2007年05月07日

マネーロンダリング入門 パーペチュアルトラベラーの提唱者 橘玲さんの近著

マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)
マネーロンダリング入門―国際金融詐欺からテロ資金まで (幻冬舎新書)


以前紹介したベストセラー「お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方」の著者橘玲(あきら)さんの近著。「お金持ちになれる…」では賢く(スマートに)生活するために様々なヒントが紹介されていた。

橘さんは、パーペチュアルトラベラー(永遠の旅人)ーつまり頻繁に各国を旅行して課税基準となる180日以上はどの国にも滞在しないで、どの国にも納税義務を負わない生活ー の提唱者だ。

お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門
お金持ちになれる黄金の羽根の拾い方 ― 知的人生設計入門



元々橘玲さんはデビューも小説「マネーロンダリング」だったので、マネーロンダリング話は得意中の得意といったところだろう。

この本では、カシオの3,000万ドル外債投資詐欺事件や、ライブドアの粉飾決算のための株価操作事件などの手口を調査して、詳細に紹介している。


ライブドア粉飾決算事件

たとえば次の写真の図がライブドアが自社株価をつり上げて、利益を計上するために仕組んだ粉飾決算のフローだ。

一見して何がなんだかわからないと思うが、要はライブドアが預金を担保にクレディスイスから88億円ホリエモンの個人会社エバートンエクイティに融資を受ける。その金でJMAM(投資組合)の保有するライブドア株1,260万株を市況を上回る¥700で購入する。

この取引でJMAMに30億円の利益が生じるので、それの大半をライブドアに配分して利益を計上するというものだ。

ライブドア相関図







ドル取引はすべて当局に筒抜け

国際送金取引は、コルレスと呼ばれる銀行間ネットワークを通じて、A銀行からB銀行に送金される。

その送金情報はSWIFT(The Society for World-wide Interbank Financial Telecommunication)というブリュッセルに本拠を置く金融機関の協同組合を通して各銀行に伝えられる。

たとえば三井住友銀行の略号はSMBCJPJT、三菱東京UFJはBOTKJPJTだ。

このSWIFTの送金情報を抑えれば、誰から誰に送金されたのかすべてトレースできる。

2001年9.11のワールドトレードセンター事件で、多くの仲間を失ったウォール街の経営幹部が、テロ資金の解明にやっきになっている捜査当局にその存在を教え、米財務省が第2のテロ攻撃を防ぐためという理由で、SWIFTから情報を入手したのだ。

SWIFTには米系金融機関の関係者も多く、9.11の異常な雰囲気の中で、OKしたものだ。

この送金情報は宝の山で、麻薬取引や脱税などのマネーロンダリング送金もすべて調べようと思えば調べられるが、あくまでテロ情報のみと限定してスタートしたのだった。

その後SWIFTは情報提供を止めることを申し入れるが、2003年グリーンスパンFRB議長も出席したといわれるホワイトハウスとの会議で、SWIFTの代理人が調査に立ち会い、不正な利用を監視するという条件で、引き続き情報が提供されることになり、現在に至っている。

つまり国際送金取引は「天網恢々疎にして漏らさず」状態となっているのだ。

だから動かぬ証拠があるので、2003年以来ミャンマー、シリア、ラトビア、イランなどの銀行が金融制裁を受けている。

マカオのバンコ・デルタ・アジアの北朝鮮関連口座が、偽ドル紙幣を使ってのマネーロンダリングで金融制裁を受け、この口座凍結を解除するために米朝金融交渉が開かれていたことは記憶に新しい。

アメリカが資金の流れをすべてつかんでいるので、新たな資金源を絶とうとすれば、いつでもできる状態にあり、北朝鮮の首根っこはアメリカに握られているのだ。

国際テロ、マネーロンダリングを秘密裏に行うためには、もはや現金を動かすしかなくなっているのだ。


ローマ法王庁とバチカン銀行を巡る黒い噂

以下はこの本のあらすじだが、正直筆者にはまるで映画のストーリーの要で、信じられない話だ。橘さんの話を信じるかどうかは読者の判断にお任せする。

カトリックから「悪魔の子」と呼ばれ、異端扱いされているフリーメーソン リーチョ・ジェッリがつくったP2(プロパガンダ2)と呼ばれる秘密結社が、ローマ法王庁にも着実にネットワークを延ばしていた。

