2007年08月06日

コーラン入門 イスラム教とキリスト教(ユダヤ教)って共通点が多い!

図解これだけは知っておきたいコーラン入門
図解これだけは知っておきたいコーラン入門


「山椒魚戦争」に続き、佐藤優氏の「獄中記」で推奨されていた本を読んでみた。

佐藤氏は岩波文庫のコーランそのものを読むように勧めていたが、まずはごく最近(2007年6月)に出版された入門書を読んでみた。監修者の大川玲子さんは、イスラム教学者で、いくつものコーラン解説本を出している。

コーラン 上   岩波文庫 青 813-1
コーラン 上 岩波文庫 青 813-1


コーランでなく、クルアーンとすべて読み替えている。

この本を読んで、いままでイスラム教やクルアーンについての知識はほとんどなかったことが痛感された。佐藤氏の指摘する通りだ。

いままで漠然とイスラム教もキリスト教(ユダヤ教)もルーツは同じという話を聞いていたが、この本を読んでイエスも含めてキリスト教(ユダヤ教)の重要人物は、イスラム教でもマホメット(ムハンマド)以前の預言者として描かれていることがわかった。


クルアーンは神の言葉そのもの

キリスト教やユダヤ教の教典はすべて人の手で作られているので、純粋な神の言葉とは言えないが、イスラム教のクルアーンは神の言葉そのものだという。だからクルアーンは声に出して読むもので、他の言語には翻訳できないのだと(他の言語のものは注釈とされている)。

試しにクルアーン朗読のCDを図書館で借りて聞いてみた。

コーラン朗唱
コーラン朗唱


なにやら詩吟の様な感じだ。それほど耳になめらかという感じではない。

イスラム教国に行くと、毎日決まった時間にラウドスピーカーでクルアーンを流しており、異国情緒が感じられる。


クルアーンとハディース

クルアーンは西暦600年過ぎに活躍したムハンマドに23年間にわたって唯一神アッラーから下された啓示を、1冊の書物にしたもので、114章から成る。ムハンマドの死後20年ほどしてまとめられた。

クルアーンと並ぶ聖典がハディースで、これはムハンマドの言行録だ。

ハディース〈1〉イスラーム伝承集成 (中公文庫)
ハディース〈1〉イスラーム伝承集成 (中公文庫)


それにしてもムハンマドの生涯は戦いの連続で、予言者という感じではない。ムハンマドが出てくる前までは、偶像崇拝がはびこっていたが、ムハンマド出現で、アラビア半島が唯一神アッラーで統一されたのだ。


イスラム教とキリスト教の共通点

イスラム教でもアーダム(アダム)と妻(キリスト教ではイブだが、クルアーンでは名前は与えられていない)が人間の始祖で、悪魔にだまされて禁断の木の実を食べて天界を追放され、地上で子供を産んだのだ。

またヌーフはキリスト教のノアで、クルアーンでもノアの方船の話がある。

さらにイブラーヒーム(アブラハム)はムハンマドに次ぐ重要な預言者とされ、メッカのカーバ神殿にはイブラーヒームの足跡がガラスケースの中に保存されている。

その他にもユースフ(ヨセフ)、ムーサー(モーゼ)、ダーウド(ダビデ)、スライマーン(ソロモン)などが預言者として登場し、イエスもイーサーという預言者として登場する。

イーサーはマルヤム(マリア)が処女でありながら受胎して生んだ子供という点もキリスト教と同じだ。

イスラム教では、生まれてすぐにゆりかごの中で、赤子のイーサーが自分はアッラーの僕(しもべ)で預言者であると言ったとされている。

イーサーは預言者で、数々の奇跡を起こし、死人を生き返らせたり、土から鳥をつくったりした後、アッラーに引き戻される。

イーサーはアフマドという使徒がアッラーから使わされると、ムハンマドの出現を預言しており、イスラム教とキリスト教とは継続性がある。

ムハンマドも月を割ったり、雨を降らせたり、指の間から水をだすなどの奇跡を起こしている。

ムハンマドとイーサーの違いは、ムハンマドは多くの妻をめとり、子孫を残したことで、後のウマイヤ朝、アッバース朝、シーア派などの始祖となる正統カリフ達は、ムハンマドの後を継いだ親族だ。


ムスリムの生活規範は7世紀の生活規範と同じ

クルアーンはイスラム教徒(ムスリム)の生活様式を規定しており、7世紀の習慣がクルアーンに書いてある。これが今もムスリムの生活を縛っており、変わることはない。

だから敬虔なムスリムが豚を食すことはなく、ユダヤ教のコーシャー(カシュルート)フードの様に、ちゃんと祈りを捧げた後で屠殺した動物の肉でないと食べてはいけないことになっている。

世界で一番イスラム教徒人口の多いインドネシアで、味の素に入っている或るアミノ酸が豚肉由来のものと言われ、大きな問題になったことは記憶に新しい。

一夫多妻制(クルアーンには4人と書いてある)、離婚その他までクルアーンには書かれている。たとえば一度離婚した相手とは、別の結婚を挟まないと再婚はできないのだ。

ムスリムに姓はなく、名前は、誰々の息子という呼び名となる。

例えばオサマ・ビン・ムハンマド・ビン・アワド・ビン・ラディンの場合は、ラディン(曾祖父)の息子のアワド(祖父)の息子のムハンマド(父)の息子のオサマということになる。

イスラムの刑罰は、むち打ちや、石打による死刑、手足切断、はりつけなど、非常に厳しい刑罰が今もなおそのまま適用されている。


ムスリムの信仰と義務

ムスリムには六信五行が求められている。

六信とは唯一神アッラー、天使、経典、預言者、来世、運命を信じること、五行とは信仰告白、礼拝、喜捨、断食、そして巡礼だ。

天使や悪魔もイスラム教とキリスト教は共通で、たとえばガブリエルはジブリール、サタンはイブリースあるいはシャイターンだ。

1日5回のメッカの方向に向かっての祈りもムスリムの義務だ。筆者はイラン・イラク戦争の時に、イランに二回出張したことがある。商談中に相手がお祈りの時間だと言って中断し、部屋の隅に小さな絨毯を敷いて、メッカの方角に、五回地面に頭をつけて祈っていたことを思い出す。

あのときの交渉相手の大男が、礼拝に没頭したトロンとした目で、異教徒のかわいそうな奴という感じで、こちらを見ていたことが思い出される。


最後の審判と復活

彼が筆者を憐れんでいた理由は、キリスト教と同じく最後の審判と復活だろう。

クルアーンでは世界の最後の日に死者はすべて復活し、天使の記録に基づき天秤に掛けられ、最後の審判を受けることになっている。

もちろん筆者の様な異教徒は、焦熱地獄行きで、彼の様な敬虔なムスリムは復活した後に、川が流れ果実が豊富で、飲んでも酔うことのない美酒や、美人が一杯の天国に行けるのだ。

なにやら昔のフォーク・クルセダーズ帰ってきたヨッパライの、一節を思い出させる様な天国だ。

イスラム教のことが簡単にわかるハンドブックだ。図解や絵入りで簡単に読めるので、一度は読まれることをおすすめする。


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Posted by yaori at 20:32│Comments(0)TrackBack(0) 趣味・生活に役立つ情報 

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