食い逃げされてもバイトは雇うな 禁じられた数字 〈上〉
キャッチーな本のネーミングと、わかりやすい説明でベストセラーを連発している会計士山田真哉氏の新作。山田真哉工房という公式サイトもある。
このブログでも「さおだけ屋はなぜつぶれないのか」と「世界一やさしい会計の本です」を紹介してきたが、いずれもタイトルがキャッチーだ。
実は読むまでは、食い逃げする様な悪いバイトを雇うなという意味かと勘違いしていたが、思えばバイトが食い逃げするはずがない。
店主だけでやっている店で、店主が出前にでる時などに食い逃げが発生するからといって、食い逃げ防止のためにバイトを雇うなという意味だ。
食い逃げによる損失より、バイト代の方が高い。感覚でなく、数字で考えれば「食い逃げが多いからバイトを雇う」という発想に絶対ならないはずだと。
食い逃げって本当にあるの?
山田さんは食い逃げを見たことがないという。「食い逃げを見たことがありますか?」と、何人かに聞いたが、誰一人目撃者はいなかったという。
「それって昭和の話じゃないの?」
たしかに昭和の話かもしれないが、筆者は一度だけ食い逃げを目撃したことがある。
筆者の会社は、以前東京の学生街、古本屋街に近い場所にあった。30年くらい前に神保町のトンコロ(トンカツとコロッケ)で有名な、今はなき「とんちゃん」で同僚の故篠塚一太君と昼食を食べていたら、名物親父が急に「食い逃げ?!」と叫んだ。
そこは長っ尻の女性客には徹底的にイヤミを言う名物親父とおばさんの二人でやっているカウンターだけの店で、昼の繁盛時は外に客が並んでいて、食べ終わった客と入れ替わるシステムになっていた。
食べ終わったときに、何を食べたか言ってお金を払うのだ。
今も覚えているが一人のめがねを掛けた学生風の客が、食べ終わって何も言わずフッと席を立ち、次の客と入れ替わったのだ。
おじさんも客もみんなが気が付かなかったのだが、実は金を置いておかずに立ち去ったのだ。
「あれっ、お代をもらってない!」おじさんが気が付いたが、もう後の祭り。おばさんは、「お金を置いていくのを忘れたんでしょう。きっと後から払いに来るよ。」と言っていたが、あまりにも鮮やかな手口だったので、払いになど来なかったと思う。
これが筆者の食い逃げ目撃で、たしかに昭和だし、30年以上の筆者の社会生活で目撃した唯一の事件なので、発生頻度は限りなくゼロに近いのだろう。
たしかに1時間で読める本
この本を読んでいて途中で不安になった。
片道1時間強の通勤時間に本を読んでいるのだが、200ページの本なのに1時間掛からないで読了してしまう勢いだったのだ。
なんかおかしいという感じていたら、最後の”「あとがき」というか「なかがき」”に「1時間で読めて効果も高い本」にしたかったと書いている。
印象深い例を挙げて基本的なポイントを説明しているので、わかりやすい。
4つの数字のルールを使った数字のマジック
本の帯に66万の目からウロコが落ちたと書いてある。
66万人と思った人は、いますぐ数字にうまくなる必要があると。33万部突破のことを別の表現で言っているにすぎないのだと。
数字のルールは次の4つだと山田氏は語る:
1.順序がある
例としてWeb 2.0を挙げている。すごいネーミングだと。2.0と名付けることによって、ソフトのバージョンアップの1.2とかを連想させるとともに、過去が1.0で、これから3.0とか4.0が続くということまで意識させるからだ。
2.単位で意味を固定する
リットルとか、キロメートルとか、%とか。単位がつくと意味が異なる。秦の始皇帝も中国を統一して、まず度量衡の統一を行った。
3.価値を表現できる
たとえば映画の宣伝で、「みんなが泣いた」というよりも、「9割が泣いた」という方が印象に残る。
4.変化しない
言葉の意味は変化するが数字は変化しないので信用を与える。
「数字の暴力性」に気をつけろと。
インパクトある例でわかりやすい
詳しく説明するとタネ明かしになり、この本を読むおもしろさが失われるので紹介しないが、わかりやすくインパクトのある例が満載だ。
たとえば次の様なタイトルだ:
☆「今夜6時53分に渋谷ハチ公前に集合。時間厳守」ー なぜ6時53分なの?
☆本のタイトルに数字を使う光文社の編集者ー 「若者はなぜ3年で辞めるのか」、「99.9%は仮説」
☆タウリン1000ミリグラムは1グラム
☆サッカーのスウェーデン代表は対イングランド戦39年間無敗
☆割り算の威力 ー ノルマ2万個販売も、1店舗当たり40個なら楽々達成できそうに思える
☆他社の5%割引に対抗する2%割引 ー 50人に一人無料
☆1000円のものを500円で買うのと、101万円のものを100万円で買うのとどっちがお得?
☆大きな数字だとアバウトに ー 150万円の予算だったのに、オプションつけて180万円の車になってしまうのはなぜ?
☆あの牛丼店ではなぜ食券機がないのか?
☆はやっていない古本屋はなぜつぶれないのか?(さおだけ屋のバリエーション)
☆セドリってなに?
☆決算書の見方はトランプと同じ ー ババ抜きの様に数字を探す
アマゾンでは”アマゾンプライム”という立ち読み機能があるので、まずは目次やいくつかのページを立ち読みして、この本の内容をチェックして頂きたい。
著者の山田真哉氏のサイトでも、目次や内容の紹介がある。
1時間であっけなく読め、かつインパクトもある、おすすめの一冊だ。
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