2007年04月25日

闇権力の執行人 鈴木宗男の告発本

闇権力の執行人


官房副長官として権力の中枢にいたが、その後あっせん収賄の容疑により、437日も勾留されていた鈴木宗男議員の告発本。「疑惑の総合商社」と、当時の社民党の辻元清美議員に糾弾されたことが記憶に新しい。

鈴木議員は第一審で斡旋収賄罪で有罪判決を受け、現在控訴中だが、2005年に新党大地から立候補し、復権を果たした。

タイトルが闇権力というから、政治家を動かす圧力団体あるいは資金源のことかと思ったら、外務省官僚と外交関係に関わる民間人(例として安全保障問題研究会(安保研)関係者などが挙げられている)のつくる隠然たる勢力のことだ。

外務省の利権や官僚の利益を確保し、それを侵す勢力は組織を挙げて排除するのだと。

鈴木宗男氏は闇権力を黙認し、支援していたが、あまりに深く知りすぎたために、田中眞紀子氏と対決させられ、田中眞紀子氏が失脚すると、用済みになった鈴木氏は、収賄容疑により国策捜査の対象とされた。

鈴木宗男氏と佐藤優氏の対談集の「北方領土特命交渉」でも外務省の幹部が顔写真入りで紹介されていたが、この本でも顔写真入りで紹介されている。


外交官の品性

この本の場合には、もし虚偽であれば名誉毀損にもなりうるスキャンダルなども暴露されているので、書かれている人にとっては、たまったものではないだろう。

鈴木氏によると外務省で日本の外交方針を決定しているのは課長クラスだ。実質的な人事権を握っており、外交機密費や交際費の決裁も課長が行う。

特にロシア課と中国課の課長は絶大な権力を持つので、その意味でも、相手国の秘密機関につけ込まれる様なスキを見せず、様々な批判に耐えうるように襟を正さなければならないということを鈴木さんは言いたいのだろう。

それにしても暴露されている内容は、個人攻撃的なものもあり、週刊誌的なネタが多いのには辟易する。

たとえば某課長は酔うと「ボクちゃん、寂しいでちゅ」とかいう幼児プレーや、不倫、ロシアのナイトクラブでの無警戒なロシア人女性の連れ出しなど、資質の問題があると。

このような品性の人間が外交上の重要案件に関われば、国益を損なうリスクは極端に大きくなると鈴木氏は語る。

他にも困ると丸まってアルマジロになる局長とか。獅子奮迅の働きのノンキャリの「アフガンの高橋(現駐ウズベキスタン公使)」をねたむキャリアとかの話が紹介されている。

その後名誉毀損で鈴木さんが訴えられているという話も聞かないので、外務省は無視しているのだろう。


不正蓄財組織ルーブル委員会

旧ソ連時代の1989年まで何十年も、モスクワ大使館には外交官特権で輸入した高級車をルーブルで売って、不正に私腹を肥やすルーブル委員会と呼ばれる裏組織があったと鈴木さんは告発する。

元最高裁判事の下田武三さんが、ソ連大使に在任していた時は活動を停止していたが、それ以外の時期はせっせと蓄財をしており、外務省の対ロシア政策の責任者で代々のモスクワ大使館駐在経験者はすべて、不正蓄財に関わっていると鈴木さんは指摘する。

鈴木さんが問題としているのは、そのルーブルがKGBが流していた闇ルーブルで、KGBは闇ルーブルが日本大使館に流れていることを知っており、いわば日本の代々のロシア外交の責任者は、KGBに尻尾を捕まれていたということだと語る。

筆者の感覚では、闇為替レートがある国では、この「ルーブル委員会」の様な為替管理は当たり前で、外交官特権で輸入した車を高く売るというのも、外交官のフリンジベネフィットとして他国でもよくあることだと思うので、ことさら問題にすることもない様な気がする。

筆者が昔アルゼンチンに駐在した時代を思い出す。当時は自動車完成車は輸入禁止だったが、ブエノスアイレスの町にはベンツがたくさん走っていた。

各国の外交官が外交官特権でベンツを輸入して、中古車として売りさばいて、大きな利益を得ていたのだ。

筆者の同僚が大使館勤務の人に、外交官はうらやましいと言ったら、「でも外交官になるのは(外交官試験を合格しなければならず)、大変なんですよ」と言われたという。


鈴木宗男対応マニュアル

外務省では、鈴木さんが衆議院議員として復権したので、鈴木さん対応マニュアルをつくって省内に配り、趣旨徹底をはかっている。

そのマニュアルでは、「当省と同議員の関係が社会的、政治的に大きな問題として取り上げられたこと等を十分ふまえる必要がある。ついては、今後は下記の方針に従い対応することを原則とし、判断が困難な場合には、官房総務課に相談することとする。」と規定している。

