2007年10月24日

マザーズ族 成功途上の経営者の話も参考になる

マザーズ族 Leading Entrepreneurs in TSE Mothers (Kobunsha Paperbacks 105)


起業バカ起業バカ2でヒットを出しているジャーナリスト渡辺仁さんによるマザーズ上場会社41社の社長プロフィール。

このブログでも紹介したヒルズ族(「ヒルズな人たち」に次ぐベンチャー経営者群だ。

「ヒルズな人たち」で取り上げられた人たちは、ホリエモンの様に栄枯盛衰があった人も居るが、楽天の三木谷さん、USENの宇野さん、サイバーの藤田さんなど、ベンチャーを通り越して、今や中堅企業となって活躍している。

いずれこの41人の中からも、中堅企業として伸びていく人も出てくると思う。

この本では、起業のきっかけ・着眼点、経歴、IPOと創業者利益、社長の役割・条件、情報源、尊敬する経営者などについて質問を用意して、それぞれの経営者から聞き出した内容をまとめている。

渡辺仁さんは、41社に取材を申し入れたそうだが、今をときめく企業などは、相手にされず、ほぼ半分の20社の社長には取材できなかった。そのため記事の内容もばらつきがある。


取材できなかった社長

取材できなかった社長のなかで、有名どころは次の通りだ:

GCA(M&Aアドバイザリー) 渡辺社長(48歳)佐山社長(53歳)2社長体制 マザーズ時価総額4位

Mixi(SNS) 笠原社長(31歳) マザーズ時価総額5位

アドウェイズ(アフィリエイト) 岡村社長(27歳) 史上最年少でマザーズ上場

比較.com(価格比較)  渡辺社長(35歳) 1円起業で初のマザーズ上場

ゲームオン(サムスンの子会社)  李相(イサンヨプ)社長(47歳) オンラインゲームメーカー

エムケーキャピタルマネージメント 加藤一郎太社長(52歳)不動産アセットマネージメント


億万長者か紙くずか、玉石混淆のマザーズマーケット」というイントロダクションのタイトルが示すとおり、興味本位の取材目的が透けて見えるので、多くの会社から敬遠されたようだ。

ちゃんと話を聞けた経営者のストーリーは参考になる。いくつかピックアップして紹介する。


・MonotaRO社長瀬戸欣哉氏

瀬戸欣哉社長(46歳)は筆者の後輩の元商社マンで、「プロ経営者」を目指していると語る。デトロイトの駐在員からダートマスにMBA留学した経歴を持つ。

米国最大の工具通販大手グレンジャー社と合弁で始めたMonotaROは、零細流通が牛耳っていた工場用工具・副資材ビジネスの「ルールを変えたベンチャー」だ。

資金を数回に分けて30億円も調達して、筆者も端で見ていて大丈夫かというくらい、チラシ宣伝などで毎年数億円使い、文字通りお金を燃やしていた(毎月の赤字幅をバーンレートという)。

しかし、その長期戦略が実を結び、今や18万社の中小企業を顧客に持ち、2007年の売上は前年比20%以上アップの120億円弱の規模で安定的に成長している。

Eコマースで売上高100億円以上というのは、非常に大きな規模で、瀬戸社長の不撓不屈(ふとうふくつ)の精神に頭が下がる。

上場しても瀬戸社長自身は、若干のストックオプション以外創業者利益も取らなかった。

尊敬する経営者は元上司の平沼重巳氏(筆者も尊敬している先輩だ)と語る。好きな言葉は「夫子の道は忠恕のみ」だと。

筆者に「ウェブ進化論」を勧めてくれたのも瀬戸社長だ。元同僚として誇れる熱血プロ経営者である。


・バリューコマース ティモシー・ウィリアムズ会長、ブライアン・ネルソン社長

日本に来て遺伝学を学んでいたニュージーランド人のティモシー・ウィリアムズ氏(36歳)が創業して、ギャラップ社のセールスディレクターだったブライアン・ネルソン氏(39歳)を社長に引き抜いた。

バリューコマース社は1999年にアフィリエイトを始めた老舗だ。

会社を大きくしていく段階で2005年にYahoo! Japanに、TOBという形で約110億円で50%弱の株式を売却した。

創業者のティモシー・ウィリアムズ会長は、会社設立資金にした300万円をニコスから金利18%で借りて、会社を設立したという。その元手300万円が、一時は時価総額300億円に大化けしたのだ。

ティモシー・ウィリアムズ会長の尊敬する経営者はマネックス・ビーンズ証券の松本大社長だという。ゼロからソニーの出資を得て、会社を大きく伸ばした経営手腕がスゴイという。


・マガシーク 井上直也社長

マガシークの井上社長(42歳)は伊藤忠のファッション事業出身。この本の表紙の社長群の写真の最下段に載っている、一見グッドウィルの折口社長かと思わせる風貌の人だ。


「プロ経営者」の条件


現在"CanCan", "non-no", "Oggi"など14の女性誌と提携し、女性誌に掲載されたアパレルやアクセサリーをネットで購入できるサービスを展開している。つまり14の女性誌をストアフロントとしているのだ。

