2007年03月13日

戦争で儲ける人たち ブッシュを支えるカーライルグループ

お断り: 

このあらすじは断定的に書いてある部分が多いが、本書の著者が断定的な言い方をしているので、この様になることをお含みおき頂きたい。


戦争で儲ける人たち―ブッシュを支えるカーライル・グループ


小林由美さんの「超・格差社会 アメリカの真実」で、プライベートエクイティファンドの代表格として紹介されていたカーライルグループについてのレポート。

カーライルグループは1987年創業で、創業メンバーはスティーヴン・ノリスとデヴィッド・ルーベンスタインだ。

二人とも弁護士で、ノリスはマリオット・ホテルで買収担当、ルーベンスタインは内政担当副補佐官としてカーター政権で働いた後、買収担当弁護士としてワシントンで働いていた。

二人はエスキモー企業に認められていた税制上の特権を利用して、マリオットホテルの節税を実現したことで知り合い、ノリスのマリオットの同僚、ダン・ダニエロとMCI(通信会社)の財務責任者だったウィリアム・コンウェイが加わった。

創業資金を提供したのはピッツバーグのメロン財閥他で、創業資金は5百万ドル(6億円)だった。

最初に加わった政界の大物はマリオットでのノリスの上司で、共和党の実力者、フレッド・マレクだった。彼の人脈でブッシュ一家やサウジ王室との関係ができる。

最初の買収の機内食サービスは失敗、しかしジョージ・W.ブッシュを得る

カーライルグループの最初の買収は、1989年の旧マリオットの機内食サービス部門、ケーターエアのMBO(経営陣による買収)だった。

ケーターエアーは買収当時は優良企業だったが、1991年に航空不況のためパンナムとイースタンエアーが倒産し、機内食がクラッカーに置き換えられる等のコスト削減策のため、苦境に陥る。

結局ケーターエアーはライバルのスカイ・シェフと合併して、カーライルグループの最初の買収は損失が出たが、当時の大統領の息子ジョージ・W.ブッシュをケーターエアーの役員として迎え、コネクションができたことが後のカーライルグループの発展に大きく役だった。


元国防長官カールッチがカーライルグループ入り

次にカーライルグループ入りした政界の大物は、レーガン政権末期の国防長官フランク・カールッチである。

カールッチは外交官としてのキャリアが長く、昨年末まで国防長官だったドナルド・ラムズフェルドとは大学時代のルームメートという関係で、1989年にカーライルグループ入りした。

カールッチが入った関係で、カーライルグループはBDMという国防コンサルタント企業を1991年に買収する。

BDMは何十もの軍需企業を顧客に持ち、カーライルグループが軍需企業との関係を深めることに役立つとともに、1994年には上場、1997年にはTRWへの会社売却により、大きな利益をカーライルグループにもたらした。

当時は1989年のベルリンの壁が崩壊し、カールッチを継いだチェイニー国防長官が「平和の配当」と呼んだ軍事予算削減の時代で、軍需産業の株価は低迷しており、安値で買うには適当な時期だった。

カーライルグループはハルスコ(曲射砲)、ユニシスの兵器部門、LTVと買収を仕掛け、最後のLTV案件ではフランスのトムソン社による買収を国益に反するとして阻止し、アメリカ企業のコンソーシアムでLTVを買収して大きな利益を上げた。


シティバンクを救うアラブの王子

今や日興グループを買収すると発表し、世界の巨大金融グループとなった米国シティバンクグループだが、1990年代はじめはシティバンクの株価は1990年後半で半値に暴落し、15億ドルの資金が必要だった。

1991年は日本はバブル景気の最後で絶頂期だったが、湾岸戦争が進行中で、アメリカでは景気後退が起きており、銀行業界も苦境にあえいでいた。

そんなアメリカの銀行業界に資金を提供したのが、サウジアラビアのアルワリード王子であり、シティコープの15%の株式購入取引をまとめ上げたのがワシントンに強いコネを持つカーライルグループだった。

アルワリード王子を味方につけたことは、カーライルグループがサウジの金庫の鍵を手に入れたも同然のことだった。

さらにカーライルグループは1992年に、民間企業ながら軍事教練を行うヴィネル社を買収し、サウジ人脈と国防人脈を結びつけた。ヴィネル社の活動は秘密に包まれているが、退役直後の軍人を多く雇い入れ、CIAのフロント企業だと言われ、サウジでテロによる爆弾攻撃もあっている。


超大物 べーカー国務長官がカーライルグループ入り

ジェイムズ・べーカーはレーガン政権で財務長官、ブッシュ政権では国務長官を務めた大物で、ブッシュ父がクリントンと戦った選挙戦の総責任者だったが、ブッシュ父が負けたため政・官界を去ることになった。

そのべーカー元国務長官が1993年の退任後の職として選んだのが、カーライルグループだった。カールッチとのつりあいを考え、カールッチは会長に昇格、べーカーはパートナーとして迎え入れられたが、べーカーの方がはるかに大物だ。

1995年にはカーライルグループの経営陣に動きがあり、創業者の一人のノリス氏が解雇される。あまりに個人プレイが過ぎ、社内対立が激しくなり収集がつかなくなったためだ。

