2007年09月25日

伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし 感動をもたらす気配り

伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし―お客様の望みをすべてかなえる方法
伝説コンシェルジュが明かすプレミアムなおもてなし―お客様の望みをすべてかなえる方法


林田さん他のリッツカールトンシリーズでも紹介されていた伝説のコンシェルジュ、前田佳子さんの本。

この本を読むとリッツカールトンの感動を呼ぶサービスとして紹介されていたエピソードの多くが、前田さんの経験談であることがわかる。

ところが同じストーリーながら、他の本と違って、読んでいて涙がジーンと浮かんでくるような書きっぷりになっていない。実に淡々と書いている。

自分の自慢話とせず、スタッフ全員の共同作業として再現可能なストーリーにして、サービス業を目指す人に役立てることに徹しているのだ。

すごい人だ。

リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと
リッツ・カールトンで学んだ仕事でいちばん大事なこと


前田さんは大学卒業後スチュワーデスを目指すが果たせず、大阪東急インのフロント係として就職、そこで頭角をあらわしヒルトンホテル大阪に転職。

ヒルトンでシステマティックにお客に対応する技術と語学を学び、スタート直前のリッツカールトン大阪にコンシェルジュとして転職、「心でモノを見る」ということを学ぶ。

ヒルトンで5年、リッツカールトンで9年働いた後、2008年3月に東京お台場にオープンする会員制リゾートホテルのリゾートトラスト東京ベイコート倶楽部の開業準備室で働いている。

東京ベイコート倶楽部のコンセプトは、すべてのスタッフがコンシェルジュの様に仕事をするというもので、前田さんはそれに心を打たれたという。


おもてなしに一番必要なもの

前田さんはおもてなしに一番必要なものは、マインドだと語る。

マインドの高い人は、お客様の要望に決して"NO"ということはない。

たとえ口に出されない要望でも、五感や第六感を駆使してキャッチし、他のスタッフとのチームワークで、実現しようとするのだ。

現在は、お客様の要望に答えるのはあたりまえ、それを超えた「おもてなし」をしてはじめて、お客様に感動して頂ける時代だと前田さんは語る。

たしかに外資系の有名ホテルがぞくぞく日本に進出してきて、帝国ホテルやホテルオークラなどの日本のホテルが、サービス満足度で劣勢に立たされている。帝国ホテルは三井不動産の系列に入ったばかりで、今後も激動の時代が続くだろう。

前田さんの言葉も、なるほどとうなずける。


伝説の感動ストーリーが一杯

林田さんの本にも紹介されていた次のような感動ストーリーが一杯だ。

・「飛行機を止めてくれ」。父親が危篤のアメリカ人ゲストに頼まれ、飛行機会社に出発を遅らせてもらう

・「予算18万円でリッツカールトンのスイートルームにバラとミモザの花を敷き詰めてほしい」

・「プロポーズのタイミングで、アイスツリーからティファニーの指輪が落ちる様にしてほしい」


プロフェッショナルとしての気配り

前田さんのマイモットーは次の3つだという。

1.あきらめない

2.心でモノを見る

3.自分以外はみな師

このマイモットーで、おもてなしをするのだ。さすがと思える気配り・心構えが満載だ。

・電話は笑顔をつくって、2コール以内に(試してみたら、こちらは2コールでも相手は3コールだった)

・声質にかかわらず重要なのが話すスピード

・ボールペンは3本 お客の前で使う1本 お客が貸すための1本 秘密メモ記入用の1本 

・ボールペンはノベルティグッズや事務用品は使わない ホテルは「非日常空間」だから

・「お待ち下さい」と言わない 必ず「お待ち頂けますか?」と言う

・緊張度は瞳孔に、感情は瞳に表れる(脳が緊張しているときには瞳孔が小さくなり、脳がリラックスしているときは瞳孔は大きくなる)

・女性には「言葉地図」の方が好まれる (言葉地図とは書いた図面でなく、言葉で説明した地図、たとえば「XX駅の何番出口を出て左に200メートル行った角を右に曲がり、そこから100メートル行ったところ」といった具合)

「話を聞かない男、地図が読めない女」という本があったが、前田さんはそのことを体験で知っている。

話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く
話を聞かない男、地図が読めない女―男脳・女脳が「謎」を解く


・カールトンのクレドにある"We are on the stage" 仕事では「舞台に上がる」という発想が大事

・本代は月に3万円 ノンフィクションやビジネス書で勉強する


ホテルの仕事を辞めようと思った日

その前田さんでも、ホテルを辞めようと思ったときがあったという。ゲストに代わりに買い物をしてくれと頼まれ、応じようとしたら、「あなたが一人やったために、他の人がみんなしなくてはいけなくなるから、そういうことはやめてくれ」と言われ、反発したのだ。

そんなとき、たまたま俳優のマルチェロ・マストロヤンニが滞在していた。彼が体調を崩したので親身になって3時までつきそい看病すると、彼から次のようにいわれた。

「いろいろつらいことがあるかもしれないけれど、この仕事は辞めなさんな。あなたはこの仕事をするべくして生まれてきた人だと私は思う。だから決してあきらめないで、頑張りなさい。これは私が言っているんじゃなく、神様が私の体を使って言っていると思いなさい。」

さすが大俳優。印象に残る話だ。


コンシェルジュ資格基準

最後にこの本の付録の東京ベイコート倶楽部のコンシェルジュ資格基準が面白い。次のような項目だ。

1.資質: 気配り、注意深さ、情報量、丁寧さ、感受性、共感性、穏やかさなど9項目

2.会社方針: リッツカールトンのクレドの様に「スタッフウィル」というものをまとめているので、暗唱できるかなど理解度、実戦度などの4項目

3.業務内容: これがメインで、道案内(台場周辺、江東区、東京都)、館内設備、外部イベント、フライト、列車、旅行アレンジ、劇場・コンサート・映画チケット手配、手配物(花など)、ビジネスサポート(タイピングなど)、外部レストラン案内、遊園地案内、言語能力、電話対応、アテンド、シガー(知識)、飲料の20項目

4.コミュニケーション全般: セクション内、部内、他部署、上司・部下の4項目

これらすべてに1〜5とSP(スペシャル?=90点以上)まで6段階の点数がある。

コンシェルジュは8割以上に3,最上級のチーフコンシェルジュは全項目について5以上(80点以上)でなければならないという内規だ。


サービス業を目指す、あるいはサービス業に興味のある人に、心構えから懇切丁寧に指導しようとする態度がよくわかり、非常に読みやすく書かれている。

前田さんの言われる内容はスッと頭に入る。さすが伝説のコンシェルジュだ。本にまで気配りが一杯である。

リッツカールトンについての本も良いが、前田さんの本も是非おすすめする。


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Posted by yaori at 00:14│Comments(0)TrackBack(0) ビジネス | リッツ・カールトン

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