2007年07月29日

奪還第二章 曽我ひとみさんの家族帰日以来何も進展がない 中山恭子議員に期待大だ

奪還 第二章
奪還 第二章


以前紹介した「奪還」に次ぐ、拉致被害者家族連絡会副代表の蓮池透さんの手記。

最初の「奪還」は拉致被害者5人が帰国した翌年の2003年3月の出版、「奪還 第二章」は2005年2月の出版だ。この本以来、蓮池透さんは新しい本を出していない。

2004年夏以降拉致問題にはなんの進展もないので、家族会の内部で拉致被害者と子供が無事帰国した家族と、拉致被害者が北朝鮮により確たる証拠もなしに死亡と発表されたままの家族との間の断層が生じているというマスコミ報道がある。

3年も進展がないので家族会の苦悩が深まっていることと思う。

家族会を支援してきた中山恭子首相補佐官が今回の参議院選挙で当選した。

是非膠着している拉致問題解決のために、力を発揮して貰いたいものだ。


待たれる蓮池薫さんの手記

蓮池透さんもこの本の最後に書いているが、時期が来れば是非拉致被害者本人の蓮池薫さんに語って貰いたいものだ。

蓮池薫さんは、持っていた情報はすべて横田さんご夫妻や支援室に伝えてあるが、他の拉致被害者の情報は限られたものしか持っていない。聞かれても情報を持っていないので悩んでおられたそうだ。

また「蓮池薫さんは横田めぐみさんを1994年まで平壌で見ていた」という家族会限り、関係者限りとしている情報が朝日新聞に2004年8月にスクープされる事件があった。

こちら側がどれだけの情報を持っているかを北朝鮮が知ってしまうと、北朝鮮が安心してウソの上塗りに走り、北朝鮮を利するおそれがある。だから、すべての情報は公表できないという事情もある。

残念ではあるが、まだ多くの拉致被害者が未帰還なので、蓮池さん自身がジェンキンスさんの様に手記を出すということはできないという事情がある様だ。

ちなみに蓮池薫さんは翻訳本を何冊も出している。現在蓮池薫さんの訳本を数冊読んでいるので、近々あらすじをご紹介する。


2002年10月以降のできごと

「奪還」では、拉致発生から2002年10月の蓮池さん夫妻、地村さん夫妻、曽我ひとみさんの五人の拉致被害者の帰国、そして五人が日本で子供達の帰日を心待ちにしているところまでの手記だった。

この「奪還 第二章」では、2004年5月の小泉第二回訪朝で、蓮池さん、地村さん夫妻の子供が一緒に帰日したこと、そして2004年夏のジェンキンスさんと曽我さん夫妻の子供の帰日までが取り上げられている。

あのジャカルタ空港での曽我ひとみさんとジェンキンスさんの熱烈なキスが思い出されるが、あれから拉致問題については全くなんの進展もない。

六ヶ国協議でも毎回議題に乗るが、北朝鮮は解決済みという姿勢を崩さず、家族会の戦いもいつ終わるともしれない状態だ。


子供帰日までの蓮池薫さんの苦悩

蓮池薫さんのこんな本音を蓮池透さんは書いている:

「記者の前で”子供を返してください”などと訴えたら、北朝鮮から”こいつらは精神的に限界にきている。ちょっと揺さぶれば思い通りになる”と思われる。

だから、祐木子にも絶対に弱みは見せるなと言っているんだ」

蓮池薫さんの苦悩がわかる発言だ。


北朝鮮におけるプラス思考

蓮池薫さんは蓮池透さんに、こう語ったと。

「北朝鮮で生きるためのプラス思考というのは、日本へ帰りたいという気持ちを忘れることだったんだよ」

「えっ、それはマイナス思考だろう。いつかは日本に帰れると思うことがプラス思考なんじゃないか」

「違うんだよ。向こうで一生懸命生きていこうと思ったら、日本への望郷の念を捨て去ることが必要で、それこそがプラス思考になるんだ」

蓮池透さんはショックで胸がふさがる思いがしたと語る。

アウシュビッツを生き延びたヴィクトール・フランクルの「夜と霧」には「収容所の1日は1週間よりも長い」という言葉がある。

極限状態で生き延びるには精神力/気力が生き延びる必要条件だ。

この「プラス思考」が蓮池薫さんが北朝鮮で24年間生き延びられた最大の理由だろう。頭が下がる思いだ。


誰も知らないミスターX

この本の中で蓮池透さんは、拉致問題の解決を長引かせたのは日本側の体制の脆弱さにあったことは間違いないと強く非難している。

当時の北朝鮮との交渉窓口の田中均元外務審議官の相手には、ミスターXと呼ばれるフィクサーが居たと言われているが、そんなミスターXなど外務大臣含め誰も知らないのだと。

蓮池さんは、当時の交渉担当者にとっては日朝国交正常化の方が拉致問題解決よりも遙かに重要な問題で、拉致問題はその障害であるとさえ考えていたのではないかとまで言っている。

政府や政治家に対する家族会の不信感は強い。

ただその中でも安倍晋三ー中山恭子ラインへの信頼は厚かったが、内閣官房参与中山さんが2004年9月に辞任したことで失望したと蓮池さんは語っている。

その後安倍首相となって、中山さんは2006年9月に拉致問題担当の首相補佐官として復帰し、今回の選挙で参議議員に当選した。是非拉致問題解決に引き続き当たって貰いたいものだ。


経済制裁の有効性

蓮池薫さんは、次のように冷静に語っている:

「経済制裁を加えることにより、北朝鮮を崩壊に追い込み拉致被害者を救出するという声があるが、そのシナリオは絶対に成立しない。

北朝鮮はそう簡単に崩壊する国ではない。

周辺の中国、ロシア、韓国とも協力して完全に『経済封鎖』するならば、話は別だが、それは容易なことではない。

仮に崩壊するとするならば、金正日政権は真っ先に自分たちにとって不利となることを消そうとするだろう。すなわち『証拠隠滅』で、救出などやりようがなくなるだろう。

経済制裁=体制崩壊=救出というのは、あまりに短絡的な思考である。」

説得力のある意見である。


残念ながら蓮池薫さんの言う通りの展開となっており、経済制裁も機能せず、拉致問題は進展がない。国民の注目度も低下してしまうという事態になりつつある様な気がする。
「奪還」のあらすじでも書いたが、もし米国民が拉致されていたら、米軍が出動して救出にあたっていただろう。自国の国民が生命の危機にさらされたら、国を挙げて救出する。

そんな当たり前のことができる日本政府にするために、我々一人一人が拉致問題を重大事件ととらえ、決して風化させてはならないと改めて感じた。


第一作と同様、読みやすく心に訴えるおすすめの本である。


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Posted by yaori at 23:08│Comments(0)TrackBack(0) ノンフィクション | 拉致問題

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