ちなみにこのノリス氏はこの本の著者のインタビューに応じて、いろいろな情報を提供しているようだ。


それからはサクセスストーリー

べーカーがカーライルグループ入りしたことで、資金は無限に集まるようになり、カーライルグループの最大の問題が解消した。

それまでカーライルグループが集めたファンドは1億ドルが最高だったが、次のファンドでは結果として13億ドルの巨大資金が集まった。

カーライル・パートナーズIIというファンドは航空宇宙産業、軍需産業、医療・通信・保険などの業界を投資対象としていた。

べーカーが入ったことにより、当初からのパトロンのメロン財閥他の1億5千ドルに加え、ジョージ・ソロスのクオンタムファンドが1億ドルの出資を決めた。

カーライルグループはソロスが投資したことをマスコミに発表し、それからはアメリカン航空やシティバンクなどの大企業、フロリダ州政府、カリフォルニア州職員年金などが出資を約束し、最終的には13億ドルの資金が集まったのだ。

カーライル・パートナーズIIの年率リターンは30%以上となり、創業者は超大金持ちになった。

さらにはブッシュ父までカーライルグループ入りし、ブッシュの誘いでジョン・メージャー元英国首相が、1997年の首相退任後すぐカーライルグループのヨーロッパアドバイザリーボードの一員となった。

ラモス元フィリピン大統領や、韓国の元首相なども加わり、アジアからの資金も潤沢に集まるようになった。


そしてジョージ・W.ブッシュの大統領就任

ジョージ・W,ブッシュの恩人はブッシュ父と、もう一人はフロリダ州の票数え直し抗争を陣頭指揮したべーカーだ。

カーライルグループはジョージ・W.ブッシュの選挙戦を多額の選挙資金提供と人的支援で、全社を挙げて応援していたが、ブッシュが最終的にフロリダ州で勝つことができたのは、べーカーの陣頭指揮によるところが大きい。

べーカーはアル・ゴア候補の「すべての票を数えよう」というスローガンに対する徹底攻撃を指示した。

「PR戦略が必要だ。このままじゃ、『すべての票を数えよう!』にやられてしまう。だって、そうだろう?相手の言っていることが正しいんだから」とべーカーは語ったと。

ゴアは問題の多い郡での数え直しという控えめな提案をしたが、ゴアに有利な郡ばかり選んでいると反撃を受けた。べーカー自身も記者会見を開いて、これは3度、4度の数え直しだと主張して、ゴアの主張が不当な様な印象を与えるPRにつとめた。

結局これ以上の数え直しは行わないという最高裁の決定が出て、ブッシュの勝利が確定したので、べーカーの貢献は大きい。


今度は民主党の大物を採用

カーライルグループは共和党クラブという別名を頂戴しており、幹部社員の民主党員はルーベンスタイン一人だった。

G.W.ブッシュが勝つと、コリン・パウェルやラムズフェルドなど、カーライルグループで職を得ていた共和党の大物が、ブッシュ政権入りしてカーライルの役員会には欠員が出た。

そこで、今度は民主党のケナード元連邦通信委員長、ベヴィット元証券取引委員会議長などを採用し、欠員を埋めたのだ。

まさにスター軍団だ。共和党にも民主党にも人脈を持つ、盤石のカーライルグループの基盤ができつつある。


United Defense(UD) カーライルグループの力がわかる事例

カーライルグループの実力がわかる好例はUnited Defense(UD)社だろう。

米軍の主力装甲兵員輸送車であるM2ブラッドレーを製造しているUD社は、カーライルグループが出資しているハルスコ社とFMC社の子会社だった。

1997年に軍需産業の巨大企業ゼネラル・ダイナミクス社が、UD社の買収提案を提示したが、カーライルグループは独占禁止法に抵触すると反対キャンペーンを行い、最終的にカーライルグループがUD社を買収することになった。

UD社が開発した自走式大砲のクルセーダー砲は、40キロ先の敵に1分間で10発の砲弾を撃ちまくることができるという高性能砲だが、正規軍が対抗する第2次世界大戦当時の戦場ならともかく、対テロ・ゲリラの戦いという現代戦では無用の長物となっていた。

そのクルセーダー砲を、カーライルグループは政治力を遺憾なく発揮して9.11テロに絡めて生き延びさせ、クルセーダー砲開発予算が承認された翌日の2001年12月14日にUD社を上場させた。

カーライルグループのキャピタルゲインは投資額8.5億ドルの3倍で、それまでの配当収入もあるので、UD社はカーライルグループにとって非常に高収益の買収案件となった。

翌2002年にクルセーダー砲計画キャンセルが決まっても、UD社はすぐ次代の兵器システムとして再生させている。


この他にも、G.W.ブッシュ大統領となってから、ブッシュ父がカーライルグループの代表としてサウジアラビアや韓国などを訪問し、マスコミからカーライルグループとブッシュ政権の密着度が叩かれるとか、ビン・ラディン一族がカーライルグループに投資していたこと等がレポートされている。

日本でもカーライルグループは東芝セラミックスのMBOやイーアクセス、ウィルコムの買収などで活動している。


非常にジャーナリスティックに、悪く言えば興味本位にカーライルグループの政治力を描写しているので、この本だけでカーライルグループを理解するのは危険だと思うが、面白い読み物ではある。

わずか20年で、プライベートエクイティファンドとしての地位を確固たるものに築き上げたカーライルグループ。

その活動がよくわかり参考になる。一読をおすすめする。


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Posted by yaori at 21:29│Comments(0) ビジネス