2006年09月12日

ロウアーミドルの衝撃 大前研一の生活者大国への政治提言

ロウアーミドルの衝撃


大前研一は1990年前後に平成維新の会を立ち上げ、以前からの持論である道州制や生活者主権を提唱して1995年に都知事選に出馬したが、青島幸男他に惨敗し、政界進出をオールクリアした。

生活者主権の基本となる著書としては、新・国富論
平成維新
平成維新〈PART2〉国家主権から生活者主権へ
新 大前研一レポート
などがある。

オールクリアしてからは、ほとんどビジネス関係がメインで、他にアタッカーズビジネススクール、ビジネスブレークスルー大学院大学等に関する著作を時々出していたが、このロウアーミドルの衝撃は、改めて政治提言として生活者主権を提唱している。

2006年は、90年代から始まった日本の長期衰退から抜けだすことができるか、あるいは没落の道を進むのかの分岐点なのであると。


M字型社会

日本は90年代後半から始まった所得減少にともない、総中流社会が崩壊し、年収600万円から1,000万円のアッパーミドルクラスが減少し、年収600万円以下のロウアーミドルクラスが8割を占める様になった。

1,000万円以上の高所得階層は5%前後でわずかながら増加しているが、一番増加したのが300万円以下のロウアークラスである。

ロウアークラスから始めるが、いずれは年収も増えてアッパーミドルクラス、うまくすればアッパークラスで定年を迎えるというシナリオが崩れ、年収は増えないのでロウアーミドルクラスからはい上がれない時代になってきた。

アメリカも1970年代までは総中流社会だったが、70年代後半からレーガン革命を経て、低所得層と高所得層のM字型社会が形成された。日本はアメリカに遅れること30年でM字型社会に突入したと大前氏は語る。


なんちゃって自由が丘

M字型社会に移行するに従って、ミドルクラスをターゲットとしていたGMSは凋落し、ロウアークラスを顧客にするディスカウントストアが台頭してきた。アメリカではGMSの代表のシアーズはとうとう2004年にKマートに買収されてしまった。

日本でも同じことが起こっており、ここ2−3年で利用を増やした業態はネットショップ、100円ショップ、食品スーパー、コンビニ、ドラッグストアで、逆に減らした業態は百貨店、カジュアル衣料専門店、GMSだ。

ロウアーミドルクラス向けの低価格小売業が躍進しているのだ。

しかしそんな中で売上を伸ばしている企業は単に安いだけではない。

キーワードは『なんちゃって自由が丘』だ。これは価格は安いが、センスは自由が丘という商品やサービスのことである。

いずれは住みたいと思っていた街=自由が丘には住めないが、その雰囲気だけは楽しみたいという人が大多数になっているからである。

この例がナチュラルキッチンだ。100円ショップだが、扱っているのはおしゃれな人気輸入雑貨店などに置いてあるようなセンスの良い商品だ。センスはアッパーミドル、価格はロウアーミドルというコンセプトが消費者にうけているのだと。

六本木ヒルズにあるZaraもセンスが良くて安い衣料を揃えて人気がある。

アイリスオーヤマの着せ替えソファー、車であればラグジュアリー・コンパクトカー、ニューラグジュアリー、少し無理すれば手が届くというコーチなどのアクセシブルラグジュアリーも人気だ。

二極化する消費者に対して、別々の商品開発を行っている企業もある。たとえば日清食品は、グータは価格が300円前後で年収700万円以上の層向けなので、ディスカウントストアでは販売せず、年収400万円以下の層には100円前後の商品を販売している。

生活の質を上げて、コストを下げる。今まで大前研一が破れ太鼓のように言い続けていることが現実となってきたのだ。


ライフスタイルを見直す

家、車、教育の見直しで生涯支出額が5,000万円は浮くと大前氏は語る。

日本の消費者の偏見を見直すべきであると。たとえば東京の西高東低の住居価格。これを捨てるだけでコストが安く、広い住居に住める。

またBSEも偏見の最たるものであると。日本ではBSEは20頭、アメリカでは2頭、アメリカは日本の100倍の牛がいるから、BSEの可能性は日本より少ない。にもかかわらず何故国産牛は安全で、米国牛は危険なのか?こんな理不尽なことをしているから、世界から偏狭な国と思われれてしまうのだと。

生活者大国を目指すには、農業補助金で穀物メジャーを買収せよと語る。また市場を開放して、許認可を廃止すれば世界中の安い建材や工法で日本でも600万円で家が建つと語る。

世界的には年収600万円はアッパークラスであり、食品や建物に対する規制を撤廃することで、生活の質が高められるのだ。


公務員はリストラできない

公務員には失業保険はなく、失業させる法律もない。公務員はリストラできないのであると。まずはここから手を着けなければならないと。

公務員以外で身分が保障されているのは第1次産業従事者である。巨大な農業、漁業補助金は、既得権のかたまりだ。


所得税を廃止し、資産課税に切り替える

政府税調はサラリーマン増税を提唱するが、大前研一が提唱する税制改革提案は所得税を廃止して、資産課税に切り替えるというものだ。

日本の社会が成熟期を迎え、フローは減るが、ストックは増えるからだ。

もう一つは付加価値税である。消費税の様なものではなく、製品なりサービスなりに付加価値が加わる段階で課税するものだ。

現行の消費税は徴税のがれの部分が多く、5%課税しているにもかかわらず、約10兆円の税収にしかなっていない。これをヨーロッパ諸国で導入されている透明性の高いインボイス方式を導入すれば、ごまかしが効かないと。

さらに大前研一は付加価値税は道州税とし、資産課税はコミュニティ税として、すっきりした体系とすべきであると。そして国には税収の5%を上納し、外交や防衛など国でしかできないことをやることにする。

大前氏の20年来の持論である道州制も必須だ。

日本を11の地域に分けると、首都圏道は世界7位の経済規模、関西道は世界14位、中部道17位、九州道19位、関東道24位と言った具合に世界規模のブロック経済として相互に競いあい、発展するのだ。


次期首相にやってもらいたいこと

まとめとして大前さんは次の4点を挙げる:

1.統治機構の抜本的変更(道州制の導入)
2.道州制と高齢化社会に合致した、簡素化した税制の採用
3.世界のどこに出しても活躍できる人材の育成
4.生活者の立場で考える行政府の設置

誰が首相になっても、上記がすぐ実現できるとは思えないが、道州制は議論もされだしており、20年を経てやっと大前氏の持論が日の目をみるかもしれない。

最初の第1章は具体例が少なく、いつもの大前節らしくなかったが、2章以下のなんちゃって自由が丘から調子が出てきた。

おすすめできる、参考になる本である。


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Posted by yaori at 12:53│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | 大前研一

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