2007年3月期の売上高は60億円弱で、株価総額は92億円だ。

大企業ベンチャーの会社公開でもあり、井上社長の創業者利益はゼロだという。

社長の資質で最も重要なのは人間性だという。「この人についていけるかどうか」というのがポイントだと。

尊敬する経営者はワタミの渡邊美樹社長、日本電産の永守社長、GEのジャックウェルチだという。


・ソースネクスト 松田憲行社長(41歳)

松田憲行社長(41歳)はゼロと鳴くカエルのコマーシャルのソフトメーカー、ソースネクストの社長だ。売上高100億円強、時価総額は214億円。

大学を卒業して日本IBMに勤めるが、IBMでは非常に優秀な部長クラスでも住まいは郊外の2DKと知り、会社を辞めシステムコンサルタントとして独立し、自分の会社をつくる。

4年前からインドの会社と提携して、セキュリティソフトのゼロなど、安くても特徴のある製品を売っている。ソフトを1,980円(イチキュッパ)で売り出したことでも有名だ。

ウイルスセキュリティZERO (新パッケージ版)


社長の資質として一番必要なものは、決断したことを推進するリーダーシップであると語る。


・ドリコム 内藤裕紀社長

企業向けブログシステムやCGM(Consumer Generated Media)ネットメディア開発のドリコムの内藤裕紀社長(28歳)は京都大学の学生の時にチラシを配って仲間を集め、やることもろくに決まっていなかったのに学生ベンチャーとしてスタートした。

2006年3月期の売上高は約7億円。時価総額は154億円。

ブログのパイオニアで、企業向けブログサービス「ドリコムブログオフィス」では大小とりまぜて導入企業は1,000社を超すという。

IPO時に株を売ったので、創業者利益は20億円だという。

社長の資質としては、社長の目標設定が大事だという。社内の人がわくわくする目標なり、夢なりを掲げているのが経営者だと語る。

尊敬する人物は三国志の諸葛孔明などの戦略に優れた人、現代人ではアップルのスティーブンジョッブス、孫正義さんだと語る。


・ネットエイジグループ 西川潔社長

ネットエイジグループの西川潔社長(50歳)といえば、渋谷をビットバレーと呼んだ日本のネットベンチャーの兄貴分だ。

2000年だったか、日本のインターネットバブルの頃、西川さんを中心に、今や閉鎖した六本木のヴェルファーレでネットベンチャーを集めた大パーティを開催した。

その時、スイスのダボス会議からチャーター機で戻ってきて駆けつけた孫さんが参加して最高に盛り上がった話は有名だ。

ネットビジネスのインキュベーションを初めてビジネスにした経営者だろうと。

その最大の孝行息子がMixiだという。Mixiの笠原さんは、西川さんのオフィスの一角に机を2つ置いて、まずは求人サービスで創業した。

ネットエイジグループは、ファイナンス事業では48億円を5本のファンドで動かしているという。そのうち5億円は学生起業家ファンドで、7社に1億円強投資しており、いわばエンジェルの様な事業だ。

ベンチャーの兄貴分らしい活動だ。

西川さん自身は東大教養学部出身。私立武蔵高校の出身ということは、MonotaROの瀬戸社長の先輩だ。KDDIに入社し、アーサーDリトルに転職、その後バドワイザージャパン、AOLジャパンを経て1998年にネットエイジグループを創設した。


・リミックスポイント 吉川登社長(41歳)

画像処理・保存・管理技術のリミックスポイント社長の吉川さんは、大学卒業後、設計事務所に就職した。

いくつかのプロジェクトを経験して、建築やデザインを学んだ後、住商ファイングッズ(現住商インテリアインターナショナル)に転職して、IT関連事業を担当。

その後小さいデータの画像でも鮮明に拡大する画像処理技術を持つセラーテムテクノロジーに転職、社長を経た後、2004年にベンチャーキャピタルの出資を得てリミックスポイントを設立して独立した。

警視庁やALSOKの警備ロボットに使われているセキュリティ性の高いデジタル画像解析技術が売り物だという。

社長に求められる資質は、行動力と判断力、つまり「思いっきり」だろうと語る。


以上IT関係を中心に紹介したが、他のマザーズ上場企業として、秋田県のリードフレーム等の電子部品検査装置メーカー(インスペック社)、新薬・医薬品検査でナンバーワンの応用医学研究所、激安ふぐ料理の「とらふぐ亭」の東京一番フーズ、レストランチェーンのペッパーフードサービス、ハーバードMBAのマンツーマン英会話のGABAの青野仲達社長など、様々な業態のマザーズ上場企業の社長が紹介されている。


マザーズに上場して創業者としていくら儲けたんだ、という様な興味本位ではなく、成長途上の企業の経営者の話として読むと参考になる話が多い本だ。


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Posted by yaori at 00:27│Comments(0) ビジネス | 起業