートのことである。

平等も欧米のひねり出した耳当たりの良い美辞に過ぎない。

アメリカの女性を認めないゴルフクラブや有色人種の入れないクラブなど、自由と平等が両立しない場合も多い。

合理性、論理の破綻の解決策として藤原さんは日本が古来から持つ情緒あるいは伝統に由来する形を見直していこうと提言している。

論理とか合理も重要だが、それだけでは人間はやっていけない。それに付加するものが日本人の持つ美しい情緒や形であると。

もののあわれ、感性、桜のはかない美しさ、紅葉の繊細さ、懐かしさ、そして4つの愛。家族愛、郷土愛、祖国愛、人間愛である。

武士道精神の復活を提言し、卑怯を憎めと。

日本は国家の品格を喪失してきている。

日本の様に狭い国土と乏しい資源の国は初等中等教育が命綱である。国民の高い知的水準が日本の繁栄の原動力であったのだと。

(小沢一郎に反対して)日本は普通の国になるべきだとは思わない。日本は異常な国になるべきであると。

『文明の衝突』を書いたサミュエル・ハンチントンも世界の8大文明の一つとして日本文明をあげている。


文明の衝突と21世紀の日本


ここ4世紀ほど世界を支配した欧米の教義は破綻を見せ始めている。

世界は途方に暮れており、世界を本格的に救えるのは日本人しかいないと言って結んでいる。


海外生活や海外文化にとけ込めずに嫌米、嫌欧のナショナリストになる人はよくいる。藤原さんがそうだとは言わないが、海外生活が長く11年を越えている筆者は、一途な日本礼賛にはつい警戒心を覚えてしまう。

理想論としては理解できるし『ALWAYS 三丁目の夕日』が日本アカデミー賞を12部門(?)独占したことを見てもわかる通り、昔は良かったと思う日本人は多いと思う。


ALWAYS 三丁目の夕日 通常版


筆者も昔の日本は世界に誇れる国だったと思うが、それにしても理想を現実にする具体策が欠けている。耳には心地よいがが、学者の議論と言わざるを得ないのではないか。

まずは立ち読みでざっと読まれることをおすすめする。


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Posted by yaori at 00:01│Comments(0) 趣味・生活に役立つ情報