NO.2の国務長官をはじめ、バチカンにも多くのフリーメーソンが居ることに驚愕し、フリーメーソン一掃を決意したヨハネパウロ1世は、その決意から数日後に原因不明の死を遂げた。

さらにバチカンが関与する不正な金融取引を調査していたイタリア検察、弁護士、警察官が謎の死を遂げる。

バチカン銀行はローマ法王庁の資金運営をしているが、P2のネットワークに浸食されており、麻薬や武器輸出のマネーロンダリングに関わっているという。

カトリックの最大の敵はマルクス・レーニン主義で、バチカンのお膝元のイタリアでさえ共産化の危機にさらされていた。バチカンはマネーロンダリングで15%の手数料を取り、そして得た資金で反共団体を支援していたのだという。

CIAやマフィアとは反共の理念で一致していたのだと橘さんは語る。


BCCI 犯罪銀行

パキスタン人アガ・ハサン・アベディが設立したBCCI(Bank of Credit and Commerce International)はアメリカ、ヨーロッパ、中東などに支店網を展開する国際銀行だったが、1991年に突然破綻する。

BCCIは犯罪銀行と呼ばれ、独裁者や汚職政治家、マフィア、武器商人たちのあらゆる要望に応えられる体制をつくり、巧妙なマネーロンダリングサービスを提供していたのだという。


ブラッドダイヤモンド

デカブリオ主演で映画でも話題になったブラッドダイヤモンド

西アフリカシェラレオネで1970年代から始まったダイヤモンド生産のことだ。

シェラレオネの独裁者チャールズ・テーラーはダイヤをベルギーで売却し、その金で旧ソ連から武器を買いあさった。その資金源となったダイヤモンドはブラッドダイヤモンドと呼ばれた。

テーラーはSBU(Small Boy Unit)と呼ばれる少年兵を組織して、麻薬漬けにして忠誠のあかしとして家族を殺させ、殺人兵器として洗脳していく。

シェラレオネやライベリアなどの国では部族間の抗争が激化し、内戦状態にある。

アルカイダはそのブラッドダイヤモンドを買い上げ、グローバルなマネーロンダリング網をつくりあげたといわれている。


相続税をゼロにする方法

日本の相続税の高さというより、そもそも相続税があるということが、世界では例外になりつつある。

カナダやオーストラリア、ニュージーランドは相続財産に課税しない。明白な二重価税なので、アメリカでも2010年に向けて遺産税の税率をゼロに向かって引き下げることになっていると。

以前は子供が相続税のない国に居住していれば、財産を海外に移すだけで合法的にすべての相続(贈与)税が非課税になった。

プライベートバンクは資産家の子女にアメリカ国内で勤務する仕事を紹介する、ついで贈与すべき財産をドルに換えて米国債を購入し、贈与する。シティバンクのプライベートバンクは資産家部門は、この手法を日本の富裕層に大々的に売り込んだという。

だから2000年4月の租税特別措置法の改正で、贈与者と受贈者がともに5年以上海外に居住していなければ相続税の課税対象となることになった。

しかし新たな変化が起こっている。年金世代の海外移住の増加である。

東南アジア諸国は団塊世代をターゲットにしている。

マレーシアのMMSH(Malaysia My Second Home)プログラムでは50歳以上の夫婦が毎月1万リンギ(30万円)以上の収入がある場合、15万リンギを定期預金するだけで長期滞在者向けのビザが発給される。

フィリピンの特別居住滞在者ビザでは5万ドル以上をフィリピン国内の株式などに投資することだけだ。

資産1億円以上の富裕者はオーストラリア、カナダ、香港などの選択肢がある。

海外移住のハードルが低くなってくると、相続人・被相続人ともに5年以上非居住者であることという条件を簡単にクリアーできるようになってくる。

村上世彰氏がシンガポール移住を目指したように、税金を払いたくない人はいつでも日本から出て行くことができるのだ。


橘さんの綿密な調査に基づいた新鮮な指摘は参考になる。一部真偽のほどは疑問な部分もあるが、簡単に読め参考になる本である。



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Posted by yaori at 23:25│Comments(0)TrackBack(0)Financial Intelligence | 橘玲

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