2007年07月22日

ウルトラ・ダラー 元NHKワシントン総局長手嶋龍一さんの小説

ウルトラ・ダラー (新潮文庫 て 1-5)


「インテリジェンス」で佐藤優氏と対談していた元NHKワシントン総局長手嶋龍一さんのサスペンス小説。

手嶋さんは9.11事件の時のNHKワシントン総局長だ。歌舞伎役者の様なハンサムフェイスを覚えている人も多いことだろう。

手嶋さんはこの小説の前にも、NHK在任中に、いくつか小説を書いている。

たとえば湾岸戦争の時に日本が金を130億ドルも出したのに、クウェート政府には公式に感謝されなかった「外交敗戦」や。

(筆者は当時米国に駐在していたのだが、ウォールストリートジャーナルの全面感謝広告で多くの国の名前が列挙されていたのに、日本の名前がなかったことを覚えている)

外交敗戦―130億ドルは砂に消えた (新潮文庫)


結局はアメリカのF-16をベースに改良することになったFSX(現F-2支援戦闘機)の小説、「ニッポンFSXを撃て」などだ。

たそがれゆく日米同盟―ニッポンFSXを撃て (新潮文庫)


これらの小説が認められ、ハーバード大学国際問題研究所にシニア・フェローとして招聘された経歴を持つ外交の専門家だ。

現在はNHKを退職して、外交ジャーナリスト、作家として活躍している。手嶋さん自身のオフィシャルサイトもあり、またウィキペディアでも紹介されているので、参照して欲しい。

小説のあらすじは細かく書かないのが筆者のポリシーなので、詳しくは本を手にとって見て頂きたいが、読んでいて手嶋さんの多方面にわたる知識の深さがよくわかり、またストーリーも面白い。

小説には初めから結末の構想が決まっていて書くものと、雑誌などの連載小説に多い、書き進めながら、なりゆきで結末を考えるものと2種類ある。

ウルトラ・ダラーは後者なのだと思う。

ストーリーは、北朝鮮関係のインテリジェンスがメインテーマで、日本人拉致問題、日本人印刷工拉致、偽ドル印刷、ドル紙幣へのRFID無線タグ埋め込み、核兵器開発、巡航ミサイル密輸、北朝鮮との交渉窓口ミスターXと外務省某局長の間柄など、息をもつかせない展開だ。

登場人物の設定も凝っている。

BBCの日本駐在員がイギリスインテリジェンス要員で、スーパーエージェントという設定だ。しかも自宅にL96A1狙撃銃まで隠し持っている。

細部の描写も手嶋さんの趣味の広さがよくわかる感心する描写だ。手嶋さんは「いいとこのボンボン」なのではないかと思わせる。

例えば、着物の話では:

「越後上布は手づみの上質な麻だけで織り上げますので、それはそれは贅沢な織物です。…北国の粉雪を思わせる白地に、青海波の絵絣(かすり)が織り出されている」

「琉球藍で染め上げた宮古上布はいかがでしょう。…おおぶりの葉が大胆にちりばめられた絣(かすり)もようだ」

という様な描写だ。

この他にも浮世絵、和楽、ファッション、レストラン、食事、食器、ギャンブル、競馬など、細部にこだわりの描写が続く。

もちろん内外政府のインテリジェンス組織、軍事知識は完璧だ。

ロマンスもサスペンスもある。若干終わり方が尻切れトンボ感があるが、こんな終わり方も「粋」なのかもしれない。

着想も面白く、手嶋さんの多趣味と博識にも驚かされる一冊である。


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Posted by yaori at 10:33│Comments(0) 手嶋龍一 | 自衛隊・安全保障