2007年06月03日

若者はなぜ3年で辞めるのか? 3年で新卒者の1/3が辞める時代

若者はなぜ3年で辞めるのか? 年功序列が奪う日本の未来


人目を引くタイトルも良いので、ベストセラーになっている本。

筆者の城繁幸さんは東大法学部出身、元富士通人事部。現在は人事コンサルティング会社Joe's Labo社長だ。

城さんは光文社ペーパーバックスの「内側から見た富士通『成果主義』の崩壊」で注目を浴びた。


内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)
内側から見た富士通「成果主義」の崩壊 (ペーパーバックス)

城さんは「有名大学を出て有名企業に入り、定年まで勤め上げる」というのは「昭和的価値観」であると言う。


3年で新入社員の1/3が辞める

2005年度の新入社員の意識調査では、42%が年功序列を維持している企業を希望し、依然として人気は高い。

それではなぜ大卒新人の35%が入社後3年でやめるのだろうか。

本人の希望と実際の業務内容が、かみ合わないというミスマッチと、若者側の忍耐不足が理由である。

企業のニーズは「なんでもやります」的な人材ではなく、組織のコアとなれる組織運営能力と、一定の専門性を持った人材なのだ。ここにミスマッチの原因がある。

若者側も、年功序列でいずれ報われると言われても、十年以上も下働きを強いられることは耐えられないのだ。

第二新卒という転職市場が拡大し、転職がやりやすくなったという環境の変化も、若者の早期転職を後押ししている。


「既卒」の壁と35歳以上の転職の壁

しかし転職がやりやすくなったといっても、それは新卒で企業に入った新人のみの話だ。決して若者全員が就職・転職しやすくなっている訳ではない。

「既卒」とは新卒と対になる言葉で、昔で言う「就職浪人」の事だ。いかなる事情があれ、卒業の翌年以降に就職活動を再スタートさせると、既卒者は門前払いされるケースが多いのだと。

30年以上も前の話だが、筆者の就職活動中に、或る会社を訪問した時、「二浪・二留以上の人は退席してください」と人事の人が言ったら、1−2人の学生がすごすごと退席した。

いまだに門前払いをやっている会社もあるのだと驚いた。

新卒→正社員というレールに一度でも乗り遅れてしまうと、二度と正社員のレールには乗れなくなってしまう可能性が高いのだ。

城さんは、企業は年功序列が基本なので、新卒=22〜24歳という基準からはずれる既卒は受け入れられないのだと語る。

理系の大学院ならともかく、文系の大学院や博士課程なども既卒と同じ扱いとなり、普通の就職は難しくなる。

35歳以上の転職市場も同様に壁がある。採用に際して年齢制限を設けることは法律で禁止されているが、多くの日本企業で中途採用の実質的な上限は35歳である。


日本は若者にツケをまわす国

第二新卒市場が拡大する一方、正社員となれない若者も増えている。

従来製造業の現場では禁止されていた派遣社員の受け入れが、2002年に認められ、派遣社員の受け入れ制限はなくなった。

中国などとの競争にさらされている経済界が、正社員の人件費高騰対策として派遣社員の活用を求めたものだと城さんは語る。

政府ではオリックスの宮内会長を議長に「総合規制改革会議」を開催し、労働者の派遣期間と業務制限の見直しを決定した。

1998年には90万人だった派遣労働者が、2003年には約250万人となり、同じく150万人と推定されたフリーターが、2003年には200万人を超えた。派遣とフリーター両方で1998年の240万人が、5年間でほぼ倍になっているのだ。

派遣社員の平均年収は300万円。同じ年齢の正社員の7割程度しかない。フリーターは平均200万円以下と正社員の半分以下である。

フリーターの生涯賃金は、正社員より2億円少ないとも言われている。

企業としては人件費を抑えられるので、円高不況の対策として派遣・不定期労働者の活用は効果があった。

しかし製造現場では、一斉に退職する団塊世代の技術者からの技術伝承の受け皿の若手正社員がおらず、技術のエアポケットができつつある。これが日本製造業を直撃している問題である。

年功序列を維持しようとすると、働かない管理職が増え、若手にしわ寄せが来る。城さんは21世紀の「蟹工船」とよび、肥大化した組織を若手が、月100時間を超える残業で支えている某出版社の編集部の例を紹介している。

JR福知山線の事故を起こした運転手も、運転手になってから一年足らずの23歳の若者だった。JRは長年新規採用を抑制してきた経緯があり、30−40代の中堅社員が極端に少なく、技術の空白が生じていると。事故は若い運転手だけの責任ではないのではないかと。

派遣やフリーターの増加で収入も減り、それゆえ年金や健康保険も負担できない若者も増えている。年金破綻、少子化の原因にもなっている。

城さんは「企業は未来をリストラして生き延びてきた」という。それを黙認してきた社会=日本という国が、若者にツケをまわしているのだと。


年功序列は諸悪の根元?

