2006年11月22日

資源インフレ 資源価格高騰は日本のビジネスチャンス

資源インフレ―日本を襲う経済リスクの正体


丸紅経済研究所所長の柴田昭夫さんの本。

本の帯には「石油ショックを越える新たな危機」と書いてある。

最近でこそ原油価格が55ドル前後に下落しているので、ややガソリン価格も下がってきたが、それまでは上昇する一方だった。

現在はやや落ち着いているが、原油だけでなく、石炭や鉄鉱石、銅やアルミなど、それぞれがここ数年で過去最高の高値を記録している。それもこれまでの価格の2倍、3倍という水準だ。

この変化を察知して、果敢に先手を打っている国が米国と中国であると。中国の国内需要増大を見越した資源確保の動きは戦略的だ。

銅、アルミなどでは投機マネーによる市況高騰といった要因もあるが、柴田さんはこれを一過性の現象として、高い資源価格時代の到来に対して何もしない無作為こそが、日本にとっての最大のリスクであると語る。


商品相場の上昇を早くから指摘したジム・ロジャース

柴田さんは資源供給の現状を予測した投資家ジム・ロジャースを紹介している。

ジム・ロジャースはジョージ・ソロスのクアンタムファンドの元パートナーとして有名で、世界中をバイクで走りながら投資機会を肌で感じ取る冒険投資家としても知られている。

そのジム・ロジャースが早くから「商品相場で新しい上昇相場がやってくる」と強調し、1998年からは自ら「商品インデックスファンド」を立ち上げ、商品価格は1998年を底に長期上昇トレンドに入ったと指摘した。

ジム・ロジャースは今回の上昇局面ではこれまで見られなかった根本的な構造変化が生じていると強調する。

それは「供給懸念」と「中国」だ。

ジム・ロジャースは「中国は、共産主義を自認しているが、その実態は世界最大の資本主義国である。しかも、その莫大な人口の多くが勤勉で貯蓄率が35%にも及ぶことから、短期的には紆余曲折があったとしても中長期的には成長を続ける」との見方を示している。

2004年後半から2005年前半にかけて中国が輸入を抑制したことから、値下がりする場面もあったが、「世界の供給が小さく、需要が大きいままである限り、中国が商品の輸入を再開するや否や、商品価格は再び上昇するだろう。調整は価格の一時的な下落に過ぎない。」と予測している。

ジム・ロジャースの言葉が資源需給の現状をよくあらわしている。


中国の需要が急増

高度経済成長が続く中国で、資源需給に影響を与えているのは次の3つだ。

1.国内インフラ整備のための鉄鋼需要
  2008年の北京オリンピック、2010年の上海万博に向かっての国内のインフラ整備需要が急速に進んでおり、「鉄が鉄を呼ぶ」形での鉄鋼需要が急増している。

2.2010年代まで続く住宅ブーム
  1998年の住宅制度改革で住宅の個人所有が認められてから、住宅需要は8年間で4倍に拡大し、さらに増加している。

3.急増する自動車保有
  中国の自動車生産台数は700万台を越え、米国、日本に次ぐ世界第3位となった。スクラップされる車が少ないので、2006年末の自動車保有台数では4,000万台を越え、日本の半分強となる。2010年には日本の生産台数を超えると見られている。

これらを考えると、中国の経済成長に伴う資源需要は、当分減ることはないと思われる。

例えば鉄鋼生産を見ると、中国の粗鋼生産は2000年以降毎年3,000万トンずつ増加しており、2005年には3億4千万トンを越えた。

筆者も2000年まで鉄鋼業界で仕事をしていたが、当時の中国の鉄鋼生産は1億トン程度だった。なんと6年で3倍強になっているとは驚きだ。

自分が浦島太郎になった気分である。

中国国内には鉄鉱石もあるが、低品位鉱石なので輸入に頼らざるをえない。

元々鉄鉱石の供給はブラジル、豪州で世界の7割を占めている寡占状態で、生産者も消費者もプレイヤーが限られていた。ところが中国が、鉄鋼石輸入を大幅に増やしたことで需給バランスが大きく変化し、毎年のように価格は上がっている。

中国は世界最大の石炭生産国だが、零細炭田が多く、酸性雨の環境問題も起こしている。

中国のエネルギーは石炭依存度が高いが、これ以上生産を増やせないので、石炭の輸入が増えるとともに、石油への依存度も上がっている。


穀物の輸入は水と土地の輸入

中国の弱点の一つは水資源だ。日本では工業用水は再利用が徹底しているが、中国では再利用が少なく、工業と農業で水を取り合っているような状態だ。

水不足が深刻化しつつある中国などアジア諸国は、今後最大の食料輸入国となるだろう。

穀物の輸入は水と土地を輸入している様なものだ。


「ヒンドゥ的成長」から脱却したインド

インドは1980年代まで「ヒンドゥ的成長」として年率3%程度の成長だったが、1991年以降経済自由化を進め、年率6−7%成長、2005年には8%の高成長と成長が加速してきた。

ソフトウェア産業を中心とするサービス業が牽引役だが、製造業も強化している。人口大国インドでも中流階級が育ってきており、3億人とも言われている。

原油輸入は急拡大し、既に世界第6位の石油消費国である。

インドでは就業人口の6割弱を占める農業生産が大きく、食料生産は2億トンでコメと小麦が8割である。これまでは食料の純輸出国だったが、小麦輸出は急速に縮小し、近く輸入国になると思われる。

そうなると資源、エネルギー、食料の大輸入国となり、まさに第2の中国となるだろうと柴田さんは予測する。


柴田さんは資源の供給を大幅に増やすには、長い時間と多額の投資が必要なこと、資源価格が上がると新しい資源開発の動きが出てくるが、それには時間が掛かることを説明している。

さらに供給サイドの寡占化により、コモディティ市場において価格カルテル的な動きがある。価格が上がっても生産をあえて増やさないのだ。

代替エネルギーとしてのトウモロコシとか、地政学上のリスクとしてのイランの核疑惑、東アジア石油備蓄ゼロの恐怖、株価と商品は10−15年で逆相関サイクルとか参考になるトピックスも取り上げられている。


高い資源価格こそビジネスチャンス

最後に柴田さんは高い資源価格こそビジネスチャンスだと指摘する。

日本経済は資源高に打たれ強い。日本経済の潜在力を生かし、技術革新で付加価値の高い商品を作り出すことが生存の条件である。

代替エネルギー開発も今なら採算に乗り、企業家のアニマルスピリットが発揮されるときであると。

団塊の世代とその前後の世代を合わせた1、000万人が、開拓のパワーと情熱を抱き続けることができる今後の10年がチャンスであると柴田さんは力説する。

石油危機を乗り切り、軽自動車が市場の2割を占め、公害も抑えられている。日本は世界で一番エネルギー効率の良い経済大国だと思う。

もはや資源争奪戦では日本は中国に後れをとった。中国に続いてインドもやってくるだろう。またそもそも資源は寡占であり、日本が割って入る余地はない。

そんな中で日本が活躍するとしたら、省エネルギー技術でしかないだろう。

高い資源価格こそチャンスだという柴田さんの意見に筆者も同感だが、団塊世代の力がまだ残る今後10年がチャンスだという現実には、やや冷や水を浴びせられる思いだ。

団塊の世代と前後の世代のパワーが、まだまだ日本を引っ張る必要があり、むこう10年はそれができると思う。

筆者もまだまだ頑張らなきゃ。


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Posted by yaori at 00:38│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス 

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