2007年05月17日

アメーバ経営 稲盛和夫さんの独特経営手法がよくわかる

アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役
アメーバ経営―ひとりひとりの社員が主役


京セラ名誉会長の稲盛和夫さんが、5年間にわたって京セラの経営幹部に対して行ったアメーバ経営講義をまとめた本。

アメーバ経営は京セラグループに定着している経営手法だが、その思想や仕組みをまとめた本はなかったという。2006年9月に出版されたばかりだ。

アメーバ経営とは、会社の組織をアメーバと呼ばれる小集団に分け、それぞれにリーダーを置き、独自の会計基準に基づいて独立採算で運営する手法だ。

稲盛さんは筆者の尊敬する経営者というか人生の先達なので、このブログでは今まで「稲盛和夫の実学」、「高収益企業のつくり方」、「君の思いは必ず実現する」の3冊を紹介してきているが、それらの中でもアメーバ経営という言葉は幾度か出てきた。

今までばくぜんと理解したつもりだったが、この本を読んでアメーバ経営を導入する具体的手法はどういうものかわかった。

京セラやKDDIだけではなく、他にも300社以上が京セラの関連企業のコンサルティング会社の支援を受けてアメーバ経営を導入しているという。


アメーバ経営の原点

稲盛さんは大学を卒業して京都の松風工業というセラミックメーカーに就職するが、数年で辞めて京セラを創業する。創業3年目で前年に採用した高卒新入社員10名が、昇給・ボーナスを将来にわたって保証しないと辞めると団体交渉を求めてくる。

創業したての京セラに将来を保証できるはずはなく、稲盛さんは三日三晩社員と話し合って納得を得たが、このことが稲盛さんに、小さい会社でも従業員は会社に一生を託して入社してくることを痛感させる。

このことが原因で、稲盛さんは京セラの経営理念を「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」と定めた。

またあたかも自分が経営者であるように従業員が懸命に働いてくれる全員参加の経営の仕組みを考えた。それがアメーバ経営である。


アメーバ経営の三つの目的

アメーバ経営の目的は次の三つである。

1.市場に直結した部門別採算制度の確立
2.経営者意識を持つ人材の育成
3.全員参加経営の実現

この本で稲盛さんは上記の三つの目的について、わかりやすく解説している。

重要なのは、人間として何が正しいのかというフィロソフィーをに基づいた明確な意志、売上を最大に、経費を最小にする努力、そして市場変化に従いアメーバの様にダイナミックに変化する活力だ。

アメーバは、まず第一に収入と費用が切り分けられる単位であることが必要だ。

第二に、アメーバの単位は単に細かくするだけではだめで、ビジネスとして完結する単位にする必要がある。例えば、セラミック製造工程の中で、京セラは事業単位を、原料、成型、焼成とわけた。それぞれ同じ事業を行う他の会社が存在していたからであると。つまり理論的にはその部分をそっくり他社にアウトソーシングできる切り分けである。

第三に会社全体の目的、方針を遂行できる組織であることも必要である。

例えば営業の場合は、受注部門、納期管理部門、代金回収部門と分け、全体の手数料収入10%を例えば5%、3%、2%と分けることも可能だが、それだと顧客に対して一貫したサービスを提供できず、お客様第一主義という会社方針に沿った営業ができなくなるので、営業の組織を分けることはできない。

アメーバ経営は実力主義であるが、成果主義ではないと。つまり短期の成果で個人の報酬に極端な差はつけないが、長期にわたり実績を上げた人を正当に評価して処遇に反映させているのだと。


アメーバ経営を支える経営管理部門

アメーバ経営の思想、手法と仕組みを維持、発展させる重要な役割を担う部門が経営管理部門であり、その役割は次の三つである。

1.アメーバ経営を正しく機能させるためのインフラつくり
2.経営情報の正確かつタイムリーなフィードバック
3.会社資産の健全なる管理


アメーバ経営の時間あたり採算表

アメーバ経営の時間あたり採算管理といっても、今まではっきりとしたイメージがわかなかったが、この本では製造部門と営業部門の具体例が紹介されており、わかりやすい。

製造部門だと次の様な構成となる:

総出荷     : 650百万円
(社外出荷   : 400)
(社内出荷   : 250)

(−)社内買  : 220百万円

総生産     : 430百万円

(ー)控除額  : 240百万円
(原料費、電力水道代、通信費、公租公課、減価償却、旅費等)

差引売上    : 190百万円

総時間     :  35,000時間
(定時     :  30,000時間)
(残業他    :   5,000時間)

当月時間あたり :  5,430円


営業部門だと次の様な構成となる:

受注      : 360百万円
売上高     : 350百万円
受取口銭    :  28百万円

(ー)経費合計 :  12百万円
(運賃、旅費、通信費、販促費、交際費、公租公課、減価償却、金利、本社経費、間接共通費等)

差引利益    :  16百万円

総時間     :  2,000時間
(定時     :  1,800時間)
(残業     :    100時間)
(部内共通・間接共通時間 100時間)

当月時間あたり :  8,000円

ちなみに営業部門の収入は生産金額の10%を口銭として受け取るルールとしており、製造と営業の仕切価格は認めていない。さらに製造がいくつかのアメーバに分かれている場合には、各アメーバが公平に負担する。

アメーバ経営の特長は、人はコストではなく付加価値を生み出す源泉であるという考え方だ。だから労務費は経費としては扱わない。

これによって各アメーバの時間あたり採算が計算できるので、アメーバの時間あたりの採算が実際の労務費を上回れば黒字、下回れば赤字となる。


アメーバごとの年度計画(マスタープラン)

採算管理と並んで重要なのが経営計画だ。各アメーバは経営の最小単位なので、会社全体の方針や事業部に於ける方針や目標を受けて、三年ごとのローリングプランと年度ごとのマスタープランを作成する。これによってリーダーの意志を示すことになる。

具体的な売上、総生産、時間あたり採算などの経営目標も、アメーバ単位で設定され、年度計画(マスタープラン)に基づく月次計画が作成される。

明確な目標を設定して、全従業員のベクトルをあわせるのだ。そして毎月マスタープランに対しての進捗を確認し、部門長以下の関係者は、もし遅れていればキャッチアップのためのアクションを取らなければならない。


アメーバ経営はリーダーを育成し、全従業員の経営者意識を高める究極の教育システムであると稲盛さんは結論づける。

経営の基本を抑え、採算と費用をわかりやすく把握し、人材を育てるアメーバ経営がよくわかる。おすすめの本である。


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Posted by yaori at 22:37│Comments(0)TrackBack(0)企業経営 | 稲盛和夫

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