2007年08月14日

孤将 韓国の英雄李舜臣将軍の孤独な戦い 蓮池薫さんの翻訳大作

孤将 (新潮文庫 キ 13-1)
孤将 (新潮文庫 キ 13-1)


蓮池薫さんの初の本格的翻訳小説。

この作品は2001年に韓国最高の文学賞と言われる東仁文学賞を受賞した。

韓国で50万部を超えるベストセラーとなり、廬武鉉(ノムヒョン)大統領が愛読したことでも有名になる。

ストーリーは16世紀末豊臣秀吉の朝鮮出兵の時に、日本軍と戦った韓国の国民的英雄李舜臣(イ・スンシン)将軍の戦記だ。

李将軍像













(写真出典:Wikipedia)

李舜臣将軍は「乱中日記」という戦記を残しており、翻訳本が日本でも発売されている。

乱中日記〈1〉壬辰倭乱の記録 (東洋文庫)
乱中日記〈1〉壬辰倭乱の記録 (東洋文庫)


著者の金薫(キム・フン)さんは、学生の時に「乱中日記」を読み、その感動が30年後に自分でこの作品を書いたきっかけだと語っている。

秀吉の朝鮮出兵を打ち破る韓国の英雄の話なので、蓮池薫さんは、日本で受け入れられるか心配だったと。


文禄・慶長の役

文禄・慶長の役と呼ばれる朝鮮出兵の時代的背景は次の通りだ。

16世紀末に天下を統一した秀吉は、戦功のあった部下に対して十分報いる土地が足りなかったという背景もあり、朝鮮出兵を決断する。

対馬の大名宋氏は貿易を通じて朝鮮とも関係が深く、秀吉出兵計画の情報は1591年に朝鮮に伝えられる。

秀吉は1592年にキリシタン大名小西行長、加藤清正などに命じて、15万人強の軍隊を組織して、朝鮮に攻め入り、わずか19日で朝鮮の首都漢城を陥落させる。

日本軍は圧倒的な勢いで、平壌まで攻め入るが、明が朝鮮支援を決定、李舜臣の率いる朝鮮水軍の活躍で、補給路を断たれた小西行長の日本軍は次第に劣勢となり、結局釜山付近まで撤退する。これが1593年まで続いた文禄の役だ。

和平交渉が開始されるが、仲介役の明が秀吉を日本国王に任命するという書状を出してきたことから、秀吉が激怒し、再び朝鮮へ増派を決断する。

1597年の慶長の役だ。緒戦は勝利を収めるが、またしても李舜臣の水軍に敗北し、勢いはそがれる。

1597年には五島水軍の働きで、包囲されていた加藤清正軍が明軍を打ち破った。戦闘はもっぱら朝鮮南部で行われていた。1598年に豊臣秀吉が死んで、日本軍は目的を失い、撤退に移る。

そして1598年11月に撤退中の日本軍への攻撃で、李舜臣将軍は戦死する。54歳の生涯だった。


「孤将」のあらすじ

小説のあらすじは詳しく紹介しない主義なので、簡単にとどめておくが、この小説で、李舜臣将軍は、朝鮮王朝から一時は官位を剥奪されるなど、確かな支援も得られず、農民などをうまく使いながら、山の木を切り戦船をつくり、捕獲した武器をリサイクルして鉄砲などの武器を製造した。

朝鮮は硝石の産地であり、それを使って火薬も製造した。

李舜臣将軍の就任以前に一度は壊滅的打撃を受けた朝鮮水軍だが、李将軍の増強作戦が功を奏し、朝鮮の大きな干満の差を利用した戦術で敵の混乱を招いて成功して、日本水軍に対して連戦連勝を飾る。

この小説では文禄・慶長の役に於ける朝鮮各地での戦いの実話をベースに、キム・フンさんがフィクションをとりまぜて様々なストーリーを展開している。

蓮池薫さんが言う様に、日本人にとって、負け戦続きのストーリーは愉快なものではないが、反面、朝鮮出兵について知識がほとんどないことに気づかされる。

第二次世界大戦や満州国の関係もあり、中国の地理なら筆者も含めて日本人の頭にはかなり入っていると思うが、文禄・慶長の役の戦場となった朝鮮全土、特に韓国南部のリアス式海岸地帯の地理は全くと言って良いほど頭に入っていない。


韓国地図










(地図出典:Wikipedia)


筆者は韓国に仕事で何回も行ったことがあるが、一部の大都市がどのあたりにあるかはわかっているが、その程度しか韓国の地理を知らないので、自分ながら愕然としてしまった。

この本では各地での日本軍との戦闘が詳細に描かれている。巨済島(コジェ島)、閑山(ハンサン)、陜川(ヒョブチョン)、珍島(チンド)、鳴梁(ミョンリャン)、光陽(カンヤン)湾など、挙げればきりがない。

韓国の地理を勉強するには良い教材なので、当時の地図を本に掲載するようにすればもっと良かったと思う。(これは蓮池さんというより、編集者の気づきの問題と思う)

ともあれ、蓮池さんの力作であることは間違いない。この本を読むことで、蓮池さんのハングル翻訳の実力もわかる。是非これからも翻訳家として成功して欲しいものだ。


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Posted by yaori at 11:41│Comments(0)TrackBack(0) 小説 | 蓮池薫

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