昨日の友が今日の敵に変わり、外務省の天敵となった鈴木氏に省を挙げて、警戒していることがわかる。

これには後日談があり、事務次官から別の政治家を通して、「不快な思いをされているのではないか」というメッセージが来たという。

役所では事務次官といえど、一旦できあがったものをストップさせることはできないので、このようなことになったのだと。これが官僚の掟なのだと。


鈴木宗男さんの質問主意書

鈴木さんは今や新党大地唯一の国会議員なので、自民党の中枢にいた頃とは違い、できることは限られている。

そんな環境で、自らの主張を国政に反映させられる手段として使っているのが、質問主意書だ。質問主意書は国会調査権の一つで、大臣答弁と同じ意味を持つ。

今までは共産党などの野党が使っていた手段だ。

鈴木さんの提出した質問主意書は2005年10月だけで28通ある。これは衆議院のホームページに掲載されているが、鈴木さんの質問ばかりだ。主なもののタイトルだけ紹介すると:

1.アイヌ民族の先住権
2.外務省在外職員の住居手当にかかる非課税問題
3.在モスクワ日本国大使館における裏金問題
10.外務省在外職員の飲酒対人交通事故
13.田中・ブレジネフ会談
14.南樺太・千島列島の国際法的地位
17.外務省在外職員の配偶者手当
25.イラン大統領によるイスラエル抹消発言
26.外務省におけるワインの購入

鈴木さんは外務官僚がつくりあげた「闇権力」の解体を、やり遂げることが自分の使命だと語っている。そのためにこういった戦術で、戦うのだと。


プーチン大統領の依頼

鈴木さんが2000年に森首相の特使としてクレムリンを訪問した時に、プーチン大統領と面談した。そのときにプーチン大統領から意外な依頼を受けたことを明らかにしている。

それは日本を訪問するロシア正教の最高責任者アレクシー二世総主教が、天皇に謁見できる様に取りはからって貰えないかというものだ。

「アレクシー二世のロシアにおける存在は、とても大きいのです。天皇陛下がアレクシー二世と謁見して頂けるなら、ロシアの国民感情からも、日ソ関係に大きな意義があるはずです。」とプーチン大統領は語ったという。

ロシアのキリスト教指導者の影響力が、ここまであるとは知らなかった。
なんとなく創価学会の池田大作氏の、外国の大物との面談を思い起こさせるエピソードだ。

同志社大学神学部卒業で、鈴木宗男氏の同志の佐藤優氏が、ロシアで確固たる人脈を築いていた理由もわかる様な気がする。


鈴木宗男氏への疑惑

この本の残りの大半は、鈴木さんが「疑惑の総合商社」と当時の社民党の辻元清美議員に国会で追及された種々の疑惑に対する説明だ。

鈴木氏が一部のNGOをアフガン復興支援会議に参加させるなと圧力を変えた問題とか(田中眞紀子外相が事実を誤解して国会で答弁し、鈴木さんや外務省幹部と対立するきっかけとなる)、ムネオハウス問題、ロシア支援委員会資金流用、外務省職員殴打事件、三井物産ディーゼル発電施設建設疑惑、プレハブ診療所設置問題、ケニアのソンデゥ・ミリウ発電所ODA問題、ムルワカ秘書問題などだ。

それぞれに詳しく書いてあるので、これを読むと鈴木さんの主張は、筋が通っているという印象を受ける。


国策捜査の真相

鈴木さんが逮捕される二ヶ月前に、大阪高検の現役公安部長三井氏が大阪地検特捜部に逮捕されるという事件があった。

嫌疑はマンションの登録税47万円を浮かすために、住民登録を偽ったというものだ。

三井さんは検察内部の裏金つくりの実態を告発するためにテレビに登場し、国会にも出頭しようとしていた矢先に逮捕された。

典型的な別件逮捕に思える。

そういった検察内部の裏金疑惑から国民の目をそらさせるために、検察はムネオ疑惑も含め、全国で矢継ぎ早に目立つ事件を摘発したのではないかと鈴木さんは疑っている。

それが国策捜査の真相だとしたら、お寒い限りだ。


その他参考になる点を紹介しておこう。

イランのアザデガン油田がらみのODAは即刻やめるべきだと鈴木さんは主張する。イランは危険なテロ支援のイスラム原理主義国家なのだと。

外務省には学閥はなく、語学スクールがあるという話を佐藤優さんは「国家の罠」で書いていたが、これの例外は「如水会」(一橋大学卒業生)と創価大学(創価学会も含む)だと。

一橋大学の卒業生の結束の強さは有名なので、外務省でも目立っている様だ。


週刊誌的な暴露ネタが多すぎだが、鈴木さんは文章もうまく、読みやすい。話半分に読むべき本だと思う。


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Posted by yaori at 23:16│Comments(0)TrackBack(0) 自叙伝・人物伝 | 政治・外交

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