公立炎上 Death of the Public Education
現役高校教師というふれこみの上田小次郎さんの教育現場からのレポート。
この本に書いてあることはすべて事実に基づいていると。
校内暴力、増長する保護者、給食費を払わない保護者、虐待をする下流親、学校をラブホテルにする生徒達など、週刊誌的なネタも混ざってはいるが、現在の公立学校の現状をレポートしている。
教師が全く生徒をコントロールできていない現場テープを書き起こした部分は短いが、生々しい。一部だけ紹介するとこんな具合だ。
教師:よし、授業始めるよー。みんなー
生徒:誰かウノやらねー。
マジ。使えねーし。
ギャハハハ。
やべー。携帯の電池切れそう。
教師:授業中だぞ。私語はやめようよなー。では、今日は否定文の説明をしまーす。
生徒:あ、机くっつけよーよ。
バガボンド13巻は?返せよ!
押すな。バカ。
ヤベッ。ボスキャラ。つえー。
チヒロー?今日歌う?
給食費未納問題
給食費未納が問題になっているが、もし経済的な理由ならば、低所得過程には就学援助という制度がある。2004年度では133万人の小中学生が援助を受けており、東京・大阪などの大都市圏では4人に一人が受けている。
足立区などは実に42.5%が就学援助を受けていると。公立学校における給食費とか学用品代は小学生で年間5万円強、中学生で13万円強だが、足立区では小学生で7万円、中学生で12万円で、ほぼ全額支給されているのだ。
それなのに外車を乗り回したり、携帯電話に数万円を使っていながら、給食費を払わない保護者がいるのである。こうした親を上田さんは「下流親」と呼んでいる。
教師の側も問題はある
一方教師の側にも問題はある。中学教師3,000人のアンケートでは、クラス運営がうまく行かないと答えた教師は、「すこしあてはまる」まで含めるとなんと85%にものぼる。
指導力不足教員は2004年度には570名程度だが、指導力不足というよりも、無気力でなにもしないと言った方が良い。
教員の給与は一般の公務員よりも高いと言われるが、それでも月間1万円程度であると。
但し、40歳以上の教員が小中高とも全体の2/3程度を占めており、特に50歳以上の教員は年収750万円程度である。
年配の教師は部活も指導しないので、労働時間も1,500時間程度であり、時給は5,000円程度となる。
一方部活を積極的に行い、土日もほとんど休みのない、20代の教師は300〜400万円程度で、年間4,500時間程度働く場合もあり、時給は1,000円以下となる。
30代でやる気のある教師は1日15時間以上働き、時給1,000円程度、退職直前の教師は4,500円という差がある。
さらにチームティーチングで増えている臨時教師の中には生活保護を受けている人もいる。
県が雇う準教員の場合は月給は正規教員の8割程度で、扶養手当とか住宅手当とかもある。
一方、市が雇う場合、時間給で、れっきとした先生でありながら、年収が80万円程度にしかならず、生活保護を受けている人もいるという。
補助教員なので、学校行事にも参加できない先生もいるという。
ゆとり教育
ゆとり教育の提唱者と言われる
寺脇研氏とのインタビューも載せている。
単に教育現場の努力が足りないと言うばかりではなにも解決しないだろう。
また円周率3という話は、日能研が意図的に誤解を招く情報を流して、生徒、保護者の危機感を煽ったからだと言う。
詰め込み授業ばかりするから成績が落ちるのだと。自主的に勉強させるのだと。
自分はラサール出身で、ラサールは県立の鶴丸高校よりも授業時間は短かったと言う。私立と公立とは違うのではないか?
教育現場の新しい動き
教育の現場でも新しい試みが動いている。2007年4月からスタートする全国学力・学習状況調査だ。これは小学校6年生と中学校3年生を対象にテストを行い、その結果を公表するものだ。
40年以上前には全国一斉テストが行われていたという話だが、日本全国でレベルチェックをすれば、どこの学校のレベルが低いかわかる。
学力に応じての習熟度別授業も浸透し始めている。
東京都品川区での学校選択制も機能しており、ある地区の中学校はついに入学者ゼロのところも出始めている。
週刊誌ネタを本にしたような感じで、エキセントリックな話ばかりだ。この本を読んで、教育の現場はすべてこうだとは言い切れないと思う。
たとえば所得格差が学力格差につながるという結果が出ているということだが、あまりに予想通りの短絡的結論には疑問を感じる。
たとえ所得が低くて共働きでも、子供は塾に行かせている親はいるはずで、結局両親の教育に対する熱意の差ではないのか?
内容的には疑問な本だと感じた。
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