城さんは、前著「日本型『成果主義』の可能性」で、年功序列と成果主義は両立すると論じたと語る。

しかし今や企業では年功と成果を組み合わせた評価制度が大半で、城さんの言っている年功序列と成果主義の両立は当たり前ではないかと思う。

日本型「成果主義」の可能性
日本型「成果主義」の可能性


この本では年功序列が、諸悪の根元のように扱われている。例えば主な小見出しをピックアップするとこんな具合だ:

日本の成果主義は年功序列にすぎない
労働組合という名の年功序列組織
年功序列が少子化を生んだ
年功序列はネズミ講
年功序列こそが格差を生み出している

さらに日本人はなぜ年功序列を好むのか?という章まで設けて年功序列について論じている。

城さんは、年功序列はリバイアサンだと言う。巨大化し自壊しつつある体制という意味だろう。

年功序列は昭和的価値観が生み出したもので、日本製品、日本式経営が一時期世界で成功する原因となった。

政府も野党も経営者も組合もリバイアサンの一部。メディアもすべて昭和的価値観の広告塔でリバイアサンの一部だと。

しかし成長の時代が終わると、リバイアサンは暴走を始め、若者から搾り取る体制となり、少子化まで引き起こしていると城さんは語る。


年功序列に適した日本の教育

日本の教育は詰め込みシステムで、小学校から大学まで、正答一つの問題を与え続け、疑問を抱かずに効率よくこなせる人間だけ上に引き上げる。

そして社会に出る頃には、「与えられるものはなんでもやるが、特にやりたいことのないからっぽの人間」を量産できるシステムだと。

これの典型が体育会系学生だと城さんは語る。

企業からみた体育会系のメリットは主体性のなさで、これが企業が体育会系を好む最大の理由だという。

並の若者よりもずっと従順な羊でいてくれる可能性がたかく、つまらない仕事でも上司に言われた以上、きっちりこなし、休日返上で深夜まで働き続けても文句は言わない。

城さんは、サッカーのベンゲル監督の言葉を借りてこう表現している「日本人は与えられた役割を果たすのは得意だが、状況を主体的に判断して行動するのは苦手だ」。

日本人のこの特異な性質に気づいたトルシェはパターン化した戦術を徹底的にたたき込んで、主体的に考える必要性をなくした。

ジーコは普通のサッカーに戻し、ジーコジャパンは一次リーグ敗退した。

どうやら日本人がレールを降りて自分で歩き出すにはとても長い時間が掛かりそうだと城さんは語る。


働く理由を問い直す

最後に城さんは、「働く理由」を問い直さなければならないと語り、昭和的価値観から抜け出た「荒野のオオカミ」の例を3人紹介している。

大手生保から史上最年少市議となった人
ソニーを辞めてベンチャー企業CEOとなった人
フリーターでやっていた編集を専門として、編集プロダクションを立ち上げた人

昭和的価値観のフィルターをはずして、自分の周囲を見つめろと言う。

筆者は海外に合計11年駐在していたが、年功序列は日本だけの制度ではない。最近でこそMBAが経営者へのエスカレーターとなったり、成果主義が広がっているが、米国でも欧州でも、オフィスでも工場の現場でも、年功序列は依然として存在する。

年功序列というよりも、人間の組織なら年功=経験を生かして年長者が年少者を指導するのは当たり前だろう。

単に年功だけという時代はもちろん終わった。これからは雇用の流動性と成果主義、それと対局にある終身雇用、年功序列がミックスされた社会となっていくだろう。

年功序列が悪い訳ではないし、諸悪の根元でもない。あくまでその時代にあった制度を企業は採用し、そして時間は掛かるが、教育の現場にも時代の流れとして反映していくだろう。

ややエキセントリックな議論で、年功序列=悪というバイアスが掛かっている様な気がするが、多彩な論点は参考になる本だ。


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Posted by yaori at 02:40│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス 

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